特許第5662707号(P5662707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662707
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】孔版印刷用エマルションインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20150115BHJP
【FI】
   C09D11/10
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-133689(P2010-133689)
(22)【出願日】2010年6月11日
(65)【公開番号】特開2011-256322(P2011-256322A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2013年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】松沢 克明
(72)【発明者】
【氏名】岩井 真佐美
(72)【発明者】
【氏名】青木 聡
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−168372(JP,A)
【文献】 特開平05−117564(JP,A)
【文献】 特開平08−311384(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/053917(WO,A1)
【文献】 特開2009−270071(JP,A)
【文献】 特開平09−157571(JP,A)
【文献】 特開2006−299208(JP,A)
【文献】 特開2005−298779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相および水相からなる孔版印刷用エマルションインクにおいて、前記油相に質量平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と炭酸カルシウムとを含むことを特徴とする孔版印刷用エマルションインク。
【請求項2】
油相および水相からなる孔版印刷用エマルションインクにおいて、前記油相に質量平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂とpH7〜8のカーボンブラックとを含むことを特徴とする孔版印刷用エマルションインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔版印刷用エマルションインクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
孔版印刷は版の作製が容易なため幅広い分野で利用されており、孔版印刷に使用される孔版印刷用エマルションインクは、紙などの被印刷物に浸透して乾燥する浸透乾燥方式のインクである。孔版印刷機においては、孔版印刷の原理上ある程度の粘性を有するエマルションインクが使用されるため、用紙転写後の浸透乾燥にある程度の時間を要する。このため、短時間で両面印刷を行う場合は、裏面印刷時に表面に印刷されたインクがプレスロールや搬送ロール等に転写し、ロールに付着したインクが用紙に転写し汚れが発生するという問題がある。
【0003】
また、印刷機を長期間放置しておくと、ドラム外周のスクリーン/マスター部に残存しているインクが増粘して印面が復帰しないという問題がある(いわゆる目詰まり)。さらに、長期放置時には、印刷ドラム内のインクが劣化し、インク中に保持されていた溶剤成分(油)が吐き出され、印刷ドラムから溶剤が染み出し印刷機内を汚すという問題がある(いわゆる油の吐出し)。
【0004】
上記の浸透乾燥性の問題に対して、出願人は水相の表面張力を低くすることで浸透性を向上させることが可能なエマルションインクを提案している(特許文献1)。しかし、水相の表面張力が低いために、保存安定性については改良の余地が残っている。また、目詰まりの問題に対しては、着色剤として染料を含むインクを提案しているが(特許文献2)、染料を用いているために、裏抜けが発生しやすくなるという問題がある。さらに、油の吐出しの問題に対しては、体質顔料を添加するインクを提案しているが(特許文献3)、体質顔料の添加によって浸透乾燥性をある程度犠牲にせざるを得ない。
【0005】
ところで、従来の孔版印刷用エマルションインクには、インクの保存安定性の向上やインクの紙への定着性を良好にする等の目的で樹脂が添加されている。孔版印刷用インクに添加する樹脂としては、20,000〜150,000(特許文献4)、40,000〜160,000(特許文献5)、10,000以上(特許文献6)等の高分子量樹脂を配合したインクが多い。一方、特許文献7には低分子量樹脂を含んだ3,000〜150,000のゲル化剤を含む樹脂が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−332444号公報
【特許文献2】特開2000−191970号公報
【特許文献3】特開2001−311027号公報
【特許文献4】特開2007−231169号公報
【特許文献5】特開2009−270071号公報
【特許文献6】特開2005−298779号公報
【特許文献7】特開平5−117564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高分子量樹脂を配合したインクは樹脂自体の粘度が高く、かつ樹脂が溶剤を保持し易くなるために油の吐出しは抑制できるものと考えられるが、顔料の流動性が低くなるため浸透乾燥性は悪くなり、また、長期放置時にスクリーン等に残存しているインクの増粘が起こりやすく、目詰まりが発生しやすい。低分子量樹脂を用いれば、浸透乾燥性や目詰まりの問題は解消される可能性はあるものの、溶剤を保持し難くなるために、長期放置時に油を吐出しやすくなる。なお、特許文献7に記載されているようなゲル化剤を含む低分子量樹脂は、ゲル化剤が樹脂の極性基と反応するため、ゲル化剤を含まない樹脂と比較して極性が低下し、結果、顔料分散性が劣るため、高分子量樹脂を配合したインクと同様の問題が生ずる。
【0008】
上記のように、孔版印刷用エマルションインクにおける浸透乾燥性、目詰まり、油の吐出しといった問題は、一方の問題を解決するためには他方の問題をある程度犠牲にした上で成り立つという関係にあり、これらの問題を同時に解決するには至っていないのが現状である。本発明者が鋭意検討を重ねた結果、浸透乾燥性、目詰まりおよび油の吐出しといった問題を同時に解決することが可能なインクを見出し本発明に至った。すなわち、本発明は浸透乾燥性がよく、長期保存時における目詰りや油の吐出しを抑制することが可能な孔版印刷用エマルションインクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様として、本発明の孔版印刷用エマルションインクは、油相および水相からなる孔版印刷用エマルションインクにおいて、前記油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂とを含むことを特徴とするものである。
【0010】
第二の態様として、本発明の孔版印刷用エマルションインクは、油相および水相からなる孔版印刷用エマルションインクにおいて、前記油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と炭酸カルシウムとを含むことを特徴とするものである。
【0011】
第三の態様として、本発明の孔版印刷用エマルションインクは、油相および水相からなる孔版印刷用エマルションインクにおいて、前記油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂とpH7〜8のカーボンブラックとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の孔版印刷用エマルションインクは、油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂を必須の成分として含み、この平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂によって浸透乾燥性が向上するとともに、長期放置時の目詰まりが抑制されると考えられる。一方で、第一の態様の孔版印刷用エマルションインクは、さらに平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂を含み、第二の態様の孔版印刷用エマルションインクは炭酸カルシウムを含み、第三の態様の孔版印刷用エマルションインクはpH7〜8のカーボンブラックを含み、これらそれぞれの含有によって、油の吐出しを改善することが可能となる。結果、本発明によれば、孔版印刷用エマルションインクを、浸透乾燥性がよく、長期保存時における目詰りや油の吐出しを抑制することが可能なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の孔版印刷用エマルションインクを詳細に説明する。本発明の孔版印刷用エマルションインクは、第一の態様として、油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂とを含むことを特徴とする。第二の態様として、油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と炭酸カルシウムとを含むことを特徴とする。第三の態様として、油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂とpH7〜8のカーボンブラックとを含むことを特徴とする。
【0014】
上記第一〜第三の態様における孔版印刷用エマルションインクは、油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂(以下、低分子量アルキド樹脂をもいう)を含む点において共通する。ここで、本発明における平均分子量は質量平均分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィー法(標準ポリスチレン換算)により測定されたものを意味する。低分子量アルキド樹脂の平均分子量は500以上5,000未満が好ましく、1,000以上5,000未満がより好ましく、さらには1,500以上3,000未満がより好ましい。平均分子量が5,000より大きい場合は浸透乾燥性が改善されにくく転写汚れが発生しやすくなる。低分子量アルキド樹脂の含有量は、インク全量に対して0.5質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜15質量%であることがより好ましい。
【0015】
アルキド樹脂は他の樹脂に比べて極性が高いため、顔料との濡れ性に優れる。とりわけ、低分子量アルキド樹脂は高分子量樹脂と比較して顔料分散性が高い。これは、低分子量であるほど顔料への吸着速度が速く、かつ樹脂自体の粘度が低いために顔料分散体の流動性が高くなることによるものであるが、これによって浸透乾燥性が向上すると考える。また、顔料分散性に優れるために、長期放置時のドラム外周のスクリーン/マスター部に残存しているインクの増粘が発生し難く、長期放置時の目詰まりが抑制されると考えられる。
【0016】
一方で、低分子量アルキド樹脂は溶剤を保持し難くなるために、長期放置時に、油を吐出しやすくなる。このため、第一の態様の孔版印刷用エマルションインクにおいては、油相に平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂(以下、高分子量アルキド樹脂ともいう)を、第二の態様の孔版印刷用エマルションインクにおいては、油相に炭酸カルシウムを、第三の態様の孔版印刷用エマルションインクにおいては、pH7〜8のカーボンブラックを含有させる。これによって、浸透乾燥性を悪化させることなく、また目詰まりを起こさせることなく、油の吐出しを改善することが可能となる。
【0017】
油相に高分子量アルキド樹脂を含む第一の態様の孔版印刷用エマルションインクにおいては、高分子量アルキド樹脂によって油の吐出しが改善され、一方で、低分子量アルキド樹脂によって浸透乾燥性の向上と目詰まりの抑制が確保されるために、浸透乾燥性の向上と目詰まりの抑制、油の吐出し改善の両立が可能となる。高分子量アルキド樹脂の平均分子量は10,000以上100,000未満がより好ましく、さらには10,000以上50,000未満がより好ましく、10,000以上25,000未満がさらに好ましい。平均分子量が10,000よりも小さい場合、油の吐き出し改善効果が得られにくく、平均分子量が100,000より大きい場合、浸透乾燥性を悪くさせ転写汚れが発生しやすくなる。
【0018】
低分子量アルキド樹脂と高分子量アルキド樹脂の割合は、用いる低分子量アルキド樹脂と高分子量アルキド樹脂の平均分子量や、他に樹脂を含むか否か、含む場合の樹脂の種類によっても異なるため一概には言えないが、例えば、低分子量アルキド樹脂と高分子量アルキド樹脂以外に樹脂を含まない場合、その比は6:4〜1:9(低分子量アルキド樹脂の質量:高分子量アルキド樹脂の質量)の範囲であることがより好ましい。
【0019】
油相に炭酸カルシウムを含む第二の態様の孔版印刷用エマルションインクにおいては、炭酸カルシウムによって油の吐出しが改善され、低分子量アルキド樹脂によって浸透乾燥性の向上と目詰まりの抑制が確保されるために、浸透乾燥性の向上と目詰まりの抑制、油の吐出し改善の両立が可能となる。炭酸カルシウムはベントナイトやタルク等の体質顔料と比較して、油相の増粘効果が低いために浸透乾燥性が悪化しなかったと考えられる。なお、炭酸カルシウムそのものは親水性であり、エマルションの安定性の観点から、表面に脂肪酸処理やロジン酸処理を施した炭酸カルシウムを用いることが好ましい。脂肪酸処理やロジン酸処理を施した炭酸カルシウムは公知の方法により得ることができ、市販のものを使用してもよい。
【0020】
油相に中性カーボンブラックを含む第三の態様の孔版印刷用エマルションインクにおいては、中性カーボンブラックによって油の吐出しが改善され、低分子量アルキド樹脂によって浸透乾燥性の向上と目詰まりの抑制が確保されるために、浸透乾燥性の向上と目詰まりの抑制、油の吐出し改善の両立が可能となる。中性カーボンブラックは酸性カーボンブラックと比較して、顔料分散体の流動性を若干低下させ、特に低シェアにおける粘度を顕著に上昇させるため、油の吐出しが抑制されるものと考えられる。
【0021】
上記第一〜第三の態様における孔版印刷用エマルションインクの油相は、それぞれの必須成分以外に、浸透乾燥性の向上と目詰まりの抑制、油の吐出し改善の両立という効果を損なわない範囲において、着色剤、界面活性剤(乳化剤)、低分子量および高分子量アルキド樹脂以外の樹脂成分、溶剤(油)成分、顔料分散剤等から構成される。但し、油相に高分子量アルキド樹脂を含む第一の態様の孔版印刷用エマルションインクにおいては、高分子量アルキド樹脂以外の高分子量樹脂成分は含まない方が好ましい。また、油相に炭酸カルシウムを含む第二の態様の孔版印刷用エマルションインクの場合には、炭酸カルシウム以外の体質顔料は含まないことが好ましい。油相の割合はインク全質量に対して20質量%〜70質量%であることが好ましく、25質量%〜55質量%であることがより好ましい。
【0022】
着色剤としては、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、染色レーキ、イソインドリノン、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノン・ペリレンのような有機顔料;カーボンブラック、二酸化チタン等の無機顔料;アゾ系、アントラキノン系、アジン系等の油溶性染料;各種水溶性染料、分散染料等が挙げられる。これらの着色剤は、目的とする色相を実現するため、単独で、または2種以上を混合して用いることができ、顔料と染料とを組み合わせてもよい。その配合量も、適宜設定すればよいが、一般に、インクの総質量に対して20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3質量%〜10質量%の範囲で用いられる。
【0023】
また、印刷物の画質を向上させるために、インク中に体質顔料を含有させることができる。体質顔料としては、たとえば、シリカ、白土、タルク、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウムを用いることができ、これらの2種以上を併用してもよい。体質顔料は、多量に含有させると被印刷体への着色剤の定着を阻害したり、印刷機の非使用後の印刷性能に支障をきたす恐れがあるため、10質量%以下の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
【0024】
界面活性剤は油中水型エマルションを構成するために用いられ、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤のいずれを用いてもよい。このうち、油中水型エマルションの乳化性や保存安定性の観点から、非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。
【0025】
具体的には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノイソステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、グリセリルモノステアレート、ヘキサグリセリルテトラオレエート、デカグリセリルデカオレエート、ヘキサグリセリルペンタオレエート等の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、(ポリ)エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油等を好ましく挙げることができる。上記界面活性剤は、単独で用いてもよいし、二種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0026】
樹脂はインクに粘度を付与し、エマルションの安定性を向上させるもので、油相に溶解するものが用いられる。樹脂を含ませることにより、カーボンブラック、その他の顔料や体質顔料の顔料分散性、紙への定着性、転写汚れの抑制を向上させることができる。樹脂としては、たとえば、ロジン、ギルソナイト、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、石油樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、天然ゴム誘導体樹脂等を好ましく用いることができ、アルキド樹脂、フェノール樹脂をより好ましく用いることができる。また、アルキド樹脂またはロジン変性樹脂とアルミニウムキレート化合物またはアルミニウムアルコラートとの反応生成物も、好ましく用いることができる。樹脂の含有量は、インク全質量に対して1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。
【0027】
主溶剤(ここで主溶剤とは全溶剤質量の半分以上を占める溶剤を意味する)は、インクを大気中に放置した場合でも揮発しにくいことが必要であることから、その沸点が240℃以上であるものが好ましく、250℃以上のものであることがより好ましい。なお、放置時の水相の揮発によるインク粘度低下を補うために、油相に沸点が240℃以下の溶剤を主溶剤以外に添加することもできる。溶剤の種類は特に限定されず、非極性溶剤及び極性溶剤のいずれも使用することができる。例えば、非極性溶剤として炭化水素溶剤等、極性溶剤として植物油、エステル溶剤、アルコール溶剤、高級脂肪酸溶剤、エーテル溶剤等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して使用する場合には、混合液は単一の連続する相を形成する必要がある。
【0028】
炭化水素溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素系溶剤としては、新日本石油社製「テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、AF−4、AF−5、AF−6、AF−7」(いずれも商品名)、新日本石油化学社製「日石アイソゾール、ナフテゾール」(いずれも商品名)、エクソンモービル社製「IsoparG、IsoparH、IsoparL、IsoparM、ExxolD40、ExxolD80、ExxolD100、ExxolD140、ExxolD140」(いずれも商品名)等が挙げられる。
植物油としては、大豆油、コーン油、なたね油、サフラワー油、ごま油、ひまし油、オリーブ油、やし油、米ぬか油、綿実油、パーム油、パーム核油、あまに油等が挙げられる。
【0029】
エステル溶剤としては、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソオクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2エチルヘキサン酸グリセリル等が挙げられる。
【0030】
アルコール溶剤としては、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸溶剤としては、イソノナン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
【0031】
エーテル溶剤としては、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。
溶剤の含有量は、インク油相質量に対して10質量%〜80質量%であることが好ましく、40質量%〜75質量%であることがより好ましい。
【0032】
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等を用いることができ、中でも主鎖にポリアミド構造を有し、側鎖にポリエステル構造を有した櫛型のポリマーが好ましい。顔料分散剤の含有量は、インク全質量に対して0質量%〜10質量%であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0033】
その他、油相にはエマルションの形成及び安定性を阻害しない範囲で、酸化防止剤、流動性を調整する補助剤としてワックス等を主成分としたコンパウンド等を添加することができる。
【0034】
水相中には、水の他、必要に応じて水蒸発抑制剤(または凍結防止剤)、電解質、pH調整剤、酸化防止剤等を含ませることができる。
水蒸発抑制剤(または凍結防止剤)としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類等の、水溶性有機溶剤等を好ましく挙げることができ、その含有量は、水相全量に対して1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。
【0035】
電解質としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸カリウム、ホウ酸ナトリウム等が挙げられ、その含有量は、水相全量に対して0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0036】
本発明のインクは、公知の方法で調製することができる。例えば油相は、公知の分散機で顔料を溶剤に分散した後、さらに溶剤で希釈し、その際その他の油相成分を添加して調製することができる。希釈には、それ自体公知の撹拌機を使用することができる。水相は、水相の成分を、撹拌機により水に混合・溶解することにより調製することができる。そして、公知の乳化機を使用し、攪拌下の油相中に水相を滴下することにより、油中水型のエマルションインクを得ることができる。これらの分散、稀釈、乳化等を行うにあたって採用される条件等は、適宜選択することができる。
以下に本発明のインクの実施例を示す。
【実施例】
【0037】
(インクの調製)
下記表1に示す配合(表に示す数値は質量部である)により、以下の手順に従い、各実施例、比較例のインクを調製した。まず、油相の色材、体質顔料、樹脂、溶剤等を混合し、ロッキングミルで充分に分散した。この油相中に、添加剤を混合した水相混合溶液を徐々に滴下し、ホモジナイザーを用いて乳化を行い、孔版印刷用エマルションインク(油中水型エマルションインク)を得た。
【0038】
(評価)
(浸透乾燥性)
作製したエマルションインクを用いて、孔版印刷機としてリソグラフ(理想科学工業株式会社登録商標)RZ570(同社製)により印刷を行い、印刷物を得た。この印刷物の印刷3分後に裏面印刷を行い、転写汚れが発生するか状態を調べ、次のように評価した。
◎:転写汚れが認められない
○:転写汚れがわずかに認められる
△:転写汚れが認められるが実用上許容範囲である
×:転写汚れがはっきりと認められ実用上許容範囲を超える
【0039】
(1ヶ月放置後の目詰まり)
1ヶ月放置後の印刷ドラムを印刷機RZ570にセットして製版印刷し、印刷を行い、以下のように評価した。
◎:20枚以内で所望の印刷画像が得られた
○:50枚以内で所望の印刷画像が得られた
×:51枚以上で所望の印刷画像が得られた
【0040】
(1ヶ月放置後の油吐き)
1ヶ月放置後の印刷ドラムの油吐きを下記の基準により目視評価した。
◎:油吐きなし
○:少量の油吐きが認められる
△:油吐きしているがドラムからはみ出していない
×:油吐きが顕著でドラムからはみ出している
実施例および比較例のインクの処方とともに、上記の評価項目により評価した結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から明らかなように、本発明の孔版印刷用エマルションインクは、分子量5,000未満のアルキド樹脂を含むため乾燥性に優れ、長期放置時の目詰まりの発生を抑制することが可能である。一方、実施例1および2のインクはさらに平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂を、実施例3のインクはpH7〜8のカーボンブラックを、実施例4および5のインクは炭酸カルシウムをそれぞれ含むので、油吐きを改善することが可能となった。
【0043】
油吐きは炭酸カルシウムによって改善され、同じ体質顔料である有機ベントナイトやタルクでは改善効果が薄いことが比較例4および5からわかる。また、分子量5,000未満のアルキド樹脂を含むだけ(比較例1)では、乾燥性を向上させ、目詰まりの発生を抑制することは可能であるが、油吐きが顕著であった。逆に分子量が10,000以上のアルキド樹脂を含んでいても、分子量5,000以下のアルキド樹脂を含まない比較例2および3では油吐きは抑制することができたものの、乾燥性、目詰まりは悪くなった。
【0044】
以上のように、本発明の孔版印刷用エマルションインクは、油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂を必須の成分として含有させ、さらに平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂を含有させるか、炭酸カルシウムを含有させるか、pH7〜8のカーボンブラックを含有させるかによって、浸透乾燥性がよく、長期保存時における目詰りや油の吐出しを抑制することが可能なものとすることができる。