【文献】
Rennings, A.,Extended composite right/left-handed (E-CRLH) metamaterial and its application as quadband quarter-wavelength transmission line,Microwave Conference, 2006. APMC 2006. Asia-Pacific,2006年12月12日,pp.1405-1408
【文献】
Garcia-Garcia, J. 他,Miniaturization and optimization of planar microwave filters based on metamaterials,Microwave Conference, 2007. European,2007年10月,pp.500-503
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
LR、CL、LL、CR、LR´、CL´、LL´、およびCR´の値は、前記フィルタ装置の入力インピーダンスおよび出力インピーダンスを一致させるように選択される、請求項1又は請求項2に記載のフィルタ装置。
前記E−CRLHユニットセルは、低周波数帯域ではローパスフィルタとして、高周波数帯域ではハイパスフィルタとして挙動するように構成され、前記ローパスフィルタの上側端と前記ハイパスフィルタの下側端との間のアイソレーションは25dB以上である、請求項1又は請求項2に記載のフィルタ装置。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】4つのユニットセルを用いている1次元CRLH MTMの伝送線路の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示した1次元CRLH MTMの伝送線路の等価回路を示す図である。
【
図3】
図1に示した1次元CRLH MTMの伝送線路の等価回路を示す別の図である。
【
図4A】
図2に示した1次元CRLH伝送線路等価回路を表す伝送線路回路を表す2ポートネットワークマトリクスを示す図である。
【
図4B】
図3に示した1次元CRLH伝送線路等価回路を表す伝送線路回路を表す2ポートネットワークマトリクスを示す図である。
【
図5】4つのユニットセルを用いている1次元CRLH MTMアンテナの一例を示す図である。
【
図6A】
図4Aに示した伝送線路の場合と同様に、1次元CRLHアンテナ等価回路を表す2ポートネットワークマトリクスを示す図である。
【
図6B】
図4Bに示した伝送線路の場合と同様に、1次元CRLHアンテナ等価回路を表す2ポートネットワークマトリクスを示す図である。
【
図7A】均衡が取れている場合の分散曲線の一例を示す図である。
【
図7B】均衡が取れていない場合の分散曲線の一例を示す図である。
【
図8】4つのユニットセルで構成されている、部分グラウンドを有する1次元CRLH MTM伝送線路の一例を示す図である。
【
図9】
図8に示した部分グラウンドを有する1次元CRLH MTM伝送線路の等価回路を示す図である。
【
図10】4つのユニットセルに基づき構成されている、部分グラウンドを有する1次元CRLH MTMアンテナの一例を示す図である。
【
図11】4つのユニットセルで構成されている、部分グラウンドを有する1次元CRLH MTM伝送線路の別の例を示す図である。
【
図12】
図11に示すような部分グラウンドを持つ1次元CRLH MTM伝送線路の等価回路を示す図である。
【
図13】C−CRLHおよびE−CRLHの分析ステップ、設計ステップ、および製造ステップを示す図である。
【
図14】WWAN/WLANダイプレクサを示す機能ブロック図である。
【
図15A】2.2GHzの近傍ではっきりと除去するローパスフィルタのダイプレクサフィルタを説明するための図である。
【
図15B】2.2GHzの近傍ではっきりと除去するハイパスフィルタのダイプレクサフィルタを説明するための図である。
【
図16A】従来型の対称CRLHユニットセルの等価回路を示す図である。
【
図16B】デュアル型の対称CRLHユニットセルの等価回路を示す図である。
【
図16C】進化型の対称CRLHユニットセルの等価回路を示す図である。
【
図17】汎用E−CRLH(GE−CRLH)ユニットの4層全印刷設計を示す3次元図である。
【
図18】
図25に示す高QE−CRLHフィルタの等価回路を示す図である。
【
図19】表3のパラメータの回路応答を示す図である。
【
図20A】
図18Aおよび
図18Bで説明したLPフィルタおよび表3に記載したパラメータを持つ1セルE−CRLHを用いたフィルタ設計を示す図である。
【
図21A】LRLPover2=9.33nH/2且つCRLP=1.9pFである3セルLPフィルタ回路を示す図である。
【
図22】E−CRLHユニットセルの伝播定数βと周波数との関係の一例を示す図である。
【
図23】依存パラメータを求め、CRLH構造を構築するためのフローチャートを示す図である。
【
図24】
図25に示すE−CRLH回路のS11およびS12のシミュレーション結果を示す図である。
【
図25】ディスクリート素子を用いて構築された高Qフィルタの写真である。
【
図26】
図25に示したフィルタのS11およびS12の予備段階の結果である。
【
図28A】全印刷型のHFSS設計の場合の、
図17および
図27Aから
図27Eに示すE−CRLHをベースとする高QフィルタのS11およびS12を示す図である。
【
図28B】アンソフトデザイナを用いた対応するE−CRLH回路の場合の、
図17および
図27Aから
図27Eに示すE−CRLHをベースとする高QフィルタのS11およびS12を示す図である。
【
図29A】下側端または上側端がシャープな広帯域フィルタについて、15オームで一致させられた広帯域インピーダンスを示す図である。
【
図29B】下側端または上側端がシャープな広帯域フィルタの回路シミュレーション応答を示す図である。
【
図30】2つの狭帯域バンドパス領域を示す図であり、上側端または下側端がシャープな狭帯域フィルタのために高帯域側の領域は25オームで一致させられている。
【
図31】上側端または下側端がシャープな狭帯域フィルタの回路シミュレーション応答を示す図である。
【
図32】2セル従来型右手/左手系複合(C−CRLH)伝送線路(TL)を示す図である。
【
図33】
図32に示す内部回路を持つ2ポート伝送線路ネットワークを示す図である。
【
図34A】2セル等方性均衡伝送線路フィルタの回路を示す図である。
【
図34B】2セル等方性均衡伝送線路フィルタの伝送S12およびリターンロスS11/S22を示す図である。
【
図35A】4つのメタライゼーション層からなる構造を持つ全印刷E−CRLH構造の一例を示す図であり、2つの信号ポートおよび2つの共平面導波路を有するメタライゼーション層1を示す。
【
図35B】2つの上側金属−絶縁層−金属(MIT)キャパシタ(MIM1およびMIM2)および層間ビア11、ビア12、ビア21およびビア22を有するメタライゼーション層2を示す図である。
【
図35C】2つのセルから成る主要構造を有するメタライゼーション層3を示す図である。
【
図35D】3つの下側MIMキャパシタMIM1、MIM2、およびMIM12を有するメタライゼーション層4を示す図である。
【
図35E】全面下側グラウンド電極であるメタライゼーション層5を示す図である。
【
図37A】入力インピーダンスを20オームから50オームへと変成し、900MHzから6GHzまでの帯域幅をカバーしており、インサーションロスを持つ、均衡異方性の事例のフィルタを示す図である。
【
図37B】均衡異方性の事例のパラメータの回路応答を示す図である。
【
図38A】入力インピーダンスを50オームから5オームへと変成し、1GHzから1.65GHzの帯域幅の範囲をカバーし、インサーションロスが略ゼロである、不均衡異方性の事例のフィルタを示す図である。
【
図38B】不均衡異方性の事例のパラメータの回路応答を示す図である。
【
図39】WAN/LANダイプレクサを示す機能ブロック図である。
【
図40A】1つのE−CRLHユニットセルと3セルローパスフィルタとを用いている低帯域バンドパスフィルタを示す図であって、素子用のパッドを備える回路レイアウトを示す図である。
【
図40B】1つのE−CRLHユニットセルと3セルローパスフィルタとを用いている低帯域バンドパスフィルタを示す図であって、予備的に製造された試作品の写真である。
【
図41A】低帯域バンドパスフィルタの伝送(S12)とリターンロス(S11/S22)とを示す図であり、
図40Aに基づいて得られるシミュレーション結果を示す図である。
【
図41B】低帯域バンドパスフィルタの伝送(S12)とリターンロス(S11/S22)とを示す図であり、
図40Bに基づいて得られる測定結果である。
【
図42】1つのE−CRLHユニットセルと3セルハイパスフィルタとを用いている高帯域バンドパスフィルタを示す図である。
【
図43】
図42に示す低帯域バンドパスフィルタの伝送(S12)とリターンロス(S11/S22)のシミュレーション結果を示す図である。
【
図44】
図40Aおよび40B、
図41Aおよび
図41Bにそれぞれ示すローパスバンドパスフィルタおよびハイパス・バンドパスフィルタを組み合わせた3ポートダイプレクサを示す図である。
【
図45】
図44に示す高帯域低帯域ダイプレクサのポート2とポート3との間の結合および伝送S12およびS13のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
メタマテリアル(MTM)構造は、アンテナ、伝送線路、フィルタ等の電気素子および電気デバイスを構成するべく利用することができ、小型化および高性能化等多くの点で技術を進歩させることができる。MTMアンテナ構造は、さまざまな回路プラットフォーム上に製造することができ、例えば、従来のFR−4型プリント配線基板(PCB)またはフレキシブルプリント配線(FPC)基板に製造することができる。その他の製造技術の例を挙げると、薄膜製造技術、システム・オン・チップ(SOC)技術、低温同時焼成セラミックス(LTCC)技術、およびモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)技術等がある。
【0017】
CRLHメタマテリアル構造は、応用例を1つ挙げると、現在のフィルタ設計に直接応用され得る。一般的にフィルタ設計によって、通信リンクは、周波数帯域から、通信に利用される信号以外の信号をフィルタリングで除去することができる。CRLH構造を利用した現在のフィルタ設計およびフィルタ技術は、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、またはインピーダンス変成型フィルタであって、これらのうちいくつかは、「ジー・マタエイ、エル・ヤング、イー・エヌ・ティー・ジョーンズ(G.Mattaei、L.Young、E.N.T.Jones)、「マイクロ波フィルタ、インピーダンス整合ネットワーク、および結合構造」、アーテック・ハウス・パブリッシャー(Artech House Publisher)、1980年」に記載されている。
【0018】
ハイパスフィルタは、上述した文献に記載されているように純粋な左手系ユニットセルをベースとしている。別のフィルタ設計の例を挙げると、バンドパスフィルタおよびインピーダンス変成型フィルタは、CRLHユニットセルをベースとしている。しかし、上述した文献に記載されているように、実際にマイクロ波構造においてCRLH型のフィルタ設計を利用することは難しく、代わりに、直列インダクタンスおよびインピーダンスインバータを利用する。上述した文献に記載されているフィルタ設計方法の例をさらに挙げると、フィルタ通過帯域に現れるリップルのためにフィルタのインサーションロスが大きくなるシャープなフィルタを形成するためには、従来型のCRLH(C−CRLH)のようなユニットセルが多数必要となる。ユニットセルパラメータおよびユニットセルの数は、さまざまなユニットセルについて生成されているテーブルに記載されている係数に基づいて求められる。さらに別のフィルタ設計方法も利用可能であるが、概して最適な結果を得るべくブルートフォース(総当り)方式を利用する。
【0019】
その他のCRLH構造、例えば、進化型の右手/左手系複合CRLH(E−CRLH)構造は、「レニングス(Rennings)他、「拡張型右手/左手系複合(E−CRLH)メタマテリアルおよび4帯域4分の1波長伝送線路への応用」、アジア太平洋マイクロ波会議議事録、2006年」に記載されている。当該文献は、参照により本願の明細書の一部として組み込まれる。
【0020】
上述したフィルタ設計方法を含む従来のフィルタ設計方法は、有用ではあるものの、複雑で、利用するパラメータの数が多過ぎて、必要な範囲が広く、目標とする周波数帯域に一致させることが難しい。
【0021】
現在のフィルタ設計を実用化する上では、ハンドセットおよびクライアントカード等の小型無線通信デバイスのRFフロントエンドモジュール(FEM)を簡略化できないという問題点がある。現在のFEM設計では、例えば、マイクロ波回路構造の代わりに表面弾性波(SAW)ベースのフィルタを用いており、RFICパッケージまたはFEM基板への集積化が難しく非現実的である。
【0022】
本願では、MTM構造を利用するフィルタ設計およびフィルタの例および実施例を開示している。フィルタ用のMTM構造は、2つの異なる周波数帯域、つまり、低周波数帯域および高周波数帯域を生成するように構成され得るMTMアンテナ構造およびMTM伝送線路構造から形成することができる。低周波数帯域は、少なくとも1つの左手系(LH)モード共振を含み、高周波数帯域は、少なくとも1つの右手系(RH)モード共振を含む。本願に記載する実施例の一部は、携帯電話、ハンドヘルドデバイス(例えば、ブラックベリー)等の携帯機器での用途に関する。携帯機器のアンテナは、利用可能な空間が制限されている中、適切な性能を実現しつつ、複数の周波数帯域をサポートすべきである。本願に開示されているMTMアンテナ設計は、サイズが小型化されている点、1つのアンテナから複数の共振が得られている点、ユーザの相互作用によって共振がシフトせず、共振が安定している点、そして、物理的なサイズには無関係に共振周波数が決まる点等において、従来のアンテナと比較した場合に、利点を有するが、本願に開示されているMTMアンテナ設計の利点はこれらに限定されない。携帯電話および携帯機器が利用する周波数帯域は、CDMA帯域およびGSM帯域という2つの帯域を有する携帯電話帯域(824−960MHz)と、PCS帯域、DCS帯域およびWCDMA帯域という3つの帯域を有するPCS/DCS帯域(1710−2170MHz)とから構成されている。4帯域アンテナの場合は、携帯電話帯域のCDMA帯域およびGSM帯域のうち一方と、PCS/DCS帯域の3つの帯域全てとをカバーする。5帯域アンテナの場合は、5つの帯域(携帯電話帯域の2つの帯域およびPCS/DCS帯域の3つの帯域)全てをカバーする。
【0023】
MTMアンテナ構造の例は、米国特許出願第11/741,674号(発明の名称:「メタマテリアル構造を利用したアンテナ、デバイス、およびシステム」、出願日:2007年4月27日)および米国特許出願第11/844,982号(発明の名称:「メタマテリアル構造を利用したアンテナ」、出願日:2007年8月24日)に記載されている。両特許出願の内容は、参照により本願の明細書の一部として組み込まれる。
【0024】
MTMアンテナまたはMTM伝送線路(TL)は、1以上のMTMユニットセルを備えるMTM構造である。各MTMユニットセルの等価回路は、右手系シリーズインダクタンス(LR)、右手系シャントキャパシタンス(CR)、左手系シリーズキャパシタンス(CL)、および左手系シャントインダクタンス(LL)を含む。LLおよびCLは、ユニットセルに対して左手系の特性を与えるべく、構成および接続されている。このような種類のCRLH伝送線路またはCRLHアンテナは、分布回路素子、集中回路素子、または両者の組み合わせを利用して実現され得る。各ユニットセルの大きさは、CRLH伝送線路またはCRLHアンテナを通過させる電磁波信号の波長をλとした場合に、約λ/4未満である。
【0025】
純粋なLHメタマテリアルの場合、3つのベクトル(E、H、β)について左手の法則に従い、位相速度方向は、信号エネルギー伝播方向とは逆になる。LF物質の誘電率εおよび透磁率μは共に、負となる。CRLHメタマテリアルは、動作方式または動作周波数に応じて、電磁波伝播モードが左手系および右手系の性質を示し得る。ある状況下では、CRLHメタマテリアルは、信号の波数ベクトルがゼロの場合、群速度が非ゼロ値を取り得る。これは、左手系モードおよび右手系モードが均衡を保っている場合に見られる。左手系モードおよび右手系モードが不均衡な場合には、電磁波の伝播が禁止されるバンドギャップが発生する。均衡が保たれている場合、分散曲線には、左手系モードと右手系モードとの間で、伝播定数β(ω
o)=0の転移点において、不連続箇所が見られない。この場合、誘導される波長は無限大である。つまり以下の式で表される。
一方、群速度は正の値を取る。
この状態は、LH領域において伝送線路を実現する場合のゼロ次モードm=0に対応する。CRHL構造は、βが負となる放物線領域に従った分散関係を持つ良好な低周波数スペクトルをサポートしている。このために、近距離場の照射パターンを操作および制御するという独特の機能を持つ、電磁的には大きいが、物理的には小さいデバイスを構築することが可能となる。このような伝送線路が0次共振器(ZOR)として利用される場合、共振器全体にわたって振幅および位相の共振を一定とすることができる。ZORモードは、MTMベースのパワーコンバイナおよびパワースプリッタまたはパワーデバイダ、指向性カプラ、整合ネットワーク、および漏れ波アンテナを構築する際に利用され得る。
【0026】
RH伝送線路型共振器の場合、共振周波数は、lが伝送線路の長さとすると、電気的長さθ
m=β
ml=mπ(m=1,2,3・・・)に対応する。伝送線路の長さは、共振周波数のスペクトルを広く且つ低くするべく、長く設定しなければならない。純粋なLH物質の動作周波数は、低周波数側にある。CRLHのMTM構造は、RH物質またはLH物質とは非常に異なり、RFスペクトル範囲の高スペクトル領域および低スペクトル領域の両方に到達することを目的として利用され得る。CRLHの場合、lがCRLHの伝送線路の長さで、パラメータがm=0,±1、±2、±3・・・±∞とすると、θ
m=β
ml=mπとなる。
【0027】
図1は、4つのユニットセルを用いている1次元CRLH MTMの伝送線路の一例を示す図である。1つのユニットセルは、セルパッチおよびビアを有しており、MTM構造を構築するべく繰り返し設けられる最小単位である。4つのセルパッチは、基板上に載置されており、それぞれの中央に設けられているビアはグラウンド平面に接続されている。
【0028】
図2は、
図1に示した1次元CRLH MTMの伝送線路の等価回路網を示す図である。ZLin´およびZLout´はそれぞれ、伝送線路の入力負荷インピーダンスおよび伝送線路の出力負荷インピーダンスに対応しており、各端部における伝送線路接合のために発生する。これは、印刷二層構造の一例である。LRは、誘電基板上のセルパッチによるものであり、CRはセルパッチとグラウンド平面との間に設けられている誘電基板によるものである。CLは2つの隣接するセルパッチが存在することによるものであり、ビアによってLLが発生している。
【0029】
各ユニットセルには、シリーズ(SE)インピーダンスZおよびシャント(SH)アドミタンスYに対応する2つの共振ω
SEおよびω
SHがある。
図2では、Z/2ブロックはLR/2および2CLの直列接続を含み、YブロックはLLおよびCRの並列接続を含む。これらのパラメータの関係は、以下の式によって表される。
【数1】
【0030】
図1で入力端/出力端に設けられている2つのユニットセルは、CLは2つの隣接するセルパッチの間のキャパシタンスを表しており、これらの入力端/出力端には存在しないので、CLを含んでいない。端に設けられるユニットセルにCL部分がないので、周波数ω
SEで共振が発生しない。このため、ω
SHのみがm=0の共振周波数のように見える。
【0031】
計算分析を簡略化するべく、ZLin´およびZLout´シリーズキャパシタの一部を欠落しているCL部分を補償するべく含め、
図3に示すように、残りの入力負荷インピーダンスおよび出力負荷インピーダンスをZLinおよびZLoutと記載する。この条件下では、
図3に示すような2つのシリーズZ/2ブロックおよび1つのシャントYブロックによって表されるように、全てのユニットセルが同一パラメータを持つ。尚、Z/2ブロックはLR/2および2CLの直列接続を含み、YブロックはLLおよびCRの並列接続を含む。
【0032】
図4Aおよび
図4Bはそれぞれ、
図2および
図3に示した負荷インピーダンスを含まずに伝送線路回路を表す2ポートネットワークマトリクスを示す図である。
【0033】
図5は、4つのユニットセルを用いている1次元CRLH MTMアンテナの一例を示す図である。
図6Aは、
図5に示したアンテナ回路を表す2ポートネットワークマトリクスを示す図である。
図6Bは、全てのユニットセルを同一にすることを目的として、欠落しているCL部分を考慮するべく端部を変更した、
図5に示したアンテナ回路を表す2ポートネットワークマトリクスを示す図である。
図6Aおよび
図6Bはそれぞれ、
図4Aおよび
図4Bに示す伝送線路回路と同様である。
【0034】
図4Bに示すマトリクス表現では、以下のような関係が表されている。
【数2】
尚、
図3に示すCRLH MTM伝送線路回路は、Vin端およびVout端から見た場合、対称となるので、AN=DNである。
【0035】
図6Aおよび
図6Bにおいて、パラメータGR´およびGRは放射抵抗を表し、パラメータZT´およびZTは終端インピーダンスを表す。ZT´、ZLin´、およびZLout´はそれぞれ、以下の式で表されるように、追加の2CLからの寄与分を含む。
【数3】
【0036】
放射抵抗GRまたはGR´はアンテナを構築またはシミュレーションすることによって求めることができるので、アンテナ設計を最適化するのは難しい場合がある。このため、伝送線路方法を採用して、終端インピーダンスZTを変えて対応するアンテナをシミュレーションすることが好ましい。数1に示す関係は、2つの端部において欠落しているCL部分を反映している変更後の値AN´、BN´、およびCN´を持つ
図2に示す回路において有効である。
【0037】
周波数帯域は、n=0、±1、±2、・・±Nとした場合の伝播位相長さをnπとしてN個のCRLHセル構造を共振させることによって導き出される分散式から求めることができる。ここで、N個のCRLHセルはそれぞれ、数1においてZおよびYで表され、端部のセルではCLが欠落している
図2の構造とは異なる。このため、これら2つの構造に対応付けられる共振は異なるものと予想される。しかし、大量の計算によって、
図3に示す構造においてω
SEおよびω
SHで共に共振し、
図2に示す構造ではω
SHのみで共振するn=0を除いて、全ての共振が同じとなることが分かる。正の位相オフセット(n>0)はRH領域共振に対応し、負の位相オフセット(n<0)はLH領域共振に対応する。パラメータZおよびYを持つN個の同一のCRLHセルの分散関係は、以下の式で表される。
【数4】
式中、ZおよびYは数1で定義されており、ANは
図3のようなN個の同一のCRLHユニットセルの線形縦続から求められ、pはセルサイズである。奇数n=(2m+1)および偶数n=2mの共振はそれぞれ、AN=−1およびAN=1に対応付けられている。
図4Aおよび
図6AにおけるAN´について、n=0モードは、セルの数に関係なく、端部のセルにCLがないために、ω
0=ω
SHのみで共振し、ω
SEおよびω
SHの両方では共振しない。より高次の周波数は、以下の式で表される。尚、χの値は表1に記載するように設定する。
【数5】
【0038】
表1は、N=1、2、3および4の場合のχの値を示す。端部のセルにおいてCLが完全に設けられていようと(
図3)、または、CLがなかろうと(
図2)、より高次の共振|n|>0は同じであることに留意されたい。さらに、n=0に近い共振はχの値が小さいが(χの下限である0に近い)、より高次の共振はχの上限である4に到達する傾向がある。これは、数4に示す通りである。
【表1】
【0039】
図7Aおよび
図7Bに、周波数ωの関数として分散曲線βを示す。
図7Aおよび
図7Bはそれぞれ、ω
SE=ω
SH(均衡が取れている場合、つまりLR CL=LL CR)およびω
SE≠ω
SH(均衡が取れていない場合)に対応する。後者の場合、最小値(min)(ω
SE,ω
SH)および最大値(max)(ω
SE,ω
SH)の間に周波数ギャップがある。下限値および上限値となる周波数ω
minおよびω
maxの値は、以下に示すように、数5に示したものと同じ共振式によって決まり、χの値は上限値であるχ=4に到達する。
【数6】
【0040】
また、
図7Aおよび
図7Bには、分散曲線に沿って共振位置の例を示している。RH領域(n>0)では、pがセルサイズを表す場合に、構造サイズl=Npは、周波数が低くなるにつれて、大きくなる。LH領域では、これとは対照的に、周波数が低くなると、Npの値が小さくなり、サイズが小さくなる。分散曲線はある程度、これらの共振の位置周辺の帯域幅の指標となる。例えば、LH共振は、分散曲線が略平坦なので、帯域幅が狭い。RH領域では、分散曲線の勾配が大きくなるので、帯域幅がより広くなる。このため、広帯域を実現するための第1の条件、第1BB条件は、以下のように表される。
【数7】
χは数4で与えられ、ω
Rは数1で定められる。数4に示す分散関係は、|AN|=1の場合に共振が発生することを示しており、数7に示す第1BB条件(条件1)において分母が0になることにある。念のため記すと、ANはN個の同一のユニットセル(
図4Bおよび
図6Bを参照のこと)の第1の伝送マトリクス入力となる。計算から分かるように、条件1は、確かにNとは無関係であり、数7の第2の式によって決まる。分散曲線の傾斜および最終的には可能な帯域幅を決めるのは、分子、および、表1に示しているような、共振におけるχの値である。目標とする構造は、大きさが最大でNp=λ/40で、帯域幅は4%以上である。セルサイズpが小さい構造について、数7は、ω
Rの値が大きい場合に条件1が満たされており、つまり、CR値およびLR値が低い場合に満たされることを示している。これは、n<0の場合に、共振は、表1に示すようにχの値が略4になると、別の言い方をすると(1−χ/4→0)の場合に、発生するためである。
【0041】
前述したように、分散曲線の勾配が急になると、次に、適切な整合を特定する。理想的な整合インピーダンスは固定値を持っており、多大な整合ネットワークフットプリントは必要ない場合がある。ここで、「整合インピーダンス」とは、給電ラインを指し、アンテナのような片側給電の場合には終端を指す。入力/出力整合ネットワークを分析するべく、
図4Bに示す伝送線路回路について、ZinおよびZoutを算出し得る。
図3に示すネットワークは対称的なネットワークなので、Zin=Zoutであることを証明するのは容易である。以下の式に示すように、ZinがNとは無関係であることを証明することができる。
【数8】
上記の式は、正の実数のみを取る。B1/C1がゼロより大きい理由の1つは、数4において|AN|≦1の条件が設けられており、0≦−ZY=χ≦4というインピーダンス条件が設定されるためである。
第2の広帯域(BB)条件として、整合を常に維持するべく、共振の近傍の周波数においてZinがわずかに異なるという条件が挙げられる。実際の入力インピーダンスZin´は、数3に示すように、CLシリーズキャパシタンスからの寄与分を含むことに留意されたい。第2のBB条件は以下の式で表される。
【数9】
【0042】
図2および
図3に示す伝送ラインの例とは異なり、アンテナ設計では、インピーダンスが無限の開口側があり、構造の端部のインピーダンスとの整合が良くない。キャパシタンス終端は、以下の式で表される。
【数10】
キャパシタンス終端は、Nに応じて変化し、純粋に虚数である。LH共振は通常RH共振よりも狭いので、選択される整合値は、n>0領域で求められる値よりは、n<0領域で求められる値に近い。
【0043】
LH共振の帯域幅を大きくするためには、シャントキャパシタCRを低減しなければならない。シャントキャパシタCRを低減することによって、数7で説明したように、より急な分散曲線のより高いω
Rの値が得られる。CRを小さくする方法にはさまざまなものがあり、これらに限定されないが、1)基板の厚みを大きくする方法、2)セルパッチの面積を小さくすること、3)上側のセルパッチの下方のグラウンド面積を小さくして、「部分グラウンド」を形成する方法、または、これらの組み合わせを含む。
【0044】
図1および
図5に示す構造では、全面グラウンド電極として、導電層を用いて基板の底面全体を被覆している。基板表面の1以上の部分を露出させるようにパターニングされた部分グラウンド電極によって、グラウンド電極の面積を、基板表面全体の面積よりも小さくすることができる。この結果、共振帯域幅が大きくなり、共振周波数を合わせることができる。部分グラウンド構造の2つの例を、
図8および
図11を参照しつつ説明する。
図8および
図11に示す構造では、基板のグラウンド電極側で、セルパッチのフットプリントにおいてその面積内のグラウンド電極の量が少なくなっており、残っている長尺状ライン(ビアライン)を用いて、セルパッチのビアを、セルパッチのフットプリントの外部にある主要グラウンド電極に接続している。このような部分グラウンド方式は、広帯域共振を実現することを目的として、さまざまな構成で実施されるとしてよい。
【0045】
図8は、4セル伝送線路における部分グラウンド電極の一例を示す図であり、グラウンドの寸法が、セルパッチの下方において、一方向においてセルパッチよりも小さくなっている。グラウンド導電層は、ビアに接続されていると共にセルパッチの下方を通っているビアラインを有する。ビアラインの幅は、各ユニットセルのセル経路の寸法よりも小さい。アンテナ効率が劣化してしまうのでセルパッチの面積を小さくすることができない商用デバイスや、または、基板の厚みを大きくすることが出来ない商用デバイスを構成する場合には、他の方法ではなく部分グラウンド方式を利用することが好ましい。グラウンドを縮小する場合、
図8に示すようにビアを主要グラウンドに接続するインダクタLp(
図9)をさらに、長尺状メタライゼーション(ビアライン)によって形成する。
図10は、
図8に示した伝送線路構造と同様の、部分グラウンドを有する4セルアンテナ構造を示す図である。
【0046】
図11は、グラウンドを縮小した構造の別の例を示す図である。本例では、グラウンド導電層が、複数のビアラインと、セルパッチのフットプリントの外部に形成されている主要グラウンドとを有している。各ビアラインは、第1の遠位端で主要グラウンドに接続されており、第2の遠位端でビアに接続されている。ビアラインの幅は、各ユニットセルのセル経路の寸法よりも小さい。
【0047】
部分グラウンド構造の式を求める。グラウンドを縮小する例の場合、以下で説明するように、CRが非常に小さくなり、共振は、数1、数5、および数6、ならびに表1に従ったものとなる。
【0048】
<方法1(
図8および
図9)>
共振は、LRをLR+Lpで置き換えると、数1、数5および数6ならびに表1に示したようになる。|n|≠0の場合、各モードでは以下のような2つの共振が発生する。
(1)LR+Lpで置換したLRに対してω±n
(2)Nがセルの数である場合に、LR+Lp/Nで置換したLRに対してω±n
【0049】
インピーダンス式は以下のようになる。
【数11】
尚、Zp=jωLpで、ZおよびYは数2で定義されている。
【0050】
数11に示すインピーダンス式によれば、2つの共振ωおよびω´はそれぞれ低インピーダンスおよび高インピーダンスを持つことが分かる。このため、ωの近傍に共振を合わせることは、大抵の場合において、容易に行われる。
【0051】
<方法2(
図11および
図12)>
共振は、LLをLL+Lpで置き換えると、数1、数5および数6ならびに表1に示したようになる。方法2によると、合成シャントインダクタ(LL+Lp)は、シャントキャパシタCRが低減すると、増加する。この結果、LH周波数が低くなる。
【0052】
上述した方法および回路設計は、以下に示す数12に定められている回路共振に基づき、表2に示したような複数種類のCRLHフィルタ設計において実現され得る。表2に示したフィルタ設計の変更例、変形例、および改善例は、関連技術分野で利用されている多岐にわたるフィルタ設計および本明細書の開示内容に基づき、実現が可能である。
【表2】
【0053】
一実施例によると、MTM構造を有する、または、MTM構造を有さないフィルタ設計を最適化および確認する設計方法が提供される。当該設計方法を
図13に示す。ステップ1から6は、以下に説明するように、表2に記載されているフィルタ設計で考慮される回路パラメータを抽出するための方法である。
【0054】
ステップ1 1301
フィルタ回路を特定する。例えば、設計4用の2つの異なるC−CRLHユニットセルを特定する。続いて、インピーダンスおよび周波数帯域の値を求めて、フィルタを実現するための回路パラメータを抽出する。つまり、特定の目標帯域、帯域幅、および整合条件を鑑みて、セルパラメータを導き出す方法について完全に解析する。
【0055】
ステップ2 1305
フィルタのβ曲線、リターンロス、送信帯域、およびインピーダンスを確認するべくMatlabコードまたは同等の技術のコンピューティングソフトウェアを作成する。
【0056】
ステップ3 1311
パラメータ抽出のために、Matlabコードまたは同等の技術のコンピューティングソフトウェアによって高速反復最適化および確認(1341)を可能とする、Excelスプレッドシートまたは同等のスプレッドシートソフトウェアプログラムを作成する。
【0057】
ステップ4 1315
ディスクリート回路を設計するべく(1312)、アンソフト・サーキット・デザイナ(Ansoft Circuit Designer)または同等の回路設計ソフトウェアツールを用いて、回路性能を確認する。
【0058】
ステップ5 1321
全印刷回路を設計するべく(1313)、拡張Excelスプレッドシートまたは同等のスプレッドシートソフトウェアプログラムを用いて、全印刷設計パラメータをフィルタを実現するための回路設計パラメータにマッピングする。当業者であれば、その他の方法として、全印刷とディスクリートインダクタおよびディスクリートキャパシタとを組み合わせることが含まれ得るものと理解されたい。
【0059】
ステップ6 1331
高速で確認を行うためFR4または同等の基板上にフィルタ設計を構築して確認する。言い換えると、ハイブリッド型のディスクリート設計および印刷設計を作成するべく容易に組み合わせることができる、ディスクリート素子および印刷集中素子を用いて複数のフィルタ設計を製造する。印刷フィルタ設計、ディスクリートフィルタ設計、または、ハイブリッド型の印刷/ディスクリートフィルタ設計は、シリコンあるいはセラミック等の別の基板、または、LTCC等の別の製造技術に応じて容易に変形することができる。また、この設計方法は、目標フィルタ品質係数Qおよびフィルタ動作周波数に合わせてフィルタを設計するべく応用することができる。
【0060】
表2に記載したフィルタ設計の応用例の1つとして、無線ネットワークシステムが挙げられる。例えば、これらのフィルタ設計は、米国特許出願第61/050,954号(発明の名称:「ノート型コンピュータ用の単一ケーブルアンテナ」、出願日:2008年5月6日)に記載されているように、ワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)およびワイヤレス・ワイド・エリア・ネットワーク(WWAN)のダイプレクサシステムに適用することができる。一部の無線通信アプリケーションでは、例えば、
図14に示すように、WLAN信号およびWWAN信号を合成および分割して、対応する無線送受信器までルーティングすることが望まれる場合がある。
図14は、ダイプレクサ1405が、アンテナ1401と、WLAN送受信器1411およびWWAN送受信器1415とに接続されている様子を示す機能ブロック図である。WWANラジオおよびWLANラジオは1つのアンテナを共有しているので、ダイプレクサは、対応する送受信器に対してWWAN信号およびWLAN信号を分割および合成する役割を持つ。
【0061】
このようなダイプレクサ装置は、低周波数帯域および高周波数帯域を持つ複数の信号を送受信することができる主要入出力ポートと、低周波数帯域で動作する第1の信号を送受信することができる低帯域入出力ポートと、主要入出力ポートを低帯域入出力ポートへと接続し、インサーションロスが低く、上側帯域端がシャープであるローパスフィルタと、高周波数帯域で動作する第2の信号を送受信することができる高帯域入出力ポートと、主要入出力ポートを高帯域入出力ポートへと接続し、挿入が低く、下側帯域端がシャープであるハイパスフィルタとを備え得る。低帯域フィルタの上側端部と高帯域フィルタの下側端部との間のアイソレーションは低い。一例を挙げると、一部のアプリケーションでは、アイソレーションが−25dB未満の場合がある。
【0062】
図14に示す例では、ダイプレクサは、互いの間のサイドバンドリジェクションが、
図15Aおよび
図15Bにそれぞれ周波数の関数として示すS12応答が表すように、シャープであるようなローパスフィルタおよびハイパスフィルタを用いて設計され得る。ローパスフィルタは通常、WWAN周波数帯域である800MHzから2170MHzをカバーしており、インサーションロスは1dB未満である。一方、ハイパスフィルタは通常、WLAN周波数帯域である2.3GHzから6.0GHzをカバーしており、インサーションロスは1dB未満である。サイドバンドリジェクションについては、WWANフィルタは2.3GHzで−20dBよりも良好であり、WLANフィルタは2.17GHz、1.575GHz、および0.825GHzでそれぞれ、−15dB、−20dB、および−25dBよりも良好であるという制約がある。
【0063】
<E−CRLH(設計1および2)>
1つの進化型右手/左手系複合(E−CRLH)セルを
図16Cに示す。このE−CRLHセルは、組み合わせられて直列共振ω
SEを生成するシリーズインダクタLRおよびシリーズキャパシタンスCLと、組み合わせられてシャント共振ω
SHを生成するシャントインダクタLLおよびシャントキャパシタンスCRと、組み合わせられて直列共振ω
SE´を生成するシリーズインダクタLR´およびシリーズキャパシタンスCL´と、組み合わせられてシャント共振ω
SH´を生成するシャントインダクタLL´およびシャントキャパシタンスCR´とを備える。このE−CRLHセルの回路素子は、E−CRLHユニットセルの対称セル構造を形成するように配置されており、E−CRLHユニットセルの入力および出力は同じ回路構造を持つ。本例において、シリーズインダクタLR、シリーズキャパシタンスCL、シャントインダクタLL、シャントキャパシタンスCR、シリーズインダクタLR´、シリーズキャパシタンスCL´、シャントインダクタLL´、およびシャントキャパシタンスCR´の値は、ω
SEおよびω
SH´が略等しくなり、ω
SHおよびω
SE´が略等しくなるように調整される。
【0064】
図16Cに示すE−CRLHセルは、従来型CRLH(C−CRLH)セル(
図16Aを参照)およびそのデュアル型CRLH(D−CRLH)セル(
図16Bを参照)を非線形に組み合わせたものと考えることもできる。C−CRLH構造は、低周波数帯域ではLH領域で共振を発生させ、高周波数帯域ではRH領域で共振を発生させる。この場合、C−CRLH構造は、セルの数が増えるにつれてよりシャープになるようなバンドパスフィルタとして挙動するという効果を奏する。セルの数が増えると、伝送損失が増加したり、サイズが大きくなるというような問題が発生し得る。
【0065】
D−CRLH構造は、C−CRLH構造とは異なり、低周波数領域ではRH領域で共振を発生させ、高周波数領域ではLH領域で共振を発生させ、帯域消去フィルタとして動作する。C−CRLH構造およびD−CRLH構造は、それぞれがE−CRLH構造に比べて分析および実施が容易であるので、線形に組み合わせることができるが、このように線形に組み合わせて得られる構造の特性は通常、C−CRLHのバンドパス特性よりはD−CRLH構造の帯域消去特性が中心となる。
【0066】
上述の説明、ならびに、米国特許出願第11/741,674号(発明の名称:「メタマテリアル構造に基づくアンテナ、デバイスおよびシステム」、出願日:2007年4月27日)および米国特許出願第11/844,982号(発明の名称:「メタマテリアル構造に基づくアンテナ」、出願日:2007年8月24日)に記載されているように、グラウンドが底面の全面にわたって設けられているセルについては、所与の共振の帯域および帯域幅(Q)を持つ全印刷C−CRLH構造および完全ディスクリートC−CRLH構造を設計する分析および方法が提供されている。C−CRLH型のフィルタを設計する際に用いられるものと同じ方法および原理に従って、E−CRLHフィルタを設計する。ただし、
図16Cに図示するようなより複雑なユニットセル構造E−CRLHを利用する点については異なる。CRLH構造とE−CRLH構造とを比較した場合に見られる差異は、LR´、CR´、LL´、CL´等のパラメータが追加で設けられていることに起因している。
【0067】
E−CRLHセルの4つのゼロ次共振ω
01、ω
02、ω
03、およびω
04は、以下の数12および数13で説明されている。全印刷E−CRLH設計(
図27Aから
図27Eおよび
図17)および各素子のためにパッドを有する完全ディスクリートE−CRLH設計(
図18)の例を図示している。これに代えて、ハイブリッド型の印刷/ディスクリート構造に基づいて、E−CRLHフィルタ設計を実現するとしてもよい。
【数12】
【数13】
インピーダンスは数14Aによって表される。
【数14A】
【0068】
<I.フィルタ設計BE1(均衡拡張型)>
本発明に係る技術は、均衡拡張型の設計において特に有用である。E−CRLH構造を用いた広帯域フィルタの例は、
図16Cに図示されている。対応する回路パラメータの値は下記の表に記載しており、E−CRLHユニットセルおよびLPを有するE−CRLHユニットセルのフィルタ応答は、
図19および
図20Bにそれぞれ示されている。
図19を参照して説明すると、1セルE−CRLHフィルタは、−3dBにおいて約0.89GHzから2.23GHzの範囲にわたり、帯域の上側端のサイドバンドリジェクション端がシャープである。高帯域を除去するべく、主要なE−CRLHフィルタの後にLPフィルタを追加することができる。このLPフィルタは、シリーズインダクタLRLP=0.33nHおよびシャントキャパシタCRLP=1.9pFを持つ3つの対称セルから構成されているとしてよい。LPフィルタの応答は
図21Bに示す。LPフィルタの上側端は、−3dBで約2.3GHzとなり、
図19に示す主要なフィルタの応答において2.3GHzより高い帯域を除去するフィルタとしての利用が大きく期待できる。1セルE−CRLH2001および3セルLPフィルタ回路2005の組み合わせは、
図20Aに図示しており、その応答は
図20Bに示す。一部の設計では、インサーションロスを略ゼロに維持しつつ(つまり、リップルを発生させることなく)、上側フィルタ帯域端がシャープな低帯域のみを実現するとしてもよい。
【表3】
【0069】
後段ローパスフィルタは、3GHzよりも高い帯域をすべて除去するべく利用されるとしてよい。3セルローパス(LP)フィルタの一例を
図21Aに示す。
【0070】
<II.A.フィルタ設計UE2.1(不均衡進化型)>
より強力な無線通信を可能とするスペクトルD(758−763MHzおよび788−793MHz)の2008年1月のオークションおよび利用権に関して無線通信会社の間で最近議論が行われているが、これは無線通信業者が狭帯域に制約された中で営業しなければないという一例である。スペクトルDの場合、2つの別個の5MHz帯域を、隣接する帯域であるサイドバンドリジェクション要件が厳しい公共安全性帯域BB(763−768MHzおよび793−799MHz)との間で干渉を発生させることなく利用することが根本的な課題である。このため、非常にシャープな高Qフィルタは、スペクトルDの利用する際の根本的な課題に対処する上で、実行可能且つ実用的な解決策となり得る。
【0071】
本発明に係る技術およびフィルタは、高Qフィルタの設計および構成の一部としてE−CRLHが利用されている不均衡進化型として、このような課題に対処するべく構成され得る。
【0072】
図22は、E−CRLHのベータ曲線の一例を示す。本例では、E−CRLH設計は、260MHz帯域での低周波共振から始まり、RH領域に移動して390MHz帯域を励起する。その後、分散曲線はLH領域に戻り、780MHz帯域を励起して、その後RH領域に移動する。
【0073】
図23は、全印刷型、ディスクリート型、または、印刷/ディスクリートハイブリッド型のE−CRLH構造を設計および構築するために必要な方法およびステップを表すフローチャートである。
図23を参照しつつ説明すると、ステップ1である2301では、4つの帯域Freq1、Freq2、Freq3、およびFreq4、ならびに、8つの構造パラメータCL、LR、LL、CR、CL´、LR´、LL´、CR´のうち4つのパラメータを含むパラメータサブセットを特定することが求められる。この結果、4つの周波数入力によって目標フィルタ帯域が特定され、CL、LR、LL、CR、CL´、LR´、LL´、CR´から選択された4つの独立パラメータの残りは、構造を目標周波数帯域に一致させるべく利用される。これに代えて、独立パラメータとして、パラメータであるFreq1、Freq2、Freq3、Freq4、CL、LR、LL、CR、CL´、LR´、LL´、CR´から任意で8つ選択することもできる。ステップ2の2305は、残りの4つの依存パラメータを導き出した後、無関係の独立パラメータのうち1つを用いて入力インピーダンスを所望の値に合わせることを必要とする。ステップ4の2311、ステップ5の2315、およびステップ6の2321は、ディスクリート素子、多層印刷GE−CRLH構造、およびディスクリート/印刷ハイブリッド構造のようなさまざまなE−CRLH構造を構築することに関する。
【0074】
E−CRLHの良好な分散特性によって、Q(帯域幅)の目標値を持つより多数の周波数帯域を励起するべく分散曲線を操作する特有の手段が得られる。特に、高Qフィルタによって、無線通信デバイスは隣接する帯域との間で干渉を発生させることなく非常に狭い帯域で動作することができるようになる。
【0075】
<完全ディスクリートE−CRLH>
完全ディスクリートE−CRLH構造の一例は、
図16Cに図示されており、表4に記載されているような以下のパラメータに基づいて構築されている。
Freq1=0.3876GHz
Freq2=2.3461GHz
Freq3=0.2584GHz
Freq4=0.78GHz
LR=5.4nH
CR=18pP
LL´=18nH
CL´=6pF
独自のパラメータ抽出ソフトウェアを用いて残りのパラメータを導き出すとしてよい。
LR´=23.9978169nH
CR´=2.71641771pF
LL=17.9823nH
CL=0.99996pF
【表4】
【0076】
図22は、
図18に示す回路の分散曲線を示す図である。同図に示すグラフは、このような構造を設計する際の制約は、高いQ値の帯域を励起する点にあることを示唆している。これは、3つの所望の周波数帯域260MHz、390MHzおよび780MHzにおいてベータ曲線が略平坦になっていることが容易に分かる。このような設計の利点の1つに、3つの帯域を50オームの入力インピーダンスを持つ給電ラインに一致させることができる点が挙げられる。
【0077】
この設計方法のシミュレーションは、Ansoftのようなデザイナソフトウェアツールを利用することで実行することができる。シミュレーションの結果を
図24に示す。表5に、リターンロスが−3dBの場合の3つの非常にシャープな帯域をまとめている。
【表5】
【0078】
予備段階で製造された1セルE−CRLHの写真を
図25に示す。この構造を製造する目的は、損失を最適化することではなく、これら3つの共振が存在することを証明することにある。
図26は、S11およびS12の測定結果を示している。表5に示したシミュレーション結果と
図26に示した測定結果とを比較すると、3つの共振236MHz、400MHz、および704MHzは理論モデルに非常に近いことは明らかである。
【0079】
この設計では、後段ハイパスフィルタを用いて、2つの低帯域、236MHzおよび400MHzを除去して、700MHzの帯域を通過させることができる。
【0080】
<全印刷E−CRLH>
全印刷E−CRLH構造の一例は、
図17に図示されており、
図27Aから
図27Eに図示されており、表7にその詳細を記載している4層設計に基づいている。このE−CRLHユニットセルは、互いに平行である4つの別個のメタライゼーション層に形成されている印刷回路構造を持つ。第1のメタライゼーション層は、第1の信号ポート、第1の信号ポートに結合されている第1の給電ライン、第1の給電ラインに結合されている第1の発射パッド、第1の発射パッドとは分離しており且つ第1の発射パッドに容量結合されている第1のセルパッチ、第1のセルパッチからは離間されており、第1のセルパッチから信号を受信するように結合されている第2のセルパッチ、第2のセルパッチとは分離しており且つ第2のセルパッチに容量結合されている第2の発射パッド、第2の発射パッドに結合されている第2の給電ライン、および第2の給電ラインに結合されている第2の信号ポートを有するようにパターニングされている。第2のメタライゼーション層は、第1のメタライゼーション層の下方で、第1のセルパッチと第2のセルパッチとの間に配置されている第1の導電セルパッチを有するように、且つ、間隙における電磁結合を強化するようにパターニングされている。第3のメタライゼーション層は、第2のメタライゼーション層に形成されている第1の導電セルパッチの下方に配置されている第2の導電セルを有するようにパターニングされている。第1の導電ビアは、第2のメタライゼーション層に形成されている第1の導電セルパッチと、第3のメタライゼーション層に形成されている第2の導電セルパッチとを接続するように設けられている。この設計ではさらに、フィルタ装置のグラウンド電極を提供する第4のメタライゼーション層、ならびに、第1のメタライゼーション層とグラウンド電極との間に形成される第1のセル用ビアおよび第2のセル用ビアを備える。第1のセル用ビアは、第1のメタライゼーション層上の第1のセルパッチと、第4のメタライゼーション層内のグラウンド電極とを接続しており、第1の導電セルパッチおよび第2の導電セルパッチから分離されており且つ第1の導電セルパッチおよび第2の導電セルパッチに直接接触していない。第2のセル用ビアは、第1のメタライゼーション層上の第2のセルパッチと、第4のメタライゼーション層内のグラウンド電極とを接続しており、第1の導電セルパッチおよび第2の導電セルパッチから分離されており且つ第1の導電セルパッチおよび第2の導電セルパッチに直接接触していない。中間のメタライゼーション層同士を接続するビアは通常、「埋め込みビア」と呼ばれ、第2層と第3層との間を接続するビア21等がこれに当たる。一部の製造技術では、基板を上下に組み合わせる際に埋め込みビアを位置合わせすることが難しいので、最上層から最下層まで貫通する「貫通ビア」を利用する必要がある。このため、「通過貫通ビア」の周囲のメタライゼーションを、ビアとメタライゼーションとが接続されていない層において除去する。
【0081】
図17および
図27Aから
図27Eに図示されているような一実施例において、第1のメタライゼーション層は、第1の発射パッドに隣接する第1の上側グラウンド電極および第2の発射パッドに隣接する第2の上側グラウンド電極を有するようにパターニングされており、第2のメタライゼーション層は、第1の上側グラウンド電極の下方に第1の下側グラウンド電極を有するように、且つ、第2の上側グラウンド電極の下方に第2の下側グラウンド電極を有するようにパターニングされている。第1の上側グラウンド電極は、第1の下側グラウンド電極と共に、第1の信号ポートと第1の給電ラインとの間に結合されている第1の共平面導波路(CPW)を支持するようにパターニングされており、第2の上側グラウンド電極は、第2の下側グラウンド電極と共に、第2の信号ポートと第2の給電ラインとの間に結合されている第2の共平面導波路(CPW)を支持するようにパターニングされている。
【0082】
米国特許出願第11/741,674号(発明の名称:「メタマテリアル構造を用いて形成されるアンテナ、デバイス、およびシステム」、出願日:2007年4月27日)および米国特許出願第11/844,982号(発明の名称:「メタマテリアル構造を用いて形成されるアンテナ」、出願日:2007年8月24日)に記載されたものと同様のパラメータ抽出を行う。しかし、このパラメータ抽出については、より複雑なE−CRLH構造および分析が利用される。全印刷型E−CRLH構造についてのパラメータ抽出結果は、表6に示す。HFSSシミュレーション結果(
図28Aおよび
図28B)では、1.95GHzにおいて非常にシャープな共振周波数が見られる。構造の分析と3次元HFSSモデル化では、+120MHzだけシフトしている。続いて、分析結果とHFSS結果を比較するべくLPKF社のProtoMat S60を用いて4層構造を製造する様子を説明する。シャープな共振は、リターンロスが−3dBの場合、1949.75MHzから1.951MHzで見られる。インサーションロスが低い高Qフィルタは、帯域が狭く、サイドバンドリジェクションが大きいので、設計が難しい。
【表6】
【表7】
【0083】
<II.B 設計UE2.2(不均衡進化型)>
本発明に係る技術の別の実施形態によると、以下のような不均衡進化型構造の詳細なE−CRLH設計が開示される。
【数14B】
【0084】
この場合、ω
0,1=ω
0,3<ω
0,2=ω
0,4で、ZおよびYの式は簡略化されて、より簡単なZc関数となり、整合が改善される。上記の制約を満足させるようにExcelシートを調整することが可能である。この設計において、以下のようなフィルタ特性が観察されている。
【0085】
A.当該フィルタは、帯域消去領域によって互いから分離されている2つの帯域通過領域から構成されている。どちらの帯域通過領域も、E−CRLHユニットセルの出力においてローパスフィルタまたはハイパスフィルタを用いることによって除去することができる。
【0086】
B.一般的には、外側のフィルタ端の方がよりシャープで、高帯域側のLRの方が帯域幅がより狭くなっている。
【0087】
C.内側のフィルタ端は、ω
0,1およびω
0,2を近づけると、より傾斜が大きくなるという特徴を持つ。
【0088】
D.ω
0,1およびω
0,2の値を固定値とした場合、LL´およびCRの値は最小値を選択して、LRを変化させて、帯域幅および外側帯域端を微調整する。
【0089】
E.上述したDについて、LRおよびLL´を一定として、CRを変化させることによっても実現され得る。CRの値を高くすると、フィルタの上側外側端はより傾斜が大きくなる場合がある。
【0090】
F.上述したEについて、LRおよびCRを一定として、LL´を変化させることによっても実現され得る。LL´の値を高くすると、フィルタの上側外側端はより傾斜が大きくなる場合がある。
【0091】
G.ω
0,1およびω
0,2は、2つの帯域通過領域の間の帯域消去領域を画定している。
【0092】
H.構造を別の入力インピーダンスに一致させるべく、LR、CR、およびLL´を変更し得ることは当業者には明らかである。このような作業は、以下に記載する2つの事例で説明するように、複数の異なる入力インピーダンスの値について行われる。
【0093】
<UE2.2 事例1:下側端または上側端がシャープな広帯域フィルタ>
本発明に係る技術の一実施例によると、特別な事例である上述した数14Bに応じたE−CRLHは、
図14に示したダイプレクサを構成する2つのフィルタを設計するべく利用される。E−CRLHフィルタのパラメータを表8および表9に記載する。
【表8】
【表9】
2つの周波数Freq0_1および周波数_02、ならびに、LR、CRおよびLL´は、自由パラメータと見なされる一方、残りのFreq0_3、Freq0_4、LR´、CR´、LL、CLおよびCL´は、数14Bの制約に基づいて導き出される。これらのパラメータは、周波数帯域およびインピーダンス整合を確認するためのmatlabコードで利用され得る。この場合、
図29Aでは、15オームに一致している2つの広帯域領域を明確に見ることができる。エネルギーをフィルタに結合するためには、構造を入出力インピーダンスZcに一致させる必要がある。つまり、インピーダンスの虚数(無効)部分Im(Zc)を略ゼロに保ちつつ、インピーダンスの実数部分Re(Zc)を略一定に保つ必要がある。アンソフトのデザイナ回路シミュレーションツールによれば、
図16Cに示す回路設計は、
図29Bに図示するような応答を示す。
【0094】
2.1GHzにおいて−15dB未満である単純なローパスフィルタを用いて、サイドバンドリジェクションが2GHzで約−40dBである、約700MHzから1.89GHzという低帯域側のバンドパスフィルタの範囲を選択することができる。または、2.1GHzにおいて−15dB未満である単純なハイパスフィルタを用いて、サイドバンドリジェクションが2.1GHzで約−40dBである、約2.23MHzから5.92GHzという高帯域側のバンドパスフィルタの範囲を選択することができる。
【0095】
<UE2.3 事例2:下側端または上側端がシャープな狭帯域フィルタ>
本発明に係る技術の別の実施例によると、以下で説明するような狭帯域フィルタは、数14Aの制約に応じた特別なE−CRLHの事例を用いて導き出すことができる。E−CRLHフィルタのパラメータおよび対応する回路パラメータは、表10および表11にそれぞれ記載する。
【表10】
【表11】
【0096】
matlabコードによれば、2つの狭帯域バンドパス領域が得られる。高帯域側の領域は、
図30に示すように約25オームに一致させられており、低帯域側の領域は、45オームにより良好に一致している。エネルギーをフィルタに結合するためには、構造は入出力インピーダンスZcに合わせる必要がある。つまり、インピーダンスの虚数(無効)部分Im(Zc)を略ゼロに保ちつつ、インピーダンスの実数部分Re(Zc)を略一定に保つ必要がある。以下に説明する例では、構造をZc=25オームに一致させることによって、上側帯域に注目する。以下の例はZc=45オームとしても実現可能である。
【0097】
アンソフトのデザイナ回路シミュレーションソフトウェアによれば、
図16Cに図示するような構造の応答が得られる。
【0098】
約2.1GHzにおいて−15dB未満である単純なハイパスフィルタを用いて、サイドバンドリジェクションが約2.05GHzで−40dB未満である、約2.11MHzから2.17GHzという高帯域側のバンドパスフィルタの範囲を選択することができる。同様の処理を実行して、低帯域側のバンドパス領域に一致させて選択することができる。この場合、
図31のMatlabインピーダンス結果に示すように、40オームでの整合が望ましい。
【0099】
<C−CRLH(従来型CRLH−設計3および4)>
図32には、2セル従来型右手/左手系複合(C−CRLH)伝送線路(TL)が図示されている。本例では、セル1である3201およびセル2である3205の各セルに、互いに異なるパラメータ値を設定することができる。本明細書の上述の記載部分および文献「カロズ(Caloz)およびイトー(Itoh)、「電磁メタマテリアル」、ワイリー・パブリッシング・カンパニー(Wiley Publishing Company)、2006年」では、両方のセルが同一または「等方性」である特別な事例が分析されている。前述した分析で説明したように、C−CRLH構造は、低周波数帯域ではLH領域で共振を発生させ、高周波数帯域ではRH領域で共振を発生させる。この場合、C−CRLH構造は、セルの数が多くなるにつれて、よりシャープになるようなバンドパスフィルタとして動作する効果を持つ。しかし、セルの数が多くなると、伝送損失が大きくなったり、構造のサイズが大きくなったりという問題が発生し得る。
【0100】
各セルが互いに異なるという異方性の場合の分析を以下に説明する。異方性の場合にも、前述した
図13に示すような回路パラメータ抽出方法を同様に用いる。等方性の場合とは対照的に、異方性の場合には、ZinとZoutとを異ならせる必要がある。つまり、
図33に示すネットワークについて、以下に記載する一連の条件が伝達関数に当てはまる。
【数15A】
条件A.1
【数15B】
【0101】
この場合、各セルが同一(等方性)および異なる(異方性)場合、均衡構造ではω
SE1=ω
SE2=ω
SE=ω
SH1=ω
SH2=ω
SH=ω
0となっている。
【0102】
不均衡構造は、両セルを所望の周波数帯域にわたってより良好に構造に一致させるべく、「事例1:ω
SE1=ω
SE2=ω
SEおよびω
SH1=ω
SH2=ω
SH」または「事例2:ω
SE1=ω
SH2=ω
SEおよびω
SH1=ω
SE2=ω
SH」と共に用いられ得る。この条件によって自動的に、条件A3.1のAA´=DD´が立証される。自由パラメータは、LR1、LR2、ω
SE=ω
SHおよびω
Rである。特に、ω
R1=ω
R2=ω
Rの場合、ZinおよびZoutの式がさらに簡略化されることに留意されたい。つまり、LR1 CR1=LR2 CR2となる。
【0103】
入力インピーダンス値Zinおよび出力インピーダンス値Zoutは、数15Aに示す一連の式で記されている条件A.1の下で、数16および数17で定められる。
【0104】
事例1:ω
SE1=ω
SE2=ω
SE、ω
SH1=ω
SH2=ω
SH、およびω
R1=ω
R2=ω
R
【数16】
【数17】
【0105】
事例2:ω
SE1=ω
SH2=ω
SE、ω
SH1=ω
SE2=ω
SHおよびω
R1=ω
R2=ω
R
【数18】
【0106】
共振は数19によって定められる。
【数19】
尚、上述したようにω
SE1=ω
SE2=ω
SEおよびω
SH1=ω
SH2=ω
SHという条件であるので、Z
1Y
1=Z
2Y
2=−χである。
【0107】
このため、LR1=LR2である場合、事例1は、米国特許出願第11/741,674号(発明の名称:「メタマテリアル構造を利用したアンテナ、デバイス、およびシステム」、出願日:2007年4月27日)および米国特許出願第11/844,982号(発明の名称:「メタマテリアル構造を利用したアンテナ」、出願日:2007年8月24日)に記載されている等方性の事例になる。具体的には以下のようになる。
【数20】
【0108】
<III.フィルタ設計 IC3(均衡CRLH)>
<均衡等方性の事例>
本発明に係る技術の別の実施形態によると、MTMフィルタ構造は、均衡従来型の設計で構成されるとしてよい。このセクションで説明される設計は、均衡が取れており、言い換えると、ω
SH1=ω
SE1=ω
SH2=ω
SE2=ω
0である。具体的には、このセクションで説明する2つの設計は、
図14、
図15A、および
図15Bに図示したWLAN/WWANダイプレクサにおけるWWANフィルタを目的とする。
【0109】
1つ目の設計は、LR1=LR2、CR1=CR2、LL1=LL2、およびCL1=CL2である等方性2セルC−CRLH伝送線路構造から構成されるとしてよい。等方性構造であるので、入力インピーダンスZinおよび出力インピーダンスは等しくなっており、つまり、この場合にはインピーダンス変成器は実現され得ない。
【0110】
WWANフィルタを設計するステップは以下の通りである。
【0111】
ステップ1:パラメータ値の範囲を絞り込むべく、Matlabコードまたは同等の技術コンピューティングソフトウェアを利用する。LR1=LR2=9nH、Zin=Zout=50Ω、およびFreq
SH=Freq
SE=Freq
0=1.4GHzのように自由パラメータの値を設定する。Matlabの出力によって、残りのパラメータの値が得られ、CR1=CR2=3.6pF、LL1=3.6nH、およびCL1=1.43pFとなる。
【0112】
ステップ2:回路デザイナシミュレーションツールを用いてこれらの結果をシミュレーションする。
図34Aおよび
図34Bは、バンドパスフィルタの回路、ならびに、伝送およびリターンロスを示す。
【0113】
ステップ3:構造パラメータを、最上層および最下層上に全面GNDを有する全印刷型設計にマッピングする。
【0114】
3次元印刷C−CRLH構造は、一例を
図35Aから
図35Eに図示し、詳細な内容を表12に記載する。当該設計例によると、MTMセル構造は、金属−絶縁体−金属(MIM)構造においてセルパッチおよび上側グラウンドの下方に設けられている上側導電層と、セルパッチおよび下側グラウンドの下方に設けられている下側MIM層とを備える。このようなMTMセル設計は、4つの層間誘電絶縁層と共に5つのメタライゼーション層を利用することによって、実現される。
図35Cに示す層3は、2つのセル1およびセル2を有しており、各セルはLRラインによって互いに接続されている2つのセルパッチを含み、LRラインは、延長部分としてビアパッドにつながるLLラインを持つ。
【0115】
4つの層間誘電絶縁層は、例えば、4つの誘電基板によって実現されるとしてよい。中間のメタライゼーション層同士を接続するビアは通常、「埋め込みビア」と呼ばれる。一部の製造技術では、基板を上下に組み合わせる際に埋め込みビアを位置合わせすることが難しいので、最上層から最下層まで貫通する「貫通ビア」を利用する必要がある。このため、「通過貫通ビア」の周囲のメタライゼーションを、当該ビアがメタライゼーションに接続されていない層において、除去する。
【0116】
このため、
図35Aから
図35Eに示すC−CRLH構造は、複数のCPW給電ライン、上側グラウンド、および複数のポートを有する最上層と、第1の側に第1の面を持ち、第1の側とは反対側の第2の側に第2の面を持つ第1の誘電基板とを有する。第1の基板の第1の面は、最上層に接着されている。上側金属−絶縁体−金属(MIM)層を有する第2の層が設けられている。第2の層は、第1の基板の第2の面に接着されており、第1の群のセル導電ビアコネクタが第1の基板に形成されることによって、最上層から第2の層までの導電路が形成されている。第1の側に第1の面を持ち、第1の側とは反対側の第2の側に第2の面を持つ第2の誘電基板が設けられており、第2の基板の第1の面は第2の層に接着されている。主要構造を有する第3の層が設けられており、第3の層は第2の基板の第2の面に接着されている。第2の群のセル導電ビアコネクタが第2の基板に形成されることによって、第2の層から第3の層への導電路が形成される。第1の側に第1の面を持ち、第1の側とは反対側の第2の側に第2の面を持つ第3の誘電基板が設けられており、第3の基板の第1の面は第3の層に接着されている。このデバイスはさらに、下側MIM層を有する第4の層を備えており、第4の層は第3の基板の第2の面に接着されている。第1の側に第1の面を持ち、第1の側とは反対側の第2の側に第2の面を持つ第4の誘電基板が設けられており、第4の基板の第1の面は第4の層に接着されている。下側グラウンドを有する第5の層が設けられている。第5の層は第4の基板の第2の面に接着されており、最上層、第2の層、第3の層、第4の層、および第5の層、ならびに、第1の基板、第2の基板、第3の基板、第4の基板および第5の基板、セル導電ビアコネクタ、上側MIM層、主要構造、および下側MIM層は、印刷C−CRLH構造を形成するべく配設される。
【表12A】
【表12B】
【0117】
印刷構造パラメータ化マッピングを簡単に表13に示す。表13は、
図34Aの回路パラメータを
図35Aから
図35Eの印刷構造にマッピングするべく生成された詳細なExcelシートから得られる結果を示す。
【表13】
【0118】
表13の最初の2行は、層3に配設されているメタライゼーションについての単位mm長さ当たりのキャパシタンス値およびインダクタ値を示す。最初の2行に記載されている数字は、LR、CR、およびLLの推定値を抽出するべく用いられ得る。CLは、数21に示す従来の平行平板キャパシタンスの式から導き出すことができる。
【数21】
【0119】
MIM1_L_Adj、MIM2_L_Adj、およびMIM12_L_Adjは、MIM1(CL1)、MIM2(CL2)、およびMIM3(CL12=CL1 CL2/(CL1+CL2))の値のMIM長さに対する調整値である。言うまでもなく、このような特別の事例では、設計がCL1=CL2=2CL13である等方性構造をベースとしているので、調整値MIM1_L_Adj、MIM2_L_Adj、およびMIM12_L_Adjはゼロに設定される。CL1およびCL2の係数が「2」となっているのは、表12に記載されているように、CL12が有しているのは下側MIM層のみであるが、CL1およびCL2は上側MIM層および下側MIM層を有しているためである。
【0120】
尚、表13および
図35Aから
図35Eに示すHFSS設計は、LR1≠LR2、CR1≠CR2、LL1≠LL2、およびCL1≠CL2である印刷異方性構造をシミュレーションするべく設計されている。
【0121】
図35Aから
図35E、表12、および表13に示した構造のHFSSシミュレーション結果のうち
図36Aに示したリターンロスS11/S22および伝送S12はいずれも、
図36Bに示すような製造後の測定結果と一致している。
図36Aおよび
図36Bならびに
図34Bに示した結果は、未知の要素が幾つかあるものの、一致しており、
図13のフローチャートに示した方法の有効性を確認するものである。このような未知の要素の例には、
図34Bの回路設計および表13のパラメータ化マッピングチャートでは考慮されていなかった主要C−CRLH印刷構造への2つのCPWラインの接合が含まれ得る。
【0122】
シミュレーション結果および測定結果のフィルタ応答で見られる−1dBおよび−2dBのインサーションロス(S12)の原因は、損失の大きいFR4基板を利用したことにあると思われる。LTCC等の別の基板に対して同じ設計プロセスを利用することによってフィルタサイズおよびインサーションロスを共に改善することができる。ビアラインおよびLRラインを共に形成した後のFR4上のWWANフィルタサイズは、長さが約18mmで幅が4mmであり、それぞれλ/20およびλ/100である。
【0123】
<3.2 均衡異方性の事例>
本発明に係る技術の別の実施形態によると、ZinおよびZoutの値が異ならせることができるので、インピーダンス変成器を備える広帯域フィルタを設計することができる。事例1および事例2は、均衡条件が課される場合には、同一となることに注目されたい。入力インピーダンスを約20オームから50オームへと変成し、約900MHzから6GHzの帯域幅をカバーし、インサーションロスが−1dB未満であるフィルタの例を、表14、
図37Aおよび
図37Bを参照しつつ、以下で説明する。
LR11=2
LR21=3.25
FreqSH=2.25
FreqSE=2.25
FreqR=3
【表14】
【0124】
<IV.フィルタ設計AC4(異方性従来型)>
<設計AC4.1:不均衡異方性の事例2>
本発明に係る技術の別の実施形態によると、事例2、数18および数19を利用する狭帯域インピーダンス変成器が提供される。以下および表15に記載するパラメータは、
図38Aおよび
図38Bに示すような、入力インピーダンスを約50オームから5オームへと変成し、約1GHzから1.65GHzの帯域幅の範囲をカバーし、インサーションロスが略ゼロであるフィルタの一例を示している。
LR11=0.25
LR21=2
FreqSH=2.25
FreqSE=8
FreqR=6
【表15】
【0125】
<携帯電話用ダイプレクサ>
このセクションでは携帯電話用ダイプレクサの一例を説明する。本例に係るダイプレクサは、
図39に示すように、TX送受信器から入力信号を受信して、送信するべくアンテナへ受信した入力信号を送信する。ダイプレクサはさらに、アンテナから信号を受信して、受信した信号をRX送受信器に送信する場合もある。このようなダイプレクサ設計は、さまざまな実施例において、携帯電話帯域VIII(RX:880−915MHzおよびTX:925−960MHz)および帯域III(RX:1710−1785MHzおよびTX:1850−1880MHz)に対して利用可能である。例えば、第1の実施例(実施例A)では、帯域III送信信号(TX:1850−1880MHz)をアンテナに送信することができる一方、帯域VIIII受信信号(RX:880−915MHz)をRX送受信器に送信することができる。別の実施例である実施例Bによると、帯域VIII送信信号(TX:925−960MHz)をアンテナに送信することができる一方、帯域IIII受信信号(RX:1710−1785MHz)をRX送受信器に送信することができる。
【0126】
ダイプレクサはさらに、送信周波数の高次高調波を全て阻止するように設計され得る。言い換えると、ダイプレクサの900MHz近傍の低帯域部分では、1800MHz近傍の高帯域においてリジェクションが少なくとも−40dBなければならない。また、1800MHz近傍のTX高帯域の高次高調波(つまり、3GHzよりも高いもの)もまた抑制する必要がある。
【0127】
本例では、ダイプレクサは、低帯域と高帯域との間のアイソレーションを少なくとも−27dBに維持する必要がある。
【0128】
本セクションに記載するものと同一の方法を用いて周波数帯域および帯域リジェクション/アイソレーションの要件が異なる別のダイプレクサを設計することも可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0129】
<ローパス(LP)バンドパス(BP)フィルタ設計>
低帯域バンドパスフィルタは、
図40Aに示すように、1つのE−CRLHユニットセルと、その後段に設けられる従来の3セルLPフィルタとを用いて設計することができる。この設計では、安定性を高めることと実装とを目的としてパッドが設けられる。製造されたフィルタは
図40Bに示されている。
【0130】
携帯電話用ダイプレクサの低帯域部分は、表16に示すようなパラメータをMatlabコードに設定することによって、設計され得る。
【表16】
【0131】
回路シミュレーションツールで表17に示すような回路パラメータを用いて、フィルタ応答を評価する。
【表17】
【0132】
結果は
図41Aに示す。LP BPフィルタの応答は、880−960MHz帯域をカバーしている一方、高次高調波を阻止しており、1.1GHzより高い領域においてリジェクションの傾斜が急であるという点において、ダイプレクサの低帯域仕様に一致している。測定結果(
図41B)は、シミュレーション結果を裏付けるもので、低品質で損失が大きいインダクタおよびキャパシタを選択したことが原因と思われるが、測定結果においてインサーションロスが高くなっている。
【0133】
<ハイパス・バンドパスフィルタ設計>
高帯域バンドパスフィルタは、
図42に示すように、1つのE−CRLHユニットセルと、その後段に設けられる従来の3セルHPフィルタとを用いて設計される。パッドは、全体的なフィルタ応答に対する効果を評価するべく、含まれ得る。
【0134】
携帯電話用ダイプレクサの高帯域部分は、表18に示すようなパラメータをMatlabコードに設定することによって、設計される。
【表18】
【0135】
回路シミュレーションツールで表19に示すような回路パラメータを用いて、フィルタ応答を評価する。パッドの効果を考慮するべく、Matlabおよびスプレッドシートシミュレーションから導き出されるように、LRの値を22nHからLR=30nHに大きくする必要があることに留意されたい。
【表19】
【0136】
結果は
図43に示す。HP BPフィルタの応答は、1710−1880MHz帯域をカバーしている一方、高次高調波(3GHzより高いもの)を阻止しており、1.37GHz未満においてリジェクションの傾斜が急であるという点において、ダイプレクサの高帯域仕様に一致している。
【0137】
<完全ダイプレクサアセンブリ>
図44は、ダイプレクサ回路アセンブリを図示しており、3つのポートを示している。
ポート1 4401:アンテナ入出力ポート
ポート2 4402:アンテナから低帯域Rx送受信器用、または、低帯域Tx送受信器からアンテナ用
ポート3 4403:アンテナから高帯域Rx送受信器用、または、高帯域Tx送受信器からアンテナ用
【0138】
ダイプレクサの応答を
図45に示す。シミュレーションデータから予想されるように、高次高調波リジェクションは、−40dB未満であり、低帯域と高帯域との間のアイソレーションは−40dB未満で維持される。また、送受信器ポート2と送受信器ポート3との間のアイソレーションは、−40dB未満で維持される。
【0139】
本明細書では数多くの具体例を挙げたが、これらの具体例は、任意の発明の範囲または特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、特定の実施形態に固有の特徴を説明したものと解されたい。複数の別個の実施形態に関連付けて本明細書で説明した特徴は、1つの実施形態として組み合わせて実施することも可能である。逆に、1つの実施形態に関連付けて説明したさまざまな特徴を、複数の実施形態で別個に実現することも可能であり、また、そのうち一部を任意の方法で適切に組み合わせることも可能である。また、上述した特徴は、特定の組み合わせで機能し、そのような機能として請求される場合もあるが、特許請求の範囲に記載する組み合わせを構成する1以上の特徴は、その組み合わせとして実施される場合もあれば、サブコンビネーションまたはその変形例を実施するとしてもよい。
【0140】
このように、具体的な実施形態を説明してきた。上記の説明内容および図示内容に基づき、変形例、改善例、およびその他の実施形態を実行することができる。