(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主要管腔の遠位端の尖端に係合するピンアセンブリをさらに備え、該ピンアセンブリは、ばね荷重が掛けられ、該ばね荷重の解放時に、該ピンアセンブリは、該尖端を解放する、請求項1に記載のステント装填カテーテルアセンブリ。
前記カテーテルの本体内に延在する管腔をさらに備え、該管腔は、流体を受容するポートと、該ポートから該流体の漏出を防ぐための該ポートの遠位かつ該カテーテルの本体内に少なくとも1つのガスケットを備え、該カテーテルの少なくとも一部分は、それを通る該流体の通過によって洗浄される、請求項1に記載のステント装填カテーテルアセンブリ。
前記ステントデバイスは、ステントと、該ステントに係合されるグラフトとを備え、該ステントデバイス上の前記少なくとも1つの放射線不透過性マーキングは、該グラフト上にある、請求項7に記載のステント装填カテーテルアセンブリ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のデバイス、システムおよび方法を説明する前に、本発明は、説明される特定の治療への応用および移植部位に限定されず、そのようなものとして、異なり得ることを理解されたい。本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであって、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0034】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術において当業者に一般に理解されるものと同一の意味を有する。「近位」および「遠位」という用語が使用される場合、ユーザに関連する位置または場所を示すために理解されるべき本発明の送達および展開システムを意味し、ここで近位はユーザにより近い位置または場所を意味し、遠位はユーザから遠く離れた位置または場所を意味する。本発明の植込型デバイスを参照して使用される場合、これらの用語は、植込型デバイスがシステム内に動作可能に配置される場合に、送達および展開システムに関連する位置または場所を示すと理解される。そのようにして、近位は送達および展開システムにより近い位置または場所を意味し、遠位は送達および展開システムの遠位端により近い位置または場所を意味する。本明細書で使用される「移植片」または「植込型デバイス」という用語は、ステント、グラフト、ステントグラフト等を備えるデバイスを含むが、それに限定されない。
【0035】
ここで、本発明のデバイス、システム、および方法の例示的実施形態および変形例に関する以下の説明によって、本発明についてさらに詳細に説明する。本発明は、概して、ステント、グラフト、またはステントグラフトの形態の管状部材を含む植込型デバイスを含み、デバイスは、主要または一次管状部材から側方に延在する1つ以上の分岐または横管状部材をさらに含み得る。本発明は、体内の標的移植部位おける植込型デバイスの経皮、血管内送達および展開のためのシステムをさらに含む。移植部位は、任意の管状または中空組織管腔あるいは器官であり得るが、しかしながら、大部分の典型的な移植部位は、血管構造、特に大動脈である。本発明の特徴は、それが、2つ以上の交差する管状構造を含む適用に対応し、そのようにして、特に、大動脈弓および腎臓下大動脈等の血管系を治療する局面において適していることである。
【0036】
(本発明の植込型デバイス)
ここで図、特に
図1Aおよび1Bを参照して、本発明の植込型デバイスの例示的実施形態について説明する。デバイスのそれぞれは、一次または主要管状部材、および少なくとも1つの側方に延在する管状分岐を有するが、しかしながら、本発明の植込型デバイスは、側枝を有する必要はない。
【0037】
図1Aは、一次管状部分、本体または部材4、および体内の側面開口によって本体4と相互接続され、流体連通する、側方に延在する側枝6a、6b、および6cを有する植込型デバイス2の一変形例を説明する。主要管状部材4の近位および遠位端は、頭頂部または先端8で終結し、その数は異なり得る。側枝6a、6b、および6cの遠位端は、頭頂部または先端10a、10b、および10cでそれぞれ終結し、その数も異なり得る。デバイス2は、特に大動脈弓における移植用に構成され、一次管状部材4は、弓壁内に配置可能で、管状枝6a、6b、および6cは、腕頭動脈、左総頚動脈、および左鎖骨下動脈内にそれぞれ配置可能である。
【0038】
以下でさらに詳細に記述されるように、対象送達および展開システムの展開または取付部材は、10a、10b、および10cを通して、またはデバイス2の尖端の遠位端から延在する小穴(図示せず)を通してループにする。本発明の取付部材は、任意の細長い部材であってもよく、ストリング、フィラメント、ファイバー、ワイヤ、ねじれケーブル、チューブ、またはステントの種々の管腔の遠位端に解除可能に取付可能な他の細長い部材を含むが、それらに限定されない。解放可能な取付手段は、電解浸食、熱エネルギー、磁気的手段、化学的手段、機械的手段、または任意の他の制御可能な分離手段を含むが、それらに限定されない。
【0039】
図1Bは、一次管状部分、または部材14、および体内の側面開口によって本体14と相互接続され流体連通する、側方に延在する側枝16a、16b、および16cを有するデバイス12の別の変形例を説明する。主要管状部材14の近位および遠位端は、頭頂部または先端18で終結し、
図1に関して前述のように採用され、一方、側枝16aおよび16bの遠位端は、頭頂部または先端18aおよび18bでそれぞれ終結する。デバイス12は、特に腎臓下大動脈における移植用に構成され、一次管状部材14は、大動脈壁内に配置可能で、管状枝16aおよび16bは、右および左腎臓動脈内にそれぞれ配置される。
【0040】
当業者は、対象移植片が任意の数および構成の管腔(例えば、側枝管腔のない単一の主要管腔、主要管腔と1つ以上の側枝管腔)を有し得ることを理解し、ここで、1つ以上の側枝管腔は、主要管腔の長さに沿って任意の適切な場所に、主要管腔の縦軸に対して任意の角度で配置され得、2つ以上の側枝管腔が存在する場合は、管腔は互いに対して軸方向に間隔があけられ、および円周方向に角度を付けられて、移植片が配置される標的血管系を適応させ得る。加えて、移植片の管腔の長さ、直径、および形状(例えば、曲率半径)は、必要に応じて異なり得、それが配置される血管に対応する。ある適用においては、特に、主要血管と支流血管との間の接合点付近に位置する比較的に大きい頚部分を有する血管動脈瘤を治療する場合、側枝管腔が平均よりも比較的に長い場合は、分岐ステントを提供することが好ましい場合がある。より長いステント分岐は、それらの遠位端において十分な長さを維持しながら、頚部開口を架橋して、ステントを係止するために十分な血管側枝への距離を延長することができる。
【0041】
典型的には、大部分の血管のための対象デバイスは、約1cm〜約25cmの範囲内の限定されない長さ、および約2mm〜約42mmの範囲内の限定されない直径を有する主要枝管腔と、約0.5cm〜約8cmの範囲内の限定されない長さ、および約2mm〜約14mmの範囲内の限定されない直径を有する側枝管腔を有する。大動脈適用の場合は、主要管腔の限定されない長さは、典型的には、約8cm〜約25cmの範囲内であり、限定されない直径は約15mm〜約42mmの範囲内であって、側枝管腔は約2cm〜約8cmの範囲内の限定されない長さ、および約5mm〜約14mmの範囲内の限定されない直径を有する。寸法がステントの主要管腔の直径である場合、縮小直径は、非縮小直径の10分の1に比較的近い可能性が高い。腎臓適用の場合は、主要枝管腔は約2cm〜約20cmの範囲内の限定されない長さ、および約12mm〜約25mmの範囲内の限定されない直径を有し、側枝管腔は約0.5cm〜約5cmの範囲内の限定されない長さ、および約4mm〜約12mmの範囲内の限定されない直径を有する。冠動脈適用の場合は、主要枝管腔は約1cm〜約3cmの範囲内の限定されない長さ、および約2mm〜約5mmの範囲内の限定されない直径を有し、側枝管腔は約0.5cm〜約3cmの範囲内の限定されない長さ、および約2mm〜約5mmの範囲内の限定されない直径を有する。神経血管系等のより小さい血管における適用の場合は、これらの寸法は当然ながらより小さくなる。ある適用において、特に主要血管と支流血管との間の接合点付近に位置する比較的に大きい頸部分を有する血管動脈瘤を治療する場合、分岐ステントを提供することが好ましい場合があり、側枝管腔は、比較的に平均よりも長い。より長いステント枝は、頸部の開口を架橋する一方で、それらの遠位端に十分な長さを維持し、ステントを固定するための十分な血管側枝への距離を延長することができる。
【0042】
治療または診断組成物またはデバイスが対象移植片と一体化され得ることも考慮される。かかるデバイスは、心臓弁(例えば、大動脈または肺弁)および静脈弁等の人工弁、血流、圧力、酸素濃度、グルコース濃度等を測定するためのセンサ、電気ペーシングリード等を含むが、それらに限定されない。例えば、
図1Eで説明されるように、大動脈起始部を治療するための移植片210が提供され、主要管腔212の遠位端で採用される機械的または生物学的人工弁216を含む。デバイス210は、それぞれ右および左冠状動脈口内に配置するために調節可能に整列した、2つのより小さい、概して対向する側枝管腔214aおよび214bをさらに含む。大動脈弓の前、内部、または後の任意の位置で終結する場合に選択した距離まで伸長、例えば、下行大動脈に伸長するように、ステントグラフトの長さが選択される。大動脈弓支流血管を適応させるために、任意の数の追加の側枝を提供してもよい。
【0043】
当業者は、任意の適切なステントまたはグラフト構成を提供して、大動脈−腸骨接合、大腿骨−膝窩接合、短頭動脈、後部脊椎動脈、冠状動脈分岐、頚動脈、上下腸間膜動脈、一般胃腸動脈、頭蓋動脈、および神経血管分岐を含むが、それらに限定されない、2つ以上の血管(例えば、分岐、三叉、四裂等)、交差点またはその付近の他の血管位置における他の適用を治療し得ることを認識するであろう。
【0044】
本発明のステントおよびグラフトは、当該技術において知られる任意の適切な材料で形成され得る。好ましくは、ステントはワイヤで構成されるが、任意の適切な材料で代用されてもよい。ワイヤステントは、弾性的に柔軟である必要があり、例えば、ステントは、ステンレス鋼、エルジロイ、タングステン、プラチナ、またはニチノールで形成され得るが、任意の他の適切な材料をこれらの一般的に使用される材料の代わりに、または加えて使用してもよい。
【0045】
ステントは、任意の適切なワイヤにパターを形成させるか、またはチューブまたは平面シートから切り出されてもよい。一実施形態では、全体ステント構造は、単一ワイヤ織布から、例えば閉じた鎖状リンク構成を形成する相互接続セルのパターンに加工される。構造は、まっすぐな円筒形構成、湾曲管状構成、テーパ中空構成を有し、非対称のセルサイズを有してもよく、例えば、セルサイズは、ステントの長さに沿ってまたは外周で異なり得る。あるステント実施形態においては、側枝管腔のセルサイズは、遠位方向に徐々に減少する。これは、側枝管腔の最遠部分を選択的に伸張する能力をさらに促進し、したがって、医師が側枝の遠位端を指定血管にガイドすることを容易にする。主要ステント管腔の末端および/または1つ以上の側枝ステント管腔の末端はフレアであり得る。ステントのストラット(すなわち、セルを形成する基礎部分)は、直径(ワイヤ実施形態における)または厚さあるいは幅(シートおよびカットチューブ実施形態における)が異なり得る。
【0046】
特定の一実施形態においては、ステントは、単一ワイヤから構成される。単一ワイヤステント構成は、ステントの長さに沿う接続ポイントの選択的な飛び越しを介して、治療対象の生体構造における任意の可能な変形に対応し得る選択範囲内で、互いに関する、および主要ステント管腔に関する側枝ステントの角度配向における適応性を提供することにおいて有利である。かかる側枝管腔の角度配向は、軸方向、半径方向、または両方であり得る。
【0047】
図1Cは、側枝管腔24および26がそれぞれ、主要管腔22に対して角度αによって画定される角度配向を有し、互いに対して角度βによって画定される角度配向を有する移植デバイス20を示す。
図1Dは、側枝管腔22と24との間の角度θによって画定される円周配向を示す移植デバイス20である。種々の角度の典型的な範囲は、角度αの場合は約10°〜約170°、角度βの場合は約0°〜約170°、角度θの場合は0°〜360°である。これらの配向は、必然的に限定されない事前展開された状態、すなわち、中立状態において偏向配向を有するステントを生じる加工プロセスによって提供され得る。これらの配向のうちの1つ以上を、それぞれの血管管腔内での分岐管腔の送達および配置時に、上で提供される角度範囲内で選択的に調整してもよい。この設計もまた、ステントの主要管腔を伸張および/または短縮することによって、側枝ステント間の線形間隙の適応性を可能にする。さらに、側枝部分は、引き伸ばされることにより、大型ステントをより小さい支流
血管に配置することができ、それによって、ステントと血管壁との間に適度な接合を提供する。ステントの適応性は、固定または係止に必要な半径方向力を低下させず、デバイスの移動および内部漏出を回避する。
【0048】
対象デバイスは、それらの管腔が、それらの長さおよび周長に沿って一定また
は可変の剛性/可撓性を有し得るように加工することもできる。より優れた可撓性によって、送達中および移植部位において遭遇する曲線血管系に、より良好に適応できる。かかる特徴は、大動脈弓の比較的「タイトな」湾曲に対して、大動脈弓ステント留置適用において極めて有利である。一方、特に管腔の末端部分において強化された剛性は、より大きな半径方向力を付与し、それによって配置後の血管系内におけるデバイスの移動に耐える。可変の可撓性/剛性は、種々の方法で実装され得る。
【0049】
デバイスの加工に使用される1つまたは複数のストラット(すなわち、ステントセルを形成する基礎部分)のゲージまたは厚さは変化し得、より厚いゲージがより高い剛性を付与し、より薄いゲージがより高い可撓性を付与する。ステントのストラットは、直径(ワイヤ実施形態において)または厚さあるいは幅(シートおよびカットチューブ実施形態において)が変化し得る。一変形例においては、ゲージがその長さに沿って選択的に変化する場合は、単一ワイヤまたはフィラメントを使用してもよい。より厚いゲージ部分を使用して、少なくともステント管腔の末端部分を形成し、それらの半径方向力を増加させ、それによって、ステントの移動リスクを減少させる。反対に、ワイヤのより狭いゲージ部分は、主要ステント管腔の少なくとも中心部分(および側枝管腔の一部)を形成し、末端部分よりも比較的に可撓性が高く、蛇行性または湾曲する血管系内のステントの送達を容易にするか、またはデバイスをより容易に圧縮して送達シースに入れることができる。大動脈ステント適用の場合は、このことは、残りの中心部分よりも大きい直径を有するその末端のそれぞれに、1〜2cmの部分を有するワイヤによって達成され得る。ワイヤの断面直径を選択的に減少させる別の実施例は、側枝ステントのストラットの直径をより小さくすることである。
【0050】
他の実施形態では、2つ以上のワイヤが使用され、ワイヤはそれぞれ、各長さに沿って一定のゲージを有するが、ワイヤごとに異なる。高い剛性が必要な場合は、より大きいゲージのワイヤを使用して、ステント末端または他の領域を形成してもよく、一方で高い可撓性が必要な場合は、より狭いゲージのワイヤを使用して、他の部分、例えば、ステント管腔の中心部分を形成してもよい。加えて、または代替として、ステントの周辺の選択ポイントまたは場所において、より大きいゲージのワイヤを選択的に二つ折りにするか、またはより狭いゲージのワイヤによって巻かれることにより、それらの特定部位における剛性を増強することができる。
【0051】
一変形例においては、2つ以上のワイヤを採用して、デバイスを形成することができ、それによってワイヤ末端、すなわち、2つのワイヤから形成されたデバイスの場合は4つのワイヤ末端が結合される。ワイヤが互いに交差する、および/またはそれらの末端が結合する管腔を中心とした位置を選択して、管腔に沿うか、またはその周囲のある領域において剛性を最小にし、および/またはデバイスの1つ以上の他の領域において剛性を強化し、すなわち、ステントの部分の間に相対的な剛性および可撓性を提供する。例えば、大動脈弓適用において、下壁はよりタイトな曲率半径を有するため、弓の下壁に沿って整列させることが意図されるステントの主要管腔の部分は、弓の上壁に沿って整列させることが意図されるステントの部分より優先的に可撓性が比較的に高く、および/または剛性が低い。したがって、ステントのこの部分に沿うワイヤの接合および/または交差点を最小化することが望ましい場合がある。
【0052】
主要管腔と側枝管腔との間の接合点において、より高い剛性を提供することが望ましい場合もある。大動脈瘤、および特に大動脈弓と1つ以上のその支流血管との交差点に位置する動脈瘤は、血管系内に比較的大量の明確に画定されていないペリメータ、すなわち、「サック(袋)」をもたらし得る。それ自体を強化する血管壁がない場合、ステント接合点はよりねじれ易くなり得る。ステントの接合点を補強することによって、かかるねじれを回避できる。
【0053】
同時係属中の2006年10月6日出願の米国特許出願第11/539,478号およびこれと同時に出願された別の米国特許出願(代理人整理番号DUKEPZ01101を有する)は、いずれも血管移植片および同一を加工する方法という名称であり、参照することによって本明細書に組み込まれ、上述の剛性および可撓性特性を選択的に強化するための多くの特徴を有するステントデバイスを開示している。
【0054】
前述のように、本発明の植込型デバイスは、ステントグラフト、またはステントされたグラフト、あるいはグラフト付きステントと称される2つの組み合わせを含み得る。ステントグラフトのグラフト部分は、織物、ポリマー、ラテックス、シリコンラテックス、ポリエトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ダクロンポリエステル、ポリウレタンシリコン、ポリウレタンコポリマー、または生体組織等の他の適切な材料から形成され得る。グラフト材料は、設置および利用の影響に耐えるために、可撓性で耐久性がある必要がある。当業者は、対象発明のグラフトが、多くの異なるよく知られた方法、例えば、織ることによって調製されるか、または基板を所望の材料に浸すことによって形成され得ることを認識するであろう。例示的なグラフト加工方法は、上で参照される同時出願の米国特許出願において開示される。
【0055】
グラフト材料(およびステント)を形成するために使用され得る生体組織は、細胞外マトリクス(ECM)、無細胞化子宮壁、脱細胞化窩洞層または膜、無細胞尿管膜、臍帯組織、脱細胞化心膜およびコラーゲンを含むが、それらに限定されない。適切なECM材料は、哺乳類宿主源に由来し、小腸粘膜下組織、肝臓基底膜、膀胱粘膜下組織、胃粘膜下組織、真皮等を含むが、それらに限定されない。本発明との使用に適切な細胞外マトリクスは、哺乳類小腸粘膜下組織(SIS)、胃粘膜下組織、膀胱粘膜下組織(UBS)、真皮、またはヒツジ、ウシ、ブタ、または任意の適切な哺乳類に由来する肝臓基底膜を含む。
【0056】
温血脊椎動物の粘膜下組織(ECM)は、組織グラフト材料において有用である。小腸に由来する粘膜下組織グラフト組成物は、米国特許第4,902,508号(以下’508号特許と称する)および米国特許第4,956,178号(以下’178号特許と称する)において説明されており、膀胱に由来する粘膜下組織グラフト組成物は、米国特許第5,554,389号(以下’389号特許と称する)において説明されている。これらの(ECM)組成物のすべては、概して、同一組織層で構成され、同一方法で調製されるが、一方は出発材料が小腸であり、他方は膀胱であることが異なる。’508号特許において詳述される手順は、参照することによって’389号特許に組み込まれ、’178号特許に詳述される手順は、機械的磨耗ステップを含み、少なくとも小腸または膀胱の粘膜の管腔部分、すなわち、’178号特許に詳述されるように、上皮板粘膜(上皮)および固有層を含む、組織の内側層を除去する。粘膜を磨耗、剥離、または切削することで、上皮細胞およびそれらの関連基底膜、および固有層の大部分、少なくとも系統的な密集した結合組織層レベルまで薄い層に裂く。したがって、組織グラフト材料(ECM)、上皮基底膜を含まず、粘膜下組織および細胞層で構成される軟組織置換材料として既に認識されている。
【0057】
基底膜を有する典型的な上皮の実施例は、皮膚の上皮、腸、膀胱、食道、胃、角膜、および肝臓を含むが、それらに限定されない。上皮基底膜は、上皮細胞の基底側面と隣接する細胞外材料の薄いシートの形態で形成され得る。同様の種類の凝集した上皮細胞のシートは、上皮を形成する。上皮細胞およびそれらの関連上皮基底膜葉、粘膜の管腔部分上に配置することができ、体内の管状および中空器官および組織の内部表面で構成される。結合組織および粘膜下組織は、例えば、基底膜の腹部または深部側に配置される。上皮基底膜の腹部側に配置されるECMの形成に使用される結合組織の実施例は、腸および膀胱(UBS)の粘膜下組織、および皮膚の真皮および皮下組織を含む。粘膜下組織は、約80ミクロメータの厚さを有し、主に(98%以上)細胞、好酸性染色(H&E染色)細胞外マトリクス材料で構成される。繊維芽細胞と一致する偶発的血管およびスピンドル細胞は、組織全体にランダムに散在し得る。典型的には、材料を生理食塩水で洗浄し、使用するまで凍結水和状態で選択的に保存する。
【0058】
流動化UBS、 例えば、米国特許第5,275,826号に記載されるように、流動化腸粘膜下組織の調製と同様の方法で調製することができ、その開示は、参照することによって明示的に本明細書に組み込まれる。UBSは、治療、切断、研削、剪断等によって細分される。凍結または凍結乾燥状態でのUBSの研削が好適であるが、良好な結果は、粘膜下組織片の懸濁液を高速(高い剪断)ブレンダーで処理して水を取り除き、必要であれば、遠心分離して過剰な水分を静注することによって、同様に得ることができる。加えて、細分された流動化組織は、トリプシンまたはペプシン等のプロテアーゼを用いた膀胱粘膜下細胞の酵素消化、または該組織を溶解して、実質的に均一な溶液を形成するために十分な期間、他の適切な酵素によって可溶化することができる。
【0059】
ステントの被覆は、粉末形態のUBSであり得る。一実施形態では、粉末形態のUBSは、液体窒素下において膀胱粘膜下組織を粉砕して、0.1〜1mm
2のサイズの粒子を産生することにより調製される。次いで、粒子の組成物を一晩凍結乾燥および滅菌して、固体の実質的に無水の粒子組成物を形成する。代替として、粉末形態のUBSは、懸濁液または細分されたUBSの溶液を乾燥させることによって、流体化されたUBSから形成されることができる。
【0060】
本発明との使用に適したECM材料の他の実施例は、フィブロネクチン、フィブリン、フィブリノゲン、線維性および非線維性のコラーゲンを含むコラーゲン、粘着性糖タンパク、プロテオグリカン、ヒアルロナン、分泌タンパク酸性高システイン(SPARC)、トロンボスポンジン、テナシン、および細胞粘着性分子、およびマトリクス金属プロテイナーゼ阻害剤を含むが、それらに限定されない。
【0061】
ステントは、ECMカバー(または他の材料)をワイヤのみに接着し、ワイヤセグメント間またはステントセル内で伸長しないような方法で処理され得る。例えば、エネルギーをレーザビーム、電流、または熱の形態でワイヤステント構造に付与する一方で、ECMは下層構造と接触するように配置されている。肉を熱いフライパンで調理すると組織が残るように、かかる方法でECMをステントに適用することができる。
【0062】
対象デバイスの移植に続いて、移植片のECM部分は、最終的に周囲組織に再吸収され、組織、例えば、それが吸収された内皮、平滑筋、外膜の細胞特性を引き継ぐ。さらに依然として、選択された構成を有するECMの骨格は、選択された位置に本発明のステントまたはステントグラフトに動作可能に取り付けられ得、それによって、ECM材料は、選択された位置において後次の改造を経て天然の組織構造になる。例えば、ECMの骨格は、大動脈弁尖の構造的特長を形成し、それによって移植片が弁摩擦を提供する方法で構成され、以前に除去された自然の大動脈弁の弁輪に配置され得る。
【0063】
対象ステント、グラフト、および/またはステントグラフトは、治療薬または調剤を疾患部位に局所送達を提供するために被覆され得る。局所送達は、集中領域に送達するため、より少ない用量の治療薬または調剤を必要とするが、対照的に、全身用量は、標的疾患部位に到達する前に、複数投与および材料の損失を要する。もよく、デキサメタゾン、トコフェノール、リン酸デキサメタゾン、アスピリン、ヘパリン、クマディン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、およびTPA、または任意の他の適切な血栓物質を含むが、それらに限定されない任意の治療材料、組成物または薬物を使用して、移植部位における血栓を回避する。さらに治療薬および調剤は、脱細胞化した自然の血管骨格における移植後の動脈瘤の発生を避けるための手段として、タンパク質分解に対する抵抗を増加するよう粘膜下組織安定ナノ媒染剤として使用されるタンニン酸擬態デンドリマー、細胞粘着性ペプチド、コラーゲン擬態ペプチド、肝細胞成長因子、増殖性/抗分裂剤、パクリタキセル、エピディポドフィロトキシン、抗生物質、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン、およびマイトマイシン、酵素、抗血小板薬、非ステロイド剤、ヘテロアリール酢酸、金化合物、免疫抑制剤、血管由来製剤、一酸化窒素ドナー、アンチセンスオリゴヌクレオチド、細胞周期阻害剤、およびプロテアーゼ阻害剤を含むが、それらに限定されない。
【0064】
薬剤送達の目的で、対象ステント、グラフトおよび/またはステントグラフトは、下塗層で表面に被覆される。下塗層は、治療薬/調剤を含有するためのリザーバを形成する。下塗層と活性成分との間の重複領域を修飾して、活性成分に対する下塗層の浸透性を増加させてもよい。例えば、一般的な溶媒を適用することによって、活性成分および表面層がともに混合し、活性成分が下塗層に吸収される。加えて、不均一または粗い表面を産生するように塗層を処理してもよい。この粗い領域が活性成分を捕らえ、ステントが患者の体内に挿入される場合に成分の拡散率を増強する。そのようにして、移植片は、制御可能な速度で薬物または他の薬剤を拡散する能力を有する。さらに、当業者は、対象発明が複数の被覆の組み合わせを提供し得ること、例えば、下塗層が複数の領域に分割され、それぞれ異なる活性成分を含有し得ることを理解するであろう。
【0065】
対象移植片は、幹細胞を含む任意の種類の細胞でも播種され得、移植片と動脈壁との間の血管形成を促進する。方法は、多孔性被覆をデバイスに適用するステップを含み、移植片表面の間隙に組織が成長するのを可能にする。宿主組織の成長能力および宿主組織への移植片の接着を改善するための他の努力は、デバイスの組織接触表面に電気的に装填されたまたはイオンの材料を含めることを含む。
【0066】
本発明のステント、グラフト、またはステントグラフトは、1つまたは複数のセンサを含み、圧力、流れ、速度、濁度、および他の生理的パラメータ、ならびに例えば、グルコース値、pH、糖、血中酸素、グルコース、水分、放射線、化学、イオン、酵素、および酸素等の化学種の濃度をモニタする。センサは、血栓および塞栓のリスクを最小化するように設計される必要がある。したがって、管腔内の任意の点における血流の減速または停止は最小化される必要がある。センサは、外側表面に直接取り付けるか、またはパケット内に含まれるか、または本発明のステント、グラフト、またはステントグラフトの材料内で固定され得る。バイオセンサは、さらにワイヤレス手段を採用して、移植部位から体の外部にある装置へ情報を送達する。
【0067】
ステント、グラフト、またはステントグラフトは、視覚化材料で形成され得るか、またはマーキング要素を含むように構成され、デバイスの配向に関する表示を提供して、移植部位におけるステントの適切な整列を容易にする。X線不透過像を付与できる任意の適切な材料を使用してもよく、硫酸バリウム、三酸化ビスマス、ヨウ素、ヨウ化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、金、プラチナ、銀、タンタラム、ニオビウム、ステンレス鋼、等の金属およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。全体ステントまたはその任意の部分は、放射線不透過性材料、すなわち、ステントの頭頂部で形成され得るか、またはマークされる。
【0068】
(デバイス加工方法)
本発明のステントは、多くの方法で加工され得る。ステントを形成する1つの方法は、それぞれ
図13A〜13Cに示されるようなマンドレルデバイス320、330、および340等のマンドレルデバイスの使用による。デバイスのそれぞれは、複数のピン(図示せず)が選択的に配置されるか、または複数のピンがそこから伸長する、複数の選択的に配置されたピンホール324、334、および344をそれぞれ持つ、少なくとも主要マンドレル構成要素322、332、および342をそれぞれ有する。以下でより詳細に説明されるように、ステント構造は、選択的にワイヤをピンの周りに巻くことによって形成される。ステントが1つ以上の側枝管腔を有する場合、デバイス340等のマンドレルデバイスには、主要マンドレル342に対して実質的に横方向に延在する少なくとも1つの側方マンドレル346が提供され得、側方マンドレルの数は、好ましくは、形成されるステント側枝の数に対応する。マンドレルデバイスは、モジュールであってもよく、種々の直径および長さの側枝マンドレルは、主要マンドレルに取り外し可能に組み立てることができる。主要マンドレルおよび側枝マンドレルの構成は、任意の適切な形状、サイズ、長さ、直径等を有し、所望のステント構成を形成し得る。一般に、マンドレル構成要素は、均一な断面を有する真直ぐな円筒形構成を有するが、長さ寸法に沿って直径の異なる(
図13Bを参照)円錐形、円錐台であって(
図13Aおよび13Cを参照)楕円形の断面、湾曲形状等を有してもよい。
【0069】
ピンは、マンドレル構成要素内に引き込み可能であり得るか、またはマンドレル構成要素において形成される穴からそれら自体が取り外し可能であり、穴の内部に選択的に配置可能である。さらに依然として、マンドレルデバイスは、選択的にピンを伸長、および引き込むように構成されてもよい。ピンの数およびそれらの間の距離と空間は、カスタマイズされたピン構成を提供するために異なり得る。このカスタマイゼーションによって、限られた数のマンドレル構成要素を使用して、異なるサイズ、長さ、セルサイズ等を有するステントの加工を可能にする。例えば、一変形例において、ピンは、マンドレル構成要素の周囲に交互パターンで配置され、例えば、1列当たり8つのピンホールのうちの4つがピンで埋められる。代替として、マンドレルの選択は、固有のステントセルパターンを順に画定する固有のピンホールパターンをそれぞれ有するように提供され得る。
【0070】
ステントを形成するには、選択された長さおよび直径を有する形状記憶ワイヤ、例えばニチノールワイヤ等が提供される。典型的には、ワイヤの長さは、約9〜約12フィートの長さの範囲であるが、必要に応じてそれより長いか、またはより実用的にはそれより短くてもよい。ワイヤの直径は、典型的には、約0.001から約0.020インチの範囲内である。マンドレル構成要素上の所望の点または位置に巻きピンを有するマンドレルデバイスを提供した後に、ワイヤがピンの周囲に選択した方向で選択した上下重複パターン、例えば、ジグザグパターンで巻かれ、一連の相互接続された波状リングを形成して、所望のセルパターンを生じる。
【0071】
例示的なワイヤ巻線パターン350を
図14に示す。主要マンドレルの一端から開始して、ワイヤ352はピン354の周囲をジグザグパターンで、ステントの主要管腔のセルが形成されるまで、主要マンドレルの一端から他方へ前後に巻かれる。次に、依然としてマンドレルデバイスに取り付けられている同一ワイヤを使用して側枝管腔を形成し、ここでワイヤは、側枝マンドレルの基部から遠位に延在する末端へとジグザグ様式で巻き付けられ、側枝のセルのすべてが形成されるまで再度戻る。次いで、ワイヤは、主要マンドレルの縦軸に対して角度を成すパスに沿って主要マンドレルの周囲に巻かれ、あるセルセグメント356に沿って、それ自体の上に二重にされる。ステントの任意の管腔が最初に加工され、その他が続けられるか、または巻線パターンが種々の管腔の一部が断続的に形成されるようなものであり得ることに留意されたい。
【0072】
形成されるワイヤステントパターンを有するマンドレルデバイスを、次いで、約480℃から約520℃までの範囲の温度、典型的には、約490℃まで約20分間加熱するが、しかしながら、この時間は、塩浴を使用することによって低減されてもよい。熱固定ステップの期間は、マルテンサイト相からオーステナイト相へのワイヤ材料のシフトに必要な時間に依存する。次いで、アセンブリを空気冷却するか、または水浴で30秒以上クエンチし、次いで、空気乾燥させる。一旦ステントが十分に乾燥されると、マンドレルの外側表面におけるそれぞれの穴からピンを突き出す内側部品を作動させることによって、ピンをマンドレルデバイスから引き出すか、またはマンドレルの中空中心に引き込む。側枝マンドレルが除去されると、その相互接続された管腔を持つステントを、次いで、マンドレルデバイスから除去することができる。代替として、互いから分離されたマンドレル構成要素を用いて、管腔の1つ、例えば、主要ステント管腔を最初に形成した後、側方マンドレルを主要マンドレルに取り付けることによって、側枝管腔を形成してもよい。
【0073】
選択的に、本体の選択領域、または側枝管腔セルを形成するワイヤの部分は、ワイヤ直径が減少させられていないステントのワイヤ部分よりも少ない半径方向力を及ぼすように選択的にエッチングまたはイーポリッシュ(e−polishing)することによって、選択的に直径が減少させられ得る。ステント本体のワイヤ直径の選択的減少の一実施例は、近位端および遠位端のそれぞれに1〜2cmの周囲部分を残して、それらの領域における高い半径方向力が、ステントを移動しないように固定する一方で、それらの高い半径方向力領域間の中心部分は、断面ワイヤ直径を減少させて、配置中のステントの伸張をより容易に促進することができるか、または長い距離にわたってそれを圧縮してより容易に送達シースに入れることができる。ワイヤ断面直径を選択的に減少させる別の実施例は、側枝のストラットの直径をより小さくすることである。これは、製造中に側枝を酸に選択的に浸漬して、ステントの特定領域における金属量を低減することよって行うことができる。側枝の縦方向の剛性および/または側枝構成要素の外側半径方向力を優先的に低減する所望の結果を達成するための別の方法は、電解研磨装置を使用することである。織物の中実ワイヤステントを電解質浴に配置し、陽極−陰極空隙全体に電圧電位を印加することによって、ステント自体が陽極の場合、金属イオンが電解質溶液に溶解する。代替として、または続いて、ステントが陰極になった場合は、プロセスを反転させてもよく、ステントの側枝または他の選択領域をイオン溶液中の同様または異なる金属、例えば金またはプラチナで電気メッキして、機械的特性を変更するか、または選択領域の放射線不透過性を強化してもよい。電気メッキおよび電解研磨の当業者は、基板への異なる材料の接着を強化するために類似する材料の「ストライク」層を使用する技術があることを認識するだろう。実施例は、金またはプラチナ被覆を基板に続いて接着するために、ニッケルチタン(ニチノール)基板上で純ニッケルストライク層を使用することである。
【0074】
ステントを形成する別の方法は、ステントに対して所望のパターンで管またはシートの部分を除去することによって、材料の管または平面シートから薄壁管状部材を切り取り、ステントを形成する金属チューブの部分を比較的触れない状態にすることである。ステントは、タンタラム、ニッケル−チタン、コバルト−クロミウム、チタン、形状記憶超弾性合金等の他の金属合金、および金またはプラチナ等の貴金属等から形成することもできる。
【0075】
本発明にしたがって、当業者は、いくつかの異なる方法、例えば異なる種類のレーザ;化学エッチング;放電機械加工;平板シートをレーザ切断してシリンダ状に巻くことを使用する等して、対象ステントを形成してもよく、現時点でそれらすべては当該技術においてよく知られていることが分かるだろう。
【0076】
ステントグラフト360を、対象ステント364に対してECM等のグラフト材料362の追加によって形成する場合、グラフト材料をワイヤフォームに取り付ける任意の方法を使用してもよい。一変形例においては、グラフト材料は、縫合366によって取り付けられる。そのようにして、グラフト材料の一端370は、ステント長さに沿ってステントフレームに対して縦方向に縫合され、少なくとも1つのノット368をステントの各尖端において結び、グラフトの末端をステントに固定する。次いで、グラフト材料を、ステントの表面の周りで伸張し、グラフトの反対端372を既に取り付けられている端370と重ねて、ステントフレームに独立して縫い付けて、血液が逃げられない漏れのない表面を提供する。ステントの伸展性に一致する程度にグラフト材料を伸張して、ステントが拡張状態にある場合にひだにならないようにする。グラフト材料をステントに完全に取り付けると、グラフトを脱水して、加熱されるときの熱収縮管と同様に、ステントフレームに沿って収縮するようにする。
【0077】
(本発明の送達および展開システム)
ここで
図2Aおよび2Bを参照して、本発明のデバイスを移植するための本発明のシステム30が示される。システム30は、遠位カテーテル部分32および近位またはハンドル部分34を含む。カテーテル部分32は、血管系または移植部位に至る他の経路内に配置するために構成され、複数の管腔を有する種々の細長い部材を含み、それらの多くは、ガイドワイヤ、プルワイヤ、およびデバイスの一端から他方への流体通路として多機能的である。カテーテル部分32は、その内部に中間部材40が受容される管腔を有する、平行移動可能な外側シース38を含む。外側シース38の近位端は、中間部分40の遠位ハブ52に連結するための接続金具50とともに構成される。接続金具50は、外側部材38の壁と中間部材40の壁との間の管腔空間を流体的に密閉する内部弁機構で構成され、それによってそこからの血液の漏出を避ける。接続金具50は、カテーテル準備において一般的であるように、何らかの残気を排出するための洗浄ポート(図示せず)をさらに含み得る。内側部材42は、中間部材40の管腔138(
図6Aを参照)内に受容され、平行移動可能であって、そこを通るガイドワイヤ48の平行移動のための本体ガイドワイヤ管腔44を画定する。内側部材42は、蛇行性の血管系を通るデバイスの前方平行移動を容易にする円錐遠位先端46で終結する。外側部材、中間部材、および内側部材チューブ(ならびに以下に論じる任意のカテーテル構成要素)は、従来の血管内シースおよびカテーテルを構成するために使用される材料から形成され得、編み材料で強化された生体適合性プラスチック、または実質的に可撓性のある任意の他の生体適合性材料を含むが、それらに限定されない。
【0078】
送達および展開システム30の近位部分34は、近位および遠位ハンドル部分36a、36bを含み、これらは互いに対して軸方向に平行移動する。内側部材42はハンドル末端の近位部分36aに固定され、中間部材40はハンドルの遠位部分36bに固定され、2つのハンドル部分を互いに関して軸方向に分離および拡張することが、以下でより詳細に説明されるように、送達システム内に動作可能に装填されるステントが受ける伸長および収縮の量を制御する。
【0079】
前述のように、本発明の一変形例においては、移植片の送達および展開は、複数の所定の取付ライン、ストリング、ワイヤ、またはフィラメントの使用によって達成される。より具体的には、送達システムに対する移植片の各遊離端を制御および解除可能に取り付けるために、単一ストリングまたは複数のストリングのセットが提供される。2つの個別のストリングまたはストリングのセットを採用して、植込型デバイスの主要管状部分を制御し、一方のストリングまたはストリングのセットは、デバイスの遠位端を制御するため、他方はデバイスの近位端を制御するためである。移植片の各側枝に対して、追加のストリングまたはストリングのセットが提供される。各セットにおけるストリングの数は、デバイスのそれぞれの末端で(すなわち、主要ステント部分の近位および遠位端、および分岐部分の遠位端で)提供される頭頂部または接続点の数に関連する。各ストリングは、デバイスのハンドルに配置および制御されるその末端の両方を持つ指定頭頂部とのループ間にあり、ここで、各取付ストリングの一端は、送達および展開システム30に恒久的に固定され、他端は送達および展開システム30に解除可能に取り付けられる。システム30内に動作可能に装填される場合、移植片の管腔末端は、システム30の種々の部分に解除可能に取り付けられる。例えば、ステントの主要管腔の遠位端は、内側部材42に解除可能に取り付けられ、ステントの主要管腔の近位端は、中間部材40に解除可能に取り付けられ、また各側枝ステントの遠位端は、指定側枝カテーテル150に解除可能に取り付けられる(
図6Aを参照)。
【0080】
図21Aおよび21Bは、側枝カテーテル460が、ステント側枝管腔468を運搬、操縦、および展開する1つの配列を説明する。カテーテル460内のストリング管腔460を起点とする単一展開ストリング470は、側枝ステント468の尖端474全体に糸を通すか、または織られて、カテーテル460内の別のストリング管腔464bを通って励起され、ストリング470の両端は、前述のように、展開システムの近位端で保持される。側枝カテーテル460の制御および操作性は、
図22に示されるように、カテーテルのガイドワイヤ管腔462を通過する、側枝ガイドワイヤ466の使用によって一部達成される。ストリング470および側枝ステント468の遠位端をカテーテル460の外側に保持および固定する方法もまた、制御および操縦性を提供する。
図22において最適に説明されるように、側枝468によってカテーテル460の遠位端に付与される、結果として生じる張力は、カテーテルの制御された運動および指向性を可能にする。例えば、軸方向477に沿ったカテーテル460の平行運動は、結果として前後運動、すなわち、矢印475a、475bによって示されるように、カテーテルの遠位端の主要ステント管腔462に平行であるか、または同一平面における運動を生じる。反対に、カテーテル本体460の回転運動またはトルク480は、左右移動、すなわち、主要ステント管腔472の軸、すなわち、カテーテルの遠位端に対して横方向または垂直方向の平面における運動を生じる。
【0081】
各取付ストリング、または取付ストリングのセットは、指定制御機構によって制御される、すなわち、固定、解放、引張、引き込み、締め付け等ができる。したがって、対象システムの例示される実施形態に関して提供される制御機構の数は、取付ストリングセットの数に対応するが、しかしながら、ストリングセットの制御は、より少数の制御機構に集約されてもよい。種々の制御機構は、任意の適切な構成を有してもよく、システム30上の任意の適切な位置に装填され得、ここで制御機構の1つの例示的構成および位置を
図2Aに示す。特に、各制御機構は、ノブ、ダイアル、スイッチ、またはボタンの形態で一対の制御を含み、例えば、一方の制御は直線的に平行移動するため、すなわち、移植片を展開する際に、展開システム30を介してそれらの固定末端によってストリングを引っ張り、他方の制御は、移植片の展開前に、ストリングの遊離端を選択的に解放および固定するためである。
【0082】
移植片の遠位および近位管腔末端を制御するための制御70a、70b、および72a、72bはそれぞれ、ハンドル部分36aおよび36b上にそれぞれ提供される。移植片の側枝または横枝管腔のそれぞれに関連する取付ストリングの各セットに対する追加の制御対は、中間部材40に対して解除可能に載置されるハブ上に提供され、集合的ハブは、外側シース38の近位端と遠位ハンドル部分36bの遠位端との間に連続して配置される。例えば、3つの分岐管腔6a、6b、および6cを有する
図1Aの移植片2とともに使用する場合、3つのハブ74、76、および78、ならびに関連する制御対がそれぞれ提供され、最も遠位の制御対74a、74bは、ステント分岐管腔6aの最も遠位の取付ストリングを制御し、第2または中間の制御対76a、76bは、中間ステント分岐管腔6bの取付ストリングを制御し、最も近位の制御対78a、78bは、ステント分岐管腔6cの最も近位の取付ストリングを制御する。
【0083】
各制御対は、固定末端部材70a、72a、74a、76a、および78aをここではノブの形態で含み、それに対して、取付ストリングの末端の1つのセット、固定セットが永久に係止されるが、それ自体はそれぞれのハンドル部分またはハブから可撤性であって、そこを通してストリングを手動で引張るようにする。この制御は、取付ストリングに一定の張力を維持し、移植片を送達システム内に制止させておく一方で、送達システムが血管系を通して連接される。
図2Bに最適に説明されるように、各ノブは、止血弁80内に配置されて、ノブをそこから除去する前後に、流体、例えば、血液がハンドルまたはハブから逆流するのを防ぐ。また各制御対は、解放可能な末端部材またはクランプ70b、72b、74b、76b、および78bを、ここではダイアルまたは打込みネジの形態で含み、それによって、ストリングセットの遊離端は、それぞれのハンドル部分またはハブに解除可能に係止される。移植片のそれぞれの管腔末端を展開する準備ができると、打込みネジを選択的に緩めて、それぞれのストリングセット上の張力を解放することができる。当業者は、種々の制御機構の関連する配置および配列は、組織化された人間工学的設計のプロファイルを提供する意図とともに異なり得る。
【0084】
ここで
図2B、3A、および3Bを参照して、各側枝制御ハブ74、76、および78は、遠位に配置された側枝カテーテルハブ84、86、および88にそれぞれ関連する(最も近位に配置されたハブ78および88のみを
図2Bで説明する)。各ハブの対の間に延在するのは、それぞれ側枝カテーテル150a、150b、150cの近位部分94a、94b、94c(
図6A)であり、各制御ハブ74、76、および78の後端における密閉可能なポート110a、110b、110c(
図2Bを参照)から遠位端へ、また中間部材40内のそれぞれの側枝カテーテル管腔148を通って延在する(
図6Aを参照)。各側枝カテーテル150a、150b、150c内には、側枝ガイドワイヤ管腔152a、152b、152cがある(
図6Aを参照)。ポート110a、110b、110cは、それぞれの側枝ガイドワイヤ管腔152を通る側枝ガイドワイヤ154a、154b、154c(
図6Aを参照)の侵入および通過を可能にする。側枝カテーテルおよび側枝ガイドワイヤの一方または両方は、屈曲させられ得る。制御ハブ74、76、および78のそれぞれは、中間部材40と摺動可能に係止される。制御ハブの下側は、カフ96、部分リング構成等を有し、ハブが中間部材40から完全に解放可能であるとともに、その上で摺動可能である。前述のように、側枝ステント管腔のそれぞれは、指定取付ストリングまたは取付ストリングのセットによって側枝カテーテル150a、150b、150cの遠位端に対して解除可能に連結される。側枝制御ハブ74、76、78と関連する側枝カテーテルハブ84、86、88との間の相対位置に関係なく、取付ストリングセットを、それらそれぞれの制御の部74b、76b、および78bによって解放されるまで、
図3Aおよび3Bで説明される両構成で、完全な張力で保持される。
図2Aおよび3Bで説明されるように、制御ハブは、カテーテルハブに対して遠位または近位にある場合、側枝カテーテル150a、150b、150cの近位部分94a、94b、94cは、関連カテーテルハブ内に完全に受容され、側枝ステントは、部分的に展開状態にある。部分的に展開された状態において、側枝ステントは伸張状態で保持され、側枝カテーテルのそれぞれのストリングまたはストリングセットによって伸張された側枝ステント尖端または接続点の遠位端に可撤性に取り付けられたそれぞれの伸張側枝カテーテル94a、94b、94cの遠位端により張力が付与されている。各側枝ステントの遠位端に付与されている張力は、側枝ステントを通して移動し、それによってその長さを長くすると同時に直径を縮小する。これによって、より小さい直径の側枝血管内により大きいステント直径を配置することが可能になる。この部分的に展開された状態、すなわち、側枝ステント直径は、それが配置されている側枝血管よりも小さく、移植片の周囲ならびにそこを通る血流を可能にし、それによって、配置中の下方血管または器官のかん流を可能にする。処置中に、影響を受ける下方器官に対する虚血を避けるために、交差する側枝血管を通して血液を流し続けることが好ましい。側枝ステントは、側枝ステントの遠位端の頭頂部に解除可能に取り付けられる側枝カテーテルの伸長によって伸張される。側枝ステントの伸張は、標準より小さい標的側枝血管内でのその後次配置を可能にする。典型的には、側枝ステントの直径は、その自然な制約されない状態で、それが配置される側枝血管の直径よりも約5%〜約50%大きい。反対に、
図2Bおよび3Aに説明されるように、制御ハブが近位または奥寄りの位置にある場合、各側枝ステントは、展開状態または非伸張状態で保持される。
【0085】
側枝カテーテル150a、150b、150cは、それらの近位端94a、94b、94cにおいて、それぞれの側枝カテーテルハブ84、86、88およびカテーテルハブの後端に配置される止血弁92a、92b、92cを通して摺動可能に伸長する。各側枝制御ハブ74、76、78は、ルア接続金具110a、110b、110c(ここでは110cのみが示される)を有し、止血弁(図示せず)の適用を可能にする。止血弁は、YアームアダプタまたはToughy−Borstアダプタであってもよく、ガイドワイヤの密閉導入を可能にする。Yアームのルア接続金具によって、体内にカテーテルを挿入する前に、生理食塩水でカテーテルを洗浄することによって、ガイドワイヤ管腔の空気を除去することができる。処置の後次ステージにおいて、この管腔を使用し、側枝動脈を通して血流を可視化するように、放射線不透過性染色を導入してもよい。
【0086】
近位ハンドル部分36aの後端に位置する本体ポート76は、
図4で説明されるように、中間部材40内の中心管腔138(
図6Aおよび6Bを参照)を通して伸長する、ガイドワイヤ管腔44と流体連通する。ガイドワイヤ管腔44は、システムの遠位部分32の血管系内の標的移植部位への誘導およびガイド、ならびに植込型デバイスの一次管腔の遠位端の配置および移植の促進に使用される、一次ガイドワイヤ48の通過および平行移動のために提供される。本体ポート76は、側枝カテーテル制御ハブに関して上述される、ルア接続金具110に類似するルア接続金具を有する。
【0087】
図4でさらに示されるように、近位ハンドル部分36aから遠位かつ下方に伸長するレバー機構56は、それが配置される血管系を通して、デバイス30の遠位カテーテル部分32を操縦するために提供される。このレバーは、
図9に示される別のハンドル実施形態194における回転制御ノブ193によって置き換えられ得る。操縦プルワイヤ、ストリング、またはフィラメント(図示せず)は、レバー56の近位端に固定され、カテーテル部分32を通して伸長し、その遠位端は、内側部材42のノーズコーン内で終結し、また取り付けられる。レバー56は、ハンドル部分36a内で枢動可能に連結され、下方向に回転させると(
図4の矢印65aによって示される)、操縦プルワイヤは、弛緩した状態またはたるんだ状態になる。反対に、レバー56を上方向に回転させると(矢印65bで示される)、操縦ブルワイヤは、牽引または引張され、それによって、内側部材42の遠位先端、およびしたがって、デバイス30の遠位端は屈曲する。任意の数の操縦プルワイヤを採用し、選択的に引張して、移植システムの縦軸に対して直角な複数方向でデバイス30の遠位端を選択的に連接してもよい。典型的には、対象送達および展開システムは、少なくとも1つ、および多くの場合は2つ〜4つの遠位連接点を有する。これらの連接点は、カテーテル32の遠位端から1つ以上の距離にあり得、カテーテルの遠位端の化合物曲線を形成する。
【0088】
対象移植システムの種々のカテーテル、管腔、ガイドワイヤ、ポートおよびプルワイヤを有する植込型デバイスの相対的な配置および接合について、ここで
図5A〜6C、6Aおよび6Bに関して説明される。
図5A〜5Cは、外側シース38の遠位端118から部分的に展開される植込型デバイス120について説明する。植込型デバイス120は、主要管状本体122を含み、1つ以上の側方管状分岐124を含み得る。本体122の頭頂部または尖端126の遠位先端または側枝124の尖端128は、取付ストリング132(
図5Cにのみ示される)を受容するための小穴ループ130であってもよい。
図5Cで説明されるように、
図2Aのシステム30内で動作可能に装填されると、デバイス120の主要管腔122は、外側シース38と内側シース42との間に縦方向に配置され、中間部材40の遠位端134の遠位に配置される。
【0089】
外側シース38に移植デバイスを装填するために、ハンドル制御を設定して、中間部材の遠位端に対して内側部材42の遠位先端46を伸長することによってステントを伸張する。近位および遠位ハンドル部分36aおよび36bは、
図8Dに示されるように、互いから伸長し、ステントの主要管腔は、伸張または引張状態にある。反対に、
図8Eに示されるように、近位および遠位ハンドル部分36aおよび36bが非伸長である場合、ステントの主要管腔は、非伸張または非引張状態にある。内側部材42および中間部材40の遠位管腔末端は、遠位および近位ステント主要管腔開口122に対して解除可能に取り付けられる、1つまたは複数のストリングのための接続点である。前述のように、側枝ステント遠位管腔末端は、側枝カテーテルの遠位端に解除可能に取り付けられる。
【0090】
図6Aは、
図5Cの線A−Aに沿った移植システムの遠位部分の断面を示し、具体的には、横断面図は、中間部材40の遠位端において取られる。このビューは、外側部材38と、中間部材40と、中間部材40中心管腔138内に配置される内側部材42と、先端46を通して遠位に伸長する内側部材40の中心ガイドワイヤ管腔44内に配置される主要ガイドワイヤ48との間のネスト化関係を示す。
【0091】
内側部材42は、非常に小さい直径のカテーテルであり、例えば、心臓血管適用の場合は、3〜8Frenchの範囲であり、加えて、中心ガイドワイヤ管腔44、中心ガイドワイヤ管腔44を中心として周囲方向に配置され、主要ステント管腔の遠位端上の接続点に対する取付ストリングの整列を誘導する、複数の取付ストリング管腔140を有する。複数の管腔140は、部材42の遠位部分に位置し、内側部材42の全体長さに沿って伸長する。管腔140は、送達システムのハンドル部分において、1つ以上の洗浄ポイントと連通し得、これによって、生理食塩水は、管腔140を通して、周囲の血圧より高い圧力で洗い流して、デバイス管腔を通る血流を回避することができる。また管腔140を使用して、デバイスの蛍光透視的に可視化される配置中に使用される放射線不透過性造影染色を送達してもよい。以下に記載される管腔140および出口ポート186は、種々の展開ステージにおいて、移植片を通る染料の流れの可視化を可能にし、ステントの配置が満足できるフローパターンおよび治療結果を産生するかを検証する。
【0092】
他の実施形態では、
図10A、10B、および10Cで説明されるように、取付ストリング管腔140は、内側部材40の長さにほんの一部だけ沿って伸長し、例えば、ほんの数ミリメータ遠位から近位に伸長する。特に、本実施形態は、たった1つの取付ストリングを複数のステント接続点とともに採用する場合に適している。ここで、単一ストリング要素は、遠位管腔のうちの1つを出て、ステント接続点に通され、別の管腔を通って遠位から近位に通され、その管腔から近位に出て、別の管腔を遠位から近位に通過し、別のステント接続点を通過する。飛び越しパターンは、すべてのステント接続点が、複数の周囲管腔を通過する単一のストリングと織り交ぜられるまで継続する。内側部材の長さの一部のみを伸長する、取付ストリング管腔のこの構成は、中間部材40および側枝カテーテル94a、94b、94cとともに採用されてもよい。かかるストリング管腔構成を採用する中間部材に関して、中間部材40の近位部分は、内側部材42を含有する単一の管腔となり、より短い周囲管腔は、側枝カテーテルならびに主要ステント管腔の近位端用の取付ワイヤを含む。本実施形態および以下に論じられるものから分かるように、レースパターンの任意の組み合わせを使用して、個々のステント末端をそれが取り付けられるそれぞれのカテーテルに取り付けてもよい。
【0093】
実施形態
図6Aを再度参照して、遠位取付ストリング管腔140の数は、取付ストリング132の数の倍であり、ここで一対の隣接する取付ストリング管腔140a、140bは、各遠位取付ストリング132に提供される。そのようにして、デバイス120が完全に展開システム内に装填されると、遠位取付ストリング132の第1の部分は、管腔140a内に存在し、遠位取付ストリングの第2または戻り部分は、管腔140b内に存在する。
【0094】
取付/展開ストリング管腔140に加えて、1つ以上の操縦プルワイヤ管腔142が存在し、その機能は、
図4に関して前述のとおりである。典型的には、1つまたは2つの正反対に対向する(180°離れた)操縦プルワイヤの対を採用して、送達システムの遠位端の対向する直角偏向を提供する。採用される操縦プルワイヤ対の数が大きくなるほど、送達システムを連接する際の操縦方向が大きくなる。
【0095】
内側部材42が平行移動する中心管腔138に加えて、中間部材40は、複数の近位取付ストリング管腔対146a、146bを含み、ここで管腔146aは、管腔146bから半径方向に外側に位置する状態で示される。デバイス120の主要管腔122の近位頭頂部(図示せず)に取り付けられるか、またはそれを通り抜ける取付ストリングは、管腔146を利用する。近位取付ストリング管腔146の数は、近位取付ストリングの数の2倍であり、一対の取付ストリング管腔146a、146bは、各近位取付部位に対して提供され、すなわち、デバイス120が送達および展開システム内に完全に装填される場合、近位取付ストリングの固定された末端部分は、管腔146a内に存在し、近位取付ストリングの遠位または戻り部分は、管腔146b内に存在する。
【0096】
取付ストリング管腔146に加え、中間部材40もまた、中心管腔138を中心として周囲方向に配置され、好ましくは、近位取付管腔146の対の間に入る、複数の管腔148を提供し、ここで1つ以上の管腔148を採用して、側枝カテーテル150を平行移動および送達することができる(
図6Aにおいて詳細なしに示される)。側枝カテーテル150は、側枝ガイドワイヤ154を送達および平行移動するための中心側枝ガイドワイヤ管腔152を提供する。ハンドル洗浄ポート(図示せず)から伸長する追加管腔148は、送達システム30から空気を排出するために提供され得る。追加管腔148もまた、薬理物、幹細胞、または他の薬剤等の溶液および可能な治療薬を用いて調製する必要がある、組織グラフト被覆または他の被覆の再水和を可能にし得る。これによって、ステントグラフトまたは他のデバイスを、送達カテーテル内に乾燥脱水状態で拘束し、続いて、使用時にカテーテルを洗い流し、準備することによってパッケージ化、滅菌、および再水和することが可能になる。任意の未使用の管腔148は、中間部材の強化された可撓性を提供し、特に、デバイスの遠位端は、複数の連接点において屈曲可能である。
【0097】
図7A、7B、および7Cは、本発明の送達システムとともに使用するのに適した側枝カテーテルの種々の可能な実施形態を説明する。
図7Aの側枝カテーテル160は、中心ガイドワイヤ管腔162、および中心管腔162を中心として周囲方向に配置される複数の取付ストリング管腔164を提供する。管腔164は、取付ストリング(図示せず)によって利用または占拠され、デバイス120の側枝管腔124の遠位頭頂部128を通してループにするか、または通り抜ける(
図5Aを参照)。側枝取付ストリング管腔164の数は、側枝取付ストリングの数の倍であり、一対の取付ストリング管腔146a、146bは、各側枝取付ストリングに提供され、すなわち、デバイス120が移植システム内に完全に装填されると、側枝取付ストリングの近位部分は、管腔164a内に存在し、側枝取付ストリングの遠位または戻り部分は、管腔164b内に存在する。
【0098】
図7Bの側枝カテーテル170は、中心管腔174を有する外側部材172およびそこに同心円状に配置される内側部材176を提供する。内側部材176もまた、側枝ガイドワイヤ(図示せず)を平行に移動および送達するための中心管腔178を有する。外側部材172は、さらに複数の側枝取付ストリング管腔180を提供し、側枝取付ストリング管腔180の数と側枝取付ストリング(図示せず)との数は、1対1で対応する。本実施形態においては、側枝取付ストリングの近位部分は、外側部材172の内径と内側部材176の外部直径との間にある空間内に存在し、遠位取付小穴、頭頂部またはセルを通ってループ状にされた後、ストリングの遠位または戻り部分は、外側部材172の管腔180を通過する。
【0099】
図7Cに示される側枝カテーテル200の別の実施形態では、側枝カテーテルは、2つの同心単一管腔で構成され得る。内径を画定する1つの単一管腔チューブ202、および外側直径を画定する別の単一管腔チューブ203は、外側チューブ202の内径と、内側チューブ203の外側直径との間の空間201内に含有される、側枝取付ストリングを提供する。内側チューブの内径を使用して、
図7Cに示されるように、取付ストリングから単離される、側枝ガイドワイヤ管腔204を通してガイドワイヤ(図示せず)を平行移動する。この管腔構成は、中間および内側部材とともに採用されてもよい。
【0100】
図6Bを参照して、
図5Cの線B−Bに沿って取られた、具体的には、内側部材42が終結する遠位先端46の近位端を通して取られた横断面図を示す。遠位先端46は、ガイドワイヤ管腔44の遠位部分ならびに内側部材42の遠位取付ストリング管腔140の遠位管腔部分を提供し、複数の遠位管腔部分182は、軸方向に整列され、内側部材取付ストリング管腔140と1対1の対応を有する。そのようにして、隣接する取付ストリング管腔182a、182bの同一対は、各遠位取付ストリング132に提供され、すなわち、遠位取付ストリング132の固定された末端部分は、管腔部分182a内に存在し、遠位取付ストリングの解放可能または戻り部分は、管腔部分182b内に存在する。
図6Cで最適に説明されるように、管腔部分182a内を通過した後、取付ストリング132は、指定近位側方ポート184を通して、半径方向に遠位先端46から出る。取付ストリングは、次いで、小穴130または頭頂部あるいは尖端126の周囲、または主要管腔122の極めて遠位セルを通して、ループ状にするか、または通し、また遠位先端46の指定側方ポート184を通して戻し、これによって、それらは、それぞれの管腔部分182およびそれぞれの取付ストリング管腔140に再侵入する。そのようにして、取付ストリング管腔のすべての対に対して、多くの側方ポート184の半分が存在し、すなわち、取付ストリング132の数と遠位先端側方ポート184の数との間に1対1の対応がある。遠位先端46も遠位側方ポート186を提供し、送達システムへの移植片のアセンブリ中に、ストリングの装填を促進する。
【0101】
図16は、単一ストリング135のみを使用して、植込型デバイス120の遠位端(前方対向端)を保持および展開する、本発明の展開システムを説明する。システムの基本的構成要素は、
図5A〜5Cに関して同定および記述されるものと比較可能であり、同様の参照番号は、同様の構成要素を示す。上記の
図10A〜10Cに関して記述される方法に類似して、単一の取付/展開ストリング135は、ガイドワイヤカテーテル42内の指定管腔(図示せず)を通過し、指定近位側方ポート184を通して遠位先端から半径方向に出る。取付/展開ストリング135は、次いで、小穴130のそれぞれを通して(または頭頂部あるいは尖端126を通して、もしくは主要管腔122の非常に遠位の細胞を通して)ループ状にするか、または通し、遠位先端46の別の指定側方ポート184を通して戻し、これによって、ストリング管腔に再侵入する。ストリングは、システムを通して近位端に伸長し、前述のような制御機構によって、固定、解放、引張、引き込み、締め付け等が可能である。同様の様式において、植込型デバイスの他の管腔末端の取付および展開に追加のストリングを使用してもよく、各管腔末端は、個別のストリングによって制御される。より少数のストリングを用いると、ステント送達システムを加工および操作する複雑性は著しく低減される。加えて、システムの必要断面プロファイル(すなわち、直径)を最小化し、したがってより小さい血管適用に適応可能にすることができる。
【0102】
前述のように、対象システムの展開/取付手段は、ストリングおよび他の引張可能な要素に限定されず、他の手段を含んでもよい。代替ステント展開/取付手段の実施例は、
図17の送達システム400とともに提供される。システム400は、遠位カテーテル部分402および近位またはハンドル部分404を含む。
【0103】
カテーテル部分402は、そこに1つ以上の管腔を有する外側シース408を含み、その内部にある中間部材410は、そこを通して平行移動可能である。送達システム400内に動作可能に装填されると、ステント450の本体(
図18Aに示される)は、外側シース408および中間部材410の管腔スペースの間に受容される。中間部材410は、そこを通して内側部材416(
図18Aを参照)が平行移動する管腔を画定し、順に、そこを通してシステムガイドワイヤ418が送達可能である管腔424を画定する。内側部材416は、円錐遠位先端420で終結し、蛇行性血管系を通るデバイスの前方平行移動を促進する。円錐先端420の近位対向表面からの伸長は、ピンまたはフック等の延長部材422であって、システムの縦軸に対して平行に伸長する。中間部材410の遠位端426は、ピン422を受容するためのレセプタクルまたはカップを画定し、その内部に動作可能に装填されると、主要ステント管腔450の遠位端の尖端428を捕捉するようにしてもよい(
図18Aを参照)。外側シース408の近位端412は、分岐した管腔ポート412を提供し、分岐ステント(図示せず)の側枝管腔を誘導および展開するための側枝ガイドワイヤ425ならびにそれぞれの展開部材(例えば、ストリング)427を受容する。ストリング427は、前述のような機構によって制御および引張され得る。ここで、2つのポート412は、2つの側枝を有するステントに提供されるが、しかしながら、より多数または少数のポートを提供して、任意の数の側枝を有するステントに対応することができる。上述の実施形態と同様に、内部弁機構を提供して、管腔ポート412を流体的に密閉し、それによってそこからの血液の漏出を防ぐことができる。
【0104】
送達および展開システム400の近位部分404は、互いに関して軸方向に平行移動可能な近位および遠位部分を有し得るハンドル部分436を含み、前述のように、送達システム内に動作可能に装填されるステントの本体によって行われる伸長および縮小の量を制御する。ハンドル436は、ステントデバイスの近位端の展開を制御するための展開/取付部材(例えば、ストリング)の一端がそこに永久に係止されるが、それ自体はハンドルから可撤性であり、そこを通してストリングを手動で引き込む、ノブ430を含む一対の制御を提供する。止血弁は、ノブをそこから除去した場合に、ハンドルから流体、例えば、血液が逆流して出るのを防ぐために、ハンドルに統合されてもよい。カウンタ制御は、ストリングまたはストリングのセットの遊離端をハンドルに対して解除可能に係止するために使用される、ダイアルまたは打込みネジ432によって提供される。前述のように、
図2Aおよび2Bの送達システムに関して、これらの制御部材を並行して使用し、取付ストリング上で一定の張力を維持し、送達システム内のその近位端において移植片を抑制しておく一方で、送達システムは、血管系を通して連接されている。
【0105】
図18Aおよび18Bは、それぞれ、システム400からの主要ステント管腔450の遠位端の保持および展開について説明する。前述されるように、ステントの最遠位端におけるステントセルの尖端428等は、装填されると、半径方向に内側にシンチまたは保持され、
図18Aで説明されるように、内側部材416のピン422と中間部材410のレセプタクル426の係合によって捕捉される。レセプタクル内でのピンの係合は、解放機構を操作することによって、例えば、ハンドル436上のボタン434を押すことによって偏向またはバネ装填され得、内側部材416は、
図18Aで説明されるように、前進または前方に飛び出し、レセプタクルからピン422を引き込み、ステント尖端428を遊離する。
図19は、圧縮される場合(システムがステントとともに事前装填される場合等のように)、内側部材416を後退した位置に保持する、ハンドル436内のバネ機構452を説明する。ボタン434を押すと、バネ452は、その圧縮状態から解放されて内側部材416を前方に進め、それによって、ピン422をステント尖端428から解放する。代替として、システムは、中間部材410が引き込まれてピンをレセプタクル426から解放するように構成され得る。
【0106】
展開/取付部材および機構の任意の種類および組み合わせは、対象ステント送達システムとともに送達されてもよく、ここでステント管腔の各末端は、同一種類の機構によって制御されるか、またはステント管腔の1つ以上の末端は、1種類の機構によって保持および解放され得、1つ以上の他のステント末端は、別の種類の機構によって保持および解放され得る。
【0107】
本発明の展開システムは、システムの種々の管腔を洗浄するための手段をさらに提供し得る。特に、システムを体内に挿入する前に、空気を排出するために、ガイドワイヤ管腔を洗浄することが重要である。この目的を達成するために、
図17で説明されるように、洗浄ポート438が、ハンドル404の近位端442に提供される。洗浄流体の任意のソース、
図17に示される注射器440等を使用して、流体を洗浄ポート428に注入する。洗浄ポート438は、内側部材416のガイドワイヤ管腔424と流体連通し、それによって、ポート438を通してそこに注入された流体により洗浄される。
図17において矢印445で示されるように、注入された流体は、管腔424を通過して空気を押し出し、それ自体は管腔の遠位端から排出される。処置の後次ステージにおいて、洗浄ポート428および管腔424を使用して、放射線染料を導入し、側枝動脈をとおる血流を可視化してもよい。使用中のシステムに侵入し得る洗浄流体および血液の両方の逆流を防ぐために、止血を維持するのに適切な場合は、ガスケットまたは一方向弁をシステム内で使用してもよい。例えば、
図20Aで説明されるように、ガスケット444を洗浄ポート438の遠位のみに採用して、洗浄ポートを通る漏れを回避する。ガスケット446および448等の追加のガスケットを採用して、制御430、432に至る管腔において止血を提供する。
【0108】
本発明の別の任意の特徴は、経皮的経腔的血管形成術(PTA)、経皮的経管冠動脈形成(PTCA)およびアテローム切除術中に使用されるもの等の、塞栓防止デバイスとして機能する側枝ガイドワイヤを採用することである。
図23に示されるように、ガイドワイヤ482は、側枝ステント管腔の展開前に、側枝内で下方位置に配置されるフィルタ機構484を備える。管腔の送達または展開の結果として解放される塞栓材料は、フィルタ484によって捕捉される。
【0109】
本発明のシステムとともに採用されるカテーテルおよび/またはガイドワイヤは、血管内超音波法(IVUS)撮像能力を含み、1つ以上の小型変換器がカテーテルまたはガイドワイヤの尖端に装填され、電子信号を外部撮像システムに提供する。かかる変換器列は回転して、接続された分岐ステントまたはカテーテルが挿入される他の空洞を受容する、接続された支流血管、血管の組織、および/または血管周囲組織のテイクオフの正確な位置を示す動脈の管腔の画像を産生してもよい。加えて、ステント送達および展開中の可視化を促進することで、かかるシステムは、重要な診断(すなわち、事前ステント)情報、例えば、X線血管造影からは入手できない動脈流の位置およびサイズを提供することにより、診断および治療の有効性を強化する。血管内超音波法(IVUS)撮像カテーテルは、一般に、側枝血管の被覆が誤って行われないことを保証することを含むいくつかの理由で、非分岐ステントを配置する前に、適切なサイズのステントグラフトを選択する処置における事前ステップとして使用される。撮像能力をステント送達カテーテルの先端に組み込むことは、カテーテルの交換を回避することによって、時間を節約するという利点を有する。アクセス部位を通してステント送達カテーテルおよびIVUSカテーテルの交換を回避するために、一般的に行われる第2の技術は、別のアクセスポイントを取得して、別個のIVUSカテーテルを導入することである。IVUS変換器をステント送達カテーテルの先端上に一体化することによって、撮像カテーテルが両側の脚の付け根のアクセス位置を通して送達されている第2の血管アクセス創部の必要性を排除する。また、ステントを別のステント内に配置する場合に、IVUSカテーテルを使用して、第2のステントが第1のステントの管腔内で重複様式で展開され、治療領域の被覆長さを伸長する。それらの場合においては、第1のステントが配置されており、下流部分は大型の動脈瘤嚢内で自由に浮遊し、そのようにして、第1のステント内に配置される第2のステントが、第1のステントの管腔外でないことを保証するために注意を払う必要がある。別の方法で行うことは、誤って血管の閉塞が生じる可能性があり、誤配置された第2のステントを除去するための手術に変換される処置を必要とする。
【0110】
本発明のシステム構成要素は、代替として、または加えて、放射線不透過性マーキングとともに提供され、移植片の送達および展開中の構成要素の蛍光透視撮像を支援する。
図24Aおよび24Bは、放射線不透過性ライン494がシースの壁492に提供されている、対象システムの外側シース490の遠位端を説明する。説明される実施形態においては、180°離して配置される2つの放射線不透過性ライン494は、血管系内のシースの正確な回転配向を促進する。これらのラインは、移植片のステントまたはグラフト部分上に提供される放射線不透過性マーキングと併せて使用されてもよく、これによって、移植片上のマーキングは、シース上のそれらと整列して、移植片の適切な配向、すなわち、大動脈弓の上位部分と接触するであろう送達シースの側面に隣接する側枝を有する移植片の側面の選択的な配置を保証する。かかる放射線不透過性マーキングを有するステントの実施例は、代理人整理番号DUKEPZ01101を有する同時係属中の米国特許出願において開示されている。
【0111】
本発明の送達および展開システムとともに採用される外側送達シースは、送達カテーテルの残りから個別に提供され、カテーテル管腔のアセンブリ上で配置可能となるように構成され得る。これは、ステント、展開ストリング、およびガイドワイヤの装填を促進し得、
図25で説明されるように、シース500の近位端504は、止血弁機構を備え、漏出を防ぎ得る。シースの別の任意の特徴は、シースの壁502内に組み込まれる補強編物506で加工され得ることであり、高いトルク能力でねじれ耐性を高める。加えて、複数の間隙を介する、はんだ接合508にシースの長さに沿って編組を提供することによって、送達中にシース上に配置される並行移動および回転装填は、シースの長さにわたってより均等に分配され、シースのねじれまたは屈曲への抵抗を保証する。
【0112】
(デバイス移植の方法)
対象デバイスの一部に対する移植処置について、ここで
図8A〜8Aに関して説明され、そして、
図1Aで示されるように、本体管腔4および3つの側枝管腔6a、6b、および6cを有する本発明のステントグラフト2が、大動脈弓5内に経皮的に移植される大動脈弓適用の状況において、移植時に、本体管腔4は大動脈弓5内に存在し、3つの側枝管腔6a、6bおよび6cは、
図8Hで説明されるように、腕頭動脈7a、左総頸動脈7b、および左鎖骨下動脈7cにそれぞれ存在する。
【0113】
左大腿動8を経由するセルジンガー技術または腹部大動脈切開によって、主要または大動脈ガイドワイヤ48は、
図8Aで示されるように、遠位先端48aが大動脈弁10を超えるまで、血管系を通って大動脈弓5まで前進する。本発明の移植システム30のカテーテル部分32は、そこに動作可能に装填されるステントグラフト2とともに提供され、次いで、ガイドワイヤ48上で患者の体内に経皮的に導入される。
【0114】
例えば、ECM等の材料を用いて他の方法で被覆されるステントグラフトまたはステントは、移植処置を開始する前に、グラフトまたは被覆の再構成または水和を必要とし得る。これは、カテーテルを体内に挿入する前に、生理食塩水で送達システムカテーテルのガイドワイヤ管腔を洗浄することによって達成され得る。代替として、これは、シーシング前に開放空気内で洗うことによって行うことができる。
【0115】
ステントグラフト2が、カテーテル部分32内に装填された非展開状態にある間、送達システムのハンドルは後退した位置にあり、すなわち、近位ハンドル部分34aおよび遠位ハンドル部分34bは互いに係合する。後退した位置にあるハンドルを用いて(
図8Bおよび8Dに示される)、内側部材42は、遠位に前進した位置に保持され、中間部材40は、近位に後退した位置に保持される。中間部材と内側部材との間のこの相対的な軸方向関係は、ステントグラフト2または少なくともその主要管腔4を伸張または引張状態で維持する。これは、主要管腔4の遠位頭頂部が内側部材42の遠位端に取り付けられ、次に近位ハンドル部分34aに固定され、主要管腔4の近位頭頂部が中間部材40の遠位端に取り付けられ、次に遠位ハンドル部分36bに固定されるためである。
【0116】
次いで、カテーテル部分32を必要に応じて、レバー56を操作することによって操縦し、それによって、
図4に関して前述したように、カテーテル32の遠位先端を屈曲させ、下行大動脈、次いで、大動脈弓5に前進させる。ステントグラフト2の側枝管腔6a、6b、および6cが、それぞれ、それらが送達される動脈7a、7b、および7cと実質的に整列させられるように、カテーテル部分を適切に回転可能に配置することが重要である。この目的を達成するために、カテーテル32をトルク付与可能にし、蛍光透視ガイダンスを採用して、カテーテル部分32の送達をさらに容易にしてもよい。特に、ステントグラフト管腔の頭頂部の蛍光透視マーカー(図示せず)は、それぞれの動脈内での最適配置のために追跡され、正確に配置され得る。ステント自体は、放射線不透過性であり得る。カテーテルの先端も同様に放射線不透過性となる。伸張された主要ステント本体および側枝ステント本体は、標的移植部位に配置される屈曲可能な先端付きガイドワイヤによって操縦されるため、操縦可能なガイドワイヤを使用して、主要カテーテル32および側枝カテーテルを誘導してもよい。
【0117】
送達および展開処置を介して、カテーテル部分32の種々の管腔は、流体、例えば、生理食塩水または造影剤で、(血流に対して)逆方向に、動脈血の圧力よりも高いか、または実質的に等しい圧力で連続的に洗浄され得る。これは、システムからの血液の漏出の可能性を回避するとともに、送達プロセスの機能のあらゆる干渉を防ぎ、特に、ステントストリング管腔を自由で血液のない状態に保ち、それによって管腔内の凝固を排除する。加えて、ステントグラフトの各管腔末端(すなわち、主要管腔4の近位および遠位端ならびに側枝管腔の遠位端)は、本発明の送達および展開システム30によって、個別に制御され(しかしながら、一部またはすべては集合的に制御され得る)、ステントの相互接続されたセルは、軸方向に選択的に細長い場合があり、生体構造内での展開中に、デバイスの周囲の連続的な血流を可能にする。この軸方向への延長の特徴もまた、より小さい直径を有する血管内へのより大きい直径の側枝ステントの移植を可能にする。
【0118】
一旦カテーテル部分32の遠位端が大動脈弓5に動作可能に配置されると、外側シース38は、接続金具50を手動で引張ることによって引き込まれ(
図3Aを参照)、
図8Cに示されるように、内側部材42のノーズコーン46の近位端を露出させ、上行大動脈内のステングラフト2の主要または大動血管腔4の遠位部分を部分的に展開する。ステングラフト2の部分展開によって、すなわち、主要大動血管腔4は、伸張または引張状態で維持され、大動脈弁10から出る動脈血流は、主要管腔4を通り、そしてその周囲を流れる。結果として生じる内皮障害および/または生じる可能性があるプラーク塞栓の回避は言うまでもなく、血管壁とまだ係合されておらず、したがって、壁との接触によって生じ得る摩擦抵抗の影響を受けないため、この部分的に展開された状態の主要管腔4を用いて、ステングラフト2を血管系内で容易に再配置することができることの留意が重要である。
【0119】
ステングラフト4の種々の側枝管腔6a、6b、および6cは、連続して(一度に1つ)任意の順序で展開され得るか、または並行して(同時に)一緒に展開され得るが、最も遠位に配置されるステント管腔(6a)から最も近位に配置されるステント管腔(6a)の順に、側枝ステント管腔を一度に1つ展開することが最も容易であり得る。この展開順序は、ステントグラフト上の外側シース38の不必要なまたは繰り返しの平行移動を排除し、すなわち、段階的な一方向(近位方向)の平行移動のみが必要である。これは、グラフト材料に対する摩耗が最小になることにおいて有利であり、特に、材料、例えば、セル外マトリクスまたは薬物で被覆される場合に重要である。この展開順序は、さらに必要な展開ステップを低減させ、したがって、移植処置に必要な合計時間を低減させる。
【0120】
ステント管腔6a等の側枝ステント管腔を展開するためには、側枝ガイドワイヤ154を、その完全に遠位に前進した位置で、それぞれの制御ハブの側枝ポート110および中間部材40の管腔148内に配置される側枝カテーテル150の管腔152に挿入する(またはその内部に事前装填してもよい)(
図6Aを参照)。同時に、外側シース38は、
図8Cに示されるように、増加的および段階的に近位に引き込まれ、ガイドワイヤ154の遠位端が、側枝カテーテル150を通って、その遠位端の外および腕頭動脈7aへの平行移動を可能にする。それぞれの制御ハブ74は、次いで、中間部材40に沿って遠位に平行移動させられ、関連するカテーテルハブ84と完全に係合させられ得、それによって、取り付けられた取付ストリングによって側枝ステントセルに付与されている最大張力を及ぼして、
図8Dに示されるように、側枝ステント6aを部分的に展開する。本体ステントセルは、閉鎖構成のハンドルによって制御されるように、内側部材と中間部材との相対的な位置を介して、遠位から近位に伸張した状態で保持されているが、一方、側枝ステントは、同様に、遠位に前進した側枝カテーテルによって伸張位置に維持されることに留意する。この処置は、残りの数の側枝ステントに対して、必要に応じて反復され、この場合、側枝ステント6bおよび6cは、
図8Dに示されるように、左総頸動脈7bおよび左鎖骨下動脈7cにそれぞれ送達される。この部分的に展開された状態において、引張の程度および取付ストリングが内側部材出口ポート184に対して引張られる伸びの長さに応じて、血流はデバイスの周囲および移植片を通る。デバイスの管腔を通るのではなく、デバイスの周囲のみに血流を有することが望ましい場合があり、これは、主要管腔の遠位端において、取付ストリング上で下にシンチすることによって達成することができ、最小の長さの取付を可能にし、それによって、ステントグラフトの主要管腔を内側部材42の遠位先端46に対して閉じた状態で保持する。遠位主要ステント末端と内側部材へのその接続との間の距離は、遠位取付ストリングの長さによって制御可能であり、遠位取付ストリングは、クランプが遠位取付ストリング上にロックされる位置を調整および選択することによって、ストリングクランプ70bによって制御されることに留意することが重要である。この調整は、ステントが送達される間に原位置で行うことができる。同様に、近位主要ステント末端と中間部材に対するその接続との間の距離は、クランプが近位取付ストリング上にロックされる位置を調整および選択することによって、ストリングクランプ72bによって制御される近位取付ストリングの長さによって制御可能である。この調整は、ステントが送達されている間に原位置で行うことができる。
【0121】
側枝ステントのすべてをそれらの部分的に展開した状態で分岐動脈内に配置後に、ステントグラフトは完全展開の準備ができる。これは、システムハンドルを伸長位置に移動させることによって達成され、すなわち、
図8Eで説明されるように、近位ハンドル部分34aおよび遠位ハンドル部分34bは、互いから軸方向に離れる。この作用によって、内側部材42は、固定された中間部材40に対して近位に平行移動し、主要管腔4のセルに付与される張力を順に緩め、それによって、管腔末端を一体に近づける。そのようにして、ステントは縮小し、主要管腔4の直径は対応して増加し、それによって主要管腔4を大動脈の壁に対して固定する。
【0122】
側枝カテーテルは、それぞれの制御ハブ74、76、78をその対応するカテーテルハブ84、86、88からさらにある距離だけ移動させることによって、同様に近位に平行移動させられ、それによって、側枝ステントのセルに付与される張力を緩める。そのようにして、側枝管腔6a、6b、6cの直径は、管腔末端が縮小するのに対応して増加する。ステント末端とカテーテル末端との間の距離は、固定された末端ノブ70a、72a、74a、76a、78aと解放可能な末端クランプ70b、72b、74b、76b、78bとの間を横断するストリングの長さを調整することによって制御可能であることに留意することが重要である。
【0123】
カテーテルハンドルおよび側枝カテーテルの平行移動によってステントセルの張力が解放されると、またステントが周囲の動脈壁に対して拡張された直径に開くと、全体血流は、デバイスの遠位端を通って侵入し、その他の管腔すべてから出る。好ましくは、血流は、ステントが完全に展開されると、ステントグラフトの外側周辺から密閉される。
【0124】
ステント自体は、
図8Eに示されるように完全に展開され得るが、依然として、取付ストリングセットによって内側部材42、中間部材40、および各側枝カテーテル150a、150b、150cの遠位端のそれぞれに取り付けられている。ここでステントグラフトの管腔末端をそれらそれぞれのカテーテルから引き離すことができる。ステントグラフトの管腔末端は、連続して(一度に1つ)任意の順序で解放され得るか、または並行して(同時に)一緒に解放され得る。
図8Fに示されるように、側枝管腔6bおよび6cの管腔末端は解放されており、それぞれの取付ストリング190を用いて、側枝カテーテル150a、150b、150cおよび側枝ガイドワイヤ154は引き込まれている。各側枝管腔末端の場合、側枝管腔6aに関して示されるように、カテーテルの引き離しは、そのそれぞれのカテーテルハブ74、76、78上で指定制御クランプ74b、76bおよび78bを作動させることによってストリング190の遊離端をカテーテルハブのネジクランプから解放すると同時に、遊離端がループ状でなくなるか、または
図8Fのそれぞれのステント頭頂部128から離れる程度に、制御ノブ74a、76a、78aをハンドルおよびストリング190から引いて除去することによって達成される。ストリング190は、それらの遊離端が頭頂部を解放するまで引張られる必要があるが、カテーテル部分32の遠位端内に引き込まれ得る。
【0125】
図8Gで示されるように、主要管腔4の遠位端および近位端の展開に対して同様の処置を行い、いずれかの末端を最初に展開するか、または両方の末端を同時に展開してもよい。指定制御クランプ70b、72bを作動させて、ストリング192の遊離端を解放すると同時に、制御ノブ70a、72aをハンドルから除去し、それによってプルストリング192を遊離端がループ状でなくなるか、またはそれぞれのステントの頭頂部126から離れる程度に引張る。ストリング192は、それらの遊離端が頭頂部を解放するまで引張られる必要があるが、カテーテル部分32の遠位端内に引き込まれ得る。次いで、カテーテル部分32の全体が、
図8Hに示されるように、大動脈弓5内でステントグラフト2が完全に展開された状態で、血管系から除去され得る。
【0126】
ここで
図11を参照して、
図1Eの移植片210の送達および展開に関して、上述される処置の部分展開ステップについて説明する。具体的には、送達システムのカテーテル部分38は、大動脈起始部および上行大動脈240内に部分的に展開される主要ステント管腔122の遠位部分を用いて、および右および左冠状動脈口220および222内に部分的に展開される側枝管腔214aおよび214bを用いて、大動脈内に配置される。主要ガイドワイヤ218は、カテーテル38から伸長し、生来の大動脈弁224の前の位置を越える一方で、側枝ガイドワイヤ226および228は、それぞれ側枝カテーテル230および232から冠状動脈口220、222内で伸長する。移植片の主要管腔に対する取付ストリングの解放時に、人工大動脈弁216は、生来の弁輪224内に存在する。側枝管腔214a、214bは、互いにおよび主要管腔212と同時に展開されるか、または連続して任意の順序で展開され得る。
【0127】
前述のような任意の外科的または血管内手順において、患者の体内に形成される切開が少ないほどよい。当然ながら、これは、極めて熟練した外科医または医師によって使用される非常に特化した器具およびツールを必要とする場合が多い。これを考慮すると、上述の単一切開デバイス移植処置は修正されて、1つ以上の二次切開の形成および使用を含むことにより、移植部位における送達システム32のカテーテル部分38の初期送達を促進し、部位におけるその展開時におけるステントグラフトの適切な配向をさらに保証する。
【0128】
本発明の二切開(または複数切開)処置は、一次切開、例えば、前述のような大腿動脈、そこを通して上述の送達および展開システムが体内の第1の血管、例えば、大動脈弓に導入され、第1の血管、例えば、大動脈弓の側枝の1つと交差する少なくとも1つの血管にアクセスを提供する位置における二次切開(またはそれ以上)におけるカットダウンを含む。ここで、
図12A〜12Fを参照して、また大動脈弓5にアクセスするために左大腿動脈8に形成される一次切開、および大動脈系の1つ以上の動脈にアクセスするために上腕頭部または橈骨動脈15において形成される単一の二次切開を使用することにより、大動脈弓に本発明のステントグラフト2を移植する状況において、この処置について説明する。
【0129】
第1および第2のアクセス切開は、左大腿動脈8および左上腕頭部動脈15のそれぞれにおいて形成される。セルジンガー技術によって、二次または「テザー」ガイドワイヤ300は、左上腕頭部動脈15を通って腕頭動脈7に前進させられる。次いで、ガイドワイヤ300は、大動脈弓5、下行大動脈11、腹部大動脈13、および左大腿動脈8へとさらに前進し、
図12Aで説明されるように、大腿部の切開を通って体から出る。二次または「テザー」カテーテル302は、次いで、ガイドワイヤ300の大腿部末端300a上、およびガイドワイヤの長さに沿って、カテーテル302が、
図12Bで示されるように、気管切開から進み出るまで追跡される。心臓血管適用のための任意の適切な市販のシステムは、二次またはガイドワイヤおよびカテーテルとして使用するために採用され得る。説明されるもの等の、二重管腔急速交換(RX)カテーテルは、カテーテル302の近位端に配置される二次管腔を有する。RXカテーテルの利点は、ストリング(またはガイドワイヤ)が管腔を出る前に、それを長距離ではなく、比較的短距離押すだけでよいことであり(「プッシュ性」はほとんど必要ない)、そのゆっくりと進む性質のためにストリングを押すことは困難である。代替として、カテーテル302の最端には、
図12Cで説明されるように、カテーテル壁における直通孔または交差孔が提供される。
【0130】
上述の移植システム30は、次いで、そこに動作可能に装填されるステントグラフト2が提供される。この処置の場合、
図12Cに示されるように、最も遠位に位置し、そこに取り付けられる(1つ以上のステント頭頂部に)側枝ステント管腔6a(すなわち、腕頭動脈7aへの移植が意図されるもの)を展開するための側枝取付ストリング190、または少なくとも1つのそのストリングは、一次またはステント送達システムカテーテル38の側枝カテーテル150aから伸長し、次いで、側枝テザーチューブ35を通り抜ける。ストリングは、次いで、ノット37aにされ、カテーテル150aおよびチューブ35へと近位に引き戻ることを防止する。ストリング190の残りの遠位長さは、次いで、テザーカテーテル302の交換管腔304を通り抜ける。ストリングの末端は、次いで、二度目にノット37bにされ、交換管腔304からストリングが近位に引き戻ることを防止する。
図12Cの二次カテーテル実施形態の場合、ストリングは主要管腔302を通り、側方孔305から出る。遠位ストリング末端が、次いで、ノット37bにされる。
【0131】
二次カテーテル302は、牽引される側枝カテーテル150aならびに一次または主要ガイドワイヤ48を含むステントカテーテル38の全体を有し、次いで、
図12Dに示されるように、カテーテル302が気管切開から完全に引き戻されるまで、また側枝カテーテル150aの遠位端も気管切開から伸長されるまで、二次ガイドワイヤ300を越えて、大腿部切開を通って後進する。ここで、テザーガイドワイヤ300を体から除去することができる。この時点において、ストリング190は、側枝カテーテル150aの遠位端と二次カテーテル302の対向端との間の位置307で切断され、テザーカテーテル302をステント展開システムから解放する。
【0132】
ストリング190に付与される張力およびその平行移動によって、
図12Eに示されるように、ステントグラフト4の側枝は、部分的に展開された(すなわち、露出されているが伸長されている)状態で、腕頭動脈7aに引き込まれている。並行して、ステントガイドワイヤ48は、大動脈弓5上を前進し、大動脈弁10を越え、それによってノーズコーン46および、したがって部分的に展開された(すなわち、露出されているが伸長または引張られている)主要ステント管腔4の遠位端を上行大動脈へと前進させる。一方、ステントカテーテル38は、ステントガイドワイヤ48上を大動脈弓5へと追跡される。ステントカテーテル38を継続的に前進させることは、部分的に展開された側枝管腔6aによって遮断される。前述のように、伸張または引張られた状態で維持される主要管腔4(ならびに側枝管腔6a)を用いて、種々の利点が提供される:大動脈弁10から出る動脈血流は、脳および体への流れを可能にする;ステントグラフト2の再配置が可能である;また内皮障害および/または大動脈壁からのプラーク塞栓の可能性が著しく最小化する。
【0133】
2つ以上の側枝管腔6a、6b、6cを有するステントおよびステントグラフトの場合、
図12Fに示されるように、単一の側枝管腔を有するステントの移植に関する上述および
図12A〜12Eで説明される処置は、個別の指定テザーガイドワイヤおよびカテーテル150a、150b、150cを用いて同時に行われる。
図12Fに示されるように、上行大動脈内に正確に配置され、部分的に展開されるステント管腔4の少なくとも遠位端を用いて、それぞれの側枝管腔6a、6b、6cは、腕頭動脈7a、左総頚動脈7b、および左鎖骨下動脈7c内にそれぞれ展開される。代替として、1つ以上の側枝管腔は、
図12A〜12Fに関して説明されるように、部分的に展開され得、残りの側枝管腔は、もしあれば、
図8C〜8Dに関して上述した方法によって展開され得る。最後に、それぞれの動脈内で部分的に展開されたすべての側枝管腔6a、6b、6cを用いて、
図8E〜8Hに関して記載された処置ステップを行って、ステントグラフトのすべての管腔を完全に展開し、送達システムを体から除去することができる。
【0134】
本発明の移植片は、ステント拘束部材または機構によって展開可能であると記載されてきたが、対象移植片は、それらおよび/またはそれらの管腔末端が、1つまたは複数の拡張可能部材による展開用に構成され得ることが理解される。例えば、装填された非展開状態の移植片の末端(すなわち、主要管腔および側枝管腔)のそれぞれは、カテーテルに取り付けられる拡張可能バルーンの周辺での配置によって、1つ以上のネスト化したカテーテルに連結され得る。部分的または完全に拡張した状態にあるバルーンは、移植片末端との十分に適合した嵌合を提供し、移植片の管腔は、カテーテル構成要素を操作する際に、それらの長さに沿って、選択的に伸張または引張られ得る。
【0135】
前述は、単に本発明の原理を説明する。当業者は、本明細書では明示的に記載または表示されていないが、種々の改変を考案して、本発明の原理を具体化することができ、その精神および範囲内に含まれることを理解されるであろう。さらに、本明細書で引用されるすべての実施例および条件付き言語は、原則的に本発明の原理を理解する際に読者の助けとなることが意図され、その概念は、発明者らによって当該技術のさらなる進展に寄与し、そのような具体的な引用および条件に限定されないものと解釈される。さらに、本発明の原理、側面、および実施形態を引用する明細書のすべての記述、ならびにその特定実施例は、その構造的および機能的同等物の両方を包含することが意図される。加えて、かかる同等物は、現在知られている同等物および将来開発される同等物、すなわち、構造に関係なく、同一機能を実施するように開発される任意の要素の両方を含むことが意図される。本発明の範囲は、したがって、本明細書で表示および説明される例示的実施形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の請求項によって具体化される。
【0136】
本明細書で使用されるように、また添付の請求項において、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要があることに留意する必要がある。したがって、例えば、「1つのストリング(a string)」への言及は、複数のかかるストリングを含み得、また「管状部材(the luminal member)への言及は、1つ以上の管状部材および当業者に知られるその同等物等への言及を含む。
【0137】
値の範囲が提供される場合は、各介在値は、文脈上別段の明確な指示がない限り、その範囲の上限と下限との間で、下限の単位の十分の一まで具体的に開示されることを理解されたい。表示範囲における任意の表示値または介在値と、その表示範囲における任意の他の表示値または介在値との間のより小さい範囲もそれぞれ本発明内に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して該範囲に含まれるか、または除外される場合があり、表示範囲において任意に具体的に除外される限界を条件として、いずれか、または両方がより小さい範囲に含まれるか、またはいずれも含まれない各範囲も本発明に包含される。表示範囲は、限界のうちの1つまたは両方を含む場合、限界を含むもののいずれか、または両方を除く範囲も本発明に含まれる。
【0138】
本明細書で言及したすべての刊行物は、参照することによって本明細書に組み込まれ、どの刊行物が引用されているかと併せて、方法および/または材料を開示および説明する。本明細書で論じられる刊行物は、単に本出願の出願日前の開示として提供される。本明細書の記載はすべて、本発明が先行発明によるかかる刊行物に先立つ権利がないことの承認として解釈されない。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の公開日とは異なり得る。