(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記増幅用光ファイバと前記出力部との間に設けられ、前記予備励起状態において前記励起光により前記増幅用光ファイバで発生して出力される光を波長変換せず、前記出力状態において前記種レーザ光及び前記励起光により前記増幅用光ファイバから出力される前記レーザ光を波長変換する波長変換器と、
前記波長変換器と前記出力部との間に設けられ、前記種レーザ光と同じ波長帯域の光が前記波長変換器に入力するとき、前記波長変換器において波長変換される光を透過し、前記波長変換器において波長変換されない光の透過が抑制される波長選択フィルタと、
を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のファイバレーザ装置。
前記出力状態における前記種レーザ光源から出力される前記種レーザ光はパルス光であり、前記予備励起状態における前記種レーザ光源から出力される前記種レーザ光は連続光であることを特徴とする請求項3に記載のファイバレーザ装置。
前記増幅用光ファイバと前記出力部との間に設けられ、前記予備励起状態において尖塔値が小さい前記種レーザ光及び前記励起光により前記増幅用光ファイバから出力される光を波長変換せず、前記出力状態において前記種レーザ光及び前記励起光により前記増幅用光ファイバから出力される前記レーザ光を波長変換する波長変換器と、
前記波長変換器と前記出力部との間に設けられ、前記種レーザ光と同じ波長帯域の光が前記波長変換器に入力するとき、前記波長変換器において波長変換される光を透過し、前記波長変換器において波長変換されない光の透過が抑制される波長選択フィルタと、
を更に備える
こと特徴とする請求項3または4に記載のファイバレーザ装置。
前記予備励起状態における前記励起光の強度は、前記出力状態における前記励起光の強度以下とされることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のファイバレーザ装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るファイバレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0024】
図1に示すように、ファイバレーザ装置100は、波長λ1の種レーザ光を出力する種レーザ光源10と、励起光を出力する励起光源20と、励起光と種レーザ光とが入力される増幅用光ファイバ30と、励起光と種レーザ光とを増幅用光ファイバ30に入力する光カプラ40と、増幅用光ファイバ30から出力される光を出力する出力部50と、種レーザ光源10と励起光源20とを制御する制御部60と、出力部50からのレーザ光の出力及び停止をさせる命令を制御部60に入力する命令部65と、励起光源20から出力される励起光の強度等を記憶するメモリ67とを主な構成として備える。
【0025】
図2は、
図1の種レーザ光源10を示す図である。本実施形態においては、種レーザ光源10として、ファブリペロー型のレーザ出力装置が用いられる。
図2に示すように種レーザ光源10は、励起光を出力するレーザ発振器11と、レーザ発振器11からの励起光が入力する希土類添加ファイバ13と、希土類添加ファイバ13とレーザ発振器11との間に設けられる第1FBG(Fiber Bragg Grating)12と、希土類添加ファイバ13のレーザ発振器11とは反対側に設けられる第2FBG15と、第2FBG15と希土類添加ファイバ13との間に設けられるAOM(Acoustic Optical Modulator:音響光学素子)14とを備える。
【0026】
レーザ発振器11は、例えば半導体レーザであって、励起光を出力する。出力される励起光は、例えば、975nmの波長である。レーザ発振器11から出力される励起光は、第1FBG12を介して希土類添加ファイバ13に入力される。励起光は、希土類添加ファイバ13に添加された希土類元素に吸収される。このため、希土類元素は励起状態となる。そして、励起状態となった希土類元素は、波長λ1を含む波長帯域の自然放出光を放出する。このときの自然放出光の波長λ1は、例えば、上述の975nmの波長の励起光が希土類ファイバに入力されるとき1064nmの波長となる。この自然放出光は、希土類添加ファイバ13を伝播し、AOM14に入力される。このAOM14は、低損失な状態と高損失な状態とを周期的に繰り返すように制御されたり、低損失な状態を維持するように制御されたりする。
【0027】
そして、AOM14は、高損失な状態では、特定の波長の光の透過を抑制し、低損失な状態では、特定の波長の光を透過させる。このため、AOM14が低損失な状態では、自然放出光は、AOM14を介して、第2FBG15に入力する。第2FBG15は、波長λ1を含む波長帯域の光を選択的に例えば約50%以下の反射率で反射する。従って反射する自然放出光は、AOM14を介して再び希土類添加ファイバ13に入力されて、希土類添加ファイバ13の希土類元素の誘導放出により増幅される。その後、増幅された光は、第1FBG12に到達する。第1FBG12は、波長λ1を含む波長帯域の光を選択的に例えば99.5%の反射率で反射する。このため、第1FBG12で反射される光は、再び希土類添加ファイバ13に入力されて更に増幅される。その後、増幅された光は、AOM14を介して第2FBG15に入力され、一部の光が第2FBG15を透過する。このように第1FBG12と第2FBG15とでファブリペロー発振器を構成し、AOM14が低損失な状態と高損失な状態とを繰り返す動作に同期して、パルス状の光が増幅され、この増幅されたパルス状の光が種レーザ光として第2FBG15から出力される。このとき種レーザ光源10から出力される種レーザ光の波長λ1は、例えば、1064nmの波長であり、パルスの繰り返し周波数は、例えば、100kHzである。
【0028】
また、AOM14低損失な状態を維持するように制御される場合、種レーザ光源10からは、同一波長で連続光である種レーザ光が出力される。
【0029】
なお、種レーザ光源10においては、AOM14が制御部60からの制御信号により制御されることで、パルス光や連続光としての種レーザ光の出力が制御されたり、それらの強度が制御されたりする。
【0030】
種レーザ光源10から出力される種レーザ光は、光カプラ40に入力される。
【0031】
一方、励起光源20は、励起光を出力する複数のレーザダイオードから構成され、出力する励起光の強度が、制御部60からの制御信号によって調整される。励起光源20は、増幅用光ファイバ30の希土類元素を励起状態とする励起光を出力し、励起光源20から出力される励起光は光カプラ40に入力する。なお、励起光源20から出力される励起光は、例えば、975nmの波長とされる。
【0032】
光カプラ40は、種レーザ光源10からの種レーザ光が入力する入力ポート41と、励起光源20からの励起光が入力する励起光入力ポート42と、入力された種レーザ光及び励起光を出力する出力ポート43とを有する。入力ポート41は、種レーザ光源10からの種レーザ光をシングルモード光として伝播するシングルモードファイバから構成される。励起光入力ポート42は、励起光源20から出力される励起光をマルチモード光として伝播するマルチモードファイバから構成される。出力ポート43は、コアと、コアを被覆するクラッドと、クラッドを被覆する樹脂クラッドとを有するダブルクラッドファイバから構成され、コアにより種レーザ光をシングルモード光として伝播し、コア及びクラッドにより励起光をマルチモード光として伝播する構成となっている。出力ポート43から出力する種レーザ光及び励起光は、増幅用光ファイバ30に入力する。
【0033】
増幅用光ファイバ30は、希土類元素が添加されるコアと、コアを被覆するクラッドと、クラッドを被覆する樹脂クラッドとを有するダブルクラッドファイバから構成される。コアは、光カプラ40から出力される種レーザ光をシングルモード光として伝播し、コア及びクラッドにより光カプラ40から出力される励起光をマルチモード光として伝播する。そして、励起光は、コアを通過する際、その一部が希土類元素に吸収されて、希土類元素の励起状態が高くされる。高い励起状態となり、反転分布状態とされた希土類元素は、コアを伝播する種レーザ光により誘導放出を起こし、この誘導放出により種レーザ光が増幅され、増幅用光ファイバ30から増幅されるレーザ光が出力される。このような増幅用光ファイバとしては、例えば、コア部の直径が10μmであり、クラッド部の外径が125μmであり、コアは、希土類元素としてイッテルビウムが添加された石英からなり、クラッドは、ドーパントが添加されない石英からなるものが挙げられる。なお、増幅用光ファイバ30からレーザ光の出力を停止させる場合、増幅用光ファイバ30への励起光の入力を停止させても、希土類元素の励起状態は、すぐには低くならず、一定の時間をかけて徐々に低くなる。
【0034】
出力部50は、増幅用光ファイバ30で増幅されるレーザ光をファイバレーザ装置100の外部に出力する。なお、上記のように種レーザ光源10からパルス状の種レーザ光が出力される場合、出力部50からは、種レーザ光源10から出力される種レーザ光と同期するパルス状のレーザ光が出力される。
【0035】
命令部65は、出力部50からレーザ光を出力させるための出力命令、及び、出力部50からのレーザ光の出力を停止させる出力停止命令を制御部60に入力する。
【0036】
制御部60は、命令部65からの出力命令や出力停止命令に基づいて種レーザ光源10及び励起光源20を制御する。具体的には、制御部60は、種レーザ光源10におけるレーザ発振器11やAOM14を制御して、種レーザ光源10の出力の有無や強度、及び、種レーザ光をパルス光や連続光にする制御を行う。さらに制御部60は、励起光源20を制御して、励起光源20から出力される励起光の有無や、励起光源20から出力される励起光の強度を制御する。
【0037】
メモリ67は、レーザ光が出力状態において出力部50から出力されるための励起光の強度、及び、予備励起状態、すなわち出力部50からレーザ光が出力される前における励起光(以下、予備励起光)の強度や、予備励起光が出力される一定期間等を予め記憶している。この一定期間は、予め設定した強度の予備励起光が増幅用光ファイバ30に入力されるとき、この予備励起光が増幅用光ファイバ30に入力されてからこのファイバレーザ装置の共振器の利得が正となる期間よりも短い期間である。この予備励起光強度及び一定期間は、事前に計測されることで予め定められて、メモリ67に記憶されている。
【0038】
ここで、ファイバレーザ装置100の共振器の利得が正となるというのは、言い換えれば、増幅用光ファイバ30を利得媒体として寄生発振が生じ得るレーザ共振器における利得が損失を上回ることである。ファイバレーザ装置100において、事前の実験により、どのくらいの強度の予備励起光をどのくらい期間増幅用光ファイバ30に入力させると意図しない(寄生の)発振が起こるか把握することができる。寄生発振が起こるということは、その発振の共振器において、利得が正となっているということである。ここで、共振器とは、増幅用光ファイバ30の一部を少なくとも含み、この少なくとも一部の増幅用光ファイバ30を挟んでその両端部における光反射要素とにより形成されて寄生発振を起こし得る共振器のことをいう。光反射要素とは、具体的には、種レーザ光源10と入力ポート41との接続部(融着部)、増幅用光ファイバ30と出力ポート43との接続部(融着部)、および増幅用光ファイバ30と出力部50との接続部等に存在する屈折率差や、増幅用光ファイバ30内のレイリー散乱等により起因するものである。
【0039】
この共振器の利得が正となる期間は、例えば、上述の増幅用光ファイバ30であれば、予備励起光の強度が4Wの場合、予備励起光が増幅用光ファイバ30に入力されてからこのファイバレーザ装置100の共振器の利得が正となって、発振してしまうまでの期間は、400μ秒であった。このため、本実施形態に係るファイバレーザ装置100において、一定期間Tは、例えば、上記共振器の利得が正となる期間400μ秒より短い200μ秒とされる。
【0040】
ここで、予備励起光の強度に応じて、共振器の利得が正となる期間は異なる。従って、予備励起光の強度に応じて、この一定期間を設定することが好ましい。そして、この一定期間経過後の希土類元素の励起状態を所定の一定レベルになるように、予備励起光の強度に応じて、この一定期間を設定することにより、ファイバレーザ装置100から出力されるレーザ光の立ち上がり時間がばらつくことを抑制することができる。
【0041】
また、上述の増幅用光ファイバ30であれば、予備励起光の強度が2Wの場合、十分に時間が経過した定常状態であっても、利得が損失を上回ることを防止することができ、希土類元素の励起状態は、所定の一定のレベルとなる。この場合には、この一定期間を増幅用光ファイバ30の希土類元素の緩和時間よりも長い、例えば、5m秒に設定することができる。このように一定期間を増幅用光ファイバ30の希土類元素の緩和時間より長い期間にすることで、利得を一定とすることができ、出力されるレーザ光の立ち上がり期間を短くしつつ、レーザ光が出力される期間以外において尖塔値の高い不要な光の出力を抑制することができる。
【0042】
カウンタ69は、制御部が、命令部65からの出力命令が制御部60に入力されてからの期間や、命令部65から出力命令が制御部60に入力されなくなってからの期間等を計算する為の情報を出力する。
【0043】
次に、ファイバレーザ装置100の動作について
図3を用いて説明する。
【0044】
図3は、ファイバレーザ装置100の動作を模式的に示したタイミングチャートである。
【0045】
図3は、命令部65から制御部60に入力される出力命令と、励起光源20から出力される励起光の強度と、種レーザ光源10から出力される種レーザ光の強度と、増幅用光ファイバ30の希土類元素の励起状態と、出力部50から出力されるレーザ光の強度を模式的に表している。なお、
図3において、出力命令がHの状態が、命令部65から制御部60に出力命令がされている状態を表し、励起光の強度が高く表されている程、強度の強い励起光が励起光源20から出力されている状態を示し、種レーザ光源からのレーザ光の強度が高く表されている程、種レーザ光源10から強度の強い種レーザ光が出力されている状態を示し、希土類元素の励起状態が高く表されている程、増幅用光ファイバ30の希土類元素が高い励起状態であることを示し、出力されるレーザ光の強度が高く表される程、出力部50から出力されるレーザ光の強度が強い状態を示す。
【0046】
まず、ファイバレーザ装置100の図示しない電源がオンにされ、制御部60に電力が供給される。制御部60は、電力が供給されると、命令部65からの出力命令の入力を待つ。
【0047】
次に、時刻t1において、命令部65から出力命令が入力される。この時刻t1における出力命令は、ファイバレーザ装置100の電源がオンとされて最初の出力命令である。この場合、制御部60は、予備励起光の強度Rpをメモリ67から読み出すと共に、カウンタ69からの信号を用いて予め定められる一定期間Tだけ種レーザ光源10及び励起光源20が予備励起状態となるように制御する。そして、励起光源20は、予備励起状態とされると強度Rpの予備励起光を出力するように制御され、種レーザ光源10は、種レーザ光が出力されないように制御される。なお、この種レーザ光源10の制御には、種レーザ光源10に対して特に命令を行わないことも含まれる。こうして、増幅用光ファイバ30の希土類元素の励起状態が徐々に高くされる。ただし、上述のように一定期間Tは、強度Rpの予備励起光が増幅用光ファイバ30に入力されてからこのファイバレーザ装置100の共振器の利得が正となる期間よりも短い期間とされる。従って、予備励起状態において、ファイバレーザ装置100が意図しない発振を起こしてしまうことが抑制される。
【0048】
次に、時刻t1から予め定められる一定期間Tが経過する時刻t2において、制御部60は、種レーザ光源10及び励起光源20が出力状態となるように制御する。このとき、制御部60は、メモリ67から出力状態における励起光の強度Rsを読みだすと共に、励起光源20を制御して、励起光源20から予め定められた強度Rsの励起光を出力させる。さらに制御部60は、種レーザ光源10を制御して、種レーザ光源10から尖塔値が強度Hで波長λ1のパルス状の種レーザ光を出力させる。このときの励起光の強度Rsと種レーザ光の尖塔値の強度Hは、出力部50からレーザ光が出力されるような強度である。具体的には、出力状態における励起光の強度Rsは、例えば6Wとされ、種レーザ光の尖塔値の強度Hは、例えば4Wとされる。
【0049】
出力状態において、励起光源20から強度Rsの励起光が出力され、種レーザ光源10からパルス状の種レーザ光が出力されると、増幅用光ファイバ30の希土類元素は、さらに高い励起状態とされながら誘導放出を起こして、種レーザ光の強度を増幅させる。このため、増幅用光ファイバ30からは、増幅されたパルス状のレーザ光が出力され、この増幅されたパルス状のレーザ光が出力部50から出力される。
【0050】
ただし、時刻t2を経過して間もない時点においては、出力部50から出力されるレーザ光の強度は、予め定められる強度Pには達しない。そして、時刻t2から所定の期間が経過すると、希土類元素の励起状態がさらに高い状態とされて、出力部50から予め定められる強度Pのレーザ光が出力され、レーザ光の出力が安定する。この所定の期間が、出力部50から出力されるレーザ光の立ち上がり期間となる。例えば、電源が投入されて最初のレーザ光の出力の場合に、上記のように予備励起光の強度Rpが2Wとされ、一定期間Tが100μ秒とされ、出力状態における励起光の強度Rsが6Wとされ、種レーザ光の尖塔値の強度Hが4Wされる場合、レーザ光の立ち上がり期間は50μ秒以下となる。
【0051】
次に時刻t3において、命令部65から出力命令が入力されなくなると、制御部60は、カウンタ69の情報を用いて、時刻t3から一定期間Tを計算し、時刻t3から一定期間Tが経過する時刻t4において、種レーザ光源10及び励起光源20の出力状態を終了させる。このとき種レーザ光源10からの種レーザ光の出力、及び、励起光源20からの励起光の出力が停止する。このため、出力部50からのレーザ光の出力が停止される。そして、制御部60は、再び命令部65からの出力命令を待つ。
【0052】
なお、本実施形態においては、命令部65は、上述のようにレーザ光を出力させようとする期間、制御部60に出力命令を入力し続けて、レーザ光の出力を停止させようとする時刻において制御部60への出力命令の入力を停止する。従って、本実施形態においては、命令部65が制御部60に出力命令の入力を停止することが、命令部65が制御部60に出力停止命令を入力することに相当する。
【0053】
また、
図3に示すように増幅用光ファイバ30における希土類元素の励起状態は、出力状態の終了時刻t4から徐々に低くなり、時刻t4から所定の期間が経過後において基底状態となる。
【0054】
次に、時刻t3から一定期間Tよりも長い期間Taをあけた時刻t5において、出力命令が命令部65から制御部60に入力される。つまり、時刻t3から一定期間Tが経過する時刻t4よりも後の時刻t5において出力命令が制御部60に入力される。このとき時刻t5において、種レーザ光源10及び励起光源20の出力状態は、既に終了している。この場合、制御部60は、予備励起光の強度Rpをメモリ67から読み出すと共に、カウンタ69からの信号を用いて、時刻t5から予め定められる一定期間Tだけ、種レーザ光源10及び励起光源20が予備励起状態となるように制御する。そして、励起光源20は、強度Rpの予備励起光を出力するように制御され、種レーザ光源10は、種レーザ光を出力しないように制御される。こうして、時刻t1から時刻t2における予備励起の場合と同様に、増幅用光ファイバ30の希土類元素の励起状態が徐々に高くされるが、t5からt6の一定期間Tは、強度Rpの予備励起光が増幅用光ファイバ30に入力されてからこのファイバレーザ装置100の共振器の利得が正となる期間よりも短い期間であるので、この予備励起状態において、ファイバレーザ装置100が意図しない発振を起こしてしまうことが抑制される。
【0055】
次に、時刻t5から一定期間Tが経過する時刻t6において、制御部60は、種レーザ光源10及び励起光源20が出力状態となるように制御する。このとき、制御部60は、メモリ67から出力状態における励起光の強度Rsを読みだすと共に、励起光源20を制御して、励起光源20から予め定められた強度Rsの励起光を出力させる。さらに制御部60は、種レーザ光源10を制御して、種レーザ光源10から尖塔値が強度Hで波長λ1のパルス状の種レーザ光を出力させる。
【0056】
こうして、増幅用光ファイバ30の希土類元素は、さらに高い励起状態とされながら種レーザ光により誘導放出を起こして、種レーザ光源10から入力される種レーザ光の強度を増幅する。そして、出力部50から増幅されたパルス状のレーザ光が出力される。このとき、時刻t2の経過後に出力されるレーザ光と同様に、時刻t6から所定の期間が経過すると、希土類元素の励起状態がさらに高い状態とされ、出力部50から出力されるレーザ光が立ち上がる。
【0057】
次に、時刻t7において、命令部65から制御部60に出力命令が入力されなくなると、制御部60は、時刻t7から一定期間Tが経過する時刻t9に種レーザ光源10及び励起光源20の出力状態を終了させるため、カウンタ69の情報を用いて、時刻t7から予め定められる一定期間Tを計算する。
【0058】
次に、時刻t7から一定期間Tが経過する時刻t9より前の時刻t8において、命令部65から出力命令が制御部60に再び入力される。つまり、時刻t7において出力停止命令が制御部60に入力されてから、一定期間Tが経過するよりも短い期間Tbが経過する時刻t8において、出力命令が命令部65から制御部60に入力される。このとき、時刻t8は、時刻t7から一定期間Tが経過する前の時刻であるため、種レーザ光源10及び励起光源20の出力状態は終了していない。この場合、制御部60は、期間Tbがメモリ67に予め記憶されている一定期間Tより短いことを判断して、種レーザ光源10と励起光源20とを出力状態のままとし、命令部65から制御部60に出力命令が入力されなくなる時刻t7から一定期間Tが経過する時刻t9において、種レーザ光源10及び励起光源20の出力状態を終了させる。
【0059】
そして、種レーザ光源10及び励起光源20の出力状態を終了させる時刻t9において、制御部60は、予備励起光の強度Rpをメモリ67から読み出すと共に、カウンタ69の情報を用いて、出力命令が入力された時刻t8から一定期間Tが経過する時刻t10まで、種レーザ光源10及び励起光源20を予備励起状態とする。そして、励起光源20は、予備励起状態とされると強度Rpの予備励起光を出力するように制御され、種レーザ光源10は、種レーザ光が出力されないように制御される。このように、種レーザ光源10及び励起光源20は、出力状態から予備励起状態となるよう制御され、時刻t9から時刻t10まで予備励起状態とされる。t10からt11の期間Tbは、一定期間Tより短く、強度Rpの予備励起光が増幅用光ファイバ30に入力されてからこのファイバレーザ装置100の共振器の利得が正となる期間よりも短い期間であるので、この予備励起状態において、ファイバレーザ装置100が意図しない発振を起こしてしまうことが抑制される。
【0060】
種レーザ光源10及び励起光源20が予備励起状態とされると、増幅用光ファイバ30に入力される励起光の強度が弱くなるため、増幅用光ファイバにおける希土類元素の励起状態が徐々に低くなるが、時刻t10において、希土類元素の励起状態を予備励起しない場合と比較して、所定の励起状態に近づけることができる。
【0061】
次に、時刻t10において、制御部60は、種レーザ光源10及び励起光源20を出力状態とする。このため、出力部50からはパルス状のレーザ光が立ち上がり出力される。
【0062】
次に時刻t11において、命令部65から制御部60に出力命令が入力されなくなると、制御部60は、カウンタ69の情報を用いて、時刻t11から一定期間Tが経過する時刻t12において、種レーザ光源10及び励起光源20の出力状態を終了させる。
【0063】
以上説明したように、出力停止命令が入力される時刻t3から次の出力命令が入力される時刻t5までの期間が上記の一定期間Tよりも長い期間Taである場合、種レーザ光源10及び励起光源20は、出力命令が入力されてから出力状態となるまでの一定期間Tのみ予備励起状態とされる。つまり、種レーザ光源10及び励起光源20は、出力命令が入力されてからタイムシフトする一定期間Tのみ予備励起状態とされ、出力命令が入力される前の出力状態の終了時刻t4から出力命令が入力される時刻t5までの期間は予備励起状態とされない。そして、この予備励起状態とされる一定期間Tは、強度Rpの予備励起光が増幅用光ファイバ30に入力されてからこのファイバレーザ装置100の共振器の利得が正となる期間よりも短い期間である。このように種レーザ光源10及び励起光源20が予備励起状態とされることで、出力状態開始時点で希土類元素の励起状態を予め所定の高いレベルに近づけ、レーザ光の立ち上がり期間のばらつきを抑制しつつ、短くすることができる。すなわち、出力状態開始時における希土類元素の励起状態(反転分布状態)を、ファイバレーザ装置100の停止状態の期間の長さに関わらず、一定となるように制御できるので、レーザ光の立ち上がり期間のばらつきを抑制しつつ、短くすることができる。さらに、種レーザ光源10と励起光源20とが、一定期間T、すなわち、強度Rpの予備励起光が増幅用光ファイバ30に入力されてからこのファイバレーザ装置100の共振器の利得が正となる期間よりも短い期間だけ予備励起状態とされるので、ファイバレーザ装置100の意図しない発振を抑制して、尖塔値の高い不要な光の出力を抑制することができる。一方、出力停止命令が入力される時刻t7から次の出力命令が入力される時刻t8までの期間Tbが、一定期間Tよりも短い場合は、出力状態の終了の時刻t9から次の出力状態の開始の時刻t10までの間、種レーザ光源10及び励起光源20は予備励起状態とされる。このようにして十分に予備励起の期間Tが確保できない場合においても、その間予備励起を行うことにより、予備励起しない場合と比較して、出力状態におけるレーザ光の立ち上がりを早くすることができる。このようにして本実施形態のファイバレーザ装置100によれば、出力されるレーザ光の立ち上がり期間を短くしつつ、レーザ光が出力される期間以外において尖塔値の高い不要な光の出力を抑制することができる。
【0064】
また、このようなファイバレーザ装置100によれば、種レーザ光源10及び励起光源20は、出力命令が制御部60に入力されてから予め定められる一定期間Tの後に出力状態とされ、出力停止命令が制御部60に入力されてから一定期間Tの後に出力状態が終了される。つまり、制御部60に出力命令が入力されてから、種レーザ光源10及び励起光源20が出力状態とされるまで、及び、制御部60に出力停止命令が入力されてから、種レーザ光源10及び励起光源20が出力状態が終了するまでのそれぞれにおいて、一定期間Tだけタイムシフトする。従って、制御部60に出力命令が入力されてから出力停止命令が入力されるまでの期間と、種レーザ光源10及び励起光源20が出力状態とされる期間とが同じであり、使用者は、違和感なくファイバレーザ装置100を使用することができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0066】
図4に示すように、ファイバレーザ装置110は、増幅用光ファイバ30と出力部50との間に設けられ、増幅用光ファイバ30から出力する光が入力する波長変換器71と、波長変換器71と出力部50との間に設けられ、波長変換器71から出力する光が入力する波長選択フィルタ73とを備える点で第1実施形態と異なる。
【0067】
波長変換器71は、誘導ラマン散乱を起こす光ファイバにより構成される。この波長変換器は、入射光の尖塔値が大きい場合に入射光をより波長の長い光に変換し出力し、入射光の尖塔値が小さい場合に入射光の波長を変換せずそのまま出力する。本実施形態においては、波長変換器71は、波長変換用光ファイバにより構成され、所定の強度以上の光が入力すると、その光の波長を変換する。具体的には、波長変換器71は、波長変換をする場合、波長がλ1のレーザ光が入力すると、誘導ラマン散乱により波長変換器71に入力した光を波長λ1より長波長の波長λ2の光に変換する。このため波長変換器71からは、入力する光よりも長波長の光が出力される。
【0068】
そして、予備励起状態において、励起光源20から予備励起光が増幅用光ファイバ30に入力されると、増幅用光ファイバ30において自然放出光が発生する。この自然放出光は、増幅用光ファイバ30において増幅されてASEとして出力され、波長変換器71に入力される。しかし、このとき増幅用光ファイバ30から出力される光は、尖塔値が小さいため、波長変換器71において波長変換されない。一方、出力状態においては、種レーザ光源10から種レーザ光が出力されると共に、励起光源20から励起光が出力され、増幅用光ファイバ30において種レーザ光が増幅されてレーザ光が出力され、波長変換器71に入力される。そして、このとき増幅用光ファイバ30から出力されるレーザ光は、尖塔値が大きいため波長変換器71において波長変換される。
【0069】
このような波長変換用の光ファイバとしては、コア及びクラッドから構成される光ファイバであって、コアに非線形光学定数を上昇させるドーパントが添加される光ファイバが挙げられる。このようなドーパントとしては、ゲルマニウムやリンが挙げられる。例えば、波長変換器71は、コアはゲルマニウムが7〜8質量%添加され、コアの直径が5μmで、長さが20mのシングルモードファイバであり、パルス光の尖塔値の強度が70W以上で波長λ1が1064nmの光が入力すると、波長λ2が1120nmの光が出力され、強度が70Wより低い光が入力すると波長変換されないように構成される。この波長変換器71の波長変換の尖塔値の閾値は、コアの直径、ドーパントの添加濃度、長さ等によって変えることができる。したがって、本実施形態の波長変換器71のコアの直径、ドーパントの添加濃度、長さは、波長1120nmの光の尖塔値が、70Wより大きい場合に波長変換が起こり、それより小さい尖塔値の場合には、波長変換が起きないように設定される。逆に、波長変換器71のコアの直径、ドーパントの添加濃度、長さが予め決まっている場合には、予備励起状態では、波長変換が起こらず、出力状態で波長変換が起こるような入力光の尖塔値となるように種レーザ光源10及び励起光源20の出力が設定される。
【0070】
波長選択フィルタ73は、種レーザ光源10から出力される波長のレーザ光が波長変換器71を介して入力する場合、波長変換器71において波長変換されて入力するレーザ光を透過し、波長変換器71において波長変換されずに入力するレーザ光の透過が抑制される。従って、増幅用光ファイバ30から強度の強いレーザ光が出力され、波長変換器71においてレーザ光が波長変換される場合、波長選択フィルタ73に入力するレーザ光は、波長選択フィルタ73を透過する。一方、増幅用光ファイバ30から強度の弱いレーザ光が出力され、波長変換器71においてレーザ光が波長変換されない場合、波長選択フィルタ73に入力するレーザ光は、波長選択フィルタ73において透過が抑制される。
【0071】
波長選択フィルタ73は、例えば、誘電体多層膜フィルタやフォトニック・バンド・ギャップ・ファイバ等により構成される。そして、例えば、上述のように波長λ1が1064nmであるレーザ光が波長変換器71に入力し、波長変換器71において波長変換されて、波長λ2が1120nmであるレーザ光とされて波長選択フィルタ73に入力する場合、レーザ光は波長選択フィルタ73を透過する。一方、波長λ1が1064nmであるレーザ光が波長変換器71に入力して、波長変換器71において波長変換されずに1064nmのレーザ光がそのまま波長選択フィルタ73に入力する場合、レーザ光は波長選択フィルタ73において透過が抑制される。なお、予備励起光の強度および一定の時間Tは、第1の実施形態と同様に設定される。
【0072】
次にファイバレーザ装置110の動作について説明する。
【0073】
ファイバレーザ装置110においては、第1実施形態のファイバレーザ装置100と同様にして、励起光源20及び種レーザ光源10が予備励起状態とされる期間(t1〜t2、t5〜t6、t9〜t10)において、励起光源20から予備励起光が出力される。
【0074】
このとき、増幅用光ファイバ30に入力される予備励起光により、増幅用光ファイバ30においては自然放出光が発生する。この自然放出光は、増幅用光ファイバ30において増幅されてASEとして出力され、波長変換器71に入力される。しかし、増幅用光ファイバ30から出力される光は、波長変換器71の波長変換の尖塔値閾値より尖塔値が小さいため上述のように波長変換器71において波長変換されない。従って、波長変換器71から波長選択フィルタ73に入力された光は、波長選択フィルタにおいて透過が抑制される。このため、予備励起状態においては、出力部50からは光が出力されない。
【0075】
上述のように波長変換器71が、長さが20mのシングルモードファイバで、コアがゲルマニウムが7〜8質量%添加された石英から構成され、コアの直径が5μmである場合、例えば予備励起光の強度R1が2Wであれば、増幅用光ファイバ30において増幅されて出力され、波長変換器71に入力される光は、波長変換器71の波長変換の尖塔値閾値より尖塔値が小さいため、波長変換器71で波長変換されない。
【0076】
次に、励起光源20及び種レーザ光源10が出力状態とされる期間(t2〜t4、t6〜t9、t10〜t12)においては、励起光源20から強度Rsの励起光が出力されると共に、種レーザ光源10から尖塔値が強度Hで波長λ1のパルス状の種レーザ光が出力される。このとき増幅用光ファイバ30から出力されるレーザ光は、波長変換器71の波長変換の尖塔値閾値より大きいため、波長変換器71において波長変換される。従って、波長変換器71から波長選択フィルタ73に入力されるレーザ光は、波長選択フィルタを透過して、出力部50から出力される。このように、本実施形態に係るファイバレーザ装置110においても、第1の実施形態と同様に、予備励起状態の期間は、所定の強度の励起光が増幅用光ファイバに入力されてファイバレーザ装置の共振器の利得が正となる期間より短いため、ファイバレーザ装置が意図しない発振をしてしまうことがない。このため、レーザ光が出力される期間以外において、尖塔値の高い不要な光の出力を抑制することができる。なお、例えば、上述のように、波長変換器71が、長さが20mのシングルモードファイバで、コアがゲルマニウムが7〜8質量%添加された石英から構成され、コアの直径が5μmである場合、出力状態における励起光の強度Rsの強度が6Wとされ、種レーザ光の尖塔値の強度Hが4Wとされる場合、レーザ光の尖塔値は185Wとなり、波長変換器71に入力するレーザ光は波長変換される。
【0077】
このようなファイバレーザ装置110によれば、出力状態において、増幅用光ファイバ30で増幅されたレーザ光が出力されると、レーザ光は波長変換器71において波長変換される。波長変換器71において波長変換されたレーザ光は、波長選択フィルタ73に入力され、波長選択フィルタ73を透過して出力部50から出力される。一方、予備励起状態においては、予備励起光により増幅用光ファイバ30の希土類元素が励起状態とされる。ところで、増幅用光ファイバ30は、励起光により励起状態とされる希土類元素の誘導放出により種レーザ光源10から出力される種レーザ光が増幅されるよう構成される。しかし予備励起状態において種レーザ光が増幅用光ファイバ30に入力されないため、増幅用光ファイバからは、励起された希土類元素が放出する自然放出光が増幅されたASEが出力される。自然放出光は、スペクトルの幅が広く、尖塔値の強度が小さいため、波長変換器71において、増幅用光ファイバ30からASEが入力されても、入力された光を波長変換しない。このため、増幅用光ファイバ30からASEが出力される場合であっても、波長変換器71から出力されて波長選択フィルタ73に入力される光は、波長選択フィルタ73において透過が抑制される。こうして、予備励起状態において、出力部50からの不要な光の出力を抑制することができる。
【0078】
なお、本実施形態において、波長変換器71は、誘導ラマン散乱を起こす光ファイバにより構成されるものとしたが、この波長変換器71は、入力する光の強度の尖塔値が大きい場合には、この光を異なる波長の光に変換し出力し、入力する光の強度の尖塔値が小さい場合には、この光の波長を変換せずそのまま出力する機能を有するものであれば、光ファイバに限らない。例えば、波長変換器71は、リチウム・トリボレート(LiB
3O
5)等の第2高調波を発生する非線形光学結晶であってもよい。このような非線形光学結晶は、所定の尖塔値以上の強度の光入力された場合に、第2高調波(波長が1/2の光)を出力する。波長変換器71として、第2高調波を発生する非線形光学結晶を用いた場合には、後段の波長選択フィルタ73は、波長変換器71に入力される光の波長の透過が抑制され、その第2高調波の波長の透過をするフィルタを用いる。
【0079】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図5を参照して詳細に説明する。なお、第2実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態は、第2実施形態において説明したファイバレーザ装置110を用いたファイバレーザ装置である。
【0080】
図5は、本発明の第3実施形態に係るファイバレーザ装置110の動作を表すタイミングチャートである。本実施形態のファイバレーザ装置110は、予備励起状態において、励起光源20から予備励起光が出力されると共に、種レーザ光源10から尖塔値が小さい種レーザ光が出力される点において、第2実施形態のファイバレーザ装置110と異なる。
【0081】
具体的には、
図5に示すように、時刻t1(t5、t8)において、命令部65から出力命令が入力されると、制御部60は、第2実施形態と同じ期間だけ、種レーザ光源10及び励起光源20が予備励起状態となるように制御する。そして、制御部60は、予備励起光の強度Rpをメモリ67から読み出して、カウンタ69からの信号を用いて、励起光源20から第2実施形態と同様に強度Rpの予備励起光を出力させる。さらに、本実施形態においては、予備励起状態において、制御部60は、種レーザ光源10を制御して、強度Lの尖塔値が小さい種レーザ光を出力させる。なお、本実施形態において、この尖塔値が小さい種レーザ光は、連続光とされる。
【0082】
励起光源20から出力された励起光、及び、種レーザ光源10から出力された尖塔値が小さい種レーザ光は、増幅用光ファイバ30に入力される。そして、増幅用光ファイバ30において、尖塔値が小さい種レーザ光による誘導放出により、この種レーザ光は増幅されて増幅用光ファイバ30から出力され、波長変換器71に入力される。しかし、種レーザ光が増幅用光ファイバ30において増幅されて出力される光が波長変換器71に入力されても、波長変換器71は、入力した光を波長変換しないよう構成される。例えば、上述のように、波長変換器71が、長さが20mのシングルモードファイバで、コアがゲルマニウムが7〜8質量%添加された石英から構成され、コアの直径が5μmである場合、予備励起状態における尖塔値が小さい種レーザ光の強度Lが1Wとされ、予備励起光の強度が2Wであれば、波長変換器71において波長変換されないように構成される。
【0083】
本実施形態におけるファイバレーザ装置110によれば、予備励起状態において、増幅用光ファイバ30に種レーザ光が入力されるため、励起光による希土類元素の励起と種レーザ光による希土類元素の緩和とのバランスを取ることができる。すなわち、ファイバレーザ装置の要求仕様に応じて、種レーザ光強度、予備励起状態における励起光強度および前記一定期間を、予備励起状態においてファイバレーザ装置の共振器の利得が正とならない範囲で最適化設定することができる。従って、ファイバレーザ装置100が意図しない発振を起こしてしまうことが抑制でき、予備励起状態において、尖塔値の高い不要な光が出力されることをより抑制することができる。
【0084】
さらに、予備励起状態においては、増幅用光ファイバ30の誘導放出により、尖塔値が小さい種レーザ光が増幅されて波長λ1の光が出力される。しかし、予備励起状態において、増幅用光ファイバ30から出力される光は波長変換器71において波長変換されない。よって、波長変換器71から波長選択フィルタ73に入力されるレーザ光は、波長選択フィルタ73において透過が抑制される。このため、予備励起状態において、不要な光の出力が抑制できる。
【0085】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図6を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図6は、本発明の第4実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0086】
図6に示すように、ファイバレーザ装置130は、種レーザ光源10と光カプラ40との間に設けられ、種レーザ光10から出力する種レーザ光が入力する波長変換器75と、波長変換器75と光カプラ40との間に設けられ、波長変換器75から出力する光が入力する波長選択フィルタ76とを備える点で第1実施形態と異なる。
【0087】
波長変換器75は、第2実施形態の波長変換器71と同様の構成とされ、入力した光の尖塔値が所定値よりも大きい場合には波長変換し、尖塔値が所定値よりもり小さい場合には波長変換しな点において第2実施形態の波長変換器71と共通するが、第2実施形態の波長変換器71が波長変換する光よりも尖塔値が小さな光でも波長変換するように設定される点において、第2実施形態の波長変換器71と異なる。具体的には、予備励起状態において、種レーザ光源10から尖塔値の低い種レーザ光が出力する場合において、波長変換器75は、種レーザ光の波長を変換しない。そして、出力状態において所定の強度以上の種レーザ光が入力すると、誘導ラマン散乱等により波長変換器75に入力した種レーザ光をより長波長の波長の光に変換する。このため種レーザ光源10から所定の尖塔値よりも高い尖塔値を有する種レーザ光が出力されると、波長変換器75からは、種レーザ光よりも長波長の種レーザ光が出力される。
【0088】
波長選択フィルタ76は、第2実施形態の波長選択フィルタ73と同様の構成とされ、種レーザ光源10から出力される種レーザ光が波長変換器75を介して入力する場合、波長変換器75において波長変換されて入力するレーザ光を透過し、波長変換器75において波長変換されずに入力するレーザ光の透過が抑制される。従って、種レーザ光源から尖塔値の高い種レーザ光が出力されると、波長変換器75で波長変換されるので、波長選択フィルタ76は種レーザ光を透過する。一方、種レーザ光10から尖塔値の小さい種レーザ光が出力され、波長変換器75においてレーザ光が波長変換されない場合、波長選択フィルタ76に入力する種レーザ光は、波長選択フィルタ76において透過が抑制される。なお、予備励起光の強度および一定の時間Tは、第1の実施形態と同様に設定される。
【0089】
本実施形態におけるファイバレーザ装置130の動作は、
図3における「種レーザ光源からの種レーザ光」を「波長選択フィルタ76からの種レーザ光」と読み替えれば良い。つまり、本実施形態におけるファイバレーザ装置130においては、予備励起状態において、種レーザ光源10から種レーザ光が出力されなくても良く、種レーザ光源10から波長変換器75で波長変換されない程度の尖塔値を有する種レーザ光が出力されても良い。これらの場合、上述のように波長選択フィルタ76から種レーザ光が出力されないため、
図3に示すように、予備励起状態において、増幅用光ファイバ30の希土類元素の励起状態が徐々に高くされる。そして、出力状態においては、種レーザ光源10から尖塔値の高い種レーザ光が出力される。従って、種レーザ光は、波長変換器75において波長変換され、波長選択フィルタ76を透過する。こうして増幅用光ファイバ30に種レーザ光が入力して、増幅用光ファイバ30において種レーザ光が増幅されて、出力部50から増幅された種レーザ光が出力光として出力する。例えば、予備励起状態において、種レーザ光源10から出力する種レーザ光は、連続光とされ、出力状態における種レーザ光はパルス光とされる。この場合、一般に、パルス光は連続光よりも尖塔値が高いため、
図2に示すAOM14の動作のみを制御すれば良く、動作の制御を簡易にすることができる。
【0090】
以上、本発明について、第1から第4実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0091】
例えば、第1実施形態において、予備励起状態では、制御部60は、種レーザ光源10からレーザ光が出力されないように制御するものとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、予備励起状態において、制御部60は、種レーザ光源10から尖塔値が小さい種レーザ光が出力されるように制御しても良い。このように構成することで、予備励起状態において、増幅用光ファイバ30に種レーザ光が入力されるため、励起光による希土類元素の励起と種レーザ光による希土類元素の緩和とのバランスを取ることができる。従って、ファイバレーザ装置の要求仕様に応じて、種レーザ光強度、予備励起状態における励起光強度および前記一定期間を、予備励起状態においてファイバレーザ装置の共振器の利得が正とならない範囲で最適化設定することができる。これにより、ファイバレーザ装置100が意図しない発振を起こしてしまうことが抑制でき、予備励起状態において、尖塔値の高い不要な光が出力されることをより抑制することができる。
【0092】
この場合、予備励起状態で励起光と尖塔値が小さい種レーザ光が増幅用光ファイバ30に入力されるため、増幅用光ファイバ30からは、尖塔値が小さい種レーザ光が増幅されたレーザ光が出力される。しかし、増幅用光ファイバ30に入力される尖塔値が小さい種レーザ光の強度は非常に弱いため、増幅用光ファイバ30から出力されるレーザ光も弱く、ファイバレーザ装置100の用途によっては問題とはならない。
【0093】
また、第1から第4実施形態において、種レーザ光源10は、ファブリペロー型のレーザ出力装置が用いられたが、ファイバリング型のレーザ出力装置でも良い。さらに出力状態において、種レーザ光源10から出力される種レーザ光は、パルス光とされたが、連続光でも良い。
【0094】
また、第1から第4実施形態において、予備励起状態において、励起光源20から出力される励起光の強度は、出力状態において励起光源20から出力される励起光よりも弱い強度とされたが、本発明はこれに限らない。予備励起状態において励起光源20から出力される励起光と、出力状態において励起光源20から出力される励起光とが、同じ強度の励起光であってもよい。この場合、予備励起状態と出力状態とで、励起光源20を同じ状態とすればよいため、制御部の負荷を軽くすることができる。
【0095】
さらに、増幅用光ファイバ30は、レーザ光をシングルモード光として伝播するものとしたが、本発明はこれに限らず、例えば数モードの光を伝播できる構成であっても良い。
【0096】
また、命令部65は、出力命令を制御部60に入力する構成であればよく、出力命令がファイバレーザ装置の外部において生成され、命令部65を介して、制御部60に入力されるものであっても良い。
【0097】
さらに、上述の実施形態において、命令部65は、レーザ光を出力させようとする期間、制御部60に出力命令を入力し続け、レーザ光の出力を停止させようとする時点において、命令部65から制御部60へ出力命令の入力を停止した。そして、この命令部65から制御部60へ出力命令の入力の停止が、命令部65から制御部60への出力停止命令の入力とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、レーザ光を出力させようとする時刻において、命令部65から出力命令としてのパルス信号を制御部60に入力し、さらに、レーザ光の出力を停止させようとする時刻において、命令部65から出力停止命令としてのパルス信号を制御部60に入力しても良い。
【0098】
さらに、第1から第4実施形態において、予備励起状態における励起光強度を所定のものとしたが、予備励起状態における増幅用光ファイバ30の希土類元素の励起状態をモニタして、所定の励起状態となるように予備励起状態における励起光強度を制御してもよい。増幅用光ファイバ30の希土類元素の励起状態をモニタは、たとえば、増幅用光ファイバ30からのASE光強度をフォトダイオード(PD)等で受光することにより励起光強度の制御を行うことができる。
【0099】
また、第2実施形態において、第4実施形態と同様の波長変革75及び波長選択フィルタ76を第4実施形態と同様に設けても良い。