(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各々の鎖が23以下の塩基長を有し、標的遺伝子の転写産物であるmRNAの分解を仲介するか翻訳を阻害するのに有効な配列を有する二重鎖のRNA分子であって、前記標的遺伝子がクラステリンをコードする遺伝子であり、該二重鎖RNA分子の各々の鎖がRNA部分とDNA部分を含み、該RNA部分はそれぞれ、
配列番号1のヌクレオチド1〜19及び配列番号2のヌクレオチド1〜19
からなる相補配列を含む、
上記RNA分子。
各々の鎖が23以下の塩基長を有し、標的遺伝子の転写産物であるmRNAの分解を仲介するか翻訳を阻害するのに有効な配列を有する二重鎖のRNA分子であって、前記標的遺伝子が、クラステリンをコードする遺伝子であり、前記二重鎖RNA分子の鎖がそれぞれ、
配列番号1及び配列番号2、
からなる配列を含む、
上記RNA分子。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】siRNA仲介クラステリン遺伝子発現サイレンシング後にSa OS細胞、KH OS細胞及びU−2 OS細胞の細胞数の計測により見積った相対増殖率を示す図である。5×10
3細胞/細胞系を6穴プレートに播き、siRNAで70時間処理後、全細胞数を計測した。細胞数の有意な減少が、U−2 OS細胞でより顕著であり、全てのクラステリンノックダウン細胞で認められた。
【
図1B】細胞増殖ELISA BrdU呈色性免疫測定法により見積った、クラステリンノックダウンKH OS細胞及びU−2 OS細胞における内生的なDNA合成レベルを示す図である。クラステリンノックダウンでは、両細胞系においてDNA合成の減少が付随して起こった。
【
図1C】細胞死検出ELISA測光酵素免疫測定法により見積った、クラステリンノックダウンKH OS細胞及びU−2 OS細胞における自発アポトーシスを示す図である。クラステリンノックダウンでは、両細胞系において内生的自発アポトーシスの速度の増加が付随して起こった。
【
図2A】クラステリンノックダウンOS細胞のクローン原性潜在性の減少を示す図である。siRNAで70時間処理後、5×10
3のKH OS細胞を6穴プレートに播き、完全培地で5日間増殖させた後に全細胞数を計測した。
【
図2B】クラステリンノックダウンOS細胞のクローン原性潜在性の減少を示す図である。
図2Bは、U−2 OS細胞を用いた比較試験の結果を示す。
【
図3A】siRNA仲介性クラステリンノックダウン後のOS細胞におけるDXR処理の影響を示す図である。黒色の棒線は、2×10
4個のKH OS細胞を完全培地の入った6穴プレートに播き、siRNAで70時間処理後、回復させた結果である。その後、細胞を0.35MのDXRに24時間さらし、完全培地中で72時間二次培養し、計数した。淡色の棒線は、2×10
4個のKH OS細胞を完全培地の入った6穴プレートに播き、siRNAで70時間処理し、DXRを終濃度0.35ΦMになるようにトランスフェクション培地に直接添加した結果である。細胞を薬剤含有トランスフェクション培地中で24時間培養後、洗浄し、72時間完全培地中で回復させ、計数した。
【
図3B】siRNA仲介性クラステリンノックダウン後のOS細胞におけるDXR処理の影響を示す図である。黒色の棒線は、2×10
4個のU−2 OS細胞を完全培地の入った6穴プレートに播き、siRNAで70時間処理後、回復させた結果である。その後、細胞を0.35MのDXRに24時間さらし、完全培地中で72時間二次培養し、計数した。淡色の棒線は、2×10
4個のU−2 OS細胞を完全培地の入った6穴プレートに播き、siRNAで70時間処理し、DXRを終濃度0.35ΦMになるようにトランスフェクション培地に直接添加した結果である。細胞を薬剤含有トランスフェクション培地中で24時間培養後、洗浄し、72時間完全培地中で回復させ、計数した。
【
図3C】siRNA仲介性クラステリンノックダウン後のDNA損傷に対する細胞の増感性を示す図である。
【
図3D】siRNA仲介性クラステリンノックダウン後のDNA損傷に対する細胞の増感性を示す図である。
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図3E】siRNA仲介性クラステリンノックダウン後の酸化的ストレスに対するOS細胞及び細胞の増感性を示す図である。
【
図3F】siRNA仲介性クラステリンノックダウン後の酸化的ストレスに対するOS細胞及び細胞の増感性を示す図である。
【
図4】PC3腫瘍細胞におけるsiRNAによる配列特異的なクラステリン遺伝子サイレンシングの定量分析を示す図である。
【
図5】クラステリンノックダウンPC3細胞の増殖及びアポトーシスにおけるパクリタキセル処理の影響を示す図である。細胞に50nMのCl−III、Cl−IV又はスクランブルコントロールのsiRNAで1日間処理した。siRNAで処理後2日間、細胞を所定濃度のパラクリタキセルに48時間さらし、細胞生存率をin vitro MTT分析により測定した。
【
図6】PC3前立腺癌細胞をCLU−5のsiRNA(配列番号9及び10)にさらした場合の定量結果を示す図である。
【
図7】A549肺癌細胞をCLU−5のsiRNA(配列番号9及び10)にさらした場合の定量結果を示す図である。
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図8】クラステリンを標的とするsiRNAでPC3細胞を処理した結果としての、RT−PCRにより決定されるクラステリン転写産物の減少を示す図である。
【
図9】クラステリンを標的とするsiRNAでA549細胞を処理した結果としての、RT−PCRにより決定されるクラステリン転写産物の減少を示す図である。
【
図10】クラステリンを標的とするsiRNAでPC3細胞を処理した結果としての、ノザンブロットにより決定されるクラステリン転写産物の減少を示す図である。
【
図11】siRNAとタキソールを組み合わせてPC3細胞を処理した後の細胞生存率を示す図である。
【
図12】siRNAとタキソールを組み合わせてA549細胞を処理した後の細胞生存率を示す図である。
【
図13】クラステリンを標的とするsiRNAでOVCAR3細胞を処理した結果としての、ノザンブロットにより測定した場合の、クラステリン転写産物の減少を示す図である。
【
図14】クラステリンを標的とするsiRNAでMDA−MB231細胞を処理した結果としての、ノザンブロットにより測定した場合の、クラステリン転写産物の減少を示す図である。
【
図15】クラステリンを標的とするsiRNAでMDA−MB231細胞を処理した結果としての、RT−PCRにより測定した場合の、クラステリン転写産物の減少を示す図である。
【
図16】クラステリンを標的とするsiRNAでMCF−7細胞を処理した結果としての、ノザンブロットにより測定した場合の、クラステリン転写産物の減少を示す図である。
【
図17】クラステリンを標的とするsiRNAでMCF−7細胞を処理した結果としての、RT−PCRにより測定した場合の、クラステリン転写産物の減少を示す図である。
【
図18】スクランブルコントロールと比較した、siRNAで処理したMCF−7細胞におけるクラステリンタンパク質量の減少を示す図である。
【
図19】IGFBP−2及びIGFBP−5を標的とする二重特異性siRNAでA549細胞を処理した結果としての、RT−PCRにより測定した場合の、IGFBP−2転写産物の減少を示す図である。
【
図20】IGFBP−2及びIGFBP−5を標的とする二重特異性siRNAでPC3細胞を処理した結果としての、RT−PCRにより測定した場合の、IGFBP−5転写産物の減少を示す図である。
【
図21】PC3細胞におけるIGFBP−5のmRNAの減少を示す図である。
【
図22】初代ヒト骨線維芽細胞におけるIGFBP−5転写の阻害を示す図である。
【
図23】IGFBP−2/IGFBP−5に対する二重特異性siRNAによるC42細胞の増殖阻害を示す図である。
【
図24】IGFBP−2/IGFBP−5に対する二重特異性siRNAによるA549細胞の増殖阻害を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による第1のRNA分子群は、テストステロン抑制性前立腺メッセージ−2(TRPM−2)又は硫酸化糖タンパク質−2(SGP−2)としても知られるタンパク質であるクラステリンをコードするmRNAを対象とする。クラステリンは、アンドロゲン離脱後に、前立腺腫瘍細胞により多量に発現される。さらに、クラステリンの発現を低下させるアンチセンス療法が癌治療に治療上の利益をもたらすことが判明した。とりわけ、そうしたアンチセンス療法は前立腺癌及び腎細胞癌の治療に適用することができる(参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開WO00/49937)。治療薬クラステリンの投与によってもまた、化学療法薬及び放射線治療に対する癌細胞の感受性をin vitro及びin vivoにおいて増大させることができる。クラステリンの発現の干渉に使用可能な具体的なRNA分子の配列を表1及び表7に示す。(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第09/967,726号を参照。)前立腺癌、骨肉腫などの肉腫、腎細胞癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、結腸癌、卵巣癌、未分化大細胞リンパ腫及びメラノーマの治療において、これらの配列は、単独で、或いは他の化学療法薬又はアポトーシス誘導治療コンセプトと組み合わせて使用することができる。さらに、クラステリンはアミロイド斑形成を促進し、アルツハイマー病についてのマウスモデルにおける神経炎性毒性に極めて重要であることが知られている(参照により本明細書に組み込まれる、デマトス(De Mattos)らによる、Proc.Nat’l Acad.Sci.(USA)99、10843〜10848頁(2002))。従って、本発明の配列をアルツハイマー病の治療にも用いることができる。
【0013】
表7に示されるRNAi種の使用に関する具体的な結果を図に示す。これらの結果は、骨肉腫細胞の増殖を低下させ、骨肉腫細胞のアポトーシスを促進するRNAi仲介プロセスによるクラステリン抑制の有効性を明らかにし、これにより本発明によって治療することができる別のタイプの症状も明らかにしている。これらの結果は、クラステリンレベルを下げるRNAi処理が、p53のレベルの増加、bcl−2のレベルの減少をもたらすことも明らかにしている。従って、本発明によれば、腫瘍サプレッサを全体的又は部分的に不活性にする変異ではなく、調節により活性p53レベル又はbcl−2レベルが影響を受ける症状は、クラステリンの存在量を減少させるのに効果的な量のクラステリンRNAiを投与し、これにより好ましくないクラステリンの関連するp53レベル及びbcl−2レベルを変調することにより克服される。
【0014】
本発明による第2のRNA分子群は、インスリン様成長因子結合タンパク質−5(IGFBP−5)をコードするmRNAを対象とする。IGFBP−5発現の阻害は、ホルモン調節性(前立腺又は乳)の腫瘍細胞がホルモン(例えばアンドロゲン又はエストロゲン)非依存的になるまで進行するのを遅らせ、乳癌又は前立腺癌などのホルモン調節性の癌に罹患しているヒトなどの個体を治療するための治療法をもたらし、前立腺腫瘍、乳腫瘍及び骨における他のIGF−1感受性腫瘍の増殖及び転移進行を阻害又は遅延させることが可能であることが示された(参照により本明細書に組み込まれる、公開PCT出願第WO01/05435号)。表2に記載される配列を有するsiRNA分子を使用する本発明によるRNAi治療法を用いれば、これらの同じ結果が得られる。これらの配列は単独でも、或いは他の化学療法薬又はアポトーシス誘導治療コンセプトと組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明による第3のRNA分子群は、インスリン様成長因子結合タンパク質−2(IGFBP−2)をコードするmRNAを対象とする。IGFBP−2発現の阻害は、前立腺腫瘍細胞がアンドロゲン非依存的になるまで進行するのを遅らせ、前立腺癌又は乳癌などのホルモン調節性の癌に罹患している、ヒトなどの哺乳類個体に対する治療上の利益をもたらすことが示された。さらに、本発明の組成物は、このような癌の増殖及び転移進行を阻害又は遅らせるのに使用することができる(参照により本明細書に組み込まれる、公開PCT出願第WO02/22642号)。表3に記載される配列を有するsiRNA分子を使用する本発明によるRNAi治療法を用いれば、同じ結果が得られる。これらの配列は単独で、或いは他の化学療法薬又はアポトーシス誘導治療コンセプトと組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明による第4のRNA分子群は、インスリン様成長因子−2及び5を同時にコードするmRNA(IGF−Bis)を対象とする。IGFBP−2及びIGFBP−5の両者の発現の阻害は、ホルモン調節性(前立腺又は乳)の腫瘍細胞がホルモン(例えばアンドロゲン又はエストロゲン)非依存的になるまで進行するのを遅らせ、乳癌又は前立腺癌などのホルモン調節性の癌に罹患しているヒトなどの個体を治療するための治療法をもたらし、場合によってはこれらの因子のどちらかの阻害よりもさらに効果的に、前立腺腫瘍、乳腫瘍及び骨における他のIGF−1感受性腫瘍の増殖及び転移進行を阻害又は遅延させることが可能であることが示された(参照により本明細書に組み込まれる、公開PCT出願第WO01/05435号、公開PCT出願第WO02/22642号、及び2002年1月17日に出願された米国仮出願第60/350,046号)。表4に記載される配列を有するsiRNA分子を使用する本発明によるRNAi治療法を用いれば、これらの同じ結果が得られる。これらの配列は、単独で、或いは他の化学療法薬又はアポトーシス誘導治療コンセプトと組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明による第5のRNA又はDNAアンチセンス分子群は、小眼球症関連転写因子(Mitf)群をコードするmRNAを対象とする。Bcl−2は、メラノーマ及び他の細胞において、メラノーマ細胞生存率、細胞系生存性、及びアポトーシス感受性を調節することが報告されたマスター調節因子Mitfにより調節を受ける(参照により本明細書に組み込まれる、Cell 109、707〜718頁、マッギル(McGill)ら(2002))。Mitf及びMitfにより調節されるBcl−2は、様々なヒト腫瘍により増殖中に発現される。Mitfの発現を抑えるRNAi又はアンチセンス療法は、癌治療において治療上の利益をもたらす可能性がある。本発明によれば、Mitfは、化学療法薬及び放射線治療に対する癌細胞の感受性をin vitro及びin vivoの両方で強めることもできる。Mitfの発現の干渉に使用可能な具体的なアンチセンス又はRNA分子の配列を表5に示す。これらの配列は、メラノーマ、前立腺癌、腎細胞癌、膀胱癌、肺癌、骨癌及びその他の腫瘍の治療において、単独で、或いは他の化学療法薬又はアポトーシス誘導治療コンセプトと組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明による第6のRNA又はDNAアンチセンス分子群は、B−rafをコードするmRNAを対象とする。B−rafは細胞シグナル伝達の中心的存在であり、悪性メラノーマの66%及び多種多様なのヒト癌において比較的低頻度で、体細胞のミスセンス変異により活性化される(参照により本明細書に組み込まれる、Nature 417、949〜954頁、デイビス(Davies)ら(2002))。活性化及び/又は不活性化B−rafの発現を抑えるRNAi又はアンチセンス治療法は、癌治療において治療上の利益をもたらす可能性がある。本発明によれば、B−rafの発現抑制は、化学療法薬及び放射線治療に対する癌細胞の感受性をin vitro及びin vivoの両方で強めることも可能である。B−rafの発現の干渉に使用可能な具体的なアンチセンス又はRNA分子の配列を表6に記載する。これらの配列は、メラノーマ、前立腺癌、腎細胞癌、膀胱癌、肺癌、骨癌及びその他の腫瘍の治療において、単独で、或いは他の化学療法薬又はアポトーシス誘導治療コンセプトと組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明のsiRNA分子は、治療上の利益が標的タンパク質の発現阻害により得られるタイプの癌又はその他の疾患を有するヒト患者を含む患者を治療するための治療に使用される。本発明のsiRNA分子は、1日1回又は複数回の注射(静脈内、皮下又は髄腔内)、或いは1又は複数の治療サイクルにわたる連続的な静脈内又は髄腔内投与により患者に投与されて、標的となるmRNA及びタンパク質の調節に適する血漿濃度及び組織濃度に達する。
【実施例1】
【0025】
siRNA二本鎖を用いたLNCaP細胞及びPC3細胞のトランスフェクションのプロトコール
1)細胞の調製
抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)を含まない5%のFBSを含む適当な培地中のLNCaP細胞0.5×10
6個を(PC3細胞では、ウェル当たり0.3×10
6個の密度で)6穴プレートの各ウェルに播く。
40〜50%コンフルエントになるまで、細胞を37ECの加湿下5%CO
2インキュベータ内でインキュベートする。
2)siRNAの調製
以下のsiRNA希釈液を微量遠心チューブに調製する。各ウェル当たり、0.01〜100nM。
3)以下のトランスフェクション試薬希釈液を微量遠心チューブに調製する。
6穴プレートの各ウェルについて、OligoFECTAMINE(商標)試薬4mlをOPTI−MEM(商標)11mlで希釈し、室温で10分間インキュベートする。
4)希釈したOligoFECTAMINE(商標)を、希釈したsiRNA二本鎖希釈液と合わせて、反転により穏やかに混合する。
5)室温で20分インキュベートする。
6)ウェルから培地を取り除き、Opti−MEM(商標)800mlと交換する。
7)細胞にトランスフェクション複合体200mlを上層する。
8)37℃のCO
2インキュベータ内で4時間インキュベートする。
9)15%FBSを含む培地500mlを添加する。
10)24時間後にリアルタイムPCRにより遺伝子発現をチェックするか、又は
11)1、6、12、24、48、72及び96時間後にウエスタンブロットによりタンパク質発現をチェックする。
【実施例2】
【0026】
ヒトクラステリンcDNAは、siRNAに必要な基準を満たすAA(N
19)UU(Nは任意のヌクレオチド)型の配列を同定するために、手作業でスキャンした(J Cell Sci 114、4557〜4560頁、ハーブルス(Harbourth)ら(2001))。対称的な2−nt3’突出部(オーバハング)を有するこの2つの配列は、CLU遺伝子転写開始コドンの433(Cl−I)nt及び644(Cl−II)nt下流に存在した。使用した2つの追加のオリゴヌクレオチドは、CLU遺伝子転写開始コドンの1620nt下流の領域(Cl−III)及びヒト転写開始部位(Cl−V)を標的とした(表を参照)。BLAST分析により、他の既知のヒト遺伝子と相同性が無いことが示された。選択したRNAオリゴは、ダーマコンリサーチ社(Dharmacon Research,Inc.)(ラファイエット、米国コロラド州)で合成されたものとし、リボヌクレアーゼを含まないddH
2Oで最終濃度20Mに希釈し、−20℃で保存した。使用したScramble−I(商標)(Sc−I)(D−1200−20)及びScramble−II(商標)(Sc−II)(D−1205−20)オリゴヌクレオチドは、ダーマコンリサーチ社(Dharmacon Research,Inc.)から購入した。
【0027】
指数増殖中のOS細胞におけるCl−I、Cl−II及びスクランブルRNA二本鎖のsiRNAトランスフェクションは、記載の通りに行った(Genes Dev.13、3191〜3197頁、ハーブルス(Harbourth)ら、タシュル(Tuschl)ら(1999))。簡単に述べると、siRNAトランスフェクションの前日に500:1完全培地を含む24穴プレートに細胞を播き、トランスフェクションの間、約40〜50%までコンフルエントにした。トランスフェクション混合には、ウェル当たり100nMのsiRNA二本鎖を用いた。RNA二本鎖を、Opti−MEM(登録商標)I(ギブコライフテクノロジー社(Gibco Life Technologies,Inc.)、サンディエゴ、米国カリフォルニア州)無血清培地で希釈し、Oligofectamine(商標)試薬(インビトロジェンライフテクノロジー社(Invitrogen Life technologies Inc.)、サンディエゴ、米国カリフォルニア州))を使用することによりトランスフェクション効率を高めた。細胞をCl−i及びCl−IIオリゴヌクレオチドの両方で処理する場合、各siRNA二本鎖を100nMで用いた。siRNAオリゴヌクレオチドを用いた細胞処理は2〜3日間続けた。
【0028】
別法として、PC3細胞では、リポフェクチン(Lipofectin)(商標)(インビトロジェンライフテクノロジー社(Invitrogen Life technologies Inc.)、サンディエゴ、米国カリフォルニア州))を使用して、Cl−III及びCl−Vオリゴヌクレオチドによるトランスフェクションを高めた。無血清OptiMEM(登録商標)I中のOligofectamine(商標)試薬4g/mlによるプレインキュベーションの後、PC細胞を、10、50、又は100nMのRNA二本鎖で20分間処理した。インキュベーション開始の4時間後、RNA二本鎖及びリポフェクチンを含む培地を、標準的な組織培養用培地と交換した。細胞を、1日目に一度処理し、3日目の処理後48時間で集菌した。全ての場合において、用いたコントロールは、(a)Sc−I及びSc−IIのRNA二本鎖の使用、並びに(b)核酸不在下でのmockトランスフェクション(Con−I)を含むものとした。CLU遺伝子サイレンシングは、RNAブロット分析、イムノブロッティング分析、又は共焦点免疫蛍光法(confocal immunofluorescence)によりアッセイされた。
【0029】
OS細胞におけるCLU遺伝子発現の効果的なサイレンシングはsiRNAを使用して実現される。Cl−I又はCl−IIのsiRNAオリゴヌクレオチドによる3種のOS細胞系の処理は非常に有効であると思われ、細胞CLUタンパク質レベルを有意に減少(ノックダウン)させた。興味深いことに、Cl−Iオリゴヌクレオチドは、CLU遺伝子のサイレンシングにおいて、Cl−IIよりもわずかに有効性が高いようであった。コントロールのSc−I又はSc−IIオリゴヌクレオチドが存在する場合、或いはトランスフェクション培地にRNA二本鎖が存在しない場合、CLU遺伝子のサイレンシングは全く認められなかった。
【0030】
次に、細胞をDXRにさらした後も、CLU特異的siRNAオリゴヌクレオチドが、CLUタンパク質の蓄積を阻害することができるか否かという課題に取り組んだ。Cl−Iオリゴヌクレオチド、Cl−IIオリゴヌクレオチド又はCl−IとCl−IIの両方のオリゴヌクレオチド混合物の存在下でKH OS細胞及びU−2 OS細胞をDXRに24時間さらすと、CLUタンパク質の蓄積は効果的に阻害された。従って、Cl−I又はCl−IIオリゴヌクレオチドの存在下で、細胞をアポトーシス誘導剤にさらした後に、細胞性CLUタンパク質を誘導することができないことは明白である。
【実施例3】
【0031】
siRNAによるCLU遺伝子発現サイレンシングの後のOS細胞における表現型の影響。OS細胞におけるCLU遺伝子発現サイレンシングの影響は、siRNA処理後に細胞を直接計数すること、細胞形態及び表現型を記録すること、並びにクローン原性アッセイにより調べた。KH OS細胞及びSa OS細胞におけるCLUノックダウンは、目視できる表現型を全く示さなかった。しかし、CLUノックダウン細胞は、それらのコントロール細胞に比べて有意な増殖阻害を受けることが認められた(
図1A)。これに対して、高い内生量のCLUタンパク質を発現するU−2 OS細胞では、CLUノックダウンの影響が非常に顕著であると思われた。特に、CLUのsiRNAで(3日間)処理したU−2 OS細胞は、プラスチックに対する強い付着性を失い、円形の形状となった。この表現型に、深刻な増殖阻害の影響が起こっていた。Cl−I及びCl−IIの両方のRNA二本鎖の組み合わせが細胞増殖を阻害するのにさらに効果的であるか否かを調べるために、細胞をこれら両方のオリゴヌクレオチドで処理した。KH OS細胞及びU−2 OS細胞では、Cl−Iで処理した細胞に比べて、増殖遅延のわずかな増進しか観察されなかった。最後に、CLUタンパク質除去による細胞増殖抑制作用と細胞障害作用とを区別するために、CLUノックダウンKH OS細胞及びU−2 OS細胞を、DNA合成及び内生的な自発アポトーシスに関して直接アッセイした。CLUノックダウン細胞は、姉妹コントロール細胞と比較して、DNA合成速度の低下(
図1A)、及び高レベルの内生的自発アポトーシス(
図1B)を示した。U−2 OS細胞でもまた、作用はより顕著であった。つまり、この結果から、CLUノックダウン細胞数の減少が、自発アポトーシスのレベルの増加だけではなく、細胞増殖率の低下によるものであることが示唆される。
【0032】
7回を超える細胞の倍加の間、遺伝子サイレンシングが維持される(ハーブルス(Harbourth)ら)ことが最近の研究により実証されたため、siRNA後のコロニー形成率及び増殖におけるCLUノックダウンの影響もまた、クローン原性アッセイによって調べた。ストレスの間の内生CLU量及びCLU蓄積の程度に関して、2つの極端に対照的な場合を表すという理由から、KH OS細胞及びU−2 OS細胞をこの分析用に選択した。CLUノックダウンKH OS細胞は、平板培養すると、プラスチックに強く付着し(90%を超える播種細胞が付着した)、その付着細胞のわずかしか形態学的異常を示さなかった。しかし、全コロニー数及び形成コロニーのサイズを測定後、5日間培養して認められるように、付着細胞の増殖性は弱められていた(
図2A)。CLUノックダウンU−2 OS細胞は、トリプシン処理後にプラスチックにあまり付着せず(播種細胞の約70%しか付着しなかった)、付着細胞のほとんどが形状にかなりの異常を示した。細胞は極めて低い増殖性を示し(
図2B)、培養9日後には数個の小さなコロニーしか認められなかった。
【実施例4】
【0033】
OS細胞におけるsiRNAによるCLU遺伝子発現のサイレンシングの維持により、遺伝毒性及び酸化的ストレスにより誘導されるアポトーシスに対する顕著な増感が起こる。薬物に関連して報告された影響が細胞型によって異なるため(Biochem.Pharmacol.57、727〜741頁、ゲウリッツ(Gewritz)ら(1999))、CLUの機能分析の前に、OS細胞におけるDXRの影響を分析した。処置した患者のDXR血漿濃度は1〜2Mの範囲内であり、1時間以内に0.025〜0.25Mの範囲に低下するので(Cancer Chemother.Pharmacol.,32、379〜384頁、ミュラー(Muller)ら(1993))、細胞を0.35M及び1MのDXRで処理した。DXR仲介性の細胞死の程度を分析するために、TUNELによりアポトーシスを等級付けした。薬物で24時間処理した後の付着細胞は、未処理のコントロール細胞に比べて有意な形態学的変化を受けた。この時、細胞は老化様の表現型を暗示する増大した扁平な形態を示し、その一方で、それらのかなり多数がTUNEL陽性である。進行中のアポトーシスは、24時間後でも認められ、アポトーシスが、培地からDXRを除去した後でも続く動態過程であることが証明される。TUNELにより得られる結果と一致して、DXR処理には、PARP開裂が付随し、薬物処理KH OS細胞及びU−2 OS細胞において抗アポトーシスタンパク質のbcl−2は発現に全く変化を示さなかった。DXR処理後、p53タンパク質の蓄積、並びに増殖停止(p21)又はアポトーシス(bax)に関連するその下流のエフェクターはU−2 OS細胞にしか認められず、OS細胞系においてDXRにより仲介される細胞増殖抑制作用及び細胞障害作用がp53依存性メカニズムとp53非依存性メカニズムの両方に依存していることが示された。
【0034】
次に、DXRにさらされたOS細胞のCLUノックダウンの影響を調べるために、2つの補足的な研究を行った(
図3A及び
図3B)。siRNAで処理した細胞を、完全培地で再播種し、次に0.35MのDXRに24時間さらすか、又はCl−II又はCl−Iオリゴヌクレオチドの存在下で0.35MのDXRにさらした。両方の場合において、生細胞をDXR処理3日後に計数した。CLUノックダウンKH OS細胞がコントロール細胞よりもDXRに対して高い感受性を示すと思われるが(
図3Aの黒色の棒線)、DXR処理は、培地中のCLU特異的siRNAオリゴヌクレオチドの存在との組み合わせた場合、さらに顕著に影響を示すと思われた(
図3Aの淡色の棒線)。同様にCLUノックダウンSa OS細胞は、DXR処理に対してさらに高い感受性を示した。U−2 OS細胞では、両者の戦略が非常に効果的であると思われ、CLUノックダウン細胞が、コントロールに比べて、さらに顕著にこの薬物に対する感受性を示した(
図3B)。CLU特異的siRNAオリゴヌクレオチドの存在下でDXR処理を行った場合、CLUノックダウン細胞はより顕著にこの薬物に対して感受性を示すようであり(
図3Bの淡色の棒線)、大量のアポトーシスが観察された。最後に、U−2 OS細胞をCl−I及びCl−IIの両方のオリゴヌクレオチドで処理すると、細胞はほぼ壊滅した。
【0035】
CLUノックダウン後の細胞増感のメカニズムを理解するため、遺伝毒性誘導剤(DXR)又は酸化的ストレス誘導性(H
2O
2)に細胞をさらした直後のアポトーシス誘導の程度を直接アッセイした。
図3C〜
図3Fに示す。CLUノックダウン細胞をDXR又はH
2O
2のいずれかにさらすことにより、KH OS細胞及びU−2 OS細胞の両方において顕著に高い割合のアポトーシスが起こった。この知見から、CLUが細胞保護シグナルを出すことによりアポトーシスに関わる細胞の機構に直接的に影響を与えるか、又は相互作用することが示唆される。
【実施例5】
【0036】
CLU遺伝子サイレンシングに起因する遺伝毒性及び酸化的ストレスに対するOS細胞の増感性は、細胞アポトーシスの機構の活性化に関連する。驚いたことに、最近同定された他のCLUタンパク質の発現レベルの分析により、KH OS細胞及びU−2 OS細胞の両方において、Cl−I及びCl−IIオリゴヌクレオチドが、推定上の55kDaのn−CLU
35CLUタンパク質形態にいかなる有意な影響も与えないことが認められ、Cl−I又はCl−IIオリゴヌクレオチドの結合部位がs−CLUのmRNAとn−CLUのmRNAの間で共通しているという事実(J.Biol.Chem.278、11590〜16000頁、レスコフ(Leskov)ら(2003))にも関わらず、49kDaのc−CLU
49タンパク質形態レベルにわずかな影響が検出された。この影響は、n−CLUタンパク質が極めて安定しているという本発明者らの知見に基づいて説明されると我々は推測する。従って、CL−Iオリゴヌクレオチド及びCl−IIオリゴヌクレオチドは分泌されるCLU(s−CLU)タンパク質形態を特異的に分解(ノックダウン)する。
【0037】
次に、ヒト細胞のアポトーシスの調節に関わる幾つかのタンパク質の発現レベルをアッセイした。KH OS細胞及びU−2 OS細胞の両方におけるCLUノックダウンにより、抗アポトーシス分子のbcl−2のダウンレギュレーションが起こった。DNA損傷の修復及びシグナル伝達に関わり、さらにn−CLUに結合するタンパク質であるKu70(Proc.Nat’l Acad.Sci(USA)97、5907〜5912頁、ヤング(Yang)ら(2000))のレベルには何の影響も検出されなかった。興味深いことに、機能的p53分子を含むU−2 OS細胞では、bcl−2のダウンレギュレーションとは別に、CLUノックダウンはp53蓄積及びその下流のプロアポトーシスエフェクターであるbaxのアップレギュレーションも伴う。これを支持するように、CLUノックダウンU−2 OS細胞は、DXRにさらされると、Sc−I処理細胞と比べてより強く着実なp53タンパク質の蓄積を示した。CLUノックダウン後のOS細胞の増感性が、細胞のプロアポトーシス機構の活性化に大きく依存することが示唆される。我々の研究室で継続中の研究は、アポトーシス調節に関連する細胞シグナル伝達カスケードにおけるCLUの関与の調査である。
【実施例6】
【0038】
PC−3前立腺癌細胞におけるCLU遺伝子サイレンシングの影響を調べた。OS細胞におけるCLUノックダウンの有意な影響が立証されたので、次に、CLUのsiRNAをPC3ヒト前立腺癌細胞に適用した。PC3細胞はp53ヌルであり(Prostate 37、51〜59頁、ロルフ(Rohlff)ら(1998))、Sa OS細胞に類似する、比較的低い内生量のs−CLUタンパク質形態を発現する。PC3細胞において、Cl−Iオリゴヌクレオチド及びCl−IIオリゴヌクレオチドを用いるのとは別に、さらに別の2つのCLU特異的siRNAオリゴヌクレオチド(Cl−III、Cl−V)も試験した。これらのオリゴの中で、Cl−Vはs−CLUの転写開始部位を標的とした。PC3細胞においてCl−Iオリゴヌクレオチド及びCl−IIオリゴヌクレオチドを使用することにより、OS細胞系で述べられたのと同様の影響が起こった。
図4から判るように、Cl−III及びCl−Vの両方のオリゴヌクレオチドが、配列依存的であるが投薬量非依存的な様式で、CLUのRNA及びタンパク質発現のサイレンシングに非常に有効である。さらに具体的には、PC3細胞を、10、50及び100nMのCl−III又はCl−VのsiRMNオリゴヌクレオチドで1日間処理したところ、60%から98%にわたり、CLUのmRNAレベルを大幅に抑えた(
図4)。mRNAレベルにおけるこの影響は、タンパク質レベルでも明白であった。さらに、U−2 OS細胞における結果と一致して、PC3細胞におけるCLUノックダウンにより、進行中のアポトーシスに似た有意な形態学的変化が起こった。
【0039】
PC細胞をCLUのsiRNAオリゴヌクレオチドで処理することにより化学療法薬の細胞障害作用を強めることができるか否かを判定するために、まず最初にPC3細胞をCl−III、Cl−V又はSc−IのsiRNAオリゴヌクレオチドで処理し、次に様々な濃度のパクリタキセルを含む培地で2日間インキュベートした。その後、MTTアッセイを行い、細胞生存率を測定した。
図5に示すように、CLUのsiRNAの処理により、パクリタキセルの薬剤感受性は、投薬量依存的に有意に強大し、90%を超えてパクリタキセルのIC
50(細胞生存率を50%減少させる濃度)を減少させたが、スクランブルsiRNAは全く影響を及ぼさなかった。
【0040】
【表7】
【実施例7】
【0041】
クラステリンを標的とする8種のsiRNAを、配列番号1と2、3と4、5と6、7と8、9と10、11と12、13と14、並びに15と16によりRNA二本鎖として形成し、それぞれにCLU1〜CLU8とラベルした。PC3細胞を、様々な投薬量(10、50及び100nM)の8種のsiRNA又はスクランブルコントロールでトランスフェクトした。処理の3日後、タンパク質を抽出し、クラステリンレベル(MW=40及び60kDa)をウエスタンブロット法により分析した。クラステリン量の減少が8種全てのsiRNAで認められたが、最も顕著な結果はCLU−5(配列番号9及び10)で得られた。
【0042】
CLU−5(配列番号9及び10)で処理した細胞のブロットをビンキュリンコントロールに対して標準化した後、デンシトメトリー測定を行った。結果を
図6にまとめる。「オリゴ(Oligo)」細胞は、oligoFECTAMINE(商標)のみで処理した。図示のように、siRNAに対する投薬量依存的な反応が観察された。
【実施例8】
【0043】
実施例7の試験を、PC3前立腺細胞の代わりにA549肺癌細胞を使用して繰り返し、同様な結果が得られた。CLU−5(配列番号9及び10)で処理した細胞のブロットをビンキュリンコントロールに対して標準化した後、デンシトメトリー測定を行った。結果を
図7にまとめる。「オリゴ(Oligo)」細胞は、oligoFECTAMINE(商標)のみで処理した。図示のように、siRNAに対する投薬量依存的な反応が観察された。
【実施例9】
【0044】
PC3細胞を、10、50又は100nMのレベルのsiRNA、或いは100nMのスクランブルコントロールでトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後に、全RNAを抽出し、クラステリン転写産物のレベルをリアルタイムPCRにより定量化した。結果を
図8に示す。図示のように、試験した8種のsiRNAのそれぞれにおいて、クラステリン転写産物の量が減少した。
【実施例10】
【0045】
実施例9の試験を、PC3細胞の代わりにA549細胞を使用して繰り返した。結果を
図9に示す。図示のように、試験した8種のsiRNAのそれぞれにおいて、クラステリン転写産物の量が減少した。
【実施例11】
【0046】
PC細胞を、CLU−3(配列番号5及び6)又はCLU−5(配列番号9及び10)、或いは10、50又は100nMのレベルのスクランブルコントロール、或いはoligoFECTAMINE(商標)のみで処理(1パルス)した。2日後に全RNAを抽出し、ノザンブロット法によりクラステリン及びGADPHを分析した。デンシトメトリー測定を行った。
図10に、GADPHに対して標準化した後のこれらの測定結果を示す。クラステリン転写産物の量の減少が全投薬量のCLU−3及びCLU−5において認められた。
【実施例12】
【0047】
PC3細胞を、25nMのヒトクラステリンsiRNA(CLU−3及びCLU−5)、スクランブルコントロール、又はoligoFECTAMINE(商標)のみで一回処理した。処理2日後に、培地を、様々な濃度のタキソール(パクリタキセル)を含む培地と交換した。インキュベーション3日後に、細胞生存率をMTT分析により調べた。
図11に結果をまとめる。図示のように、siRNA及びタキソールは、相乗的に作用して、生細胞数を減少させた。
【実施例13】
【0048】
実施例12の試験を、PC3細胞の代わりにA549細胞を使用して繰り返した。結果を
図12にまとめる。
【実施例14】
【0049】
OVCAR3卵巣癌細胞を、1、10又は50nMのCLU5、スクランブルコントロール又はビヒクルのみのコントロールで一回処理した。未処理コントロールの試験も行った。2日後に、全RNAを抽出し、ノザンブロットによりクラステリン及びGAPDHのmRNAを分析した。GAPDHのmRNAに対して標準化した後のクラステリンmRNAレベルのデンシトメトリー測定値を
図13に示す。クラステリン転写産物の量の実質的な投薬量依存的減少が認められた。
【実施例15】
【0050】
MDA−MB231ヒト乳癌細胞を、5、50又は100nMのCLU−5、或いはスクランブルコントロール、或いはoligoFECTAMINE(商標)ビヒクルのみでトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、RNAを抽出し、ノザンブロット法によりクラステリン及びGAPDHを分析した。GAPDHのmRNAに対して標準化した後のクラステリンmRNAレベルのデンシトメトリー測定値を
図14に示す。クラステリン転写産物の量の実質的な減少が認められた。
【実施例16】
【0051】
クラステリン転写産物をRT−PCRにより定量化すること以外は、実施例15の試験を繰り返した。結果を
図15にまとめる。クラステリン転写産物の量の実質的な減少が認められた。
【実施例17】
【0052】
MCF−7ヒト乳癌細胞を、5、25又は50nMのCLU−5、或いはスクランブルコントロール、或いはoligoFECTAMINE(商標)ビヒクルのみでトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、RNAを抽出し、ノザンブロット法によりクラステリン及びGAPDHを分析した。GAPDHのmRNAに対して標準化した後のクラステリンmRNAレベルのデンシトメトリー測定値を
図16に示す。クラステリン転写産物の量の実質的な投薬量依存的減少が認められた。
【実施例18】
【0053】
クラステリン転写産物をRT−PCRにより定量化すること以外は、実施例17の試験を繰り返した。結果を
図17にまとめる。クラステリン転写産物の量の実質的な減少が認められた。
【実施例19】
【0054】
MCF−7細胞を、様々な投薬量(5及び50nM)のCLU−5のsiRNA、又はスクランブルコントロールでトランスフェクトした。処理の3日後、タンパク質を抽出し、ウエスタンブロッティング法によりクラステリンレベル(MW=40及び60kDa)を分析した。
図18は、スクランブルコントロールと比較した、siRNA処理細胞のクラステリンタンパク質の量の減少を示す。
【実施例20】
【0055】
クラステリンを過剰に発現するLNCaP/T1細胞を、10nMのCLU−5のsiRNA、又はスクランブルコントロールでトランスフェクト(1パルス)した。処理の3日後、タンパク質を抽出し、ウエスタンブロット法によりクラステリンを分析した。siRNAで処理した細胞においてクラステリンは検出されなかった。
【実施例21】
【0056】
IGFBP−2及びIGFBP−5を標的とする3種のsiRNAを、配列番号39及び40、41及び42、並びに43及び44により二本鎖RNAとして形成し、それぞれにBS−1〜BS−3とラベルした。A549細胞を、様々な投薬量(10、50及び100nM)の3種のsiRNA又はスクランブルコントロールでトランスフェクトした。ビヒクルだけのコントロール及び未処理コントロールもまた評価した。全RNAを抽出し、RT−PCR法によりIGFBP−2転写産物を分析した。
図19に示すように、IGFBP−2転写産物の量の減少が、3種全てのsiRNAで認められた。
【実施例22】
【0057】
PC3細胞を、様々な投薬量(10、50及び100nM)の3種の二重特異性siRNA(BS−1、BS−2及びBS−3)又はスクランブルコントロールでトランスフェクトした。ビヒクルだけのコントロールも評価した。全RNAを抽出し、RT−PCR法によりIGFBP−5転写産物を分析した。
図20及び
図21に示すように、IGFBP−5転写産物の量の減少が、3種全てのsiRNAで認められた。
【実施例23】
【0058】
初代ヒト骨線維芽細胞を、50nMの3種の二重特異性siRNA(BS−1、BS−2及びBS−3)又はスクランブルコントロールでトランスフェクトした。ビヒクルのみ及び未処理コントロールも評価した。全RNAを抽出し、RT−PCR法によりIGFBP−5転写産物を分析した。
図22に示すように、IGFBP−5転写産物の量の減少が、3種全てのsiRNAで認められた。
【実施例24】
【0059】
C42細胞(LNCaP前立腺癌細胞の亜系)をBS−1、BS−2及びBS−3で処理し、増殖阻害をクリスタルバイオレット分析により評価した。結果を
図23に示す。
【実施例25】
【0060】
A549肺癌細胞をBS−1、BS−2及びBS−3で処理し、増殖阻害をクリスタルバイオレット分析により評価した。結果を
図24に示す。