【実施例】
【0019】
図1は本発明の実施例であるTD方向に延伸する延伸機の平面図、
図2は掴み装置と案内ホルダを示す断面図、
図3は案内ホルダの平面図で、その構成および動作は以下の通りである。
【0020】
シート状物1の両端部を把持する複数(多数)の掴み装置2を、シート状物1の両側に具備した無端チェーン付案内ホルダ3を備えている。無端チェーン付案内ホルダ3は、シート状物の入口側スプロケット4で駆動され、入口に設けられた開閉ガイド等の開閉手段(図示せず)により掴み装置2が開閉されてシート状物1を掴み、予熱区間(図示せず)で延伸に必要な温度に加熱される。
【0021】
さらに、無端チェーン付案内ホルダ3は、往路の延伸区間において、進行方向に末広がり状(TD方向)に配置されたガイドレール5に案内されることにより、シート状物1を横方向(TD方向)に延伸し、その後の熱固定区間において所定の温度で熱固定し、その後の冷却区間(図示せず)で急冷し、出口に設けられた開閉ガイド等の開閉手段(図示せず)により掴み装置2を開放してシート状物1を外し、外されたシート状物1はそのまま進行させることになる。無端チェーン付案内ホルダ3は、出口側スプロケット7により駆動されて、復路5を通って入口側スプロケット4に戻るように構成される。
【0022】
図1に示すように、案内用ガイドレール5は、シート状物1側に配置される往路5aと、上記往路5aの外側に周回するように配置される復路5bからなる。また、案内用ガイドレール5は、
図2に示すように、断面が凸状部材に構成される。その上面には、シート状物1を把持する掴み装置2が固定された案内ホルダ本体6が配置される。ガイドレール5は、案内ホルダ本体6の中心に位置して、案内ホルダ本体6を案内する。
【0023】
案内ホルダ本体6の両側下方には、ガイドレール5を跨ぐように横ローラ9が縦軸を中心に回転自在に取付けられている。上記横ローラ9は、無端チェーン付案内ホルダ3の動きを規制する案内用ガイドレール5の両側面を上下2個ずつ合計4個以上で挟んで転動するように配置されている。すなわち、ガイドレールに沿った2個が上下に段違いに配置されてている。横ローラ9は、円筒形状をしており、その働き(回動)により、常に案内用ガイドレール5の両側面に対して実質的に垂直に接触しながら回動することにより、案内ホルダ本体6を高速で移動させる。案内ホルダ本体6の中央部の下方には、案内用ガイドレール5の上面を転動して走行する1個以上、例えば2個の縦ローラ10が内蔵されている。
【0024】
また、上述したように、横ローラ9のガイドレールに沿った隣り合う2個のローラを上下で千鳥配置(段違い配置)にしているので、上下のローラを重ねた状態に配置できる。
図3に示すように、隣接する案内ホルダ本体6同志が接触した状態のとき、両者のローラが上下に重なった状態になるので、そのピッチ(
図3にPで示す)を小さくすることができる。したがって、シート状物1の両端の掴み位置のピッチを小さくでき、シート状物延伸時の延伸品質を向上させることができる。
【0025】
案内ホルダ本体6の中央部の上方には、連結リンク11が回転自在に嵌合する2本の連結軸8が垂直に設けられる。
図3に示すように、隣接する案内ホルダ本体6は、連結軸8を連結リンク11で結合されることにより無端チェーン付案内ホルダ3を構成する。
【0026】
12は、延伸時にシート状物1から掴み装置2に受ける反作用で、案内ホルダ本体6が浮き上がるのを防止する浮き上がり防止ローラである。13はガイドレール5を固定するレールベッド(レールベース)であり、固定ベッドと可動ベッドからなる。
【0027】
図4により、レールベッドの配置について説明する。15は入り口側に配置された固定ベッドで、18は出口側に配置された固定ベッドである。16は固定ベッド15に回動自在にピン20で結合された可動ベッド、17は一方端が可動ベッド16にピン21で結合されると共に、他方端が固定ベッド18にピン22で結合される可動ベッドである。ピン21は可動ベッド同士をピン結合している。なお、符号aとbは、往路側と復路側を示す。
図4の上半分のレールヘッドは、上記で説明した下半分の構成に対して対象に配置されている。
【0028】
図4では、可動ベッド16、17が、ガイドレール5を末広がり状にする際に、ピン21、22を中心に回動した状態となっている。可動ベッド上に固定されたガイドレールは、上記ピン21、22の結合位置で屈曲し、所定のTD方向の延伸量の末広がり形状が形成される。
【0029】
図4の一部を拡大して
図5に示す。ガイドレール5は、往路5aと復路5bがそれぞれ別個の可動ベッド(16a、16b、17a、17b)に固定される。そして、ガイドレール5は、各可動ベッドのピンを中心とする回動と共に回動し、可動ベッドのピン20、21、22の結合位置で屈曲するように構成される。
図5では、可動ベッド16と17のピン結合位置の屈曲部には、ガイドレール5の一部として可撓性レールジョイント(屈曲部)31を介在配置し、可動ベッド17と固定ベッド18のピン結合位置には、可撓性レールジョイント32を介在配置している。固定ベッド15と可動ベッド16のピン結合部は、図示省略している。
【0030】
図6は可撓性レールジョイント31、32の構成図で、(a)は平面を(b)は側面を示す。可撓性レールジョイント31、32は、両側がガイドレール5と分割された形でガイドレール5に接続(接触)しており、接触で生じる僅かな隙間26を介してガイドレール5に直列に配置される。中央部には、可動ベッドの回動に伴って可撓性レールジョイントが伸縮かつ屈曲可能なように、可動ベッドと固定ベッドの前記ピン結合位置に、長手方向に複数本の垂直なスリットからなるスリット部25が設けられる。なお、上記隙間26は、
図6では説明上、分かり易いように幅を持たせて描いているが、実際は上記各スリットの開口幅より狭い極力小さな隙間に形成されている。
【0031】
前記スリット25部は、レール両側面に垂直な複数のスリット25aが千鳥状に施される。なお、スリット部25のスリット本数を多くすれば、レールの曲げが容易になるとともに、スリット25aの幅を狭くすれば、より滑らかなカーブを形成できる。
【0032】
36は2個設けられたボルト挿通穴で、挿通されるボルトにより可撓性レールジョイント31、32をレールベッド(固定、可動)に固定する。固定ベットと可動ベットへの可撓性レールジョイント31の取り付け時は、レールベッドのピン結合位置に、各可撓性レールジョイント31の中央のスリット部25が位置するようにする。
【0033】
可撓性レールジョイント31、32の材質は鋼材が使用できるが、好ましくはバネ鋼材や耐熱性のエンジニアプラスチックが良い。なお、本実施例では、レール側面に直角方向のスリットを設けたものについて述べたが、スリットの切込みをレール側面に対して斜めに設けても良い。
【0034】
上記構成で、例えば、
図5で往路側と復路側の可動ベッド17aと17bが、ピン21を中心にして矢印で示す時計回りに回動すると、ガイドレール5の可撓性レールジョイント31が共に時計回りに屈曲する。このとき、可撓性レールジョイント31のスリット部25の上側(
図6(a))が凸状となって伸びて引っ張り力が加わり、他方、スリット部25の下側(
図6(a))が凹状となって縮んで圧縮力が加わる。
【0035】
上記引っ張り力は、可撓性レールジョイント31の上側のスリット25aが伸びることで吸収され、また、上記圧縮力は、可撓性レールジョイント31の下側のスリット25bが縮むことで吸収される。したがって、
図6(a)において、可撓性レールジョイント31の両端は、上記屈曲により上側に伸びる力が作用し、下側に縮む力が作用する。この力の作用により、可撓性レールジョイント31の両端が多少伸縮変形しようとするが、この変形は隙間26によって吸収され、ガイドレールが歪むことはない。
【0036】
上記可撓性レールジョイント31の伸縮幅は、前記スリット25aのピッチや本数、または可撓性レールジョイントの剛性で異なるため、上記隙間26はこれらの伸縮を多少吸収できる。
【0037】
このように、前記可撓性レールジョイント31は、きわめて単純な構成で、スリット部25を屈曲用とし、隙間26を伸縮用として機能分けすることにより、屈曲する場所をレールベッドのピン結合位置に特定させることができる。なお、隙間26は極めて幅が狭く、また、案内ホルダ本体6の下方に横ローラ9がガイドレールの両側の上下に千鳥配置されているので、隙間26を通過するとき、大きなガタは生じない。
【0038】
図7はレールベッドの回動駆動機構の説明図である。
図7では、一例として
図1の延伸領域における、ガイドレール5aと5bを固定した可動ヘッド17aと17bを駆動する駆動機構を示している。回動駆動機構は、上下方向について概略3段の構成に区分けされて構成されている。この駆動機構が接地される床面の上方に据付ベース73が配置されている。この据付ベース73の上方に駆動機構の部材が連結されて配置されており、据付ベース73は、これらの部材の重量とともに、その上方のリンク装置を駆動する際に生じる荷重を支持する基礎の部材となっている。
【0039】
この据付ベース73上方には、支持体74を介して走行台車75が連結されて、その位置が固定されている。この走行台車75は、その上方に連結された部材を支持すると共に、リンク装置の駆動時の荷重を支持して下方の据付ベース73側に伝達する。さらに、この走行台車75上には、ガイドレール5を固定している可動ヘッド17aと17bの位置をシート状物1の幅方向に移動させるためのスライドベース76とこれを移動させるための駆動部77、及びこの駆動部77により駆動される駆動シャフト78とが連結されている。
【0040】
走行台車75のシート状物1の端部側(左側)には、可動ベッド17a、17bがその上に配置されるスライドベース76が配置され、その反対側(装置外側、右側)の端部に、駆動シャフト78を回転駆動するモータ部79を含む駆動部77が配置されている。
【0041】
さらに、走行台車75上面には、スライドベース76がその上に摺動可能に載せられるTDガイドレール80が配置されており、スライドベース76が駆動シャフト78の動作に応じて、このTDガイドレール80上をこれに沿って移動する。スライドベース76の移動に伴って、ガイドレール5(5a、5b)のシート状物の幅方向(TD方向)にその位置が移動される。
【0042】
また、据付ベース73あるいは支持体74と走行台車75との間には、走行台車75がその上にMD方向に移動可能に載置される2つのMDガイドレール84が配置されているが、本実施例では、MD方向の延伸を行わないので、移動しないように固定されている。
【0043】
本実施の例では、走行台車75のシート状物幅方向の端部(右側)には、駆動部77が連結されて固定され、駆動部77内のモータ部79の駆動により、その表面にねじ状の溝が配置された駆動シャフト78の回転が、スライドベース76下部に配置され、駆動シャフト79表面のねじ状溝と噛み合わされるねじ部85を介して伝達されて、スライドベース76上面にシート状物の幅方向に延在する略直線状のTDガイドレール80に沿ってTD方向にスライドベース76が移動する。この際、スライドベース76上に連結されて配置されたレールベッド17a、17bは、スライドベース76とともにその位置がTD方向に移動する。
【0044】
本実施例は、延伸領域のガイドレール5を末広がり状に配置するため、延伸領域の往路のガイドレール5aと復路のガイドレール5b各々の下方に、固定レールベッドと可動レールベッドをピン結合したレールベッド、および可動レールベッド同士をピン結合したレールベッドを配置している。そして、駆動部77の駆動によって可動レールベッド(17a、17b)がピンを中心に回動し、ガイドレール5a、5bを回動させる。