特許第5662731号(P5662731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662731
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】圧電磁器組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/00 20060101AFI20150115BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20150115BHJP
   H01L 41/22 20130101ALI20150115BHJP
【FI】
   C04B35/00 J
   H01L41/18 101B
   H01L41/18 101J
   H01L41/22
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-176906(P2010-176906)
(22)【出願日】2010年8月6日
(65)【公開番号】特開2012-36036(P2012-36036A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2013年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(72)【発明者】
【氏名】土信田 豊
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−292627(JP,A)
【文献】 特開2003−261378(JP,A)
【文献】 特開2003−261379(JP,A)
【文献】 特開2003−063877(JP,A)
【文献】 SHIMIZU, Hiroyuki et al.,C-axis Oriented (Sr,Ca)2NaNb5O15 Multilayer Piezoelectric Ceramics Fabricated Using High-Magnetic-Fi,Japanese Journal of Applied Physics,日本,応用物理学会,2008年,Vol.47, No.9, pp.7693-7697
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00
H01L 41/187
H01L 41/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15(式中、0<x<0.3、0.1<y<0.6である)で表される組成式を有する磁器成分を主成分とし、Al及び/又はSiの酸化物を、Al又はSiO換算で、0〜0.4wt%含有し、かつ、Mnの酸化物を、MnO換算で、0〜5wt%含有することを特徴とする圧電磁器組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電磁器組成物に関し、特に、圧電セラミックス部品、例えば光学制御、精密機械・器具における位置決め装置、流体の制御バルブの駆動源などの圧電超音波モータや圧電アクチュエータ、圧電トランス、圧電発音体、圧電センサなどの材料に有用な、鉛や重金属を含有しない、タングステンブロンズ型の圧電磁器組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電磁器組成物は、逆圧電効果による電気−機械の変換素子として、発音体、振動子、アクチュエータ、また、逆圧電効果による機械−電気の変換素子として、センサ、発電、さらに電気−機械−電気による回路素子及び機械−電気−機械の振動制御に利用されている。
従来、圧電磁器組成物は、そのほとんどが、PbZrO−PbTiOの2成分よりなるPZTや、このPZTに対して、Pb(Mg1/3Nb2/3)OやPb(Zn1/3Nb2/3)Oなど第3成分で修飾した主成分がPbからなる。
しかしながら、Pbは、人体に有害であるため、Pbを含まない非鉛圧電体材料の開発が精力的に進められている。
【0003】
非鉛圧電体材料のなかで、Sr2−xCaNaNb15で表されるタングステンブロンズ型複合酸化物は、単結晶の圧電特性が報告されており(非特許文献1)、また、特許文献1では、アクチュエータ用の圧電磁器として、SrNaNb15で表されるタングステンブロンズ型複合酸化物において、Nbの一部を、VやTaで置換し、或いはさらに、Srの一部を、Mg,Ba,Caのうち少なくとも一種で置換するとともに、Naの一部をKで置換した組成が提案されており、同様に、特許文献2では、SrNaNb15のSrの一部を、(Bi1/2Li1/2)、(Bi1/2Na1/2)、および(Bi1/21/2)のうちの一種と、Mg、BaおよびCaのうち少なくとも一種で置換した組成が提案されている。
また、特許文献3では、Sr2−xCaNaNb15(x=0.05〜0.35)で表される多結晶圧電化合物に、特性改善成分として、希土類酸化物Reを、0.5〜3wt%添加して、圧電材料とすること、およびSr2−xNaNb15x(式中、x=0.075〜0.25)で表される組成において、Aを、Ca,Ba,Mgの少なくとも2種以上の元素とした圧電材料が提案されている。
さらに、特許文献4では、(Ba1−xSrNaNb15の圧電特性を改善して、圧電セラミックフィルター等の圧電セラミック材料として有用な組成物を提供するために、(1−y)(Ba1−xSr)Nb−yNaNbOで表され、xが0≦x≦1、yが0.15≦y<1/3の範囲にある磁器成分を主成分とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−240759号公報
【特許文献2】特開平11−278932号公報
【特許文献3】特開2000−169229号公報
【特許文献4】特開平10−297969号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ferroelectrics,Vol.160,P265-276,(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記非鉛圧電体材料のなかで、Sr2−xCaNaNb15系の圧電磁器組成物は、圧電アクチュエータ、圧電超音波モータ用の非鉛圧電磁器組成物として、魅力がある。しかしながら、この圧電磁器組成物には、よく調べてみると、以下の課題があることが確認された。
【0007】
すなわち、Sr2−xCaNaNb15系の圧電磁器組成物は、その焼結体の微細組織を観察すると、マイクロクラックが容易に発生するととともに、異常粒成長により微細構造が不均一になる特徴を有していることが判明した。この状態では、既に焼結体内部に欠陥をはらんでいるため、単純な形状での圧電デバイスの素子として利用することも難しく、もとより、電極層と圧電体層を交互に積層した積層圧電アクチュエータに成形して特性をさらに引き出すような素子構造を形成することができない。
【0008】
加えて、Sr2−xCaNaNb15系の圧電磁器組成物の焼結体の微細組織を更に観察すると、単相でなく、Sr0.25Na0.5NbOを代表とする2次相が検知され、容易に複相化することも判明した。
そして、これらの特徴を反映し、Sr2−xCaNaNb15系の圧電磁器組成物の圧電特性は、単結晶で報告されている圧電定数270pC/Nに対して、65pC/N程度に低いことがわかった。
【0009】
本発明は、このような従来の技術がもつ課題にかんがみてなされたものであって、組成物の組成均一性、及び微細組織の均一性を向上して、クラックの発生を抑制し、圧電特性の向上を可能とする、Sr2−xCaNaNb15系の圧電磁器組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、(1)Sr2−xCaNaNb15の基本組成に対して、(Sr、Ca)とNaの比率を変更することにより、タングステンブロンズ型構造のSr、Ca、Naの入り得る格子における、それらの占有率を下げて、よりSrをその格子に入り易くし、2次相の生成を抑制しうることを見いだした。
また、(2)添加物として、Al及び/又はSiの酸化物を所定量添加することで、焼結温度が下がるとともに、微細組織が均一化することを見いだした。
さらに(3)圧電特性を増幅する添加物として、Mnの酸化物を所定量添加することで、分極が容易になることも判明した。
【0011】
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1](Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15(式中、0<x<0.3、0.1<y<0.6である)で表される組成式を有する磁器成分を主成分とし、Al及び/又はSiの酸化物を、Al又はSiO換算で、0〜0.4wt%含有し、かつ、Mnの酸化物を、MnO換算で、0〜5wt%含有することを特徴とする圧電磁器組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2次相の生成が抑制された、タングステンブロンズ型の単相の化合物が得られ、その結果、圧電特性の向上が確認される。また、Al及び/又はSiの酸化物を所定量添加することで、微細組織が均一化し、クラックが抑制され、結果として、圧電特性の向上が確認される。更に、Mnの酸化物を所定量添加することで、分極が容易になり、圧電特性が向上する。そして、これらの結果から、本発明によれば、非鉛圧電デバイスに利用できる圧電磁器組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】Sr2−xCaNaNb15焼結体の微細組織
図2】Sr2−xCaNaNb15焼結体(x=0.1)の組成分布
図3】(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15焼結体(x=0.1、y=0.2)の組成分布
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の圧電磁器組成物は、上述した課題を解決するものであって、(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15(式中、0<x<0.3、0.1<y<0.6である)で表される組成式を有する磁器成分を主成分とすることを特徴とするものである。
すなわち、本発明では、Sr2−xCaNaNb15で表される基本組成に対して、(Sr,Ca)とNaの比率を上記の条件のように変更することにより、2次相の生成が抑制され、タングステンブロンズ型の単相の化合物が得られる。その結果、圧電特性が向上した圧磁器組成物が得られる。なお、上記組成式において、yが0.1以下の場合、及びyが0.6以上の場合には、2次相が生成して、タングステンブロンズ型の単相にならず、混相となり分極することができない。また、yが0.1<y<0.6の範囲であれば、xが0の場合でも、単相になるが、顕著な圧電特性の向上が見られない。さらにyが0.1<y<0.6の範囲にあっても、xが0.3以上では、2次相が生成して、タングステンブロンズ型の単相にならず、分極することができない。
【0015】
また、本発明の圧電磁器組成物に、Al及び/又はSiを含有させることで、微細組織が均一化し、クラックが抑制され、結果として、圧電特性が向上する。しかしながら、含有量が、Al又はSiO換算で、本発明の圧電磁器組成物に対して0.4wt%を超えると、また圧電特性が低下するため、0.4wt%以下とする必要があり、好ましくは0.05〜0.4wt、さらに好ましくは、0.1〜0.4wt%とする。
更に、本発明の圧電磁器組成物に、Mnの酸化物を含有させることで分極が容易になり、圧電特性を向上させることができる。しかしながら、含有量がMnO換算で、本発明の圧電磁器組成物に対して、5wt%を超えると、絶縁抵抗が低下して分極ができなくなるので、5wt%以下とする必要があり、好ましくは0.1〜5wt%、さらに好ましくは、0.2〜2wt%とする。
そして、これらの結果、本発明によれば、非鉛圧電デバイスに利用できる圧電磁器組成物を提供することが可能となる。
【0016】
本発明の(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15(式中、0<x<0.3、0.1<y<0.6である)で表される組成式を有する磁器成分を主成分とする圧電磁器組成は、従来のSr2−xCaNaNb15系の圧電磁器組成物の製造方法と同様、磁器原料の混合工程、合成工程、粉砕工程、成形工程、焼結工程を経て製造される。
【0017】
すなわち、まず、市販のSrCO、CaCO、NaCO及びNbを所定量秤量して、ベース組成とする。
次いで、上記の混合粉末を、例えばアルコール中でボールミルを用いて24時間程度湿式混合を行ったあと、得られたスラリーを乾燥し、その後、大気中で、1050〜1250℃、2〜12時間程度の仮焼成を行い、元素を反応させる。
【0018】
得られた仮焼成物を、再度アルコール中でボールミルを用いて粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥させ、これにPVA等の有機バインダーを加えて造粒する。
また、本発明の圧電磁器組成物に、Al及び/又はSiの酸化物を含有させる場合には、得られた仮焼物に、Al又はSiO換算でベース組成に対して0.4wt%以下となるように秤量して添加し、アルコール中でボールミルを用いて湿式混合し、得られたスラリーを乾燥させ、有機バインダーを加えて乾式造粒する。
同様に、本発明の圧電磁器組成物に、Mnの酸化物を含有させる場合には、得られた仮焼物に、MnO換算でベース組成に対して5wt%以下となるように秤量して添加し、アルコール中でボールミルを用いて湿式混合し、得られたスラリーを乾燥させ、有機バインダーを加えて乾式造粒する。
【0019】
次いで、得られた造粒物をプレス成形して円板状にした後、1150〜1350℃で、焼成を行い、円板状の磁器焼結体とする。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を、実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0021】
(比較例:従来例)
原料化合物として、SrCO、CaCO、NaCO、Nbを、組成式Sr2−xCaNaNb15において、表1に示す組成になるようなxとなるように秤量し、この化合物をエタノールとともにボールミルに入れ、湿式混合し、得られたスラリーを乾燥させ、これを1050〜1250℃、3時間で仮焼した。
この仮焼物をエタノールとともにボールミルに入れ、湿式粉砕し、得られたスラリーを乾燥させ、PVAを加えて乾式造粒した。
この造粒物を1軸プレスで、10mmφ×1mm厚の円板に成形し、これを1200〜1350℃で焼成を行い、円板状の磁器焼結体を得た。
【0022】
これら各磁器焼結体に対して、X線回折装置(XRD)により生成相を同定し、走査型電子顕微鏡(SEM)で微細組織、原子量の差異による組成像(反射電子像)を得るとともに、偏析の有無を評価し、SEMに付随する電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)により、組成分布を評価した。
また、これら各磁器焼結体の両主面にAg電極を塗布および焼付けして電極を形成した後、100〜200℃の絶縁オイル中で2〜7kV/mmで分極させ、d33メータにより圧電特性を測定した。
【0023】
図1は、Sr2−xCaNaNb15磁器組成物(x=0.0、x=0.05、x=0.1、x=0.2)の焼結体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で微細組織を観察した写真である。
該図からわかるように、x=0.0、x=0.05、x=0.1、及びx=0.2のいずれの場合にも、マイクロクラックが発生するとともに、異常粒成長により微細構造が不均一になる特徴を有している。
【0024】
図2は、典型例として、Sr2−xCaNaNb15磁器組成物(x=0.1)の焼結体の組成分布を示すものであって、左側の1つは組成像(反射電子像)で、中央及び右側の4つは、ぞれぞれ、組成像(反射電子像)の領域に対応するEPMAによる主な構成元素のSr、Na、Nb、Oの組成分布である。図2の示すとおり、Sr2−xCaNaNb15磁器組成物は、焼結体の微細構造を観察すると、単相でなく、Sr0.25Na0.5NbOを代表とする2次相が検知され、容易に複相化していることが分かる。
【0025】
以下の表1は、Sr2−xCaNaNb15磁器組成物における、2次相の有無、クラックの有無、及び圧電特性を測定した結果をまとめたものである。
【0026】
【表1】
【0027】
該表から分かるように、Sr2−xCaNaNb15系の圧電磁器組成物の圧電特性は、単結晶で報告されている圧電定数270pC/Nに対して、65pC/N程度に低い。
【0028】
(実施例1)
原料化合物として、SrCO、CaCO、NaCO、Nbを、組成式(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15において、表2に示す組成になるようなxとyとなるように秤量した以外は、比較例1と同様にして、円板状の磁器焼結体を得た。
【0029】
これら各磁器焼結体に対して、X線回折装置(XRD)により生成相を同定し、走査型電子顕微鏡(SEM)で微細組織、原子量の差異による組成像(反射電子像)を得るともに、偏析の有無を評価し、SEMに付随する電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)により、組成分布を評価した。
【0030】
図3は、典型例として(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15(x=0.1、y=0.2)焼結体の組成分布を示すものであって、左側の1つは、組成像(反射電子像)で、中央及び右側の4つは、ぞれぞれ、組成像(反射電子像)の領域に対応するEPMAによる主な構成元素のSr、Na、Nb、Oの組成分布である。
図3から、明らかなように、(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15(x=0.1、y=0.2)焼結体では、2次相が抑制され、単相のタングステンブロンズ相が得られることが分かる。
【0031】
また、これら各磁器焼結体の両主面にAg電極を塗布および焼付けして電極を形成した後、100〜200℃の絶縁オイル中で2〜7kV/mmで分極させ、d33メータにより圧電特性を測定した。
得られた結果を表2にまとめて示す。
なお、本発明において、圧電定数(d33)が70未満のものは、「本発明外」とした。
【0032】
【表2】
【0033】
試料1−1〜1−7(y=0.1)、及び試料1−22〜1−28(y=0.6)では、xにかかわらず、いずれの場合も比較例1と同様な2次相の生成が見られ、圧電特性の向上が確認できなかった。
これに対して、試料1−8〜1−13(x=0〜0.25、y=0.2)、及び試料1−15〜1−20(x=0〜0.25、y=0.5)では、図3のようなタングステンブロンズの単相が得られたが、試料1−14(x=0.3、y=0.2)及び試料1−21(x=0.3、y=0.5)では、タングステンブロンズの単相にならず、混相となり、分極することができなかった。
また、本発明の範囲である、試料1−9〜1−13(x=0.05〜0.25、y=0.2)、及び試料1−16〜1−20(x=0.05〜0.25、y=0.5)では、顕著な圧電特性の向上が見られた。
【0034】
本実施例により、(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15(式中、0<x<0.3、0.1<y<0.6である)で表される組成式を有する圧電体材料では、2次相の生成が抑制された単相が得られ、圧電特性の特性が向上することが明らかにされた。
【0035】
(実施例2)
原料化合物として、SrCO、CaCO、NaCO、Nbを、組成式 Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15において、表3に示すようなxとyとなるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、仮焼し、この仮焼物をエタノールとともにボールミルに入れ、湿式粉砕し、得られたスラリーを乾燥させた。
【0036】
この仮焼物に、Al、SiO、又はAl:SiO=1:1混合物を、表3の添加量になるように秤量し、エタノールとともにボールミルに入れ、湿式混合し、得られたスラリーを乾燥させ、PVAを加えて乾式造粒した。
この造粒物を用い、実施例1と同様にして、円板状の磁器焼結体を得た。
これら各磁器焼結体に対して、実施例1と同様に、評価し、測定した。
評価、及び測定の結果を、下記の表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
この表から分かるように、Alを添加した場合は、試料2−2、2−3でクラックが減少し、試料2−4〜2−6で消失した。
圧電特性も、Alの添加により向上するが、過剰に添加した試料2−6では低下が確認された。
微細組織は、Alにより、粒成長を抑制する効果がみられた。
【0039】
また、SiOを添加した場合は、試料2−7でクラックが減少し、試料2−8〜2−11で消失した。
圧電特性も、SiOの添加により向上するが、過剰に添加した試料2−11では低下が確認された。
微細組織は、AlよりもSiOの添加により、粒成長が抑制され、微細組織が均一化した。
【0040】
AlとSiOを共に添加した場合は、試料2−12でクラックが減少し、試料2−13〜2−16で消失した。
圧電特性は、AlとSiOを個別に添加した場合よりも向上したことから、相乗効果が確認されるとともに、過剰に添加した試料2−16では、低下が確認された。
微細組織は、SiO単体の添加よりも粒成長したが、Al単体の添加よりも粒径が小さく、粒子径が均一であった。
【0041】
上記実施例1の組成でも、同様な評価を行った。その結果、表3と同じ効果を確認した。
これらの本実施例により、(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15(式中、0<x<0.3、0.1<y<0.6である)で表される組成式を有する圧電体材料に、添加物として、Al、Siを少なくとも1種類を、Al又はSiO換算で0.4wt%以下添加することにより、クラックを抑制し、微細組織を改善するとともに、圧電特性が向上することが確認された。
【0042】
(実施例3)
原料化合物として、SrCO、CaCO、NaCO、Nbを、組成式(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15において、表4に示すようなxとyとなるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、仮焼し、この仮焼物をエタノールとともにボールミルに入れ、湿式粉砕し、得られたスラリーを乾燥させた。
この仮焼物に、Al、SiO、又はAl:SiO=1:1混合物を、表3の添加量になるように秤量し、エタノールとともにボールミルに入れ、湿式混合し、得られたスラリーを乾燥させた。
さらにこの混合物に、MnOを、表4の添加量になるように秤量し、エタノールとともにボールミルに入れ、湿式混合し、得られたスラリーを乾燥させ、PVAを加えて乾式造粒した。
【0043】
この造粒物を用い、実施例1と同様にして、円板状の磁器焼結体を得た。
これら各磁器焼結体に対して、実施例1と同様に、評価、測定した結果を、下記の表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
MnOが無添加の試料3−1、3−9、3−17に対して、添加量が0.1〜5wt%の試料3−2〜3−7、3−10〜3−15、3−18〜3−23において圧電特性が顕著に向上した。
さらに過剰に6wt%を添加した試料3−8、3−16、3−24では、絶縁抵抗が低下して分極ができず、圧電特性を評価できなかった。
微細組織は、圧電特性が向上した添加量が0.1〜5wt%の試料3−2〜3−7、3−10〜3−15、3−18〜3−23において、添加量ともに粒成長がみられたが、粒径分布の均一性は保持した。また、クラックも発生しなかった。
【0046】
上記の実施例1、2の組成でも、同様な評価を行った。その結果、表4と同じ効果を確認した。
これらの本実施例により、(Sr2−xCa1+y/4Na1−yNb15(式中、0<x<0.3、0.1<y<0.6である)で表される組成式を有する圧電体材料に、添加物として、Mnを、MnOで換算して、5wt%以下添加することで、さらに圧電特性を向上した圧電材料が得られることが確認できた。
図1
図2
図3