特許第5662891号(P5662891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662891
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】火花放電検出方法及び火花放電検出装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 17/00 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   F02P17/00 W
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-156210(P2011-156210)
(22)【出願日】2011年7月15日
(65)【公開番号】特開2013-24035(P2013-24035A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2013年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】大澤 圭一
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−012337(JP,A)
【文献】 特開昭61−169671(JP,A)
【文献】 特開平04−295180(JP,A)
【文献】 特開昭49−057231(JP,A)
【文献】 米国特許第04349782(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 17/00
F02P 15/02−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火プラグと、前記点火プラグに電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記電圧印加部から前記点火プラグに電圧を印加することで前記点火プラグに火花放電を生じさせる点火装置において、前記点火プラグにおける火花放電を検出するための火花放電検出方法であって、
前記電圧印加部から前記点火プラグに対して電圧を印加した時点から所定の判定期間の間に、前記点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形の微分値のピーク値が所定の判定用閾値を超えた場合に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定し、
前記電圧印加部は、所定の電源装置から一次電圧が印加される一次コイルと、前記一次コイルに対する一次電圧の印加を停止することにより火花放電用の高電圧を発生させる二次コイルとを備え、
前記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定用閾値を設定することを特徴とする火花放電検出方法。
【請求項2】
点火プラグと、前記点火プラグに電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記電圧印加部から前記点火プラグに電圧を印加することで前記点火プラグに火花放電を生じさせる点火装置において、前記点火プラグにおける火花放電を検出するための火花放電検出方法であって、
前記電圧印加部から前記点火プラグに対して電圧を印加した時点から長くとも前記点火プラグに対して次に電圧を印加するまでの間における前記点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形の微分値のピーク値を保持し、前記保持されたピーク値が所定の判定用閾値を超えた場合に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定し、
前記電圧印加部は、所定の電源装置から一次電圧が印加される一次コイルと、前記一次コイルに対する一次電圧の印加を停止することにより火花放電用の高電圧を発生させる二次コイルとを備え、
前記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定用閾値を設定することを特徴とする火花放電検出方法。
【請求項3】
記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定期間を設定することを特徴とする請求項1に記載の火花放電検出方法。
【請求項4】
予め設定された所定時間内に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定された回数が予め設定された所定回数未満であった場合に、前記点火プラグ及び前記電圧印加部のうちの少なくとも一方に異常が生じていると報知することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の火花放電検出方法。
【請求項5】
点火プラグと、前記点火プラグに電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記電圧印加部から前記点火プラグに電圧を印加することで前記点火プラグに火花放電を生じさせる点火装置において、前記点火プラグにおける火花放電を検出するための火花放電検出装置であって、
前記電圧印加部から前記点火プラグに対して電圧を印加した時点から所定の判定期間の間に、前記点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形の微分値のピーク値が所定の判定用閾値を超えた場合に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定する放電検出部を備え
前記電圧印加部は、所定の電源装置から一次電圧が印加される一次コイルと、前記一次コイルに対する一次電圧の印加を停止することにより火花放電用の高電圧を発生させる二次コイルとを備え、
前記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定用閾値を設定可能な閾値設定部を有することを特徴とする火花放電検出装置。
【請求項6】
点火プラグと、前記点火プラグに電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記電圧印加部から前記点火プラグに電圧を印加することで前記点火プラグに火花放電を生じさせる点火装置において、前記点火プラグにおける火花放電を検出するための火花放電検出装置であって、
前記電圧印加部から前記点火プラグに対して電圧を印加した時点から長くとも前記点火プラグに対して次に電圧を印加するまでの間における前記点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形の微分値のピーク値を保持するピークホールド部と、
前記ピークホールド部により保持されたピーク値が所定の判定用閾値を超えた場合に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定する放電検出部とを備え
前記電圧印加部は、所定の電源装置から一次電圧が印加される一次コイルと、前記一次コイルに対する一次電圧の印加を停止することにより火花放電用の高電圧を発生させる二次コイルとを備え、
前記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定用閾値を設定可能な閾値設定部を有することを特徴とする火花放電検出装置。
【請求項7】
記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定期間を設定可能な判定期間設定部を有することを特徴とする請求項に記載の火花放電検出装置。
【請求項8】
予め設定された所定時間内に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定された回数が予め設定された所定回数未満であった場合に、前記点火プラグ及び前記電圧印加部のうちの少なくとも一方に異常が生じていると報知する報知部を備えることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の火花放電検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等に使用される点火プラグの火花放電を検出するための火花放電検出方法及び火花放電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
点火プラグは、例えば、内燃機関(エンジン)に取付けられ、燃焼室内の混合気への着火のために用いられる。一般的に点火プラグは、軸孔を有する絶縁碍子と、当該軸孔の先端側に挿通される中心電極と、絶縁碍子の外周に設けられる主体金具と、主体金具の先端部に接合される接地電極とを備えており、接地電極と中心電極との間には火花放電間隙が形成される。そして、中心電極に高電圧が印加されることで火花放電間隙において火花放電が生じ、混合気へと着火されるようになっている。
【0003】
ところで、火花放電に伴い中心電極や接地電極が消耗することで火花放電間隙が拡大してしまった場合や、高過給や高圧縮の内燃機関等を用いた場合には、点火プラグに高電圧を印加する電源装置の供給エネルギーによっては中心電極と接地電極との電位差が火花放電間隙の絶縁破壊電圧を上回ることができず、ひいては火花放電が正常に行われないおそれがある。そこで、火花放電が正常に発生したか否かを判定するために、点火プラグに印加された電圧に基づく値(分圧値)と所定の閾値とを比較することで、火花放電が発生したか否かを判定する技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52−118135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、火花放電が発生した場合における点火プラグの電圧と、火花放電が発生しなかった場合における点火プラグの電圧とでは、両者の差がそれほど大きなものではなく、ノイズ等の影響によって誤判定が生じてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、点火プラグにおいて火花放電が正常に発生したか否かを精度よく検出することができる火花放電検出方法、及び、火花放電検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
【0008】
構成1.本構成の火花放電検出方法は、点火プラグと、前記点火プラグに電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記電圧印加部から前記点火プラグに電圧を印加することで前記点火プラグに火花放電を生じさせる点火装置において、前記点火プラグにおける火花放電を検出するための火花放電検出方法であって、
前記電圧印加部から前記点火プラグに対して電圧を印加した時点から所定の判定期間の間に、前記点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形の微分値のピーク値が所定の判定用閾値を超えた場合に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定し、
前記電圧印加部は、所定の電源装置から一次電圧が印加される一次コイルと、前記一次コイルに対する一次電圧の印加を停止することにより火花放電用の高電圧を発生させる二次コイルとを備え、
前記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定用閾値を設定することを特徴とする。
【0009】
尚、「判定期間」とあるのは、点火プラグにおいて火花放電が生じ得る期間であり、電圧印加部から点火プラグへと電圧が印加されている期間に相当する。例えば、JIS D5121に定められた点火コイル(電圧印加部)の計測方法の環境で、電圧印加部からの出力電圧を計測することで、電圧印加部の能力波形を計測することができ、この能力波形の時間幅を前記判定期間として設定することができる。また、「判定用閾値」は、電圧印加部の能力波形に対応する波形(例えば、電圧印加部から点火プラグに対する印加電圧を取得する装置により得られた電圧印加部の能力波形に基づく波形。印加電圧の取得装置により種々変更し得る)の微分値のピーク値よりも大きな数値(好ましくは、当該ピーク値の2〜3倍程度の数値)が設定される。
【0010】
点火プラグにおいて正常に火花放電が生じた場合、点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形は、電圧値が急激に変化する容量放電に相当する部分と、容量放電後において微小な電流が流れる誘導放電に相当する部分とを有する。一方で、点火プラグにおいて火花放電が生じなかった場合、点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形は、上述した能力波形と略同一の形状となり、電圧値が急激に変化する部分は含まれない。
【0011】
この点を鑑みて、上記構成1によれば、前記電圧波形の微分値(微小時間における電圧値の変化量)のピーク値と、所定の判定用閾値とを比較し、前記ピーク値が所定の判定用閾値を超えた場合に、火花放電が生じているものと判定するように構成されている。すなわち、火花放電が生じた場合と火花放電が生じなかった場合とで大きな差が生じることとなる電圧波形の微分値のピーク値に基づいて、火花放電の有無が検出される。従って、ノイズ等の影響によって電圧波形に多少の変動が発生した場合であっても、火花放電が発生したか否かを非常に精度よく検出することができる。
【0012】
尚、燃料のリーン又はリッチに起因する燃焼状態の変化等の要因により点火プラグの電圧が変動することを考慮して、その変動したときの電圧の微分値に基づいて、失火が発生したか否かを判定する技術が提案されている(特開平5−164034号公報参照)。しかしながら、当該技術では、燃料系に起因する失火を検出することができるものの、点火プラグや電圧印加部等の点火系に起因する失火を検出することができず、失火の発生要因を正確に特定することはできない。これに対して、上記構成1によれば、火花放電が発生していないと検出された場合(失火が検出された場合)、その発生要因は、点火プラグや電圧印加部等の点火系に起因するものである。すなわち、上記構成1によれば、火花放電が発生したか否かを検出することで、失火の発生要因が、点火プラグ等の点火系に起因するものであるのか、その他の要素に起因するものであるのかを容易に特定することができる。
【0013】
また、一次電圧の大きさや一次電圧の通電時間を変更した場合には、点火プラグへの印加電圧(二次電圧)が増減し得るところ、上記構成1によれば、一次電圧の大きさと一次電圧の通電時間とに基づいて、判定用閾値が設定されるように構成されている。従って、点火プラグへの印加電圧に対応した、より適切な判定用閾値を設定することができる。その結果、火花放電の検出精度をより一層向上させることができる。
【0014】
構成2.本構成の火花放電検出方法は、点火プラグと、前記点火プラグに電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記電圧印加部から前記点火プラグに電圧を印加することで前記点火プラグに火花放電を生じさせる点火装置において、前記点火プラグにおける火花放電を検出するための火花放電検出方法であって、
前記電圧印加部から前記点火プラグに対して電圧を印加した時点から長くとも前記点火プラグに対して次に電圧を印加するまでの間における前記点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形の微分値のピーク値を保持し、前記保持されたピーク値が所定の判定用閾値を超えた場合に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定し、
前記電圧印加部は、所定の電源装置から一次電圧が印加される一次コイルと、前記一次コイルに対する一次電圧の印加を停止することにより火花放電用の高電圧を発生させる二次コイルとを備え、
前記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定用閾値を設定することを特徴とする。
【0015】
上記構成2によれば、基本的には上記構成1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0016】
加えて、上記構成2によれば、ピーク値を得るために微分波形の値を随時取得する必要がなくなり、例えば、前記判定期間の経過後に、保持されたピーク値と判定用閾値とを比較することで、火花放電が生じているか否かを検出することができる。従って、火花放電の検出に際し、処理負担の軽減を図ることができる。また、処理負担が軽減されることで、検出処理を行うための装置の処理能力がさほど高くなくても、検出処理を十分に精度よく行うことができる。
【0017】
構成3.本構成の火花放電検出方法は、上記構成1において、記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定期間を設定することを特徴とする。
【0018】
火花放電間隙の拡大等の要因により要求電圧が変動した場合であっても、火花放電を極力正常に生じさせるために、一次電圧の大きさと一次電圧の通電時間とを変更することで、電圧印加部から点火プラグへと供給される電気エネルギーを増大させることが考えられる。しかしながら、このような場合には、電圧印加部から点火プラグに対する通電時間(すなわち、火花放電の発生し得る期間)が変動することがある。
【0019】
この点を鑑みて、上記構成3によれば、一次電圧の大きさと一次電圧の通電時間とに基づいて、判定期間が設定されるように構成されている。従って、火花放電の発生し得る期間における微分値のピーク値をより確実に得ることができ、ひいては火花放電が発生したか否かを一層精度よく検出することができる。
【0020】
構成.本構成の火花放電検出方法は、上記構成1乃至のいずれかにおいて、予め設定された所定時間内に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定された回数が予め設定された所定回数未満であった場合に、前記点火プラグ及び前記電圧印加部のうちの少なくとも一方に異常が生じていると報知することを特徴とする。
【0021】
所定時間内に失火が頻繁に発生する場合には、点火プラグや電圧印加部に異常が生じている可能性が高く、内燃機関等の出力低下や燃費の悪化等が生じてしまうおそれがある。
【0022】
この点、上記構成によれば、予め設定された所定時間内に、火花放電の検出回数が所定回数未満であった場合に、点火プラグや電圧印加部に異常が生じているものと報知されるように構成されている。従って、点火プラグの交換等により異常状態を速やかに解消することができ、出力低下や燃費の悪化が長期間に亘って継続してしまう事態をより確実に防止することができる。
【0023】
構成.本構成の火花放電検出装置は、点火プラグと、前記点火プラグに電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記電圧印加部から前記点火プラグに電圧を印加することで前記点火プラグに火花放電を生じさせる点火装置において、前記点火プラグにおける火花放電を検出するための火花放電検出装置であって、
前記電圧印加部から前記点火プラグに対して電圧を印加した時点から所定の判定期間の間に、前記点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形の微分値のピーク値が所定の判定用閾値を超えた場合に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定する放電検出部を備え
前記電圧印加部は、所定の電源装置から一次電圧が印加される一次コイルと、前記一次コイルに対する一次電圧の印加を停止することにより火花放電用の高電圧を発生させる二次コイルとを備え、
前記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定用閾値を設定可能な閾値設定部を有することを特徴とする。
【0024】
上記構成5によれば、上記構成1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0025】
構成.本構成の火花放電検出装置は、点火プラグと、前記点火プラグに電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記電圧印加部から前記点火プラグに電圧を印加することで前記点火プラグに火花放電を生じさせる点火装置において、前記点火プラグにおける火花放電を検出するための火花放電検出装置であって、
前記電圧印加部から前記点火プラグに対して電圧を印加した時点から長くとも前記点火プラグに対して次に電圧を印加するまでの間における前記点火プラグへの印加電圧に対応する電圧波形の微分値のピーク値を保持するピークホールド部と、
前記ピークホールド部により保持されたピーク値が所定の判定用閾値を超えた場合に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定する放電検出部とを備え
前記電圧印加部は、所定の電源装置から一次電圧が印加される一次コイルと、前記一次コイルに対する一次電圧の印加を停止することにより火花放電用の高電圧を発生させる二次コイルとを備え、
前記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定用閾値を設定可能な閾値設定部を有することを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、上記構成2と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0027】
構成.本構成の火花放電検出装置は、上記構成において、記一次電圧と、前記一次コイルに対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定期間を設定可能な判定期間設定部を有することを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、上記構成3と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0029】
構成.本構成の火花放電検出装置は、上記構成乃至のいずれかにおいて、予め設定された所定時間内に、前記点火プラグにおいて火花放電が生じているものと判定された回数が予め設定された所定回数未満であった場合に、前記点火プラグ及び前記電圧印加部のうちの少なくとも一方に異常が生じていると報知する報知部を備えることを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、上記構成と同様の作用効果が奏されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】点火装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】点火プラグの構成を示す一部破断正面図である。
図3】(a)は、要求電圧が比較的低い場合における点火プラグの電圧波形を示し、(b)は、要求電圧が比較的低い場合における微分波形を示す。
図4】(a)は、要求電圧が比較的高い場合における点火プラグの電圧波形を示し、(b)は、要求電圧が比較的高い場合における微分波形を示す。
図5】(a)は、火花放電が生じない場合における点火プラグの電圧波形を示し、(b)は、火花放電が生じない場合における微分波形を示す。
図6】一次電圧及びその通電時間と、閾値基準値との関係を表すマップである。
図7】火花放電検出装置において行われる処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
図8】割込処理を示すフローチャートである。
図9】火花放電判定処理を示すフローチャートである。
図10】第2実施形態における点火装置の概略構成を示すブロック図である。
図11】(a)は、点火プラグで火花放電が生じた場合における微分波形を示し、(b)は、この場合におけるピークホールド部からの出力を示す。
図12】(a)は、点火プラグで火花放電が生じない場合における微分波形を示し、(b)は、この場合におけるピークホールド部からの出力を示す。
図13】火花放電検出装置において行われる処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
図14】火花放電判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、点火プラグ1と、電圧印加部31と、火花放電検出装置41とを有する点火装置101の概略構成を示すブロック図である。尚、図1では、点火プラグ1を1つのみ示しているが、内燃機関ENには複数の気筒が設けられており、各気筒に対応して点火プラグ1が設けられている。そして、各点火プラグ1ごとに電圧印加部31や火花放電検出装置41が設けられている。
【0033】
まず、点火装置101の説明に先立って、点火プラグ1の概略構成を説明する。
【0034】
点火プラグ1は、図2に示すように、筒状をなす絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
【0035】
絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、後端側に形成された後端側胴部10と、当該後端側胴部10よりも先端側において径方向外向きに突出形成された大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれよりも細径に形成された脚長部13とを備えている。加えて、絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、及び、大部分の脚長部13は、主体金具3の内部に収容されている。そして、中胴部12と脚長部13との連接部にはテーパ状の段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
【0036】
さらに、絶縁碍子2には、軸線CL1に沿って延びる軸孔4が貫通形成されており、当該軸孔4の先端側には中心電極5が挿入、固定されている。当該中心電極5は、銅又は銅合金からなる内層5Aと、ニッケル(Ni)を主成分とするNi合金からなる外層5Bとを備えている。また、中心電極5は、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端部分が絶縁碍子2の先端から突出している。
【0037】
加えて、軸孔4の後端側には、絶縁碍子2の後端から突出した状態で端子電極6が挿入、固定されている。
【0038】
さらに、軸孔4の中心電極5と端子電極6との間には、円柱状の抵抗体7が配設されている。当該抵抗体7の両端部は、導電性のガラスシール層8,9を介して、中心電極5と端子電極6とにそれぞれ電気的に接続されている。
【0039】
加えて、前記主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面にはスパークプラグ1を内燃機関や燃料電池改質器等の燃焼装置に取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。また、ねじ部15の後端側には座部16が外周側に向けて突出形成されており、ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3を燃焼装置に取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられている。また、主体金具3の後端部には、径方向内側に向けて屈曲する加締め部20が設けられている。
【0040】
さらに、主体金具3の内周面には、絶縁碍子2を係止するためのテーパ状の段部21が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3の後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部21に係止された状態で、主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって主体金具3に固定されている。尚、絶縁碍子2及び主体金具3双方の段部14,21間には、円環状の板パッキン22が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、燃焼室内に晒される絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料ガスが外部に漏れないようになっている。
【0041】
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24間には滑石(タルク)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン22、リング部材23,24及び滑石25を介して絶縁碍子2を保持している。
【0042】
また、主体金具3の先端面26には、自身の略中間部分にて曲げ返されて、その先端側側面が中心電極5の先端部と対向する接地電極27が接合されている。中心電極5の先端部と接地電極27の先端部との間には、火花放電間隙28が形成されている。
【0043】
上述した点火プラグ1においては、火花放電間隙28に対して電圧印加部31から電圧が印加されることで、軸線CL1にほぼ沿った方向で火花放電が行われるようになっている。そこで次に、電圧印加部31の構成について説明する。
【0044】
電圧印加部31は、図1に示すように、一次コイル32、二次コイル33、コア34、及び、イグナイタ35を備えている。
【0045】
一次コイル32は、前記コア34を中心に巻回されており、その一端が電力供給用の電源装置VAに接続されるとともに、その他端がイグナイタ35に接続されている。また、二次コイル33は、前記コア34を中心に巻回されており、その一端が一次コイル32及び電源装置VA間に接続されるとともに、その他端が点火プラグ1の端子電極6に接続されている。
【0046】
加えて、イグナイタ35は、所定のトランジスタにより形成されており、所定の電子制御装置(ECU)51から入力される通電信号に応じて、電源装置VAから一次コイル32に対する一次電圧の印加及び印加停止を切り替える。点火プラグ1に高電圧を印加する場合には、ECU51からイグナイタ35への通電信号をオンとして電源装置VAから一次コイル32に一次電圧を印加し、前記コア34の周囲に磁界を形成した上で、ECU51からの通電信号をオンからオフに切り替えることで、一次コイル32に対する一次電圧の印加を停止する。一次電圧を停止させることで、前記コア34の磁界が変化し、自己誘電作用によって二次コイル33に負極性の二次電圧(数〜数十kV)が発生する。この二次電圧が点火プラグ1(端子電極6)に印加されることで、火花放電間隙28において火花放電が発生する。
【0047】
尚、本実施形態において、ECU51は、イグナイタ35に対する通電信号のオン時間ひいては一次コイル32に対する一次電圧の通電時間を変更可能に構成されている。具体的には、ECU51は、内燃機関ENに設けられた燃焼圧センサ(図示せず)等により、混合気への着火がなされたとき(つまり、火花放電が生じたとき)を取得するとともに、イグナイタ35への通電信号をオンからオフとしたタイミングから、前記火花放電が生じたときまでの時間(遅延時間)を取得可能に構成されている。そして、前記遅延時間が、所定の許容時間以上である場合(すなわち、火花放電の発生時期が目標の発生時期よりも所定時間以上ずれている場合)には、前記電極5,27の消耗により火花放電間隙28が拡大している等の要因により、火花放電を生じさせるための電圧(要求電圧)が高くなっていると考えられるため、ECU51は、イグナイタ35への通電信号のオン時間を長くする(一次電圧の通電時間を長くする)ことで、電圧印加部31から出力される電圧(二次電圧)を増大させる。これにより、火花放電間隙28の絶縁破壊電圧を上回る電位差を電極5,27間により速やかに生じさせることができ、ひいては火花放電の発生時期を早めることができる。その結果、火花放電の発生時期を目標の発生時期に近づけることができる。尚、昇圧回路等により、電源装置VAからの出力電圧を増減可能に構成することで、一次電圧を変更可能に構成し、一次電圧、又は、一次電圧及びその通電時間を変更することで火花放電の発生時期を調節することとしてもよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、点火プラグ1に印加される電圧波形に基づいて、火花放電が発生したか否かを検出する火花放電検出装置41が設けられており、当該火花放電検出装置41は、電圧波形検出部42と、マイコン43とを備えている。
【0049】
電圧波形検出部42は、点火プラグ1への印加電圧に対応する電圧波形を取得するとともに、当該電圧波形をマイコン43へと入力するものであり、点火プラグ1と電圧印加部31(二次コイル33)との間に接続されている。本実施形態において、電圧波形検出部42は、静電容量型の電圧センサにより構成されており、実際に点火プラグ1に印加される電圧波形と略同一の波形形状を有しつつ、電圧値が十分に小さくされた電圧波形をマイコン43へと入力するようになっている。
【0050】
尚、点火プラグ1に印加される電圧波形を直接取得し、当該電圧波形をマイコン43へと入力することとしてもよいが、点火プラグ1への印加電圧は高電圧であるため、この場合には、マイコンが十分な耐電圧性能を備える必要がある。これに対して、本実施形態のように、電圧波形検出部42として静電容量型の電圧センサを用いることで、マイコンとして高い耐電圧性能を有するものを用いる必要がなくなり、比較的廉価なマイコンを用いることができる。また、電圧波形におけるノイズの影響を軽減できるという点も、静電容量型の電圧センサを用いることの利点として挙げることができる。
【0051】
前記マイコン43は、ECU51と通信可能に構成されており、微分処理部44と、放電検出部45と、判定期間設定部46と、閾値設定部47とを備えている。
【0052】
微分処理部44は、微分回路により構成されており、電圧波形検出部42から入力された電圧波形を微分した微分波形を放電検出部45へと出力する。
【0053】
放電検出部45は、所定タイミング毎に微分処理部44から出力された微分波形の値を取得するとともに、取得した微分波形の値と、所定の判定用閾値とを比較する。そして、前記微分波形の値が前記判定用閾値を超えている場合に、割込処理を行い、当該割込処理が、電圧印加部31から点火プラグ1に対して電圧を印加した時点(ECU51からの通電信号がオンからオフとされたタイミング)から所定の判定期間の間になされている場合に、火花放電が生じたことを示す飛火フラグを成立させる(すなわち、判定期間の間に、微分波形のピーク値が判定用閾値を超えた場合に、放電検出部45は、点火プラグ1において正常に火花放電が生じたものと判定し、飛火フラグを成立させる)。一方で、飛火フラグは、電圧印加部31による点火プラグ1への次の電圧印加タイミングの前(つまり、次の判定期間の前)にリセットされる。
【0054】
尚、点火プラグ1において火花放電が生じた場合には、例えば、図3(a)及び図4(a)に示すように、電圧波形は、要求電圧の大小によってその電圧値は変動するものの、電圧値が急激に変動する容量放電に続いて、微小な電流が流れる誘導放電が発生する形となる。従って、図3(b)及び図4(b)に示すように、電圧波形を微分して得た微分波形は、容量放電時に大きく変動することとなり、微分波形のピーク値は前記判定用閾値を超えることとなる。
【0055】
一方で、点火プラグ1において火花放電が発生しない場合には、例えば、図5(a)に示すように、電圧波形は、電圧印加部31から出力される二次電圧の時間変化を示す能力波形となる。従って、図5(b)に示すように、電圧波形を微分して得た微分波形はほとんど変動することなく、微分波形のピーク値は前記判定用閾値以下となる。
【0056】
また、放電検出部45は、予め設定された所定時間(本実施形態では、電圧印加部31による点火プラグ1への電圧印加タイミングから次々回の電圧印加タイミングの直前までの時間に設定されており、通常であれば、この時間内に2回の火花放電が発生する)内に、点火プラグ1において火花放電が生じているものと判定された回数が予め設定された所定回数(本実施形態では0回)以下であった場合に、点火プラグ1及び電圧印加部31のうちの少なくとも一方に異常が生じているものと判定する。
【0057】
具体的には、放電検出部45は、判定期間の経過後であって次の判定期間の前に、火花放電判定処理を行う。火花放電判定処理においては、まず、飛火フラグが成立しているか否かがチェックされる。つまり、判定期間の間に火花放電が正常に発生したか否かがチェックされる。そして、飛火フラグが非成立である場合には、火花放電に異常が生じた回数を示すエラーカウンタの値(初期値は0に設定)が1だけ増加させられ、一方で、飛火フラグが成立している場合には、エラーカウンタの値がクリア(0)とされる。そして、前記所定時間の間において、エラーカウンタの数値が所定値(本実施形態では、2)以上となった場合に、放電検出部45は、火花放電に異常が生じている旨の判定結果をECU51に対して送信し、その判定結果を受信したECU51においてエラー処理が行われる。本実施形態においては、エラー処理として、運転手等に対して点火プラグ1や電圧印加部31に異常が生じているものと報知する処理が行われる(つまり、本実施形態において、ECU51は報知部としての機能を備えている)。
【0058】
加えて、判定期間設定部46は、一次コイル32に印加される一次電圧と、一次コイル32に対する一次電圧の通電時間とに基づいて、前記判定期間を設定するものである。具体的には、一次コイル32に対する一次電圧と、一次電圧の通電時間とを種々変更した上で、机上にて電圧印加部31から二次電圧を出力した際の電圧波形(能力波形)を電圧波形検出部42により計測し、一次電圧及びその通電時間と、能力波形の時間幅との関係を示すマップを予め得ておく。そして、判定期間設定部46は、電圧印加部31における一次電圧と、一次電圧の通電時間とに基づいて、前記マップから、電圧印加部31から出力された二次電圧により発生し得る能力波形の時間幅を得るとともに、当該時間幅を判定期間として設定する。従って、ECU51により一次電圧の通電時間が変更された場合には、その変更に合わせて判定期間が設定されることとなる。
【0059】
また、閾値設定部47は、一次電圧と一次電圧の通電時間とに基づいて、判定用閾値を設定する。具体的には、一次コイル32に対する一次電圧と、一次電圧の通電時間とを種々変更した上で、机上にて電圧印加部31から二次電圧を出力した際の電圧波形(能力波形)を電圧波形検出部42により計測し、当該電圧波形の微分値のピーク値〔判定用閾値を設定する際の基準となる値(閾値基準値)〕と、一次電圧の大きさ及び一次電圧の通電時間との関係を示すマップ(例えば、図6参照)を予め得ておく。そして、閾値設定部47は、当該マップに基づいて、電圧印加部31における一次電圧とその通電時間とに対応するピーク値(閾値基準値)を取得するとともに、当該ピーク値に所定数値(例えば、2以上)を乗算した値を判定用閾値として設定する。従って、ECU51により一次電圧の通電時間が変更された場合には、その変更に合わせて判定用閾値が設定されることとなる。また、前記ピーク値に所定数値を乗算した値を判定用閾値としているため、ノイズの影響により微分波形に若干の変動が生じた場合であっても、放電検出部45による火花放電が生じているか否かの検出が精度よく行えるようになっている。
【0060】
次いで、火花放電検出装置41による火花放電の検出方法の具体例について、図7〜9のフローチャートに従って説明する。
【0061】
図7に示すように、S1において、所定タイミングごとに、微分処理部44から出力された微分波形の値と判定用閾値とが比較される。そして、微分波形の値が判定用閾値を超えている場合には(S1;Yes)、割込処理が行われ(S2)、微分波形の値が判定用閾値以下である場合には(S1;No)、割込処理(S2)をスキップしてS3に進む。
【0062】
割込処理(S2)では、図8に示すように、まず、当該割込処理が判定期間の間に行われているか否か、つまり、判定期間の間に、微分波形の値が判定用閾値を超えたか否かが判定される(S21)。そして、判定期間内である場合には(S21;Yes)、飛火フラグを成立させ(S22)、S3に進む。尚、飛火フラグの初期値は0とされている。
【0063】
図7に戻り、S3において判定期間が経過しているか否かが判定され、判定期間が経過しているときには(S3;No)、S5以降の処理に進む。一方で、判定期間内であるときには(S3;Yes)、処理フラグがリセットされた上で(S4)、S1に戻る。尚、処理フラグは、火花放電判定処理を、判定期間の経過後、次の判定期間の前に一度のみ行うための判断に用いられるフラグであり、初期値は0とされている。
【0064】
S5では、処理フラグが成立しているか否かがチェックされ、判定期間の経過後、次の判定期間の開始前に火花放電判定処理(S6)が既に行われたか否かがチェックされる。ここで、処理フラグに1がセットされている場合には(S5;No)、判定期間の経過後、次の判定期間の前に、火花放電判定処理が既に行われているため、S6をスキップして、S7に進む。一方で、処理フラグが0である場合には(S5;Yes)、火花放電判定処理が行われる(S6)。
【0065】
火花放電判定処理においては、図9に示すように、まず、飛火フラグが成立しているか否かがチェックされる(S61)。ここで、飛火フラグが成立しているときには(S61;Yes)、判定期間の間に火花放電が正常に発生したと考えられるため、エラーカウンタがクリア(0)とされる(S62)。一方で、飛火フラグが非成立であるときには(S61;No)、エラーカウンタの値が1つだけ増加させられる(S63)。そして、S64において、エラーカウンタの値が所定値(本実施形態では、2)以上であるか否かが判定され、エラーカウンタの値が所定値以上である場合には(S64;Yes)、エラー処理が行われる(S65)。次いで、図7に示すように、火花放電判定処理(S6)の後、次の判定期間の前に再度の火花放電判定処理が行われないように、S7において、処理フラグが1にセットされる。また、S8において、飛火フラグがリセットされる。
【0066】
以上詳述したように、本実施形態によれば、電圧波形の微分値のピーク値と、所定の判定用閾値とを比較し、前記ピーク値が判定用閾値を超えた場合に、火花放電が生じているものと判定するように構成されている。すなわち、火花放電が生じた場合と火花放電が生じなかった場合とで大きな差が生じることとなる電圧波形の微分値のピーク値に基づいて、火花放電の有無が検出される。従って、ノイズ等の影響によって電圧波形に多少の変動が発生した場合であっても、火花放電が発生したか否かを非常に精度よく検出することができる。
【0067】
加えて、一次電圧と一次電圧の通電時間とに基づいて、判定期間設定部46により判定期間が設定されるため、火花放電の発生し得る期間における微分値のピーク値をより確実に得ることができる。また、一次電圧と一次電圧の通電時間とに基づいて、閾値設定部47により判定用閾値が設定されるため、点火プラグ1への印加電圧に対応した、より適切な判定用閾値を設定することができる。このように判定期間や判定用閾値を変更可能とすることで、火花放電の検出精度をより一層向上させることができる。
【0068】
さらに、予め設定された所定時間内に、火花放電の検出回数が所定回数未満であった場合に、点火プラグ1や電圧印加部31に異常が生じているものと報知されるように構成されている。従って、点火プラグ1の交換等により異常状態を速やかに解消することができ、出力低下や燃費の悪化が長期間に亘って継続してしまう事態をより確実に防止することができる。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。本第2実施形態では、図10に示すように、微分処理部44から出力される微分波形が入力されるピークホールド(P/H)部48(ピークホールド回路)が設けられている。
【0069】
ピークホールド部48は、電圧印加部31から点火プラグ1に対して電圧を印加した時点から長くとも点火プラグ1に対して次に電圧を印加するまでの間における微分波形のピーク値を保持するとともに、保持したピーク値を放電検出部45に出力する。従って、例えば、図11(a)に示すように、点火プラグ1において火花放電が生じた場合には、図11(b)に示すように、保持されるピーク値(保持ピーク値)は比較的大きなものとなり、判定用閾値を超えることとなる。一方で、図12(a)に示すように、点火プラグ1において火花放電が発生しない場合には、例えば、図12(b)に示すように、保持ピーク値は比較的小さなものとなり、前記判定用閾値以下となる。尚、保持ピーク値は、電圧印加部31による点火プラグ1への次の電圧印加タイミングの直前(つまり、次の判定期間の前)にリセットされる。
【0070】
次いで、本第2実施形態における火花放電の検出方法の具体例について、図13〜14のフローチャートに従って説明する。
【0071】
図13に示すように、まず、S11において判定期間が経過しているか否かが判定され、判定期間が経過しているときには(S11;No)、S13以降の処理に進み、判定期間内であるときには(S11;Yes)、処理フラグがリセットされた上で(S12)、S11に戻る。
【0072】
S13では、処理フラグが成立しているか否かがチェックされ、判定期間の経過後、次の判定期間の前に火花放電判定処理が既に行われたか否かがチェックされる。ここで、処理フラグが1にセットされている場合には(S13;No)、判定期間の経過後、次の判定期間の前に、火花放電判定処理が既に行われているため、S14をスキップして、S15に進む。一方で、処理フラグが0である場合には(S13;No)、火花放電判定処理が行われる(S14)。
【0073】
火花放電判定処理では、図14に示すように、まず、S141において、保持ピーク値が判定用閾値以上であるか否かが判定される(尚、火花放電判定処理が行われる前の判定期間内に、微分波形のピーク値は既に保持されている)。ここで、保持ピーク値が判定用閾値を超えている場合には(S141;Yes)、判定期間の間に火花放電が正常に発生したと考えられるため、エラーカウンタがクリア(0)とされる(S142)。一方で、保持ピーク値が判定用閾値以下である場合には(S141;No)、エラーカウンタの値が1つだけ増加させられる(S143)。そして、S144において、エラーカウンタの値が所定値(本実施形態では、2)以上であるか否かが判定される。このとき、エラーカウンタの値が所定値以上である場合には(S144;Yes)、エラー処理が行われる(S145)。
【0074】
図13に戻り、火花放電判定処理の後、次の判定期間前に再度の火花放電判定処理が行われないように、処理フラグが1にセットされる(S15)。また、保持ピーク値がリセットされる(S16)。
【0075】
以上、本第2実施形態によれば、基本的には上記第1実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0076】
また、本第2実施形態によれば、微分波形のピーク値をより正確に得ることができる。さらに、放電検出部45は、保持されたピーク値と判定用閾値とを比較することで、火花放電が生じているか否かを判定する。従って、微分波形の値が判定用閾値を超えるか否かを随時チェックする必要がなくなり、放電検出部45における処理負担の軽減を図ることができる。また、処理負担が軽減されることで、放電検出部45の処理能力がさほど高くなくても、検出処理を十分に精度良く行うことができる。さらに、製造コストの低減を図ることも可能となる。
【0077】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0078】
(a)上記実施形態では、判定期間内において火花放電が正常に行われた場合に、エラーカウンタがクリアとされているが、エラーカウンタの値をクリアとすることなく、エラーカウンタの値を減じるように構成してもよい。
【0079】
(b)上記実施形態では、各点火プラグ1ごとに電圧印加部31が設けられているが、各点火プラグ1ごとに電圧印加部31を設けることなく、電圧印加部31からの電力をディストリビュータを介して各点火プラグ1に供給することとしてもよい。
【0080】
(c)上記実施形態では、各点火プラグ1ごとに火花放電検出装置41が設けられているが、点火プラグ1の数よりも少ない数の火花放電検出装置41を設けることとしてもよいし、各点火プラグ1ごとに電圧波形検出部42を設ける一方で、点火プラグ1の数よりも少ない数のマイコン43を設けることとしてもよい。この場合には、各点火プラグ1のうち放電タイミングにあるものの電圧波形を選択的にマイコン43に入力することで、各点火プラグ1における火花放電を少数の装置により検出することができ、製造コストの更なる抑制を図ることができる。
【0081】
(d)上記実施形態における点火プラグ1の構成は例示であって、本発明を適用可能な点火プラグ1は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
1…点火プラグ
31…電圧印加部
32…一次コイル
33…二次コイル
41…火花放電検出装置
44…微分処理部
45…放電検出部
46…判定期間設定部
47…閾値設定部
48…ピークホールド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14