特許第5662736号(P5662736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5662736電磁誘導加熱調理器の加熱コイルユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662736
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】電磁誘導加熱調理器の加熱コイルユニット
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20150115BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   H05B6/12 308
   H05B6/36 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-184614(P2010-184614)
(22)【出願日】2010年8月20日
(65)【公開番号】特開2012-43669(P2012-43669A)
(43)【公開日】2012年3月1日
【審査請求日】2013年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】鷲田 晃暢
(72)【発明者】
【氏名】横田 真郎
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−116681(JP,A)
【文献】 実開平06−064393(JP,U)
【文献】 特開2002−093557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
H05B 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リッツ線を円心円状に巻いて形成される加熱コイルと、前記加熱コイルから発生する電磁誘導ノイズの漏れを制限する複数のフェライトと、前記加熱コイルを保持する絶縁性の樹脂から成り略直方体又は略立方体の形状を有し、その側面部に貫通した埋め込み穴を設けて前記フェライトを挿着する複数の保持台と、略正方形の中心から放射状に複数の平坦な棒状のリブを形成し前記加熱コイルの径によって定まる前記リブの位置に前記保持台を接着する支持台と、を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱調理器の加熱コイルユニット。
【請求項2】
前記支持台は、中心から放射状に4本から10本のリブを形成し、前記各リブの上面にスライド機構を設け、前記スライド機構に前記保持台を載置して前記加熱コイルの径の増減に応じて定まる位置に前記保持台をスライドすること、を特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器の加熱コイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱調理器の加熱コイルユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電磁誘導加熱調理器において、ポット、鍋、フライパン等の各種の調理器具の被加熱面となる底面が略円形を形成しているので、通常、その底面の形状を沿うように略円形の加熱コイルユニットが広く使用されている。
【0003】
従来の加熱コイルユニットの構成を図6図7及び図8を用いて説明する。
図7に示すように、リッツ線5を円心円状に巻いて形成された加熱子コイル1は、図6に絶縁板7の上面に載置され、絶縁板7はフェノール樹脂系で、絶縁性の耐熱樹脂成型品の支持台9上にピン等で位置決めされた複数(例えば、4個)の保持台8によって支持されている。
【0004】
図7及び図8に示す保持台8は、加熱コイルからの下方への磁力線を吸収する略直方体のフェライト4の周囲を囲うように嵌入して位置決めし、加熱コイル1との位置関係を一定に保っている。
【0005】
このように、従来の電磁誘導加熱調理器の加熱コイル1は、調理器具の底面の形状に合致するように略円形の加熱コイル1が形成されることから、この形状に合わせて、加熱コイル1を載置する絶縁板7の形状を決定している。
【0006】
しかし、業務用の調理器として使用する電磁誘導加熱調理器では、一般家庭用のものと比べると出荷台数が少なく、使用する調理器具の底面の形状に応じて、絶縁板7の形状、保持台8の取り付位置の変更を行うと、変更のための工数が大幅に増加するという不具合が生じる。
【0007】
特許文献1に記載された電磁誘導加熱調理器では、上述に示す加熱コイルユニットの構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−157614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
販売台数が少ない業務用の電磁誘導加熱調理器において、加熱するポット、鍋、フライパン等の調理器の底面の寸法に応じた形状の絶縁板、支持台等を使用すると、寸法の異なる絶縁板、支持台等を個別に製作する必要があり製作コストがかかる。特に、加熱コイルと同等以上の面積を必要とする絶縁板(コイルプレート)は高価であり、個々の要求に応じて形状を変更するとコストが大幅に増加する。
さらに、フェライトの周囲を囲うように嵌入して位置決めする支持台では、加熱コイルのコイル径の変化に応じてフェライトを加熱コイルの下側の最適な位置に載置できないので、加熱コイルで発生する電磁誘導ノイズからインバータ部等の電子部品を保護できない。
【0010】
そこで、本発明では、使用する調理器の底面の形状に応じた絶縁板、支持台を作成しても製作コストの増加を抑制できる加熱コイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、リッツ線を円心円状に巻いて形成される加熱コイルと、前記加熱コイルから発生する電磁誘導ノイズの漏れを制限する複数のフェライトと、前記加熱コイルを保持する絶縁性の樹脂から成り略直方体又は略立方体の形状を有し、その側面部に貫通した埋め込み穴を設けて前記フェライトを挿着する複数の保持台と、略正方形の中心から放射状に複数の平坦な棒状のリブを形成し前記加熱コイルの径によって定まる前記リブの位置に前記保持台を接着する支持台と、を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱調理器の加熱コイルユニットである。
【0012】
請求項2の発明は、前記支持台は、中心から放射状に4本から10本のリブを形成し、前記各リブの上面にスライド機構を設け、前記スライド機構に前記保持台を載置して前記加熱コイルの径の増減に応じて定まる位置に前記保持台をスライドすること、を特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器の加熱コイルユニットである。


















【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によれば、加熱コイルを支持する絶縁板を使用せず、フェライトを内蔵した複数の保持台で加熱コイルを支持するので、調理器の底面の寸法に応じた形状の絶縁板、支持台等を製作する必要がなくなる。さらに、加熱コイルと同等以上の面積を必要とする絶縁板(コイルプレート)を使用しないので、コストが大幅に減少する。
【0014】
本発明の請求項2は、請求項1の効果に加えて、加熱コイルのコイル径に応じてフェライトを加熱コイルの下側の最適な位置に載置できるので、加熱コイルより発生する電磁誘導ノイズからインバータ部等の電子部品を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る電磁誘導加熱調理器の加熱コイルユニットの断面 図である。
図2図1に示す加熱コイルユニットの平面図である。
図3図1に示す保持台の詳細図である。
図4図1に示す支持台の詳細図である。
図5】実施形態2に係る加熱コイルユニットの平面図である。
図6】従来技術の加熱コイルユニットの断面図である。
図7図6に示す加熱コイルユニットの平面図である。
図8】従来技術の支持台の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「実施の形態1」
図1は本発明の実施の形態1における電磁誘導加熱調理器の加熱コイルユニットの断面であり、図2は平面図である。
【0017】
図1に示す加熱コイルユニットは、非磁性金属製(例えば、アルミニウム板)からなる支持台2を具備し、この支持台2は、図4に示す平面図視で略正方形に形成されており、その中心から放射状に複数箇所(例えば、8箇所)にわたって平坦な棒状のリブ10が形成されると共に、各リブ10の間は軽量化および材料節約のために、略扇状の切欠穴11が形成されている。
【0018】
図3に示す保持台3は、絶縁性のフェノール樹脂系から成り略直方体又は略立方体の形状を有し、その側面部に貫通した埋め込み穴6を設けて平坦な棒状のフェライト4を埋め込み穴6に挿着し、シリコン系の接着剤で固定する。また、1個の保持台3に1個のフェライト4を挿着しているが、インバータ回路とのマッチングのためにインダクタンスを大きくしたいとき、1個の保持台7に複数個のフェライト4を挿着できるようにしてもよい。
【0019】
図2に示すリブ10(例えば 8箇所)に、電磁誘導ノイズの外部漏れを制限するために平坦な棒状のフェライト4を挿着した保持台3を、加熱コイル1の径によって定まる各リブ10の位置に保持台3を接着する。そして、8個の保持台3の上面にリッツ線を円心円状に巻いて形成される加熱コイル1を載置する。この場合の加熱コイル1としては、高周波域での表皮効果を低減させるリッツ線が適用される。さらに、図示省略しているが、保持台3と加熱コイル1の間などには、加熱コイル1が位置ずれするのを防止するために接着固定用のシリコン樹脂が塗布される。
【0020】
コイル径が小さい加熱コイル1を保持台3に搭載する場合、
加熱コイル1の巻き付け回数が少なくなるが、このときコイル径の減少に応じて図2に示すリブ10の上面に設けられた保持台3を支持台2の中心方向に移動させることで、加熱コイル1で発生する電磁誘導ノイズの外部漏れを制限できる最適な位置に保持台3をリブ10に設置できる。
【0021】
逆に、コイル径が大きい加熱コイル1を保持台3に搭載する場合、
加熱コイル1の巻き付け回数が多くなるので、このときコイル径の増大に応じて図2に示すリブ10の上面に設けられた保持台3を支持台2の外側方向に移動させることで、加熱コイル1で発生する電磁誘導ノイズの外部漏れを制限できる最適な位置に保持台3をリブ10に設置できる。
【0022】
このとき、支持台2の各リブの上面にスライド機構を設け、このスライド機構に保持台3を載置し、コイル径の増減に応じて定まる位置に保持台3をスライドしてもよい。そして、加熱コイル1の位置ずれが生じないように、その表面にシリコン樹脂等を塗布し8個の保持台3の上面に接着する。
【0023】
上述より、加熱コイル1を支持する絶縁板を使用せずに複数の保持台3のみで加熱コイル1を保持するので、調理器の底面の寸法に応じた絶縁板、支持台等を個別に製作する必要がなくなる。さらに、加熱コイルと同等以上の面積を必要とする高価な絶縁板を使用しなくて済み、コストが大幅に減少する。
【0024】
そして、保持台3はフェライト4を内蔵しているので、支持台2のリブ10の最適な位置に保持台3を載置して加熱コイル1を保持することで、加熱コイル1から発生する電磁誘導ノイズからインバータ部等の電子部品を保護できる。
【0025】
さらに、支持台2は、中心から放射状に4本から10本の平坦な棒状のリブを形成し、加熱コイルの径に応じてリブの本数を決定してもよい。
【0026】
「実施の形態2」
図5は、本発明の実施の形態2における加熱コイルユニットを構成する平面図であり、図1ないし図4と同一符号は同一機能を有するので説明は省略し、相違する符号についてのみ説明する。
【0027】
図5に示すリブ10(例えば 8箇所)に、磁束の外部漏れを制限するために平坦な棒状のフェライト4を挿着した保持台3をリブ10の上面に接着等によって所定の位置に固定する。そして、8個の保持台3の上面にリッツ線を円心円状に巻いて形成される加熱コイル1を載置する。この場合の加熱コイル1としては、高周波域での表皮効果を低減させるリッツ線が適用される。さらに、図示していないが、保持台3と加熱コイル1の間などには、加熱コイル1が位置ずれを防止するために接着固定用のシリコン樹脂が塗布される。
【0028】
コイル径が楕円状を形成する加熱コイル1を保持台3に搭載する場合、
図5に示す、加熱コイル1の長辺側では、保持台3を支持台2の外側方向の最適な位置に移動させ、加熱コイル1の短辺側では、保持台3を支持台2の中心方向の最適な位置に移動させることで、加熱コイル1からて発生する磁束ノイズの外部漏れを制限する最適な位置に保持台3をリブ10に載置できる。
【0029】
そして、加熱コイル1の位置ずれが生じないように、その表面にシリコン樹脂等を塗布し保持台3に接着する。
【0030】
上述より、楕円形に巻装された形状の異なる加熱コイル1でも、複数の保持台のみで加熱コイルを保持できるので、加熱コイルと同等以上の面積を必要とする高価な絶縁板を使用しなくて済み、コストが大幅に減少する。
【0031】
また、本発明は、図1ないし図5に示した構成のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において各種の変形を加えることができる。例えば、実施の形態1、2では保持台3を平面視で略正方形としたが、このような形状に限らず、例えば、六角形、八角形又は十角形のように多角形にしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 加熱コイル
2 支持台
3 保持台
4 フェライト
5 リッツ線
6 埋め込み穴
7 絶縁板
8 保持台
9 支持台
10 リブ
11 切欠穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8