(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ラジカル重合性物質(C)が、N−ビニル化合物、単官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー又はマレイミド化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
さらに、無機微粒子、顔料、分散剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、チクソトロピー性付与剤、スリップ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤(D)を含有させてなる請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
塗料、印刷インキ、コーティング剤、注型材料、レジスト材料、ナノインプリント材料、接着剤、シーリング剤又は光学部材用もしくは建築材料用の成型材料として用いられる請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、350nm〜500nmの波長の光で効率よく感光し、厚膜硬化性、深部硬化性に優れる感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記問題を解決するため鋭意検討し、本発明に到達した。すなわち本発明は、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物であって活性光線の照射により塩基を発生する光塩基発生剤(A)、熱ラジカル重合開始剤(B)及びラジカル重合性物質(C)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【0010】
[式中、Arはベンゼン骨格を少なくとも1個有し、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、
メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20のアシル基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、
フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基及び
フェニルチオ基の群から選ばれる基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は複素環基;R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20のアシル基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基及び
フェニルチオ基の群から選ばれる基で置換されていてもよいフェニル基を表し、R
1及びR
2は互いに結合して環構造を形成していてもよく;mは、2〜4の整数;R
3〜R
5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20のアシル基、アミノ基、シアノ基、フェノキシ基及び
フェニルチオ基の群から選ばれる基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基又はナフチル基であり、R
3〜R
5は互いに結合して環構造を形成していてもよく;X
−は、陰イオンを表す。]
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、350nm〜500nmの波長の光で効率よく感光し、深部硬化性に優れるという効果を奏する。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、光塩基発生剤(A)、熱ラジカル重合開始剤(B)及びラジカル重合性物質(C)を含有する。
光塩基発生剤(A)は、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物であり、式中のArは、ベンゼン骨格を少なくとも1個有し、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、
メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20のアシル基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、
フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基及び
フェニルチオ基の群から選ばれる基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は複素環基である。
Arとしては、ベンゼン環骨格を1〜4個有する芳香族炭化水素基又は複素環基が好ましい。さらに好ましいものは後述する。
式中のR
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20のアシル基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基及び
フェニルチオ基の群から選ばれる基で置換されていてもよいフェニル基を表し、R
1及びR
2は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
式中のmは、2〜4の整数であり、好ましく2又は4である。
式中のR
3〜R
5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20のアシル基、アミノ基、シアノ基、フェノキシ基及び
フェニルチオ基の群から選ばれる基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基又はナフチル基であり、R
3〜R
5は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
これらのうち、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。
式中のX
−は陰イオンを表す。具体的には、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、脂肪族カルボキシイオン、芳香族カルボキシイオン(安息香酸アニオン、フェ二ルグリオキシル酸アニオンなど)、脂肪族スルホキシイオン、芳香族スルホキシイオン、脂肪族スルホキシイオンのハロゲン化物、芳香族スルホキシイオンのハロゲン化物、6フッ化アンチモネートイオン(SbF
6−)、6フッ化リンイオン(PF
6−)及びボレートアニオン(テトラフェニルボレート、ブチルトリフェニルボレートアニオンなど)が例示される。光分解性の観点から、脂肪族カルボキシイオン、芳香族カルボキシイオン及びボレートアニオンが好ましい。
活性光線により、光塩基発生剤(A)のAr、R
1及びR
2が結合した炭素と窒素との結合部分が切断されることで、一般式(6)又は一般式(7)で表わされる塩基が発生する。
【0015】
一般式(6)におけるmは、一般式(1)におけるmと同じであり、好ましいものも同じである。同様に、一般式(7)におけるR
3〜R
5、一般式(2)におけるR
3〜R
5と同じであり、好ましいものも同じである。
【0016】
光塩基発生剤(A)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物では、活性光線の照射により光塩基発生剤(A)から発生した塩基(一般式(6)で表される3級アミジン又は一般式(7)で表わされる3級アミン)が、熱ラジカル重合開始剤(B)とレドックス系開始剤を形成することで、急速に(B)の分解が進行する。レドックス系開始剤からのラジカル発生は、暗反応で進行するため、塩基の拡散に伴い、一般的な光ラジカル開始剤では光硬化が困難な、活性光線が減衰している部分や届かない部分での硬化が可能となる。
【0018】
一般式(6)について説明する。一般式(6)はアミジン骨格を有する化合物であり、mは2〜4の整数である。特に好ましくは、mが4である1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、mが2である1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンである。
【0019】
一般式(7)について説明する。一般式(7)は3級アミンであり、特に好ましくは、トリエチルアミン、トリブチルアミン及び1−アザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0020】
前記の一般式(1)又は一般式(2)におけるArとしては、ベンゼン環骨格を1〜4個有する芳香族炭化水素基又は複素環基が好ましいが、特に好ましいのは、一般式(3)で表される化合物からR
6〜R
15の内のいずれか1つを除いた1価の残基、一般式(4)で表される化合物からR
16〜R
23の内のいずれか1つを除いた1価の残基及び一般式(5)で表される化合物からR
24〜R
33の内のいずれか1つを除いた1価の残基である。
【0024】
一般式(3)で表される残基(Ar1)について説明する。(Ar1)はアントラセン骨格を有する残基であり、i線(365nm)付近に最大吸収波長を有する残基の一例である。置換基R
6〜R
15は吸収波長の調整、感度の調整、熱安定性、反応性、分解性等を考慮して変性させるものであり、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(炭素数1〜20)、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、シリル基(炭素数1〜20)、アシル基(炭素数1〜20)、アミノ基、シアノ基、アルキル基(炭素数1〜20)、フェニル基、ナフチル基からなる群より選ばれる官能基で目的に応じて変性される。
【0025】
アルコキシ基(炭素数1〜20)としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、neo-ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
シリル基(炭素数1〜20)としては、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基のようなトリアルキルシリル基等が挙げられる。ここでアルキルは直鎖構造でも分岐構造でも構わない。
【0026】
アシル基(炭素数1〜20)としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、シクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
アルキル基(炭素数1〜20)としは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso-プロピル基、n−ブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素及び塩素が好ましい。
【0027】
置換基として好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられ、さらに好ましくは、シアノ基、フェニル基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアシル基が挙げられる。特に好ましいものとしては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシル基が挙げられる。また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐でも環状でも良い。
【0028】
一般式(4)で表される残基(Ar2)について説明する。(Ar2)はチオキサントン骨格を有する残基であり、i線(365nm)付近に最大吸収波長を有する化合物の一例である。置換基R
16〜R
23は、前記(Ar1)の置換基R
6〜R
15と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0029】
一般式(5)で表される残基(Ar3)について説明する。(Ar3)はベンゾフェノン骨格を有する残基であり、i線(365nm)付近に最大吸収波長を有する残基の一例である。置換基R
24〜R
33は、前記(Ar1)の置換基R
6〜R
15と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0030】
これらのArのうち、光分解性の観点から、残基(Ar1)及び残基(Ar2)が好ましい。
【0031】
次に本発明の感光性樹脂組成物に含有する熱ラジカル重合開始剤(B)について説明する。熱ラジカル重合開始剤(B)とは、電子線、紫外線、可視光線等の活性光線の照射によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤とは異なり、熱によりラジカルを発生する化合物を表し、例えば、従来から知られている有機過酸化物(ヒドロペルオキシド、過酸化ジアルキル及び過酸化ジアシルなど)やアゾ化合物の公知の化合物を用いることが好ましい。安定性、反応性の観点から、10時間半減期温度が70℃〜250℃の熱ラジカル重合開始剤がさらに好ましい。具体的には、下記の(B1)及び(B2)が挙げられる。(B)は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
10時間半減期温度70℃以上で150℃未満の熱ラジカル重合開始剤(B1)としては、下記が挙げられる。
(B11)パーオキサイド系重合開始剤:ベンゾイルパーオキサイド(半減期温度74℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(半減期温度102℃)、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン(半減期温度103℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(半減期温度104℃)、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート(半減期温度105℃)、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(半減期温度119℃)、ジクミルパーオキサイド(半減期温度116℃)、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(半減期温度116℃)、2,5,−ジメチル−2,5,−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(半減期温度118℃)、t−ブチルクミルパーオキサイド(半減期温度120℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(半減期温度124℃)、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(半減期温度145℃)、p−メンタンハイドロパーオキサイド(半減期温度128℃)等。
(B12)アゾ系重合開始剤:1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(半減期温度104℃)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(半減期温度110℃)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)(半減期温度111℃)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)(半減期温度110℃)等。
【0033】
10時間半減期温度150℃以上で250℃以下の熱ラジカル重合開始剤(B2)としては、下記が挙げられる。
(B21)パーオキサイド系重合開始剤:1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(半減期温度153℃)、クメンハイドロパーオキサイド(半減期温度158℃)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(半減期温度167℃)、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド(半減期温度176℃)等。
(B22)その他:2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(半減期温度210℃)等。
【0034】
次に本発明の感光性樹脂組成物に含有するラジカル重合性物質(C)について説明する。(C)としては、ラジカルによって重合する化合物であれば、特に制限無く公知のものを使用することができるが、N−ビニル化合物、単官能(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリロイル基(以下、(メタ)アクリロイル基と表記する。)を分子内に2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及びマレイミド化合物が好ましく、さらに好ましくは (メタ)アクリレートモノマー及び多官能(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0035】
N−ビニル化合物としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム及びN−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキル基の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート[例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど];脂環基含有(メタ)アクリレート[ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シジクロペンテニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートなど]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]が挙げられる。
【0037】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2’-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0038】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するもので、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4−8(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。これらは単独でもまた組み合わせても使用できる。
これらは単独又は併用して用いることができ、必要によっては、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類等の重合禁止剤を適宜用いてもよい。
【0039】
熱ラジカル重合開始剤(B)の添加量は、光硬化性及び貯蔵安定性の観点から、ラジカル重合性物質(C)100部に対して、0.05〜30部であり、好ましくは0.1〜20部である。光塩基発生剤(A)の添加量は、ラジカル発生効率及び硬化物の物性の観点から、熱ラジカル開始剤(B)100重量部に対して1〜150重量部が好ましく、5〜100重量部がさらに好ましい。
【0040】
本発明における感光性樹脂組成物には、必要により溶剤、増感剤、密着性付与剤(シランカップリング剤など)等を添加含有してもよい。
【0041】
溶剤としては、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノアルキルエーテルおよびプロピレングリコールモノアルキルエーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンなど)、エステル類(エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)が挙げられる。これらは、単独でも混合して用いても良い。溶剤は、感光性樹脂組成物の固形分濃度が1〜100重量%になるように添加するのが好ましく、さらに好ましくは5〜80重量%、特に好ましくは10〜60重量%である。
【0042】
増感剤としては、例えば、ケトクマリン,フルオレン,チオキサントン,アントラキノン,ナフチアゾリン,ビアセチル,ベンジルおよびこれらの誘導体、ペリレン,置換アントラセン等が挙げられる。増感剤の含有率は、感光性樹脂組成物に対して0〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは5〜10重量%である。
【0043】
密着性付与剤としては、例えば、γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。密着性付与剤の含有率は、感光性樹脂組成物に対して0〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは5〜10重量%である。
【0044】
本発明における感光性樹脂組成物には、さらに、使用目的に合わせて、無機微粒子、顔料、分散剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、スリップ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤等を添加含有してもよい。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物は、350〜500nmの活性光線の照射で光硬化できるため、一般的に使用されている高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等(UV・EB硬化技術の最新動向、ラドテック研究会編、シーエムシー出版、138頁、2006)が使用できる。活性光線の照射時、および/または、照射後に光塩基発生剤から発生した塩基を拡散する目的で、加熱を行ってもよい。加熱温度は、用途により異なるが、通常、30℃〜200℃であり、好ましくは35℃〜150℃、さらに好ましくは40℃〜120℃である。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物は、レドックス系開始剤からのラジカル発生により、一般的な光ラジカル開始剤では光硬化が困難な、活性光線が減衰している部分や届かない部分での硬化が可能となるため、塗料、印刷インキ、コーティング剤、注型材料(例えばMEMS用材料)、レジスト材料、ナノインプリント材料、接着剤またはシーリング剤、或いは、光学部材又は建築材料の成型材料に使用できる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および製造例を以て本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、部は重量部を表す。
【0048】
[光塩基発生剤(A)の製造]
<製造例1>
1−(9−アントリルメチル)−1−アザビシクロ〔2.2.2〕オクタニウムテトラフェニルボレートの合成(A1−1)
50mlナスフラスコにて9−クロロメチルアントラセン(アルドリッチ社)2.0gをクロロホルムに溶解し、そこへ、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン1.3gを少量ずつ加え(添加後若干の発熱が見られた。)、このまま室温(約25℃)で1時間攪拌して反応液を得た。100mlナスフラスコに入れたナトリウムテトラフェニルボレート塩4.0g及び水40gからなる水溶液に、反応液を少しずつ滴下し、さらに1時間室温(約25℃)で攪拌した後、水層を分液操作により除き、有機層を水で3回洗浄した。この有機層をエバポレーターにて濃縮し、白色固体5.4gを得た。この白色固体をアセトニトリルにて再結晶を行い、光塩基発生剤(A1−1)(白色個体)4.7gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.8(s、1H)、8.3−8.1(m、4H)、7.8−7.5(m、4H)、7.2−7.1(m、8H)、7.0−6.8(m、8H)、6.8−6.7(m、4H)、5.9(s、2H)、3.8−3.7(m、2H)、3.5−3.2(m、6H)、2.8(m、2H)、2.0−1.6(m、8H)}、この白色固体は8−(9−アントリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート(A1−1)であることを確認した。
【0049】
<製造例2>
1−(9−アントリル)メチル−1−アザビシクロ〔2.2.2〕オクタニウムテトラフェニルボレートの合成(A1−2)
「1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン1.3g」を「1−アザビシクロ〔2.2.2〕オクタン1.0g」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、光塩基発生剤(A1−2)(白色固体)4.4gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.9(s、1H)、8.7(d、2H)、8.2(d、2H)、7.7(t、2H)、7.6(t、2H)、7.3−7.1(m、8H)、7.0−6.9(m、8H)、6.9−6.8(m、4H)、5.6(s、2H)、3.6−3.4(m、6H)、1.9(m、1H)、1.8−1.6(m、6H)}、この白色固体は9−アントリルメチル−1−アザビシクロ〔2.2.2〕オクタニウムテトラフェニルボレート(A1−2)であることであることを確認した。
【0050】
<製造例3>
5−(9−アントリルメチル)−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕−5−ノネニウムテトラフェニルボレートの合成(A1−3)
「1−アザビシクロ〔2.2.2〕オクタン2.0g」を「1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕−5−ノネン(サンアプロ株式会社)1.1g」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、光塩基発生剤(A1−3)(白色固体)4.6gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.8(s、1H)、8.3−8.1(m、4H)、7.8−7.5(m、4H)、7.2−7.1(m、8H)、7.0−6.8(m、8H)、6.8−6.7(m、4H)、5.7(s、2H)、3.8−3.7(t、2H)、3.5(t、2H)、3.4−3.2(m、2H)、2.7(m、2H)、2.2(m、2H)、1.7(m、2H)}、この白色固体は5−(9−アントリルメチル)−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕−5−ノネニウムテトラフェニルボレート(A1−3)であることを確認した。
【0051】
<製造例4>
8−(9−アントリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムフェニルグリオキシラートの合成(A1−4)
(1)フェニルグリオキシル酸銀の調製
フェニルグリオキシル酸(アルドリッチ社)3.9gをメタノール20gに溶解させ、そこへ水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社)0.9gを少しずつ加え(中和による発熱がみられた。)、1時間攪拌し、そこへ1mol/L硝酸銀水溶液(和光純薬工業株式会社)10.4gを加えた後、析出した灰色固体を濾別し、メタノールで洗浄し、乾燥して、フェニルグリオキシル酸銀(灰色固体)4.4gを得た。
【0052】
(2)8−(9−アントリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムフェニルグリオキシラートの合成:
50mlナスフラスコにて9−クロロメチルアントラセン(アルドリッチ社)2.0gをメタノール40gに溶解し、そこへ、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン1.3gを少量ずつ加え(添加後若干の発熱が見られた。)、このまま室温(約25℃)で1時間攪拌して反応液を得た。100mlナスフラスコに入れたフェニルグリオキシル酸銀3.0g及びメタノール20gからなる分散液に、反応液を少しずつ滴下し、さらに1時間室温(約25℃)で攪拌した後、生じた灰色固体を濾過により除いた濾液をエバポレーターにて濃縮し、褐色固体4.5gを得た。この褐色固体をエーテル/ヘキサンで再結晶を行い、本発明の光塩基発生剤(A1−4)(黄色固体)2.6gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.8(s、1H)、8.3(d、2H)、8.2(d、2H)、7.8(d、2H)、7.7(t、2H)、7.6(t、2H)、7.5(d、1H)、7.4(t、2H)、5.9(s、2H)、3.8−3.7(m、2H)、3.5−3.4(m、4H)、2.8−2.7(m、2H)、2.0−1.6(m、8H)}、この黄色固体は8−(9−アントリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムフェニルグリオキシラート(A1−4)であることを確認した。
【0053】
<製造例5>
N−(9−アントリルメチル)−N,N,N−トリオクチルアンモニウムテトラフェニルボレートの合成(A1−5)
「1−アザビシクロ〔2.2.2〕オクタン1.0g」を「トリオクチルアミン(和光純薬工業株式会社)3.1g」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、光塩基発生剤(A1−5)(白色固体)6.2gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.9(s、1H)、8.7(d、2H)、8.2(d、2H)、7.7(t、2H)、7.6(t、2H)、7.2−7.0(m、8H)、7.0−6.9(m、8H)、6.9−6.8(m、4H)、5.8(s、2H)、3.4−3.2(m、6H)、1.9−1.6(m、6H)、1.4−1.2(m、30H)、1.0−0.8(t、9H)}、この白色固体はN−(9−アントリルメチル)−N,N,N−トリオクチルアンモニウムテトラフェニルボレート(A1−5)であることを確認した。
【0054】
<製造例6>
8−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレートの合成(A2−1)
(1)メチルチオキサントン(中間体10)の合成
硫酸139gを三角フラスコに仕込み、そこへ、ジチオサリチル酸(和光純薬工業株式会社)10gを加え、1時間室温(約25℃)で攪拌した後、氷浴にて冷却して冷却溶液を得た。ついで、この冷却溶液の液温を20℃以下に保ちながら、トルエン25gを少しずつ滴下した後、滴下後室温(約25℃)にもどし、さらに2時間攪拌して反応液を得た。ビーカーに入れた水815gを攪拌しながら、反応液を少しずつ加えた後、析出した黄色固体をろ別した。この黄色固体をジクロロメタン260gに溶解し、水150gを加え、さらに、24%KOH水溶液6.7gを加えて水層をアルカリ性とし、1時間攪拌した後、分液操作にて水層を除去し、有機層を130gの水で3回洗浄した。ついで有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶剤(ジクロロメタン)を留去して、中間体(10)(黄色固体)8.7gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.4(d、1H)、8.2(s、1H)、7.8−7.7(m、2H)、7.7−7.5(m、3H)、2.4(s、3H)}、この中間体(10)は、2−メチルチオキサントンと3−メチルチオキサントンの混合物(モル比2:1)であることを確認した。
【0055】
(2)2−ブロモメチルチオキサントン(中間体11)の合成
中間体(10)(メチルチオキサントン混合物)2.1gをシクロヘキサン120mlに溶解し、これにN−ブロモスクシンイミド(和光純薬工業株式会社)8.3g、過酸化ベンゾイル(和光純薬工業株式会社)0.1gを加え、還流下で4時間反応させた後(3−メチルチオキサントンは反応しない。)、溶剤(シクロヘキサン)を留去し、そこへ、クロロホルム50mlを加えて残渣を再溶解させてクロロホルム溶液を得た。クロロホルム溶液を30gの水で3回洗浄し、分液操作により水層を除去した後、溶剤(クロロホルム)を留去し、褐色固体1.7gを得た。酢酸エチルを用いて、これを再結晶を行うことにより、中間体(11)(黄色固体)1.5gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.6(s、2H)、7.8−7.5(m、5H)、4.6(s、2H)}、この中間体(11)は2−ブロモメチルチオキサントンであることを確認した。
【0056】
(3)8−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムブロマイド(中間体12)の合成
中間体(11)(2−ブロモメチルチオキサントン)1.0gをジクロロメタン85gに溶解し、これに1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU、サンアプロ株式会社)0.5gを滴下した後(滴下後発熱した。)、室温(約25℃)下、1時間攪拌し、ジクロロメタンを留去して、白色固体2.2gを得た。この白色固体をテトラヒドロフラン/ジクロロメタンに溶解して再結晶を行い、中間体(12)(白色固体)1.2gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、CDCl
3、δ(ppm):8.6(d、1H)、8.3(d、1H)、7.8(d、1H)、7.8−7.6(m、3H)、7.5(t、1H)、5.1(s、2H)、3.9−3.8(m、6H)、3.0(m、2H)、2.4−2.2(m、2H)、2.0−1.7(m、6H)}、この中間体(12)は8−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムブロマイドであることを確認した。
【0057】
(4)8−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレートの合成
ナトリウムテトラフェニルボレート塩(ナカライテスク株式会社)0.8gを水17gで溶解させた水溶液に、あらかじめクロロホルム50gに溶解させた中間体(12)(8−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムブロマイド)1.0gを少しずつ滴下した後、1時間室温(約25℃)で攪拌し、水層を分液操作により除き、有機層を30gの水で3回洗浄した。この有機層をエバポレーターにて濃縮し、黄色固体を得た。この黄色固体をアセトニトリル/エーテルにて再結晶を行い、光塩基発生剤(A1−6)(微黄色粉末)1.3gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.5(d、1H)、8.4(s、1H)、8.0−7.6(m、5H)、7.2−7.1(m、8H)、7.0−6.8(m、8H)、6.8−6.7(m、4H)、5.1(s、2H)、3.8−3.7(m、2H)、3.7−3.5(m、4H)、3.0−2.9(m、2H)、2.1−2.0(m、2H)、1.8−1.5(m、6H)}、この微黄色粉末は8−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート(A2−1)であることを確認した。
【0058】
<製造例7>
8−(4−ベンゾイルフェニル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレートの合成(A3−1)
(1)4−ブロモメチルベンゾフェノン(中間体20)の合成
還流冷却器付き200mLフラスコに、4−メチルベンゾフェノン(アルドリッチ社)25.1g、N−ブロモスクシンイミド(和光純薬工業株式会社)22.8g、過酸化ベンゾイル(20%含水、和光純薬工業株式会社)0.54g及びアセトニトリル80gを加え、80℃まで加熱し、還流下2時間反応させ、冷却した後、溶媒を留去し、メタノール160gで再結晶させて、中間体(20)(白色結晶)26gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、CDCl
3、δ(ppm):7.9−7.7(m、4H)、7.6(t、1H)、7.55−7.4(m、4H)、4.5(s、2H)}、この中間体(H10)は、4−ブロモメチルフェニルベンゾフェノンであることを確認した。
【0059】
(2)8−(4−ベンゾイルフェニル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムブロマイド(中間体21)の合成
中間体(20)25.8gをアセトニトリル100gに溶解し、これに1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(サンアプロ株式会社)14.6gを滴下した後(滴下後発熱した。)、室温(約25℃)下、18時間攪拌し、アセトニトリルを留去して、褐色固体を得た。この褐色固体をアセトニトリルに溶解して再結晶を行い、中間体(21)(白色固体)28.2gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、CDCl
3、δ(ppm):7.9−7.7(d、4H)、7.6−7.3(m、5H)、5.0(s、2H)、3.9−3.6(m、6H)、3.0−2.9(m、2H)、2.3−2.2(m、2H)、1.9−1.7(m、6H)}、この中間体(H11)は8−(4−ベンゾイルフェニル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムブロマイドであることを確認した。
【0060】
(3)8−(4−ベンゾイルフェニル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレートの合成
ナトリウムテトラフェニルボレート塩(ナカライテスク株式会社)0.8gを水17gで溶解させた水溶液に、あらかじめクロロホルム50gに溶解させた中間体(21)(8−(4−ベンゾイルフェニル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムブロマイド)6.8gを少しずつ滴下した後、2時間室温(約25℃)で攪拌して反応液を得た。反応液を濾過し、濾液を濃縮して得た黄色オイルをアセトニトリルに溶解して再結晶して、光塩基発生剤(A3−1)(白色固体)7.6gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、CDCl
3、δ(ppm):7.8−7.7(d、4H)、7.6(t、1H)、7.5−7.3(m、10H)、7.1−6.8(m、14H)、4.8(s、2H)、3.9−3.8(m、2H)、3.7−3.5(m、4H)、2.0(m、2H)、1.5−1.1(m、8H)}、この白色固体は8−(4−ベンゾイルフェニル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート(A3−1)であることを確認した。
【0061】
<製造例8>
{8−(2−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート(A4−1)の合成}
【0062】
(1)8−(2−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイド[中間体(30)]の合成:
「2−ブロモメチルナフタレン[東京化成工業株式会社製]1.1g」をアセトニトリル100gに溶解し、これに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン[サンアプロ(株)製「DBU」]14.6gを滴下した後(滴下後発熱した。)、室温(約25℃)下、18時間撹拌し、アセトニトリルを留去して、白色粉末を得た。この白色粉末をアセトニトリルに溶解して再結晶を行い、中間体(30)(白色粉末)1.3gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.0−7.4(m、7H)、5.0(s、2H)、3.7−3.2(m、6H)、3.0−2.9(m、2H)、2.1(m、2H)、1.7−1.5(m、8H)}、この中間体(30)は8−(9−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイドであることを確認した。
【0063】
(2)8−(2−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート(A4−1)の合成:
ナトリウムテトラフェニルボレート塩[ナカライテスク株式会社製]0.8gを水17gで溶解させた水溶液に、あらかじめクロロホルム50gに溶解させた中間体(30){8−(9−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイド}0.8gを少しずつ、滴下した後、2時間室温(約25℃)で撹拌して反応液を得た。反応液を濾過し、濾液を濃縮して得た黄色オイルをアセトニトリルに溶解して再結晶して、光塩基発生剤光塩基発生剤(A4−1)(微黄色粉末)1.3gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.0−7.4(m、7H)、7.2−7.1(m、8H)、7.0−6.8(m、8H)、6.8−6.7(m、4H)、5.1(s、2H)、3.8−3.3(m、6H)、2.9−2.8(m、2H)、1.9−1.5(m、8H)}、この微黄色粉末は8−(2−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレートであることを確認した。
【0064】
<製造例9>
{8−(t−ブチル−2−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート(A4−2)の合成}
【0065】
(1)t−ブチル−2−メチルナフタレン[中間体(31)]の合成:
200mLフラスコに、2−メチルナフタレン[和光純薬株式会社製]7.1g、塩化−t−ブチル[和光純薬株式会社製]4.8gを加え、塩化アルミニウム[和光純薬株式会社製]0.2gを少しずつ滴下した後、2時間室温(約25℃)で撹拌して反応液を得た。反応液にジクロロエタン100ml加え、有機層を水で3回洗浄した。この有機層をエバポレーターにて濃縮し、褐色オイル9.7gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.0−7.4(m、6H)、2.6(s、2H)、1.4(s、9H)}、この褐色オイルはt−ブチル−2−メチルナフタレンであることを確認した。
【0066】
(2)t−ブチル−2−ブロモメチルナフタレン[中間体(32)]の合成:
還流冷却器付き200mLフラスコに、中間体(31){t−ブチル−2−メチルナフタレン}9.7g、N−ブロモスクシンイミド[和光純薬工業株式会社製]9.6g、過酸化ベンゾイル[20%含水:和光純薬工業(株)製]4.8g及びクロロベンゼン100mlを加え、70℃まで加熱し、還流下6時間反応させて反応液を得た。反応液にジクロロエタン50ml加え、有機層を水で3回洗浄した。この有機層をエバポレーターにて濃縮し、白色固体10.1gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.0−7.4(m、6H)、4.5(s、2H)、1.4(s、9H)}、この褐色オイルはt−ブチル−2−ブロモメチルナフタレンであることを確認した。
【0067】
(3)8−(t−ブチル−2−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイド[中間体(33)]の合成:
「2−ブロモメチルナフタレン[東京化成工業株式会社製]1.1g」を中間体(32)2.5gに変更した以外、製造例8(1)と同様にして、中間体(33)(白色粉末)2.6gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.0−7.4(m、6H)、5.0(s、2H)、3.7−3.2(m、6H)、3.0−2.9(m、2H)、2.1(m、2H)、1.7−1.5(m、8H)、1.4(s、9H)}、この中間体(33)は8−(t−ブチル−9−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイドであることを確認した。
【0068】
(4)8−(t−ブチル−2−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート(A4−2)の合成:
「中間体(30){8−(9−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイド}0.8g」を中間体(33)1.1gに変更した以外、製造例8(2)と同様にして光塩基発生剤(A4−2)(微黄色粉末)1.6gを得た。
1H−NMRによる分析の結果{300MHz、DMSO−d6、δ(ppm):8.0−7.4(m、6H)、7.2−7.1(m、8H)、7.0−6.8(m、8H)、6.8−6.7(m、4H)、5.1(s、2H)、3.8−3.3(m、6H)、2.9−2.8(m、2H)、1.9−1.5(m、8H)、1.4(s、9H)}、この微黄色粉末は8−(2−ナフタリルメチル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレートであることを確認した。
【0069】
[比較例に用いる光塩基発生剤の製造]
<比較製造例1>
光塩基発生剤として{[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン(DNCDPと略する)を、非特許文献1(Macromolecules A.Mochizuki,Vol.28,No.1,1995)に記載の方法により合成し、n−ペンタンとベンゼンで再結晶して光塩基発生剤(H−1)を得た。得られたDNCDPは、収率65%、融点132.8℃であり、元素分析結果は、C;58.12、H;6.90、N;7.94、O;27.04であった。なおDNCDPは、活性光線を照射すると、2級アミンを発生する化合物である。
【0070】
<比較製造例2>
特許文献2の製造例と同じように光塩基発生剤である4級アンモニウム塩を合成した。すなわち、p−ニトロフェナシルブロマイド (2.00g、8.2mmol)をアセトン(20g)に溶解させ、これにアセトン(5g)に溶解させたN,N-ジメチルベンジルアミン(1.10g、8.2mmol)の溶液をゆっくり添加し、この後、室温で2時間攪拌したところ、白色結晶が析出した。これをろ過し、アセトンで2度洗浄を行った後、真空下60℃で5時間乾燥して、白色結晶を得た(収量1.59g)。
上記白色結晶(1.00g、アンモニウム・ブロマイド塩として2.65mmol)を、メタノール/水(15g/15g)溶液に溶解させ、これに水(5.0g)に溶解させたテトラフェニルほう酸ナトリウム塩(0.94g、2.65mmol)の溶液をゆっくり添加した。添加とともに、白色スラリー状の析出が認められ、添加後、さらに室温で5時間攪拌した。これをろ過し、アセトン(20g)に溶解させて再結晶を行い、目的の4級アンモニウム塩(H−2)を得た(収量1.22g)。
【0071】
[感光性樹脂組成物の製造]
実施例1〜7
光塩基発生剤(A1−1)〜(A1−5)、(A2−1)、(A3−1)3部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(三洋化成工業製、ネオマーDA−600)100部、酸化チタン(石原産業製、タイペークA−200)40部、顔料分散剤(ビックケミー社製、Disperyk−111)0.5部を混合し、顔料分散体を得た後、ベンゾイルパーオキサイド(日油製、ナイパーBW)3部を混合して感光性樹脂組成物Q−1〜Q−7を製造した。
【0072】
実施例8〜9
光塩基発生剤(A4−1)、(A4−2)3部、ジエチルチオキサントン(和光純薬工業株式会社、2、4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン)1部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(三洋化成工業製、ネオマーDA−600)100部、酸化チタン(石原産業製、タイペークA−200)40部、顔料分散剤(ビックケミー社製、Disperyk−111)0.5部を混合し、顔料分散体を得た後、ベンゾイルパーオキサイド(日油製、ナイパーBW)3部を混合して感光性樹脂組成物Q−8〜Q−9を製造した。
【0073】
[比較感光性樹脂組成物の製造]
比較例1〜3
比較光塩基発生剤(H−1)〜(H−2)3部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(三洋化成工業製、ネオマーDA−600)100部、酸化チタン(石原産業製、タイペークA−200)40部、顔料分散剤(ビックケミー社製、Disperyk−111)0.5部を混合し、顔料分散体を得た後、ベンゾイルパーオキサイド(日油製、ナイパーBW)3部を混合して感光性樹脂組成物Q’−1〜Q’−2を製造した。
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(三洋化成工業製、ネオマーDA−600)100部、酸化チタン(石原産業製、タイペークA−200)40部、顔料分散剤(ビックケミー社製、Disperyk−111)0.5部を混合し、顔料分散体を得た後、ベンゾイルパーオキサイド(日油製、ナイパーBW)3部を混合して感光性樹脂組成物Q’−3を製造した。
【0074】
比較例4〜6
比較光塩基発生剤(H−1)〜(H−2)3部、ジエチルチオキサントン(和光純薬工業株式会社、2、4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン)1部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(三洋化成工業製、ネオマーDA−600)100部、酸化チタン(石原産業製、タイペークA−200)40部、顔料分散剤(ビックケミー社製、Disperyk−111)0.5部を混合し、顔料分散体を得た後、ベンゾイルパーオキサイド(日油製、ナイパーBW)3部を混合して感光性樹脂組成物Q’−4〜Q’−5を製造した。
ジエチルチオキサントン(和光純薬工業株式会社、2、4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン)1部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(三洋化成工業製、ネオマーDA−600)100部、酸化チタン(石原産業製、タイペークA−200)40部、顔料分散剤(ビックケミー社製、Disperyk−111)0.5部を混合し、顔料分散体を得た後、ベンゾイルパーオキサイド(日油製、ナイパーBW)3部を混合して感光性樹脂組成物Q’−6を製造した。
【0075】
[光塩基発生剤のモル吸光係数の測定]
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物に使用する光塩基発生剤(A1−1)〜(A4−2)及び(H―1)〜(H―2)について、モル吸光係数ε(365nm、405nm)を測定した。光塩基発生剤(A1−1)〜(A3−1)は波長365nm及び405nmの光を効率よく吸収することが分かった。一方、光塩基発生剤(A4−1)〜(A4−2)および比較例の感光性樹脂組成物に使用する光塩基発生剤は、365nmに辛うじて吸収が認められた。その結果を表1に示す。
【0076】
測定方法
測定試料(光塩基発生剤)約50mgを50mLのメスフラスコに精秤して、アセトニトリル約20gを加え溶解させた後、アセトニトリルを加えて標線に合わせた。この溶液1mLをメスピペットで20mLのメスフラスコに採り、アセトニトリルを標線まで加えて希釈し、所定の濃度のアセトニトリル溶液を得た。
この溶液を石英セル(光路長1cm)に入れ、分光光度計(株式会社島津製作所、UV−2550)により200〜500nmの波長範囲での吸収スペクトルを測定した。スペクトルで得られた吸光度から、下式によりモル吸光係数を算出した。
【0077】
モル吸光係数(ε)=(吸光度)/モル濃度(mol/L)
【0078】
[厚膜硬化性の評価]
実施例及び比較例で得た各感光性樹脂組成物を、厚さ0.20mmのティンフリースチール板に厚さ12μmのホモPET(ポリエチレンテレフタレート)シートを熱圧着したPET鋼板に、アプリケーターを用いて厚膜を変えて塗布して、下記の照射条件で光硬化させ、塗膜の鉛筆硬度(JIS K5400(1990))を測定し、鉛筆硬度が2H以上を維持できる膜厚を測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
照射条件
ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社、ECS−151U)で、露光波長を制御するために300〜450nmの波長の光を透過するフィルター(アイグラフィックス株式会社、365フィルター)を使用して、露光を行った。露光量は、365nmとして約0.6J/cm
2、405nmとして約12J/cm
2であった。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から、本発明の感光性樹脂組成物Q−1〜Q−9は鉛筆硬度2H以上を維持する膜厚が全て50μm以上と良好であり、また、比較例の感光性樹脂組成物Q’−1〜Q’−6は鉛筆硬度2H以上を維持する膜厚が25μm以下であることが判った。鉛筆硬度2H以上を維持するためには、塗膜がPET鋼板表面まで深部硬化している必要がある。
【0082】
本実施例に見られるように、本発明の感光性樹脂組成物を用いることで厚膜硬化性優れる感光性樹脂組成物が得られることがわかる。活性光線が減衰して深部まで十分に硬化しないような、染料や顔料などの色材や無機粒子などの充填剤を含有する塗料、印刷インキ、コーティング剤、レジスト材料などや、活性光線が深部まで到達せずに、深部まで十分に硬化しないような厚膜での硬化が必要な接着剤、注型材料(例えばMEMS用材料) 、ナノインプリント材料、シーリング剤または成型材料に特に有用である。