特許第5662876号(P5662876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662876
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】真空吸着装置、及びロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   B25J15/06 B
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-124175(P2011-124175)
(22)【出願日】2011年6月2日
(65)【公開番号】特開2012-250313(P2012-250313A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2013年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】増尾 秀三
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−101467(JP,A)
【文献】 特開2004−322240(JP,A)
【文献】 実開昭64−038276(JP,U)
【文献】 特開2007−245243(JP,A)
【文献】 特開2002−079483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
H01L 21/67−21/687
F15B 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸引して排出する真空ポンプと、
前記真空ポンプによる吸引に基づいて対象物を吸着するとともに、前記真空ポンプによる排出に基づいて前記対象物を離脱させる吸着パッドと、
前記真空ポンプの吸引口と前記吸着パッドとを接続する第1通路と、
前記真空ポンプの排出口と前記吸着パッドとを接続する第2通路と、
前記第1通路に設けられ、非励磁状態と励磁状態とで前記第1通路の連通状態を切り替える第1電磁弁と、
前記第2通路に設けられ、非励磁状態と励磁状態とで前記第2通路の連通状態を切り替える第2電磁弁と、
を備え、
前記第1電磁弁において、前記非励磁状態は、前記第1電磁弁よりも前記真空ポンプ側の前記第1通路における前記第1電磁弁側の端部を解放させ、且つ前記第1電磁弁よりも前記吸着パッド側の前記第1通路における前記第1電磁弁側の端部を閉塞させる状態であり、前記励磁状態は前記第1通路を連通させる状態であり、
前記第2電磁弁において、前記非励磁状態は、前記第2電磁弁よりも前記真空ポンプ側の前記第2通路における前記第2電磁弁側の端部を解放させ、且つ前記第2電磁弁よりも前記吸着パッド側の前記第2通路における前記第2電磁弁側の端部を閉塞させる状態であり、前記励磁状態は前記第2通路を連通させる状態であり、
前記吸着パッドにより前記対象物を吸着する場合に、前記第1電磁弁を前記励磁状態にし、且つ前記第2電磁弁を前記非励磁状態にし、
前記吸着パッドから前記対象物を離脱させる場合に、前記第1電磁弁を前記非記励磁状態にし、且つ前記第2電磁弁を前記励磁状態にすることを特徴とする真空吸着装置。
【請求項2】
前記第1電磁弁よりも前記吸着パッド側の前記第1通路、及び前記第2電磁弁よりも前記吸着パッド側の前記第2通路は共通通路を有しており、前記共通通路が前記吸着パッドに接続されている請求項1に記載の真空吸着装置。
【請求項3】
前記共通通路における前記真空ポンプ側の端部に設けられ、非励磁状態と励磁状態とで前記第1通路及び前記第2通路の連通状態を切り替える第3電磁弁を備え、
前記第3電磁弁において、前記非励磁状態は、前記第3電磁弁と前記第1電磁弁との間の前記第1通路における前記第3電磁弁側の端部を閉塞させ、且つ前記第2通路を連通させる状態であり、前記励磁状態は、前記第1通路を連通させ、且つ前記第3電磁弁と前記第2電磁弁との間の前記第2通路における前記第3電磁弁側の端部を閉塞させる状態であり、
前記吸着パッドにより前記対象物を吸着する場合に、前記第1電磁弁及び前記第3電磁弁を前記励磁状態にし、且つ前記第2電磁弁を前記非励磁状態にし、
前記吸着パッドから前記対象物を離脱させる場合に、前記第1電磁弁及び前記第3電磁弁を前記非励磁状態にし、且つ前記第2電磁弁を前記励磁状態にする請求項2に記載の真空吸着装置。
【請求項4】
前記吸着パッドによる吸着力が低下する異常を検出した場合に、その旨を報知する報知手段を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空吸着装置。
【請求項5】
前記報知手段は、前記異常として、前記第1電磁弁への給電停止を検出する請求項4に記載の真空吸着装置。
【請求項6】
前記吸着パッドによる吸着力が低下する異常を検出した場合に、その旨を報知する報知手段を備え、
前記報知手段は、前記異常として、前記第1電磁弁及び前記第3電磁弁の少なくとも一方への給電停止を検出する請求項3に記載の真空吸着装置。
【請求項7】
前記真空ポンプは、電気駆動式の真空ポンプであり、
前記報知手段は、前記異常として、前記真空ポンプへの給電停止を検出する請求項4〜6のいずれか1項に記載の真空吸着装置。
【請求項8】
前記報知手段は、前記吸着パッドによる吸着力が低下する異常を検出した場合に、前記第1電磁弁及び第2電磁弁をそれぞれ非励磁状態に制御する請求項4〜7のいずれか1項に記載の真空吸着装置。
【請求項9】
前記第1通路と前記第1電磁弁との接続部、及び前記第2通路と前記第2電磁弁との接続部は、ブロックの内部に通路の形成されたブロック配管として一体に形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の真空吸着装置。
【請求項10】
請求項9に記載の真空吸着装置と、アームとを備えるロボットであって、
前記真空ポンプは、電気駆動式の真空ポンプであり、
前記真空吸着装置が前記アームに取り付けられていることを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空吸着装置、及び真空吸着装置を備えるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を真空吸着する真空吸着装置がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の真空吸着装置は、真空ポンプと、真空ポンプにより減圧されて対象物を吸着する吸着パッドと、吸着パッドに真空ポンプの吸引口と排気口とを選択的に接続して対象物の吸着と離脱とを行わせる電磁弁とを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のものによれば、電磁弁により、吸着パッドに真空ポンプの低圧の吸引口を接続すると、吸着パッドが真空ポンプにより減圧されて、吸着パッドで対象物を吸着できる。また、吸着パッドで対象物を吸着した状態のもとで、電磁弁により、吸着パッドに真空ポンプの高圧の排気口を切り換え接続すると、吸着パッドが真空ポンプにより加圧されて、吸着パッドから対象物を離脱させることができる。したがって、1つの真空ポンプを、吸着用および離脱用のポンプとして兼用でき、構成が簡単になり、コストも低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3435383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のものでは、吸着パッドから電磁弁へ向かう空気流のみを通過させる逆止弁の設けられた通路と、対象物を離脱させる際に電磁弁から吸着パッドへ向かう空気流を絞りながら通過させる絞り通路とを並列に備えている。このため、何らかの異常により真空ポンプが駆動されなくなった場合に、真空ポンプによる減圧作用がなくなるとともに、絞り通路を通じて吸着パッドへ空気が流入し、吸着パッドによる吸引力を維持できなくなる。その結果、吸着パッドから対象物が即座に落下することとなる。
【0006】
なお、何らかの異常により電磁弁が駆動されなくなった場合も、吸着パッドによる吸引力を維持できなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、真空吸着装置、及び真空吸着装置を備えるロボットにおいて、真空ポンプを吸着用および離脱用のポンプとして兼用する場合であっても、異常発生時において吸着パッドによる吸引力の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0009】
第1の発明は、真空吸着装置であって、気体を吸引して排出する真空ポンプと、前記真空ポンプによる吸引に基づいて対象物を吸着するとともに、前記真空ポンプによる排出に基づいて前記対象物を離脱させる吸着パッドと、前記真空ポンプの吸引口と前記吸着パッドとを接続する第1通路と、前記真空ポンプの排出口と前記吸着パッドとを接続する第2通路と、前記第1通路に設けられ、非励磁状態と励磁状態とで前記第1通路の連通状態を切り替える第1電磁弁と、前記第2通路に設けられ、非励磁状態と励磁状態とで前記第2通路の連通状態を切り替える第2電磁弁と、を備え、前記第1電磁弁において、前記非励磁状態は、前記第1電磁弁よりも前記真空ポンプ側の前記第1通路における前記第1電磁弁側の端部を解放させ、且つ前記第1電磁弁よりも前記吸着パッド側の前記第1通路における前記第1電磁弁側の端部を閉塞させる状態であり、前記励磁状態は前記第1通路を連通させる状態であり、前記第2電磁弁において、前記非励磁状態は、前記第2電磁弁よりも前記真空ポンプ側の前記第2通路における前記第2電磁弁側の端部を解放させ、且つ前記第2電磁弁よりも前記吸着パッド側の前記第2通路における前記第2電磁弁側の端部を閉塞させる状態であり、前記励磁状態は前記第2通路を連通させる状態であることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、真空ポンプにより、気体が吸引されて排出される。そして、吸着パッドによって、真空ポンプによる吸引に基づいて対象物が吸着され、真空ポンプによる排出に基づいて対象物が離脱させられる。真空ポンプの吸引口と吸着パッドとを接続する第1通路は、第1電磁弁の非励磁状態と励磁状態とで連通状態が切り替えられる。また、真空ポンプの排出口と吸着パッドとを接続する第2通路は、第2電磁弁の非励磁状態と励磁状態とで連通状態が切り替えられる。
【0011】
第1電磁弁において、上記非励磁状態は、第1電磁弁よりも真空ポンプ側の第1通路における第1電磁弁側の端部を解放させ、且つ第1電磁弁よりも吸着パッド側の第1通路における第1電磁弁側の端部を閉塞させる状態であり、上記励磁状態は第1通路を連通させる状態である。このため、吸着パッドにより対象物を吸着する場合は、第1電磁弁を励磁状態にすることにより、第1通路を通じて吸着パッドから真空ポンプへ気体を吸引することができる。また、吸着パッドから対象物を離脱させる場合は、第1電磁弁を非励磁状態にすることにより、第1電磁弁よりも吸着パッド側の第1通路における第1電磁弁側の端部を閉塞させるとともに、第1電磁弁よりも真空ポンプ側の第1通路における解放された第1電磁弁側の端部から真空ポンプへ気体を吸引することができる。
【0012】
第2電磁弁において、上記非励磁状態は、第2電磁弁よりも真空ポンプ側の第2通路における第2電磁弁側の端部を解放させ、且つ第2電磁弁よりも吸着パッド側の第2通路における第2電磁弁側の端部を閉塞させる状態であり、上記励磁状態は第2通路を連通させる状態である。このため、吸着パッドにより対象物を吸着する場合は、第2電磁弁を非励磁状態にすることにより、第2電磁弁よりも吸着パッド側の第2通路における第2電磁弁側の端部を閉塞させるとともに、真空ポンプから、第2電磁弁よりも真空ポンプ側の第2通路における解放された第2電磁弁側の端部を通じて気体を排出することができる。また、吸着パッドから対象物を離脱させる場合は、第2電磁弁を励磁状態にすることにより、第2通路を通じて真空ポンプから吸着パッドへ気体を排出することができる。
【0013】
ここで、何らかの異常により真空ポンプが駆動されなくなり、且つ第1電磁弁及び第2電磁弁を駆動することができる場合には、第1電磁弁及び第2電磁弁をそれぞれ非励磁状態にすればよい。これにより、第1電磁弁よりも吸着パッド側の第1通路における第1電磁弁側の端部を閉塞させるとともに、第2電磁弁よりも吸着パッド側の第2通路における第2電磁弁側の端部を閉塞させることができる。したがって、吸着パッドへの気体の流入が抑制され、吸着パッドによる吸引力の低下を抑制することができる。その結果、吸着パッドから対象物が落下するまでの時間を延長することができる。
【0014】
また、何らかの異常により第1電磁弁及び第2電磁弁が駆動されなくなった場合には、第1電磁弁及び第2電磁弁がそれぞれ非励磁状態となる。この場合も、第1電磁弁よりも吸着パッド側の第1通路における第1電磁弁側の端部が閉塞されるとともに、第2電磁弁よりも吸着パッド側の第2通路における第2電磁弁側の端部が閉塞される。したがって、吸着パッドへの気体の流入が抑制され、吸着パッドによる吸引力の低下を抑制することができる。その結果、吸着パッドから対象物が落下するまでの時間を延長することができる。なお、上記の場合において、真空ポンプが駆動されていたとしても、第1電磁弁よりも真空ポンプ側の第1通路における解放された第1電磁弁側の端部から真空ポンプへ気体が吸引され、真空ポンプから、第2電磁弁よりも真空ポンプ側の第2通路における解放された第2電磁弁側の端部を通じて気体が排出される。このため、第2通路から気体を排出することのできない状態で真空ポンプが駆動されることを避けることができ、真空ポンプの損傷を抑制することができる。
【0015】
第1通路及び第2通路がそれぞれ独立して吸着パッドに接続されている場合には、それらの通路に対して気体を吸引したり排出したりする効率が低下するおそれがある。すなわち、吸着パッドにより対象物を吸着する場合に、第1電磁弁から吸着パッドまでの第1通路だけでなく、吸着パッドから第2電磁弁までの第2通路からも気体が吸引されることとなる。また、吸着パッドから対象物を離脱させる場合に、第2電磁弁から吸着パッドまでの第2通路だけでなく、吸着パッドから第1電磁弁までの第1通路へも気体が排出されることとなる。
【0016】
この点、第2の発明は、前記第1電磁弁よりも前記吸着パッド側の前記第1通路、及び前記第2電磁弁よりも前記吸着パッド側の前記第2通路は共通通路を有しており、前記共通通路が前記吸着パッドに接続されているといった構成を採用している。こうした構成によれば、吸着パッドにより対象物を吸着する場合に、第1電磁弁から共通通路までの第1通路、共通通路、及び共通通路から第2電磁弁までの第2通路から気体が吸引されることとなる。その結果、共通通路の分だけ気体が吸引される体積を減らすことができ、気体を吸引する効率を向上させることができる。また、気体を排出する効率も、同様にして向上させることができる。
【0017】
第3の発明では、前記共通通路における前記真空ポンプ側の端部に設けられ、非励磁状態と励磁状態とで前記第1通路及び前記第2通路の連通状態を切り替える第3電磁弁を備え、前記第3電磁弁において、前記非励磁状態は、前記第3電磁弁と前記第1電磁弁との間の前記第1通路における前記第3電磁弁側の端部を閉塞させ、且つ前記第2通路を連通させる状態であり、前記励磁状態は、前記第1通路を連通させ、且つ前記第3電磁弁と前記第2電磁弁との間の前記第2通路における前記第3電磁弁側の端部を閉塞させる状態である。
【0018】
上記構成によれば、吸着パッドにより対象物を吸着する場合は、第1電磁弁及び第3電磁弁を励磁状態にすることにより、第1通路を通じて吸着パッドから真空ポンプへ気体を吸引することができる。このとき、第3電磁弁により、第3電磁弁と第2電磁弁との間の第2通路における第3電磁弁側の端部が閉塞させられるため、吸着パッドにより対象物を吸着する場合に、第1電磁弁から共通通路までの第1通路、及び共通通路から気体が吸引されることとなる。その結果、第3電磁弁と第2電磁弁との間の第2通路の分だけ、気体が吸引される体積を減らすことができ、気体を吸引する効率を更に向上させることができる。また、気体を排出する効率も、同様にして更に向上させることができる。
【0019】
第4の発明では、前記吸着パッドによる吸着力が低下する異常を検出した場合に、その旨を報知する報知手段を備える。
【0020】
上記構成によれば、吸着パッドによる吸着力が低下する異常が検出された場合に、その旨が報知される。このため、吸着パッドによる吸着力が低下する異常が生じたとしても、吸着パッドによる吸着力が維持されている間に、吸着パッドによる吸着力を回復させたり、吸着パッドから対象物を取り外したりすることができる。その結果、吸着パッドから対象物が落下することを抑制することができる。
【0021】
具体的には、第5の発明のように、前記報知手段は、前記異常として、前記第1電磁弁への給電停止を検出するといった構成や、第6の発明のように、前記吸着パッドによる吸着力が低下する異常を検出した場合に、その旨を報知する報知手段を備え、前記報知手段は、前記異常として、前記第1電磁弁及び前記第3電磁弁の少なくとも一方への給電停止を検出するといった構成を採用することができる。
【0022】
第1電磁弁及び第3電磁弁の少なくとも一方への給電が停止した場合には、それらの電磁弁が非励磁状態となり、真空ポンプと吸着パッドとが連通しなくなる。このため、第1通路を通じて吸着パッドから真空ポンプへ気体を吸引することができなくなり、吸着パッドによる吸着力が低下することとなる。この点、上記第5の発明及び第6の発明によれば、第1電磁弁や第3電磁弁への給電停止が検出された場合にその旨が報知されるため、吸着パッドから対象物が落下することを抑制することができる。
【0023】
また、第7の発明のように、前記真空ポンプは、電気駆動式の真空ポンプであり、前記報知手段は、前記異常として、前記真空ポンプへの給電停止を検出するといった構成を採用することができる。
【0024】
電気駆動式の真空ポンプへの給電が停止した場合には、第1通路を通じて吸着パッドから真空ポンプへ気体を吸引することができなくなり、吸着パッドによる吸着力が低下することとなる。この点、上記構成によれば、電気駆動式の真空ポンプへの給電停止が検出された場合にその旨が報知されるため、吸着パッドから対象物が落下することを抑制することができる。
【0025】
上述したように、第1電磁弁及び第2電磁弁をそれぞれ非励磁状態にすることにより、第1電磁弁よりも吸着パッド側の第1通路における第1電磁弁側の端部を閉塞させるとともに、第2電磁弁よりも吸着パッド側の第2通路における第2電磁弁側の端部を閉塞させることができる。このため、吸着パッドによる吸引力の低下を抑制することができ、吸着パッドから対象物が落下するまでの時間を延長することができる。
【0026】
この点、第8の発明は、前記報知手段は、前記吸着パッドによる吸着力が低下する異常を検出した場合に、前記第1電磁弁及び第2電磁弁をそれぞれ非励磁状態に制御するといった構成を採用している。こうした構成によれば、吸着パッドによる吸着力が低下する異常が検出された場合に、報知手段により、その旨が報知されるとともに、第1電磁弁及び第2電磁弁がそれぞれ非励磁状態に制御される。したがって、例えば真空ポンプが駆動されなくなった場合に、吸着パッドによる吸引力の低下を抑制する制御が実行され、吸着パッドから対象物が落下することを効果的に抑制することができる。
【0027】
電磁弁を複数備え、各電磁弁に複数の通路が接続されている場合には、電磁弁周りの通路が複雑となり、真空吸着装置が大型化するおそれがある。
【0028】
この点、第9の発明では、前記第1通路と前記第1電磁弁との接続部、及び前記第2通路と前記第2電磁弁との接続部は、ブロックの内部に通路の形成されたブロック配管として一体に形成されているといった構成を採用している。こうした構成によれば、電磁弁周りの通路を効率的にまとめることができ、真空吸着装置を小型化することができる。
【0029】
ロボットにおいて、アームに真空吸着装置が取り付けられ、アームや真空吸着装置を制御することにより作業を行うことがある。ここで、アームに真空吸着装置を取り付けるためには、真空吸着装置が小型軽量である必要がある。このため、従来は、吸着パッドから気体を吸引するためにエジェクタや真空導入配管を使用したり、吸着パッドから対象物を離脱させるために、圧縮空気配管により吸着パッドへ圧縮空気を導入したりしている。しかしながら、これらの構成では、圧縮空気の配管等が必要となり、真空吸着装置の構成を簡素化することができない。
【0030】
この点、第10の発明では、第9の発明の真空吸着装置と、アームとを備えるロボットであって、前記真空ポンプは、電気駆動式の真空ポンプであり、前記真空吸着装置が前記アームに取り付けられているといった構成を採用している。このため、真空ポンプを電気駆動式にするとともに、真空ポンプを吸着用および離脱用のポンプとして兼用することで、圧縮空気の配管等を不要にすることができる。さらに、電磁弁周りの通路をブロック配管として一体に形成することで、真空吸着装置を小型軽量化することができる。その結果、アームに真空吸着装置を取り付けることを可能としつつ、真空吸着装置の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ロボットのアーム及び真空吸着装置を示す斜視図。
図2】真空吸着装置を示す側面図。
図3】真空吸着装置の空気圧回路図。
図4】真空吸着装置の空気圧回路図。
図5】ブロック配管を示す斜視図。
図6】真空吸着装置の変形例を示す空気圧回路図。
図7】真空吸着装置の他の変形例を示す空気圧回路図。
図8】真空吸着装置の他の変形例を示す空気圧回路図。
図9】真空吸着装置の他の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、ロボットのアームに取り付けられ、基板等(対象物)を吸着する真空吸着装置として具体化している。
【0033】
図1は、ロボット10のアーム11及び真空吸着装置20を示す斜視図である。同図に示すように、ロボット10は、アーム11を備えている。ロボット10は、多関節ロボットであり、アーム11は複数の関節を有している。アーム11の先端部には、手首部11aが設けられている。手首部11aには、真空吸着装置20が取り付けられている。
【0034】
図2を併せて参照して、真空吸着装置20について説明する。図2は、真空吸着装置20を示す側面図である。なお、説明の便宜上、図1では真空吸着装置20のケースを透過して内部が見える状態で示しており、図2では真空吸着装置20のケースを取り外した状態を示している。
【0035】
初めに、真空吸着装置20の概要について説明する。図1,2に示すように、真空吸着装置20は、真空ポンプ21、吸引用配管31m、ブロック配管50、電磁弁41,42,43、吸着パッド26、及び排出用配管32m等を備えている。真空吸着装置20では、吸着パッド26により基板を吸着する場合に、吸引用配管31m及びブロック配管50を通じて吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気を吸引して、真空ポンプ21から排出用配管32m及びブロック配管50を通じて大気中へ空気を排出する。また、真空吸着装置20では、吸着パッド26から基板を離脱させる場合に、吸引用配管31m及びブロック配管50を通じて大気中から真空ポンプ21へ空気を吸引して、真空ポンプ21から排出用配管32m及びブロック配管50を通じて吸着パッド26へ空気を排出(導入)する。電磁弁41,42,43は、吸着パッド26により基板を吸着する場合と、吸着パッド26から基板を離脱させる場合とで、空気の流れる通路の接続状態を切り替える。
【0036】
次に、真空吸着装置20の構成について詳細に説明する。真空吸着装置20は、本体プレート25(本体)を備えている。本体プレート25は矩形板状に形成されており、本体プレート25に各種の部品等が取り付けられている。
【0037】
本体プレート25の上面には、防振ゴム21aを介して真空ポンプ21が取り付けられている。真空ポンプ21は、電気駆動式の真空ポンプであり、詳しくは大気圧から使用できるドライポンプが望ましく、スクリュー型やスクロール型のドライポンプや、ダイアフラムポンプを用いることができる。
【0038】
真空ポンプ21は、モータ部22、運動変換部23、及びポンプ部24を備えている。モータ部22は、供給される電力により駆動されるモータを備える。運動変換部23は、モータ部22の回転運動を直線運動へ変換する機構を備えている。ポンプ部24は、運動変換部23からの駆動により空気(気体)の吸引及び排出を行う。ポンプ部24は、上記吸引用配管31mから空気を吸引する配管接続部と、上記排出用配管32mへ空気を排出する配管接続部とを備えている。
【0039】
本体プレート25の上面には、ブロック配管50が取り付けられている。ブロック配管50は、アルミニウム等で直方体状に形成されており、その最も短い辺が上記真空ポンプ21の長手方向に沿うように配置されている。このため、真空吸着装置20の長手方向の長さを短くすることができる。ブロック配管50の最も大きな面は、真空ポンプ21に対向している。ブロック配管50の上面には、上記吸引用配管31m及び排出用配管32mが接続されている。吸引用配管31m及び排出用配管32mは、柔軟性を有する配管で形成されており、例えばゴムチューブで形成されている。このため、真空ポンプ21の振動がブロック配管50へ伝わることを抑制することができる。ブロック配管50の内部には、吸引用配管31m、排出用配管32m、及び上記電磁弁41,42,43を、互いに接続する通路が形成されている。すなわち、これらの接続部は、ブロック配管50により一体に形成されている。
【0040】
ブロック配管50において、上記真空ポンプ21と反対側の面には、電磁弁41,42,43が取り付けられている。電磁弁41,42,43(第1電磁弁,第2電磁弁,第3電磁弁)は、同一の電磁弁であり、直方体状に形成されている。電磁弁41,42,43は、その長手方向が本体プレート25の上面に垂直となるように配置されており、互いに隣接してブロック配管50の長手方向に並べられている。このため、本体プレート25の上面において、電磁弁41,42,43の占める面積を小さくすることができる。電磁弁41,42,43には、それぞれ配線コネクタ44が取り付けられている。各配線コネクタ44には、電磁弁41,42,43へそれぞれ励磁電圧を供給する配線が接続されている。電磁弁41,42,43は、3ポート2位置式の電磁弁であり、非励磁状態と励磁状態とで各ポートの接続状態を切り替える。電磁弁41,42,43には、それぞれ手動スイッチ45が設けられている。各手動スイッチ45は、手動操作されることより、電磁弁41,42,43をそれぞれ励磁状態に切り替える。
【0041】
本体プレート25の下面には、共通配管35mが取り付けられている。共通配管35mは、本体プレート25の内部に形成された通路を介して、ブロック配管50に接続されている。また、共通配管35mは、フィルタ37を介して各吸着パッド26に接続されている。フィルタ37は、吸着パッド26からの吸引による塵等の異物を取り除く。
【0042】
各吸着パッド26は、共通配管35mを通じて内部の空気が吸引されることにより、吸着パッド26に接した基板を吸着する。また、各吸着パッド26は、共通配管35mを通じて内部へ空気が導入(排出)されることにより、吸着パッド26から基板を離脱させる。すなわち、吸着パッド26による吸着を解除して基板を解放する。
【0043】
次に、図3,4を参照して、真空吸着装置20の空気圧回路について説明する。図3では、非励磁状態にある電磁弁41,42,43を示しており、図4では、励磁状態にある電磁弁41,42,43を示している。
【0044】
図3に示すように、真空ポンプ21の吸引口21iと電磁弁41とが、第1吸引通路31により接続されている。電磁弁41と電磁弁43とが、第2吸引通路33により接続されている。また、真空ポンプ21の排出口21eと電磁弁42とが、第1排出通路32により接続されている。電磁弁42と電磁弁43とが、第2排出通路34により接続されている。そして、電磁弁43と吸着パッド26とが、フィルタ37を介して共通通路35により接続されている。なお、第1吸引通路31、第2吸引通路33、及び共通通路35により第1通路が構成され、第1排出通路32、第2排出通路34、及び共通通路35により第2通路が構成される。
【0045】
電磁弁41は、非励磁状態では、第1吸引通路31における電磁弁41側の端部31aを大気へ解放させ、且つ第2吸引通路33における電磁弁41側の端部33aを閉塞させる。電磁弁42は、非励磁状態では、第1排出通路32における電磁弁42側の端部32aを大気へ解放させ、且つ第2排出通路34における電磁弁42側の端部34aを閉塞させる。電磁弁43は、非励磁状態では、第2吸引通路33における電磁弁43側の端部33bを閉塞させ、且つ第2排出通路34と共通通路35とを連通させる。
【0046】
図4に示すように、電磁弁41は、励磁状態では、第1吸引通路31と第2吸引通路33とを連通させる。電磁弁42は、励磁状態では、第1排出通路32と第2排出通路34とを連通させる。電磁弁43は、励磁状態では、第2吸引通路33と共通通路35とを連通させ、且つ第2排出通路34における電磁弁43側の端部34bを閉塞させる。
【0047】
次に、図1,5を参照して、ブロック配管50の構成について詳細に説明する。ブロック配管50は、上記吸引用配管31mと電磁弁41との接続部、排出用配管32mと電磁弁42との接続部、電磁弁41と電磁弁43との接続部、電磁弁42と電磁弁43との接続部、電磁弁43と上記共通配管35mとの接続部、電磁弁41の大気への解放部、及び電磁弁42の大気への解放部を構成する。なお、同図において、ブロック配管50の最も短い辺が延びる方向を左右方向とし、ブロック配管50の長手方向を前後方向とする。
【0048】
図1図5(a)に示すように、ブロック配管50において電磁弁41に対応する位置に、上面に開口して下方へ延びた後に左方向へ延びて開口する第1ブロック通路51が形成されている。第1ブロック通路51の上方の開口部には吸引用配管31mが接続され、第1ブロック通路51の左方の開口部には電磁弁41の第1ポートが接続される。ブロック配管50において電磁弁42に対応する位置に、上面に開口して下方へ延びた後に左方向へ延びて開口する第2ブロック通路52が形成されている。第2ブロック通路52の上方の開口部には排出用配管32mが接続され、第2ブロック通路52の左方の開口部には電磁弁42の第1ポートが接続される。なお、ブロック配管50には、電磁弁41,42,43をブロック配管50に取り付けるためのねじ穴50aが、左方から右方へ延びるように形成されている。
【0049】
図1図5(b)に示すように、ブロック配管50において電磁弁41に対応する位置から電磁弁43に対応する位置にかけて、左面に開口して右方向へ延びた後に下方向へ延び、そして後方向へ延びた後に上方向へ延び、そして左方向へ延びて左面に開口する第3ブロック通路53が形成されている。第3ブロック通路53の前側の開口部には電磁弁41の第2ポートが接続され、第3ブロック通路53の後側の開口部には電磁弁43の第2ポートが接続される。ブロック配管50において電磁弁42に対応する位置から電磁弁43に対応する位置にかけて、左面に開口して右方向へ延びた後に上方向へ延び、そして後方向へ延びた後に左方向へ延びて左面に開口する第4ブロック通路54が形成されている。第4ブロック通路54の前側の開口部には電磁弁42の第2ポートが接続され、第4ブロック通路54の後側の開口部には電磁弁43の第3ポートが接続される。
【0050】
図1図5(c)に示すように、ブロック配管50において電磁弁41に対応する位置に、上面に開口して下方へ延びた後に左方向へ延びて開口する第5ブロック通路55が形成されている。第5ブロック通路55の上方の開口部は大気へ解放され、第5ブロック通路55の左方の開口部には電磁弁41の第3ポートが接続される。ブロック配管50において電磁弁42に対応する位置に、上面に開口して下方へ延びた後に左方向へ延びて開口する第6ブロック通路56が形成されている。第6ブロック通路56の上方の開口部は大気へ解放され、第6ブロック通路56の左方の開口部には電磁弁42の第3ポートが接続される。ブロック配管50において電磁弁43に対応する位置に、下面に開口して上方へ延びた後に左方向へ延びて開口する第7ブロック通路57が形成されている。第7ブロック通路57の下方の開口部は、上記本体プレート25の内部に形成された通路を介して共通配管35mに接続され、第7ブロック通路57の左方の開口部には電磁弁43の第1ポートが接続される。
【0051】
このように、ブロック配管50によれば、多くの通路を効率的に配置することができ、真空吸着装置20が大型化することを抑制することができる。また、電磁弁41,42,43は、その長手方向が本体プレート25の上面に垂直となるように配置されており、互いに隣接してブロック配管50の長手方向に並べられている。このため、ブロック配管50の内部の通路を、上下方向、左右方向、及び前後方向に延びる通路だけで形成することができ、こうした通路の形成を容易化することができる。
【0052】
次に、図3を参照して、真空吸着装置20の制御について説明する。真空ポンプ21及び電磁弁41,42,43の駆動は、上記ロボット10の制御装置70により制御される。制御装置70は、吸着パッド26により基板を吸着させる場合、及び吸着パッド26から基板を離脱させる場合に真空ポンプ21を駆動させる。なお、真空ポンプ21を常に駆動させておいて、電磁弁41,42,43により空気の流れる通路の接続状態を切り替えるようにすることもできる。
【0053】
制御装置70は、吸着パッド26により基板を吸着させる場合に、電磁弁41,43を励磁状態とし、電磁弁42を非励磁状態とする。これにより、共通通路35、第2吸引通路33、及び第1吸引通路31を通じて、吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気が吸引される。そして、真空ポンプ21から、第1排出通路32における解放された端部32aを通じて空気が排出される。その結果、吸着パッド26により基板が吸着される。
【0054】
また、制御装置70は、吸着パッド26から基板を離脱させる場合に、電磁弁42を励磁状態とし、電磁弁41,43を非励磁状態とする。これにより、第1吸引通路31における解放された端部31aから真空ポンプ21へ空気が吸引される。そして、第1排出通路32、第2排出通路34、及び共通通路35を通じて、真空ポンプ21から吸着パッド26へ空気が排出(導入)される。その結果、吸着パッド26から基板が離脱させられる。
【0055】
ここで、ロボット10を作動させて吸着パッド26により基板を吸着させている時に、ロボット10の設置されている設備で停電が生じたとする。その結果、真空ポンプ21、電磁弁41,42,43、及び制御装置70への電力供給が停止し、真空ポンプ21を駆動することができなくなる。このため、共通通路35、第2吸引通路33、及び第1吸引通路31を通じて吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気を吸引することができなくなり、吸着パッド26による吸着力が低下することとなる。
【0056】
このとき、電磁弁41,42,43へ励磁電圧が供給されなくなるため、電磁弁41,42,43は、図3に示すように非励磁状態となる。このため、電磁弁43により、第2排出通路34と共通通路35とが連通させられ、電磁弁42により、第2排出通路34における電磁弁42側の端部34aが閉塞させられる。したがって、共通通路35及び第2排出通路34によって閉回路が形成され、吸着パッド26への空気の流入を抑制することができる。その結果、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができ、吸着パッド26から基板が落下するまでの時間を延長することができる。よって、吸着パッド26から基板が落下するまでの間に、作業者が吸着パッド26から基板を取り外すことが可能となる。
【0057】
また、ロボット10を作動させて吸着パッド26により基板を吸着させている時に、真空ポンプ21を駆動させる信号が遮断されたり、真空ポンプ21への電力供給が停止されたりしたとする。その結果、真空ポンプ21を駆動することができなくなり、吸着パッド26による吸着力が低下することとなる。
【0058】
このとき、電磁弁43が励磁状態になっており、電磁弁41を制御することができる場合には、電磁弁41を非励磁状態にすることにより、第2吸引通路33における電磁弁41側の端部33aを閉塞させることができる。したがって、共通通路35及び第2吸引通路33によって閉回路が形成され、吸着パッド26への空気の流入を抑制することができる。その結果、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができる。
【0059】
なお、電磁弁42が非励磁状態になっており、電磁弁43を制御することができる場合には、電磁弁43を非励磁状態にしてもよい。電磁弁42により、第2排出通路34における電磁弁42側の端部34aが閉塞させられており、電磁弁43により、第2排出通路34と共通通路35とが連通させられる。したがって、この場合は、共通通路35及び第2排出通路34によって閉回路が形成される。したがって、吸着パッド26への空気の流入を抑制することができ、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができる。
【0060】
また、ロボット10を作動させて吸着パッド26により基板を吸着させている時に、電磁弁41を励磁状態に駆動する信号が遮断されたり、電磁弁41への励磁電圧が停止されたりしたとする。その結果、第2吸引通路33と第1吸引通路31とが連通しなくなり、吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気を吸引することができなくなる。このため、吸着パッド26による吸着力が低下することとなる。
【0061】
このとき、電磁弁43が励磁状態になっており、電磁弁41により、第2吸引通路33における電磁弁41側の端部33aが閉塞させられるため、共通通路35及び第2吸引通路33によって閉回路が形成される。したがって、この場合も、吸着パッド26への空気の流入を抑制することができ、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができる。
【0062】
また、ロボット10を作動させて吸着パッド26により基板を吸着させている時に、電磁弁43を励磁状態に駆動する信号が遮断されたり、電磁弁43への励磁電圧が停止されたりしたとする。その結果、共通通路35と第2吸引通路33とが連通しなくなり、吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気を吸引することができなくなる。このため、吸着パッド26による吸着力が低下することとなる。
【0063】
このとき、電磁弁42により、第2排出通路34における電磁弁42側の端部34aが閉塞させられており、電磁弁43により、第2排出通路34と共通通路35とが連通させられることとなる。このため、この場合も、共通通路35及び第2排出通路34によって閉回路が形成される。したがって、吸着パッド26への空気の流入を抑制することができ、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができる。なお、上記の場合において、真空ポンプ21が駆動されていたとしても、真空ポンプ21から第1排出通路32における解放された端部32aを通じて空気が排出される。このため、真空ポンプ21の下流の通路(排出通路32,34)から空気を排出することのできない状態で真空ポンプ21が駆動されることを避けることができ、真空ポンプ21の損傷を抑制することができる。
【0064】
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
【0065】
・何らかの異常により真空ポンプ21が駆動されなくなり、且つ電磁弁41及び電磁弁42を駆動することができる場合には、電磁弁41及び電磁弁42をそれぞれ非励磁状態にすればよい。これにより、第2吸引通路33における電磁弁41側の端部33aを閉塞させるとともに、第2排出通路34における電磁弁42側の端部34aを閉塞させることができる。したがって、吸着パッド26への空気の流入が抑制され、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができる。その結果、吸着パッド26から基板が落下するまでの時間を延長することができる。
【0066】
また、何らかの異常により電磁弁41及び電磁弁42が駆動されなくなった場合には、電磁弁41及び電磁弁42がそれぞれ非励磁状態となる。この場合も、第2吸引通路33における電磁弁41側の端部33aが閉塞されるとともに、第2排出通路34における電磁弁42側の端部34aが閉塞される。したがって、吸着パッド26への空気の流入が抑制され、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができる。その結果、吸着パッド26から基板が落下するまでの時間を延長することができる。
【0067】
なお、上記の場合において、真空ポンプ21が駆動されていたとしても、第1吸引通路31における解放された電磁弁41側の端部31aから真空ポンプ21へ空気が吸引され、真空ポンプ21から、第1排出通路32における解放された電磁弁42側の端部32aを通じて空気が排出される。このため、排出通路32,34から空気を排出することのできない状態で真空ポンプ21が駆動されることを避けることができ、真空ポンプ21の損傷を抑制することができる。
【0068】
・吸着パッド26から空気を吸引する通路(吸引通路31,33)と、吸着パッド26へ空気を排出する通路(排出通路32,34)とが、それぞれ独立して吸着パッド26に接続されている場合には、それらの通路に対して空気を吸引したり排出したりする効率が低下するおそれがある。なお、この場合は電磁弁43及び共通通路35が存在しない。すなわち、吸着パッド26により基板を吸着する場合に、電磁弁41から吸着パッド26までの第2吸引通路33だけでなく、吸着パッド26から電磁弁42までの第2排出通路34からも空気が吸引されることとなる。また、吸着パッド26から基板を離脱させる場合に、電磁弁42から吸着パッド26までの第2排出通路34だけでなく、吸着パッド26から電磁弁41までの第2吸引通路33へも空気が排出されることとなる。
【0069】
この点、上記実施形態では、電磁弁41よりも吸着パッド26側の吸引通路、及び電磁弁42よりも吸着パッド26側の排出通路は共通通路35を有しており、共通通路35が吸着パッド26に接続されている。こうした構成によれば、吸着パッド26により基板を吸着する場合に、第2吸引通路33、共通通路35、及び第2排出通路34から空気が吸引されることとなる。その結果、共通通路35の分だけ空気が吸引される体積を減らすことができ、空気を吸引する効率を向上させることができる。また、空気を排出する効率も、同様にして向上させることができる。
【0070】
・吸着パッド26により基板を吸着する場合は、電磁弁41及び電磁弁43を励磁状態にすることにより、吸引通路31,33及び共通通路35を通じて吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気を吸引することができる。このとき、電磁弁43により、第2排出通路34における電磁弁43側の端部34bが閉塞させられるため、吸着パッド26により基板を吸着する場合に、第2吸引通路33、及び共通通路35から空気が吸引されることとなる。その結果、第2排出通路34の分だけ、空気が吸引される体積を減らすことができ、空気を吸引する効率を更に向上させることができる。また、空気を排出する効率も、同様にして更に向上させることができる。
【0071】
・電磁弁を複数備え、各電磁弁に複数の通路が接続されている場合には、電磁弁周りの通路が複雑となり、真空吸着装置が大型化するおそれがある。
【0072】
この点、上記実施形態では、吸引通路31,33と電磁弁41との接続部、排出通路32,34と電磁弁42との接続部、及び第2吸引通路33,第2排出通路34,共通通路35と電磁弁43との接続部は、ブロックの内部に通路の形成されたブロック配管50として一体に形成されている。こうした構成によれば、電磁弁41,42,43周りの通路を効率的にまとめることができ、真空吸着装置20を小型化することができる。
【0073】
・ロボット10において、アーム11に真空吸着装置20が取り付けられ、アーム11や真空吸着装置20を制御することにより作業が行われる。ここで、アーム11に真空吸着装置20を取り付けるためには、真空吸着装置20が小型軽量である必要がある。このため、従来は、吸着パッド26から空気を吸引するためにエジェクタや真空導入配管を使用したり、吸着パッド26から基板を離脱させるために、圧縮空気配管により吸着パッド26へ圧縮空気を導入したりしている。しかしながら、これらの構成では、圧縮空気の配管等が必要となり、真空吸着装置20の構成を簡素化することができない。
【0074】
この点、上記実施形態では、真空ポンプ21は、電気駆動式の真空ポンプ21であり、真空吸着装置20がアーム11に取り付けられている。このため、真空ポンプ21を電気駆動式にするとともに、真空ポンプ21を吸着用および離脱用のポンプとして兼用することで、圧縮空気の配管等を不要にすることができる。さらに、電磁弁41,42,43周りの通路をブロック配管50として一体に形成することで、真空吸着装置20を小型軽量化することができる。その結果、アーム11に真空吸着装置20を取り付けることを可能としつつ、真空吸着装置20の構成を簡素化することができる。
【0075】
なお、上記実施形態を、次のように変形して実施することもできる。上記実施形態と同一の部材については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0076】
・上記実施形態では、電磁弁41,42,43周りの通路を、ブロック配管50として一体に形成したが、それらの通路を真空吸着装置20のケース内に収納することができれば、管状の配管で形成してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、共通通路35における真空ポンプ21側の端部に電磁弁43を備えるようにしたが、図6に示す構成を採用することもできる。すなわち、吸着パッド26に接続された共通通路135と電磁弁41とを接続する通路(第2吸引通路133,第3吸引通路137)に電磁弁144(第4電磁弁)を設けるとともに、共通通路135と電磁弁42とを接続する通路(第2排出通路134,第3排出通路138)に電磁弁145(第5電磁弁)を設けることもできる。
【0078】
電磁弁144は、非励磁状態で、第2吸引通路133における電磁弁144側の端部133bを閉塞させ、且つ第3吸引通路137における電磁弁144側の端部137aを閉塞させるとともに、励磁状態で、第2吸引通路133と第3吸引通路137とを連通させる。また、電磁弁145は、非励磁状態で、第2排出通路134における電磁弁145側の端部134bを閉塞させ、且つ第3排出通路138における電磁弁145側の端部138aを閉塞させるとともに、励磁状態で、第2排出通路134と第3排出通路138とを連通させる。
【0079】
そして、制御装置70は、吸着パッド26により基板を吸着させる場合に、電磁弁41,144を励磁状態とし、電磁弁42,145を非励磁状態とする。これにより、吸着パッド26により基板が吸着される。また、制御装置70は、吸着パッド26から基板を離脱させる場合に、電磁弁42,145を励磁状態とし、電磁弁41,144を非励磁状態とする。これにより、吸着パッド26から基板が離脱させられる。
【0080】
特に、ロボット10を作動させて吸着パッド26により基板を吸着させている時に、電磁弁144を励磁状態に駆動する信号が遮断されたり、電磁弁144への励磁電圧が停止されたりしたとする。このとき、電磁弁145により、第3排出通路138における電磁弁145側の端部138aが閉塞させられており、電磁弁144により、第3吸引通路137における電磁弁144側の端部137aが閉塞させられることとなる。したがって、共通通路135、第3吸引通路137、及び第3排出通路138によって閉回路が形成され、図3の構成と比較して閉回路の体積を小さくすることができる。その結果、吸着パッド26への空気の流入を更に抑制することができ、吸着パッド26による吸引力の低下を更に抑制することができる。
【0081】
・上記実施形態では、共通通路35における真空ポンプ21側の端部に電磁弁43を備えるようにしたが、図7に示すように、電磁弁43を省略することもできる。すなわち、共通通路35に第2吸引通路33を接続するとともに、共通通路35に第2排出通路34を接続することもできる。
【0082】
そして、制御装置70は、吸着パッド26により基板を吸着させる場合に、電磁弁41を励磁状態とし、電磁弁42を非励磁状態とする。これにより、共通通路35、第2吸引通路33、及び第1吸引通路31を通じて、吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気が吸引される。その結果、吸着パッド26により基板が吸着される。なお、このとき、第2排出通路34の内部の空気も吸引される。また、制御装置70は、吸着パッド26から基板を離脱させる場合に、電磁弁42を励磁状態とし、電磁弁41を非励磁状態とする。これにより、第1排出通路32、第2排出通路34、及び共通通路35を通じて、真空ポンプ21から吸着パッド26へ空気が排出される。その結果、吸着パッド26から基板が離脱させられる。なお、このとき、第2吸引通路33の内部へも空気が排出される。
【0083】
ここで、ロボット10を作動させて吸着パッド26により基板を吸着させている時に、電磁弁41を励磁状態に駆動する信号が遮断されたり、電磁弁41への励磁電圧が停止されたりしたとする。このとき、電磁弁42により、第2排出通路34における電磁弁42側の端部34aが閉塞させられており、電磁弁41により、第2吸引通路33における電磁弁41側の端部33aが閉塞させられることとなる。このため、共通通路35、第2排出通路34、及び第2吸引通路33によって閉回路が形成される。したがって、吸着パッド26への空気の流入を抑制することができ、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができる。
【0084】
・さらに、図7において共通通路35を省略して、図8に示す構成を採用することもできる。すなわち、第2吸引通路233及び第2排出通路234をそれぞれ独立させて、吸着パッド26に接続することもできる。なお、第2吸引通路233にはフィルタ37が設けられている。
【0085】
そして、制御装置70は、図7の構成と同様にして、電磁弁41,42を制御する。すなわち、吸着パッド26により基板を吸着させる場合に、第2吸引通路233、及び第1吸引通路31を通じて、吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気を吸引させる。その結果、吸着パッド26により基板が吸着される。なお、このとき、第2排出通路234の内部の空気も吸引される。また、吸着パッド26から基板を離脱させる場合に、第1排出通路32、及び第2排出通路234を通じて、真空ポンプ21から吸着パッド26へ空気を排出させる。その結果、吸着パッド26から基板が離脱させられる。なお、このとき、第2吸引通路233の内部へも空気が排出される。
【0086】
ここで、ロボット10を作動させて吸着パッド26により基板を吸着させている時に、電磁弁41を励磁状態に駆動する信号が遮断されたり、電磁弁41への励磁電圧が停止されたりしたとする。このとき、電磁弁42により、第2排出通路234における電磁弁42側の端部234aが閉塞させられており、電磁弁41により、第2吸引通路233における電磁弁41側の端部233aが閉塞させられることとなる。このため、第2排出通路234、及び第2吸引通路233によって閉回路が形成される。したがって、吸着パッド26への空気の流入を抑制することができ、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができる。
【0087】
図3において、制御装置70(報知手段)が、吸着パッド26による吸着力が低下する異常を検出した場合に、その旨を報知するようにしてもよい。具体的には、制御装置70は、上記異常として、電磁弁41への給電停止を検出するといった構成や、上記異常として、電磁弁41及び電磁弁43の少なくとも一方への給電停止を検出するといった構成を採用することができる。また、圧力センサ38の信号に基づいて、吸着パッド26による吸着力の低下を直接検出することもできる。
【0088】
電磁弁41及び電磁弁43の少なくとも一方への給電が停止した場合には、それらの電磁弁41,43が非励磁状態となり、真空ポンプ21と吸着パッド26とが連通しなくなる。このため、吸引通路31,33及び共通通路35を通じて吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気を吸引することができなくなり、吸着パッド26による吸着力が低下することとなる。
【0089】
この点、上記構成によれば、電磁弁41や電磁弁43への給電停止が検出された場合にその旨が報知される。このため、吸着パッド26による吸着力が低下する異常が生じたとしても、吸着パッド26による吸着力が維持されている間に、吸着パッド26による吸着力を回復させたり、吸着パッド26から基板を取り外したりすることができる。その結果、吸着パッド26から基板が落下することを抑制することができる。
【0090】
また、制御装置70は、上記異常として、真空ポンプ21への給電停止を検出するといった構成を採用することができる。
【0091】
電気駆動式の真空ポンプ21への給電が停止した場合には、吸引通路31,33及び共通通路35を通じて吸着パッド26から真空ポンプ21へ空気を吸引することができなくなり、吸着パッド26による吸着力が低下することとなる。この点、上記構成によれば、電気駆動式の真空ポンプ21への給電停止が検出された場合にその旨が報知されるため、上記と同様にして、吸着パッド26から基板が落下することを抑制することができる。
【0092】
・上述したように、電磁弁41及び電磁弁42をそれぞれ非励磁状態にすることにより、第2吸引通路33における電磁弁41側の端部33aを閉塞させるとともに、第2排出通路34における電磁弁42側の端部34aを閉塞させることができる。このため、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制することができ、吸着パッド26から基板が落下するまでの時間を延長することができる。
【0093】
この点、制御装置70は、吸着パッド26による吸着力が低下する異常を検出した場合に、電磁弁41及び電磁弁42をそれぞれ非励磁状態に制御するといった構成を採用することが有効である。こうした構成によれば、吸着パッド26による吸着力が低下する異常が検出された場合に、制御装置70により、その旨が報知されるとともに、電磁弁41及び電磁弁42がそれぞれ非励磁状態にされる。したがって、例えば真空ポンプ21が駆動されなくなった場合に、吸着パッド26による吸引力の低下を抑制する制御が実行され、吸着パッド26から基板が落下することを効果的に抑制することができる。
【0094】
図9に示すように、真空吸着装置20において、吸着パッド26同士の間隔を狭く設定した構成を採用することもできる。具体的には、各吸着パッド26は、本体プレート25の下面の四隅に取り付けられている。また、吸着パッド26の形状や大きさは、任意に設定することができる。
【0095】
・上記実施形態では、ロボット10のアーム11に取り付けられ、基板等(対象物)を吸着する真空吸着装置20として具体化したが、搬送テーブル等に取り付けられる真空吸着装置20として具体化することもできる。
【符号の説明】
【0096】
10…ロボット、11…アーム、20…真空吸着装置、21…真空ポンプ、21i…吸引口、21e…排出口、26…吸着パッド、31…第1吸引通路(第1通路)、32…第1排出通路(第2通路)、33,133,233…第2吸引通路(第1通路)、34,134,234…第2排出通路(第2通路)、35,135…共通通路(第1通路、第2通路)、41…電磁弁(第1電磁弁)、42…電磁弁(第2電磁弁)、43…電磁弁(第3電磁弁)、50…ブロック配管、70…制御装置(報知手段)、137…第3吸引通路(第1通路)、138…第3排出通路(第2通路)、144…電磁弁(第4電磁弁)、145…電磁弁(第5電磁弁)。
図1
図2
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図6
図7
図8
図9