特許第5662682号(P5662682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5662682PPARモジュレータとして有用な置換1,3−ジオキサン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662682
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】PPARモジュレータとして有用な置換1,3−ジオキサン
(51)【国際特許分類】
   C07D 319/06 20060101AFI20150115BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 3/12 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150115BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   C07D319/06CSP
   A61P3/10
   A61P9/00
   A61P27/02
   A61P3/06
   A61P3/00
   A61P9/10 101
   A61P3/12
   A61P43/00 111
   A61K31/357
【請求項の数】8
【全頁数】104
(21)【出願番号】特願2009-546560(P2009-546560)
(86)(22)【出願日】2008年1月18日
(65)【公表番号】特表2010-516699(P2010-516699A)
(43)【公表日】2010年5月20日
(86)【国際出願番号】US2008051521
(87)【国際公開番号】WO2008089461
(87)【国際公開日】20080724
【審査請求日】2011年1月17日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2007/002542
(32)【優先日】2007年1月18日
(33)【優先権主張国】IB
(31)【優先権主張番号】60/989,808
(32)【優先日】2007年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/989,806
(32)【優先日】2007年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/989,805
(32)【優先日】2007年11月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508217685
【氏名又は名称】エヴォルヴァ エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ソレンセン, アレクサンドラ サンタナ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー, ジャン−フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アルバーツ, ペテリス
(72)【発明者】
【氏名】メインカー, プラタマ エス.
(72)【発明者】
【氏名】クラメーリ, メイヤ ヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】ボナウド, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ケラハー, ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン, デイビッド
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−012772(JP,A)
【文献】 特表2006−527749(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/105738(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/094793(WO,A1)
【文献】 特開昭58−222081(JP,A)
【文献】 特開平01−249770(JP,A)
【文献】 特開昭61−280487(JP,A)
【文献】 特開昭61−036278(JP,A)
【文献】 特開昭62−012773(JP,A)
【文献】 特開昭62−016475(JP,A)
【文献】 BROWN,G.R. et al,Improved synthetic routes to the novel thromboxane receptor antagonist ICI 192605: activity of synthetic 1,3-dioxane intermediates,Journal of Pharmacy and Pharmacology,1990年,Vol.42, No.1,pp.53-55
【文献】 FAULL,A.W. et al,Dual-Acting Thromboxane Receptor Antagonist/Synthase Inhibitors: Synthesis and Biological Properties of [2-Substituted-4-(3-pyridyl)-1,3-dioxan-5- yl]alkenoic Acids,Journal of Medicinal Chemistry,1995年,Vol.38, No.4,pp.686-694
【文献】 FAULL,A.W. et al,Dual-acting thromboxane receptor antagonist/synthase inhibitors: heterocyclic variations,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,1992年,Vol.2, No.10,pp.1181-1186
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D317/00−325/00
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化33】
の化合物の結晶であって、該化合物が、溶媒和されておらず、銅放射線源から得たとき2θスケールで11±0.2°および20.9±0.2°から成る群より選択される少なくとも1つのピークを伴うX線粉末回折パターンを有する、化合物の結晶。
【請求項2】
(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸t−ブチルアミン塩である、化合物であって、銅放射線源から得たとき2θスケールで11±0.2°および20.9±0.2°から成る群より選択される少なくとも1つのピークを伴うX線粉末回折パターンを有する、化合物
【請求項3】
以下の図
【化33】
に示されるX線粉末回折パターンを有する(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸t−ブチルアミン塩の結晶形態である、請求項に記載の化合物。
【請求項4】
2θで15.9°、20.3°および21.9°のピークを伴うX線粉末回折パターンを有する(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸t−ブチルアミン塩の結晶形態である、請求項に記載の化合物。
【請求項5】
2θで10.9°、15.9°、20.3°、20.7°および21.9°のピークを伴うX線粉末回折パターンを有する(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸t−ブチルアミン塩の結晶形態である、請求項に記載の化合物。
【請求項6】
インスリン抵抗性および/または糖尿病に罹患している患者における糖尿病合併症を処置または予防することにおいて使用するための請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物を含む組成物であって、該糖尿病合併症が、糖尿病患者における心血管合併症;糖尿病性腎症または糖尿病性網膜症;外傷、外科手術または心筋梗塞後のインスリン感受性の障害;メタボリックシンドローム、高インスリン血症、異常脂質血症および耐糖能低下;心血管疾患および/またはII型糖尿病を発現するリスク;アテローム性動脈硬化症、高脂血症、高コレステロール血症および/または高トリグリセリド血症または異常脂質血症;血管および腎臓への傷害;ならびに腎臓の損傷から選択される、組成物。
【請求項7】
糖尿病患者において心血管合併症を処置または予防することにおいて使用するための請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物を含む組成物
【請求項8】
前記糖尿病合併症が糖尿病性網膜症である、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/989,805号、2007年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/989,806号、2007年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/989,808号、および2007年1月18日に出願されたPCT出願番号PCT/US07/60724号の利益を請求し、これらの全体は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、PPAR活性を調節することができる2,4−ジフェニル−1,3−ジオキサン(本明細書では「PPARモジュレータ」とも呼ぶ)の特定の群に関する。本発明の置換1,3−ジオキサンは、PPAR調節に依存する疾病または状態、例えば、糖尿病、癌、炎症、神経変性疾患および感染の治療に有用である。本発明のジオキサンは、トロンボキサン受容体(トロンボキサンプロスタノイド受容体、すなわち、TP受容体)の活性の調節、特にその活性への拮抗、および/またはトロンボキサンシンターゼの阻害にも有用である。The IUPHAR compendium of receptor characterization and classification 1998の239頁およびThe Sigma−RBI Handbook 5th edition,Prostanoid receptors,2006の138−140頁に記載されている規約に従って、本明細書では、トロンボキサン受容体、トロンボキサンA2受容体またはプロスタグランジンH2受容体を、それぞれ、「TP受容体」と呼ぶ。本発明の好ましい化合物を、PPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよびトロンボキサンシンターゼ(TS)阻害剤とも呼ぶ。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核ホルモン受容体である。PPAR受容体は、レチノイドX受容体(RXRとして公知)とのヘテロ二量体の形で、ペルオキシソーム増殖因子応答要素(PPRE)として公知のDNA配列の要素に結合することによって転写を活性化する。ヒトPPARの3つのサブタイプが同定されており、以下に記載される:PPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよびPPAR−デルタ(またはNUCI)。PPAR−アルファは、主として肝臓において発現されるが、PPAR−デルタは至るところに存在する。PPARガンマは、脂肪細胞分化の調整に関係し、脂肪組織において大いに発現される。それはまた、全身の脂質の恒常性に関しても重要な役割を果たす。糖尿病の治療に利用されているチアゾリジンジオンを含めて、PPARの活性を調節する多数の化合物が同定されている。
【0004】
PPAR−ガンマサブタイプのDNA配列は、非特許文献1に記載されている。フィブラートおよび脂肪酸をはじめとするペルオキシソーム増殖因子は、PPARの転写活性を活性化する。
【0005】
PPARが、これらの核受容体を発現する細胞に関連した多彩な疾病または病的状態に密接に関係していることを例証する非常に多くの例が文献に提供されている。より具体的には、PPARは、血糖、コレステロールおよびトリグリセリドレベルを低下させるための方法において薬物ターゲットとして有用であり、従って、肥満およびアテローム性動脈硬化症(非特許文献2)をはじめとするX症候群(「メタボリックシンドローム」とも呼ばれる)(特許文献1、特許文献2、特許文献3;非特許文献3も参照)に関連したインスリン抵抗性、異常脂質血症および他の疾患、冠動脈疾患および一定の他の心血管疾患の治療および/または予防のために調査されている。さらに、PPARは、一定の炎症性疾患、例えば、皮膚疾患(非特許文献4)、胃腸病(特許文献4)または腎臓病(腎炎、腎硬化症、ネフローゼ症候群および高血圧性腎硬化症を含む)の治療のための潜在的なターゲットであることが明らかになった。同様に、PPARは、神経疾患(非特許文献5)もしくは痴呆において認知機能を改善するために、乾癬、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)を治療するために、または骨量減少、例えば骨粗しょう症(例えば、特許文献5もしくは特許文献6参照)を予防および治療するために有用である。
【0006】
従って、PPARは、治療用化合物の開発のための刺激的なターゲットである。疾病または病的状態を治療および/または予防するための様々な方法に関連して観察される反応は、期待の持てるものである。例えば、チアゾリジンジオン、TZD、薬物のクラス(例えば、ロシグリタゾンまたはピオグリタゾン)は、2型糖尿病を有する患者におけるインスリン感受性の改善に重要な役割を明白に果たす(非特許文献6参照)が、それらは、非常に多数の望ましくない副作用(例えば、体重増加、高血圧、心肥大症、血液希釈、肝毒性および浮腫;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11および非特許文献12参照)の発生のため、十分に満足のいく治療薬でない。それ故、PPAR核受容体を発現する細胞タイプに関連した疾病または病的状態の治療および/または予防が可能である新規の改善された生成物および/または新規の方法を特定することが望ましい。より具体的には、TZD誘導体で観察される副作用の大部分は、前記化合物の完全アゴニスト特性に起因し、従って、必ずしも完全アゴニストでない新規化合物を特定することが望ましい。
【0007】
トロンボキサン受容体は、血小板凝集に関係しており、血管収縮ならびに気管支および気管平滑筋収縮に関与している。特許文献7;特許文献8および特許文献9は、一定の4−フェニル−1,3−ジオキサン−5−イルアルケン酸誘導体の名を挙げ、トロンボキサン受容体アンタゴニストとしてのそれらの潜在的有用性を記載している。トロンボキサン受容体および/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)を調節するためのならびにそれらに関連した疾病を治療および予防するためのさらなる化合物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第97/25042号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/10813号パンフレット
【特許文献3】国際公開第97/28149号パンフレット
【特許文献4】国際公開第98/43081号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5,981,586号明細書
【特許文献6】米国特許第6,291,496号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第94239号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0266980号明細書
【特許文献9】米国特許第4,895,962号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Elbrechtら、BBRC 224;431−437(1996)
【非特許文献2】Duezら,2001,J.Cardiovasc.Risk,8,185−186
【非特許文献3】Kaplanら,2001,J Cardiovasc Risk,8,211−7
【非特許文献4】Smithら、2001,J.Cutan.Med.Surg.,5,231−43
【非特許文献5】Landreth and Heneka,2001,Neurobiol Aging,22,937−44
【非特許文献6】Cheng lai and Levine,2000,Heart Dis.,2,326−333
【非特許文献7】Haskinsら,2001,Arch Toxicol.,75,425−438
【非特許文献8】Yamamotoら,2001,Life Sci.,70,471−482
【非特許文献9】Scheen,2001,Diabetes Metab.,27,305−313
【非特許文献10】Gale,2001,Lancet,357,1870−1875
【非特許文献11】Formanら,2000,Ann.Intern.Med.,132,118−121
【非特許文献12】Al Salmanら,2000,Ann.Intern.Med.,132,121−124
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、PPAR(特に、PPARガンマ)、TP受容体およびトロンボキサンシンターゼ(TS)のうちの1つ以上、好ましくは3つすべての活性を調節することができる化合物に関する。加えて、本発明は、本明細書において下に明記する多数の臨床条件の治療におけるこれらの化合物の様々な使用に関する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
式Xの化合物:
【化28】

[式中、
Aは、1または2つの二重結合を任意に含有する、炭素数3から7の分岐または線状炭素鎖であり;および
Wは、COOH、C(O)NH− OH、NH、SOH、OSOH、芳香族基(COOH、OHもしくはNHで任意に置換されている)または−C(O)−Rdであり、ここで、
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)または糖類であり;および
Arは、フェニル、またはO−Rcで任意に置換されている5もしくは6員複素環式芳香族基であり、ここで、
Rcは、C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−C(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−CH(O)、糖類または−Hであり;および
Rbは、2〜6Cアルケニル、3個以下のハロゲノ置換基で任意に置換されている1〜8Cアルキル、糖類、ペンタフルオロフェニル、アリールまたはアリール(1〜4C)アルキルであり、これらのうちの後の2つは、ハロゲノ、(1〜6C)アルキル、分岐または線状(1〜6C)アルコキシ、(1〜4C)アルキレンジオキシ、トリフロオロメチル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、(2〜6C)アルカノイルオキシ、(1〜6C)アルキルチオ、(1〜6C)アルカンスルホニル、(1〜6C)アルカノイルアミノおよび炭素原子数2から4のオキサポリメチレンから選択される5個以下の置換基を任意に有することがある]。
(項目2)
Aが、1つのシス二重結合を含有する炭素数5の線状炭素鎖である、項目1に記載の化合物。
(項目3)
Wが、−C(O)Rdであり、Rdが、−OH、グリコシルまたは−O−CHである、前記項目のいずれかに記載の化合物。
(項目4)
Arが、そのオルト位において−O−Rcで置換されているフェニルであり、Rcが、メトキシ、−C(O)−CH、または−Hである、前記項目のいずれかに記載の化合物。
(項目5)
Rbが、そのオルト位においてハロゲノで置換されているフェニルである、前記項目のいずれかに記載の化合物。
(項目6)
式XIの化合物:
【化29】

[式中、
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフロオロメチル、置換フェニル、シアノ、メトキシ、ニトロ、ヒドロキシルおよび−Hから成る群より選択され;ならびに
Yは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフロオロメチル、置換フェニル、シアノ、メトキシ、ニトロ、ヒドロキシル、−C(O)−糖類および−Hから成る群より選択され;ならびに
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、糖類または−OHである]。
(項目7)
Xが、ハロゲノから成る群より選択される、項目6に記載の化合物。
(項目8)
Xが、クロロである、項目7に記載の化合物。
(項目9)
Xが、オルト位にある、項目7および8のいずれかに記載の化合物。
(項目10)
Yが、−OH、メトキシおよび−O−C(O)−CHから成る群より選択される、項目6から9のいずれかに記載の化合物。
(項目11)
Yが、オルト位にある、項目10に記載の化合物。
(項目12)
Rdが、−OHまたは−O−CHである、項目6から11のいずれかに記載の化合物。
(項目13)
式XIIIの化合物:
【化30】

[式中、
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフロオロメチル、任意に置換されているフェニル、シアノ、メトキシおよびニトロから成る群より選択され;ならびに
Rcは、C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−C(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−CH(O)、糖類または−Hであり;ならびに
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、グリコシルまたは−OHである]。
(項目14)
Xが、ハロゲノである、項目13に記載の化合物。
(項目15)
Xが、クロロである、項目14に記載の化合物。
(項目16)
Xが、オルト位にある、項目14および15のいずれかに記載の化合物。
(項目17)
Rcが、メトキシ、−C(O)−CHまたは−Hから成る群より選択される、項目13から16のいずれかに記載の化合物。
(項目18)
−O−Rcが、オルト位にある、項目17に記載の化合物。
(項目19)
Rdが、−Hまたは−O−CHである、項目13から18のいずれかに記載の化合物。
(項目20)
前記糖類が、グリコシル部分である、1、2、3、6、7、8、9、13、14、15および16のいずれかに記載の化合物。
(項目21)
前記化合物が、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸である、項目1に記載の化合物。
(項目22)
前記化合物が、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン.エン酸である、項目1に記載の化合物。
(項目23)
前記化合物が、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−アセトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン.エン酸である、項目1に記載の化合物。
(項目24)
前記化合物が、メチル−(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エノエートである、項目1に記載の化合物。
(項目25)
薬剤として使用するための、前記項目のいずれかに記載の化合物。
(項目26)
PPAR−ガンマ反応性臨床状態の治療の必要がある個体において該状態の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目27)
インスリン抵抗性の治療の必要がある個体においてインスリン抵抗性の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目28)
糖尿病の治療の必要がある個体において糖尿病の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目29)
肥満個体において糖尿病の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目30)
PPAR−ガンマによって媒介される慢性炎症性疾患の治療の必要がある個体において該疾患の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目31)
炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎またはクローン病の治療の必要がある個体において炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎またはクローン病の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目32)
関節炎、特に関節リウマチ、多発性関節炎または喘息の治療の必要がある個体において関節炎、特に関節リウマチ、多発性関節炎または喘息の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目33)
眼の炎症またはドライアイ疾患の治療の必要がある個体において眼の炎症またはドライアイ疾患の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目34)
皮膚疾患、特に乾癬、の治療の必要がある個体において皮膚疾患、特に乾癬、の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目35)
高脂血症の治療の必要がある個体において高脂血症の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目36)
癌の治療の必要がある個体において癌の治療のための薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目37)
前記癌が、脂肪肉腫、骨肉腫、前立腺癌、子宮頚癌、乳癌、多発性骨髄腫、膵臓癌、神経芽腫または膀胱癌である、項目36に記載の化合物。
(項目38)
PPAR媒介疾患または状態である対象における臨床状態の治療または予防に有用な薬剤組成物を調製するための、項目1〜24のいずれかにおいて定義した化合物の使用。
(項目39)
糖尿病、癌;炎症、AIDS、メタボリックシンドローム、肥満、前糖尿病、高血圧症および異常脂質血症から成る群より選択される臨床状態の治療または予防用の薬剤を調製するための、項目38に記載の化合物の使用。
(項目40)
PPAR媒介疾患または状態である臨床状態の治療または予防の必要がある個体において該状態を治療または予防する方法であって、項目1から24のいずれかに記載の化合物の治療有効量を該個体に投与することを含む方法。
(項目41)
前記臨床状態が、糖尿病、癌;炎症;AIDS、メタボリックシンドローム、肥満、前糖尿病、高血圧および異常脂質血症から成る群より選択される、項目40に記載の方法。
(項目42)
項目1から24のいずれかに記載の化合物を活性成分として含む、PPAR媒介疾患または状態である臨床状態を治療または予防するための医薬組成物。
(項目43)
前記臨床状態が、糖尿病、癌;炎症;AIDS、メタボリックシンドローム、肥満、前糖尿病、高血圧および異常脂質血症から成る群より選択される、項目42に記載の医薬組成物。
(項目44)
TPに関連した臨床状態の治療または予防の必要がある個体においてTPに関連した臨床状態の治療または予防用の薬剤として使用するための、項目1から24のいずれかに記載の化合物。
(項目45)
前記薬剤が、前記臨床状態を治療するためのものである、項目44に記載の化合物。
(項目46)
前記臨床状態が、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘発過形成、ステント誘導再狭窄、過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される、項目44および45のいずれかに記載の化合物。
(項目47)
前記臨床状態が、血栓症、肺高血圧症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、末梢動脈疾患、下肢循環、血栓形成、ステント誘発再狭窄、ステント誘発血栓形成、ステント誘発過形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される、項目44から46のいずれかに記載の化合物。
(項目48)
前記臨床状態が、血栓症、肺高血圧症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、血栓形成および過形成から成る群より選択される、項目44から47のいずれかに記載の化合物。
(項目49)
前記個体が、I型糖尿病およびII型糖尿病から選択される糖尿病に罹患している、項目44から48のいずれかに記載の化合物。
(項目50)
TPに関連した臨床状態の必要がある個体において該状態を治療または予防する方法であって、該個体へ項目1から24のいずれかに記載の化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
(項目51)
前記臨床状態が、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘発過形成、ステント誘導再狭窄、過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される、項目50に記載の方法。
(項目52)
項目1から24のいずれかに記載の化合物を活性成分として含む、TPに関連した臨床状態を治療または予防する必要がある個体において該状態を治療または予防するための医薬組成物。
(項目53)
前記臨床状態が、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘発過形成、ステント誘導再狭窄、敗血性ショック、子癇前症、喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される、項目52に記載の組成物。
(項目54)
項目1から24のいずれかに記載の化合物の遅延放出、調節放出、持続放出または制御放出のための医薬組成物。
(項目55)
少なくとも1つの放出速度モジュレータを含む、項目54に記載の組成物。
(項目56)
前記放出速度モジュレータが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンオキシド、クレモフォール、トウモロコシ油グリセリドおよびプロピレングリコール、キサンタンガム、カルボマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、水素化ヒマシ油、カルナバワックス、パラフィンワックス、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマーおよびその混合物、ならびにクレモフォール、トウモロコシ油グリセリドおよびプロピレングリコール
から成る群より選択される、項目55に記載の組成物。
(項目57)
式XIVの結晶性質化合物:
【化31】

[式中、
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフロオロメチル、任意に置換されているフェニル、シアノ、メトキシおよびニトロから選択され;ならびに
Rcは、C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−C(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−CH(O)、糖類または−Hであり;ならびに
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、グリコシルまたは−OHであり;
Z+は、対イオンである]。
(項目58)
Xが、ハロゲノである、項目57に記載の結晶性化合物。
(項目59)
Xが、クロロである、項目58に記載の結晶性化合物。
(項目60)
Xが、オルト位にある、項目58および59のいずれかに記載の結晶性化合物。
(項目61)
Z+が、MeCNH+である、項目57に記載の結晶性化合物。
(項目62)
前記塩が、溶媒和されておらず、銅放射線源から得たとき2θスケールで11±0.2°および20.9±0.2°から成る群より選択される少なくとも1つのピークを伴うX線粉末回折パターンを有する、項目57に記載の結晶性化合物。
(項目63)
式XIVの化合物:
【化32】

[式中、
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフロオロメチル、任意に置換されているフェニル、シアノ、メトキシおよびニトロから選択され;ならびに
Rcは、C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−C(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−CH(O)、糖類または−Hであり;
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、グリコシルまたは−OHであり;
Z+は、t−ブチルアミンである]
を含み;ならびに
t−ブチルメチルエーテル、イソプロピルアルコール、ニトロメタン、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される溶媒を含む、結晶溶媒和物。
(項目64)
前記溶媒が、イソプロピルアルコールである、項目64に記載の結晶溶媒和物。
(項目65)
塩1モルあたり1モル未満のイソプロピルアルコールを含む、項目64に記載の結晶溶媒和物。
(項目66)
銅放射線源から得たとき2θスケールで11±0.2°および20.9±0.2°にピークを伴うX線粉末回折パターンを特徴とする、項目65に記載の結晶溶媒和物。

【0011】
1つの態様において、本発明は、式Xの化合物:
【0012】
【化1】
に関し、この式中、
Aは、1または2つの二重結合を任意に含有する、炭素数3から7の分岐または線状炭素鎖であり;および
Wは、COOH、C(O)NH−OH、NH、SOH、OSOH、芳香族基(COOH、OHもしくはNHで任意に置換されている)または−C(O)−Rdであり、ここで、Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、糖類、または−OHであり;および
Arは、フェニル、またはO−Rcで任意に置換されている5もしくは6員複素環式芳香族基であり、ここで、Rcは、C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−C(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−CH(O)、糖類または−Hであり;および
Rbは、2〜6Cのアルケニル、3個以下のハロゲノ置換基で任意に置換されている1〜8Cのアルキル、糖類、ペンタフルオロフェニル、アリールまたはアリール(1〜4C)アルキルであり、これらのうちの後の2つは、ハロゲノ、(1〜6C)アルキル、分岐または線状(1〜6C)アルコキシ、(1〜4C)アルキレンジオキシ、トリフロオロメチル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、(2〜6C)アルカノイルオキシ、(1〜6C)アルキルチオ、(1〜6C)アルカンスルホニル、(1〜6C)アルカノイルアミノおよび炭素原子数2から4のオキサポリメチレンから選択される5個以下の置換基を任意に有することがある。
【0013】
加えて、本発明は、式XIの化合物:
【0014】
【化2】
に関し、この式中、
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフロオロメチル、置換フェニル、シアノ、メトキシ、ニトロ、ヒドロキシルおよび−Hから成る群より選択され;ならびに
Yは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフロオロメチル、置換フェニル、シアノ、メトキシ、ニトロ、ヒドロキシル、−C(O)−糖類および−Hから成る群より選択され;ならびに
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、糖類または−OHである。
【0015】
本発明は、さらに、式XIIIの化合物:
【0016】
【化3】
に関し、この式中、
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフロオロメチル、任意に置換されているフェニル、シアノ、メトキシおよびニトロから成る群より選択され;ならびに
Rcは、C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−C(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−CH(O)、糖類または−Hであり;ならびに
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、グリコシルまたは−OHである。
【0017】
これらの化合物は、例えば、メタボリックシンドローム、肥満、インスリン抵抗性、前糖尿病、糖尿病、異常脂質血症、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、乾癬、アトピー性皮膚炎、喘息および潰瘍性大腸炎、癌、例えば脂肪肉腫、神経芽腫、膀胱癌、乳癌、大腸癌、肺癌、膵臓癌および前立腺癌;炎症、感染、AIDSおよび創傷治癒から成る群より選択される臨床状態の治療または予防において有用であり得る。
【0018】
加えて、これらの化合物は、例えば、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘導再狭窄、過形成、ステント誘発過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択される臨床状態の治療および予防に有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】完全アゴニストおよび部分アゴニスト、それぞれによるPPAR活性化のモデルを図示する。
図2】PPAR−デルタ、PPAR−アルファおよびRxRと比較して、ロシグリタゾンおよび(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸によるPPARガンマの選択的活性化を図示する。
図3】ロシグリタゾンおよび(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸による完全長PPAR−ガンマの活性化を図示する。
図4】(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)ヘキサ−4−エン酸が、完全長PPAR−デルタのトランス活性化に対して効果を有さないことを図示する。
図5】部分PPAR−ガンマ競合アッセイの結果を図示する。
図6】PPAR−ガンマリガンド置換アッセイの結果を図示する。
図7】グルコース取込みアッセイの結果を図示する。
図8】化学式II〜Vを図示する。
図9】化学式VI〜VIIIを図示する。
図10】化学反応スキームIを図示する。
図11】(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)ヘキサ−4−エン酸のTBME溶媒和物のH NMRを図示する。
図12】(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)ヘキサ−4−エン酸のTBME溶媒和物のXRPD回折図を図示する。
図13】(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)ヘキサ−4−エン酸のエルブミン塩のH NMRを図示する。
図14】(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)ヘキサ−4−エン酸のエルブミン塩のXRPD回折図を図示する。
図15】(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)ヘキサ−4−エン酸のエルブミン塩のIPA溶媒和物のXRPD回折図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
一般に、本明細書において用いる用語は、製薬学、生物学および化学分野の通常の当業者が本発明を理解する上で利用するであろう標準的な定義に従うであろう。以下の用語は、与える意味を有し、ならびに他の用語を本明細書中で規定することもある。
【0021】
アルキル:用語「アルキル」は、指示された数、一般には1から22、の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族炭化水素ラジカルを指す。例えば、「1〜8Cアルキル」または「炭素数1〜8のアルキル」または「アルク(Alk)1〜8」は、その構造の中に1から8個の炭素を含有する任意のアルキル基を指すこととなる。アルキルは、直鎖(すなわち線状)である場合もあり、または分岐鎖である場合もある。低級アルキルは、炭素数1〜6のアルキルを指す。低級アルキルラジカルの代表例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、アミル、s−ブチル、t−ブチル、s−アミル、t−ペンチル、2−エチルブチル、2,3−ジメチルブチルなどが挙げられる。高級アルキルは、炭素数7以上のアルキルを指す。これらとしては、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどに加えて分岐したそれらの変型が挙げられる。炭素数3から7の線状炭素鎖は、分枝上に存する炭素を一切含まない鎖長を指すこととなる。このラジカルは、任意に置換されていることがある。
【0022】
アルケニル:用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し、且つ、指示された数の炭素原子を有する、一価の脂肪族炭化水素ラジカルを指す。例えば、「C2〜6アルケニル」または「炭素数1〜6のアルケニル」または「アルケニル1〜6」は、その構造の中に1から6個の炭素原子を含有するアルケニル基を指すこととなる。アルケニルは、直鎖(すなわち、線状)である場合もあり、または分岐鎖である場合もある。低級アルケニルは、炭素数1〜6のアルケニルを指す。低級アルケニルラジカルの代表例としては、エテニル、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、イソプロペニル、イソブテニルなどが挙げられる。高級アルケニルは、炭素数7以上のアルケニルを指す。これらとしては、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニル、1−ドデセニル、1−テトラデセニル、1−ヘキサデセニル、1−オクタデセニル、1−エイコセニルなどに加えて分岐したそれらの変型が挙げられる。このラジカルは、任意に置換されていることがある。
【0023】
アルコキシ:用語「アルコキシ」は、式RO−−の一価ラジカルを指し、ここで、Rは、本明細書中で定義するとおりのアルキルである。低級アルコキシは、炭素原子数1〜6のアルコキシ、すなわち(1〜6)アルコキシを指す。代表的な低級アルコキシラジカルとしては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、イソペンチルオキシ、アミルオキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、t−ペンチルオキシなどが挙げられる。このラジカルは、任意に置換されていることがある。
【0024】
アリール:本明細書において用いる場合、用語「アリール」は、単一の環または1つ以上の縮合環(そのうち少なくとも1つの環が実際は芳香族環である)から成る、5から15個の炭素原子を含有する一価芳香族炭素環式ラジカルを意味し、これは、特に他の指示がない限り、ヒドロキシ、チオ、シアノ、アルキル、アルコキシ、低級ハロアルコキシ、アルキルチオ、オキソ、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、およびジアルキルアミノアルキル、チオアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、カルバモイル、アルキルカルバモイルおよびジアルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノから独立して選択される1個以上、好ましくは1個または3個の置換基で任意に置換されていることがある。あるいは、アリール環の2個の隣接する原子が、メチレンジオキシまたはエチレンジオキシ基で置換されていることがある。従って、二環式アリール置換基がヘテロシクリルまたはヘテロアリール環と縮合していることもあるが、二環式アリール置換基の結合点は、炭素環式芳香族環上にある。アリールラジカルの例としては、フェニル、ナフチル、ベンジル、ビフェニル、フラニル、ピリジニル、インダニル、アントラキノリル、テトラヒドロナフチル、3,4−メチレンジオキシフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−イル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−7−イル、1,3ジオキソランラジカル、安息香酸ラジカル、フラン−2−カルボン酸ラジカル、2−(イソオキサゾル−5−イル)酢酸ラジカル、3−ヒドロキシ−2−メチルピリジン−4−カルボン酸ラジカルなどが挙げられる。
【0025】
ハロ:「ハロ」置換基は、クロロ、ブロモ、ヨードおよびフルオロから選択される一価ハロゲンラジカルである。「ハロゲン化」化合物は、1個以上のハロ置換基で置換されているものである。
【0026】
フェニル:「フェニル」は、ベンゼン環から水素を除去することによって形成されるラジカルである。フェニルは、任意に置換されていることがある。
【0027】
フェノキシ:「フェノキシ」基は、式RO−のラジカルであり、ここで、Rは、フェニルラジカルである。
【0028】
ベンジル:「ベンジル」基は、式R−CH−のラジカルであり、ここで、Rは、フェニルラジカルである。
【0029】
ベンジルオキシ:「ベンジルオキシ」基は、式RO−のラジカルであり、ここで、Rは、ベンジルラジカルである。
【0030】
複素環:「複素環」または「複素環エンティティー」は、炭素および少なくとも1個の他の元素、一般には窒素、酸素または硫黄を含有する5または6員の閉じた環の一価ラジカルであり、ならびに完全に飽和されている場合もあり、部分的に飽和されている場合もあり、または不飽和(すなわち、実際は芳香族)である場合もある。一般に、複素環は、2個以下のヘテロ原子を含有するであろう。ヘテロ原子を1個だけ有する不飽和5員複素環の代表例としては、2−または3−ピロリル、2−または3−フラニル、および2−または3−チオフェニルが挙げられる。対応する部分飽和または完全飽和ラジカルとしては、3−ピロリン−2−イル、2−または3−ピロリンジニル、2−または3−テトラヒドロフラニル、および2−または3−テトラヒドロチオフェニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を有する代表的な不飽和5員複素環式ラジカルとしては、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリルなどが挙げられる。対応する完全飽和及び部分飽和ラジカルも挙げられる。ヘテロ原子を1個だけ有する不飽和6員複素環の代表例としては、2−、3−または4−ピリジニル、2H−ピラニル、および4H−ピラニルが挙げられる。対応する部分飽和または完全飽和ラジカルとしては、2−、3−または4−ピペリジニル、2−、3−または4−テトラヒドロピラニルなどが挙げられる。2個のヘテロ原子を有する代表的な不飽和6員複素環式ラジカルとしては、3−または4−ピリダジニル、2−、4−または5−ピリミジニル、2−ピラジニル、モルホリノなどが挙げられる。対応する完全飽和および部分飽和ラジカル、例えば2−ピペラジン、も挙げられる。複素環式ラジカルは、その複素環内の利用可能な炭素原子またはヘテロ原子によってそのエンティティーに直接結合されるか、メチレンまたはエチレンなどのアルキレンのようなリンカーによって結合される。複素環は、アリール基と同じように任意に置換されていることがある。
【0031】
任意に置換されている:ラジカルを「任意に置換されている」と呼ぶ場合、それは、そのラジカルが非置換であること、またはそのラジカルの少なくとも1個のHが除去され、別の置換基がその場所に挿入されていることを意味する。前記ラジカルは、本発明の範囲内に入る化合物の調製に有意に干渉しない、およびそれらの化合物の生物活性に有意に悪影響を及ぼさない位置で、置換基で任意に置換されていることがある。前記ラジカルは、ハロ、低級アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロ低級アルキル、ハロ低級アルコキシ、ヒドロキシカルボニル、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルカルボニルオキシおよび低級アルキルカルボニルアミノから独立して選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で、または上で言及したように、任意に置換されている。
【0032】
用語「ヒドロキシカルボニル」は、式−C(O)OHを有する一価ラジカルである。
【0033】
用語「低級アルコキシカルボニル」は、式−C(O)Oアルクを有する一価ラジカルであり、ここで、アルクは、低級アルキルである。
【0034】
用語「低級アルキルカルボキシルオキシ」は、式−OC(O)アルクを有する一価ラジカルであり、ここで、アルクは、低級アルキルである。
【0035】
本明細書において用いる場合、用語「糖」または「糖類」は、交換可能に用いており、ならびに単糖類、二糖類または多糖類を意味する。適する単糖類としては、ペントース、ヘキソースまたはヘプトース残基が挙げられる。ペントースの非限定的な例としては、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、リキソースおよびキシルロースが挙げられる。ヘキソースの非限定的な例としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、フコース、マンノース、アロース、アルトロース、タロース、イドース、プシコース、ソルボース、ラムノースおよびタガトースが挙げられる。ヘプトースの非限定的な例としては、マンノヘプツロースおよびセドヘプツロースが挙げられる。糖部分は、アミドまたはエステル結合を形成することができるその糖環のいずれの位置で化合物に連結していてもよい。好ましい糖類は、ベータ−グリコシル糖類である。
【0036】
PPAR調節は、自然な状況、すなわち、リガンド不在の状態でのターゲット遺伝子のPPAR依存性転写の基礎レベルを参照することにより定義され、この場合、PPAR活性の調節は、PPAR活性を調節することができる化合物が存在する状態での前記基礎転写レベルの低下または増加によって表される。一般に、前記転写の増加は、PPAR活性の強化に随伴し、アクチベータまたはアゴニストという名で呼ばれている化合物に関係する。逆に、前記転写の減少は、PPAR活性の阻害に随伴し、阻害剤またはアンタゴニストという名で呼ばれている化合物に関係する。部分アゴニストは、ターゲット遺伝子のあるサブセットのPPAR依存性転写を生じさせるが、他のPPARターゲット遺伝子に対して効果がない化合物である。部分アゴニストは、生化学的または生理学的視点から考察することができる。部分アゴニストの生化学的視点は、完全アゴニストに競り勝つことができ、完全アゴニストに比べて低い転写活性レベルを有する化合物である。部分アゴニストの生理的視点は、遺伝子の異なるサブセットの活性化に関する(一部のターゲット遺伝子を完全に活性化したとしても、他のPPARターゲット遺伝子を活性化しない)。これは、完全アゴニストの一部の生理作用だけをもたらす結果となり、これは非常望ましい。
【0037】
化合物の「治療有効量」は、その必要がある対象に投与したとき、治療する状態について経時的に所望の結果を生じさせるであろう量を意味する。例えば、所望される効果は、PPAR調節およびそれに随伴する生物活性であり得る。
【0038】
本発明において有用な化合物を本出願において様々な式によって示す。式を見ることにより、それらの化合物が、多くの場合、1つ以上のキラル中心、すなわち4つの異なる基が付いている炭素、を有するであろうこと、およびこれらがエナンチオマーおよびジアステレオ異性体として存在し得ることがわかるであろう。加えて、一部の事例では二重結合の存在のため、化合物は、回転制約を有するであろう。従って、前記化合物は、幾何異性、すなわち、原子の空間的な配向の仕方が互いに異なり得る2つの形態を示す。二重結合に関しては、ジアステレオマーと呼ばれる立体異性体が存在する。ジアステレオマー(またはジアステレオ異性体)は、エナンチオマー(互いに鏡像)でない立体異性体である。本出願における化合物の命名には、R、Sシステムでエナンチオマーを命名する場合にするように二重結合のそれぞれの末端に結合している2個の基に優先番号を与える、ケミカルアブストラクトサービスシステムを用いている。より高い優先番号の2個の基が同じ側にあるとき、その分子は、Z異性体である。(ドイツ語−zusammen、一緒に)。両側にあるとき、その分子はEである(ドイツ語−entgegen、反対側の)。これらの式は、単独であろうと、または混合物の状態であろうと、可能なエナンチオマーおよびジアステレオマーのすべてを包含すると解釈するものと理解しなければならない。特定の立体化学を示す式は、示されている特定の立体異性体のみにあてはまると理解しなければならない。
【0039】
本発明における有用な化合物
本発明は、少なくとも1つのPPARサブタイプ、例えばPPARガンマまたはPPARベータ/デルタ、の活性を調節することができる化合物の同定に、一部、基づく。これらの化合物は、そのようなPPARの機能によって媒介される、ヒトなどの哺乳動物における状態または疾病を治療するために有用である。もう1つの実施形態において、本発明の化合物は、TP受容体の活性を調節することができる、特に、TP受容体活性に拮抗することができる。PPAR調節とTP受容体調節の両方を示す本発明の化合物を「PPAR/TP受容体モジュレータ」と呼ぶ。さらなる実施形態において、本発明の化合物は、トロンボキサンシンターゼ(TS)を阻害することができる。これらの活性のうちの2つまたは3つを示す化合物は、一部の用途、例えば、限定ではないが、糖尿病患者における心血管合併症の治療に、特に望ましい。
【0040】
本発明において有用である化合物は、1,3−ジオキサン誘導体またはそれらの医薬的に許容される塩であり、前記誘導体は、式I:
【0041】
【化4】
によって表され、この式中、
Aは、炭素数2から7、または3から7の、任意にそれぞれ1つまたは2つの二重結合(それぞれ、シスである場合もあり、またはトランスである場合もある)を含有する、分岐または線状炭素鎖であり;
Wは、COOH、OH、NH、SOH、OSOH、芳香族基(例えば、COOH、OHもしくはNHで任意に置換されている、フェニル、1−もしくは2−ナフチル、ピリジン、フラン、2−メチルピリジン(しかし、これらに限定されない))または2つの位置により連結される1,3ジオキソラン基であり;
Arは、フェニル、または5もしくは6員複素環式芳香族基、例えば、2−ピリジン、3−ピリジン、チオフェン、フラン、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニルおよび(4−メトキシフェノキシ)−フェニル(しかし、これらに限定されない)であり、前記フェニルおよびナフチル部分は、オルト、メタおよび/またはパラ位においてOHまたはOMeで任意に置換されており、好ましくは、置換されている場合にはオルト位においてOHまたはOMeで一置換されており;ならびに
RaおよびRbは、独立して、水素、2〜6Cアルケニル、3個以下のハロゲノ置換基を任意に有する1〜8Cアルキル、ペンタフルオロフェニル、アリールまたはアリール(1〜4C)アルキルであり[これらのうちの後の2つは、ハロゲノ、(1〜6C)アルキル、分岐または線状(1〜6C)アルコキシ、(1〜4C)アルキレンジオキシ、トリフロオロメチル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、(2〜6C)アルカノイルオキシ、(1〜6C)アルキルチオ、(1〜6C)アルカンスルホニル、(1〜6C)アルカノイルアミノおよび炭素原子数2から4のオキサポリメチレンから選択される5個以下の置換基を任意に有することがある]、またはRaおよびRbは一緒に、1個または2個の(1〜4C)アルキル置換基を任意に有する炭素原子数2から7のポリメチレンを形成する。
【0042】
一部の実施形態において、Aは、炭素数3から7の線状炭素鎖であり、Wは、COOHである。このような炭素鎖は、例えばC2−C3またはC3−C4の間の二重結合を含むことがある。
【0043】
1つの実施形態において、Raは、Hであり、ならびにRbは、芳香族部分、例えば、ハロゲン、OH、O−アルキル、アミノ、N−モノアルキル、N−ジアルキル(分岐している、または線状)、ニトロおよびチオアルキル(分岐している、または線状)から成る群より選択される5個以下の異なる置換基を有する、フェニル、ベンジル、2−または3−または4−ピリジン、フラン、ビフェニル、1−または2−ナフチルである。
【0044】
一部の実施形態において、誘導体は、2,4−ジフェニル−1,3−ジオキサン誘導体またはその医薬的に許容される塩であり、前記誘導体は、式II:
【0045】
【化5】
によって表され、この式中、Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、任意に置換されているフェニル、シアノ、メトキシおよびニトロから選択され、またはフェニル−X基は、任意に置換されているクロメン誘導体であり;ならびにYおよびZは、個々に水素またはハロゲノである。
【0046】
一般に、式Iによって表される誘導体中のジオキサン環の位置2、4および5の基は、シス相対立体化学を有するであろう。
【0047】
特に興味深いXを有するフェニル部分の他の特定の置換としては、例えば、Xが2−フルオロ−、2−クロロ−、2−ブロモ−、2−シアノ−、2−トリフルオロメチル−、3−フルオロ−、3−クロロ−、3−シアノ−、3−ニトロ−、3−メトキシ−、4−クロロ−、4−シアノ−、4−ニトロ−および4−メトキシ−フェニルである置換が挙げられる。
【0048】
Yについての好ましい置換は、水素またはフルオロであり、Zについては水素である。
【0049】
本発明において有用な化合物の好ましい群は、式III(下に記載)の化合物に加えてそれらの医薬的に許容される塩を含む:
【0050】
【化6】
(式中、Xは、2−クロロ、3−クロロ、2−シアノ、4−シアノ、3−ニトロおよび4−ニトロから選択され;ならびにジオキサン環の位置2、4および5の基は、シス相対立体化学を有する)。従って、式IIIの化合物は、下のエナンチオマーの両方を含む:
【0051】
【化7】
本発明は、A、WおよびArが上で定義したとおりであり、Raが、Hであり、およびRbが、アリール基または複素環、例えばそのアリール部分の1個の炭素原子が1個の酸素または窒素原子で置換されているもの、である、式Iの化合物も提供する。そのようなアリールおよび複素環基は、ハロゲン、OH、O−アルキル(分岐している、もしくは線状)、O−アリール、アミノまたはN−モノアルキルもしくはN−ジアルキル(分岐している、もしくは線状)もしくはN−モノアリールもしくはN−ジアリール、ニトロ、チオアルキル(分岐している、もしくは線状)、またはオキソ(例えば、表II中のSN13)から成る群より選択される3個の異なる置換基で任意に置換されていることがある。RaがHであり、およびRbが、O−アリールで置換されている複素環またはフェニル基である場合の、特に、Arがo位でOHまたはOMeによって置換されているフェニルであり、WがCOOHであり、およびAが1つの二重結合を有する5炭素線状鎖であるときの、式Iの化合物は、特に興味深い。そのような化合物の実例となる例としては、RaがHであり、Rbが、そのフェニルの2もしくはオルト位によりジオキサン環に連結される(4−メトキシフェノキシ)−フェニルである式Iの化合物、例えば(Z)−6−(−2−[4−メトキシフェノキシ−o−フェニル]−4−o−ヒドロキシフェニル−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)ヘキサ−4−エン酸];またはRbが、6−クロロ−4H−クロメン−4−オン(例えば、クロメン部分の3位によりジオキサン環に連結される)である式Iの化合物、例えば(Z)−6−(2−3−[6−クロロ−4H−クロメン−4−オン 6−クロロ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル]−4−(2−ヒドロキシフェニル−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、またはRbが、ビフェニル(ビフェニルの2もしくはオルト位によりジオキサン環に連結される)である式Iの化合物が挙げられる。従って、本発明は、この実施形態に引用する化合物およびそれらの医薬的に関連のある塩を、単独で、ならびに医薬用担体とのおよび任意にさらなる治療活性成分との組み合わせで提供する。
【0052】
式Iおよび式IIの化合物が、不斉炭素原子を有すること、ならびにラセミ形態および光学活性形態で存在および単離できることは、理解されるであろう。本発明は、PPAR活性を調節することができる、TP受容体活性に拮抗することできる、および/またはTSを阻害することができる、ラセミ形態と任意の光学活性形態(またはそれらの混合物)の両方、ならびにそれらのそれぞれの使用を包含し、本明細書において後で言及するアッセイのうちの1つ以上を用いて生物学的特性を標定する方法は、当該技術分野において周知である。
【0053】
文脈から別段明らかでない限り、本明細書において言及する化学式を特定の立体配置で示すことがあるが、これはその絶対配置に必ずしも対応しない。
【0054】
式IまたはIIの酸の特定に医薬的に許容される塩は、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム塩)、アルミニウムおよびアンモニウム塩、ならびに生理的に許容されるカチオンを形成する有機アミンおよび第四塩基との塩(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチレンジアミン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピペラジン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、t−ブチルアミンおよび水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムとの塩である。
【0055】
本発明の最も好ましい化合物は、PPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストもしくはTS阻害剤、またはこれらの活性のうちの2つ以上を示す化合物である。従って、式IXによって表される好ましい化合物は、これらの活性のうちの1つ以上で示すであろう。この場合、式IXは、
【0056】
【化8】
であり、この式中の置換基Ra、Rb、A、WおよびArは、式Iの化合物に関連して本明細書において上で定義したとおり、または上述のもののいずれかである。式IXの化合物のこの特定の立体化学は重要であり、前記式に示すとおりである。
【0057】
式IXのさらに好ましい化合物は、Raが−Hであるものを含み、PPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストもしくはTS阻害剤であるか、これらの活性のうちの2つ以上を示す化合物である。従って、好ましい化合物は、式X:
【0058】
【化9】
の化合物であり、この式中の置換基Rb、A、WおよびArは、式Iの化合物に関連して本明細書において上で定義したとおりである。式Xの化合物のこの特定の立体化学は重要であり、前記式に示すとおりである。
【0059】
好ましいPPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤は、以下の置換基を有する式Xの化合物である:
好ましくは、Rbは、ハロゲノ、(1〜6C)アルキル、分岐または線状(1〜6C)アルコキシ、(1〜4C)アルキレンジオキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、(2〜6C)アルカノイルオキシ、(1〜6C)アルキルチオ、(1〜6C)アルカンスルホニル、(1〜6C)アルカノイルアミノおよび炭素原子数2から4のオキサポリメチレンから成る群より選択される5個以下、好ましくは4個、さらに好ましくは3個、さらにいっそう好ましくは2個、さらにいっそう好ましくは1個の置換基で任意に置換されているフェニルである。さらに好ましくは、Rbは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、置換フェニル、シアノ、メトキシおよびニトロから成る群、好ましくは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびトリフルオロメチルから成る群より選択される1つの置換基で置換されているフェニルである。好ましくは、前記フェニルは、オルト位で置換されている。
【0060】
好ましくは、Arは、ハロゲノ、(1〜6C)アルキル、分岐または線状(1〜6C)アルコキシ、(1〜4C)アルキレンジオキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、(2〜6C)アルカノイルオキシ、(1〜6C)アルキルチオ、(1〜6C)アルカンスルホニル、(1〜6C)アルカノイルアミノおよび炭素原子数2から4のオキサポリメチレンから成る群、さらに好ましくは、−OH、(1〜6)アルコキシおよびハロゲノから成る群より選択される5個以下の置換基、好ましくは4個、さらに好ましくは3個、さらにいっそう好ましくは2個、さらにいっそう好ましくは1個の置換基で任意に置換されているフェニルである。さらにいっそう好ましくは、Arは、オルト、メタおよび/またはパラ位において−OHまたは−OMeで置換されている、しかし、好ましくはオルト位においてOHまたはOMeで一置換されているフェニルである。
【0061】
Aは、好ましくはシス二重結合である1つの二重結合を含有する炭素数3から7の、好ましくは炭素数5から6の、さらに好ましくは炭素数5の線状炭素鎖である。炭素数5から6の炭素鎖についての前記二重結合は、好ましくは、2位(すなわち、ジオキサン環から数えてC2とC3の間)に位置する。
【0062】
1つの実施形態において、本発明の好ましい化合物は、式Xを有する、PPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニスト、TS阻害剤またはそのような活性を2つまたは3つ有する化合物であり、この式中、
Aは、1つまたは2つの二重結合(それぞれ、シスである場合もあり、またはトランスである場合もある)を任意に含有する炭素数3から7の分岐または線状炭素鎖であり、好ましくは、Aは、好ましくはシス二重結合である1つの二重結合を含有する炭素数5から6の線状炭素鎖であり、さらにいっそう好ましくは、Aは、1つのシス二重結合を含有する炭素数5の線状炭素鎖であり;ならびに
Wは、COOH、C(O)NH−、OH、NH、SOH、OSOH、芳香族基(例えばCOOH、OHもしくはNHで任意に置換されている、フェニル、1−もしくは2−ナフチル、ピリジン、フラン、2−メチルピリジンなど(しかし、これらに限定されない))、2位により連結される1,3−ジオキサン基、または−C(O)−Rdであり、この場合のRdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)または糖類(好ましくは単もしくは多糖類、さらに好ましくは単糖類、さらにいっそう好ましくはグリコシル)または−OHであり、好ましくは、Wは、−C(O)−Rdであり、この場合のRdは、−OH、グリコシルまたは−O−CH、さらに好ましくは−OHまたは−O−CHであり;ならびに
Arは、フェニル、または5もしくは6員複素環式芳香族基、例えば2−ピリジン、3−ピリジン、チオフェン、フラン、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニルおよび(4−メトキシフェノキシ)−フェニルであり、前記フェニルおよびナフチル部分は、オルト、メタおよび/またはパラ位においてO−Rcで任意に置換されているが、好ましくは、置換されている場合にはオルト位においてO−Rcで一置換されており、この場合のRcは、C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−C(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−CH(O)、糖類(好ましくは単または二糖類、さらに好ましくは単糖類、さらにいっそう好ましくはグリコシル)または−Hであり、好ましくは、Arは、オルト位において−O−Rcで置換されているフェニルであり、この場合のRcは、メトキシ、−C(O)−CHまたは−Hであり;ならびに
Rbは、2〜6Cアルケニル、3個以下のハロゲノ置換基で任意に置換されている1〜8Cアルキル、糖類、ペンタフルオロフェニル、アリールまたはアリール(1〜4C)アルキルであり、これらのうちの後の2つは、ハロゲノ、(1〜6C)アルキル、分岐または線状(1〜6C)アルコキシ、(1〜4C)アルキレンジオキシ、トリフロオロメチル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、(2〜6C)アルカノイルオキシ、(1〜6C)アルキルチオ、(1〜6C)アルカンスルホニル、(1〜6C)アルカノイルアミノおよび炭素原子数2から4のオキサポリメチレンから選択される5個以下の置換基を任意に有することがあり、好ましくは、Rbは、ハロゲノで、さらにいっそう好ましくはクロロで、好ましくはオルト位において置換されているフェニルである。
【0063】
本発明の好ましいPPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤は、式XIの化合物:
【0064】
【化10】
であり、この式中、Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、置換フェニル、シアノ、メトキシ、ニトロ、ヒドロキシルおよび−Hから成る群より選択することができ、好ましくは、Xは、ハロゲノから成る群より選択され、さらに好ましくは、Xは、クロロであり、この場合、Xは、オルト、メタおよび/またはパラ位、好ましくはオルト位にあってよく;ならびに
Yは、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフロオロメチル、置換フェニル、シアノ、メトキシ、ニトロ、ヒドロキシル、−C(O)−糖類(好ましくは単もしくは二糖類、さらに好ましくは単糖類、さらにいっそう好ましくはグリコシル)および−Hから成る群より選択され、好ましくは、Yは、C1〜6アルキル−OH、−OH、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−OC(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)および−O−CH(O)から成る群より選択することができ、さらに好ましくは、Yは、−OH、メトキシおよび−O−C(O)−CHから成る群より選択され、この場合、Yは、オルト、メタおよび/またはパラ位、好ましくはオルト位にあってよく;ならびに
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、糖類(好ましくは単もしくは二糖類、さらに好ましくは単糖類、さらにいっそう好ましくはグリコシル)または−OHであり、好ましくは、Rdは、−OHまたは−O−CHである。
【0065】
1つの好ましい実施形態において、本発明のPPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤は、Rdが−OHである式XIの化合物である。これらの化合物は、一般式XII:
【0066】
【化11】
を有し、この式中、XおよびYは、本明細書において上で式XIの化合物について示したとおりである。式XIIの化合物のこの特定の立体化学は重要であり、前記式に示すとおりである。
【0067】
本発明の非常に好ましいPPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤は、式XIIIの化合物:
【0068】
【化12】
であり、この式中、
Xは、本明細書において上で式IIの化合物について指定したとおりであり、好ましくは、Xは、ハロゲノであり、さらに好ましくは、Xは、クロロであり、この場合、Xは、オルト、メタおよび/またはパラ位、好ましくはオルト位にあってよく;ならびに
Rcは、C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−C(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−CH(O)、糖類(好ましくは単または二糖類、さらに好ましくは単糖類、さらにいっそう好ましくはグリコシル)または−Hであり、好ましくは、Rcは、メトキシ、−C(O)−CHまたは−Hであり;ならびに
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、グリコシルまたは−OHであり、好ましくは、Rdは、−OH、グリコシルまたは−O−CHであり、さらに好ましくは、Rdは、−Hまたは−O−CHである。
【0069】
式XIIIの化合物のこの特定の立体化学は重要であり、前記式に示すとおりである。
【0070】
説明するために、(Z)−6−(2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)は、二重結合ジアステレオ異性体、シスおよびトランスを有する。下の実施例において試験した両方のエナンチオマーは、シス配置で二重結合を有する。ジオキサンの周りの3つの基のそれぞれが、互いに対して相対的にシス位にある場合もあり、またはトランス位にある場合もあり、ならびに合計8つの可能な組み合わせを生じさせ、3つすべての基がシス位にある、すなわち、置換基がすべて上にあるか、すべて下にある場合には2つだけの組み合わせを生じさせる。
【0071】
(Z)−6−((2R,4R,5S)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、3つの基をすべて下に有する:
【0072】
【化13】
(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、3つの基をすべて上に有し、これは、その生物活性に対して劇的な効果を有する:
【0073】
【化14】
非常に好ましい実施形態において、−O−Rc基は、オルト位に位置する。この実施形態において、好ましいPPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤は、式XIVの化合物:
【0074】
【化15】
であり、この式中、
X、ZおよびYは、本明細書において上で式IIの化合物について指定したとおりであり、好ましくは、Xは、ハロゲノであり、さらに好ましくは、Xは、クロロであり、この場合、Xは、オルト、メタおよび/またはパラ位、好ましくはオルト位にあってよく、ならびに好ましくは、ZおよびYは、両方とも−Hであり;ならびに
Rcは、C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−C(O)−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−CH(O)、糖類(好ましくは単または二糖類、さらに好ましくは単糖類、さらにいっそう好ましくはグリコシル)または−Hであり、好ましくは、Rcは、メトキシ、−C(O)−CHまたは−Hであり;ならびに
Rdは、−NH−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、−O−C1〜6−アルキル(分岐しているかもしくは線状、好ましくは線状)、糖類(好ましくは単または二糖類、さらに好ましくは単糖類、さらにいっそう好ましくはグリコシル)または−OHであり、好ましくは、Rdは、−OH、グリコシルまたは−O−CHであり、さらに好ましくは、Rdは、−Hまたは−O−CHである。
【0075】
式XIVの化合物のこの特定の立体化学は重要であり、前記式に示すとおりである。
【0076】
本発明の非常に好ましい化合物は、
(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、
(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、
(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−アセトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、および
メチル−(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エノエート
から成る群より選択することができる。
【0077】
従って、1つの好ましい化合物は、次の構造の化合物である:
【0078】
【化16】
もう1つの好ましい化合物は、次の構造の化合物である:
【0079】
【化17】
もう1つの好ましい化合物は、次の構造の化合物である:
【0080】
【化18】
(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エノエートメチル

もう1つの好ましい化合物は、次の構造の化合物である:
【0081】
【化19】
(Z)−6−((2S,4S,5R)−4−(2−アセトキシフェニル)−2−(2−クロロフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸

本発明の有用なPPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤は、上述の化合物のいずれかプロドラッグとして調製および投与することができる。本明細書に記載する本発明の化合物が、プロドラッグを作るためにプロ基(progroups)でマスクすることができる官能基を含むことができることは、当業者には理解されるであろう。そのようなプロドラッグは、通常、それらの活性薬物形態に転化されるまでは薬理学的に不活性であるが、そうである必要はない。本発明のプロドラッグの場合、任意の利用可能な官能性部分をプロ基でマスクしてプロドラッグを生じさせることができる。所望の使用条件下で開裂可能なプロ部分(promoieties)を生じさせるそのような官能基のマスキングに適する無数のプロ基は、当該技術分野において公知である。
【0082】
本明細書において用いる場合、用語「プロドラッグ」は、本発明の物質を生じさせるようにインビボで変換される物質を意味する。この変換は、血液中での加水分解によるものなどの様々なメカニズムによって発生し得る。例えば、本発明の化合物が、カルボン酸官能基を含有するとき、プロドラッグは、その酸基の水素原子を、例えば、(C〜C)アルキル、(C〜C12)アルカノイルオキシメチル、4から9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5から10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3から6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4から7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5から8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3から9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4から10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、ガンマ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、カルバモイル−(C〜C)アルキル、N,N−ジ(C〜C)アルキルカルバモイル−(C〜C)アルキルおよびピペリジノ−、ピロリジノ−またはモルホリノ(C〜C)アルキルなどの基をはじめとする(しかし、これらに限定されない)基で置換することによって形成されるエステルを含むことができる。プロドラッグは、−COOH基が糖類と反応してエステルを形成した化合物であってもよく、糖類は、好ましくは単または二糖類、さらに好ましくは単糖類、さらにいっそう好ましくはグルコースである。
【0083】
誘導体化することができる官能基、例えばフェノール系官能基、カルボン酸系官能基、チオール官能基など、を有する本発明の化合物の一部をプロドラッグの合成に使用することができる。本発明の化合物の例示的プロドラッグとしては、
【0084】
【化20】
が挙げられる。
【0085】
このようにして、選択される投与方式に特に合わせて作ったプロドラッグを得ることができる。改善された受動的腸吸収、改善された輸送媒介腸吸収、急速な代謝に対する保護(徐放性プロドラッグ)、組織選択的送達、ターゲット組織での受動的濃縮、特定の輸送体へのターゲッティングなどのような他の特性をプロドラッグに付与するように、プロドラッグを設計することもできる。これらの特性をプロドラッグに付与することができる基は周知であり、例えば、Ettmayerら(2004)J.Med.Chem.47:2393−2404に記載されている。これらの参考文献に記載されている様々な基のすべてを、本明細書に記載するプロドラッグに利用することができる。特に、フェノール基は、下に図示するように、リン酸エステル、アルキルエステルに転化させることができ、またはポリエチレングリコール(PEG)、アルキルオキシカルボニルオキシメチル(AOCOM)を使用して、もしくは立体障害アルコキシカルボニルメチルとして誘導体化することができる。
【0086】
【数1】
本発明の有用なPPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤としては、上述の化合物のいずれかの溶媒和物も挙げられる。
【0087】
本明細書において用いる場合、用語「溶媒和物」は、非共有結合性分子間力により結合された理論量または非理論量の溶媒をさらに含む本発明の任意の化合物またはその塩を意味する。好ましい溶媒は、揮発性であり、非毒性であり、および/または微量でのヒトへの投与に許容される。水和形態をはじめとする溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に包含される。
【0088】
本明細書において上で説明したように、本発明の好ましいPPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤は、上に記載したような特定の立体化学を有する。本発明のいずれの組成物も実質的にエナンチオマー純粋性化合物を含むことが好ましい。従って、本発明のPPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤は、少なくとも80%の光学純度、さらに好ましくは少なくとも90%、さらにいっそう好ましくは少なくとも95%、さらにいっそう好ましくは少なくとも98%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.5%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.8%、例えば、少なくとも99.9%、例えば本質的に100%、例えば100%の光学純度を有することが好ましい。
【0089】
式I、式II、式IX、式X、式XI、式XII、式XIIIおよび式XIVの化合物は、構造的に類似している化合物の製造についての当該技術分野において周知である有機化学の従来の手順によって製造することができる。そのような手順は、例えば、EP 0 094 239の4〜10頁(これは、本明細書に参照により特に取り入れている)に提供されており、ならびに本実施例セクションに記載する手順によっておよび以下ののプロセス(この場合、X、YおよびZは、本明細書において上で定義した意味のいずれかを有する)によってそのような手順を提供する:
(A)式IVのアルデヒドデヒドを、式RP=CH(CHCO(この場合、Rは、(1〜6C)アルキルまたはアリール(特にフェニル)であり、Mは、カチオン、例えば、アルカリ金属カチオン、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムカチオンである)のウィッティヒ試薬と反応させる。一部の実施形態では、前記アルデヒドを、P=CH(CHCOO(この場合、n=0から4)に変更した式のウィッティヒ試薬と反応させることとなる。
【0090】
一般に、このプロセスは、二重結合に隣接する置換基が主としてシス相対立体化学を有する(すなわち、「Z」異性体)式IIの必要化合物を生成する。しかし、このプロセスは、トランス相対立体化学を有する類似化合物も生成し、これは、所望される場合には、従来の手順、例えば、クロマトグラフィーまたは結晶化によって除去することができる。
【0091】
この合成手順は、適する溶媒または希釈剤、例えば、芳香族溶媒、例えばトルエンもしくはクロロベンゼン、エーテル、例えば1,2−ジメトキシエタン、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテルもしくはテトラヒドロフラン中で、ジメチルスルホキシドもしくはテトラメチレンスルホン中で、または1つ以上のそのような溶媒もしくは希釈剤の混合物中で、適便に行われる。一般に、このプロセスは、例えば−80℃から40℃の範囲の温度で行われるが、適便には、室温またはほぼ室温、例えば、0から35℃の範囲で行われる。
【0092】
(B)Rが、保護基、例えば(1〜6C)アルキル(例えば、メチルもしくはエチル)、アシル(例えば、アセチル、ベンゾイル、メタンスルホニルもしくはp−トルエンスルホニル)、アリル、テトラヒドロフラン−2−イル、トリメチルシリルであり、脱保護される、式Vのフェノール誘導体。
【0093】
用いる脱保護条件は、その保護基Rの性質に依存する。従って、例えば、それがメチルまたはエチルであるとき、適する溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン)中、例えば50から160℃の範囲の温度で、ナトリウムチオアルコキシド(水和物およびアルカンチオール)と共に加熱することによって脱保護を行うことができる。あるいは、適する溶媒(例えば、テトラヒドロフランまたはメチルt−ブチルエーテル)中、例えば0から60℃の範囲の温度で、リチウムジフェニルホスファイドと反応させることによって、エチルまたはメチル保護基を除去することができる。保護基がアシルであるとき、例えば、塩基(例えば、水酸化ナトリウムまたはカリウム)の存在下、適する水性溶媒[例えば、水性(1〜4C)アルカノール]中、例えば0から60℃の範囲の温度で加水分解することによって、それを除去することができる。保護基が、アリルまたはテトラヒドロピラン−2−イルであるとき、例えばトリフルオロ酢酸などの強酸で処理することによって、それを除去することができ、ならびにトリメチルシリルであるとき、例えば従来の手順を使用してフッ化テトラブチルアンモニウムまたはフッ化ナトリウム水溶液と反応させることによって、それを除去することができる。
【0094】
(C)QおよびQのうちの一方が水素であり、他方が、水素または式−−CRaRb.OH(この式中のRaおよびRbは、同じまたは異なる(1〜4C)アルキルである)の基である、式Vのエリスロ−ジオール誘導体を、式VIIのベンズアルデヒド誘導体またはそのアセタール、ヘミアセタールもしくは水和物と反応させる。
【0095】
ベンズアルデヒドVII[あるいはその水和物、または(1〜4C)アルカノール(例えば、メタノールまたはエタノール)でのそのアセタールもしくはヘミアセタール]は、適便には、過剰に存在し得る。
【0096】
一般に、この反応は、酸性触媒、例えば塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、ピリミジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)またはp−トルエンスルホン酸、の存在下、適便には、適する溶剤または希釈剤、例えば、トルエン、キシレンまたはエーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテルもしくは1,2−ジメトキシエタン、またはハロアルカン、例えばジクロロメタン(DCM)の存在下、例えば0から80℃の範囲の温度で行われる。
【0097】
およびQが両方とも水素である式VIの出発原料は、例えば、RaおよびRbが両方ともアルキル、例えばメチルまたはエチルである式VIIIの化合物(本明細書におけるプロセス(A)に類似した手順によって得られる)のジオキサン環を、緩酸を触媒として用いて加水分解またはアルコール分解することによって、得ることができる。通常、この加水分解またはアルコール分解は、アルカノール(例えば、エタノールもしくは2−プロパノール)中の塩酸などの無機酸水溶液、またはエーテル(例えば、テトラヒドロフラン)を溶媒として使用して、10から80℃の範囲の温度で行うことができる。
【0098】
およびQのうちの一方が水素であり、他方が、式−−CRaRb.OHである式VIの出発原料は、QおよびQが両方とも水素である式VIの出発原料についての上述の形成における中間体である。しかし、前記中間体は、通常、単離および特性付けしない。従って、プロセス(C)の有用な変形形態は、RaおよびRbのうちの一方が、水素、メチルまたはエチルであり、他方が、メチルまたはエチルである式VIIIの化合物を、酸性触媒(例えば、上に与えたもののうちの1つ)の存在下、適便には、例えば10から80℃の範囲の温度で、任意に適する溶媒または希釈剤(例えば、上に与えたもののうちの1つ)の存在下で、過剰な式VIIの化合物(またはその水和物、アセタールまたはヘミアセタール)と反応させることを含む。
【0099】
上のプロセスにおいて使用するための出発原料は、構造的に関連した化合物の調製について知られている有機化学の一般手順によって作ることができる。従って、式IVのアルデヒドは、例えば、スキームIに示す方法によって得ることができる。式Vの保護フェノール誘導体は、例えば、式IVのものに類似したアルデヒドを使用して上のプロセス(A)に類似した手順を用いて作ることができるが、アルデヒドなどの基Rで保護されているフェノールは、例えば、脱保護段階(ii)を省いてスキームIの手順を行うことによって作ってもよい。新規である式VIIIの出発原料は、欧州特許出願、公開番号94239に記載されているものに類似した手順を用いて得ることができる。
【0100】
必要なウィッティヒ試薬は、従来の手順によって、例えば、対応するハロゲン化ホスホニウムを強塩基、例えば水素化ナトリウム、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムt−ブトキシド、LiHMDSまたはブチルリチウム、で処理することによって得ることができる。一般には、上の縮合プロセス(A)を行う直前にインサイチューでそれらを形成する。
【0101】
式IおよびIIの化合物を、当該技術分野において周知の他の従来の手順によって、例えば、塩基を触媒として用いる対応するエステル、アミドまたはニトリルの加水分解によっても得ることができることは、理解されるであろう。
【0102】
式IまたはIIの化合物の塩が必要なとき、それは、生理的に許容されるカチオンをもたらす適切な塩基との反応によって、または他の従来の手順によって得られる。
【0103】
さらに、式Iもしくは式IIの化合物の光学活性形態が必要なとき、または式IX、X、XI、XII、XIIIもしくはXIV(すべて、特定の光学活性形態である)のいずれかの化合物を調製するとき、光学活性出発原料を使用して、上述のプロセスの1つを行うことができる。あるいは、式IIの化合物のラセミ形態、または式IX、X、XI、XII、XIIIもしくはXIVのいずれかの化合物およびそのエナンチオマー(単数もしくは複数)のラセミ混合物を、光学活性形態の適する有機塩基と反応させ、その後、そのようにして得られた塩のジアステレオ異性体混合物を、従来どおり分離すること、例えば、適する溶媒、例えば(1〜4C)アルカノールから分別結晶させ、その後、例えば希塩酸などの無機酸水溶液を使用する従来の手順を用いて酸で処理することにより光学活性形態の前記式IまたはIIの化合物を遊離させることができる。
【0104】
加えて、実施例29は、式IおよびIIの化合物のラセミ混合物をキラルクロマトグラフィーにより単離することができる方法を例証するものである。詳細には、実施例29は、エナンチオマーをラセミ混合物から単離することができる方法を説明するものである。この方法は、本発明の他の化合物の特定のエナンチオマーの調製に容易に適用することができる。
【0105】
前に述べたように、本明細書に記載する化合物は、PPAR活性のモジュレータである。従って、上で略述した構造特性に加えて、本発明の方法で用いるために好ましい化合物は、PPARアゴニスト、PPARアンタゴニストまたはPPAR部分アゴニスト、好ましくはPAR部分アゴニストでもある。PPARアゴニスト/アンタゴニスト/部分アゴニストとしての機能性を判定するための方法は、本明細書において下のセクション「化合物の機能性」で説明する。
【0106】
化合物の機能性
本発明の好ましい化合物は、PPARモジュレータ、詳細にはPPARガンマ選択的モジュレータ(完全または部分アゴニストもしくはアンタゴニスト、好ましくはアゴニスト)、TP受容体アンタゴニストもしくはTS阻害剤、またはこれらの特性のうちの2つ以上を示す化合物である、本明細書において上で説明した化合物のいずれかである。理論による拘束を望まないが、本発明者らは、TP受容体アンタゴニストであり、且つ、TP阻害剤である化合物が特に望ましいと考えている。これは、血小板凝集を阻害し、効力のある血管拡張剤として作用するPGI2のレベルを上昇させるからである。
【0107】
アゴニストおよびアンタゴニストは、効力/EC50/IC50値を左右するそれらの結合親和性によって、および化合物の飽和レベルの存在下で達成される活性のレベル、すなわち有効度によって特徴づけられる。部分アゴニスト/部分アンタゴニストも、その結合親和性および有効度によって特徴づけられる。従って、PPARの部分アゴニスト/部分アンタゴニストは、コグネイトPPARを完全に活性化することはできず、競合的に受容体から完全アゴニストをはずし、それによってトランス活性化レベルを減少させることができる。さらに、PPARの完全および部分アゴニストは、補因子の異なる補体を補充することができ、ならびに所与のPPARサブタイプに補充される補因子の性質は、所与のアゴニストによって活性化される遺伝子のパターンに大きな影響を及ぼし得る。
【0108】
PPARのリガンド結合ポケットは、他の核受容体と比較して大きく、これにより、PPARに結合することができ、PPARを活性化することができる化合物が非常に多様であることを、一部、説明することができる。3つのPPARサブタイプ間のリガンド認識には相当な重複部分があり、厳密に言えば、いずれのサブタイプ特異的リガンドもまだ同定されていない。しかし、幾つかの天然および合成リガンドは、大きな選択度を示し、今日、大部分の選択的リガンドは、個々のPPARサブタイプを活性化するために必要な濃度に関して3桁より大きく異なる。ステロイド核受容体についてのアゴニストに類似して、選択的PPARモジュレータ(SPPARM)という用語が導入された(本明細書では、「部分アゴニストまたはアンタゴニスト」とも呼ぶ)。このクラスのリガンドは、PPAR(単数または複数)に結合すると、異なる配座を取り入れて、異なるコアクチベータセットの補充をもたらす、部分アゴニスト/アンタゴニストを含む。原則として、SPPARMは、PPARターゲット遺伝子のサブセットだけを活性化することができ、それにより、望ましい遺伝子セットの特異的発現をことによると促進するであろう。完全アゴニストおよび部分アゴニストによるPPAR活性化のモデルを図1に与える。本発明の好ましい化合物は、部分PPARアゴニストである。
【0109】
PPAR調節活性は、当該技術分野において公知の任意の数の方法またはそれらの適応法によって容易に判定することができる。例えば、PPAR調節活性は、インビトロトランス活性化アッセイによって判定することができる。PPARガンマ調節活性を判定するための有用なトランス活性化アッセイの非限定的な例を本明細書において下の実施例22で説明し、ならびにPPARデルタ調節活性を判定するための有用なトランス活性化アッセイの非限定的な例を実施例23で説明する。下の実施例22は、PPAR−GAL4(DNA結合ドメイン)融合タンパク質をコードする構築物で、およびGAL4依存性レポーター構築物をコードする構築物でトランスフェクトした細胞に化合物を添加する方法を例証するものである。任意の数の可能な構築物を使用することができること、例えば、転写または異なるレポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質、ベータ−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなど)を活性化するための異なるDNA結合ドメインの使用、は通常の当業者には明らかであろう。判定が望まれるPPAR活性次第で、その構築物がそのPPARまたはそのリガンド結合ドメインを好ましくコードすることも、通常の当業者には明らかであろう。PPARの活性化に基づいて(すなわち、PPARアゴニストまたは部分アゴニストの存在下で)、PPARは、任意に定量的に、レポーター構築物をトランス活性化する。
【0110】
PPARモジュレータは、少なくとも1つのPPREを含む第二の核酸の制御下で作動可能に第一の核酸を含むレポーター遺伝子を使用して同定することもできる。前記第一の核酸は、好ましくは、レポータータンパク質、例えば蛍光タンパク質、ベータ−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、またはルシフェラーゼなどをコードする。前記レポーター構築物を、1つ以上のPPAR、例えばPPARガンマおよび/またはデルタ、を発現する細胞に挿入すべきである。このようにして、PPARアゴニストを、第一の核酸の転写を活性化することができる化合物として同定することができる。
【0111】
本発明の特定の実施形態によると、好ましい化合物は、PPARおよび/またはPPAR LBDアゴニストまたは部分アゴニストである。用語「PPAR LBD」は、PPARのリガンド結合ドメインを指す。好ましい実施形態によると、本発明の化合物および組成物は、PPARガンマおよび/またはPPARガンマLBDアゴニストである。「アゴニスト」は、細胞内受容体と併せたときにその受容体に特有の反応、例えば転写活性化活性、を刺激または増加させる化合物または組成物を意味する。1つの実施形態において、前記アゴニストは、PPARガンマアゴニスト、すなわち、PPARガンマ受容体の転写活性を、例えばその受容体の天然生理的リガンドを模倣することなどにより、強化、刺激、誘導あるいは増進させるPPARリガンドである。
【0112】
前記PPAR調節活性は、本明細書において上で説明したトランス活性化アッセイを用いて判定することができる。適する標準的アゴニストとしては、PPARガンマについてはロシグリタゾン、およびPPARデルタについては(4−[3−(2−プロピル−3−ヒドロキシ−4−アセチル)フェノキシ]プロピルオキシフェノキシ)酢酸(L165041、市販)が挙げられる。標準アゴニストの50%未満のトランス活性化を示す潜在的アゴニストは、特に、新規化合物もしくは活性誘導体の開発のため、または部分アゴニストの存在の指標として、なお有用であり得る。
【0113】
好ましい実施形態によると、本発明の化合物および組成物は、PPARおよび/またはPPAR LBD部分アゴニストであり、さらに詳細には、本発明の化合物および組成物は、PPARガンマおよび/またはPPARガンマLBD部分アゴニストである。可能な最大作用(すなわち、完全アゴニストまたは基準分子が生ずる最大作用)より小さい作用を生じさせる薬物を部分アゴニストと呼ぶ。
【0114】
例えば、本発明の化合物および組成物の部分アゴニスト特性は、完全アゴニストであるロシグリタゾン(Avandia(商標)、Glaxo−SmithKline)を参照することによって定義することができる。これは、特に、PPARガンマ部分アゴニストについての場合である。本発明の部分PPARアゴニスト、特にPPARガンマアゴニストは、望ましい治療を受けている患者に対して同様のまたはより良好な効能をもたらすであろうが、その患者にとって有害であろう少数の望ましくない副作用を有するであろう。例えば、SN1(DPD)は、1mMでのAvandiaと同じグルコース取込みレベルを10mMで誘導するが、より低い脂肪細胞分化の結果として、より少ない副作用が予想される。
【0115】
本発明の化合物および組成物の部分アゴニスト特性は、L165041(市販)を参照することによって定義することもできる。これは、特に、PPARデルタ部分アゴニストについての場合である。例えば、1つのそのようなトランス活性化アッセイは、実施例23において説明するトランス活性化アッセイである。
【0116】
1つの実施形態において、本発明の化合物は、PPARの活性に対して選択的であることが好ましい。そのような実施形態では、本化合物が、RxRおよび/またはRxR LBDトランス活性化を有意に活性化しないことが好ましく、好ましくは、RxR転写は、バックグラウンドレベルの2倍未満、例えば、バックグラウンドレベルの1.5倍未満、例えば、バックグラウンドレベルとほぼ等しいか、それより小さい。RxRトランス活性化は、例えば実施例25において説明するような、RxRトランス活性化アッセイによって判定することができる。バックグラウンドレベルは、付加リガンド不在の状態でのトランス活性化である。
【0117】
本発明の1つの実施形態において、本化合物は、PPARアンタゴニストである。「アンタゴニスト」は、PPARと併せたときに該PPARに特有の反応、例えば転写活性化、に干渉するまたは反応を減少させる化合物を意味する。一般的な定義として、「PPARアンタゴニスト」は、対応するPPARアゴニストの活性を阻害することができるPPARリガンドを示す。さらに一般的には、これらのアゴニスト/アンタゴニスト/部分アゴニスト活性は、当業者に幅広く知られているアッセイ、例えば、WO99/50664またはWO96/41013に開示されているものによって測定することができる。
【0118】
本発明の非常に好ましい実施形態において、PPARモジュレータは、PPAR結合に関して、多くとも25μM、好ましくは多くとも20μM、さらにいっそう好ましくは多くとも10μM、例えば、多くとも5μMのIC50を有する。本発明のこの実施形態の中で、好ましいPPARは、PPARγであり、ならびに非常に好ましいPPARモジュレータは、PPARγ結合に関して、多くとも25μM、好ましくは多くとも20μM、さらにいっそう好ましくは多くとも15μM、例えば、多くとも12μMのIC50を有するPPARγモジュレータである。IC50は、当業者に公知の任意の適する方法によって決定することができる。
【0119】
本発明の化合物および組成物は、PPAR活性の調節による影響を受ける状態または疾病を有する患者に投与したときのそれらの生物活性によってさらに特徴づけられる。本発明の好ましい化合物は、その必要がある患者において次の生物学的エンティティー:グルコース、トリグリセリド、脂肪酸、コレステロール、および胆汁酸など、のうちの1つ以上を、当該技術分野において公知の分子(例えば、チアゾリジンジオン)と比較して、等価またはより良好な有効度および効力で、しかし、より低い毒性および/またはより少ない望ましくない副作用発生で、低下させることができる化合物である。特に、前記化合物は、好ましくは、脂肪細胞分化および体重増加をあまり誘導することとならない。そのような化合物は、特に、本明細書において上のセクションCに記載した化合物のうちのいずれかであり得る。脂肪細胞分化を判定するために有用な方法は、本明細書において下の実施例26で説明する。さらに具体的には、それらは、インスリン抵抗性に対して有益な活性をもたらし(血漿グルコースレベルを低下させるインスリンの有効性を減少させる)および/または脂肪生成に対して有益な活性をもたらす。PPARガンマを活性化する多くの化合物(例えば、チアゾリジンジオン)は、脂肪細胞の分化をさらに誘導し(すなわち、脂肪生成作用、すなわち脂質生成作用を示し)、それ故、治療する患者の体重を増加させる結果となることが明らかになった。従って、そのような化合物の次の世代が、活性減少を示す、好ましくはそのような活性を欠くことは、非常に望ましいことである。これらの活性は、当該技術分野において幅広く用いられている方法を用いて正当に評価することができる。さらに具体的には、これらの活性は、ロシグリタゾンなどの当該技術分野において既に同定されている分子を参照して正当に評価される。本発明の好ましい実施形態によると、好ましい化合物は、インスリン抵抗性に関してロシグリタゾン特性の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、さらに好ましくは少なくとも約70%、およびさらにいっそう好ましくは少なくとも80%を示し、これは、例えば、インスリン抵抗性に罹患している患者におけるグルコースレベルを判定することによって判定することができる。理想的には、それは100%以上であろう。本発明のもう1つの好ましい実施形態によると、好ましい化合物は、脂肪細胞分化に対するロシグリタゾン特性の約80%未満、好ましくは約50%未満、さらに好ましくは約40%未満、およびさらにいっそう好ましくは約30%未満を示す。理想的には、これは、脂肪細胞分化に対するロシグリタゾン特性の20%未満であろう。脂肪細胞分化は、例えば、本明細書において下の実施例26で説明するように判定することができる。非常に好ましい実施形態において、好ましい化合物は、上述の特性の両方を有する。あるいは、それらの化合物は、トランス活性化アッセイにおいて判定してロシグリタゾンのものの少なくとも50%程度にPPAR活性を誘導することができ、脂肪分化に対しては上述の特性を示す。
【0120】
本発明の非常に好ましい実施形態において、PPARモジュレータは、個体における次の生物学的エンティティーから成る群より選択される1つ以上の、例えば2つ、3つまたは4つの特性を低下させることができる:血清グルコース、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、フルクトスアミン、インスリン、遊離脂肪酸(FFA)、トリグリセリド(TG)、低い高密度リポタンパク質(HDL)および総コレステロール。さらにいっそう好ましくは、PPARモジュレータは、個体における次の生物学的エンティティーの1つ以上、好ましくは少なくとも2つ、さらに好ましくは3つすべてを低下させることができる:血清グルコース、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)および遊離脂肪酸(FFA)。
【0121】
特に、好ましいPPARモジュレータは、0.1から100mg/kg/日の範囲、例えば、0.5から70mg/kg/日の範囲、例えば、0.5から7.5mg/kg/日の範囲、例えば5mg/kg/日の投薬量での個体へのそのPPARモジュレータの投与が、投与後7から365日の範囲内、例えば、7から180日の範囲、例えば、7から90日の範囲、例えば7から30日の範囲、例えば14日以内に、血清グルコースを少なくとも10%、例えば、少なくとも15%、例えば、少なくとも20%、例えば、少なくとも24%減少させる結果となるものである。
【0122】
加えて、好ましいPPARモジュレータは、0.1から100mg/kg/日の範囲、例えば、0.5から70mg/kg/日の範囲、例えば、0.5から7.5mg/kg/日の範囲、例えば5mg/kg/日の投薬量での個体へのそのPPARモジュレータの投与が、投与後7から365日の範囲内、例えば、7から180日の範囲、例えば、7から90日の範囲、例えば7から30日の範囲、例えば14日以内に、HbA1Cを少なくとも0.2%、例えば少なくとも0.5%、例えば少なくとも1%、例えば少なくとも2%減少させる結果となるものである。健常な患者におけるHbA1c値についての基準範囲は、約4%〜5.9%であり、治療の必要がある患者にPPARモジュレータを投与するとき、6.5%〜7%より低い値が望まれる。
【0123】
加えて、好ましいPPARモジュレータは、0.1から100mg/kg/日の範囲、例えば、0.5から70mg/kg/日の範囲、例えば、0.5から7.5mg/kg/日の範囲、例えば5mg/kg/日の投薬量での個体へのそのPPARモジュレータの投与が、投与後7から365日の範囲内、例えば、7から180日の範囲内、例えば、7から90日の範囲、例えば7から30日の範囲、例えば14日以内に、FFAを少なくとも10%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも22%減少させる結果となるPPARモジュレータである。健康な患者におけるFFA値についての基準範囲は、約0.28〜0.89mmol/リットルであり、治療の必要がある患者にPPARモジュレータを投与すると、この範囲に対する低下/正規化が望まれる。
【0124】
加えて、好ましいPPARモジュレータは、0.1から100mg/kgの範囲、例えば、0.5から70mg/kgの範囲、例えば、0.5から7.5mg/kgの範囲、例えば5mg/kgの投薬量での個体へのそのPPARモジュレータの投与が、投与後7から365日の範囲内、例えば、7から180日の範囲、例えば、7から90日の範囲、例えば7から30日の範囲、例えば14日以内に個体における体重の有意な増加を生じさせないPPARモジュレータである。「体重の有意な増加」は、1%より大きい、例えば2%より大きい、例えば3%より大きい、例えば4%より大きい、例えば5%より大きい、例えば6%より大きい、例えば7%より大きい体重増加である体重変化を意味する。
【0125】
加えて、好ましいPPARモジュレータは、0.1から100mg/kgの範囲、例えば、0.5から70mg/kgの範囲、例えば、0.5から7.5mg/kgの範囲、例えば5mg/kgの投薬量でのそのPPARモジュレータの投与が、個体における1日あたりの食事摂取量を有意に変化させる結果とならないPPARモジュレータである。「平均食事摂取量の有意な変化」は、体重によって判定した場合の1日の食事摂取量の10%より大きい、例えば、12%より大きい、例えば、14%より大きい、例えば、16%より大きい変化を意味する。
【0126】
加えて、好ましいPPARモジュレータは、0.1から100mg/kgの範囲、例えば、0.5から70mg/kgの範囲、例えば、0.5から7.5mg/kgの範囲、例えば5mg/kgの投薬量での個体へのそのPPARモジュレータの投与が、個体において次の生物学的エンティティーのうちの1つ以上、好ましくは少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば4つすべてを有意に増加させる結果とならないPPARモジュレータである:ヘマトクリット、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアルカリンホスファターゼ(ALP)。「有意な増加」は、30%より大きい、例えば20%より大きい、例えば10%より大きい、例えば5%より大きい増加を意味する。健常な患者におけるヘマトクリットについての基準範囲は、0.41〜0.50(無単位)であり、ASTについては、10〜30U/L、10〜40U/L、およびALPについては30〜120U/Lであり、治療の必要がある患者にPPARモジュレータを投与するとき、これらの範囲に対するこれらの値の低下/正規化が望まれる。
【0127】
このセクションにおける上述のすべての個体は、任意の個体、例えば、PPARモジュレータの投与が必要な個体、例えば、本明細書中の他の箇所で述べるPPAR関連臨床状態のうちの1つ以上に罹患しているヒトであり得る。しかし、前記個体は、検体検査用動物、例えばマウスであってもよい。このセクションにおける上述のすべての増加および減少は、一般に、前記PPARモジュレータを投与していない同様の個体で得られる値に関連して判定される。生物学的エンティティーの上述の減少および増加の判定に適する方法の非限定的な例は、本明細書において下の実施例32で説明する。
【0128】
望ましくない副作用、例えば血液希釈、浮腫、脂肪細胞分化または肥満、のインビボでの発生は、例えばEP1267171に記載されている方法を用いて、前記化合物の補因子補充プロフィールによる影響を受け得る。従って、本発明の1つの実施形態において、好ましい化合物は、望ましくない副作用のインビボでの発生が少ないと予測される化合物である。
【0129】
PPARガンマなどの核受容体が、ターゲット遺伝子のプロモーター領域におけるコグネイト配列に結合することにより、ならびに活性がクロマチンリモデリング、ヒストンおよび補因子修飾から塩基転写機械の補充にわたる非常に多数の補因子複合体を補充することによって、転写活性化または抑制を達成することは、広く認められている(Glass,& Rosenfeld,2000,Genes Dev.,14,121−141)。これらの補因子は、核受容体の作用の特異性を大いに左右することがあり、ならびに固有の編成が特異的細胞応答をもたらす刺激のネットワークにそれらの作用を統合することができる。それ故、それぞれの核受容体が参加する多数の協力関係を時間および細胞タイプの関数として決定することにより、転写調節に関する核受容体の活性をより良好に理解することができよう。例えば、エストロゲンなどの一定のホルモンの場合、ホルモンの応答が、それぞれの核ホルモン受容体の存在により、その受容体と相互作用する補因子の存在によるのとほぼ同じ程度に決まることは公知である。様々なPPAR補因子が同定されている。一部の補因子、例えば、p300/CBP(Dowellら,1997,J.Biol.Chem.272,33435−33433)、SRC−1(Onateら,1995,Science 270,1354−1357)、TIF2(GRIP−2;Chakravartiら,1996,Nature,383,99−103)、SRA(Lanzら,1999,Cell,97,17−27)、AIB−1(Anzickら,1997,Science,277,965−968)、TRAP220/DRIP205(すなわちPBP;Zhuら,1997,J.Biol.Chem.272,25500−25506;Rachezら,1999,Nature,398,824−828)、PGC−1(Puigserverら,1998,Cell 92,829−839)、PRIP(Zhuら,2000,J Biol Chem 275,13510−13516)、PGC−2(Castilloら,1999,Embo J,18,3676−3687)、ARA70(Heinleinら,1999,J Biol Chem 274,16147−16152)、RIP140(Treuterら,1998,Mol Endocrinol 12,864−881)は、それらの転写活性を増進させ、これに対してSMRT(Lavinskyら,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95,2920−2925)およびN−CoR(Dowellら,J Biol Chem 274,15901−15907)は、それを抑制する。加えて、PPARガンマ補因子ファミリーのメンバー(例えば、160kDaタンパク質(SRC−1/TIF2/AIB−1)、CBP/p300またはTRAP220/DRIP205)は、PPARガンマと直接相互作用し、リガンド依存式に核受容体トランス活性化機能を強化して、生物学的作用または副作用(これは、使用するリガンドによって異なり得る)をもたらすことが明らかになった(Adamsら,1997,J.Clin.Invest.,100,3149−3153)。Koderaら(2000,J Biol Chem.,275,33201−33204)は、PPARガンマと公知補因子との相互作用が、異なるクラスのPPARガンマリガンド(天然または合成)によって同程度に誘導されるかどうかを試験し、PPARガンマと補因子の複合体の総合的構造は関与するリガンドによって異なり、その結果、異なる生物学的作用を発揮するターゲット遺伝子プロモータの特定のセットを活性化することができると結論づけた。
【0130】
PPAR部分アゴニストは、特定のコアクチベータ補充プロフィールを有するであろう。従って、特定のコアクチベータ補充プロフィールを有する化合物が好ましい。従って、特別な実施形態によると、本発明の化合物および組成物は、限られた補因子(単数または複数)補充パターンによってさらに特徴づけられる。好ましい実施形態において、前記パターンは、前記核受容体の転写活性の調節に対して特異な影響をもたらし、それによって、特定の代謝プロセスの活性化および望ましくない副作用の排除をもたらす超微調整調節が可能となる。より特異な実施形態において、本発明の化合物および組成物は、さらに、PPAR受容体、さらに好ましくはPPAR受容体LBDと補因子TIF2の相互作用を阻害することができる。もう1つの実施形態によると、加えて、本発明の化合物および組成物は、PPAR受容体、さらに好ましくはPPAR受容体LBD、と補因子SRC−1との相互作用を増進させることができる。好ましくは、前記PPAR受容体は、PPARガンマ受容体である。
【0131】
リガンドによる補因子補充の阻害および/または増進を測定するための方法は、EP1267171において詳述されている。
【0132】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は、PPARガンマに結合すると、そのLBDにSRC1を補充することができ、このEC50は、TIF2についてのものより少なくとも1ログ大きく、少なくとも2ログが好ましい。
【0133】
本発明の1つの実施形態において、PPAR受容体の天然生理的リガンド、特にPPARガンマ受容体のもの、に対するそれらのアゴニスト、特に部分アゴニスト、またはアンタゴニスト特性に起因して好ましい化合物は、PPAR媒介転写制御の生物学的作用をおよびそれらによって生じる付随的生理作用を制御するための医薬として役立つことができる。より具体的には、それらは、随伴する病状を減少させるようにまたは予防をもたらすもしくは増進させるように細胞の生理機能を調節することができる。
【0134】
本発明のさらにもう1つの実施形態において、好ましい化合物は、1つより多くのPPAR、例えばPPARガンマとPPARデルタの両方、のアゴニスト(または好ましくは部分アゴニスト)である化合物である。そのようなアゴニストは、例えば本明細書において説明するような、PPARガンマおよびPPARデルタそれぞれについてのトランス活性化アッセイによって、同定することができる。PPARガンマおよびPPARデルタ活性を判定するための非限定的な方法は、本明細書においてそれぞれ下の実施例27および28で説明する。
【0135】
本発明の1つの実施形態において、本発明の好ましい化合物は、トロンボキサン受容体(TP)に結合することができ、例えば、ヒト組換えHEK−293細胞におけるトロンボキサン受容体に結合することができる。特に、本発明の化合物は、トロンボキサン受容体に100nM未満、さらに好ましくは50nM未満、さらにいっそう好ましくは30nM未満、例えば20nM未満、例えば10nM未満、例えば5nM未満、例えば1nM未満のIC50で結合することができ、好ましい。加えて、100nM未満、さらに好ましくは50nM未満、さらにいっそう好ましくは20nM未満、例えば10nM未満、例えば5nM未満、例えば1nM未満のKiでトロンボキサン受容体に結合することができる本発明の化合物が好ましい。好ましくは、上述のIC50およびKiは、本明細書において下の実施例35で説明するように決定される。
【0136】
好ましいTP受容体モジュレータは、TP受容体アンタゴニストである。TP受容体の生理機能としては、血小板凝集、血管収縮および気管支収縮の制御である(The IUPHAR compendium of receptor characterization and classification 1998,239頁、およびThe Sigma−RBI Handbook 5th edition,Prostanoid receptors,2006,138−140頁を参照のこと)。従って、TP受容体のアンタゴニストである、本発明の好ましいPPAR/TPモジュレータは、血小板凝集増加、血管収縮増加および気管支収縮増加、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、IgA腎症、肝臓症候群、糖尿病性腎症、網膜症、糖尿病性網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移、ステント誘発血栓形成、ステント誘導再狭窄ならびにステント誘発過形成のうちの1つ以上によって特徴づけられる臨床状態の治療に有用である。
【0137】
さらなる実施形態において、本発明の化合物は、トロンボキサンシンターゼ(TS)活性の阻害剤である(すなわち減少させる)。トロンボキサンは、血小板凝集、血管収縮および気管支収縮の制御に関与し、従って、トロンボキサンシンターゼの阻害は、血小板凝集増加、血管収縮増加および気管支収縮増加のうちの1つ以上によって特徴づけられる臨床状態の治療にも有用である。トロンボキサンシンターゼ活性は、当業者に公知の任意の有用な方法によって判定することができる。1つの有用な方法を本明細書において下の実施例34で説明する。本発明の非常に好ましい化合物は、本明細書において下の実施例34で説明するヒト血小板トロンボキサンシンターゼアッセイを用いると、少なくとも10μMの濃度でトロンボキサンシンターゼを少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、例えば少なくとも50%阻害することができる。また、本発明の非常に好ましい化合物は、本明細書において下の実施例34で説明するヒト血小板トロンボキサンシンターゼアッセイを用いると、トロンボキサンシンターゼを、多くとも10,000nM、好ましくは多くとも9000nM、さらにいっそう好ましくは多くとも8000nM、さらにいっそう好ましくは多くとも7500nM、例えば多くとも7100nMのIC50で阻害することができる。
【0138】
本発明の好ましい化合物は、血小板凝集を阻害することができる。特に、0.01から100μMの範囲、好ましくは1から30μMの範囲、例えばおよそ1μM、例えばおよそ8μM、例えばおよそ16μM、例えばおよそ30μM、例えば約1μM、または約8μMの濃度で、血小板凝集を少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらにいっそう好ましくは少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%、例えばおよそ100%、例えば100%阻害することができる(すなわち、血小板凝集が増加した状態でその化合物が血小板凝集を正規化するであろう)化合物が、好ましい。好ましくは、血小板凝集は、実施例34において説明するようにして判定する。
【0139】
本発明の好ましい化合物は、血栓症の誘導後の閉塞時間(例えば、血栓症促進物質、例えばFeClと接触している状態であってもよい)、すなわち、動脈が閉塞される(血流0%になる)前の時間、を増加させることができる。従って、本発明の化合物を投与すると、動脈が閉塞される前の閉塞時間が、化合物を投与しなかった場合の閉塞時間と比べて増加される。さらにいっそう好ましくは、本発明の化合物は、本明細書において下の実施例33で説明するマウス血栓症モデルにおいて、閉塞時間を増加させることができる。本発明の好ましい化合物は、100mg/kgの投与後に閉塞時間を平均で少なくとも7分、好ましくは少なくとも8分、さらに好ましくは少なくとも9分、さらにいっそう好ましくは少なくとも10分に増加させることができる。
【0140】
特に好ましい実施形態において、本発明の好ましい化合物は、本明細書において上で説明した特性のうちの1つより多くを示す。
【0141】
臨床状態
本発明は、上述の化合物(好ましくは、上述のPPAR/TP受容体、TSモジュレータ、好ましくは、式IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVの化合物のいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)の投与を含む臨床状態の治療方法に、ならびに臨床状態の治療するための薬剤を調製するための前記化合物およびそれらの化合物の塩および溶媒和物の使用に関する。
【0142】
本明細書において上で説明したPPARモジュレータ、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)は、体重管理に利用することができる。従って、前記臨床状態は、1つの実施形態において、摂食障害、例えば、神経性食欲不振(本明細書では「食欲不振」と略記する)または過食症である場合がある。本明細書において上で開示した化合物(好ましくは、上で説明したPPARモジュレータのいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)は、体重を増加または減少させるための、特に、体重を減少させるための方法にも利用することができる。従って、前記臨床状態は、肥満である場合がある。肥満症は、脂肪組織の過剰蓄積である。最近の調査により、PPAR、特にPPARガンマは、遺伝子発現および脂肪細胞分化に関して中心的な役割を果たすことが明らかになった。PPARガンマサブタイプは、脂肪細胞分化の活性化に関与するが、肝臓におけるペルオキシソーム増殖の刺激にはあまり重要な役割を果たさない。一般に、PPARガンマの活性化は、脂肪細胞特異的遺伝子発現を活性化することによって脂肪細胞分化に寄与する(Lehmann,Moore,Smith−Oliver,Wilkison,Willson,Kliewer,J.Biol.Chem.,270:12953−12956,1995)。従って、PPARアゴニストを使用して、脂肪組織を増すことができる。脂肪組織の過剰蓄積の治療に有用な特性のためにPPAR部分アゴニストを選択してもよい。
【0143】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、本明細書において上で説明した化合物のいずれか(好ましくは、上で説明したPPARモジュレータのいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)をその必要がある個体に投与することによる、インスリン抵抗性を治療するための方法に関する。本発明は、インスリン抵抗性の治療のための薬剤を調製するための、前記化合物のいずれか(好ましくは、上で説明したPPARモジュレータのいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)の使用にも関する。加えて、本発明は、前記化合物(好ましくは、上で説明したPPARモジュレータのいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)の投与によるインスリン感受性を増加させるための方法、ならびにインスリン感受性を増加させるための薬剤を調製するための前記化合物の使用に関する。インスリン感受性の急性および一過性疾患、例えば、外傷、外科手術または心筋梗塞後に発生し得るものは、本明細書において教示するように治療することができる。
【0144】
インスリン抵抗性は、多くの臨床状態に関与する。インスリン抵抗性は、広範な濃度にわたってその生物学的作用を発揮するインスリンの能力の低下によって顕示される。インスリン抵抗性の初期段階の間、身体は、この欠陥を補うために異常に高いインスリン量を分泌する。たとえ血中インスリンレベルが慢性的に高かったとしても、インスリンに対する活性筋細胞の代謝応答障害のために、それらはグルコースを有効に吸収することができない。インスリン抵抗性および結果として生ずる高インスリン血症は、幾つかの臨床状態、例えば、メタボリックシンドローム(X症候群とも呼ばれる)の一因となり得る。メタボリックシンドロームは、高インスリン血症、異常脂質血症および耐糖能低下を引き起こす第一インスリン抵抗性段階によって特徴づけられる。メタボリックシンドロームを有する患者は、心血管疾患および/またはII型糖尿病を発現するリスクが高いことが明らかになった。
【0145】
以下の基準のうちの少なくとも3つにあてはまるとき、患者をメタボリックシンドロームに罹患していると述べる:
−ウエスト周囲によって測定される(男性の場合は102cmより大きい、および女性の場合は94cmより大きい)ような中心性/腹部肥満
−150mg/dL(1.69mmol/L)以上の絶食時トリグリセリド
−HDLコレステロール[男性−40mg/dL(1.04mmol/L)未満;女性−50mg/dL(1.29mmol/L)未満]
−130/85mmHg以上の血圧
−110mg/dL(6.1mmol/L)以上の絶食時グルコース。
【0146】
インスリン抵抗性は、脂質生産に対して負の影響も及ぼし、血流中のVLDL(超低密度リポタンパク質)、LDL(低密度リポタンパク質)およびトリグリセリドレベルの増加、ならびにHDL(高密度リポタンパク質)低下の一因となる。これは、動脈内の脂肪性プラーク蓄積を招くことがあり、経時的にそれがアテローム性動脈硬化症につながることがある。従って、本発明の臨床状態は、高脂血症、例えば家族性高脂血症である場合がある。好ましくは、高脂血症は、高コレステロール血症および/または高トリグリセリド血症によって特徴づけられる。前記臨床状態は、異常脂質血症および糖尿病性異常脂質血症も包含し得る。ここに含まれる化合物(好ましくは、上で説明したPPARモジュレータのいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)は、血清トリグリセリドレベルを低下させるために、またはHDLの血漿中レベルを上昇させるために利用することもできる。
【0147】
インスリン抵抗性は、血液中の過剰なインスリンおよびグルコースレベルをもたらすことがある。過剰なインスリンは、腎臓によるナトリウム貯留を増加させることがあり、それ故、本発明の方法は、腎臓によるナトリウム貯留を減少させるために利用することができる。高いグルコースレベルは、血管および腎臓を損傷させることがある。それ故、本発明の方法は、血管および腎臓への傷害を予防するために利用することができる。
【0148】
本発明のもう1つの実施形態において、臨床状態は、PPARガンマによって媒介される炎症性疾患である。用語「PPARガンマによって媒介される」は、PPARガンマがその状態の発現に関してある役割を果たすと理解すべきである。例えば、PPARガンマは、急性炎症などの好中球活性化に関連した炎症に関しては役割を果たさないと考えられる。理論による拘束を望まないが、PPARガンマのアゴニストは、KFκB媒介転写に直接関係し、それを阻害する、および従って、様々な炎症反応、例えば、誘導性亜酸化窒素シンターゼ(NOS)およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の酵素経路などを調節することにより、有効な抗炎症薬である場合がある(Pineda−Torra,I.ら,1999,Curr.Opinion in Lipidology,10,151−9)。
【0149】
例えば眼の炎症(J Biol Chem.2000 Jan 28;275(4):2837−44)またはドライアイ疾患(J Ocul Pharmacol Ther.2003 Dec;19(6):579−87)などの炎症性疾患は、急性である場合もあり、または慢性である場合もある。慢性炎症性疾患の実例となる例としては、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、またはクローン病が挙げられる。慢性炎症性疾患は、関節炎、特に関節リウマチおよび多発性関節炎である場合もある。慢性炎症性疾患は、炎症性皮膚疾患、特に尋常性ざ瘡、アトピー性皮膚炎、バリア機能不全を伴う皮膚疾患、加齢または乾癬、特に乾癬の皮膚作用である場合もある。慢性炎症性疾患は、炎症性神経変性疾患、例えば、多発性硬化症またはアルツハイマー病である場合もある。前記臨床状態は、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎炎症候群、および高血圧性腎硬化症をはじめとする、胃腸疾患および腎疾患である場合もある。
【0150】
本発明のもう1つの実施形態において、前記臨床状態は、PPARガンマの活性化に反応する癌である。従って、前記臨床状態は、例えば、PPAR反応性細胞の異常細胞成長によって特徴づけられる疾患、例えば、脂肪組織において発生する増殖性または腫瘍性疾患、例えば、脂肪細胞腫瘍、例えば脂肪腫、線維脂肪腫、脂肪芽細胞腫、脂肪腫症、冬眠腺腫、血管腫、および/または脂肪肉腫である場合がある。さらに、前立腺、胃、肺および膵臓の一定の癌は、PPARガンマアゴニストでの治療に反応することが立証された。特に、一定の脂肪肉腫、前立腺癌、多発性骨髄腫および膵臓癌が、PPARガンマの活性化に反応することは証明されており、これに対して、少なくとも一部の結腸直腸癌および乳癌は、反応しない(Rumiら,2004,Curr.Med.Chem.Anti−Canc Agents,4:465−77)。神経芽腫および膀胱癌はもちろん、他の乳癌および大腸癌がPPARアゴニストに反応することが、他の研究によって立証された。癌の治療のためのPPARリガンドの使用は、Levy Kopelovich,2002,Molecular Cancer Therapeutics,357によって概説されている。
【0151】
しかし、たとえ癌の一定のタイプがPPARガンマでの活性化に反応することができたとしても、所与のタイプのすべての癌が反応するとは言えない。特に、癌ではPPARガンマの機能欠失型突然変異が発生することが多く、そのような癌は、一般に、反応しない。それ故、癌が機能性PPARガンマを発現することは好ましいことである。
【0152】
前記臨床状態は、感染、例えば、ウイルス感染、特にAIDSまたはHIVによる感染もしくはC型肝炎ウイルスによる感染である場合もある。加えて、本発明のPPARリガンドは、神経疾患におけるもしくは痴呆症における認知機能の改善に、または多嚢胞性卵巣症候群の治療に、または骨量減少、例えば骨粗しょう症の予防もしくは治療に有用であり得る。
【0153】
前記臨床状態は、C型肝炎ウイルス感染に関係があろうと、なかろうと、しかし、好ましくはPPAR調節に反応する、肝疾患、特にC型肝炎ウイルスによる感染、または脂肪肝、肝臓の炎症、肝臓障害、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎、または肝後性癌である場合もある。
【0154】
前記臨床状態は、マルファン症候群である場合もある。
【0155】
説明の多くがPPARガンマに関係しているが、本発明の化合物および方法は、PPARガンマの調節に限定されない。実際、他のPPARサブタイプが疾病において重要な役割を果たすことは、当業者には明らかであろう。加えて、トロンボキサン受容体がPPAR関連疾患において重要な役割を果たすことも当業者には明らかであろう。例えば、PPARデルタは、脂質代謝障害および創傷治癒、特に表皮創傷治癒に関連付けられている(Soon Tanら,2004,Expert Opinion in Molecular Targets,39)。それ故、前記臨床状態は、上皮創傷治癒をはじめとする創傷治癒である場合もある。
【0156】
インスリン増感剤、例えばグリタゾンは、インスリン抵抗性の治療に使用されているが、インスリン感受性を増進する一方で、それらは、体重を減少させるのではなく増加させもする。肥満および身体無活動状態は、インスリン抵抗性を悪化させる。グリタゾン(チアゾリジンジオンまたはTZD)は、脂肪組織、肝臓および筋肉におけるインスリン感受性を改善することによって作用する。前記薬剤での治療は、糖尿病の幾つかの動物モデルにおいて試験されており、血糖低下反応の発生を一切伴わずに高い血漿グルコース、トリグリセリドおよび非エステル化遊離脂肪酸レベルを完全に補正する結果となった(Cheng Lai and Levine,2000,Heart Dis.,2,326−333)。これらのチアゾリジンジオンの例は、ロシグリタゾン、ピオグリタゾンおよびトログリタゾンである。しかし、魅力的な治療効果をもたらす一方で、これらの化合物には、血液希釈(浮腫を含む)、肝毒性、体重増加(脂肪細胞分化増加からの体脂肪増加、血漿量増加、および心肥大症を含む)、小さいが有意なLDL−コレステロール増加および貧血をはじめとする非常に多数の重度の望ましくない副作用がある(論評については、Lebovitz,2002,Diabetes Metab.Res.Rev,18,Suppl 2,S23−9を参照のこと)。実際、多数の利用可能な糖尿病治療薬は、体重増加、この疾病の長期管理には非常に有意な問題、を随伴する。それ故、肥満、糖尿病ならびに通常随伴する疾患、例えば心血管疾患および肝臓病の管理に用いることができる、代替の、より有効な治療薬が、多いに必要とされている。
【0157】
従って、1つの実施形態において、本発明は、
i.肥満および糖尿病に罹患している、または
ii.糖尿病になる、および肥満になるリスクがある、または
iii.肥満に罹患しており、糖尿病になるリスクがある、または
iv.糖尿病に罹患しており、肥満になるリスクがある、
個体に本発明の化合物(好ましくは、上で説明したPPARモジュレータのいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)を投与することによる肥満と糖尿病の同時治療および/または予防に関する。
【0158】
本発明は、肥満と糖尿病の同時治療および/または予防のための薬剤を調製するための本発明の化合物(好ましくは、上で説明したPPARモジュレータのいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)ならびにそれらの化合物の塩および溶媒和物の使用にも関する。前記化合物は、本明細書において上で説明した化合物のいずれか、好ましくは、上で説明したPPARモジュレータのいずれか、さらに好ましくは、式IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVの化合物のいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸であり得る。この実施形態の中で、糖尿病は、好ましくはII型糖尿病である。前記糖尿病になるリスクがある個体は、例えば、本明細書において上で説明したメタボリックシンドロームに罹患している個体である。前記肥満になるリスクがある個体は、例えば、体重増加の副作用を有する抗糖尿病化合物での治療を受けている個体である場合もある。
【0159】
本発明は、その必要がある個体におけるトロンボキサンに関連した臨床状態の治療または予防、好ましくは治療のための薬剤を調製するための、上で説明した化合物のいずれか、さらに好ましくは、式IXの化合物、例えば式Xの化合物、例えば式XIの化合物、例えば式XIIの化合物、例えば式XIIIの化合物、例えば式XIVの化合物のいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、ならびにそれらの化合物の塩および溶媒和物の使用にも関する。前記臨床状態は、血小板凝集、血管収縮および/または気管収縮の増加によって特徴づけられる臨床状態である場合がある。前記臨床状態は、例えば、心筋梗塞、血栓症、血栓性疾患、ステント誘発血栓形成、ステント誘導再狭窄、ステント誘発過形成、肺高血圧症、アテローム性動脈硬化症、家族性高コレステロール血症、川崎病、心室中隔欠損症、IgA腎症、肝腎症候群、肝線維症、糖尿病性腎症、網膜症、糖尿病性網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、肺塞栓症、血栓形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移から成る群より選択することができる。トロンボキサン(TP)に関連した臨床状態は、心筋梗塞、アンギナ、不安定狭心症、卒中、一過性脳血管虚血、片頭痛、アテローム性動脈硬化症、細小血管障害、高血圧、血液凝固障害、ワルファリン節減状態(例えば、外科手術前)、肺塞栓症、気管支喘息、気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、呼吸困難および肺気腫から成る群より選択することもできる。1つの好ましい実施形態において、前記臨床状態は、血栓症、肺高血圧症、糖尿病性腎症、腎障害の遅延(特に、糖尿病患者における)、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、血栓形成、ステント誘発血栓形成、ステント誘導再狭窄、ステント誘発過形成、過形成、敗血性ショック、子癇前症、鼻炎、アレルギー性鼻炎、腫瘍血管新生および転移からなる群より、好ましくは、血栓症、肺高血圧症、糖尿病性腎症、網膜症、末梢動脈疾患、下肢循環、血栓形成および過形成から成る群より選択される。異なるメカニズムによって作用するアスピリン、クロピドロゲル、ワルファリンおよび他の類似の薬剤に耐性の個体は、本明細書において説明する化合物での治療による恩恵を特に受ける。さらに、前記個体は、TPに関連した上述の臨床状態のいずれかに罹患しているまたは罹患するリスクがある任意の個体である場合があり、好ましくは、前記個体は、TPに関連した上述の臨床状態のいずれかに罹患しているまたは罹患するリスクがあるヒトであり、さらにいっそう好ましくは、前記個体は、TPに関連した上述の臨床状態のいずれかに罹患しているまたは罹患するリスクがあることに加えて糖尿病に罹患している個体である。
【0160】
1つの実施形態において、本発明は、血栓症を既に有する、1つ以上の血栓性事象に罹患した、または1つ以上の血栓性事象に罹患している個体における血栓症の治療に関し、前記方法は、上で説明した化合物のいずれか、さらに好ましくは式IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVの化合物のうちのいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸の前記個体への投与を含む。
【0161】
本発明は、臨床状態の治療または予防のための薬剤を調製するための、上で説明した特定の化合物のうちのいずれか(好ましくは、上で説明した化合物のいずれか、さらに好ましくは、式IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVの化合物のうちのいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)の使用にも関する。前記臨床状態は、メタボリックシンドローム、異常脂質血症、肥満、真性糖尿病、インスリン抵抗性または上で説明したインスリン抵抗性に関連した状態のいずれか、高血圧、心血管疾患、冠動脈再狭窄、自己免疫疾患(例えば、喘息、多発性硬化症、乾癬、局所皮膚炎、および潰瘍性大腸炎)、癌、炎症、創傷治癒、脂質代謝障害、肝疾患(例えば、C型肝炎ウイルスによる感染、またはC型肝炎ウイルスに関係があろうと、なかろうと、脂肪肝、肝臓の炎症、肝臓障害、肝硬変または肝後性癌)、胃腸または腎疾患(例えば、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎炎症候群、または高血圧性腎硬化症)、感染(特に、ウイルス感染)、認知機能障害(例えば、神経障害または痴呆)、多嚢胞性卵巣症候群、骨量減少(例えば、骨粗しょう症)およびAIDSから成る群より選択することができる。
【0162】
癌は、任意の癌、例えば、次のうちのいずれであってもよい:癌腫、肉腫、骨肉腫、白血病およびリンパ腫;腫瘍血管新生および転移;骨格形成異常;肝疾患;ならびに造血性および/または骨髄増殖性疾患。例示的疾患としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛上皮腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星上細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、または網膜芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前記癌は、PPARガンマの活性化に反応する上述の癌のうちの1つである。
【0163】
心血管疾患は、例えば、アテローム発生、アテローム性動脈硬化症またはアテローム硬化性疾患、血管再狭窄、心筋症もしくは心筋線維症、または上述の心血管疾患のいずれかであり得る。
【0164】
炎症は、例えば、慢性炎症、好ましくは、本明細書において上で述べた慢性炎症のいずれかであり得る。
【0165】
真性糖尿病は、多数の原因因子に由来する疾病プロセスを指し、高い血糖レベル、すなわち高血糖によって特徴付けられる。管理されていない高血糖は、罹患率および死亡率増加ならびに時期尚早の罹患率および死亡率を随伴する。少なくとも2つのタイプの真性糖尿病が特定されている:(i)インスリン(正常生理条件下でグルコース利用を調節するホルモン)の完全欠如の結果である、I型糖尿病、またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)、および(ii)II型糖尿病、またはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)。NIDDMは、多数の原因因子に由来する複合疾患であり、任意に循環インスリンレベルを増加させることによりこれに対処することができる。
【0166】
医薬調合物および投与方法
本発明の方法および組成物に従って、本明細書において説明する化合物(好ましくは、上で説明したPPARモジュレータ、TPアンタゴニストおよび/またはTS阻害剤、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)のうちの1つ以上を、当業者にはわかるであろうが、選択された投与経路に依存する様々な形態で、哺乳動物に投与することができる。本発明の組成物は、経口的に、経鼻的に、局所的に、肺投与により、または非経口的に投与することができ、最後に述べた経路は、静脈内および皮下経路を含む。非経口投与は、選択された期間にわたる持続注入によるものであってもよい。
【0167】
注射可能な使用形態としては、滅菌水溶液または水性分散液、および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。すべての場合、前記形態は無菌でなければならず、且つ、容易に注射できる程度に流動性でなければならない。
【0168】
患者による投与の容易さのため、経口または他の非観血的投与様式、例えば、パッチおよび坐剤などが好ましい。本化合物は、不活性希釈剤と共にもしくは同化性可食担体と共に経口投与することができ、またはハードもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに封入することができ、錠剤に圧縮することができ、または食事の食べ物に直接混ぜることができる。経口治療投与については、化合物を賦形剤と混ぜ、経口摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップおよびウェハースなどの形態で使用することができる。
【0169】
本発明の1つ以上の化合物を含有する組成物は、リポソームと呼ばれるリン脂質小胞内に収容された溶液またはエマルジョンの状態で投与することもできる。前記リポソームは、単相である場合もあり、または多層である場合もあり、ならびにホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルコリンおよびこれらの組み合わせから選択される成分で構成される。多層リポソームは、単相小胞に類似した組成の多層小胞を含むが、溶液またはエマルジョン中の化合物を捕捉する多数の区画を生じさせるように作製される。加えて、他のアジュバントおよび修飾剤、例えば、ポリエチレングリコールまたは他の材料をリポソーム製剤に含めてもよい。
【0170】
組成物を含有するリポソームは、リポソームの表面に固定された抗体をそれらの送達をターゲッティングするために有するといった修飾を有することもある。
【0171】
本発明の1つの実施形態には、上のセクション「臨床状態」で説明した臨床状態のうちの1つを治療するためのインビボでの投与に適する生体適合性形態で対象に投与するための医薬組成物があり、前記方法は、単独でまたは他の薬剤および/もしくは医薬用担体との組み合わせで化合物の安全で有効な量を含む。例えば、本発明の化合物を、異常脂質血症に対して有効な薬剤、例えば、フィブラートクラスの薬物、例えばベザフィブラートと併用して、インスリン抵抗性および/または糖尿病を治療することができる。一部の他の薬剤の例は、インスリン増感剤、PPARγアゴニスト、グリタゾン、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、BRL 49653、ビグアニド、メトホルミン、フェンホルミン、インスリン、インスリン模倣物、スルホニルウレア、トロブタミド、グリピジド、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、アカルボース、コレステロール低下剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、ロバスタチン、シンバスタチン、パラバスタチン、フルバスタチン、アトロバスタチン、リバスタチン、他のスタチン、金属封鎖剤、コレスチラミン、コレスチポール、架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体、ニコチニルアルコール、ニコチン酸:ニコチン酸塩、PPARアルファアゴニスト、フェノフィブリン酸誘導体、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート、コレステロール吸収阻害剤、ベータ−シトステロール、アクリルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、メリナミド、プロブコール、PPARデルタアゴニスト、抗肥満化合物、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンチラミン、スルビトラミン、オルリスタット、神経ペプチドY5阻害剤、βアドレナリン作動性受容体アゴニスト、および回腸胆汁酸輸送体阻害剤である。
【0172】
本組成物は、その組成物がインビボで効能を有するようなヒトおよび動物をはじめとする、そのような治療が必要な任意の生体に投与することができる。本明細書において用いる場合、安全で有効なは、重度の副作用を回避しつつ、対象が罹患している疾病を減少、予防、改善または治療するために十分な効力をもたらすことを意味する。安全で有効な量は、対象の年齢、治療する対象の健康状態、疾患の重症度、任意の併用療法の治療期間および性質によって変わるであろう。その決定は通常に医師の技能の範囲内である。本組成物は、本明細書において説明するのと同じ一般的な方法で調合され、投与される。本発明の化合物は、単独で有効に使用することができ、または1つ以上の追加の活性薬剤と有効に併用することができる。併用療法は、本発明の化合物と1つ以上の追加の活性薬剤とを含有する単一の医薬投薬組成物の投与、ならびに本発明の化合物およびそれぞれの活性成分のその固有の独立した医薬投薬量での投与を含む。例えば、本発明の化合物およびインスリン分泌促進物質、例えばスルホニルウレア、チアゾリジンジオン、ビグアニド、メグリチニド、インスリンまたはベータ−グルコシダーゼ阻害剤を一緒に、単一の経口投薬組成物、例えばカプセルもしくは錠剤で患者に投与することができ、またはそれぞれの薬剤を別個の経口投薬量で投与することができる。別個の投薬量を用いる場合、本発明の化合物および1つ以上の追加の活性薬剤は、本質的に同じ時に、すなわち同時に投与することができ、または別々に時間をずらして、すなわち逐次的に投与することができる。併用療法は、これらすべてのレジメンを含むと解釈する。
【0173】
本発明の医薬組成物の治療活性量も、疾病状態、対象の年齢、性別および体重、ならびに対象において所望の反応を惹起させる化合物の能力などの因子によって変わり得る。至適治療反応をもたらすように投薬レジメンを調整することができる。例えば、幾つかの分割された用量を毎日投与することができ、またはその用量を、治療状況の緊急性によって示されるとおりに比例して減少させることができる。
【0174】
約0.01mg/kgの用量が、哺乳動物の適切な初期投薬量になる可能性が高く、この投薬量を必要に応じて調整して安全で有効な量を提供する。従って、前記投薬量は、最初は一般に0.01から100mg/kg、例えば、0.1から50mg/kg、好ましくは0.1から10mg/kg、好ましくは0.5から5mg/kg、さらに好ましくは1から5mg/kgであろう。一般に、成人についての用量は、好ましくは1日1回または2回投与される、0.01〜20mg/kg、好ましくは0.1から10mg/kg、さらに好ましくは0.5から5mg/kg、例えば合計1から200mgの範囲、例えば合計で1から125mg、例えば合計で5mgであろう。
【0175】
本明細書において用いる場合、医薬的に許容される担体は、対象に投与したときに無害な生理反応を有する1つ以上の相溶性固体または液体送達系を意味する。一部の例としては、デンプン、糖、セルロースおよびその誘導体、粉末トラガカントゴム、麦芽、ゼラチン、コラーゲン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、ポリオール、寒天、アルギン酸、発熱物質不含の水、等張食塩水、リン酸緩衝液、および医薬の調合に用いられる他の適する非毒性物質が挙げられるが、これらに限定されない。他の賦形剤、例えば、湿潤剤および滑沢剤、錠剤形成剤、安定剤、抗酸化物質、および保存薬も考えられる。
【0176】
本明細書に記載する組成物は、有効量の化合物または類似体を医薬的に許容される担体との混合物に併せるような、対象に投与することができる医薬的に許容される組成物の調製のための公知の方法によって調製することができる。適する担体は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,Easton,PA,USA,1985)に記載されている。これに基づき、本組成物は、排他的にではないが、1つ以上の医薬的に許容されるビヒクルまたは希釈剤と会合した状態であり、適するpHを有する緩衝溶液に含まれており、および生理液と等浸透圧である化合物の溶液を含む。
【0177】
本発明の1つの好ましい実施形態において、本発明の化合物(好ましくは、PPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤)、例えば式IXの化合物のいずれか、例えば式Xの化合物のいずれか、例えば式XIの化合物のいずれか、例えば式XIIの化合物のいずれか、例えば式XIIIの化合物のいずれか、例えば式XIVの化合物のいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、適する医薬用賦形剤、希釈剤または担体との、特に、化合物の即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、二重放出、制御放出、または拍動送達に適する医薬用賦形剤、希釈剤または担体との混合物で、投与することができる。
【0178】
例えば、本発明に従って使用される化合物は、即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、二重放出、制御放出または拍動送達用途向けの、着香剤または着色剤を含有する、錠剤、カプセル(ソフトゲルカプセルを含む)、腔坐剤、エリキシル、溶液または懸濁液の形態で、経口、口腔内または舌下投与することができる。本発明の化合物は、急速分散または急速溶解剤形により投与することもできる。本発明の好ましい実施形態において、本化合物(好ましくは、PPARモジュレータ、TP受容体アンタゴニストおよび/またはTS阻害剤、例えば式IXの化合物のいずれか、例えば式Xの化合物のいずれか、例えば式XIの化合物のいずれか、例えば式XIIの化合物のいずれか、例えば式XIIIの化合物のいずれか、例えば式XIVの化合物のいずれか、例えば、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、遅延放出、調節放出、持続放出または制御放出用の医薬組成物で投与される。
【0179】
遅延放出、調節放出、持続放出または制御放出剤形は、上述の賦形剤と共に、放出速度調節剤として作用する追加の賦形剤(これらは、そのデバイスの本体上に被覆されている、および/または該本体に含まれている)を含有する場合がある。放出速度調節剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンオキシド、キサンタンガム、カルボマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、水素化ヒマシ油、カルナバワックス、パラフィンワックス、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマー、クレモフォール、トウモロコシ油グリセリド、プロピレングリコールおよびこれらの混合物が挙げられるが、それらに排他的に限定されない。調節放出および制御放出剤形は、放出速度調節性賦形剤の1つまたは組み合わせを含有し得る。放出速度調節性賦形剤は、その剤形中に、すなわちマトリックス内に存在する場合もあり、および/またはその剤形上に、すなわち表面またはコーティング上に存在する場合もある。
【0180】
上で説明した調合物に加えて、本発明に従って使用するための化合物を含有する薬剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 1995,edited by E.W.Martin,Mack Pulishing Company,19th edition,Easton,Paに記載されているような、従来の技術によって調製することができる。
【0181】
以下の実施例は、本発明を例証するために本発明の特定の態様を説明するものであり、ならびに本発明を限定するものと見なすべきではない。これらの実施例は本発明の理解および実施に有用な特定の方法論を提供するものであるからである。
【実施例】
【0182】
実施例1
(Z)−6−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸の合成
この実施例は、スキーム2に従って、本明細書ではDPDとも呼ばれる(Z)−6−[(2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル]ヘキサ−4−エン酸(表II中のSN1)の合成を説明するものである。
【0183】
【化21】
シス/トランス混合物としてのラセミ2−メトキシパラコン酸の合成(2−3):20L二重ジャケットガラス反応器に260gのo−メトキシベンズアルデヒド、286gのコハク酸無水物、572gの無水塩化亜鉛および2600mLの無水DCMを充填した。その混合物を攪拌し2℃に冷却した。533mLのトリエチルアミン量を30分の時間をかけて添加した。その後、その混合物を周囲温度で24時間、攪拌させておいた。1690mLの2M HCl量を添加し、続いて2600mLの酢酸エチルを添加した。その混合物を5分間、激しく攪拌した。水性相を2000mLの酢酸エチルで抽出した。併せた有機抽出物を650mLの飽和ブラインで洗浄し、その後、3×2600mLの飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した。その後、併せた水性抽出物を酢酸エチルで洗浄した。濃HClを使用して、それらの水性抽出物をpH2に酸性化した。黄色の油が分離した。2000mLの酢酸エチルを使用して、その混合物を2回抽出した。有機相を1000mLのブラインで4回洗浄し、45℃の加熱浴温度を用いてBuchi R220 rotavapで蒸発させた。残っている残留物に4000mLのトルエンを添加した。その混合物を110℃に加熱した。1Lのトルエンを蒸留除去した。残分を放置して室温に冷却し、48時間放置し、この間に純粋な2−メトキシ−パラコン酸が晶出した。その結晶質材料を回収し、濾過し、真空オーブンにおいて真空下、45℃で、一定重量になるまで乾燥させた。
収量:220g(49%)。シス/トランス比:46/54
シス−およびトランス−ラセミメトキシ−パラコン酸の全トランス−2−メトキシパラコン酸への転化(2−4):1020gのメトキシパラコン酸を、1729mLの濃硫酸と2570mLの水の混合物に添加した。その混合物を室温で18時間、攪拌させておいた。33:64のシス/トランス比を得た。その後、その混合物を2.5時間、60℃に加熱した。11:89のシス/トランス比を得た(HPLCにより分析)。その後、その混合物を放置して室温に冷却し、その後、濾過した。固形物を酢酸エチルに再び溶解し、水およびブラインで洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、蒸発させた。6:94のシス/トランス比が観察された。熱トルエンから固形物を再結晶させた。得られた結晶質材料を真空下、40℃で48時間乾燥させた。
収量:855g(84%)。シス/トランス比:8/92.融点:132〜133℃
NMR(CDCl、300 MHz):2.9(2H,d)、3.4(1H,m)、3.83(3H,s)、5.85(1H,d)、6.8−7.4(4H,m)
ラセミメトキシ−パラコン酸のエステル化(2−5):193gのメトキシ−パラコン酸を600mLのTHFに溶解した。その混合物に145gのCDI(899mmol、1.1当量)を添加し、その混合物を10分間攪拌した。65mLの無水エタノール量(または、メチルエステルを作るためにメタノール)を添加し、完了するまで(〜120分)その混合物を攪拌した。その粗反応混合物を、酢酸エチルおよび飽和重炭酸ナトリウムを使用して抽出した。有機相を0.5NのHClおよびブラインで洗浄した。蒸発させた後、所望のエチルエスエルの188gの量を得た。
【0184】
ラセミメトキシ−パラコン酸・エチルエステルの還元(2−6):ラセミラクトールの調製:5℃で700mLのトルエン中の105gのエチルエステル(397mmol)に、3当量のDIBAL−H(1.19mol、1.19L 1M溶液)を添加した。その混合物を60分間、室温で攪拌し、メタノールでクエンチした。酢酸エチル(2.5L)および水(700mL)を添加した。相分離後、水性相をEtOAcで再び抽出した。その後、有機層をブラインで洗浄し、濾過し、蒸発させた。油性残留物をクロロホルム/へキサンから再結晶させた。固体を濾過し、真空下で乾燥させた。
収量:53g(237mmol、59%)
ラセミラクトールを用いるウィッティヒ反応−ラセミジオールの合成(2−8):191gの臭化カルボキシプロピルトリフェニルホスホニウム、1000mLの無水トルエンおよび100gのカリウムt−ブトキシド量を80℃で30分間混合した。その混合物を室温に冷却した。180mLの無水THFに予め溶解した25gの精製ラセミラクトール(114.5mmol)量をゆっくりと添加した。反応を60分間継続させた。その粗反応混合物を1500mLの氷水に注入し、300mLの酢酸エチルを添加した。水性相を300mLの酢酸エチルで再び抽出した。その後、水性相を2NのHClで酸性化し、300mLの酢酸エチルを使用して3回抽出した。形成した固体を濾過して除去した。有機相を蒸発させた。蒸発させた残留物に500mLのジエチルエーテルを添加した。そのフラスコを10分間、渦攪拌し、固体を濾過して除去した。濾液を重炭酸ナトリウム飽和溶液で3回抽出した。その後、2MのHClを使用して、水性相をpH4に酸性化した。その後、200mLの酢酸エチルを用いて水性相を3回抽出した。有機相を併せ、MgSOで乾燥させ、蒸発させて45gの材料を得た。
【0185】
カラムクロマトグラフィー:ラセミジオールをシリカゲル(35cmのカラム長、4cmの直径)で精製した。ラセミジオールを最少の酢酸エチルに溶解し、カラムに適用した。1Lの酢酸エチル(60%)/ヘキサン(40%)をメスシリンダーに添加した。300mLのEtOAc/へキサンをそのシリンダーから取り、カラムに添加した。シリンダーの中の残りの700mLのEtOAc/へキサンを、酢酸エチルを使用して1Lに希釈した。その後、300mLの新たなEtOAc/へキサン溶液をカラムに添加し、放置してカラムに通した。そのシリンダーの中の残りの700mLのEtOAc/へキサンを、酢酸エチルを使用して、再び1Lに希釈した。その後、300mLの新たなEtOAc/へキサン溶液をカラムに添加し、放置してカラムに通した。そのシリンダーの中の残りの700LのEtOAc/へキサンを、酢酸エチルを使用して、もう1度、1Lに希釈した。その後、300mLの新たなEtOAc/へキサン溶液をカラムに添加し、放置してカラムに通した。ラセミジオールの純粋な画分を回収し、蒸発させて、26gの純粋なラセミジオールを得た。
収量:26g(88.3mmol、79%)
ラセミジオールのラセミアセトニドへの転化(2−10):26g(88mmol)の精製ジオールを260mLのジメトキシプロパンおよび26mgのp−TsOHと混合した。その混合物を周囲温度で一晩、攪拌させておいた。3滴のトリエチルアミンを添加し、その混合物を蒸発させた。残っている残留物に150mLのヘキサンを添加し、その混合物を一晩攪拌した。固体を濾過して除去し、乾燥させて、25g(75mmol)のラセミアセトニドを得た。
収率:85%
ラセミアセトニドの脱メチル化(2−12):375mLのDMPU中の21.5gのNaHの混合物に16.7gのエタンチオールを添加することにより、水素化ナトリウムおよびエタンチオールの懸濁液を調製した。その懸濁液を80℃に加熱し、放置して周囲温度に冷却した。
【0186】
15gのラセミアセトニドを75mLのDMPUに溶解し、EtSH/NaHの懸濁液に添加した。その混合物を130℃で2時間加熱した。その後、その反応混合物を氷水に注入し、DCMで抽出した。2NのHClを使用して水性層を酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、蒸発乾固させた。
収量:16.5g(粗製)。
【0187】
ラセミ最終化合物の調製(2−14):28mmolの脱メチル化ラセミアセトニド量を、15mLの2−クロロベンズアルデヒド、0.5gのp−TsOHおよび60mLのトルエンと混合した。その混合物を24時間攪拌し、蒸発させた。その粗反応混合物を、Biotage Horizon(登録商標)クロマトグラフィー計器を利用するシリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製した。DCM(19)/メタノール(1)を使用してその混合物を精製して、蒸発後、6.5gの固体を得た。
収量:6.5g(16.7mmol、59%)
【0188】
【化22】
【0189】
【表1-1】
【0190】
【表1-2】
実施例2
PPARモジュレータ2(SN2、表II)の合成
この実施例は、スキーム3によるPPARモジュレータ2(SN2、表II)の合成を説明するものである。実施例1において説明したようなラセミアセトニド(6−[4−(2−ヒドロキシフェニル)−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキサン−5−イル]−ヘキサ−4−エン酸)2−12の100mg(0.31mmol)量を、1mLのトルエンおよび10mgのp−トルエンスルホン酸と混合した。その混合物に2当量(0.62mmol、108mg)の2,3−ジクロロベンズアルデヒドを添加した。その混合物を24時間攪拌し、窒素流を用いて蒸発させた。その粗反応混合物を、メタノール(1)/DCM(19)を使用してシリカゲルカラムで精製した。純粋な画分をTLCによって同定し、回収し、蒸発させ、HPLCおよび質量分析法によって分析した。
質量スペクトル(エレクトロスプレー、ネガティブモード):[M−H]−=435
実施例3
PPARモジュレータ6(SN6、表II)の合成
この実施例は、スキーム3によるPPARモジュレータ6(SN6、表II)の合成を説明するものである。100mg(0.31mmol)のラセミアセトニド量を、1mLのトルエンおよび10mgのp−トルエンスルホン酸と混合した。その混合物に2当量(0.62mmol、70mg)のシクロヘキサノンを添加した。その混合物を24時間攪拌し、窒素流を用いて蒸発させた。その粗反応混合物を、メタノール(1)/DCM(19)を使用してシリカゲルカラムで精製した。純粋な画分をTLCによって同定し、回収し、蒸発させ、HPLCおよび質量分析法によって分析した。
質量スペクトル(エレクトロスプレー、ネガティブモード):[M−H]−=359
実施例4
PPARモジュレータ8(SN8、表II)の合成
この実施例は、スキーム3によるPPARモジュレータ8(SN8、表II)の合成を説明するものである。
【0191】
N−Boc 4−オキソピペリジンの調製:2gの4−オキソピペリジン量を20mLのジオキサン/水に溶解した。その混合物に2当量の重炭酸ナトリウムを添加し、続いて1.0当量のBocOを添加した。その混合物を4時間攪拌した。酢酸エチル(100mL)を添加した。0.2NのHClおよびブラインを使用して、有機相を2回洗浄した。その後、その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させて油を得、それが結晶した。100mg(0.31mmol)のラセミアセトニド量を1mLのトルエンおよび10mgのp−トルエンスルホン酸と混合した。その混合物に、2当量(0.62mmol)のN−Boc−4−オキソピペリジンを添加した。その混合物を24時間攪拌し、窒素流を用いて蒸発させた。その粗反応混合物を、メタノール(1)/DCM(19)を使用して小型シリカゲルカラムで精製した。純粋な画分をTLCによって同定し、回収し、蒸発させ、HPLCおよび質量分析法によって分析した。
質量スペクトル(エレクトロスプレー、ネガティブモード):[M−H]−=460
スピロ−ピペリジン環上になお存在するBoc−保護基を含む反応生成物を用いて、本明細書において下で言及する生物学的アッセイを行った。
【0192】
実施例5
PPARモジュレータ9(SN9、表II)の合成
この実施例は、スキーム3によるPPARモジュレータ9(SN9、表II)の合成を説明するものである。
【0193】
1−ナフタレンカルボキシアルデヒドの調製 3.87mLの塩化オキサリル(44.24mmol)量を100mLのDCMに溶解した。その混合物を−60℃に冷却した。注射器を使用して、5.6mLのDMSO量を滴下した。その混合物を15分間攪拌した。75mLのDCM中の5gのナフタレン−1−メタノールの溶液を滴下した。その反応を1時間、−60℃で継続した。20mLのトリエチルアミン量を添加した。その混合物を放置して15℃にした。その混合物を抽出漏斗に移し、水、1MのHCl、水、そしてブラインで洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。その粗生成物は、さらに精製せずに次の段階で使用するために十分純粋であった。
【0194】
実施例1に従って調製した100mg(0.31mmol)のラセミアセトニド(2−12、上に記載したとおり)量を、1mLのトルエンおよび10mgのp−トルエンスルホン酸と混合した。その混合物に2当量(0.62mmol、97mg)の1−ナフタレンカルボキシアルデヒドを添加した。その混合物を24時間攪拌し、窒素流を用いて蒸発させた。その粗反応混合物を、メタノール(1)/DCM(19)を使用してシリカゲルカラムで精製した。純粋な画分をTLCによって同定し、回収し、蒸発させ、HPLCおよび質量分析法によって分析した。
質量スペクトル(エレクトロスプレー、ネガティブモード):[M−H]−=417
実施例6
PPARモジュレータ11(SN11、表II)の合成
この実施例は、スキーム3によるPPARモジュレータ11(SN11、表II)の合成を説明するものである。
【0195】
100mg(0.31mmol)のラセミアセトニド(実施例1からの2−12)量を、1mLのトルエンおよび10mgのp−トルエンスルホン酸と混合した。その混合物に2当量(0.62mmol、62mg)のヘキサナールを添加した。その混合物を24時間攪拌し、窒素流を用いて蒸発させた。その粗反応混合物を、メタノール(1)/DCM(19)を使用してシリカゲルカラムで精製した。純粋な画分をTLCによって同定し、回収し、蒸発させ、HPLCおよび質量分析法によって分析した。
質量スペクトル(エレクトロスプレー、ネガティブモード):[M−H]−=361
実施例7
PPARモジュレータ13(SN13、表II)の合成
この実施例は、スキーム3によるPPARモジュレータ13(SN13、表II)の合成を説明するものである。
【0196】
100mg(0.31mmol)のラセミアセトニド量を、1mLのトルエンおよび10mgのp−トルエンスルホン酸と混合した。その混合物に2当量(0.62mmol、130mg)のo−2−オキソ−4a,8a−ジヒドロ−2H−クロメン−4−カルバルデヒドを添加した。その混合物を24時間攪拌し、窒素流を用いて蒸発させた。その粗反応混合物を、メタノール(1)/DCM(19)を使用して小型シリカゲルカラムで精製した。純粋な画分をTLCによって同定し、回収し、蒸発させ、HPLCおよび質量分析法によって分析した。
質量スペクトル(エレクトロスプレー、ネガティブモード):[M−H]−=469
実施例8
PPARモジュレータ19(SN19、表II)の合成
この実施例は、スキーム3によるPPARモジュレータ19(SN19、表II)の合成を説明するものである。
【0197】
100mg(0.31mmol)のラセミアセトニド量を、1mLのトルエンおよび10mgのp−トルエンスルホン酸と混合した。その混合物に2当量(0.62mmol、103mg)の2,3−ジメトキシベンズアルデヒドを添加した。その混合物を24時間攪拌し、窒素流を用いて蒸発させた。その粗反応混合物を、メタノール(1)/DCM(19)を使用してシリカゲルカラムで精製した。純粋な画分をTLCによって同定し、回収し、蒸発させ、HPLCおよび質量分析法によって分析した。
HPLC:保持時間(勾配A):15.23、15.39分、95%(異性体の1:1混合物の合計)
質量スペクトル(エレクトロスプレー、ネガティブモード):[M−H]−=427.2
実施例9
PPARモジュレータ14(SN14、表II)の合成
この実施例は、スキーム3によるPPARモジュレータ14(SN14、表II)の合成を説明するものである。
【0198】
室温でDCM(10mL)中のジオール(0.08g、0.27mmol)の攪拌溶液に、2,6−ジクロロベンズアルデヒド(0.07g、0.40mmol)およびpTSA(3mg)を添加した。その反応混合物を8時間攪拌し、トリエチルアミン(2〜3滴)でクエンチし、その後、真空下で濃縮した。残留物を、ヘキサン/EtOAc(8:2)で溶離するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製して、アセタール(100mg、収率45%)を無色の油として得た。
HNMR(200MHz,CDCl):δ7.55(d,1H,J=7.8Hz)、7.37−7.13(m,4H)、7.00(t,1H,J=7.8Hz)、6.87(d,1H,J=7.8Hz)、6.46(s,1H)、5.51−5.15(m,3H)、4.24−4.14(m,2H)、3.84(s,3H)、2.99−2.81(m,1H)、2.40−2.27(m,4H)、1.93−1,87(bd,1H,J=10.9Hz)、1.73−1.67(bd,1H,J=10.9Hz)。MS:450(M
実施例10
PPARモジュレータ15(SN15、表II)の合成
この実施例は、スキーム3によるPPARモジュレータ15(SN15、表II)の合成を説明するものである。実施例1のスキーム2からの化合物2−12(100mg、0.31mmol)をTHF(5mL)に溶解し、触媒量のpTsOH(5mg)を室温で添加した。その反応混合物を室温で8時間、攪拌し続けた。2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンズアルデヒド(158mg、0.62mmol)をその反応素材に添加した;もう1度、触媒量のpTsOHを添加した。反応条件をさらに24時間維持した。反応完了後、乾燥EtNを添加して、pH=7に調整した。真空下で溶媒を除去し、得られた粗製混合物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、最終生成物15を得た。
【0199】
【化23】
【0200】
【表3】
実施例11
PPARモジュレータ23(SN23、表II)の合成
この実施例は、スキーム4によるPPARモジュレータ23(SN23、表II)の合成を説明するものである。
【0201】
ウィッティヒ反応 10g(22.56mmol)のBrPPh(CHCOH量を60mLの乾燥トルエン中の5.06g(45mmol)のKOtBuと混合した。その混合物を30分間、80℃に加熱し、放置して周囲温度に冷却した。10mLの無水THF中の1.26gのラセミラクトール量を添加し、その反応を2時間継続させた。処理は、スキーム2の2−8の調製についてのものと同様である。
収率:3.3g(粗製、次の段階でそのまま使用)。
【0202】
アセトニドの調製:前の段階で得られたジオールを、40mLのジメトキシプロパンに溶解した。25mgのp−TsOH量を添加し、その反応物を24時間攪拌した。1滴のトリエチルアミンを添加し、その混合物を蒸発させた。その粗製混合物を小さなシリカゲルカラムで濾過した。
収量:1.6g
アセトニドの脱メチル化 1.91mLのエタンチオール(25.83mmol)量を50mLのDMPUと混合した。51.7mmolのNaH(2.06g、油中60%分散物)量を添加し、その混合物を30分間、80℃に加熱した。その混合物を周囲温度に冷却した。7.5mLのDMPU中の1.5gのアセトニド(4.3mmol)の溶液を添加し、その混合物を2時間、125℃で攪拌した。その粗製混合物を氷水に注入し、2×50mLのDCMで抽出した。水性相を2NのHClで酸性化させ、その後、EtOAcで抽出し、最後にブラインで洗浄した。有機相を蒸発させて、1.6gのヒドロキシアセトニドを得た。
【0203】
2−クロロベンズアルデヒドとの反応 そのヒドロキシ−アセトニド(1.6g、粗製)を2mLの2−クロロベンズアルデヒド、8mLの無水トルエンおよび50mgのpTsOHと混合した。その混合物を24時間攪拌し、蒸発させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。
質量スペクトル(エレクトロスプレー、ネガティブモード):[M−H]−=415
実施例12
PPARモジュレータ17(SN17、表II)の合成
この実施例は、スキーム4によるPPARモジュレータ17(SN17、表II)の合成を説明するものである。
【0204】
100mg(0.31mmol)のラセミアセトニド量を、1mLのトルエンおよび10mgのp−トルエンスルホン酸と混合した。その混合物に2当量(0.62mmol、122mg)の4−フェニルアミノベンズアルデヒドを添加した。その混合物を24時間攪拌し、窒素流を用いて蒸発させた。その粗反応混合物を、メタノール(1)/DCM(19)を使用して小型シリカゲルカラムで精製した。純粋な画分をTLCによって同定し、回収し、蒸発させ、HPLCおよび質量分析法によって分析した。
【0205】
o−メトキシパラコン酸のメチルエステルの合成:a)乾燥DMF(150mL)中の酸(5g、21.18mmol)の攪拌溶液に、0℃で、KCO(29.2g、211.8mmol)、続いてヨウ化メチル(6.01g、42.3mmol)を添加し、その反応混合物を5時間、室温で攪拌した。その反応混合物を水(10mL)、DCM(30mL)で希釈し、有機層を分離した。水性層をDCM(2×15mL)で抽出し、併せた有機層をブライン(2×20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させてエステルを得た。これは、さらなる反応で使用するために十分純粋であった(収量:4.34g、81.9%)。
【0206】
b)乾燥エーテル(60mL)中の酸5(10g、42.3mmol)の攪拌溶液に、新たに調製したジアゾメタン溶液(200mL溶液、10gのニトロソメチルウレアから生成したもの)を0℃で添加し、30分間、室温で攪拌した。出発原料が完全に消失した後、エーテルを蒸発させてエステル6を得、それを精製せずにさらなる反応に使用した(収量:9.8g、98%)。黄色の粘稠油。
H NMR(CDCl,200MHz):δ7.38−7.22(2H,m)、6.94−6.82(m,2H)、5.79(d,J=6.2Hz,1H)、3.36−3.24(m,1H)、2.9−2.8(m,2H)。
【0207】
実施例13
PPARモジュレータ34(SN34、表II)の合成
この実施例は、PPARモジュレータ34(SN34、表II)の合成を説明するものである。
【0208】
乾燥トルエン(2mL)中のジオール7(0.4g、1.36mmol)およびクロロベンズアルデヒドジメチルアセタール(0.28g、1.63mmol)の混合物を、一晩、触媒量のp−トルエンスルホン酸(〜5mg)の存在下、窒素雰囲気下で攪拌した。出発原料が完全に消失した後、その反応混合物を固体NaHCOで中和し、その反応混合物から溶液をデカントし、ロータリーエバポレータで濃縮した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製してベンジリデンアセタールを得た。
収量:0.31g(59%)
HNMR(CDCl,200MHz):δ7.82(d,J=7.8Hz,1H)、7.42(d,J=7.8Hz,1H)、7.38−7.2(m,3H)、6.87(t,J=7.8Hz,1H)、6.82(d,J=8.6Hz,1H)、6.05(s,1H)、5.72(d,J=15.6Hz,1H)、5.45(d,J=2.3Hz,1H)、4.21(t,J=15.6Hz,2H)、4.1(q,J=7.0Hz,2H)、3.83(s,3H)、2.68−2.56(m,1H)、1.29(t,J=7.0Hz,3H)。
【0209】
THF:HO(4mL、3:1)中のこの化合物(0.2g、0.48mmol)の溶液に、LiOH・HO(0.3g、7.15mmol)、メタノール(0.5mL)を添加し、一晩、室温で攪拌した。その反応混合物をNaHSOの飽和水溶液で中和し、DCM(2×10mL)で抽出した。併せた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、rotavapourで蒸発させ、その粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
収量:95mg(51%)
HNMR(CDCl,200MHz):δ7.83(d,J=7.5Hz,1H)、7.32(m,1H)、7.2(t,J=7.5Hz,1H)、6.87(d,J=8.5Hz,1H)、6.9(t,J=7.5,6.6Hz,1H)、6.69(m,1H)、6.06(s,1H)、5.67(d,J=16.1Hz,1H)、5.42(s,1H)、4.18(dd,J=11.32Hz,2H)、3.84(s,3H)、2.58(m,1H)、2.09(m,2H)。MS:411(M+Na)
【0210】
【化24】
実施例14
PPARモジュレータ25(SN25、表II)の合成
この実施例は、表IIのPPARモジュレータ25の合成を説明するものである。
【0211】
エタンチオール(0.7mL、9.5mmol)を、0〜5℃で乾燥DMF(8mL)中の(油中60%)NaH(0.38g、9.5mmol)の攪拌懸濁液に添加し、20〜30分間攪拌した。乾燥DMF(2mL)中の化合物4a−1(0.25g、0.95mmol)を、温度を維持しながら、上の混合物にゆっくりと滴下した。その反応素材温度を120〜130℃に上昇させ、6〜8時間維持した。反応完了後、その素材を0〜5℃に冷却し、1NのHCl(1mL)でそのpHを4〜5に調整することによってクエンチした。その化合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、水性層を分離した。併せた有機画分を回収し、ブライン、水で洗浄し、硫酸ナトリウム(2g)で乾燥させ、真空下で濃縮した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン、2.5:7.5で溶離)によって精製して、純粋な4a−2)を得た。
収量:155mg(65.6%)。
【0212】
化合物4a−2(0.15g、0.6mmol)を、8:2の比率のアセトンと水の混合物(10mL)に溶解した。上の混合物に、OsO(触媒量、0.05M)およびNMO(0.14g、1.2mmol)を添加し、室温で8〜10時間攪拌し続けた。反応の進行をTLCによってモニターした。反応完了後、それをNa飽和溶液(3mL)によってクエンチした。溶媒アセトンを真空下で除去し、化合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。併せた有機画分を回収し、ブライン、水で洗浄し、硫酸ナトリウム(2g)で乾燥させ、真空下で濃縮した。
【0213】
THF;HO(8:2、10mL)の混合物中のその粗生成物(スキームに描かれていないジオール)に、NaIO(0.27g、1.8mmol)を室温で添加し、1時間、攪拌し続けた。反応完了後、それをNa飽和溶液(3mL)によってクエンチした。化合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、水性層を分離した。併せた有機画分を回収し、ブライン、水で洗浄し、硫酸ナトリウム(2g)で乾燥させ、真空下で濃縮した。その粗生成物4a−3をさらなる反応のために処理した。
【0214】
乾燥ベンゼン中の化合物4a−3の溶液(10mL)に、C2−ウィッティヒイリド(0.15g、0.42mmol)を添加した。その反応素材を不活性条件下で2〜3時間、室温で攪拌し続けた。過剰なベンゼンをロータリーエバポレータで除去し、このようにして得られた粗製化合物4a−5をカラムクロマトグラフィーによる精製に付した。(酢酸エチル:ヘキサン、0.5:9.5)。
収量:0.11g(95%)
HNMR(CDCl,300MHz):δ8.1(s,1H)、7.2−7.1(t,J=6.1Hz,1H),6.85−6.6(m,4H)、5.8−5.69(d,J=15.7Hz,1H)、5.85(m,1H)、4.15−4.0(q,J=6.1Hz,8.74,3H)、3.80−3.70(d,J=8.7Hz,1H)、2.7−2.55(m,1H)、2.15−2.05(m,1H)、1.72−1.65(m,1H)、1.60−1.40(m,6H)、1.25−1.11(t,J=6.1Hz,3H)、[M+Na]=343.1。
【0215】
THF:HO(8:2、5mL)の混合物中の化合物4a−5(0.11g、0.34mmol)の溶液に、室温でLiOH・HO(0.1g、2.4mmol)を添加し、8〜10時間、攪拌し続けた。反応完了後、NaHSO飽和水溶液(1mL)でそのpHを4〜5に調整することによってクエンチした。その化合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、水性層を分離した。併せた有機画分を回収し、ブライン、水で洗浄し、硫酸ナトリウム(2g)で乾燥させ、真空下で濃縮した。その粗生成物4a−6をさらなる反応のために処理した。
【0216】
化合物4a−6(85mg、0.29mmol)をTHFに溶解し、触媒量のpTSOHを室温で添加した。その反応混合物を室温で6〜8時間、攪拌し続けた。o−クロロベンズアルデヒド(81mg、0.58mmol)をその反応素材に添加し、もう1度、触媒量のpTSOHを添加した。反応条件をさらに5〜6時間維持した。反応完了後、pH=7に調整することにより乾燥EtNを添加した。真空下で溶媒を除去し、得られた粗製混合物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、最終生成物25(表II)を得た。(酢酸エチル:ヘキサン;3.5:6.5)。
収量:35mg(32%)
上の化合物のHPLC純度は、79.2%であり、これを分取HPLCによってさらに精製して、純粋な化合物(純度98%、15mg)を得た。
HNMR(CDCl,300MHz):δ7.85−7.69(d,J=7.1Hz,1H)、7.5−7.30(m,4H)、7.19−7.08(t,J=7.1Hz,1H),7.08−7.0(d,J=7.1Hz,1H)、6.99−6.70(m,2H)、6.05(s,1H)、5.95(s,1H)、5.9−5.75(d,J=15.7Hz,1H)、5.5(s,1H)、4.4−4.1(s,broad,2H)、2.4−2.1(m,4H)、2.9−2.7(m,1H)、2.35−2.19(d,J=7.1Hz,1H)、2.1−1.95(d,J=7.1Hz,1H)。[M+H]=374.1。HPLC:98.93%(RT:4.12)
【0217】
【化25】
実施例15
PPARモジュレータ37(SN37、表II)の合成
この実施例は、スキーム5による表IIのPPARモジュレータ37の合成を説明するものである。
【0218】
スキーム5におけるマロン酸水素エチル5−2の調製:
室温でエタノール(100mL)中のマロン酸ジエチル(20g、0.125mol)の攪拌溶液に、時々冷却しながら、エタノール(30mL)中の85%KOH(7g、0.125mol)の溶液を添加した。20分後、その混合物を濃HClで酸性化し、濾過した。フィルターケーキ(KCl)をエタノール(50mL)で洗浄した。併せた濾液を濃縮し、残留液をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−EtOAc:85:15)に付して1(14.7g、87%)を得た。
【0219】
HNMR(CDCl):1.22(3H,t)、3.39(2H,s)、4.39−4.41(2H,q)。
【0220】
ケト−エステル5−4の調製
乾燥THF(100mL)中の14.34gのマグネシウムエトキシド(0.13mol)の懸濁液に、10.5gのマロン酸水素エチル1 5−2(0.08mol)を添加し、90分間、還流させた。その反応混合物を0℃に冷却し、乾燥THF(25mL)中の塩化2−メトキシベンゾイル5−3(14.59g;0.085mol)の溶液を、反応温度が5℃を超えないような速度で添加した。その反応混合物を室温で一晩攪拌し、2日間、放置した。塩化アンモニウムの飽和溶液を添加し、その反応混合物をEtOAc(3×50mL)で抽出した。併せた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させて生成物を油として得、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン−EtOAc:95:5)によって精製して、生成物(4.33g、収率25%)を得た。その生成物をスペクトルデータによって確認した。
HNMR(CDCl):1.23(3H,t)、3.85(5H,s)、4.10−4.22(2H,q)、6.90−7.05(2H,m)、7.42−7.51(1H,m)、7.69−7.80(1H,d)。
【0221】
乾燥THF(40mL)中の水素化ナトリウム(60%、0.9g、0.08mol)の攪拌懸濁液に、アセチル化エステル(4.33g、0.019mol)を0〜10℃で滴下し、15分間攪拌した。臭化アリル5−5(2.30g、0.019mol)をその反応混合物に室温で添加し、その反応混合物を3〜4時間還流させた。反応混合物を冷却し、塩化アンモニウム溶液を添加し、EtOAc(3×30mL)で抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(n−へキサン−EtOAc:95:5)によって精製して、5−6(2.5g、収率50%)を得た。
HNMR(CDCl):1.15(3H,t)、2.61−2.72(2H,m)、3.90(3H,s)、4.05−4.11(2H,q)、4.30−4.33(1H,m)、4.92−5.10(2H,m)、5.78−5.81(1H,m)、6.92−7.15(2H,m)、7.40−7.49(1H,m)、7.71−7.75(1H,d)。
【0222】
ジオールの調製(5−7):
乾燥THF(15mL)中の水素化ホウ素リチウム(0.83g、0.038mol)の冷却懸濁液に、乾燥THF(25mL)中のアルキル化ケトエスエル5−6(2.5g、0.0095mol)の冷却溶液を、温度が10℃を超えないような速度で添加した。4〜5時間、室温で攪拌を継続し、その反応の進行をTLCによってモニターした。その反応混合物を、2NのHClの添加によってpH2に酸性化し、その反応混合物に水を添加し、EtOAc(3×25mL)で抽出した。併せた有機層をブライン、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させて、ジオール5−7のシスとトランスの反応混合物(2g、収率94%)を得、精製せずに次の段階に進めた。HPLC:シス 77.318%、保持時間 20.244分;トランス 22.682%、保持時間 22.337分。(HPLC条件は、そのクロマトグラムにおいてで述べる)。
【0223】
アセトニド5−10の調製:
ジオール5−7(2g、0.009mol)、2,2−ジメチルプロパン(15mL、0.12mol)、触媒量のpTSA(10mg)の溶液を室温で4〜5時間攪拌し、その反応の進行をTLCによってモニターした。その反応混合物をEtNで中和した。過剰なDMPを真空下で除去し、その油性シス−トランス混合物をカラムクロマトグラフィーによって分離して、5−10(0.925g、収率40%)を得た。
HNMR(CDCl):1.51(3H,s)、1.53(3H,s)、1.62−1.80(2H,m)、2.25−2.41(1H,m)、3.75−3.85(1H,m)、3.82(3H,s)、4.08−4.11(1H,m)、4.85−4.96(2H,m)、5.35(1H,d,J=2.3)、5.41−5.62(1H,m)、6.75−6.81(1H,d)、6.90−6.97(1H,m)、7.15−7.25(1H,m)、7.33−7.41(1H,m)。
【0224】
1,3−ジオキサンアルデヒドの調製(オゾン分解)5−11:
−78℃で乾燥DCM(10mL)中のアセトニド5−10(0.93g、0.004mol)の溶液に、永久に青色になるまで、Oを通した。その反応混合物を、その青色が消えるまで、0℃で攪拌した。DCM(5mL)中のTPP(1.1g、0.0043mol)の溶液を0℃でその無色溶液に添加し、その反応混合物を室温に温め、1時間攪拌した。その反応混合物の進行をTLCによってモニターした。溶媒を除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、アルデヒド5−11(0.5g、収率54%)を得た。
HNMR(CDCl):δ1.50(3H,s)、1.54(3H,s)、2.23(1H,dd)、2.44(1H,m)、2.75−2.80(1H,m)、3.65(1H,dd)、3.81(3H,s)、4.21−4.22(1H,dd)、5.39(1H,d,J=2.2Hz)、6.90(1H,d)、6.95−6.97(1H,t)、7.18−7.21(1H,m)、7.39−7.40(1H,d)、9.45(1H,s)。
IR(cm−1):2992、2933、2720、1723、1595、1491、1462、1379、1239および1197。
【0225】
ウィッティヒ塩5−12の調製:
乾燥アセトニトリル(50mL)中の6−ブロモヘキサン酸(3g、0.0512mol)およびトリフェニルホスフィン(4.8g、0.018mol)の溶液を20〜24時間還流させ、過剰な溶媒を減圧下で除去して、無色の油を得、それを乾燥ベンゼンで研和し、乾燥ベンゼンおよびエーテルで順次洗浄した(それぞれ3回)。この洗浄手順中に材料が晶出し、それを減圧下で乾燥させてウィッティヒ塩を白色の微晶質粉末として得た(3.6g、収率55%)。
【0226】
2,4−置換(1,3−ジオキサン−5−イル)カルボン酸(SN37、表II)(ウィッティヒ生成物)5−13の調製:
乾燥THF(5mL)中の水素化ナトリウム(60%、0.364g、0.0152mol)の溶液を、N雰囲気下、0℃で乾燥THF(10mL)中のウィッティヒ塩5−12(0.95g、0.002mol)の攪拌懸濁液に添加した。その混合物を30分間攪拌した。その後、アルデヒド5−11(0.5g、0.0019mol)の溶液を添加した。その反応を攪拌しながら36時間継続した。反応完了後、水を添加し、溶媒を減圧下で除去した。その水溶液を酢酸エチルで洗浄し、5%HClでpH2に酸性化し、酢酸エチルで抽出した。併せた有機抽出物を飽和ブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、蒸発させた。得られた油をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル−75:25)によって精製して、ウィッティヒ生成物5−13(0.2g、収率35%)を得た。
HNMR(CDCl):δ1.49(3H,s)、1.51(3H,s)、1.40−1.49(4H,m)、1.55−1.95(4H,m)、2.22−2.48(3H,m)、3.70−3.75(1H,m)、3.80(3H,s)、4.05−4.15(1H,m)、5.12−5.42(2H,m)、5.35(1H,d,J=2.30Hz)、6.75−6.80(1H,d)、6.92−6.99(1H,t)、7.21−7.25(1H,m)、7.40−7.47(1H,d)。
LC/MS:純度91%、およびMW:385(M+Na)。
【0227】
実施例16
PPARモジュレータ36(SN36、表II)の合成
この実施例は、表IIのPPARモジュレータ36(2,2−ジメチル−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル−カルボン酸)(5−15)の合成(メトキシ基の脱保護)を説明するものである:
エタンチオール(0.13g、0.00203mol)を、0℃、N雰囲気下で、DMPU(5mL)中の水素化ナトリウム(60%、1g、0.004167mol)の攪拌懸濁液に添加した。30分後、DMPU中の化合物5−13(0.00055mol)の溶液を添加した。その混合物を2〜3時間、120℃で加熱し、冷却し、氷水に注入し、その水性混合物をDCMで洗浄した。水性層を5%HClでpH5に酸性化し、酢酸エチルで抽出した。併せた有機抽出物を飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ、蒸発させた。得られた油をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル−75:25)によって精製して、ウィッティヒ生成物5−15(0.6g、収率66%)を得た。
HNMR(CDCl):1.51(3H,s)、1.53(3H,s)、1.22−1.34(4H,m)、1.52−2.00(4H,m)、2.21−2.34(2H,t)、2.53−2.69(1H,m)、3.79−4.11(2H,m)、5.15−5.40(2H,m)、5.38−5.40(1H,d,J=2.40)、6.70−6.95(3H,m)、7.05−7.15(1H,m)、8.20−8.30(1H,br)。LC/MS:純度99%、およびMW:371(M+Na)。
【0228】
実施例17
PPARモジュレータ35(SN35、表II)の合成
この実施例は、表IIのPPARモジュレータ35(Z)−8−(2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)オクタ−6−エン酸−(5−20 スキーム5)の合成を説明するものである:
2−クロロベンズアルデヒド(50.48mg、0.359mmol)、pTSA(触媒量、5mg)およびアセトニド化合物5−15(130mg、0.359mmol)の混合物を4mLの乾燥トルエン中で24時間攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、混合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−EtOAc:80:20)に付して、生成物5−20(55mg、収率34.3%)を得た。
HNMR(CDCl,δ):1.21−2.03(8H,m);2.25(2H,t,J=7.554Hz);2.28(1H,m);3.83(3H,s);4.16(2H,m);5.13−5.38(2H,m);5.41(1H,d,J=2.266Hz);6.03(1H,s);6.81(1H,d,J=7.554Hz);6.93(1H,t,J=7.55Hz);7.14−7.36(4H,m);7.43(1H,t,J=6.043Hz);7.82(1H,d,J=7.554Hz)。LC−MS:純度89.19%(71.05+18.14、2つのジアステレオマー)およびMW 462(M+18)。
【0229】
実施例18
PPARモジュレータ38(SN38、表II)の合成
この実施例は、表IIのPPARモジュレータ38 8−(2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−yl)オクタン酸(5−21)の合成を説明するものである:
5mLの乾燥酢酸エチル中のオレフィン化合物5−13(150mg、0.414mmol)の溶液に、10mol%の10%Pd−C(44mg)を注意深く添加した。その反応混合物をH雰囲気下で1.5〜2時間攪拌させておいた。反応完了後、その混合物をセライトによって濾過し、ケーキ(Pd−C)を乾燥酢酸エチル(2×5mL)で洗浄した。併せた濾液を濃縮し、残留液をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−EtOAc:80:20)に付して、生成物5−21(SN38)(80mg、収率53.05%)を得た。
HNMR(CDCl,δ):1.06−1.60(12H,m);1.46(3H,s);1.53(3H,s);1.67(1H,m);2.25(2H,t,J=7.554Hz);3.76(1H,d,J=10.009Hz);3.81(3H,s);4.15(1H,d,J=8.687Hz);5.32(1H,d,J=2.455Hz);6.77(1H,d,J=7.365Hz);6.92(1H,t,J=7.554Hz);7.16(1H,t,J=6.043Hz);7.38(1H,d,J=5.854Hz)。
【0230】
2−クロロベンズアルデヒド(34.25mg、0.247mmol)、p−TSA(触媒量、3mg)およびアセトニド化合物12 5−21(80mg、0.34mmol)の混合物を3mLの乾燥トルエン中で24時間攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、混合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−EtOAc:80:20)に付して、生成物5−22(50mg、収率45%)を得た。
HNMR(CDCl,δ):1.08−1.92(13H,m);2.26(2H,t,J=7.554Hz);3.83(3H,s);4.20(2H,m);5.36(1H,d,J=2.266Hz);6.02(1H,s);6.81(1H,d,J=7.554Hz);6.92(1H,t,J=7.554Hz);7.15−7.36(4H,m);7.42(1H,t,J=7.554Hz);7.81(1H,d,J=7.554Hz)。
LC−MS:純度87.53%、およびMW 464(M+18)。
【0231】
実施例19
PPARモジュレータ24(SN24、表II)の合成
この実施例は、表IIのPPARモジュレータ24 f (Z)−8−(2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−yl)オクタ−6−エン酸(5−17)の合成を説明するものである。
【0232】
2−クロロベンズアルデヒド(48.47mg、0.344mmol)、p−TSA(触媒量、5mg)およびアセトニド化合物(120mg、0.344mmol)の混合物を4mLの乾燥トルエン中で24時間攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、混合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−EtOAc:80:20)に付して、生成物5−17(40mg、収率27%)を得た。
HNMR(CDCl,δ):1.13−2.80(11H,m);4.10−4.37(2H,m);5.17−5.41(2H,m);5.44(1H,d,J=2.340Hz);6.00(1H,s);6.74−7.74(8H,m)。
LC−MS:純度は、94.43%(2つのジアステレオマー、それぞれ、80.12+14.31)であり、MWは、448(M+18)である。
【0233】
実施例20
PPARモジュレータ31(SN31、表II)の合成
この実施例は、表IIのPPARモジュレータ31 8−(2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)オクタン酸(5−19)の合成を説明するものである。
【0234】
3mLの乾燥酢酸エチル中のオレフィン5−15(60mg、0.172mmol)の溶液に、10mol%(19mg、0.0172mmol)の10%Pd−Cを添加した。その反応混合物をH雰囲気下で8時間、攪拌させておいた。反応が完了した後、その混合物をセライトによって濾過し、ケーク(Pd−C)を乾燥酢酸エチル(2×5mL)で洗浄した。併せた濾液を濃縮し、残留液をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−EtOAc:80:20)に付して、生成物5−18(40mg、収率66%)を得た。
HNMR(CDCl,δ):1.05−1.88(13H,m);1.54(3H,s);1.58(3H,s);2.29(2H,t,J=7.031Hz);3.86(1H,d,J=11.719Hz);4.15(1H,d,J=12.5Hz);5.36(1H,d,J=2.344Hz);6.82(3H,m);7.12(1H,m);8.32(1H,broad)。
【0235】
2−クロロベンズアルデヒド(16mg、0.144mmol)、p−TSA(触媒量、3mg)およびアセトニド化合物5−18(40mg、0.114mmol)の混合物を3mLの乾燥トルエン中で24時間攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、混合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−EtOAc:80:20)に付して、生成物5−19(20mg、収率40%)を得た。
HNMR(CDCl,δ):1.07−2.35(13H,m);2.98(2H,t,J=7.554Hz);3.65−4.41(2H,m);4.62(1H,d,J=10.575Hz);5.90(1H,s);6.77−7.66(8H,m)。
LC−MS:純度85%、およびMW 450(M+18)。
【0236】
【化26】
実施例21
PPARモジュレータ32(SN32、表II)の合成
この実施例は、表IIのPPARモジュレータ32の合成を説明するものである。
【0237】
乾燥THF(10mL)中のアルケン6−10(前の5−10で説明)(1.2g、4.5mmol)の溶液に、0℃でBH・DMS(0.34g、4.5)を添加し、その反応混合物を2時間、同じ温度で攪拌した。この混合物に、0℃で3NのNaOH(3mL)および30%H(1mL)を添加し、もう1時間、室温で攪拌し続けた。その反応混合物を水で希釈し、酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。併せた有機層を真空下で蒸発させ、その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン;2:8)で精製した。
収量:0.9g(70%)
HNMR(CDCl,200MHz):δ7.51−7.45(d,J=6.4Hz,1H)、7.3−7.2(t,J=7.1Hz,1H)、7.05−6.95(t,J=7.1Hz,1H)、6.9−6.82(d,J=7.1Hz,1H)、5.5−5.4(s1H)、4.25−4.19(d,J=9.6Hz,1H)、3.92−3.78(m,4H)、3.53−3.40(t,J=7.1Hz,2H)、1.85−1.70(m,1H),1.51(d,J=11.3Hz,6H)、1.32−1.0(m,4H)。
【0238】
6−12の調製:IBX(0.525g、1.87mmol)を乾燥DMSO(1mL)に溶解し、10分間、室温で攪拌し、0℃に冷却した。これに、窒素雰囲気下で乾燥HTF(9mL)中のアルコール6(0.35g、1.25mmol)を添加し、1.5時間、室温で攪拌した。その反応混合物をエーテル(10mL)で希釈し、20分間攪拌し、濾過した。濾液を水(2×10mL)で洗浄し、エーテル層を乾燥させ(NaSO)、ロータリーエバポレータで濃縮した。その生成物をフィルターカラム(酢酸エチル:ヘキサン;2:8)によって精製してアルデヒド6−12を得た。
収量:300mg(収率86.4%)。
HNMR(CDCl,200MHz):δ9.59(s,1H)、7.54−7.48(d,J=6.4Hz,1H)、7.28−7.20(t,J=6.4Hz,1H)、7.08−6.95(t,J=6.4Hz,1H)、6.90−6.82(d,J=6.4Hz,1H)、5.42(s,1H)、4.26−4.21(d,J=9.6Hz,1H)、3.81(s,3H)、3.80−3.75(d,J=9.6Hz,1H)、2.4−1.7(m,3H)、1.51(s,6H)、1.45−1.40(m,2H)。
【0239】
6−14の調製:臭化(3−カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウムを真空下、100℃で2〜3時間乾燥させた。乾燥トルエン(10mL)中の臭化(3−カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウム(1.47g、3.43mmol)の攪拌溶液に、カリウムt−ブトキシド(0.774g、6.89mmol)を室温、不活性条件下で少しずつ添加した。その混合物を80℃に加熱し、温度を30〜40分間維持した。反応素材を50℃に冷却し、乾燥THF(2mL)中のアルデヒド(化合物6−12)(0.3g、1.07mmol)を上の混合物に滴下した。その反応の進行をTLCによってモニターした。反応完了後、その素材を0〜5℃に冷却し、1NのHCl(1mL)でそのpHを4〜5に調整することによってクエンチした。その化合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、水性層を分離した。併せた有機画分を回収し、硫酸ナトリウム(2g)で乾燥させ、真空下で濃縮した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン;2:8)によって精製して、純粋な化合物6−14を得た。
収量:325mg(86%)。
【0240】
HNMR(CDCl,300MHz):δ7.45−7.4(d,J=7.1Hz,1H)、7.25−7.10(t,J=7.1,1H)、6.95−6.85(t,J=7.1Hz,1H)、6.80−6.70(d,J=7.1Hz,1H)、5.40−5.30(s,1H)、5.25−5.10(m,2H)、4.2−4.1(d,J=14.3Hz,1H)、3.85−3.8(d,J=14.3Hz,1H)、3.75(s,3H)、2.35−2.05(m,4H)、1.75−1.5(m,3H)、1.50−1.45(d,J=11.4Hz,6H)、0.85−0.75(m,2H)。
MW:371.1(M+Na)。
【0241】
6−16の調製:エタンチオール(0.44g、7.17mmol)を、0〜5℃で乾燥DMF(10mL)中の60%NaH(0.287g、7.17mmol)の攪拌懸濁液に添加し、20〜30分間攪拌した。乾燥DMF(2mL)中の化合物6−14(0.25g、0.71mmol)を、温度を維持しながら、上の混合物にゆっくりと滴下した。その反応素材温度を120〜130℃に上昇させ、6〜8時間維持した。反応完了後、その素材を0〜5℃に冷却し、1NのHCl(1mL)でそのpHを4〜5に調整することによってクエンチした。その化合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、水性層を分離した。併せた有機画分を回収し、ブライン、水で洗浄し、硫酸ナトリウム(2g)で乾燥させ、真空下で濃縮した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン;2.5:7.5)によって精製して、純粋な化合物6−16を得た。
収量:155mg(65%)。
【0242】
化合物6−16(130mg、0.38mmol)をTHF(8mL)に溶解し、触媒量のpTsOHを室温で添加した。その反応混合物を室温で6〜8時間、攪拌し続けた。o−クロロベンズアルデヒド(109mg、0.77mmol)をその反応素材に添加し、もう1度、触媒量のpTsOHを添加した。反応条件をさらに5〜6時間維持した。反応完了後、pH=7に調整することにより乾燥EtNを添加した。真空下で溶媒を除去し、得られた粗製混合物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン;3.5:6.5)によって精製して、最終生成物SN32(表II)6−19を得た。
収量:65mg(40%)
カラムクロマトグラフィー後のHPLC純度は、より近い不純物を伴う80.3%であった。これを分取HPLCによってさらに精製して、92.4%のHPLC純度の化合物を得た(20mg得られた)。
HNMR(CDCl,200MHz):δ7.7−7.6(d,J=6.4Hz,1H)、7.35−7.20(m,3H)、7.10−7.0(s,1H)、6.99−6.90(d,J=6.4Hz,1H)、6.80−6.60(m,2H)、5.95(s,1H)、5.85−5.80(s,1H)、5.25−5.10(brs,2H)、4.27−4.05(dd,J=6.4,9.6Hz,2H)、2.4−2.1(m,4H)、2.0−1.65(m,3H)、1.29−1.1(m,2H)。
MW:415.1(M−H)。
HPLC純度:92%。さらなる類似体を次のとおり合成した:化合物6−14(90mg、0.25mmol)をTHF:0.2N HClの混合物(10mL、9:1)に溶解し、2時間、室温で攪拌した。反応完了後、その混合物を酢酸エチル(2×10mL)で抽出し、NaSOで乾燥させ、ロータリーエバポレータで蒸発させて、68mgの粗生成物を得、それを精製せずにさらなる反応に利用した。
【0243】
上の粗製化合物(68mg、0.22mmol)を乾燥THF中に溶解し、この混合物に室温で2−クロロベンズアルデヒド(61mg、0.44mmol)および触媒量のpTSA(〜4mg)を添加した。その反応混合物を5時間、同じ温度、窒素雰囲気下で攪拌した。出発原料が消失した後、その混合物を乾燥トリエチルアミンで(そのpHを7に調整することによって)中和し、溶媒を蒸発させた。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中25%の酢酸エチル)によって精製して、化合物6−18を得た。
収量:32mg(34%)。
HNMR(CDCl,300MHz):δ7.9−7.8(d,J=7.1Hz,1H)、7.45−7.15(m,5H)、6.95−6.87(t,J=7.0Hz,1H)、6.85−6.77(d,J=7.2Hz,1H)、6.05(s,1H)、5.36(s,1H)、5.25(brs,2H)、4.2(2,2H)、3.85(s,3H)、2.35−2.1(m,4H)、2.05−1.82(m,3H)、1.3−1.1(m,2H)。
MW:429.1(M−H)。
HPLC純度:98%。
【0244】
実施例22
PPARガンマトランス活性化アッセイ
細胞培養、プラスミドおよびトランスフェクション
これは、PPARガンマ調節活性を判定するためのトランス活性化アッセイの例である
これらのアッセイでは、Gal4−PPARガンマLBD(Helledieら、2000)、UASx4−TK luc(Chen and Evans,1995)およびCMV−ベータ−ガラクトシダーゼ(市販、例えばClontech)を使用して、PPARガンマトランス活性化を証明した。UASx4−TK−lucレポーター構築物(この場合、UASは、「上流アクチベータ配列」を指す)は、4つのGal4反応性要素を含有する。プラスミドGal4−PPARガンマLBDは、UASに結合することによってUASx4−TK−lucレポータープラスミドをトランス活性化することができる、Gal4−DBD−PPARガンマ−LBD融合タンパク質(すなわち、PPARガンマのリガンド結合ドメイン、LBD、に融合したGal4のDNA結合ドメイン、DBD)をコードする。CMV−ベータ−ガラクトシダーゼプラスミド(この場合、CMVは、サイトメガロウイルスである)を実験値の正規化のために使用する。
【0245】
7.5% Aminomax supplement C−100(Gibco)、7.5%ウシ胎仔血清(FBS)、2mMのグルタミン、62.5μg/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを補足したAminoMax基礎培地(Gibco)(成長培地)においてマウス胚性線維芽細胞(MEF)を成長させた。あるいは、10%ウシ血清(CS)、62.5μg/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを補足したDMEM(成長培地)においてME3細胞(Hansenら、1999)を成長させた。それらの細胞を、一般には24ウエルプレートに置き換えて、トランスフェクション時に細胞が50〜70%の集密度になるようにした。
【0246】
Lipofectamin Plus(Invtrogen)またはMetaffectane(Biontex)を製造業者の説示に従って使用して、Gal4−PPARガンマLBD(Helledieら、2000)、UASx4−TK luc(Chen and Evans,1995)およびCMV−ベータ−ガラクトシダーゼ(市販、例えばClontech)でそれらの細胞をトランスフェクトした。簡単に言うと、24ウエルプレートにおいて、1ウエルごとに、30μLのDMEM(血清および抗生物質がないもの)中のUASx4TKluc(0.2μg)、Gal4−PPARガンマLBD(またはpM−hPPARガンマ−LBD;0.1μg)およびCMV−ベータ−ガラクトシダーゼ(0.05μg)を、1μLのメタフェクテネインを含有する30μLのDMEM(血清および抗生物質がないもの)と混合する。その混合物を室温で20分間インキュベートして、核酸−脂質複合体を形成させ、その後、およそ60μLを、50〜60%の集密度で細胞が入っているそれぞれのウエルに添加する。その後、それらの細胞を37℃でCOインキュベータにおいて6から12時間インキュベートし、その後、その培地を、抗生物質および関心のある物質(例えば、本明細書ではDPDと呼ぶ4−(Z)−6−(2−o−クロロフェニル−4−o−ヒドロキシフェニル−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)へキサン酸、または陽性対照としてロシグリタゾン(Avandia)、これらはすべて、DMSOに溶解したもの)を補足した培地または匹敵する容積のDMSO(全細胞培養容積の0.5%未満)で置換する。DPDは市販されており、または実施例1に従って合成することができる。12〜24時間後に細胞を回収し、標準的なプロトコルに従って、ルシフェラーゼおよびベータ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。
【0247】
PPARトランス活性化は、DMSOのみでより、ロシグリタゾン(公知PPARガンマアゴニスト)を伴うもののほうが40倍高く、10μMの4−(Z)−6−(2−o−クロロフェニル−4−o−ヒドロキシフェニル−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)へキサン酸を伴うもののほうが約10倍高かった(図2における「DPD」を参照のこと)。従って、4−(Z)−6−(2−o−クロロフェニル−4−o−ヒドロキシフェニル−1,3−ジオキサン−シス−5−イル)へキサン酸は、PPARガンマアゴニストである。
【0248】
予備試験の結果は、キラルHPLCによって精製したDPDエナンチオマーのいずれの間にもPPARガンマトランス活性化活性に差がないことを示した。しかし、その後の分析は、有意な差を示した(本明細書における下の実施例32を参照のこと)。例えば、一方のエナンチオマーは、PPARγに結合しないことが判明したが、他方は、4.9から12μMの範囲のIC50でPPARγに結合する。
【0249】
表IIは、DPD(SN1)の様々な類似体で得られた結果をまとめ、それらの活性を比較するものである。「P」は、10μMのDPD(表II中のSN1)と比較した10μMでの同様のPPARγ活性化活性を表し、「P−」は、10μMのDPDと比較した試験した物質の30μMでの同じ活性レベル(すなわち、より少ない効力)を表し;「P+」は、「P」より大きな活性レベル、および10μMのDPDに匹敵する3μMでの活性レベル(すなわち、より大きな効力)を表し;「P++」は、3μMでは10μMのDPDのものより高いが、1μMでは10μMのDPDのものより低い活性レベルを表し;ならびに「P+++」は、10μMのDPDに匹敵する1μMでの活性レベルを表す。「−」は、試験を行わなかったことを意味する。
【0250】
このアッセイを、本質的には上で説明したとおりに、しかし、PPARガンマリガンド結合ドメインでではなく完全長ヒトPPARガンマで行ったとき、完全長hPPARg2の活性化がAvandia陽性対照の64%に見られた(図3)。
【0251】
実施例23
PPARデルタトランス活性化アッセイ
この実施例は、PPARデルタ調節活性を判定するためのトランス活性化アッセイを説明するものである。
【0252】
DPDおよび他のリガンドを、本質的には実施例22に記載したとおりに、PPARデルタをトランス活性化するそれらの能力について試験する。しかし、このトランス活性化構築物は、mPPARデルタLBDであり、この場合、PPARデルタリガンド結合ドメインをPPARガンマのものの代わりに用い、L165041(市販)をロシグリタゾンの代わりに選択的PPARデルタアゴニストとして用いる。用いる条件下で、L165041は、PPARデルタトランス活性化を50倍より大きく増加させることが明らかになり、これに対して、DPDは、結果として、トランス活性化をまったくまたは殆ど生じさせなかった(図2参照)。従って、DPDは、PPARガンマに対する選択性を示す。
【0253】
このアッセイを本質的には上で説明したとおりに、しかし、PPARデルタリガンド結合ドメインでではなく完全長ヒトPPARデルタで行ったとき(完全長hPPARデルタの活性化)、活性化は観察されなかった(図4)。これは、PPARガンマに対するDPDの選択性を裏付ける。
【0254】
実施例24
PPARアルファトランス活性化アッセイ
この実施例は、PPARアルファ調節活性を判定するためのトランス活性化アッセイを説明するものである。
【0255】
DPDおよび他のリガンドを、本質的には実施例22において説明したとおりに、PPARアルファをトランス活性化するそれらの能力について試験した。しかし、このトランス活性化構築物は、mPPARアルファLBDであり、この場合、PPARアルファリガンド結合ドメインをPPARガンマのものの代わりに用い、GW7647(市販)をロシグリタゾンの代わりに選択的PPARアルファアゴニストとして使用する。用いた条件下で、GW7647は、PPARアルファトランス活性化を2倍より大きく増加させることが明らかになり、これに対して、DPDは、結果として、トランス活性化を全く生じさせなかった(図2参照)。従って、DPDは、PPARガンマに対する選択性を示す。
【0256】
実施例25
RXRトランス活性化アッセイ
この実施例は、レチノイン酸X受容体トランス活性化アッセイを説明するものである。
【0257】
化合物を、本質的には実施例22において説明したとおりに、RXRをトランス活性化するそれらの能力について試験した。しかし、このトランス活性化構築物は、hRXRαLBDであり、この場合、RXRリガンド結合ドメインをPPARガンマのものの代わりに用い、{4−[1−(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)エテニル]安息香酸}(LG1069、市販)をロシグリタゾンの代わりに選択的RXRゴニストとして使用する。用いた条件下で、LG1069は、RXRトランス活性化を5倍より大きく増加させることが明らかになり、これに対して、DPDは、結果として、トランス活性化を全く生じさせなかった(図2参照)。従って、DPDは、また、PPARガンマに対する選択性を示す。
【0258】
実施例26
脂肪細胞分化アッセイ
この実施例は、脂肪細胞分化を判定するためのアッセイを説明するものである。化合物を、それらが脂肪細胞分化を誘導するかどうか判断するために、およびまた、それらが脂肪細胞分化を阻害するかどうかを判断するために試験する。
【0259】
細胞培養および分化
7.5% Aminomax supplement C−100(Gibco)、7.5%ウシ胎仔血清(FBS)、2mMのグルタミン、62.5μg/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを補足したAminoMax基礎培地(Gibco)(成長培地)においてMEFを成長させた。集密時、1μMのデキサメタゾン(Sigma)、0.5mMのイソブチルメチルキサンチン(Sigma)、5μg/mLのインスリン(Sigma)、およびDMSOに溶解した10μMの試験化合物またはDMSOのみを添加した成長培地において、MEFは成長培地の分化を誘導した。その後、48時間毎に、培地を、5μg/mLのインスリンおよびリガンドまたはDMSOを補足した成長培地と取り替えた。
【0260】
簡単に言うと、化合物を脂肪細胞の誘導剤として試験するために、一般に24ウエル皿において、10%ウシ血清(CS)を含有するDMEM中で3T3−L1を集密に達するまで成長させる。集密に達した2日後(第0日)、10%ウシ胎仔血清(FBS)、1μMのデキサメタゾンおよび試験化合物(0.1、1および10μM)を補足したDMEMで細胞の分化を誘導する。BRL49653(100%DMSOに溶解した1.0μM)を陽性対照として使用する。48時間後、試験化合物または陽性対照を補足した10%FBSを含有するDMEMをそれらの細胞に再び供給する。第4日から、10%FBSを含有するDMEM中で細胞を成長させ、第8日まで1日おきに交換する。第8日に細胞を下で説明するようにOil Red Oで染色する。
【0261】
試験化合物を脂肪細胞分化の阻害剤として試験するために、3T3−L1細胞を、集密に達した2日後(第0日と指定する)まで、上のとおり成長させ、その後、10%ウシ胎仔血清(FBS)、1μMのデキサメタゾン(Sigma)、0.5mMのメチルイソブチルキサンチン(Sigma)、1μg/mLのインスリン(Roche Molecular Biochemidals)および試験化合物を含有するDMEMで細胞の分化を誘導する。試験化合物の溶媒の存在下で分化を誘導する細胞を陽性対照として使用する。48時間後、試験化合物または陽性対照を補足した10%FBSを含有するDMEMをそれらの細胞に再び供給する。第4日から、10%FBSを含有するDMEM中で細胞を成長させ、第8日まで1日おきに交換する。第8日に細胞を下で説明するようにOil Red Oで染色する。
【0262】
Oil Red O染色
上で説明したように培養した細胞をOil Red染色に使用する。皿をPBS中で洗浄し、細胞を3.7%パラホルムアルデヒド中で1時間固定し、(Hansenら、1999)に記載されているようにOil Red Oで染色する。Oil Red O溶液原液は、100mLのイソプロパノールに0.5gのOil Red O(Sigma)を溶解することによって調製する。Oil Red O作業溶液は、原液を水で希釈し(6:4)、その後、濾過することによって調製する。
【0263】
誘導アッセイにおいて、DPDは、ほとんど赤色染色を誘導しなかった。赤色染色は、脂肪細胞の存在の指標であるので、DPDは、脂肪細胞分化を誘導しないと推断することができる。しかし、DPDは、脂肪細胞分化の阻害に関して有意な効果を示さないので、脂肪細胞を阻害しない。表IIは、DPD(SN1)の異なる類似体で得られた結果をまとめたものであり、「0」は、DPDに類似した結果を表し、「−1」は、もっと少ない脂肪細胞分化を表し、「+1」は、より多い脂肪細胞分化を表し(両方とも、DPDを基準にして)、および「−」は、アッセイしなかったことを意味する。
【0264】
本質的には上で説明したとおりに、しかし、ヒト前駆脂肪細胞を使用して行ったアッセイも、DPDがDMSOと同様に殆んど赤色染色を誘導しないことを明示した。
【0265】
実施例27
完全アゴニストに対する部分アゴニストの同定
この実施例は、医薬として特に望ましい部分PPARアゴニストを判定するためのアッセイを説明するものである。
【0266】
簡単に言うと、本質的には実施例22において説明したとおりに、しかし、100nMのAvandia(完全アゴニスト)を漸増濃度の試験化合物(または対照として試験化合物なし)と共にそれぞれのウエルに添加して、トランス活性化アッセイを行う。Avandiaによるトランス活性化を減少させる化合物がPPAR部分アゴニストである。結果を図5に示す。
【0267】
この実施例では、PPARガンマ部分アゴニストを、PPARガンマへの結合から公知PPARガンマアゴニスト、例えばこの場合はAvandia、をはずすそれらの能力によって同定する。あるいは、本質的には実施例2において説明したようなトランス活性化アッセイを用いてPPARデルタの部分アゴニストを同定するために、他の公知完全アゴニスト、例えば、300nMのL165041を使用することができる。
【0268】
実施例28
部分PPARガンマアゴニストリガンド置換アッセイ
PPARガンマリガンド結合ポケットへの結合を分析するために、以下のようなInvtrogen POLARSCREEN PPAR 競合アッセイを用いて部分PPARガンマアゴニストを同定するためのさらなるアッセイを行う。
【0269】
1.20マイクロリットルの2X試験化合物をキュベットに分取する
2.20マイクロリットルの2X PPAR−LBD/Fluormone Green Complexを添加し、混合する
3.暗所で2時間、インキュベートする
4.蛍光偏光値を測定する
5.対照として、ロシグリタゾン(Avandia)を使用する
AVANDIAを基準にしてDPDでの結果を図6に示す。
【0270】
実施例29
グルコース取込みアッセイ
この実施例は、PPARガンマアゴニストとして同定された化合物が、細胞アッセイにおいてPPARガンマアゴニストの予想される生理作用、すなわち、グルコース取込みに対する作用、も誘導することを例証するものである。グルコース取込みアッセイは、インスリン抵抗性の治療のための化合物の適性を確立するために重要である。
【0271】
簡単に言うと、3T3−L1前駆脂肪細胞を12ウエルプレートにおいて集密に達するまで成長させる。細胞を無血清DMEMで洗浄し、1mLの同培地と共に37℃で1〜2時間インキュベートする。その後、それらの細胞をKrebs−Ringer−Hepes(KRP)バッファで洗浄し、その後、0.9mLのKRPバッファと共に37℃で30分間インキュベートする。インスリンをそれらの細胞に0、0.3、1および3nMの最終濃度で添加し、15分間、37℃でインキュベートする。10mMの[H]2−デオキシ−D−グルコース(1mCi/L)を補足した0.1mLのKrebs−Ringer−phosphate(KRP)バッファの添加によって、グルコース取込みを開始させる。37℃での10分のインキュベーション後、培地を吸引し、プレートを氷冷PBSで洗浄して、その誘導したグルコース取込みを停止させる。細胞を0.5mLの1%Triton X−100で溶解し、シンチレーションカウンタを用いて放射活性レベルを判定する。結果を図7に示す。
【0272】
要約すると、DPDおよび表IIに引用する多数の類似体は、PPARガンマアゴニストであることが立証されたが、物質10は、PPARガンマアンタゴニストであると思われる。物質7および13は、特に興味深い類似体である。これらは、低水準の脂肪細胞分化を生じさせるまたは脂肪細胞分化を全く生じさせずに、より高い効力を示すからである。
【0273】
【表2-1】
【0274】
【表2-2】
【0275】
【表2-3】
【0276】
【表2-4】
【0277】
【表2-5】
実施例30
トロンボキサン受容体活性
この実施例は、物質1(SN1)の一方のエナンチオマーのみがTP受容体に結合することを立証するものである。
【0278】
DPD(表IIのSN1)のそれぞれのエナンチオマー、すなわち、化合物(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸(エナンチオマー1)および(Z)−6−((2R,4R,5S)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸(下のキラルカラムでの溶離に従って、エナンチオマー2)を、以下の条件下でのキラルクロマトグラフィーによって単離した:
カラム:250×4.6mm Chiralpak AD−H 5μm
移動相:80/20/0.1のn−ヘプタン/エタノール/トリフルオロ酢酸
流量:1mL/分
検出:230nmでのUV
温度:25℃
サンプルを80/20のn−ヘプタン/エタノールに溶解した
エナンチオマー1が、このキラルカラムから最初に溶出し、エナンチオマー2がそのキラルカラムから二番目に溶出した。
【0279】
エナンチオマー1および2を、本質的にはHedbergら(1988)J Pharmacol.Exp.Ther.245:786−792およびSaussyら(1986)J.Biol.Chem.261:3025−3029によって説明されているように、トロンボキサン受容体結合について放射性リガンド結合アッセイで試験した。エナンチオマー((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)は、効力あるトロンボキサン受容体結合剤(IC50:0.841nM;Ki:0.549nM)であることが判明したが、エナンチオマー2は、結合しないようであった(IC50>10nM)。
【0280】
実施例31
癌細胞増殖の阻害
この実施例は、癌細胞の成長に対するDPDの抗増殖効果を立証し、本明細書に記載する類似体の癌の治療のための有用性を例証するものである。
【0281】
組換えバイオセンサー受容体活性を安定して発現するように遺伝子操作されたヒト子宮頚癌細胞系統(HeLa)および非癌細胞系統、HaCaT(Boukampら,1988,J.Cell Biol 106(3):761−771)を、Caspa Tag kit(例えばChemiconから市販されている)で用いた。ハイコンテントスクリーニング自動フローサイトメータを使用して増殖の検出を行った。
【0282】
DPD(物質1)を、1%DMSOに合わせて血清不含の細胞培養基中20μMに希釈した。HTSフローサイトメータ(FACS Calibur HTS、Becton Dickenson)のFL2(増殖性マーカーの希釈)チャネルにおいて48時間処理した後、96ウエルプレートにおいて二重反復試験で細胞事象の検出を行った。第1日に細胞を96ウエルプレートに接種した。第2日に細胞をDPDおよび適切な対照で処理し、第4日に分析を行った。
【0283】
DPDは、20マイクロMでHeLa細胞の増殖を90%阻害した。DPDは、非癌細胞系統HaCaTに対して効果を有さなかった。従って、これは、DPD(表II中のSN1)による癌細胞に対する選択的抗増殖効果を明示している。
【0284】
実施例32
この実施例は、マウスモデルにおける本発明のエナンチオマーのグルコース低下効果を例証するものである。
【0285】
材料および方法
KKAマウス
週齢6週の52匹の雄KKAマウスを市場で(例えば、Clea Japanから)入手し、到着し次第、高脂肪食を与えた。個々のマウスを、環境順化段階と実験段階の両方の間、IVC Type IIケージに収容した。食餌(高脂肪食)と水の両方を無制限に供給した。
【0286】
ケージごとに動物1匹。昼12時間、夜12時間。午前06:00に点灯。温度:21〜25℃。相対湿度目標範囲:55〜60%。
【0287】
マウスをそれらの4時間絶食時血糖に従って治療群に無作為に割り付けた。
【0288】
群:
ビヒクル、((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸(53mg/kg)、ロシグリタゾン(5mg/kg;陽性対照)。
【0289】
治療:
14日の強制経口栄養、1日2回、12時間ごと。
【0290】
完了:
最終投与の4時間後、非絶食状態。
【0291】
高脂肪食
ニュージャージー州、ニューブランズウィックのResearch Diets,Inc.からガンマ線照射高脂肪食を入手した(製品番号D12266BI)
血糖
Glucotrend stick(Roche Diagnostics Art # 28050)を使用して全血中または血清中(下記参照)、いずれかのグルコースを測定した。
【0292】
ヘマトクリット
ヘパリンが入っているガラスキャピラリーに血液を採取し、その後、それを室温で10分間、「Haematokrit 24」遠心分離機(Hettich)において15’200×gで遠心分離してヘマトクリット値を得た。
【0293】
血清パラメータ
以下の血清パラメータは、COBAS INTEGRA 800自動分析装置(スイスのRoche Diagnostics)を用い、供給業者によって提供された試薬およびプロトコルを用いて判定した。
【0294】
【数2】
HbA1c:Roche Diagnostick kit(オーダー番号11822039216)をその供給業者によって提供されたプロトコルに従って使用して、Hitachi 917自動分析装置で判定した。
【0295】
以下の血清パラメータは、マイクロタイタープレートフォーマットで測定した
インスリン:1マイクロリットルのサンプルにおいて、ELISA kit(Mercodia,Uppsala、オーダー番号10−1149−01)をその供給業者によって提供されたプロトコルに従って使用して判定した。
フルクトサミン:5マイクロリットルの血清において、Roche Diagnostics kit(オーダー番号11930010216)をその供給業者によって提供されたプロトコルに従って使用して、96ウエルフォーマットで判定した。
FAA:NEFA C kit(Wako Chemcals GmbH D−42468 Neuss)をその供給業者のプロトコルに従って使用して、遊離脂肪酸を測定した。
【0296】
第12日に行った食餌摂取量および体重測定を除き、すべての測定を投与第14日目に行った。
【0297】
第12日に、マウスの数は、10匹(ビヒクル)、14匹((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、53mg/kg)および10匹(ロシグリタゾン)であった。
【0298】
第14日に、マウスの数は、10匹(ビヒクル)、10匹((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、53mg/kg)および10匹(ロシグリタゾン)であった。
【0299】
血清中化合物レベルを9匹の((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸、53mg/kg)マウスにおいて測定した。
【0300】
結果
【0301】
【表4-1】
【0302】
【表4-2】
循環グルコースは、実際のレベルを反映するので、糖尿病の診断のために診療所で行われている主な測定の1つである。グルコース低下化合物の主目的は、循環グルコースを低下させることである。
【0303】
結論:(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸と陽性対照(ロシグリタゾン)の両方が、高血糖マウスにおいて循環グルコースレベルを低下させた(後者のほうがわずかに大きく低下させた)。これは、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸のグルコース低下効果を示している。
【0304】
フルクトサミン(グリコシル化血液タンパク質から形成される)およびHbA1c(グリコシル化ヘモグロビン)は、長期間にわたって組み込まれた循環グルコースレベルを反映する。血液タンパク質は、非酵素的様式で不可逆的にグリコシル化される。赤血球と比較すると血清蛋白質の寿命のほうが短いため、フルクトサミンは、より短い範囲のパラメータであると考えられる。
【0305】
結論:HbA1cレベルは、陽性対照(ロシグリタゾン)によっておよび(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸によって低下され、フルクトサミンレベルは、影響を受けなかった。PPAR−γアゴニストが、即効性を有さず、開始に多少の時間、ヒトでは2〜3週間、を要し、最大効果に達するためにさらに長い時間を要することは公知である。グルコースレベルは、HbA1cおよびフルクトサミンレベルに対して一様な影響を及ぼすには低い規模のものであり得、十分に長い期間存在できなかった。
【0306】
インスリンは、循環から組織、例えば筋肉、脂肪組織および脂肪へのグルコース取込みを増加させるホルモンである。KKAマウスは、高インスリン血症モデルであり、すなわち、インスリン不足はない。
【0307】
結論:陽性対照のみがインスリンレベルを低下させた。これは、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸が、循環グルコースレベルに対する効果によって示されるように、より低い効能を有することを示唆している。高インスリンレベルは、高い循環グルコースレベルまたはインスリン抵抗性のいずれかを反映する。それ故、グルコースレベルは低下するが、インスリン抵抗性依然として低下しなかったようである。おそらく、グルコースの効果は、起こったばかりであり、より小さく、抵抗性のほうが長くかかるからであろう。
【0308】
トリグリセリド(TG)、総コレステロールおよび遊離脂肪酸(FFA)の高い循環レベル、ならびに低い高密度リポタンパク質(HDL)コレステロースは、心血管疾患のリスク因子である。
【0309】
結論:(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、FFAを僅かに減少させた。陽性対照(ロシグリタゾン)は、HDLを増加させ、トリグリセリドおよびFFAを減少させた。
【0310】
チオグリタゾンの副作用の1つは、マウスおよびヒトにおいて体重を増加させることであるので、マウスの体重を測定した。さらに、体重減少は、副作用の指標である。
【0311】
結論:以前の観察と一致して、陽性対照(ロシグリタゾン)によってしか体重は増加しなかった。(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、体重を変えなかった。
【0312】
心臓重量も測定した:
結論:ロシグリタゾン群では、おそらく最終時点での体重増加を補って、心臓重量が増加される。(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸治療は、心臓重量に影響を及ぼさなかった。
【0313】
ヘマトクリットの増加は、脱水症、すなわち水分摂取量の減少、の傾向を示す。
【0314】
結論:ヘマトクリットに対する影響はいずれの群においても観察されなかった。これは、脱水症がなかったことを示唆している。
【0315】
一般的な肝機能マーカー酵素であるアルパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアルカリホスファターゼ(ALP)を測定して、肝臓に対して副作用がないことを確かめる。
【0316】
結論:血清AST、ALTおよびALPは、増加されなかった。これは、使用した用量に副作用が全くなかったことを示唆している。
【0317】
血清(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸レベルを測定して、動物がその循環に所期の化合物を実際に有することを詳細に記録した。
【0318】
実施例33
ヒト組換え(大腸菌(E.coli))PPARガンマ(h)結合アッセイ:
この実施例は、組換えヒトPPARガンマへの本発明の化合物の結合を例証するものである。
リガンド濃度:[3H]−ロシグリタゾン 10nM
非特異的結合:ロシグリタゾン(10μM)
インキュベーション:4℃で120分
試験化合物の存在下で得られた対照特異的結合のパーセント((測定された特異的結合/対照特異的結合)×100)として結果を表示する。IC50値(対照特異的結合の最大阻害の半分を生じさせる濃度)およびヒル係数(nH)は、Hillの式の曲線への当てはめ(Y=D+[(A−D)/(1+(C/C50)nH]、この式中、Y=特異的結合、D=最小特異的結合、A=最大特異的結合、C=化合物濃度、C50=IC50、およびnH=傾き係数)を用いて平均反復値で生成した競合曲線の非線形回帰分析によって決定した。Cerepで開発されたソフトウェア(Hill software)を用いてこの分析を行い、市販のソフトウェア Windows(登録商標)用SigmaPlot(登録商標)4.0((著作権)SPPS Inc.により1997)によって生成したデータとの比較により確認した。阻害定数(Ki)は、Cheng Prusoffの式(Ki=IC50/(1+(L/KD))、この式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度、およびKD=受容体に対する放射性リガンドの親和性)を用いて計算した。
【0319】
【表5】
実施例34
マウスモデルにおける動脈血栓症に対する効果
この実施例は、マウスモデルにおける血栓症に対する本発明の化合物の効果を例証するものである。
【0320】
材料
●ビヒクル(DMSO/PEG 400、5/95)
●ビヒクル中、1、3、10、30、100および300mg/kg((Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸)の用量
●食塩水
●アスピリン(ビヒクル中、100mgおよび600mg/kgの用量)
●アスピリン(Sanofi SynthelaboからのAspegic;食塩水に溶解したもの)
●クロピドグレル(Sanofi PharmaからのPlavix;HOに溶解したもの)
それらの溶液を食塩水中で3.3倍希釈し、100μL/25gを注射した。従って、(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸の100および300mg/kgの上述の用量は、30および100mg/kgの最終用量に対応する。
【0321】
PEGは非常に吸湿性であること、およびDMSOは非常に低濃度でエクスビボで血小板凝集に影響を及ぼすことに留意しなければならない。マウスにおける静脈内注射について、この用量は、好ましい溶媒でないようである。
【0322】
実験中、食塩水で希釈した薬物の可溶性カリウム塩を供給した。この調合物の100μL/25gを尾静脈に静脈内注射した(100mg/kgの用量)。
【0323】
血栓症モデル
溶液(100μL/体重25g)を2分かけて尾静脈に静脈内注射して、30mg/kgおよび100mg/kgの(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸の用量を達成する。200mg/kgのアスピリンを同じように与える。実験前6〜7時間の時点で20mg/kgの用量のクロピドグレルを強制経口栄養によって投与する。溶液をコード化し(クロピドグレル以外)、オペレータにはそのコードを知らせなかった。それぞれの群に割り付けた動物の体重を合わせた。使用したすべてのマウスは、週齢8〜10週の雄であり、100%Swiss遺伝的背景のものであった。
【0324】
動脈血栓症モデルは、本質的にはNagaiら(Nagai N,Lijnen HR,Van Hoef B,Hoylaerts MF,Van Vlijmen BJM.Nutritionally induced obesity reduces the arterial thrombotic tendency of Factor V Leiden mice.Thromb Haemost.2007 Oct;98(4):858−863.(オンラインで発表したもの;doi:10.1160/TH07−04−0306))によって記載されたとおりに行った。簡単に言うと、5%FeCl溶液をいっぱいにしみ込ませたティッシュペーパーの小片をマウスの単独大腿動脈上に2分間置き、その後、食塩水で入念に洗浄する(静脈内注射後約10分の時点で適用を開始する)。走査レーザードップラー流量計を使用して後脚の血流をモニターし、30分間、15秒間間隔でデジタル画像を収集する(FeCl処置を止めた1分後に開始)。それぞれの画像中の流量を反対側でのものに対する百分率として表示し、データを120すべての画像について平均して、総流量を決定する。同じ分析を10分間隔についても行う(これは、曲線下面積と本質的に同じ情報をもたらす)。流量0%を示した最初の画像として閉塞時間を記録する。処置前の流量を100%として記録し、閉塞した動脈におけるものを0%として記録する。実験終了時、血球数の決定のために心臓穿刺により0.01Mのクエン酸塩上に血液を回収する。遠心分離により血漿を準備し、薬物レベルの判定のために−20℃で保管する。
【0325】
二群間の差についての統計解析は、非母数スチューデントt検定によって行う。統計解析のために、閉塞時間>30分を30分に等しいと見なした。このアプローチは、統計的偏りを生じさせることがあり、異なる群では実験数が同じでないため、そうであることがいっそう多いことに留意しなければならない。p<0.05で有意と設定した。
【0326】
結果
合計59匹のマウスをこの試験で使用し、これらのうち4匹を、投薬スキームを至適化するための予備実験で使用した。1匹のマウス(D947)は、ビヒクル中100mg/kgの薬物用量での実験中に死亡した(薬物の注射の約15分後に相当するFeCl適用の5分後;死因不明)。
【0327】
閉塞時間
●200mg/kgのアスピリンは、閉塞時間に対して効果を有さなかった;ビヒクルと比較して多少短い閉塞時間は、ビヒクル群において閉塞が遅れる2つの実験に起因する(これらなしで、平均±SEM=7’18’’±0’33’’)。
【0328】
●クロピドグレルは、6/7実験において30分以内に閉塞を完全に防止する。1つの実験では、急速な閉塞が観察された。
【0329】
●ビヒクル中30mg/kgの用量での(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、アスピリンと比較して閉塞時間をわずかに延長する(p=0.024)が、ビヒクルと比較すると効果がない。
【0330】
●食塩水中100mg/kgの用量での(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸カリウムは、閉塞時間を延長した(アスピリンに対してp=0.0006;食塩水のみに対してp=0.017)。
【0331】
これらの結果は、マウスモデルにおけるFeCl誘導閉塞形成の阻害を示している。
【0332】
血流
●200mg/kgでのアスピリンは、全血流量に対して有意な効果を有さなかった(ビヒクルに対してp=0.53)。
【0333】
●クロピドグレルは、全血流量を有意に改善した(実験B130を含めて、ビヒクルに対して、p=0.0087)。
【0334】
●ビヒクル中30mg/kgの用量での(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、全血流量に対して効果を有さなかった(ビヒクルに対してp=0.84、およびアスピリンに対してp=0.65)。
【0335】
●ビヒクル中100mg/kgの用量での(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、アスピリンと比較して全血流量を改善した(p=0.055)が、ビヒクルと比較するとしなかった(p=0.45)。
【0336】
●すべての群において、時間に伴う血流量の進展は、観察された閉塞時間に適合していた。0〜10分の時間枠では、投与したビヒクル中100mg/kgの(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸は、アスピリンと比較して有意に高い流量を随伴した(p=0.0002)が、ビヒクルのみと比較するとしなかった(p=0.11)。同じ傾向が、もっと遅い時間点で観察された。
【0337】
●食塩水中100mg/kgの用量での(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸カリウムは、食塩水と比較しても(p=0.0032)、アスピリンと比較しても(p=0.0021)、全血流量を有意に改善した。さらに、同じ時間枠で、食塩水中100mg/kgの(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸カリウムは、食塩水のみと比較しても(p=0.009)、アスピリンと比較しても(p=0.0006)有意に高い血流量を随伴した。同じ傾向が、もっと遅い時間点で観察された。10〜20分間、食塩水中100mg/kgの(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸 で、食塩水に対してp=0.0066、およびアスピリンに対してp=0.027;20〜30分間、食塩水に対してp=0.016、およびアスピリンに対してp=0.031。
【0338】
血球分析
表VIは、観察期間の終わりに取ったサンプルに対して行った血球分析の結果をまとめたものである。(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸 を表VIではEVと呼ぶ。
【0339】
アスピリンおよびクロピドグレルと比較して、大きな変化は観察されなかった。幾つかの中等度の違いが白血球分布において観察された。
【0340】
【表6】
実施例35
実施例30において説明したように、トロンボキサン受容体結合アッセイを行った。
【0341】
TP受容体放射性リガンド結合試験:
これらの実験条件[ヒト組換えHEK−293細胞、リガンド:5nM[H]SQ−29548、ビヒクル:1%DMSO、インキュベーション時間、温度:25℃で30分、インキュベーションバッファ:50mM Tris−HCl、pH7.4、154mM NaCl、非特異的リガンド:1μM SQ−29548、KD:9.4nM、Bmax:5.1pmol/mg タンパク質、特異的結合:93%]を用い、Hedberg A,Hall SE,Ogletree ML,Harris DN and Liu E C−K(1988)Characterization of [5,6−3H]SQ 29,548 as a high affinity radioligand,binding to thromboxane A2/prostaglandin H2−receptors in human platelets.J Pharmacol Exp Ther.245(3):786−92792、およびSaussy DL Jr,Mais DE,Burch RM and Halushka PV(1986)Identification of a putative thromboxane A2/prostaglandin H2 receptor in human platelet membranes.J Biol Chem.261(7):3025−9に従って、アッセイを行った。
【0342】
ヒト血小板トロンボキサンシンターゼアッセイ:
これらの実験条件[基質:10μM PGH、ビヒクル:1%DMSO、プレイインキュベーション時間、温度:25℃で15分、インキュベーション時間、温度:25℃で3分、インキュベーションバッファ:10mM Tris−HCl、pH7.4、定量法:TxBのEIA定量]を用い、Borsch−Haubold AG,Pasquet S,Watson SP.(1998)Direct inhibition of cyclooxygenase−1 and −2 by the kinase inhibitors SB 203580 and PD 98059.SB 203580 also inhibits thromboxane synthase.J Biol Chem.273(44):28766−72、およびIizuka K,Akahane K,Momose D,Nakazawa M,Tanouchi T,Kawamura M,Ohyama I,Kajiwara I,Iguchi Y,Okada T,Taniguchi K,Miyamoto T,Hayashi M.(1981)Highly selective inhibitors of thromboxane synthetase.1.Imidazole derivatives.J Med Chem.24(10):1139−48に従って、アッセイを行った。
【0343】
TP受容体血小板凝集−ウサギ:
これらの実験条件[ニュージーランドウサギ(2.75±0.25kg)血小板リッチ血漿、ビヒクル:0.3%DMSO、アッセイ:1.5μM U−46619誘導血小板凝集の阻害、インキュベーション時間、温度:37℃で5分、インキュベーションバッファ:クエン酸三ナトリウム(0.13M)で処理した血小板リッチ血漿、浴容量:0.5mL、標定時間:5分、定量法:光学密度変化]を用い、Patscheke,H.,and Stregmeier,K.(1984)Investigations on a selective non−prostanoic thromboxane antagonist,BM13,177,in human platelets.Thrombosis Research 33:277−288に従って、アッセイを行った。
【0344】
TP受容体血小板凝集−ヒト:
これらの実験条件[ヒト(60±10kg)血小板リッチ血漿、ビヒクル:0.3%DMSO、アッセイ:3μM U−46619誘導血小板凝集の阻害、インキュベーション時間、温度:37℃で5分、インキュベーションバッファ:クエン酸三ナトリウム(0.13M)で処理した新鮮な血小板リッチ血漿、浴容量:0.5mL、標定時間:5分、定量法:光学密度変化]を用い、Patscheke,H.,and Stregmeier,K.(1984)Investigations on a selective non−prostanoic thromboxane antagonist,BM13,177,in human platelets.Thrombosis Research 33:277−288に従って、アッセイを行った。
【0345】
IC50計算:
データを半対数変換し、その後、応答に対するlog(アゴニスト)を用いる4変数用量応答曲線 Y=最低値+(最高値−最低値)/(1+10^((LogEC50−X)ヒルの傾き))への非線形回帰−−GraphPad Prismソフトウェア(http://graphpad.com/help/prism5/prism5help.html?usingnonlinear_regression_step_by_s.htm)の可変傾き関数−−を用いて分析した。
【0346】
【数3】
化合物A:(Z)−6−((2R,4R,5S)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸(エナンチオマー2)
化合物B:(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−yl)ヘキサ−4−エン酸(エナンチオマー1)
化合物3:(Z)−6−(−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
化合物4:(Z)−6−((2R,4R,5S)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸
化合物5:(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸。
【0347】
実施例36
(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸の溶媒和物および塩の調製
(Z)−6−((2S,4S,5R)−2−(2−クロロフェニル)−4−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン−5−イル)ヘキサ−4−エン酸(表IIのSN1)は、油のようなゴムである。この酸を、下のスキームに図示するように、様々な固体塩および溶媒和物に転化させることができる。
【0348】
【化27】
酸(14.08g)をt−ブチルメチルエーテル(TBME、32mL、2.25容量)で研和した。その溶液を室温で30分間、そして氷浴内で30分間攪拌した。このようにして得られた沈殿を濾過によって回収し、氷冷TBME(2×15mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて固体を得た(8.17g、58%)。得られた固体を、Bruker 400MHz NMR計器を使用して特性付けし、Cu Kα放射線を使用するBruker AXS C2 GADDS回折計(40kV、40mA)でX線粉末回折パターンを収集し、TA Instruments Q500 TGAを用いて熱重量分析(TGA)を行った。NMRおよびXPRDデータを、それぞれ、図11および12に示す。
【0349】
H NMRスペクトルおよびTGAトレースは、存在する0.72molのTBMEと一致する。TGAおよびDSCトレースは、2つの脱溶媒段階を含むことを示唆している。第一の脱溶媒吸熱は、55℃で開始し、第二の脱溶媒吸熱は、75℃で発生する。溶融吸熱の証拠はない。化合物の純度は、HPLCにより98.0%と判定された。
【0350】
可変温度XRPDは、この材料が、70℃の温度まで同じ結晶形であることを示す。より高い温度ではこの材料がゴムになり、非晶質パターンを与える。30℃に冷却したとき、この材料は、非晶質XRPDパターンを有するゴムのままである。
【0351】
エルブミン塩へのTBME溶媒和物の転化
結果として生じたTBME遊離酸溶媒和物(8.07g、20.0mmol)をニトロメタン(16μL)に溶解した。常時攪拌しながらt−ブチルアミン(2.5mL、1.2当量)を室温で添加し、その後、結果として生じた残留物をさらに30分間、氷上で攪拌して、固体のようなゴムを得た。そのゴムをアセトニトリル(20mL)で研和し、結果として生じた沈殿を濾過によって回収した。その固体を均一な粒径にし、真空下、室温で48時間、その後、40℃でさらに72時間乾燥させて、7.46g(78.5%)の白色固体材料を得た。そのH NMRおよびXPRD回折図を、それぞれ、図13および14に示す。H NMRは、HPLCにより純度97.8%であることが判明した固体中に0.17molのニトロメタンおよび1molのt−ブチルアミンが存在することを示す。乾燥によってニトロメタン量をさらに減少させる。TGAからのデータは、〜100℃での漸減的重量喪失開始(これは、t−ブチルアミンの喪失と一致する)を示し、ならびにDSCは、130℃での吸熱開始(これも、t−ブチルアミンの喪失と一致する)を示す。
【0352】
もう1つの方法では、酸(452.23mg、1.12mmol)を室温でIPA(2mL)に溶解した。その溶液を50℃に加熱し、t−ブチルアミンを添加した。1時間後、結晶質材料が沈殿した。IPAの体積を23mLに増加させ、その材料を熱で再び溶解し、48時間かけて室温に冷却した。結晶質の白色材料が収率34%で得られた。この材料の特性付けにより、それは、95.4%の化学純度を有するIPA溶媒和物と同定された。回折図(図15)は、IPA溶媒和物としてのその化合物のエルブミン塩の形成を示す。
【0353】
本明細書に引用するすべての出版物および特許出願は、それぞれ個々の出版物または特許出願が参照により取り入れられていると具体的におよび個々に示されているがごとく、本明細書に参照により取り入れられている。
【0354】
明確に理解できるように図表および実施例により多少詳細に上の発明を説明したが、本発明の教示にかんがみて、添付の特許請求の範囲において定義する本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明に一定の変更および修正をなすことができることは、通常の当業者には容易に理解されるであろう。
図8
図9
図1
図2
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