特許第5662937号(P5662937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5662937ゼオライト膜の製造方法、およびその製造方法により得られたゼオライト膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662937
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】ゼオライト膜の製造方法、およびその製造方法により得られたゼオライト膜
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20150115BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20150115BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   C01B39/48
   B01D69/12
   B01D71/02
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-534171(P2011-534171)
(86)(22)【出願日】2010年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2010065571
(87)【国際公開番号】WO2011040205
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2009-225142(P2009-225142)
(32)【優先日】2009年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】中村 真二
(72)【発明者】
【氏名】新野 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】宮原 誠
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−053747(JP,A)
【文献】 特開2007−061775(JP,A)
【文献】 特開2007−203241(JP,A)
【文献】 特開2008−285365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01D 69/12
B01D 71/02
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種となるゼオライト粒子を分散させたスラリーを自重により基材の表面上を面に対して平行に流下させることでゼオライト粒子を前記基材に付着させる粒子付着工程と、
前記ゼオライト粒子を付着させた前記基材をゾル中に浸漬して水熱合成し、前記基材上にゼオライト膜を形成する膜形成工程と、
を含むゼオライト膜の製造方法。
【請求項2】
前記ゼオライト粒子がDDR型ゼオライトである請求項1に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項3】
前記膜形成工程において、前記ゾルは、1−アダマンタンアミンとSiOとの含有割合(1−アダマンタンアミン/SiO)がモル比で0.002〜0.5、水とSiOとの含有割合(水/SiO)がモル比で10〜500である請求項2に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項4】
前記粒子付着工程において、前記ゼオライト粒子を分散させる溶媒が水である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項5】
前記粒子付着工程において、前記ゼオライト粒子を分散させる溶媒が有機溶剤、または有機溶剤水溶液である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項6】
前記粒子付着工程において、前記ゼオライト粒子を分散させる溶媒がエタノールまたはエタノール水溶液である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項7】
前記粒子付着工程において、前記スラリー中の固形分濃度が1質量%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項8】
前記粒子付着工程において、前記基材の前記ゼオライト粒子の付着面以外の表面をマスキング処理した後に前記スラリーの流下を行う、請求項1〜7のいずれか1項に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項9】
前記粒子付着工程において、種となる前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させる工程を複数回行う請求項1〜8のいずれか1項に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項10】
前記粒子付着工程において、種となる前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させた後、前記基材を上下反転してさらに前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させる工程を含む請求項9に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項11】
種となる前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させた後に、通風乾燥工程を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項12】
前記通風乾燥工程を加湿した風にて行う請求項11に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項13】
種となる前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させ、通風乾燥させた後に、水蒸気への暴露工程を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のゼオライト膜の製造方法により得られた膜厚10μm以下のゼオライト膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト膜の製造方法、およびその製造方法により得られたゼオライト膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトには、LTA、MFI、MOR、FER、FAU、DDRといった結晶構造が異なる数多くの種類(型)が存在する。例えば、DDR(Deca−Dodecasil 3R)型ゼオライトは、主たる成分がシリカであって、細孔径4.4×3.6オングストロームの酸素8員環からなる細孔を含む多面体によって形成されていることが知られている。DDR型ゼオライトは、その細孔径が小さいことから、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、エタン(C)のような比較的小さい分子を選択的に吸着することが可能であるため、これらの分子を選択的に分離し得るガス分離膜や吸着剤等としての用途が期待されている。
【0003】
種結晶となるゼオライト粉末を分散させた原料溶液と膜を形成するための適当な支持材とを容器等に入れて水熱合成する方法が知られている(特許文献1)。また、欠陥がなく厚さが均一なゼオライト膜を製造するために、支持体の表面に種結晶を担持し、水熱合成を行う方法として、種結晶を含有するスラリーを多孔質支持体でろ過する方法が知られている(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−159518号公報
【特許文献2】特開2001−97715号公報
【特許文献3】特開2008−74695号公報
【0005】
しかしながら、従来のゼオライト膜の製造方法によれば、膜厚を均一に薄く形成することが困難であった。特許文献1の種分散法によれば、水溶液中に種を分散させた液を使用するため、基材中に種が浸透し、基材内部、その後基材表面に種が付着する。このため、基材内に種結晶が厚く形成され、低フラックスとなる(透過速度が小さくなる)。
【0006】
特許文献2,3のろ過法によれば、ろ過するためのポンプなどの設備が必要な上、差圧が生じない部分(例えば、シール界面付近)は種が付着しにくい。レンコン状に穴の開いた基材に種付けする場合、内セルと外セルで真空度に差が生じるため、セルにおけるゼオライト膜の付着量に内外差が生じる。
【0007】
本発明の課題は、支持体の表面に種結晶を薄く付着させ、従来よりも欠陥が少なく薄く均一なゼオライト膜を形成するゼオライト膜の製造方法、およびその製造方法により得られたゼオライト膜を提供することにある。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、種となるゼオライト粒子を分散させたスラリーを自重により流下させてゼオライト粒子を基材に付着させることにより、上記課題を解決しうることを見出した。本発明によれば、以下のゼオライト膜の製造方法、およびその製造方法により得られたゼオライト膜が提供される。
【0009】
[1] 種となるゼオライト粒子を分散させたスラリーを自重により基材の表面上を面に対して平行に流下させることでゼオライト粒子を前記基材に付着させる粒子付着工程と、前記ゼオライト粒子を付着させた前記基材をゾル中に浸漬して水熱合成し、前記基材上にゼオライト膜を形成する膜形成工程と、を含むゼオライト膜の製造方法。
【0010】
[2] 前記ゼオライト粒子がDDR型ゼオライトである前記[1]に記載のゼオライト膜の製造方法。
【0011】
[3] 前記膜形成工程において、前記ゾルは、1−アダマンタンアミンとSiOとの含有割合(1−アダマンタンアミン/SiO)がモル比で0.002〜0.5、水とSiOとの含有割合(水/SiO)がモル比で10〜500である前記[2]に記載のゼオライト膜の製造方法。
【0012】
[4] 前記粒子付着工程において、前記ゼオライト粒子を分散させる溶媒が水である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
【0013】
[5] 前記粒子付着工程において、前記ゼオライト粒子を分散させる溶媒が有機溶剤、または有機溶剤水溶液である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
【0014】
[6] 前記粒子付着工程において、前記ゼオライト粒子を分散させる溶媒がエタノールまたはエタノール水溶液である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
【0015】
[7] 前記粒子付着工程において、前記スラリー中の固形分濃度が1質量%以下である前記[1]〜[6]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
【0016】
[8] 前記粒子付着工程において、前記基材の前記ゼオライト粒子の付着面以外の表面をマスキング処理した後に前記スラリーの流下を行う、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
【0017】
[9] 前記粒子付着工程において、種となる前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させる工程を複数回行う前記[1]〜[8]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
【0018】
[10] 前記粒子付着工程において、種となる前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させた後、前記基材を上下反転してさらに前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させる工程を含む前記[9]に記載のゼオライト膜の製造方法。
【0019】
[11] 種となる前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させた後に、通風乾燥工程を含む前記[1]〜[10]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
【0020】
[12] 前記通風乾燥工程を加湿した風にて行う前記[11]に記載のゼオライト膜の製造方法。
【0021】
[13] 種となる前記ゼオライト粒子を含む前記スラリーを流下させ、通風乾燥させた後に、水蒸気への暴露工程を含む前記[1]〜[12]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法。
【0022】
[14] [1]〜[13]のいずれかに記載のゼオライト膜の製造方法により得られた膜厚10μm以下のゼオライト膜。
【0023】
本発明は、スラリーを自重により基材の表面上を流下させて基材と接触させることによりゼオライト粒子(種粒子)を基材に付着させる方法である。ろ過法で使用するようなポンプ、真空室などの設備を必要としないため、設備を簡素化できる。また、ろ過法では差圧が生じにくく種付けがしにくい部分(例えば、基材の端面付近のガラスシール界面など)にも種付けができる。基材内部へ浸透させずに表面のみに種を付着することができるため、種粒子が形成される厚みを小さくすることができ、ひいては膜厚の小さい緻密なゼオライト膜を形成することが可能であり、十分な透過速度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】流下法によるゼオライト膜の製造方法を説明するためのフローである。
図2】流下法による種付けを説明するための模式図である。
図3】水熱合成を説明するための模式図である。
図4A】実施例1の破断面の走査型電子顕微鏡による写真である。
図4B】比較例2の破断面の走査型電子顕微鏡による写真である。
図5A】実施例1のガラス界面部の走査型電子顕微鏡による写真である。
図5B】比較例1のガラス界面部の走査型電子顕微鏡による写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0026】
本発明のゼオライト膜の製造方法は、種となるゼオライト粒子を分散させたスラリーを自重により基材の表面上を流下させることでゼオライト粒子を基材に付着させる粒子付着工程と、ゼオライト粒子を付着させた基材をゾル中に浸漬して水熱合成し、基材上にゼオライト膜を形成する膜形成工程と、を含む。粒子付着工程における流下とは、スラリーを基材上にて自重によって自由落下させることにより、スラリーが基板表面上を流れることをいう。流下法では、例えば、円筒状に穴の開いた基材のその穴の中にスラリーを流し込むことにより、面に対して平行に多量の液を流す。このようにすると流下されたスラリーは自重によって基材表面を流れる。このため基材の中への染込みが少ない。一方、従来知られている滴下法は、例えば、平板の上から垂直に少量のスラリーを滴下する方法であり、滴下されたスラリーは自重によって平板の中へ染込む。このため膜厚が厚くなる。
【0027】
図2に、流下法による種付け(粒子付着工程)の一実施形態を示す。広口ロート2の下端に基材1を固着し、コック3を開けることにより基材1上部から種付けスラリー4を流し込み、セル内を通過させて粒子付着工程を行うことができる。また、図3に、基材1をゾル7中に浸漬して水熱合成し、基材1上にゼオライト膜を形成する膜形成工程の一実施形態を示す。基材1を耐圧容器5内に入れ、ゾル7を入れ、加熱処理(水熱合成)を行うことにより、ゼオライト膜を製造することができる。なお、ゾル7(原料溶液)には、構造規定剤(例えば、1−アダマンタンアミン)、シリカ(SiO)、水、その他が含まれるが、後述するように、1−アダマンタンアミンとSiOとの含有割合(1−アダマンタンアミン/SiO)がモル比で0.002〜0.5、水とSiOとの含有割合(水/SiO)がモル比で10〜500とすることが好ましい。
【0028】
種付け(粒子付着工程)のスラリー4中の固形分濃度は、0.00001〜1質量%の範囲であることが好ましく、0.0001〜0.5質量%の範囲であることがより好ましく、0.0005〜0.2質量%の範囲であることが更に好ましい。濃度範囲の下限値よりも濃度が薄い場合は工程数が増えて高コストの原因となる。また、1質量%を超えると、基材表面に厚いゼオライト粒子層が形成し、厚膜になることから低フラックスとなる。
【0029】
粒子付着工程におけるスラリー4には、ゼオライト粒子を分散させる溶媒として、水を使用することができる。また、有機溶剤、有機溶剤水溶液を使用することもできる。さらに、エタノール、エタノール水溶液等を使用することもでき、特に溶媒を揮発性の高いエタノールとする場合には、流下直後に、揮発したエタノールにより基材内部が加圧されるため、流下液が基材表面へ押し出され、より種付け用スラリーの染込み量を少なくする事ができる。さらに基材1の外周部1aへのシールテープのマスキングと、エタノールを溶媒とする種ゾル使用を併用することで、種付け用のスラリー4の染込み量をより少なくすることが可能である。
【0030】
粒子付着工程において、種となるゼオライト粒子を含むスラリー4を流下させる工程(図2)を複数回行うことが好ましい。複数回とは、2〜10回程度である。それを超える回数では、作業量が多くコストがかかる。好ましくは、8回程度まで、より好ましくは、2〜6回程度である。複数回行うことにより、基材1の表面に、ゼオライト粒子をむらなく全面に付着させることができる。
【0031】
本発明のゼオライト膜の製造方法は、種となるゼオライト粒子を含むスラリー4を流下させた後、基材1を上下反転してさらにゼオライト粒子を含むスラリー4を流下させる工程を含むことが好ましい。このようにすることにより、基材1の表面に、ゼオライト粒子をむらなく、均一に付着させることができる。
【0032】
また、種となるゼオライト粒子を含むスラリー4を流下させる際には、基材1の外周部1aにシールテープ等でマスキングを行うことが望ましい。マスキングを行うことで、種付け用のスラリー4の染込み量を少なく、より均一にゼオライト粒子を付着させることができる。種付け用のスラリー4の染込み量を少なくすることで、より薄いゼオライト膜を形成することが可能になる。
【0033】
本発明のゼオライト膜の製造方法は、種となるゼオライト粒子を含むスラリー4を流下させた後、通風乾燥工程を含むことが好ましい。通風乾燥とは、ゼオライト粒子を含むスラリー4の付着した基材1の表面に通風することにより、スラリー4を乾燥させることである。通風乾燥を行うことにより、乾燥速度が上がり、液体が蒸発するときの液体の動きと共にゼオライト粒子が移動し表面に集まりやすくすることができる。
【0034】
また、通風乾燥は加湿した風で行うことが好ましい。通風乾燥を加湿した風で行うことにより、基材1上に種をより強く固着することができる。基材1上に種を強く固着することにより、その後の水熱合成時におけるゼオライト粒子の脱離を防ぐことができ、より欠陥の少ないゼオライト膜を安定して作製することができる。なお、スラリー4の流下種付け後、加湿しない風にて通風乾燥を行った基材1を通風乾燥後に水蒸気中に暴露する暴露工程を含むことでも、同様の効果が得られる。
【0035】
本発明のゼオライト膜の製造方法は、LTA、MFI、MOR、FER、FAU、DDRといった結晶構造のゼオライトについて適用することができるが、本明細書では、ゼオライト粒子がDDR型ゼオライトである場合を例として説明する。以下、DDR型ゼオライトの場合のゼオライト膜の製造方法の実施の形態を、図1を参照しつつ具体的に説明する。
【0036】
[1]種付け用スラリー液の作製・種付け(粒子付着工程)
DDR型ゼオライト結晶粉末を製造し、これをそのまま、または必要に応じて粉砕して種結晶として使用する。DDR型ゼオライト粉末(これが種結晶となる)を溶媒に分散させ、スラリー4(種付け用スラリー液)とする。種付け用スラリー液は、これに含まれる固形分濃度が1質量%以下になるように溶媒で希釈することが好ましい。希釈用の溶媒には水またはエタノール、もしくはエタノール水溶液が好ましい。希釈に使用する溶媒には、水やエタノール以外にも、アセトン、IPA等の有機溶剤、または有機溶剤水溶液を使用することもできる。揮発性の高い有機溶剤を使用することで、乾燥時間を短縮することができ、同時に種付け用のスラリー4の染込み量も少なくすることができるため、より薄いゼオライト膜を形成することが可能になる。スラリー液にDDR型ゼオライト粉末を分散させる方法としては、一般的な攪拌方法を採用すればよいが、超音波処理等の方法を採用してもよい。
【0037】
次に、種となるゼオライト粒子を分散させたスラリー4を自重により流下させることでゼオライト粒子を基材1に付着させる粒子付着工程を行う(図1のS1)。支持体となる基材1は、無孔質のものでも、多孔質のものでも使用することができる。支持体としては、アルミナ、ジルコニア、ムライト等をはじめとするセラミック、或いはガラス、ゼオライト、粘土、金属、炭素、有機高分子(例えば、フッ素樹脂)等の材質からなる無孔質、或いは多孔質の材料を好適に用いることができる。
【0038】
基材1として、多孔質のハニカム形状(レンコン状に穴(セル)の開いたもの)を用いる場合は、図2に示すように、広口ロート2の下端に基材1を固着し、基材1の上部から種付け用のスラリー4を流し込み、セル内を通過させることにより、種付けをすることができる。なお流下の際、基材1の外周部1aにシールテープ等でマスキングを行うことで、種付け用のスラリー4の染込み量をより少なく、均一にすることができる。
【0039】
次に、スラリー4を流下させた基材1を室温〜120℃、風速1〜10m/sで、30〜60分間通風乾燥させる(図1のS2)。そして、再度、種付けスラリー4を基材1に流下させる。種付けスラリー4の流下、通風乾燥を2〜6回繰り返すことにより、基材1の表面にむらなく種付けをすることができる。スラリーの溶媒としてエタノールや揮発性溶媒またはその水溶液を使用した場合には、乾燥時間をより短時間の通風で乾燥可能である。
【0040】
種付け後の基材1は、加湿した風で通風乾燥するか、もしくは通風乾燥後に水蒸気暴露を行うことにより、基材1上に種をより強く固着することができる。加湿した風で通風乾燥する場合には、絶対湿度10g/m以上で行うことが好ましい。水蒸気暴露の場合、絶対湿度が25g/m以上の環境にて、10分以上実施することが好ましい。絶対湿度が25g/mとすることでその後の水熱合成時におけるゼオライト粒子の脱離を防ぐことができ、より欠陥の少ないゼオライト膜を安定して作製することができる。脱離したゼオライト粒子は水熱合成容器底部や冶具などに堆積し、冶具の破損を引き起こすこともあるため、ゼオライト粒子の脱離はできるだけ少ない方が好ましい。
【0041】
[2]原料溶液(ゾル)の調製
次に、エチレンジアミンに溶解させた1−アダマンタンアミンを含む、所定の組成を有する原料溶液を調製する。
【0042】
1−アダマンタンアミンは、DDR型ゼオライトの合成におけるSDA(構造規定剤)、即ち、DDR型ゼオライトの結晶構造を形成させるための鋳型となる物質であるため、DDR型ゼオライトの原料であるSiO(シリカ)とのモル比が重要である。1−アダマンタンアミン/SiOモル比は0.002〜0.5の範囲内であることが必要であり、0.002〜0.2の範囲内であることが好ましく、0.002〜0.03の範囲内であることが更に好ましい。1−アダマンタンアミン/SiOモル比がこの範囲未満であると、SDAの1−アダマンタンアミンが不足してDDR型ゼオライトを形成することが困難である。一方、この範囲を超えると高価な1−アダマンタンアミンを必要以上に添加することになり、製造コストの面から好ましくない。
【0043】
1−アダマンタンアミンは、水熱合成の溶媒である水に対して難溶性であるため、エチレンジアミンに溶解させた後、原料溶液の調製に供する。1−アダマンタンアミンをエチレンジアミンに完全に溶解させ、均一な状態の原料溶液を調製することにより、均一な結晶サイズを有するDDR型ゼオライトを形成させることが可能となる。エチレンジアミン/1−アダマンタンアミンのモル比は4〜35の範囲内であることが必要であり、8〜24の範囲内であることが好ましく、10〜20の範囲内であることが更に好ましい。エチレンジアミン/1−アダマンタンアミンモル比がこの範囲未満であると、1−アダマンタンアミンを完全に溶解させるための量としては不充分である一方、この範囲を超えると、エチレンジアミンを必要以上に使用することになり、製造コストの面から好ましくない。
【0044】
本発明の製造方法においては、シリカ源としてコロイダルシリカを用いる。コロイダルシリカは市販のコロイダルシリカを好適に用いることができるが、微粉末状シリカを水に溶解し、或いは、アルコキシドを加水分解することにより調製することもできる。
【0045】
原料溶液中に含まれる水とSiO(シリカ)とのモル比(水/SiOモル比)は10〜500の範囲内であることが必要であり、14〜250の範囲内であることが好ましく、14〜112の範囲内であることが更に好ましい。水/SiOモル比がこの範囲未満であると、原料溶液のSiO濃度が高すぎるために、結晶化しない未反応のSiOが多量に残存する点において好ましくない一方、この範囲を超えると、原料溶液のSiO濃度が低すぎるためにDDR型ゼオライトを形成することができなくなる点において好ましくない。
【0046】
本発明の製造方法によれば、オールシリカ型のDDR型ゼオライトの他、その骨格にアルミニウムと金属カチオンを含むDDR型ゼオライト(以下、「ローシリカ型のDDR型ゼオライト」と記す)を製造することもできる。このローシリカ型のDDR型ゼオライトは、細孔にカチオンを有するために、吸着性能や触媒性能がオールシリカ型のDDR型ゼオライトとは異なる。ローシリカ型のDDR型ゼオライトを製造する場合には、溶媒である水とシリカ源であるコロイダルシリカの他、アルミニウム源、カチオン源を添加して原料溶液を調製する。
【0047】
アルミニウム源としては、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、金属アルミニウム等を用いることができる。アルミニウムを酸化物として換算した場合におけるSiO/Alモル比は50〜1000の範囲内であることが必要であり、70〜300の範囲内であることが好ましく、90〜200の範囲内であることが更に好ましい。SiO/Alモル比がこの範囲未満であると、DDR型ゼオライト以外のアモルファスSiOの比率が多くなってしまう点において好ましくない。一方、この範囲を超えると、DDR型ゼオライトは製造することができるものの、アルミニウム及びカチオン量が著しく少なくなることに起因して、ローシリカ型のDDR型ゼオライトとしての特性を発揮することができず、オールシリカ型のゼオライトと何ら違いがなくなってしまう点において好ましくない。
【0048】
カチオンとしては、アルカリ金属、即ち、K、Na、Li、Rb、Csの何れかのカチオンが挙げられ、カチオン源としては、Naの例で説明すると、水酸化ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を挙げることができる。アルカリ金属を酸化物として換算した場合におけるXO/Alモル比は1〜25の範囲内であることが必要であり、3〜20の範囲内であることが好ましく、6〜15の範囲内であることが更に好ましい。XO/Alモル比がこの範囲未満であると、目的とするSiO/Alモル比のDDR型ゼオライトが得難くなる点において好ましくない一方、この範囲を超えると、生成物にアモルファスSiOが混入してしまう点において好ましくない。
【0049】
以上に原料溶液の調製について説明したが、特に好ましい態様としては、1−アダマンタンアミンをエチレンジアミンに溶解した溶液、溶媒である水、コロイダルシリカ(ローシリカ型のDDRを合成する場合にあっては、更に、アルミニウム源である硫酸アルミニウム、及びカチオン源である水酸化ナトリウム)を所定の比率で混合し、溶解することにより、原料溶液を調製する方法が挙げられる。
【0050】
[3]膜化(膜形成工程)
原料溶液を入れた容器(例えば、広口瓶)をホモジナイザーにセットし攪拌し、水熱合成に用いるゾル7とする。次に、図3に示すように、流下法により種付けを行った基材1を耐圧容器5内に入れ、さらに調合したゾル7を入れた後、これらを乾燥器8に入れ、110〜200℃にて16〜120時間、加熱処理(水熱合成)を行うことにより、ゼオライト膜を製造する(図1のS3)。
【0051】
加熱処理の温度(合成温度)は、110〜200℃の範囲内とすることが好ましく、120〜180℃の範囲内とすることが更に好ましく、120〜170℃の範囲内とすることが特に好ましい。加熱処理の温度がこの範囲未満であると、DDR型ゼオライトを形成することができない点において好ましくない一方、この範囲を超えると、相転移により、目的物ではないDOH型ゼオライトが形成されてしまう点において好ましくない。
【0052】
本発明の製造方法における加熱処理の時間(合成時間)は、数時間〜5日間という極めて短時間で足りる。本発明の製造方法においては、DDR型ゼオライト粉末を流下法により基材に添加しているため、DDR型ゼオライトの結晶化が促進される。
【0053】
本発明の製造方法においては、加熱処理に際し、原料溶液(ゾル7)を常時攪拌する必要はない。原料溶液に含ませる1−アダマンタンアミンをエチレンジアミンに溶解させたため、原料溶液が均一な状態に保持されていることによる。なお、従来の方法では、原料溶液を常時撹拌しないと、DDRとDOHとの混晶が形成されてしまう場合があるが、本発明の製造方法によれば、原料溶液を常時攪拌をしなくとも、DOHは形成されず、DDRの単相結晶を形成させることができる。
【0054】
[4]洗浄・構造規定剤除去
次に、ゼオライト膜が形成された基材1を、水洗または、80〜100℃にて煮沸洗浄し(図1のS4)、それを取り出して、80〜100℃にて乾燥する(図1のS5)。そして、基材1を電気炉に入れ、大気中で、400〜800℃、1〜200時間加熱することにより、ゼオライト膜の細孔内の1−アダマンタンアミンを燃焼除去する(図1のS6)。以上により、従来よりも欠陥が少なく薄く均一な、膜厚10μm以下のゼオライト膜を形成することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1〜26)
(1)種結晶の作製
M. J. den Exter, J. C. Jansen, H. van Bekkum, Studies in Surface Science and Catalysis vol.84, Ed. by J. Weitkamp et al., Elsevier(1994)1159−1166、または特開2004−083375に記載のDDR型ゼオライトを製造する方法を基に、DDR型ゼオライト結晶粉末を製造し、これをそのまま、または必要に応じて粉砕して種結晶として使用した。合成後または粉砕後の種結晶を水に分散させた後、粗い粒子を除去し、種結晶分散液を作製した。
【0057】
(2)種付け(粒子付着工程)
(1)で作製した種結晶分散液をイオン交換水またはエタノールで希釈し、DDR濃度0.001〜0.36質量%(スラリー4中の固形分濃度)になるように調整し、スターラーで300rpmで攪拌し、種付け用スラリー液(スラリー4)とした。広口ロート2の下端に多孔質の基材1(レンコン状に穴の開いた直径30mm−長さ160mm、両端ガラスシール)を固着し、基材1の上部から160mlの種付け用スラリー液を流し込みセル内を通過させた(図2参照)。一部の基材1については外周部1aをテフロンテープでマスキングした後に種付けを行った(実施例9〜26)。スラリー4を流下させた基材1は室温または80℃風速3〜6m/sの条件で10〜30minセル内を通風乾燥させた。スラリー4の流下、通風乾燥を1〜6回繰り返してサンプルを得た。実施例15は通風乾燥時の風を加湿せず(風の絶対湿度:3g/m)に実施した。実施例16は通風乾燥時の風を加湿し、通風乾燥に使用する風の絶対湿度を12g/mとして実施した。また実施例19〜26は、通風乾燥後の種付きの基材1を絶対湿度が23〜36g/mの環境に30分から50時間さらす水蒸気暴露工程を行うことにより、水蒸気暴露処理をした。乾燥した後、電子顕微鏡による微構造観察を行った。実施例の条件では、DDR粒子が基材1の表面に付着していることを確認した。
【0058】
(3)膜化(膜形成工程)
フッ素樹脂製の100ml広口瓶に7.35gのエチレンジアミン(和光純薬工業製)を入れた後、1.156gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別の容器に98.0gの30質量%コロイダルシリカ(スノーテックスS,日産化学製)と116.55gのイオン交換水を入れ軽く攪拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜ、原料溶液を調製した。原料溶液の各成分のモル比は1−アダマンタンアミン/SiO=0.016、水/SiO=21)である。実施例13、14は原料溶液の各成分のモル比が1−アダマンタンアミン/SiO=0.004、0.47、水/SiO=15、168となるように調整し、同様の方法にて原料溶液を作製した。その後、原料溶液を入れた広口瓶をホモジナイザーにセットし、1時間攪拌した。内容積300mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器5内に(2)でDDR粒子を付着させた基材1を配置し、調合した原料溶液(ゾル7)を入れ、120℃〜170℃にて16〜84hr、加熱処理(水熱合成)を行った(図3参照)。走査型電子顕微鏡で膜化させた基材1の破断面を観察したところ、DDR膜の膜厚は、10μm以下であった。実施例で作製したDDR膜は、下記記載の比較例2で作製した膜と比較して、十分薄い膜厚であることが確認できた。
【0059】
(4)He透過量測定
膜の欠陥の有無を調べるために、膜化後、洗浄、乾燥(80℃)した後に、He透過量を測定した。実施例の条件ではHe透過量が測定限界以下(<0.018L/min・m・kPa)となり、全面被覆ができていることを確認した。
【0060】
(5)構造規定剤除去
被覆できた膜を電気炉で大気中450または500℃で50時間加熱し、細孔内の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。X線回折により、結晶相を同定し、DDR型ゼオライトであることを確認した。その後、電子顕微鏡による微構造観察を行った。
【0061】
(6)X線回折
得られた膜の結晶相をX線回折で調べることにより、結晶相の評価を行ったところ、DDR型ゼオライトおよび基材1であるアルミナの回折ピークのみが検出された。なお、X線回折における「DDR型ゼオライトの回折ピーク」とは、International Center for Diffraction Data(ICDD)「Powder Diffraction File」に示されるDeca−dodecasil 3Rに対応するNo.38−651、又は41−571に記載される回折ピークである。
【0062】
(7)微構造観察
電子顕微鏡により、種付け後、基材1の表面にDDR粒子が付着していることを確認した。また膜化後、基材1がDDRで被覆されていることを確認した。また破断面SEM構造より、種分散法で作製した膜と比較して、十分薄い膜厚であることが確認できた。
【0063】
(比較例1)
特開2008−74695(ろ過法)のゼオライト膜製造用の種結晶含有層付き多孔質基材、ゼオライト膜、及びゼオライト膜の製造方法に従って、DDR型ゼオライト膜の種付けを行った。その後、実施例1で作製したものと同様のゾル7を用いて、120℃で84時間水熱合成し、膜化を行った。実施例と同様に、He透過量の測定、走査型電子顕微鏡による微構造観察を行った。
【0064】
(比較例2)
実施例1で使用したものと同じ種結晶を実施例1で作製したものと同様のゾル7に分散させ、135℃で48時間水熱合成し、膜化を行った。実施例と同様に、He透過量の測定、走査型電子顕微鏡による微構造観察を行った。
【0065】
以上の実施例、及び比較例の結果を表1〜表3に示す。なお、表2の実施例15〜16は、通風乾燥工程における風の加湿をしないものとしたもの、表3の実施例17〜26は、加湿していない風で通風乾燥工程を行った後、水蒸気曝露をしないものとしたものを区別して記載した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
表1〜表3に示すように、実施例1〜26は、ガラス界面を被覆し、ゼオライト膜(DDR膜)を2〜8μmと薄く形成することができた。図4Aは、膜化後の実施例1の破断面の走査型電子顕微鏡による写真である。DDR膜が薄く形成されているのが分かる。また、図5Aは、膜化後の実施例1のガラス界面部の走査型電子顕微鏡による写真である。基材1の上がすべてDDR膜で覆われ、ガラス界面部を被覆することができているのが分かる。
【0070】
一方、比較例1は、走査型電子顕微鏡でガラス界面を観察したところ、ガラス部とDDR膜との間に、5〜10μmほど基材1が露出し、被覆できていなかった。図5Bは、膜化後の比較例1のガラス界面部の走査型電子顕微鏡による写真である。基材1が露出しており、ガラス界面部がDDR膜で被覆されていないのが分かる。また、比較例1では、ガラス界面部に膜が被膜していないため、He透過量は、測定不可であった。
【0071】
図4Bは、膜化後の比較例2の破断面の走査型電子顕微鏡による写真である。写真の範囲は、すべて基材1とDDR膜の混合層であり、DDR膜は、20μm以上の膜厚を有していた。DDR膜が実施例1に比べ、厚く形成されているのが分かる。このことから実施例で作製したDDR膜は比較例2で作製した膜と比較して、十分薄い膜厚であることが確認できた。
【0072】
実施例8と実施例9との比較により、種となるゼオライト粒子を含むスラリー4を流下させる際、基材1の外周部1aにシールテープ等でマスキングをすることで、種付け用のスラリー4の染込み量をより均一にすることができ、結果として膜厚のばらつきの少ないゼオライト膜を作製することができた。
【0073】
また、実施例9と実施例10との比較により、種付け用のスラリー4の溶媒を水から揮発性の高いエタノールにすることによって、より種付け用のスラリー4の染込み量を少なくする事ができ、結果としてより膜厚の薄いゼオライト膜を作製することができた。またエタノール溶媒とマスキングを併用することで、種付け用のスラリー4の染込み量をより均一にすることができ、結果として膜厚のばらつきの少ないゼオライト膜を作製することができた。
【0074】
さらに、実施例15、17〜20では膜化中にゼオライト粒子の脱落による堆積物があるが、実施例16、21〜26では堆積物がなく、種付け後の基材1の通風乾燥を絶対湿度12g/m以上の風にて実施するか、もしくは種付け後に通風乾燥した基材1を絶対湿度が27g/m以上の水蒸気中に暴露することにより、膜化中のゼオライト粒子の脱離を防止することができた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、ガス分離膜、浸透気化膜等に使用されるゼオライト膜の製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:基材、1a:(基材の)外周部、2:ロート、3:コック、4:スラリー(種付け用スラリー液)、5:耐圧容器、7:ゾル、8:乾燥器。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B