【実施例】
【0045】
(例1)
この例は、Y型のゼオライト及びZSM−5型のゼオライトを含有する添加剤の調製及びその物理的性質について説明する。
【0046】
ゼオライトの平均粒径(d50)が3マイクロメートルより小さいZSM−5型のゼオライトの懸濁液を用意した。
【0047】
並行して、アルミナと一緒のシリカのゾルを含み、これに不活性物質、この場合はカオリン、を加えたマトリックスを用意した。
【0048】
次に、形成されたそのマトリックスにリン酸を加えることによってリンを組み込み、次に、約25%の固形分含量を有するゼオライトZSM−5の懸濁液をその改質されたマトリックスに加えた。
【0049】
2μmと3μmの間の平均粒径及び25%の固形分含量を有する懸濁液の形のY型の2番目のゼオライト構造を、そのようにして形成された混合物に加えた。
【0050】
使用されたY型のゼオライトは、低いナトリウム含量(<1.3重量%)及び7より上、好ましくは約10以上のシリカ−アルミナのフレームワーク比(framework ratio)を有しており、当業者にはUSYとして知られている。
【0051】
形成された最終の混合物を、20℃から40℃まで変化する温度で、それらの熟成に必要な時間保持した。
【0052】
その混合物を、次にスプレー乾燥機中で乾燥した。
【0053】
表1は、2つの添加剤、ここで対照用として取り入れた25重量%のZSM−5を含有する添加剤R1、及び本発明に従って調製した25重量%のZSM−5及び25重量%のUSYを含有する添加剤A1の化学組成及び特性を示す。
【表1】
【0054】
これらの特性は、本発明に従って調製した添加剤A1が、対照用添加剤と同様の密度を有しているが、熱水失活前と後の両方においてより大きい比面積を有することを示している。
【0055】
(例2)
この例は、両方共例1において説明した対照用添加剤(R1)及び添加剤(A1)に対する触媒試験において得られた生成物の転化率及び収率を比較した。
【0056】
試験すべき添加剤は、100%水蒸気により815℃で5時間、予め処理した。
【0057】
処理したそれぞれの添加剤を、次に商業ベースのFCC単位装置から得た平衡触媒(E−cat)と、10%の添加剤対90%のE−catの重量の割合で混合した。
【0058】
表2は、この平衡触媒の化学組成及び物理的性質を示す。
【表2】
【0059】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を、上で記載した割合で含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質軽油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比6及び温度535℃で試験した。
【表3】
【0060】
表4は、平衡触媒、及び平衡触媒と例1に記載の添加剤(R1及びA1)との混合物に対する転化率及び収率についての比較結果を示す。
【0061】
表4に示されている混合物についての転化率及び収率の値は、添加剤無しで平衡触媒を使用したときの基本の値、転化率及び収率と、混合物(E−cat+添加剤)により得られた値との間の絶対差である。
【表4】
【0062】
これらの結果は、例1に記載の方法に従って調製した25重量%のUSY及び25重量%のZSM−5を含有する添加剤A1が、ゼオライトZSM−5のみを含有する添加剤(R1)よりプロピレン及びLPGの高い収率を与えることを示している。
【0063】
(例3)
この例は、例1において記載されている対照用添加剤(R1)及び例1に記載の方法に従って調製した他の3つの添加剤(A2、A3及びA4)に対する触媒試験において得られた生成物の転化率及び収率を説明する。
【0064】
添加剤A2〜A4は、マトリックスの組成が変化しているのみで、25重量%のZSM−5及び25重量%のUSYを含有する。対照用添加剤R1は、ゼオライトZSM−5のみを25重量%の濃度で含有する。
【0065】
試験される添加剤は、前処理、815℃の100%水蒸気による5時間の失活を受ける。
【0066】
表5は、それら添加剤の特性及び化学組成を示している。
【0067】
処理されたそれぞれの添加剤は、次に商業ベースのFCC単位装置から得られた平衡触媒(E−cat)と10%の添加剤対90%のE−catの重量割合で混合した。
【0068】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質軽油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比6及び温度535℃で試験した。
【表5】
【0069】
表6は、FCCプロセスにおいて上記の条件で使用したときの対照用添加剤(R1)及び添加剤A2〜A4により得られた収率及び転化率を示している。
【表6】
【0070】
これらの結果は、添加剤A2〜A4が、R1と同じ触媒/石油比を使用するとき、より高い転化率を与え、それらがR1のものよりも良好なLPGに対する選択性を有することを示している。
【0071】
添加剤A2及びA3は、軽質オレフィンに対する選択性における優先的な改良により際立っており、添加剤A4は、転化率における改良により際立っている。
【0072】
(例4)
この例は、対照用添加剤(R2)及び添加剤(A5)(後者は、例1に記載の方法に従って調製した)に対する触媒試験において得られた生成物の転化率及び収率を説明している。
【0073】
添加剤A5は、35重量%のZSM−5及び15重量%のUSYを含有する。対照用添加剤R2は、ゼオライトZSM−5のみを35重量%の濃度で含有する。
【0074】
試験すべき添加剤は、前処理、815℃の100%水蒸気による5時間の失活を受けた。
【0075】
これらの添加剤の特性を表7に示す。
【表7】
【0076】
それぞれの処理した添加剤を、次に、商業ベースのFCC単位装置から得た平衡触媒(E−cat)と、10%の添加剤対90%のE−catの重量比で混合した。
【0077】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を上で記載した割合で含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質軽油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比6及び温度535℃で試験した。
【0078】
表8は、FCCプロセスにおける添加剤R2及びA5に対して得られた転化率及び収率の結果を示している。
【0079】
これらの結果は、添加剤A5が、対照用添加剤R2と同じ触媒/石油比を使用するとき、LPGに対するより高い転化率及びより高い選択性を与えることを示している。
【表8】
【0080】
(例5)
この例は、本発明に従う添加剤の調製におけるY型のゼオライト源としてのゼオライトUSY及びREYの使用、並びにそれらの特性評価及びFCCプロセスにおける使用について説明する。
【0081】
添加剤A6及びA7は、例1において説明した方法によって調製し、添加剤A6は、重量で20%のUSY及び25%のZSM−5の濃度を有しており、添加剤A7は、重量で20%のREY及び25%のZSM−5の濃度を有している。
【0082】
ゼオライトREYは、ゼオライト中に2%のRE
2O
3を得るようにするゼオライトYのアンモニア及びレアアース(rare earth)の溶液によるイオン交換によって得た。次いで、そのゼオライトは、500℃に近い温度でのか焼を受け、次いで例1において説明した手順によって添加剤に組み込まれた。
【0083】
試験すべき添加剤は、前処理、815℃の100%水蒸気による5時間の失活を受けた。
【0084】
表9は、その添加剤の組成及び特性を示している。
【表9】
【0085】
それぞれの処理した添加剤を、次に、商業ベースのFCC単位装置から得た平衡触媒(E−cat)と、10%の添加剤対90%のE−catの重量比で混合した。
【0086】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を上で記載した割合で含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質石油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比6及び温度535℃で試験した。
【0087】
表10は、FCCプロセスにおける添加剤A6及びA7により得られた収率及び転化率の結果を示している。
【表10】
【0088】
これらの結果は、添加剤A6が、A7と似ている性能を与えることを示している。これは、ゼオライトUSYが、本発明に従う添加剤の調製において、ゼオライトREYの使用と比較したとき収率及び転化率の損失をもたらすことなく使用することができることを暗示している。
【0089】
(例6)
この例は、対照用添加剤(R3)及び例1で記載の方法に従って調製した添加剤(A8)に対する触媒試験において得られた生成物の転化率及び収率を、希釈効果を示すために説明している。
【0090】
ZSM−5の高い含量を有する商業ベースの添加剤R3を、ゼオライトUSYの添加無しに従来の方法によって調製した。
【0091】
試験すべき添加剤は、事前に、815℃の100%水蒸気による5時間の処理をした。
【0092】
それぞれの処理した添加剤を、次に、商業ベースのFCC単位装置から得た平衡触媒(E−cat)と、混合物中に同じ含量のZSM−5をもたらす6.2%の添加剤R3対93.8%のE−cat及び10%の添加剤A8対90%のE−catの重量による比率で混合した。
【0093】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を上で記載した割合で含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質軽油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比5及び温度535℃で試験した。
【0094】
その触媒試験の結果を表11に示す。
【0095】
混合物中により低い含量で使用される、USY無しの従来の方法によって調製された高含量のZSM−5を有する添加剤R3は、全転化率の減少(希釈効果)をもたらす。このことは、6.24%の添加剤R3がその系に添加されたときに実証され、転化率は60.6%から59.2%に減少した。
【0096】
提案された新規の添加剤の場合、10%のA8の使用は、添加剤無しの平衡触媒(E−cat)の使用と同等の転化率をもたらす。A8のプロピレン及びLPGに対する選択性は、両方の系が同じZSM−5の含量を有するときに、R3の選択性より高い。
【表11】
【0097】
概要
本発明は、流動接触分解のための単位装置用のゼオライトの複合的な系を有する添加剤であって、それは、
a)10〜55重量%の範囲内の濃度でのMFI型のゼオライトと、
b)前記MFI型のゼオライトに対して0.1と2.0の間の重量比にあるY型のゼオライトと、
c)2.0重量%と25重量%の間の五酸化物の濃度での化学元素のリンと
を組み込んでいる微小球の形のマトリックスを含むことを特徴とする。