特許第5662721号(P5662721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662721
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】真空弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/00 20060101AFI20150115BHJP
   F16K 51/02 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   F16K1/00 N
   F16K51/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-163830(P2010-163830)
(22)【出願日】2010年7月21日
(65)【公開番号】特開2012-26482(P2012-26482A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】513137628
【氏名又は名称】阿部 節子
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】阿部 俊夫
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−287760(JP,A)
【文献】 特開平01−295085(JP,A)
【文献】 特開2010−025283(JP,A)
【文献】 実開昭60−062579(JP,U)
【文献】 米国特許第04832311(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00−1/54,
F16K 51/02,
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースに収納する弁体と、からなる真空弁であって、
前記ケースには、前記弁体を収納する弁体収納孔と、前記弁体収納孔の底面から前記ケース外部に貫通する吸気路と、前記弁体収納孔の側面から前記ケース外部に貫通する排気路と、を形成し、
前記弁体は、前記弁体収納孔に螺挿可能であり、
前記弁体の先端には、前記吸気路に挿入可能な突起部を有し、
前記突起部に、前記吸気路よりも大径のOリングを掛止し、
前記突起部は、前記吸気路に挿入する円柱部と、前記円柱部から拡径して前記弁体と連結する、テーパ部と、を有し、前記Oリングが前記テーパ部に沿って移動可能であり、
前記弁体を螺挿することによって、前記弁体及び前記Oリングによって前記吸気路を封止することを特徴とする、真空弁。
【請求項2】
請求項1に記載の真空弁において、真空弁を全開として使用する際に、前記突起部の先端が前記吸気路内に位置することを特徴とする、真空弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧容器などから空気を吸引し、その内部の圧力を維持することなどに使用する真空弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンクなどの減圧容器から真空ポンプで空気を吸引し、その真空状態を維持するために、吸気路を遮蔽する真空弁が使用されている。
例えば、特開2009−287760号公報に記載された真空弁のように、ケースに形成した吸気路及び排気路に連通する弁体収納孔を設け、弁体収納孔に弁体を収納した状態で移動して全閉にすることにより、吸気路を遮断して、減圧容器を真空状態に維持するものである。
この真空弁は、弁体収納孔の底部であって、吸気路の外周を囲むように溝を形成し、この溝にOリングを嵌挿することにより、弁体とOリングが密着し吸気路を遮蔽する構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−287760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような構成を有する真空弁には、以下のような問題点がある。
(1)メンテナンス時などにおいて、弁体を全閉状態から開いていくと、弁体収納孔底部に設けたOリングが弁体に張り付いてしまい、溝から脱落してしまう可能性がある。
(2)Oリングが溝に嵌挿されているかどうかの確認は、弁体をケースから外して、弁体収納孔内部を確認しなければならない。
(3)Oリングが脱落したまま弁体を閉めても、Oリングは溝に戻らず、吸気路を遮蔽することができない。また、Oリングがケースと弁体に挟まれて破損してしまう可能性がある。
(4)弁体の全閉状態の確認は、弁体を閉めるための工具の手応えで判断するが、Oリングの状態が確認できないため、Oリングが脱落している場合には、真空弁を取り付ける減圧容器の真空漏れが生じる可能性がある。
(5)弁体収納孔内部にOリングを嵌挿するための溝を形成するために、加工費が必要となる。
【0005】
本発明は、弁自体を出来る限り小型化でき、安価で、弁の開閉等、反復使用による構成部品の破損を防止する、真空弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、ケースと、前記ケースに収納する弁体と、からなる真空弁であって、前記ケースには、前記弁体を収納する弁体収納孔と、前記弁体収納孔の底面から前記ケース外部に貫通する吸気路と、前記弁体収納孔の側面から前記ケース外部に貫通する排気路と、を形成し、前記弁体は、前記弁体収納孔に螺挿可能であり、前記弁体の先端には、前記吸気路に挿入可能な突起部を有し、前記突起部に、前記吸気路よりも大径のOリングを掛止し、前記突起部は、前記吸気路に挿入する円柱部と、前記円柱部から拡径して前記弁体と連結する、テーパ部と、を有し、前記Oリングが前記テーパ部に沿って移動可能であり、前記弁体を螺挿することによって、前記弁体及び前記Oリングによって前記吸気路を封止することを特徴とする、真空弁を提供する。
本願の第2発明は、第1発明の真空弁において、真空弁を全開として使用する際に、前記突起部の先端が前記吸気路内に位置することを特徴とする、真空弁を提供する
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)弁体の先端に突起部を形成し、突起部にOリングを掛止するため、Oリング溝が不要となり、安価に真空弁を製造できる。
(2)Oリングの外径を吸気路の径より大きく、かつ、弁全開時に突起部の先端が吸気路内部に位置するように構成することにより、Oリングが突起部から脱落することがなく、真空漏れが生じることがない。
(3)突起部に形成したテーパによって、Oリングが弁体全閉時の適正位置に誘導される。このため、全閉時にOリングがケースと弁体に挟まれて破損することなく、吸気路を遮断することができる。
(4)突起部のテーパによってOリングが位置決めされるため、Oリングの状態を確認する必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る真空弁の分解斜視図
図2】真空弁の閉の断面図
図3】真空弁の使用状態の断面図
図4】真空弁の開の状態の断面図
図5】突起部とOリングの位置関係の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図に示す実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
[1]全体の構成
本発明の真空弁は、ケース1と、弁体2と、全閉時にケース1と弁体2間を密閉するOリング3と、からなる。(図1図2
【0011】
(1)ケース
ケース1は、減圧容器の排気口に螺着する部材である。
ケース1は、レンチ等で掴んで減圧容器の排気口に螺着するため、その一部外径は、六角柱状の形状を呈する。
ケース1の材料については、鋼製や黄銅製など、腐食しにくい金属であれば広く採用できる。
ケース1には、その一端から、その軸方向に所定径の円柱状の弁体収納孔11を、所定の深さまで穿孔する。
弁体収納孔11の内周面であって、当該一端から軸方向に所定の長さには、雌ネジ111を刻設する。
弁体収納孔11の底面112には、弁体収納孔11と同軸芯であって、弁体収納孔11の径よりも小さい吸気路12を穿孔する。吸気路12はケース1の外部まで貫通する。
ケース1の外形の一部であって、吸気路12が貫通する部分には、外周に雄ネジ121を刻設する。
ケース1の外周から、弁体収納孔11に直交する方向に、排気路13を穿孔する。排気路13は弁体収納孔11に貫通している。
排気路13の内周面には、雌ネジ131を刻設する。
【0012】
(2)弁体
弁体収納孔11の中には、黄銅によって形成した弁体2を収納する。
弁体2は円柱形状を成しており、弁体2のうち、弁体収納孔11に挿入する側の端面の中心には、柱状の突起部21を形成する。
弁体2の他端面、つまりケース1の外周側に表出する面には、六角形状の凹部である係止部22を形成する。
また、弁体2の係止部22が形成された側の端部の外周面の所定の範囲には、雄ネジ23を刻設する。
【0013】
(3)突起部
突起部21は、弁体2に立設する円錐台状のテーパ部211と、テーパ部211の頂部に立設する円柱部212と、からなる。
テーパ部211の底部の径は、吸気路12と略同径とし、テーパ部211の頂部の径及び円柱部212の径は、吸気路12よりも小径とする。
突起部21の突出長は、真空弁が全開となるように弁体2を移動した際に、突起部21の先端が吸気路12内部に位置する長さとする。
【0014】
(4)Oリング
ケース1の弁体収納孔11内部には、Oリング3を配置する。
Oリング3の内径は、突起部21のテーパ部211の底部の径と略同径、かつ吸気路12よりも大径とする。
Oリング3の太さは、吸気路12に突起部21の円柱部212を挿入した際の、円柱部212と吸気路12との距離よりも太くなるように構成する。
Oリング3は弁体収納孔11の底面112に固定せず、弁体2の突起部21に掛止して配置する。
【0015】
[2]使用状態
次に、上記構成の真空弁の使用状態を説明する。
【0016】
(1)減圧
タンクなどの減圧する容器4の排気口に、ケース1の雄ネジ121を螺着する。(図3
排気路13の雌ネジ131には、真空ポンプ5とつないだパイプ6を螺挿する。
弁体収納孔11内には、弁体2を収納する。このとき弁体2の突起部21にOリング3を掛止しておく。(図4
弁体2の突起部21にOリング3を掛止するのみであるため、Oリング3固定用の溝等を加工する必要が無く、安価に真空弁を製造できる。
弁体2の雄ネジ23と弁体収納孔11の雌ネジ111を螺合することで弁体2は弁体収納孔11に沿って進退可能である。
弁体2は、弁体2の外部側へ後退させており、吸気路12と排気路13とが、弁体収納孔11を経由して連通するようにしておく。
この状態で真空ポンプ5を起動し、容器4内の空気を吸引して減圧する。
なお、雄ネジ23には減圧時に雌ネジ111との隙間からの真空漏れを防止するため、真空グリース等を塗布しておく。
【0017】
(2)封止
減圧が終了した後、六角レンチ7等を係止部22に係止し、弁体2をねじ込んで弁体収納孔11の底面112方向に進行させる。
弁体2が弁体収納孔11内に進行すると、弁体2の突起部21は、吸気路12内に挿入される。(図5a)
突起部21に掛止したOリング3の外径は、吸気路12よりも大径である。このため、突起部21が吸気路12に挿入されると、Oリング3は、弁体収納孔11の底面112に当接し、突起部21の円柱部212からテーパ部211の方向に移動する。
そして、Oリング3の内径は、テーパ部211の底部の径と略同径であるため、Oリング3はテーパ部211に沿って移動し、弁体2と弁体収納孔11の底面112が接触しようとするときには、テーパ部211の底部に沿って位置し、吸気路12の開口を囲繞する。(図5b、c)
このように、Oリング3はテーパ部211によって位置決めされるため、Oリング3の位置がずれて吸気路12が密閉されなくなる恐れが無い。
そして、Oリング3が、弁体収納孔11の底面112と、弁体2とに密着して挟持されるまで弁体2を進行させると、吸気路12がOリング3及び弁体2により遮蔽され、減圧状態のまま、真空漏れも一切無く、吸引は終了する。
この状態で真空ポンプ5の作動を停止する。
【0018】
(3)開放
真空弁を全閉状態から開く際には、六角レンチ7等を係止部22に係止し、弁体2を弁体収納孔11の開口方向に後退させる。
弁体2と弁体収納孔11の底面112間のOリング3は、突起部21に掛止するため、脱落することがない。(図5b)
さらに、弁体2を後退させて真空弁を全開状態としても、突起部21の先端が吸気路12から抜け出すことがないため、Oリング3は、突起部21及び弁体収納孔11の底面112によって移動が制限され、脱落することがなく、再度真空弁を全閉状態としても、テーパ部211によって位置決めされるため、真空漏れが生じることはない。
また、Oリング3の脱落や破損が生じないため、開閉を繰り返しても、真空弁が破損することがない。
【符号の説明】
【0019】
1 ケース
11 弁体収納孔
111 雌ネジ
112 底面
12 吸気路
121 雄ネジ
13 排気路
131 雌ネジ
2 弁体
21 突起部
211 テーパ部
212 円柱部
22 係止部
23 雄ネジ
3 Oリング
4 容器
5 真空ポンプ
6 パイプ
7 六角レンチ
図1
図2
図3
図4
図5