特許第5662785号(P5662785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662785
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20150115BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   B60C11/00 H
   B60C11/03 100A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-278174(P2010-278174)
(22)【出願日】2010年12月14日
(65)【公開番号】特開2012-126211(P2012-126211A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年7月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏彦
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−090944(JP,A)
【文献】 特開2010−247759(JP,A)
【文献】 特開昭63−159110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド表面に、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、前記周方向溝により区画された陸部と、一端が前記周方向溝側に開口し、他端が前記陸部内で終端する複数本のラグ溝とが設けられた空気入りタイヤにおいて、
前記陸部は、タイヤ周方向に連続するリブ状部と前記ラグ溝により区画された翼部とを有し、
前記陸部の表面に、隣り合う前記ラグ溝の終端部どうしを結ぶラインに沿って、複数の小穴が形成されており、
前記複数の小穴の体積は、前記終端部に近いほど大きい空気入りタイヤ。
【請求項2】
小穴の直径は、0.5〜3.0mm、小穴の深さは、前記周方向溝の深さの0.1〜0.8倍、小穴どうしの間隔は、前記直径の1.5〜5倍である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド表面に、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、前記周方向溝により区画された陸部と、一端が前記周方向溝側に開口し、他端が前記陸部内で終端する複数本のラグ溝とが設けられた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのトレッドパターンとして、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、周方向溝により区画された陸部と、一端が周方向溝側に開口し、他端が陸部内で終端する複数本のラグ溝とが設けられ、陸部がタイヤ周方向に連続するリブ状部とラグ溝により区画された翼部とを有するように構成されたトレッドパターンも多く用いられている。
【0003】
特許文献1には、陸部が上記のようなリブ状部と翼部とを有する空気入りタイヤであって、翼部のタイヤ接地面側に多数の小穴を設けたことを特徴とする空気入りタイヤが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の空気入りタイヤは、翼部のタイヤ接地面側に小穴を設けることにより翼部の剛性が低下し、横方向の力に弱くなり操縦安定性が悪化することが分かった。また、翼部の剛性が低下すると、リブ状部と翼部との剛性差が大きくなり、リブ状部が翼部に比べ優先的に摩耗する偏摩耗が問題となることが分かった。さらに、陸部にタイヤ周方向の力が働いた際、翼部はリブ状部に比べて前後に変形し易いため、ラグ溝の終端部を基点に曲げモーメントが発生し、ラグ溝の終端部で歪みが最大となる。この歪みが偏摩耗の原因ともなっていることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−90944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操縦安定性を維持しつつ、耐偏摩耗性を向上させた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る空気入りタイヤは、
トレッド表面に、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、前記周方向溝により区画された陸部と、一端が前記周方向溝側に開口し、他端が前記陸部内で終端する複数本のラグ溝とが設けられた空気入りタイヤにおいて、
前記陸部は、タイヤ周方向に連続するリブ状部と前記ラグ溝により区画された翼部とを有し、
前記陸部の表面に、隣り合う前記ラグ溝の終端部どうしを結ぶラインに沿って、複数の小穴を形成したことを特徴とする。
【0008】
この構成による空気入りタイヤであれば、陸部の表面に、隣り合うラグ溝の終端部どうしを結ぶラインに沿って、複数の小穴を形成することで、ラグ溝の終端部における圧縮、引張による歪みを低減することができ、歪みによる偏摩耗を抑制できる。また、翼部には小穴を形成しないため、翼部の剛性が低下せず、操縦安定性が悪化することはない。さらに、翼部の剛性が低下しないため、リブ状部と翼部との剛性差が大きくならず、両者の剛性差に起因する偏摩耗を抑制できる。その結果、本発明によれば、操縦安定性を維持しつつ、耐偏摩耗性を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記複数の小穴は、前記ラインを基準として、前記リブ状部側に5mm、前記翼部側に3mmの幅を有する帯状領域に形成されていることが好ましい。小穴を隣り合うラグ溝の終端部どうしを結ぶラインの近くに形成することで、リブ状部と翼部との剛性差を小さく保って剛性差に起因する偏摩耗を抑制し、かつ、終端部の歪みによる偏摩耗も効果的に抑制できる。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記複数の小穴の体積は、前記終端部に近いほど大きいことが好ましい。最も歪みが大きくなるラグ溝の終端部の近くに、体積の大きい小穴を形成することで、陸部全体の歪みが均一化され、耐偏摩耗性の向上に有利となる。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、小穴の直径は、0.5〜3.0mm、小穴の深さは、前記周方向溝の深さの0.1〜0.8倍、小穴どうしの間隔は、前記直径の1.5〜5倍であることが好ましい。複数の小穴をかかる直径、深さ、間隔で形成することにより、空気入りタイヤの操縦安定性を維持しつつ、耐偏摩耗性を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンを示す図
図2図1のトレッドパターンの部分拡大図
図3】陸部の形状を示す斜視図
図4】別実施形態に係る陸部の形状および小穴の配置を示す図
図5】別実施形態に係る小穴の形状および配置を示す図
図6】比較例に係る陸部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンを示す図である。図2は、図1のトレッドパターンの部分拡大図である。図3は、陸部の形状を示す斜視図である。図1〜3において、WDはタイヤ幅方向を示し、CDはタイヤ周方向を示す。また、CLはタイヤ赤道線を示す。
【0014】
本実施形態に係る空気入りタイヤは、トレッド表面に、タイヤ周方向CDに延びる周方向溝1a〜1dと、周方向溝1a〜1dにより区画された陸部2〜4と、一端が周方向溝1a,1d側に開口し、他端が陸部3内で終端する複数本のラグ溝6とが設けられている。
【0015】
本実施形態では、周方向溝1a〜1dが4本設けられている。周方向溝の本数は4本に限定されないが、周方向溝は少なくとも3本以上設けられるのが好ましい。
【0016】
周方向溝1bと周方向溝1cとにより区画された陸部2は、タイヤ幅方向WDのほぼ中央に位置している。また、2つの陸部3は、陸部2の両側にそれぞれ位置し、周方向溝1aと周方向溝1b、周方向溝1cと周方向溝1dとによりそれぞれ区画されている。また、2つの陸部4は、陸部3のタイヤ幅方向WD外側にそれぞれ位置し、周方向溝1a,1dによりそれぞれ区画されている。なお、本実施形態の陸部4は、周方向溝1a〜1dのうち、タイヤ幅方向WDの最も外側に位置する周方向溝1a,1dからそれぞれタイヤ幅方向WD外側に延在する横溝5により更に区画され、タイヤ周方向CDに沿って配置されたブロック状となっている。
【0017】
陸部3は、一端が周方向溝1a,1d側に開口し、他端が陸部3内で終端する複数本のラグ溝6を備えている。これにより、陸部3は、タイヤ周方向CDに連続するリブ状部31とラグ溝6により区画された翼部32とを有する。なお、本実施形態のラグ溝6は、タイヤ幅方向WDに対して傾斜しているが、必ずしも傾斜する必要はない。
【0018】
陸部3の表面には、隣り合うラグ溝6の終端部6aどうしを結ぶライン61に沿って、複数の小穴7を形成している。ここで、小穴7の中心は、ライン61上に正確に配置される必要はなく、ライン61の左右にずれていてもよい。また、小穴7の一部が必ずしもライン61に接さなくともよい。ただし、小穴7は、少なくともライン61と平行な直線上に一列に配置するのが好ましい。
【0019】
複数の小穴7は、ライン61を基準として、リブ状部31側に5mm、翼部32側に3mmの幅を有する帯状領域62に形成されるのが好ましく、ライン61を基準として、リブ状部31側に3mm、翼部32側に2mmの幅を有する帯状領域62に形成されるのがより好ましい。小穴7は、陸部3の帯状領域62内に形成され、帯状領域62以外の領域には形成されない。
【0020】
本実施形態では、小穴7をライン61に沿って4個形成した例を示しているが、小穴7の数は、4個より少なくてもよく、また、4個より多くてもよい。ただし、小穴7は、隣り合うラグ溝6の終端部6aの近くに少なくとも1個ずつ形成される。ラグ溝6の終端部6aから直近の小穴7までの間隔は、0.5〜9mmが好ましい。
【0021】
小穴7の形状は、図3のような円柱状となっている。ただし、小穴7の断面は、図のような円形に限定されず、楕円形、もしくは角を丸めた多角形などでもよい。
【0022】
小穴7の直径dは、0.5〜3.0mmが好ましく、1.5〜3mmがより好ましい。また、小穴7の深さD1は、周方向溝1a〜1dの深さをDとすると、Dの0.1〜0.8倍が好ましく、0.3〜0.8倍がより好ましい。小穴7どうしの間隔D2は、小穴7の直径dの1.5〜5倍が好ましく、2〜4倍がより好ましい。なお、間隔D2は、隣り合う小穴7の中心間の距離とする。
【0023】
<別実施形態>
陸部3の形状および小穴7の配置は、上記の実施形態のものに限定されない。例えば、ラグ溝6の形状はすべて同一である必要はなく、図4(a)に示すように複数の長さのラグ溝6を形成してもよい。この場合、隣り合うラグ溝6の終端部6aどうしを結ぶライン61は、タイヤ周方向CDに対して傾斜している。また、図4(b)に示すように、隣り合うラグ溝6の終端部6aどうしが溝で繋がれている場合には、溝で繋がれていないライン61に沿ってのみ小穴7を形成すればよい。また、ラグ溝6は、図4(c)のように、陸部3のタイヤ幅方向WDの両側に配置されるようにしてもよい。
【0024】
また、複数の小穴7の形状は、すべて同じである必要はない。ラグ溝6の終端部6a付近は、最も歪みが大きくなるため、複数の小穴7の体積は、終端部6aに近いほど大きいことが好ましい。具体的には、小穴7の体積は、直径d、深さD1を変更することで調整することができる。図5(a)は、小穴7の深さD1は一定とし、小穴7の直径dを終端部6aに近いほど大きくした例を示す。図5(b)は、小穴7の直径dは一定とし、小穴7の深さD1を終端部6aに近いほど深くした例を示す。この図では、黒塗りの円で示す小穴7の深さD1が、白抜きの円で示す小穴7の深さD1より深くなっている。なお、小穴7の直径dを終端部6aに近いほど大きくし、かつ、小穴7の深さD1を終端部6aに近いほど深くするようにしてもよい。
【0025】
また、複数の小穴7は、ライン61に沿って形成されるが、小穴7の数は少なくとも2個形成される。図5(c)は、小穴7を、隣り合うラグ溝6の終端部6aの近くに1個ずつ形成した例を示す。
【0026】
また、小穴7どうしの間隔D2は、一定である必要はなく、ラグ溝6の終端部6aに近いほど小さくすることもできる。図5(d)は、小穴7の形状は同一とし、小穴7どうしの間隔D2を、終端部6aに近いほど小さくした例を示す。これにより、形成される小穴7の密度が終端部6aに近いほど高くなり、最も歪みが大きくなるラグ溝6の終端部6aの近くの歪みを効果的に減少させることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。各性能評価に供したテストタイヤは、タイヤサイズが225/45R17、使用リムが17×7.5JJ、空気圧が220kPaである。下記の実施例などの各タイヤを2500ccの乗用車に装着し、操縦安定性及び耐偏摩耗性を評価した。タイヤの各性能評価は、次のようにして行った。
【0028】
(1)操縦安定性
乾燥路及び湿潤路で2名のドライバーによる官能試験を行い、それぞれの平均値を指数評価した。なお、評価は比較例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど操縦安定性に優れていることを示す。
【0029】
(2)耐偏摩耗性
一般路を12000km走行後に、タイヤの最も摩耗した部位の摩耗量を最も摩耗していない部位の摩耗量で割った値を求めた。この数値が1.0に近いほど耐偏摩耗性に優れていることを示す。
【0030】
実施例1
陸部3の表面に、隣り合うラグ溝6の終端部6aどうしを結ぶライン61に沿って、複数の小穴7を形成した空気入りタイヤを製造した。陸部3の形状、および小穴7の配置は、図2のようにした。陸部3の形状は、リブ状部31のタイヤ幅方向WDの幅を8mm、翼部32のタイヤ幅方向WDの幅を16mm、ライン61の長さを23mmとした。小穴7の直径dは2mm、深さD1は4mm、小穴7どうしの間隔D2は4.6mmとした。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0031】
実施例2
小穴7の直径dは一定とし、深さD1を、ラグ溝6の終端部6aに近いほど深くしたこと以外は、実施例1と同じとした。図5(b)において、白抜きの円で示される小穴7の深さD1を3mm、黒塗りの円で示される小穴7の深さD1を5mmとした。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0032】
実施例3
小穴7の配置を図5(c)のようにしたこと以外は、実施例1と同じとした。小穴7の直径dは2mm、深さD1は4mm、ラグ溝6の終端部6aから直近の小穴7までの間隔は4.6mmとした。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0033】
比較例1
陸部3の形状は実施例1と同じとしたが、陸部3の表面に小穴7を形成しなかった。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0034】
比較例2
陸部3の表面に小穴7を形成する代わりに、図6(a)のように隣り合うラグ溝6の終端部6aどうしを結ぶライン61に沿って細溝8を形成した。細溝8は、幅を2mm、深さを4mmとした。その他の形状等は実施例1と同じとした。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0035】
比較例3
陸部3の形状は実施例1と同じとしたが、図6(b)のように小穴7を翼部32の中央辺りに形成した。具体的には、小穴7を、隣り合うラグ溝6の終端部6aどうしを結ぶライン61を基準として、リブ状部31側に5mm、翼部32側に3mmの幅を有する帯状領域62の領域外に形成した。その他の形状等は実施例1と同じとした。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すとおり、実施例1〜3に係る空気入りタイヤでは、比較例1に係る空気入りタイヤに比べて、耐偏摩耗性が向上することがわかる。また、実施例1〜3に係る空気入りタイヤは、小穴7の形成による操縦安定性の悪化は見られない。
【0038】
小穴7の代わりに細溝8を形成した比較例2は、陸部3がリブ状部31と翼部32とに完全に分離されるため、陸部3の剛性が下がり、タイヤ幅方向WDの力に対して弱くなって操縦安定性が大きく悪化している。小穴7を翼部32の中央辺りに形成した比較例3は、翼部32の剛性が低下し、リブ状部31の剛性との剛性差が大きくなるため、耐偏摩耗性が悪化している。さらに、比較例3は、翼部32の剛性の低下による操縦安定性の悪化も見られる。
【符号の説明】
【0039】
1a〜1d 周方向溝
2〜4 陸部
5 横溝
6 ラグ溝
6a 終端部
7 小穴
8 細溝
31 リブ状部
32 翼部
61 ライン
62 帯状領域
d 小穴の直径
D1 小穴の深さ
D2 小穴の間隔
D 周方向溝の深さ
CL タイヤ赤道線
CD タイヤ周方向
WD タイヤ幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6