【実施例】
【0021】
図1は本発明の実施例である同時二軸延伸機の平面図、
図2は
図1に示す等長リンク31の断面図、
図3は
図1のシート状物を延伸する部分に設けたレールジョイント部の平面図、その構成および動作は以下の通りである。
【0022】
シート状物1の端部を把持する複数(多数)の掴み装置2をシート状物1の両側に具備した無端リンク装置3(図中リンクの一部並びに片側の無端リンクは省略)は、折尺状に形成された複数個(多数個)の等長リンク装置31より構成される。さらに、無端リンク装置3は、シート状物の入口側スプロケット4で駆動される。そして、入口に設けられた開閉ガイド等の開閉手段(図示せず)により掴み装置2が開閉されてシート状物1を掴み、予熱区間(図示せず)で延伸に必要な温度に加熱される。
【0023】
さらに、無端リンク装置3は、往路の延伸区間において、進行方向に末広がり状(TD方向)に配置されたガイドレール5,6に案内されて掴みピッチP1からP2に徐々に拡大(MD方向)することにより、シート状物1を縦横二方向(MD方向およびTD方向)に同時に延伸し、その後、熱処理区間において所定の温度で熱固定し、冷却区間で急冷し、出口に設けられた開閉ガイド等の開閉手段(図示せず)により掴み装置2を開放してシート状物1を外し、外されたシート状物1はそのまま進行させることになる。さらに、無端リンク装置3は、出口側スプロケット7により駆動されて、往路を通って入口側スプロケット4に戻るように構成される。
【0024】
なお、無端リンク装置3のリンク構成としては、特公平5−4896号公報に記載された無端リンク装置を参照することができる。
【0025】
案内用ガイドレール5、6は、
図2に示すように凸状部材で構成され、シート状物側と反シート状物側との一対の組になっている。シート状物側のガイドレール5には、シート状物1を把持する掴み装置2が連結されたジョイント用リンク軸8が配置され、他方の反シート状物側のガイドレール6には、掴み装置2を有さないジョイント用リンク軸9が配置される。リンク軸8とリンク軸9とは、リンクプレート14及び15により連結される。
【0026】
リンク軸8,9の最下端には第1の転がり軸受である軸受ローラを有する軸受ホルダ10,11が連結され、軸受ホルダ10,11の両側、すなわち、軸受ホルダ10,11のそれぞれの軸受ローラの外周部に一対の第2の転がり軸受である鍔付ラジアル軸受12[12a,12b],13[13a,13b]が取り付けられている。鍔付ラジアル軸受12,13は等長リンク装置31の動きを規制する案内用ガイドレール5,6の両側面を転動し、かつ、ガイドレール5,6の上面と、鍔付ラジアル軸受12,13の鍔の接触で等長リンク装置31の自重を保持するように配置されている。
【0027】
上記一対の組からなるガイドレール5、6は、
図1に示すように、シート状物1側に配置される往路と、上記往路の外側に周回するように配置される復路からなる。
【0028】
50(55、56、67、68)は、ガイドレール5,6を共通に固定するレールベッド(レールベース)であり、往路用の固定ベッド50、可動ベッド55、56と、復路用の固定ベッド50、可動ベッド67、68で構成される。案内用ガイドレール5,6は、前記可動ベッドの回動とともに回動し、その屈曲部で屈曲するように構成されている。
【0029】
図3に示す例では、往路において無端リンク装置3を案内する一対のガイドレール5,6の屈曲部に可撓性レールジョイント51を配置し、フィルム入口側の可撓性レールジョイント(
図1のA部)から、フィルム出口側の可撓性レールジョイント(
図1のB部)までの構成を模式的に示している。図中、左側が予熱側(シート入口側)で、右側が延伸後のシート出口側に相当する。また、
図3は、横方向(TD方向)の延伸倍率が1.0の時のレール状態(すなわち、横延伸なしのA部まで)から、横方向(TD方向)の延伸倍率がε倍(ε>1.0)のレール状態(すなわち、延伸後のB部まで)を示す。
【0030】
可撓性レールジョイント51は、
図4に示すように、中央部にレールの曲げに対応した屈曲スリット部52と、その両側部にレールの長手方向の伸縮に対応した伸縮スリット部53が設けられている。前記両スリット部は、レール両側面に垂直な複数のスリット52a、53aが千鳥状に施される。屈曲スリット部52のスリットピッチP3は、伸縮スリット部53のスリットピッチP4より大きく設定される。より小さなピッチを有する伸縮スリット部53は、伸縮しやすくなり、また、スリット数を増やせばより伸縮長さを長くすることができる。伸縮スリット部53はスリットのピッチが小さいので、屈曲もし易くなるが、
図4に示すように、両側面に曲げ防止ガイド54を設けることにより、曲げを防止して伸縮専用とする。
【0031】
なお、屈曲スリット部52のスリット本数を多くすれば、レールの曲げが容易になるとともに、スリット52aの幅を狭く設定できるので、より滑らかなカーブを形成できる。このとき、スリットの形成は用いる加工機具にもよるが、曲げによる変位量及びスリット本数を考慮しスリット幅をできるだけ狭くすることが望ましい。
【0032】
一方、より大きなピッチのスリットをもつ屈曲スリット部52は、伸縮と屈曲に対する剛性が大きい。したがって、屈曲スリット部52での屈曲を緩やかな円弧(曲率半径大)にすることができ、この部分を走行するリンク装置は高速でも円滑に案内される。
【0033】
このように、スリット部を屈曲用と伸縮用とに機能分けすることにより、屈曲する位置を屈曲スリット部52に特定できるので、平行な2本のガイドレールを同一の場所で屈曲させることができ、2本のガイドレールの間隔を維持して平行度を保つことができる。
【0034】
図3、
図4で、可撓性レールジョイント51の予熱側端部(左側)は、固定ベット50に固定され、可撓性レールジョイント51の延伸側端部(右側)は可動ベット55又は56に固定される。57は固定用のボルトであり、屈曲スリット部52と伸縮スリット部53を避けた間の位置に設けられる。58は屈曲スリット部52の両側に設けられたボルト挿通用の長穴である。この長穴58に挿入された固定用のボルト57によって、可撓性レールジョイント51が、各ベッド50、55、56に対して伸縮(移動)可能に固定される。
【0035】
図5は、
図3の一部を拡大して示す構造図で、往路の一対のガイドレール(シート状物側)を図の上方に示している。なお、
図3には示されてないが、復路の一対のガイドレール(反シート状物側)を図の下方に示している。往路の一対のガイドレール5、6は、固定ベッド50と可動ベッド55、56に共通に固定される。また、復路の一対のガイドレール5、6は、固定ベッド50と可動ベッド67、68に共通に固定される。
【0036】
固定ベット50と可動ベット55、67との間、可動ベット55と56の間、および可動ベット67と68の間は、それぞれピン60と61によって回動可能に結合されている。また、ピン60、61で結合される固定ベッド50、可動ベッド55、56、67、68の間の対向面には隙間62、63が設けられ、ピン結合されたレールベッド同士が所定角度回動できるように構成されている。
【0037】
固定ベット50,可動ベット55及び56への可撓性レールジョイント51の取り付け時は、レールベッドの上記隙間62および63に、各可撓性レールジョイント51の中央の屈曲スリット部52が位置するように固定される。
【0038】
固定ベッド50に対して可動ベット55がピン60を中心にシート状物のTD延伸方向(図面の下側)に所定量回動すると、可撓性レールジョイント51も共に回動して内側、すなわちシート状物側(図面の上側)に凸状となり、外側すなわち反シート状物側(図面の下側)に凹状となる。
図5では、可動ベッド55に対して可動ベット56も図面の下側に回動するように構成され、各可動ベッドを少しずつ回動させて末広がり状に形成すれば、その上に固定される可撓性レールジョイント51を滑らかに湾曲させることができ、この部分をリンク装置が円滑に高速走行することができる。なお、延伸部のシート出口側の可撓性レールジョイント51は、
図3にB部で示すように、凸状と凹状が上記と逆の状態になる。
【0039】
図6は、
図5の往路のレールベッドの連結部分を拡大して示す説明図である。固定ベッド50(または可動ベッド55)に対して、可動ベッド55(または可動ベッド56)がピン60、61を中心に矢印で示す時計回りに回動したとき、一対のガイドレール5、6の可撓性レールジョイント51が共に時計回りに屈曲する。このとき、ガイドレール5側のレールベッドの隙間62(63)が広がって、ガイドレール5の可撓性レールジョイント51に引っ張り力が加わる。他方、ガイドレール6側のレールベッドの隙間62(63)が縮まって、ガイドレール6の可撓性レールジョイント51に圧縮力が加わる。
【0040】
上記引っ張り力は、ガイドレール5の可撓性レールジョイント51の伸縮スリット部53が伸びることで吸収され、また、上記圧縮力は、ガイドレール6の可撓性レールジョイント51の伸縮スリット部53が縮むことで吸収される。従って、各ガイドレールの可撓性レールジョイント51の屈曲スリット部52には、主に屈曲力が加わり、一対のガイドレール5、6は共に、同一場所の屈曲スリット部52で屈曲し、この屈曲する部分での間隔は同一に維持され、平行度を保つことができる。
【0041】
したがって、ガイドレールの湾曲部において、掴み装置がMD方向に変化することがないので、振動や騒音が発生せず、シート状物の搬送にも悪影響を与える恐れがない。
【0042】
次に、レールベッドの回動駆動機構を説明する。
図7は、
図1に示す実施例の熱処理区間(延伸領域)における無端リンク装置3の構成の概略を示している。この図において、延伸領域での無端リンク装置3は、上下方向について概略3段の構成に区分けされて構成されている。この無端リンク装置3が接地される床面の上方に据付ベース73が配置されている。この据付ベース73の上方に無端リンク装置3の部材が連結されて配置されており、据付ベース73は、これらの部材の重量とともにリンクを駆動する際に生じる荷重を支持する基礎の部材となっている。
【0043】
この据付ベース73上方には、支持体74を介して走行台車75が連結されて、その位置が固定されている。この走行台車75は、その上方に連結された部材を支持するとともに、リンクの駆動時の荷重を支持して下方の据付ベース73側に伝達する。さらに、この走行台車75上には、往復路のガイドレール5、6及びこれに案内される複数リンクの位置をシート状物1の幅方向に移動させるためのスライドベース76とこれを移動させるための駆動部77及びこの駆動部77により駆動される駆動シャフト78とが連結されている。つまり、走行台車75のシート状物1の端部側(左側)には、ガイドレール5、6がその上に配置されるスライドベース76が配置され、その反対側(装置外側、右側)の端部に、駆動シャフト78を回転駆動するモータ部79を含む駆動部77が配置されている。
【0044】
さらに、走行台車75上面には、スライドベース76がその上に摺動可能に載せられるTDガイドレール80が配置されており、スライドベース76が駆動シャフト78の動作に応じて、このTDガイドレール80上をこれに沿って移動する。また、スライドベース76のシート状物側端部の上方には、往路のガイドレール5、6をその上に共通に支持するレールベッド55、67載置され、スライドベース76の移動に伴って、ガイドレール5、6のシート状物の幅方向(TD方向)にその位置が移動される。
【0045】
また、据付ベース73あるいは支持体74と走行台車75との間には、走行台車75がその上にMD方向に移動可能に載置される2つのMDガイドレール84が配置されている。これは、ガイドレールあるいはスライドベース76をシート状物の幅方向に移動させた場合に、必要な延伸の量を実現する上で必要となるリングガイドレール3のMD方向の移動を実現するために設置されている。
【0046】
本実施例では、走行台車75のシート状物幅方向の端部(右側)には、駆動部77が連結されて固定され、駆動部77内のモータ部79の駆動により、その表面にねじ状の溝が配置された駆動シャフト78の回転が、スライドベース76下部に配置され、駆動シャフト79表面のねじ状溝と噛み合わされるねじ部85を介して伝達されて、スライドベース76上面にシート状物の幅方向に延在する略直線状のTDガイドレール80に沿ってTD方向にスライドベース76が移動する。この際、スライドベース76上に連結されて配置されたレールベッド55(56)、67(68)は、スライドベース76とともにその位置がTD方向に移動する。
【0047】
本実施例は、延伸領域のガイドレール5,6を末広がり状に配置するため、延伸領域のガイドレールの内周(往路)と外周(復路)各々の下方に、複数の部材を連結して構成した支持部材(レールベッド)を配置している。すなわち、内周のガイドレール5、6を固定するレールベッド55、56と、外周のガイドレール5、6を固定するレールベッド67、68とを備えている。そして、ピン結合された可動ベッド55と56は、駆動部77の駆動によってピンを中心に回動して、内周(往路)のガイドレール5、6を回動する。また、ピン結合された可動ベッド67と68は、駆動部77の駆動によってピンを中心に回動して外周(復路)のガイドレール5、6を回動する。
【0048】
また、可撓性レールジョイント51の材質は鋼材が使用できるが、好ましくはバネ鋼材や耐熱性のエンジニアプラスチックが良い。なお、本実施例では、レール側面に直角方向のスリットを側面に対して直角方向に切込みを設けたものについて述べたが、スリットの切込みをレール側面に対して斜めに設けても良い。