(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、当該超音波探触子と前記配管の外面との間にカプラントを供給するカプラント供給器を備えている、請求項1または2に記載の配管肉厚測定装置。
前記位置決め部材は、着脱可能なVブロックであり、当該VブロックのV溝の内面に前記超音波探触子が進退可能に設けられている、請求項1または2に記載の配管肉厚測定装置。
前記位置決め部材、前記アクチュエータおよび前記超音波探触子は、一体化されて肉厚測定ユニットとして構成され、前記アーム部材から着脱可能となっている、請求項1または2に記載の配管肉厚測定装置。
前記付着物除去ユニットは、付着物を削り取って除去する研削器と、当該研削器を前記アーム部材に対して相対的に移動させる研削器移動機構とを備えている、請求項9に記載の配管肉厚測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した従来の技術では、簡便な操作で迅速かつ適切に配管肉厚測定を行うことは困難となっている。
【0010】
まず、特許文献1に開示の管群の検査装置は、伸縮自在の操作軸の先端に検査機構が設けられている構成を有するので、使用者(検査員)が操作軸を掴んで、検査対象の配管近くまで検査機構本体を挿入することができるが、その後には、検査対象の管の全周を検査するために、検査機構本体を回動させたり操作軸を押し引きしたりする複雑な操作を行わなければならない。
【0011】
また、特許文献2に開示の肉厚検査装置は、前記上部ローラ、前記駆動ローラおよび前記下部ローラを備えているため、管群の管軸方向および上下方向に自在に移動でき、前記スライド機構を備えているため、管群の間隙寸法が変動しても安定して移動できるとされている。しかしながら、実際のボイラにおいては、管群の間隔寸法だけでなく作業環境も異なる上に、経年変化で各管に顕著な曲がり等の変形が生じている場合がある。それゆえ、この肉厚検査装置を実際のボイラ等に適用することは困難となっている。
【0012】
また、この肉厚検査装置は、複雑な構成を有していることから相対的に大きな寸法を有している。例えばボイラの過熱器管において検査スペースとして供することができる空間は非常に狭く、作業者は立ち上がることもできない程度に狭い環境も多い。それゆえ、大型の肉厚検査装置を持ち込んで過熱器管に設置するだけで、作業者には相当の負担が生じることとなる。
【0013】
一方、特許文献3に開示された管内挿入式超音波探傷検査装置のように、配管の内部から肉厚を連続して測定する技術は、この分野で実用化されている代表的な技術と言えるが、特許文献2に開示の肉厚検査装置と同様に、その構成が大掛かりであるため、作業者には相当の負担が生じる。しかも、特許文献3では、ボイラ管を切断することなくボイラ管内面の超音波探傷を実施することができるとされているが、実際の検査においては、プローブヘッドをボイラ管の内部に挿入するために、配管の一部を予め切断したり配管の接続部位を分解したりする必要がある。さらに、プローブヘッドを配管内に送り込んで手元に引っ張り出しながら検査するため、配管の内部でプローブヘッドが詰まってしまうおそれもある。
【0014】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、ボイラの過熱器管等のように、密集した状態で配される管群に対して簡便な操作で、迅速かつ適切に配管肉厚測定を行うことができる配管肉厚測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る配管肉厚測定装置は、前記の課題を解決するために、棒状のアーム部材と、当該アーム部材の長手方向に
直交する方向を
直交方向としたときに、前記アーム部材の先端に、
当該アーム部材に対して前記
直交方向
となる位置に
配置されて固定され、
前記アーム部材の後端に向かう位置で配管の外面に当接する当接部位を有する、位置決め部材と、当該位置決め部材の前記当接部位に
おいて、前記アーム部材の前記後端に向かって設けられ、前記配管が当接した状態で、当該配管の外面の法線方向に沿って進退可能に
構成される超音波探触子と、当該超音波探触子を前記
長手方向に沿って進退移動させるアクチュエータと、を備えている
構成である。
また、本発明に係る配管肉厚測定装置は、棒状のアーム部材と、当該アーム部材の長手方向に
直交する方向を
直交方向としたときに、前記アーム部材の先端に、前記
直交方向に沿って設けられ、配管の外面に当接する当接部位を有する、位置決め部材と、当該位置決め部材の前記当接部位に前記配管が当接した状態で、当該配管の外面の法線方向に沿って進退可能に設けられた超音波探触子と、当該超音波探触子を前記法線方向に沿って進退移動させるアクチュエータと、を備え、前記
直交方向において、前記位置決め部材から前記アーム部材に向かう側を後側、その反対側を前側としたときに、前記位置決め部材は、前記アーム部材の前記先端で前側となる位置
で前記直交方向となる位置に配置されて固定され
、前記超音波探触子は、その進退方向が前記長手方向となるように、前記位置決め部材の前記当接部位に設けられている構成であってもよい。
【0016】
前記構成によれば、位置決め部材がアーム部材の先端で折れ曲がったような形状で設けられているため、当該位置決め部材を、密集する管群の隙間に容易に挿入することができる。さらに、前記管群のうち測定対象の管(対象管)の外面に位置決め部材を当接することによって測定位置を決定し、その後に、アクチュエータによって超音波探触子を進出させて、当該超音波探触子を対象管の外面に法線方向から当接させることができる。これにより、対象管における肉厚の測定位置を適切かつ再現性よく決定することができるとともに、適切な方向および好適な押圧力で超音波探触子を対象管の外面に対して当接させることができる。その結果、例えば、ボイラの過熱器管等の密集する管群についての肉厚測定を、迅速かつ容易に行うことができる。
【0017】
前記配管肉厚測定装置においては、さらに、前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、当該超音波探触子と前記配管の外面との間にカプラントを供給するカプラント供給器を備えていることが好ましく、前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、前記配管の外面に対して、空気流を噴射する空気噴射器を備えていることが好ましく、前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、前記配管の外面を撮像する撮像器を備えていることが好ましい。
【0018】
前記各構成によれば、カプラント供給器を備えていれば、位置決め部材を当接させた状態で、対象管における測定位置にカプラントを塗布でき、空気噴射器を備えていれば、前記測定位置に付着する塵埃等を容易に除去することができ、撮像器を備えていれば、位置決め部材の当接前に対象管の外面を観察することができる。これにより、カプラントの供給、塵埃の除去等のために管群から配管肉厚測定装置を毎回引き抜く必要がなく、撮像器を備えていれば、対象管の決定も容易とすることができる。
【0019】
なお、前記各部材または機構等の具体的な構成は特に限定されないが、前記位置決め部材は、着脱可能なVブロックであり、当該VブロックのV溝の内面に前記超音波探触子が進退可能に設けられているとより好ましく、前記アクチュエータは、エアシリンダであることがより好ましい。
【0020】
前記配管肉厚測定装置においては、前記位置決め部材、前記アクチュエータおよび前記超音波探触子は、一体化されて肉厚測定ユニットとして構成され、前記アーム部材から着脱可能となっていることが好ましく、前記肉厚測定ユニットと交換可能に構成され、前記配管の外面の付着物を除去する付着物除去ユニットをさらに備えていることがより好ましい。
【0021】
前記構成によれば、肉厚測定ユニットが着脱可能に構成されているので、例えば、管群または対象管の種類に応じて複数種類の肉厚測定ユニットを準備し、適宜交換することが可能であり、また、付着物除去ユニット等、他の機能ユニットに交換することも可能となる。さらに、付着物除去ユニットを備えていることで、対象管の外面に付着したスケール等の付着物を除去してから肉厚の測定を行うことができるので、実質的に管群を構成する全ての配管を対象管とすることができる。
【0022】
前記付着物除去ユニットの具体的な構成は特に限定されないが、例えば、前記付着物除去ユニットは、付着物を削り取って除去する研削器と、当該研削器を前記アーム部材に対して相対的に移動させる研削器移動機構とを備えている構成を挙げることができる。この構成において、前記研削器移動機構は、前記アーム部材の前記長手方向、
前記直交方向、当該直交方向を軸とした回転方向の少なくともいずれかの方向に、前記研削器を移動させるよう構成されていると、より好ましい。また、付着物除去ユニットにおいても、前記研削器に隣接する位置に設けられ、前記配管の外面を撮像する撮像器を備えていることがより好ましい。なお、前記研削器の具体的な構成は特に限定されないが、代表的な例として、グラインダまたはベルトサンダを挙げることができる。
【0023】
なお、本発明においては、肉厚測定ユニットおよび付着物除去ユニットが交換可能になっている構成に限定されず、配管肉厚測定装置および配管付着物除去装置の組合せからなる配管肉厚測定セットとして構成されてもよい。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、ボイラの過熱器管等のように、密集した状態で配される管群に対して簡便な操作で、迅速かつ適切に配管肉厚測定を行うことができる配管肉厚測定装置を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0027】
(実施の形態1)
[配管肉厚測定装置の構成]
本実施の形態に係る配管肉厚測定装置の基本的な構成について、
図1〜
図6を参照して具体的に説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置10Aは、アーム部材11、肉厚測定部12、継手部材13、および位置決め部材14、並びに、
図1には図示されない配線および配管等を備えている。
【0029】
アーム部材11は、棒状であって、その先端11aに継手部材13を介して肉厚測定部12および位置決め部材14が設けられている。また、その後端11bは、後述するように、使用者によって把持される部位となっている。継手部材13は、本実施の形態では細長い平板状であって、測定面131にアーム部材11の先端11aが固定され、この固定部位に隣接して肉厚測定部12が取り付けられている。測定面131の裏面である背面132は、アーム部材11の後端11bを使用者が把持した状態では、当該使用者から見て外側となり、全体的に実質的な平坦面となっている。
【0030】
なお、以下の説明では、使用者がアーム部材11の後端11bを把持した状態で、当該使用者から見て手前側を「内側」と称し、図中矢印Di で示す。また、内側の反対側を「外側」と称し、図中矢印Diiで示す。これら内側および外側に沿った方向は、アーム部材11の長手方向に対応するので、必要に応じて「縦」方向と称し、縦方向に直交する方向を「横」方向と称する。さらに、位置関係を説明する便宜上、横方向のうち、肉厚測定部12および位置決め部材14からアーム部材11に向かう側(
図1では、図中向かって左から右側)を「後側」と称し、図中矢印Diii で示す。なお、後側の反対側を「前側」と称するが、図中では矢印で示さない。
【0031】
本実施の形態では、
図2に示すように、アーム部材11の先端11aには、正方形状の鍔11cが設けられ、この鍔11cの各角付近の位置で、当該鍔11cを貫通して継手部材13に及ぶように、六角ボルト等の固定部材151を螺合することで、先端11aに継手部材13が固定されている。これにより、継手部材13の長手方向がアーム部材11の長手方向に直行する方向、すなわち横方向に沿って位置する。それゆえ、継手部材13の測定面131に固定されている肉厚測定部12および位置決め部材14を横方向に沿って設けられることになる。
【0032】
この状態では、使用者が、アーム部材11の後端11bを把持した状態で、先端11aの前側に肉厚測定部12および位置決め部材14が位置する。しかも、継手部材13の背面132に固定部材151が配されるようなことがなく、背面132を実質的に平坦となっている。背面132が平坦であれば、後述するように、肉厚測定部12および位置決め部材14を管群に挿入しやすくすることができる。
【0033】
アーム部材11および継手部材13の具体的な構成は特に限定されず、広く機械分野で公知の各種部材を用いることができる。また、
図1に示す構成では、アーム部材11は単一の棒状部材として構成されているが、これに限定されず、複数の棒状部材を接続して1本のアーム部材11となっている構成であってもよいし、大径の円筒状部材に、より径の小さな円筒状部材または棒状部材が進退可能に収容されているような伸縮自在となっている構成であってもよい。また、継手部材13は、平板状ではなく棒状であってもよいし、湾曲した形状であってもよい。さらに継手部材13は、独立した部材でなくてもよく、例えば、アーム部材11の先端11aに一体化されてもよいし、後述する肉厚測定部12に一体化されてもよい。また、アーム部材11の先端11aに継手部材13を固定する構成も前記構成に限定されない。
【0034】
肉厚測定部12は、
図1では、模式的に直方体状で図示しており、内部に超音波探触子21、アクチュエータ22、
図1には図示されないカプラント吐出ノズル、エア噴射ノズル、および固体撮像素子等を備えている。また、肉厚測定部12は、その外側が継手部材13の測定面131に取り付けられ、その内側には位置決め部材14が取り付けられている。位置決め部材14は、本実施の形態では、断面がV字状となっているVブロックとして構成されている。肉厚測定部12の内部に設けられている超音波探触子21は、V字状の谷間(V溝)に当たる部位に位置しており、アクチュエータ22は、この超音波探触子21に隣接する位置に設けられている。なお、
図1では、超音波探触子21の大部分およびアクチュエータ22は肉厚測定部12内に収容されているので、図中点線で示している。
【0035】
肉厚測定部12および位置決め部材14について、より具体的に説明すると、
図2および
図3に示すように、Vブロックの位置決め部材14は、互いに対向してV字状の断面を形成するブロック片14a,14bと、これらブロック片14a,14bを固定する裏板14cとから構成されている。ブロック片14a,14bは、その断面がいずれも直角台形状で、直角台形の傾斜辺に対応する面(V溝の内面)が、それぞれ当接面141a,141bとなっている。ブロック片14a,14bは、これら当接面141a,141bが互いに対向する位置関係で裏板14cに固定されている。また、当接面141a,141bの間には、一定間隔の谷面(V溝の内面)142が形成され、この谷面142の中央部に超音波探触子21が位置している。
【0036】
図2および
図3に示すように、谷面142には、超音波探触子21に隣接して固体撮像素子25が設けられている。また、ブロック片14bを貫通する形で、超音波探触子21に向かってカプラント吐出ノズル23およびエア噴射ノズル24が設けられている(特に
図3参照)。超音波探触子21および固体撮像素子25には、配線31および配線35がそれぞれ接続され、後述するように、これら配線31および配線35は、電源およびモニタ等に接続されている。また、カプラント吐出ノズル23およびエア噴射ノズル24は、それぞれ配管33および配管34に接続され、これら配管33および配管34は、後述するように、エアコンプレッサに直接または間接的に接続されている。
【0037】
図2および
図3に示す構成では、ブロック片14aはアーム部材11に近い側に位置し、ブロック片14bは、アーム部材11から離れた側に位置している。このうち、ブロック片14aには、当接面141aの中央に、当該当接面141aを横方向に分断するように大切り欠き143が形成されている。この大切り欠き143が形成されることで、後述するように、オフセット金具152およびアクチュエータ22の可動部位を移動可能とするための空間が確保される。また、ブロック片14bには、当接面141bの中央かつ谷面142寄りの一部に、小切り欠き144が形成されている。この小切り欠き144は、カプラント吐出ノズル23およびエア噴射ノズル24を、谷面142の超音波探触子21に向かって配置させるための開口となっている。
【0038】
前述したように、超音波探触子21はアクチュエータ22により進退移動可能に構成されている。その具体的構成は特に限定されないが、本実施の形態では、
図3および
図4に示すように、アクチュエータ22の可動部位と超音波探触子21との間にオフセット金具152を介在させる構成が採用される。
【0039】
具体的には、
図3のXX線矢視断面図である
図4に示すように、オフセット金具152は、クランク状の形状を有する金属製の板部材であり、その両端部が横方向に位置し、両端部をつなぐ中央部が縦方向に位置している。オフセット金具152の両端部のうち、外側に位置する一方の端部の内側面には、超音波探触子21の後端が取り付けられているとともに、内側に位置する他方の端部には、アクチュエータ22の可動端153が貫通する形で取り付けられている。
【0040】
この構成によれば、
図5における向かって左側に示すように、待機状態では、肉厚測定部12の内部に収容されているが、向かって右側に示すように、測定状態では、アクチュエータ22の動作によって可動端153が内側(矢印Di 方向)に進出し、この可動端153の移動がオフセット金具152を介して超音波探触子21の後端に伝達されることで、超音波探触子21が内側に進出する。なお、測定状態から待機状態へ戻るときには、この逆の動作が行われる。この点については、測定方法の詳細とともに後述する。
【0041】
位置決め部材14の具体的な構成は特に限定されないが、本実施の形態では、ブロック片14a,14bは、ウレタン樹脂等の弾性材料で構成されている。これにより、肉厚の測定対象となる配管に位置決め部材14を当接させるときに、配管に対する衝撃が抑制され、また、微細な外形の相違を、ブロック片14a,14bの弾性によって吸収することが可能となる。また、裏板14cの具体的な構成も特に限定されず、金属板等、Vブロックの形状を保持できる程度の剛性または強度を有する板状部材を用いることができる。なお、以下の説明では、便宜上、前記「肉厚の測定対象となる配管」を、「対象管」と称する場合がある。
【0042】
また、位置決め部材14は、本実施の形態では、肉厚測定部12から着脱可能に構成されている。具体的な構成は特に限定されないが、例えば複数の六角ボルト等の固定部材154が用いられている。具体的には、
図2および
図3に示すように、ブロック片14a,14bには、直角台形の上底に対応する面に複数の固定用孔145が形成され、
図4に示すように、この固定用孔145に固定部材154が内挿された状態で、肉厚測定部12に設けられたネジ孔に螺合している。したがって、固定部材154を取り外せば、肉厚測定部12から位置決め部材14を取り外すことができる。
【0043】
さらに、位置決め部材14が着脱可能であれば、位置決め部材14として、当接面141a,141bの傾斜角が異なる構成のものを複数準備しておき、対象管の外径または外面の状態等に応じて、好適なものを選択して取り付けることもできる。例えば、
図6に模式的に示すように、図中実線で示すように、当接面141a,141bの傾斜角が標準的な角度となっている位置決め部材14を「位置決め部材14−0」とすれば、図中一点鎖線で示すように、当接面141a,141bの傾斜角が小さく、外径がより大きい対象管を測定するときに用いられる位置決め部材14−1、あるいは、図中二点鎖線で示すように、当接面141a,141bの傾斜角が大きく、外径が小さい対象管を測定するときに用いられる位置決め部材14−2を、位置決め部材14−0とは別に準備しておき、対象管に応じて、これら位置決め部材14−0〜2を、適宜、取り替えて肉厚の測定を行うこともできる。
【0044】
なお、当接面141a,141bにより形成される角度は特に限定されず、対象管の種類等に応じて適宜設定される。一般的には、35〜45°の範囲内であればよい。また、位置決め部材14の奥行きの間隔(ブロック片14a,14bの長さ)が小さすぎると、対象管の外面に当接する面積が小さくなりすぎて、肉厚測定のための位置を適切に決定できないおそれがあるので、ある程度の間隔を有していることが望ましい。この間隔も対象管の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、40〜80mmの範囲内、好ましくは50〜70mmの範囲内、より好ましくは60mmを挙げることができる。
【0045】
肉厚測定部12の具体的な構成も特に限定されない。例えば、超音波探触子21としては、配管の探傷技術の分野で公知のものを好適に用いることができる。また、アクチュエータ22としては、本実施の形態では、エアシリンダが用いられているが、これに限定されず、公知の電磁方式のものあるいは人工筋肉型のもの等であっても好適に用いることができる。
【0046】
また、カプラント吐出ノズル23およびエア噴射ノズル24、並びにこれらに接続される配管33および配管34についても、公知の構成を好適に用いることができる。さらに、肉厚測定部12における配管33および配管34の位置等についても特に限定されない。本実施の形態では、カプラント吐出ノズル23およびエア噴射ノズル24のいずれも、肉厚測定部12の前側の端部から、位置決め部材14のブロック片14bを貫通して後側(矢印Diii 方向)に向かって吐出口が位置するように設けられている。それゆえ、これらノズル部材に接続される配管33および配管34は、肉厚測定部12の外周に沿って設けられているが、例えば、肉厚測定部12を貫通するように設けられる等、さまざまな配置を適宜選択することができる。
【0047】
固体撮像素子25についても、公知のCCD(電荷結合素子)イメージセンサまたはCMOSイメージセンサを用いることができるが、これら素子に代えて、他の構成のカメラ機器を用いてもよい。固体撮像素子25は、後述するように、対象管の位置を特定するために用いられるので、この用途に好適な解像度、精度、寸法または耐久性等を備えていれば、どのようなカメラ機器を用いてもよい。
【0048】
ここで、本実施の形態では、前記のとおり、アクチュエータ22としてエアシリンダが採用されているので、
図3および
図4に示すように、アクチュエータ22には、エアを導入して可動端153を進退移動させるためのエルボ管継手321,322が接続されている。このうち、エルボ管継手321が継手部材13の測定面131から内側に向かって位置し、エルボ管継手322が継手部材13の背面132に位置している。これら管継手の種類、数、配置等についても特に限定されず、さまざまな構成を適宜選択して用いることができる。
【0049】
肉厚測定部12および位置決め部材14は、まとめて、配管肉厚測定装置10Aの「測定ヘッド」を構成しているが、この測定ヘッドの厚みは、できる限り小さい方が好ましい。すなわち、測定ヘッドの厚みが大きくなりすぎると、密集する管群の間に測定ヘッドを容易に挿入できなくなる。ここで、管群を構成するそれぞれの配管の間隔、すなわち管ピッチに基づいて測定ヘッドの厚みを設定することもできるが、管群が異なれば管ピッチも異なることに加え、配管そのものが数〜10mm単位でたわんでいる場合があるので、管ピッチを基準として測定ヘッドの厚みを厳密に設定することは難しい。一般的には、管ピッチの半分以下の厚みであれば、測定ヘッドを容易に管群の間に挿入することが可能である。
【0050】
[配管肉厚測定装置を用いた肉厚測定]
次に、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置10Aを用いた肉厚の測定の一例について、
図7〜
図10を参照して具体的に説明する。
【0051】
例えば、各種ごみを焼却処理するごみ処理プラントでは、熱回収のためにボイラが付設されていることが多い。このボイラは、ごみ処理時に発生する燃焼ガスから熱を回収するものであり、例えば、発電用の蒸気の発生等に利用される。このボイラで発生した蒸気は、飽和蒸気であって、気体の蒸気だけでなく液体の水分も一部含んでいる。そこで、この水分を蒸発させて気化させて過熱蒸気とするために、ボイラには、密集した複数の過熱器管の群からなる過熱器が設けられている。
【0052】
ごみ処理プラントのボイラに用いられる過熱器管は、例えば、つづら折れ状に蛇行して密集することにより過熱器を構成している。この過熱器においては、例えば400℃以上の高温のガスが通過するので、高温環境下にさらされる過熱器管には徐々に摩耗が生じる。加えて、特に都市ごみや産業廃棄物を焼却する焼却炉に付設されるボイラでは、通過するガスが高温であるだけでなく、ごみの燃焼に伴い発生する塩素系ガス等の腐食性の高い成分が含まれる。このため、これら高腐食性の成分への曝露により過熱器管が腐食しやすくなる。
【0053】
このように過熱器管に摩耗または腐食が生じれば、管の肉厚が低下する(減肉)ことになる。減肉が進行すれば、過熱器管が噴破する可能性も高くなり、過熱器管の内部を流通する高温の過熱蒸気が漏出する事故につながる。本実施の形態では、この過熱器管に減肉が生じていないか否かを判定するために、配管肉厚測定装置10Aを用いて、過熱器管の肉厚を測定する場合を例示する。
【0054】
図7に示すように、ボイラ50に設けられる1本の過熱器管51を対象管として、配管肉厚測定装置10Aにより当該対象管の肉厚を測定するものとする。ここで、測定を行う前には、例えば、電源41に2台のケーブルドラム42a,42bを接続し、このうちケーブルドラム42aに、ボイラ50内を照明するための投光器43およびハンドランプ44の電源を接続する。また、ケーブルドラム42bには、さらに延長電源コード42cを接続し、この延長電源コード42cに、配管肉厚測定装置10Aが備える固体撮像素子25の電源および炉内用モニタ45の電源を接続する。また、ケーブルドラム42bには、炉外用モニタ46の電源も接続する。なお、電源用配線は、
図7ではいずれも実線で示している。
【0055】
炉内用モニタ45には、固体撮像素子25のデータ配線35aが接続され、固体撮像素子25で撮像された画像が炉内用モニタ45で表示可能となっている。また、炉内用モニタ45は、炉外用モニタ46とデータ配線35bにより接続されているので、固体撮像素子25で撮像された画像は、炉外用モニタ46でも表示可能となっている。さらに、炉外用モニタ46には、データ配線35cを介してビデオカメラ47も接続されているので、固体撮像素子25で撮像された画像は、ビデオカメラ47で録画可能となっている。なお、データ配線35a,35b,35cは、
図7では点線で示し、電源用配線とは区別している。
【0056】
また、
図7には詳細に図示されないが、配管肉厚測定装置10Aが備えるカプラント吐出ノズル23、エア噴射ノズル24およびエアシリンダであるアクチュエータ22には、エアが供給される必要がある。そこで、
図7に示すように、配管肉厚測定装置10Aには、エア配管30およびマニホールド302を介してエアコンプレッサ301が接続されている。なお、エア配管30は、
図7では二重線で示している。
【0057】
そして、
図8に示すように、コンプレッサ301からつながるエア配管30は、レギュレータフィルタ303を介して、Y継手304によりエア配管30aおよびエア配管30bに分岐する。エア配管30aは、さらにY継手304により配管32および配管34に分岐する。配管32は、前述したようにエアシリンダであるアクチュエータ22に接続され、当該アクチュエータ22を動作させるためのエアを供給するものであり、手元操作部305に含まれるアクチュエータスイッチ部352において、さらに2つの配管32,32に分岐する。これら配管32,32は、アクチュエータスイッチ部352によってエアの供給および遮断が切り替えられるように構成されている。
【0058】
なお、配管32は、
図2〜
図4に示すように、肉厚測定部12の内部または周囲に所定の位置に取り付けられているが、それ以外では、もつれるようなことがなければ、使用の便宜からアーム部材11に取り付ける必要はない。そこで、例えば、肉厚測定部12の近傍とアーム部材11の近傍とで、当該配管32を分離できるように、ストレート継手306を介在させてもよい。この配管32,32は、肉厚測定部12の近傍で、それぞれエルボ管継手321,322に接続される。
【0059】
配管34は、前述したようにエア噴射ノズル24に接続され、エア噴射ノズル24から噴射されるエアを供給するものである。この配管34も手元操作部305に含まれるエア噴射スイッチ部354によりエアの供給および遮断が切り替えられるように構成されている。また、配管34においても、例えば、肉厚測定部12の近傍とアーム部材11の近傍とで、当該配管34を分離できるように、ストレート継手306を介在させてもよい。このように、エア噴射ノズル24、配管34、エア噴射スイッチ部354等は、コンプレッサ301、エア配管30等とともに、配管肉厚測定装置10Aにおいて、対象管の外面に対して空気流を噴射する空気噴射器を構成している。
【0060】
エア配管30bは、カプラントタンク231に接続され、このカプラントタンク231には、配管33が接続されている。配管33は、前述したようにカプラント吐出ノズル23に接続され、カプラントタンク231に貯蔵されているカプラントを、供給されるエアに乗せてカプラント吐出ノズル23まで供給するものである。この配管33も手元操作部305に含まれるカプラント吐出スイッチ部353によって、カプラントの供給および遮断が切り替えられるように構成されている。また、配管33においても、例えば、肉厚測定部12の近傍とアーム部材11の近傍とで、当該配管33を分離できるように、ストレート継手306を介在させてもよい。このように、カプラント吐出ノズル23、配管33、カプラント吐出スイッチ部353、カプラントタンク231等は、コンプレッサ301、エア配管30等とともに、配管肉厚測定装置10Aにおいて、超音波探触子21と対象管外面との間にカプラントを供給するカプラント供給器を構成している。
【0061】
なお、上述した種々の照明、モニタ、電源、配線および配管、並びに、各種部材または機構等の具体的構成は特に限定されず、配管の探傷技術の分野で公知のものを好適に用いることができる。例えば、空気噴射器またはカプラント供給器は前記の構成に限定されず、独立した空気噴射装置またはカプラント供給装置として構成されてもよいし、手元操作部305を構成する各種スイッチ部としてもさまざまな構成を用いてもよいし、炉外用モニタ46およびビデオカメラ47に代えて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置が用いられてもよい。
【0062】
このように、照明、モニタ、電源、配線および配管等が準備された状態で、使用者(測定作業者)は、アーム部材11の後端11bを把持し(
図1参照)、アーム部材11の先端11aに設けられている測定ヘッド(肉厚測定部12および位置決め部材14)をボイラ50の過熱器の内部に挿入する。
【0063】
測定ヘッドを過熱器に挿入した状態では、位置決め部材14は過熱器管51の外面に当接していないので、
図10(a)に示すように、図中黒く塗りつぶされて示される超音波探触子21は、肉厚測定部12の内部に収容された状態である。そして、超音波探触子21に隣接して固体撮像素子25が設けられているので、固体撮像素子25により過熱器管51の外面を撮像する(図中破線で示す)ことで、複数の過熱器管51のうち対象管であるものを特定することができる。例えば、任意の過熱器管51の外面において何らかの変化が生じていることが、固体撮像素子25によって撮像されれば、当該過熱器管51を対象管として、位置決め部材14を当接させればよい。
【0064】
次に、
図9に示すように、先端11aにおいて横方向に位置している肉厚測定部12を、過熱器を構成する複数の過熱器管51の間に挿入し、対象管である特定の過熱器管51の外面に位置決め部材14を当接させる。位置決め部材14を過熱器管51に当接させることで、当該過熱器管51における肉厚の測定位置を容易に決定できるとともに、この測定位置に対して、超音波探触子21を適切な姿勢に安定して保持することができる。
【0065】
また、肉厚測定部12には、エア噴射ノズル24が設けられているので、肉厚の測定位置が決定されれば、手元操作部305のエア噴射スイッチ部354を操作することで、
図10(b)の矢印Fに示すように、過熱器管51の外面に向かってエアを噴射することができる。このエアの噴射によって、外面に付着している塵埃、あるいは、前回の肉厚測定時に塗布されたカプラント等を除去することができるので、肉厚測定をより好適な環境下で行うことが可能となる。
【0066】
次に、手元操作部305のカプラント吐出スイッチ部353を操作することで、
図10(c)の点線矢印Dに示すように、カプラント吐出ノズル23から過熱器管51の外面(または超音波探触子21の接触面)に向かってカプラント232を吐出する。カプラント232は、測定面(過熱器管51の外面)と超音波探触子21との間に空気層が形成されることを防ぐために、測定面または超音波探触子21の表面に塗布される。特に、過熱器は、ボイラ50等の内部に設けられ、かつ、複数の過熱器管51が密集している構成となっているので、当該過熱器を構成する過熱器管51の肉厚測定を行うときに、カプラント232を塗布するだけでも作業に困難性を伴うが、このようにカプラント吐出ノズル23を備えることで、容易にカプラント232を塗布することができる。なお、カプラント232の具体的な種類等は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0067】
次に、手元操作部305のアクチュエータスイッチ部352を操作することで、
図10(d)に示すように、アクチュエータ22を動作させ、超音波探触子21を矢印S方向(内側)に突出させる。このとき、位置決め部材14の当接面141a,141b(
図2〜
図4参照)に過熱器管51が当接した状態では、超音波探触子21の移動方向が、過熱器管51の外面の法線方向に対応する。そのため、超音波探触子21は、アクチュエータ22によって過熱器管51の外面の法線方向に沿って進出し、当該外面に当接する。この状態で、超音波探触子21から超音波を発することで、過熱器管51の肉厚が測定される。
【0068】
このように、本実施の形態によれば、位置決め部材14がアーム部材11の先端11aで折れ曲がったような形状で設けられているため、位置決め部材14およびこれが取り付けられている肉厚測定部12を、密集する管群の隙間に容易に挿入することができる。さらに、管群のうち測定対象の管(対象管)の外面に位置決め部材14を当接することによって測定位置を決定し、その後に、アクチュエータ22によって超音波探触子21を進出させるだけで、超音波探触子21を対象管の外面に法線方向から当接させることができる。これにより、対象管における肉厚の測定位置を適切かつ再現性よく決定することができるとともに、適切な方向および好適な押圧力で超音波探触子21を対象管の外面に対して当接させることができる。その結果、密集する管群についての肉厚測定を、迅速かつ容易に行うことができる。また、位置決め部材14の使用により、作業者の技量に依存することが少ない、安定した肉厚の測定を行うことが可能となる。
【0069】
しかも、本実施の形態では、
図8に示すように、測定ヘッドに含まれるアクチュエータ22、カプラント吐出ノズル23、エア噴射ノズル24等を、使用者(作業者)の手元で操作することができる。さらに、固体撮像素子25によって管群内の対象管を撮像し、炉内用モニタ45または炉外用モニタ46等で確認することができる。それゆえ、遠隔操作によって肉厚の測定を行うにもかかわらず、容易かつ再現性の高い測定を行うことができる。
【0070】
[変形例]
本実施の形態では、位置決め部材14および肉厚測定部12の配置の方向は、縦方向(アーム部材11の長手方向)に直交する方向である横方向(矢印Diii 方向)となっているが、本発明はこれに限定されず、縦方向に交差する方向を交差方向と定義したときに、少なくとも位置決め部材14が交差方向に配置していればよい。つまり、位置決め部材14は、アーム部材11の長手方向に対して略直角を形成する角度に設けられている必要はなく、傾斜を形成するような方向に設けられていればよい。また、アーム部材11および位置決め部材14で形成される角度(縦方向に対する交差方向の角度)も特に限定されず、管群の管ピッチまたは管群の周囲の環境等に応じて、任意の配管に肉厚測定部12および位置決め部材14を当接させることができるような角度を設定すればよい。さらには、継手部材13が縦方向に対して角度を変更できるような構成となって、アーム部材11に取り付けられてもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、位置決め部材14は、Vブロック状で、互いに傾斜状態で対向する当接面141a,141bを有する構成となっているが、位置決め部材14の構成はこれに限定されず、例えば、半球状の突起が4個配置され、各突起の間に配管を当接させる構成、あるいは、断面がU字状となっている構成等であってもよい。前者の構成であれば、各突起の表面が配管の外面に対する当接部位となり、後者の構成であれば、当該U字状の内面が当接部位となる。つまり、本発明においては、位置決め部材14は、肉厚の測定対象である配管の外面に当接する当接部位を有していれば、当該当接部位の具体的な構成は特に限定されない。
【0072】
(実施の形態2)
前記実施の形態1に係る配管肉厚測定装置10Aは、配管の肉厚を測定する構成のみを備えているが、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置は、さらに配管の外面に付着するスケール等の付着物を除去する構成を有している。
【0073】
[付着物除去ユニットの構成]
本実施の形態に係る配管肉厚測定装置の基本的な構成について、
図11および
図12を参照して具体的に説明する。
図11に示すように、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置10Bは、前記実施の形態1で説明した肉厚測定部12、継手部材13、位置決め部材14およびアーム部材11の先端11aが一体化されて肉厚測定ユニット111を構成している。アーム部材11の先端11aは、例えば、ネジ等の螺合構成によってアーム本体11の後端11bに着脱可能に接続されており、それゆえ、肉厚測定ユニット111は、アーム部材11から着脱可能となっている。
【0074】
そして、配管肉厚測定装置10Bは、肉厚測定ユニット111と交換可能に構成される付着物除去ユニット112を備えている。付着物除去ユニット112のアーム本体11dも、アーム部材11の後端11bに対してネジ等の螺合構成によってアーム部材11の後端11bに着脱可能に接続されており、肉厚測定ユニット111を後端11bから外して付着物除去ユニット112に置き換えて用いることになる。
【0075】
本実施の形態における付着物除去ユニット112は、付着物を削り取って除去する研削器16と、この研削器をアーム部材11に対して相対的に移動させる研削器移動機構17とを備えている。
【0076】
研削器16としては、本実施の形態では、
図12(a)に示すグラインダ16a、または、
図12(b)に示すベルトサンダ16bを用いることができる。グラインダ16aは、対象管の周囲に付着する付着物が相対的に硬いものである場合に好適に用いられる。また、ベルトサンダ16bは、付着物が相対的に軟らかいものである場合に好適に用いられる。付着物が軟らかい場合には、付着物の除去時に対象管本体にダメージを与える可能性があるため、ベルトサンダ16bが有利であるが、付着物が硬い場合には、ベルトサンダ16bでは付着物の効率的な除去が難しくなるため、グラインダ16aが有利である。
【0077】
研削器16として用いられる研削機器は、付着物の物性または付着物の除去の状況等の諸条件に応じて適宜選択されるものであって、グラインダ16aまたはベルトサンダ16bのいずれかに限定されない。もちろん研削器16としては、これら以外の公知の研削機器を好適に用いることもできる。
【0078】
また、研削器16の種類によっては、研削器16を対象管に適切に届かせるために、研削器移動機構17と研削器16との間に取り付け部材を介在させてもよい。例えば、
図11に示す研削器16の構成例はグラインダ16aであるが、この構成例では、この例えば、研削器移動機構17に研削器取付部材162が取り付けられ、この研削器取付部材162によって略直角に支持されるアングル部材161の先端にグラインダ16aが取り付けられている。
【0079】
さらに、
図11および
図12(a),(b)には図示されないが、研削器16に隣接する位置に、固体撮像素子が設けられてもよい。固体撮像素子を設けて、対象管の外面をモニタ等で確認することで、肉厚を測定する位置はどこか、当該位置に付着物があるか、付着物の除去が肉厚測定に適切な程度にまで除去されたか、等を使用者の目視によって確認することができる。
【0080】
次に、研削器移動機構17は、本実施の形態では、支持クランプ71、ピボット部72、操作ハンドル73、ハンドル取付部74を備えている。支持クランプ71は、アーム本体11dの先端に設けられ、研削器移動機構17をアーム部材11に対して着脱自在に支持する。
【0081】
ピボット部72は、ピボット回転軸72aおよびピボット軸受72bを備えている。ピボット回転軸72aは、支持クランプ71によって横方向の後側(矢印Diii 方向)に支持されている。ピボット回転軸72aの先端には、ピボット軸受72bが回転可能に取り付けられている。このピボット軸受72bは、操作ハンドル73を縦方向の内側に向かって支持するとともに、研削器16を縦方向外側に向かって支持する。
【0082】
図11に示すように、研削器16および操作ハンドル73は、ピボット軸受72bを介して縦方向に略直線状に接続されているので、アーム部材11の長手方向(縦方向)に略平行となる位置を基準とすれば、ピボット回転軸72aを中心軸として操作ハンドル73を回転移動させることができ、それゆえ、操作ハンドル73の外側に設けられている研削器16の相対的な位置を操作することができる。
【0083】
ハンドル取付部74は、ピボット軸受72bに操作ハンドル73を固定するための部材であるとともに、操作ハンドル73を上下移動させるときのストッパーとしても機能する。例えば、
図11に示すように、操作ハンドル73を外側に向けて押し出すように移動させればハンドル取付部74をピボット軸受72bに当接するので、操作ハンドル73は外側にはそれ以上移動しない。一方、
図12(a),(b)に示すように、操作ハンドル73を内側に向けて引き上げるように移動させれば、研削器16(グラインダ16aまたはベルトサンダ16b)を操作ハンドル73に取り付ける研削器取付部材162がピボット軸受72bに当接するので、操作ハンドル73は内側にはそれ以上移動しない。
【0084】
このように、ハンドル取付部74は、ピボット軸受72bおよび研削器取付部材162とともに、操作ハンドル73を縦方向に移動可能とする機構(縦移動機構)を構成している。これによって、研削器16は、操作ハンドル73の操作によって回転移動および縦移動の双方が可能となるので、操作ハンドル73を操作することで、研削器16を、付着物の除去作業に好適な位置に容易に移動させることができる。
【0085】
なお、ハンドル取付部74は、操作ハンドル73のうち、使用者が把持する内側の端部を、研削器取付部材162が設けられている外側の端部から取り外せるように構成されてもよい。これによって、操作ハンドル73の内側の端部を取り替えることで、操作ハンドル73の長さを調整したり、使用環境に好ましい種類の把持部を用いたりすることができる。
【0086】
さらに、
図12(a),(b)に示すように、付着物除去ユニット112には、研削器固定部18がさらに設けられてもよい。この研削器固定部18は、過熱器管51の間に配管肉厚測定装置10Bを挿入したときに、隣接する過熱器管51の間で付着物除去ユニット112を固定するものである。その具体的な構成は特に限定されないが、例えば、
図12(a),(b)に示す例では、管受部181と、この管受部181を支持する管受支持部182とを備えている構成となっている。管受部181は、例えば位置決め部材14と同様の弾性材料で構成され、過熱器管51の外面を受けることができる程度の湾曲面を有している。また、管受支持部182は、例えばクランプ部材71の外側に取り付けられ、クランプ部材71の両側面で管受部181を支持している。
【0087】
この構成によれば、配管肉厚測定装置10Bを過熱器に挿入したときに、任意の過熱器管51,51の間に、一対の管受部181,181を当接させれば、付着物除去ユニット112は過熱器管51,51の間で挟み込まれることで固定される。それゆえ、操作ハンドル73を安定して操作できるため、研削器16による付着物の除去作業をより良好に行うことができる。
【0088】
なお、前述した研削器移動機構17および研削器固定部18の具体的な構成は特に限定されず、配管の探傷技術の分野で公知のものを好適に用いることができる。
【0089】
また、本実施の形態では、クランプ部材71としてエアクランプを好ましく用いることができる。これにより、管群の任意の位置に付着物除去ユニット112をエアクランプで固定して研削器移動機構17を支持することができる。それゆえ、研削器16による付着物の除去作業時に、研削処理時の反力がエアクランプで緩衝されるため、使用者(作業者)は付着物の除去を円滑に行うことができる。また、クランプ部材71で付着物除去ユニット112を固定することで、作業者がユニットを保持する必要がなくなるので、作業者の負担または注意を付着物除去ユニット112の操作のみに集中することができる。
【0090】
[付着物除去ユニットを用いた付着物除去および肉厚測定]
次に、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置10Bを用いた、付着物の除去および肉厚の測定の一例について、
図13、
図14および
図15(a)〜(c)を参照して具体的に説明する。
【0091】
本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様に、ごみ処理プラントに付設されているボイラの過熱器管に対して、付着物の除去および肉厚の測定を行う場合を例示する。ここで、都市ごみや産業廃棄物を焼却する焼却炉に用いられるボイラにおいては、ごみの燃焼に伴い発生する焼却灰が飛散し、過熱器管の外面に、焼却灰が溶融して付着する現象も生じる。この付着物(スケールまたはクリンカー)が徐々に成長して外面に堆積していけば、過熱器管の肉厚を適切に測定することができなくなる。そこで、本実施の形態では、配管肉厚測定装置10Bを用いて、この過熱器管の外面に付着する付着物を除去した上で、過熱器管の肉厚を測定する場合を例示する。
【0092】
図13に示すように、ボイラ50に設けられる1本の過熱器管51を対象管として、配管肉厚測定装置10Bにより当該対象管の肉厚を測定するものとする。なお、
図13に示される照明、モニタ、電源、配線および配管等が準備された状態は、配管肉厚測定装置10Aに代えて、肉厚測定ユニット111および付着物除去ユニット112を交換可能に備える配管肉厚測定装置10Bを用いている点以外は、前記実施の形態1において説明した
図7に示される状態と基本的に同様であるため、その具体的な説明は省略する。
【0093】
ただし、
図13に示される、付着物除去ユニット112を備える配管肉厚測定装置10Bにおいては、
図11および
図12には図示していない、付着物除去用の固体撮像素子165を図示している。この固体撮像素子165は、肉厚測定ユニット111の固体撮像素子25と同様に、その電源が延長電源コード42cに接続され、固体撮像素子165のデータ配線35dが炉内用モニタ45に接続されている。したがって、固体撮像素子165で撮像された画像は炉内用モニタ45と、これにデータ配線35bで接続される炉外用モニタ46で表示可能となっており、さらに、炉外用モニタ46とデータ配線35cにより接続されるビデオカメラ47で録画可能となっている。
【0094】
また、
図14に示すように、
図13に示されるコンプレッサ301からつながるエア配管30は、切換スイッチ307およびレギュレータフィルタ303を介して、配管37に接続される。配管37は、付着物除去ユニット112のエアブロー機能にエアを供給するものであり、手元操作部305に含まれるエアブロースイッチ部357によってエアの供給および遮断が切り替えられるように構成されている。なお、付着物除去ユニット112には配管38も接続されている。この配管38の他方にはサイレンサ75が接続されている。
【0095】
このように、前記実施の形態1と同様に、照明、モニタ、電源、配線および配管等が準備された状態で、使用者(測定作業者)は、配管肉厚測定装置10Bとして、アーム本体11dに付着物除去ユニット112を取り付けた状態で、アーム部材11の後端11bを把持し(
図11参照)、先端に設けられている研削器16をボイラ50の過熱器の内部に挿入する。
【0096】
研削器16を過熱器に挿入した段階で、
図15(a)に示すように、付着物除去ユニット112に設けられている固体撮像素子165により過熱器管51の外面を撮像する(図中破線で示す)。これにより、複数の過熱器管51のうち対象管であるものを特定することができるとともに、対象管の外面にスケール等の付着物70が付着しているか否かを確認することができる。
【0097】
対象管の外面に付着物70が付着しており、これを除去する必要がある場合には、
図15(b)に示すように、研削器16(この例ではグラインダ16a)によって過熱器管51の外面の付着物70を除去する。このとき、固体撮像素子165で撮像した画像を炉内用モニタ45または炉外用モニタ46で確認しながら除去作業を行うことができる。
【0098】
その後、付着物70を十分に除去できれば、付着物除去ユニット112をアーム本体11dから取り外して、代わりに肉厚測定ユニット111を取り付け、アーム部材11の後端11bを把持し、肉厚測定ユニット111に設けられている測定ヘッド(肉厚測定部12および位置決め部材14)をボイラ50の過熱器の内部に挿入する。そして、
図15(c)に示すように、超音波探触子21に隣接して設けられている固体撮像素子25により過熱器管51の外面を撮像し(図中破線で示す)、付着物70が除去された過熱器管51を特定し、前述した一連の肉厚の測定を行う(
図10(b)〜(d)参照)。
【0099】
このように、本実施の形態においては、肉厚測定ユニット111に加えて付着物除去ユニット112を備えていることにより、対象管の肉厚を測定する前に、当該対象管の外面に付着している付着物70を除去することができる。しかも、付着物除去ユニット112は、肉厚測定ユニット111と交換可能となっているので、作業者の手の届かないような管ピッチの狭い箇所、あるいは、配管の構造の狭隘な箇所であっても付着物70を除去し、対象管の肉厚を測定することができる。さらに、測定前に対象管の付着物を除去できることから、付着物の少ない配管を探して肉厚を測定する必要がなく、それゆえ、取付金具等を除き、管群を構成するほとんど全ての配管を肉厚の測定対象とすることができる。
【0100】
また、本実施の形態によれば、対象管に対する付着物の除去と、肉厚の測定を一連の作業として順次行うことができる。これによって、従来の配管肉厚測定装置のように、配管内に測定装置が詰まる等の事態を回避することができる。しかも、付着物を除去すれば、ほぼ全ての配管を対象管とできることから、例えば、それぞれのボイラ別に、同一の過熱器管の同一の箇所で、定期的に肉厚の測定を行うという、定点観察が可能となる。それゆえ、各過熱器管のそれぞれの部位ごとに減肉の傾向を調べることができる。
【0101】
なお、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置10Aを用いて実際の作業を行ったところ、付着物70の除去については、配管1本当たり3.3分、肉厚の測定については、配管1本当たり2分(対象管の1箇所を3回測定)程度の作業時間となった、このように、本発明によれば、迅速な肉厚測定の作業を実現できることが分かる。
【0102】
[変形例]
本実施の形態においては、少なくとも位置決め部材14、アクチュエータ22および超音波探触子21が一体化されて単一のユニットを構成していればよく、それゆえ肉厚測定ユニット111の具体的な構成は、前述したアーム部材11の一部と継手部材13とを含む構成に限定されない。この点は、付着物除去ユニット112についても同様である。
【0103】
また、本実施の形態においては、1本のアーム部材11に対して、肉厚測定ユニット111および付着物除去ユニット112を交換可能とする構成を採用しているが、本発明はこれに限定されず、肉厚測定ユニット111および付着物除去ユニット112がそれぞれ別のアーム部材11に取り付けられることで、配管肉厚測定装置および配管付着物除去装置の組合せからなる、配管肉厚測定セットを構成してもよい。
【0104】
さらに、本実施の形態で実現可能な一連の作業方法、すなわち、付着物の除去および肉厚の測定の組合せからなる配管肉厚測定方法においては、例えば、ガイド波による配管減肉検出方法と組み合わせることもできる。具体的には、ガイド波による減肉検出によって、複数の管群の中から一定レベルの減肉が確認された配管を調査するという一次スクリーニングを行い、減肉が確認された配管に対して、付着物の除去および肉厚の測定を行うことができる。これにより、ランダムに配管の肉厚を測定する必要がなくなり、検査次官の短縮および減肉箇所の迅速な特定を行うことができる。
【0105】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る配管肉厚測定装置は、前記実施の形態2に係る配管肉厚測定装置10Bと基本的に同じ構成を有しているが、付着物除去ユニット112が備える研削器移動機構17において、回転移動および縦進退移動に加えて横進退移動を行う機構を備えている点が異なっている。この構成について、
図16を参照して説明する。
【0106】
図16に示すように、本実施の形態における研削器移動機構19は、基本的な構成は、前記研削器移動機構17と同様であるが、アーム本体11dには、支持クランプ71ではなく、ピボット部移動機構76が取り付けられている。
【0107】
ピボット部移動機構76は、2つの支持クランプ76a,76bと、これら支持クランプ76a,76bを横方向(図中矢印Diii 方向)に並列に配置した状態でアーム部材11に取り付ける、板状のクランプ取付部材76cと、このクランプ取付部材76cと同様に、支持クランプ76a,76bによって横方向に支持され、外側(図中矢印Dii方向)にピボット部72のピボット回転軸72aを支持するピボット部支持部材76dと、ピボット回転軸72aの後端(前端にはピボット軸受72bが取り付けられている)に設けられ、ピボット回転軸72aを横方向に進退移動させるピボット部アクチュエータ76eとを備えている。
【0108】
この構成から明らかなように、ピボット部移動機構76は、ピボット部アクチュエータ76eの動作によってピボット回転軸72aを前側(図中矢印Diii 方向の反対方向)または後側(図中矢印Diii 方向)に移動させることができる。これにより、ピボット部72の先端に設けられている研削器16も横方向に移動可能となる。それゆえ、研削器16は、操作ハンドル73の操作によって回転移動、縦移動および横移動の3方向の動きが可能となるので、操作ハンドル73を操作することで、研削器16を、付着物の除去作業に好適な位置に容易に移動させることができる。
【0109】
ここで、本発明において、研削器16をアーム部材11に対して相対的に移動させる構成は、前記実施の形態2における研削器移動機構17、または、本実施の形態における研削器移動機構19に限定されず、公知の他の構成を採用することができる。少なくとも、本発明においては、アーム部材11を基準として、縦方向(アーム部材11の長手方向)、横方向(長手方向に直交する方向)、および横方向を軸とした回転方向の少なくともいずれかの方向に、研削器16が移動できるように構成されていればよい。
【0110】
なお、本発明は前記の実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。