(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向を定義する。
【0027】
まず、
図1から
図8までを用いて、本発明の第一の実施形態に係る潤滑油供給機構を具備するエンジン1の構成について説明する。
【0028】
本実施形態に係るエンジン1は、直列4気筒16バルブのDOHCガソリンエンジンである。以下では、前後方向に並んだ4つの気筒のうち1つの気筒に主に着目して説明を行う。エンジン1は、主としてシリンダヘッド10、シリンダヘッドカバー20、動弁機構30、カムキャップ50及び給油部材100を具備する。
【0029】
図1、
図3及び
図5に示すシリンダヘッド10は、シリンダブロック(不図示)と共にエンジン1の主たる構造体となるものである。シリンダヘッド10は、前記シリンダブロック(不図示)の上部に固定される。シリンダヘッド10は、主として吸気側軸受部12、排気側軸受部14、オイルギャラリー16及びカムジャーナル用油路18を具備する。
【0030】
図1及び
図5に示す吸気側軸受部12は、後述する吸気側カムシャフト40を下方から回動可能に支持するものである。吸気側軸受部12は、正面視において上方が開放された半円状の凹部となるように、シリンダヘッド10の左部に形成される。
【0031】
図1、
図3及び
図5に示す排気側軸受部14は、後述する排気側カムシャフト42を下方から回動可能に支持するものである。排気側軸受部14は、正面視において上方が開放された半円状の凹部となるように、シリンダヘッド10の右部に形成される。
【0032】
図1及び
図3に示すオイルギャラリー16は、エンジン1の各部(例えば、後述するラッシュアジャスタ38等)へと潤滑油を案内するための油路である。オイルギャラリー16は、シリンダヘッド10の左右側壁近傍を前後方向に通るように形成される。
【0033】
図3に示すカムジャーナル用油路18は、シリンダヘッド10の右部に形成され、排気側軸受部14へと潤滑油を案内するための油路である。カムジャーナル用油路18の一端はオイルギャラリー16と連通され、カムジャーナル用油路18の他端はシリンダヘッド10の排気側軸受部14と連通される。
【0034】
なお、本実施形態においては図示を省略しているが、カムジャーナル用油路18はシリンダヘッド10の左部にも形成され、左側のオイルギャラリー16と吸気側軸受部12とを連通している。
【0035】
図1に示すシリンダヘッドカバー20は、シリンダヘッド10の上部を覆うものである。シリンダヘッドカバー20はシリンダヘッド10の上部に載置され、ボルト等によって適宜固定される。
【0036】
図1に示す動弁機構30は、エンジン1の吸気ポート及び排気ポート(不図示)を所定のタイミングで開閉させるためのものである。動弁機構30は、主として吸気バルブ32、排気バルブ34、ロッカアーム36・36、ラッシュアジャスタ38・38、吸気側カムシャフト40及び排気側カムシャフト42を具備する。
【0037】
吸気バルブ32は、エンジン1の吸気ポート(不図示)を開閉するものである。吸気バルブ32は、その長手方向を略上下方向に向けて配置される。吸気バルブ32の下端は前記吸気ポートまで延設される。
【0038】
なお、本実施形態においては図示を省略しているが、吸気バルブ32は1つの気筒に対して前後方向に並べて2つ設けられている。
【0039】
排気バルブ34は、エンジン1の排気ポート(不図示)を開閉するものである。排気バルブ34は、その長手方向を略上下方向に向けて配置される。排気バルブ34の下端は前記排気ポートまで延設される。
【0040】
なお、本実施形態においては図示を省略しているが、排気バルブ34は1つの気筒に対して前後方向に並べて2つ設けられている。
【0041】
ロッカアーム36・36は、吸気バルブ32及び排気バルブ34を開閉駆動させるためのものである。ロッカアーム36・36の一端は、それぞれ吸気バルブ32及び排気バルブ34の上端に上方から当接される。
【0042】
ラッシュアジャスタ38・38は、バルブクリアランスを調整するためのものである。ラッシュアジャスタ38・38は、それぞれロッカアーム36・36の他端に下方から当接される。
【0043】
図1、
図2及び
図4に示す吸気側カムシャフト40は、ロッカアーム36を所定のタイミングで揺動させることで、吸気バルブ32を開閉駆動させるためのものである。吸気側カムシャフト40は、その長手方向を前後方向に向けた状態で、シリンダヘッド10の吸気側軸受部12に載置される。吸気側カムシャフト40は、主としてカム40a・40aを具備する。
【0044】
カム40a・40aは、回転中心(吸気側カムシャフト40の中心)から外周までの距離が一定でない板状に形成された部分である。カム40a・40aは、吸気側カムシャフト40のうちシリンダヘッド10の吸気側軸受部12に載置された部分(カムジャーナル)よりも前方に2つ並べて形成される。当該カム40a・40aは、吸気バルブ32側のロッカアーム36に上方から当接される。
【0045】
図1、
図2及び
図4に示す排気側カムシャフト42は、ロッカアーム36を所定のタイミングで揺動させることで、排気バルブ34を開閉駆動させるためのものである。排気側カムシャフト42は、その長手方向を前後方向に向けた状態で、シリンダヘッド10の排気側軸受部14に載置される。排気側カムシャフト42は、主としてカム42a・42a及びシャフト内油路42bを具備する。
【0046】
カム42a・42aは、回転中心(排気側カムシャフト42の中心)から外周までの距離が一定でない板状に形成された部分である。カム42a・42aは、排気側カムシャフト42のうちシリンダヘッド10の排気側軸受部24に載置された部分(カムジャーナル)よりも前方に2つ並べて形成される。当該カム42a・42aは、排気バルブ34側のロッカアーム36に上方から当接される。
【0047】
図3に示すシャフト内油路42bは、排気側カムシャフト42のうちシリンダヘッド10の排気側軸受部24に載置された部分(カムジャーナル)に形成され、当該排気側カムシャフト42を貫通する油路である。シャフト内油路42bは、排気側カムシャフト42が所定の位置まで回転した際に、その一端(一方の開口部)がシリンダヘッド10のカムジャーナル用油路18と対向し、かつ、その他端(他方の開口部)が左方を向くように形成される。
【0048】
なお、本実施形態においては図示を省略しているが、吸気側カムシャフト40にも排気側カムシャフト42のシャフト内油路42bと同様の油路が形成される。
【0049】
図1から
図6までに示すカムキャップ50は、シリンダヘッド10の上部に固定され、当該シリンダヘッド10との間で吸気側カムシャフト40及び排気側カムシャフト42を保持するものである。カムキャップ50は、長手方向を左右方向に向けた略直方体状に形成される。
カムキャップ50は、主として吸気側軸受部52、吸気側凹部54、吸気側貫通孔56、吸気側連通油路58、排気側軸受部60、排気側凹部62、排気側貫通孔64及び排気側連通油路66を具備する。
【0050】
図4から
図6までに示す吸気側軸受部52は、吸気側カムシャフト40を上方から回動可能に支持するものである。吸気側軸受部52は、正面視において下方が開放された半円状の凹部となるように、カムキャップ50の左部に形成される。当該カムキャップ50の吸気側軸受部52は、シリンダヘッド10の吸気側軸受部12と対向する位置に形成され、当該吸気側軸受部52及び吸気側軸受部12の間に吸気側カムシャフト40が回動可能に支持(保持)される。
【0051】
吸気側凹部54は、カムキャップ50の上面の左部(左右方向において、吸気側軸受部52のすぐ右側)に形成される。吸気側凹部54は、その周囲よりも下方に所定深さだけ凹むように、かつ上方及び前方が開放されるように形成される。
【0052】
図5及び
図6に示す吸気側貫通孔56は、カムキャップ50をシリンダヘッド10に固定するために後述するボルト140が挿通されるボルト穴である。吸気側貫通孔56は、吸気側凹部54の底面の左部からカムキャップ50の下面までを貫通するように形成される。言い換えれば、吸気側貫通孔56の上端の周囲に吸気側凹部54が形成されることになる。吸気側貫通孔56の直径は、後述するボルト140の軸部の直径よりも大きくなるように、すなわち、吸気側貫通孔56にボルト140の軸部を挿通した際に、当該吸気側貫通孔56とボルト140との間に隙間ができるように形成される。
【0053】
図6に示す吸気側連通油路58は、吸気側軸受部52と吸気側貫通孔56とを連通する油路である。吸気側連通油路58は、カムキャップ50の下面の前後略中央部に形成される。吸気側連通油路58の一端は吸気側軸受部52と連通され、吸気側連通油路58の他端は吸気側貫通孔56と連通される。
【0054】
図3から
図6までに示す排気側軸受部60は、排気側カムシャフト42を上方から回動可能に支持するものである。排気側軸受部60は、正面視において下方が開放された半円状の凹部となるように、カムキャップ50の右部に形成される。当該カムキャップ50の排気側軸受部60は、シリンダヘッド10の排気側軸受部14と対向する位置に形成され、当該排気側軸受部60及び排気側軸受部14の間に排気側カムシャフト42が回動可能に支持(保持)される。
【0055】
排気側凹部62は、カムキャップ50の上面の右部(左右方向において、排気側軸受部60のすぐ左側)に形成される。排気側凹部62は、その周囲よりも下方に所定深さだけ凹むように、かつ上方及び前方が開放されるように形成される。
【0056】
図3、
図5及び
図6に示す排気側貫通孔64は、カムキャップ50をシリンダヘッド10に固定するために後述するボルト140が挿通されるボルト穴である。排気側貫通孔64は、排気側凹部62の底面の右部からカムキャップ50の下面までを貫通するように形成される。言い換えれば、排気側貫通孔64の上端の周囲に排気側凹部62が形成されることになる。排気側貫通孔64の直径は、後述するボルト140の軸部の直径よりも大きくなるように、すなわち、排気側貫通孔64にボルト140の軸部を挿通した際に、当該排気側貫通孔64とボルト140との間に隙間ができるように形成される。
【0057】
図3から
図6までに示す排気側連通油路66は、排気側軸受部60と排気側貫通孔64とを連通する油路である。排気側連通油路66は、カムキャップ50の下面の前後略中央部に形成される。排気側連通油路66の一端は排気側軸受部60と連通され、排気側連通油路66の他端は排気側貫通孔64と連通される。
【0058】
図1から
図5までに示す給油部材100は、潤滑油を吸気側カムシャフト40のカム40a及び排気側カムシャフト42のカム42aへと案内するためのものである。
【0059】
なお、吸気側カムシャフト40のカム40aへと潤滑油を案内する給油部材100(左側に配置される給油部材100)の構成は、排気側カムシャフト42のカム42aへと潤滑油を案内する給油部材100(右側に配置される給油部材100)の構成と左右対称であるため、以下では特に右側に配置される給油部材100についてのみ詳細に説明し、左側に配置される給油部材100については説明を省略する。
【0060】
給油部材100は、複数(本実施形態においては2枚)の板材を重ね合わせて形成されるものである。給油部材100は、主として第一板材110及び第二板材120を具備する。
【0061】
図5及び
図7に示す第一板材110は、給油部材100の上部を構成する板状の部材である。第一板材110は、その板面を上下方向に向けた状態で配置される。第一板材110は、平面視略L字状となるように形成される。より詳細には、第一板材110は、左右方向に向けられた短辺と、当該短辺の左端部から前方に延設された長辺と、を有する形状となるように形成される。第一板材110の短辺の右端部近傍には、当該第一板材110を上下方向に貫通する貫通孔112が形成される。
【0062】
図5及び
図8に示す第二板材120は、給油部材100の下部を構成する板状の部材である。第二板材120は、その板面を上下方向に向けた状態で配置される。第二板材120は、平面視において第一板材110と同じ略L字状となるように形成される。
第二板材120は、主として貫通孔122、第一油路124、第二油路126、第三油路128、第一吐出口130及び第二吐出口132を具備する。
【0063】
貫通孔122は、第二板材120を上下方向に貫通する孔である。貫通孔122は、第二板材120の短辺の右端部近傍であって、平面視において第一板材110の貫通孔112と重複する位置に形成される。貫通孔122の直径は、後述するボルト140の軸部の直径よりも大きくなるように、すなわち、貫通孔122にボルト140の軸部を挿通した際に、当該貫通孔122とボルト140との間に隙間ができるように形成される。
【0064】
第一油路124は、第二板材120の上面に形成され、潤滑油を案内するために掘られた溝である。第一油路124の一端は、貫通孔122に連通される。第一油路124は、貫通孔122から左方へ延設され、当該左方へ延設された左端部から前方へ延設され、当該前方へ延設された前端部から右方へ延設される。
【0065】
第二油路126は、第二板材120の上面に形成され、潤滑油を案内するために掘られた溝である。第二油路126の一端は、第一油路の他端(右前端)に連通される。第二油路126は、第一油路124の他端(右前端)から後方へ延設され、当該後方へ延設された後端部から右方へ延設される。
【0066】
第三油路128は、第二板材120の上面に形成され、潤滑油を案内するために掘られた溝である。第三油路128の一端は、第一油路の他端(右前端)に連通される。第三油路128は、第一油路124の他端(右前端)から前方へ延設され、当該前方へ延設された前端部から右方へ延設される。
【0067】
上述の如く、第二油路126及び第三油路128は、第一油路124の他端(右前端)から分岐するようにして形成される。また、第二油路126及び第三油路128は、平面視において、第一油路124からの分岐点(第一油路124の他端)を通る左右方向の軸について前後方向に対称となるように形成される。また、第二油路126及び第三油路128の断面形状は互いに同一形状となるように形成される。
【0068】
第一吐出口130は、第二板材120を上下方向に貫通し、潤滑油を当該第二板材120の下方へと吐出するための孔である。第一吐出口130は、第二油路126の他端(右後端)と第二板材120の下面とを連通するように形成される。
【0069】
第二吐出口132は、第二板材120を上下方向に貫通し、潤滑油を当該第二板材120の下方へと吐出するための孔である。第二吐出口132は、第三油路128の他端(右前端)と第二板材120の下面とを連通するように形成される。
第二吐出口132の形状(断面形状)は、第一吐出口130と同一形状となるように形成される。
【0070】
図4及び
図5に示すように、上述の如く構成された第一板材110を、第二板材120の上に重ね合わせて(第一板材110の下面と第二板材120の上面とを当接させて)ボルト等(不図示)により固定することで給油部材100が形成される。この際、第二板材120に形成された第一油路124、第二油路126及び第三油路128が第一板材110によって上方から閉塞され、貫通孔122から第一吐出口130及び第二吐出口132まで潤滑油を案内することが可能となる。すなわち、貫通孔122、第一油路124、第二油路126、第三油路128、第一吐出口130及び第二吐出口132によって、潤滑油が流通するための油路が構成される。
【0071】
また、
図3から
図5までに示すように、給油部材100の後端部(第一板材110及び第二板材120の短辺部)は、カムキャップ50の排気側凹部62内に収容される。給油部材100の貫通孔(第一板材110の貫通孔112及び第二板材120の貫通孔122)は、カムキャップ50の排気側貫通孔64と平面視において重複するように配置され、当該各貫通孔に上方からボルト140が挿通され、当該ボルト140はシリンダヘッド10に締結される。このようにして、ボルト140によって給油部材100がカムキャップ50に固定されるとともに、当該カムキャップ50がシリンダヘッド10に固定される。
【0072】
この際、給油部材100の厚さ(第一板材110と第二板材120の上下方向厚さの合計)は、カムキャップ50の排気側凹部62の深さと同じかそれ以下となるように形成される。このため、給油部材100をカムキャップ50に固定しても、当該給油部材100の上端は、高さ方向(上下方向)においてカムキャップ50の上端以下となり、当該給油部材100がカムキャップ50よりも上方に突出することがない。
【0073】
また、給油部材100がカムキャップ50に固定された場合、
図2に示すように、第一吐出口130及び第二吐出口132は、それぞれ排気側カムシャフト42のカム42a・42aと前後方向において同一位置となるように形成される。従って、当該第一吐出口130及び第二吐出口132は、それぞれ排気側カムシャフト42のカム42a・42aの概ね上方に位置することになる。
【0074】
以下では、
図8から
図10までを用いて、上述の如く構成されたエンジン1の潤滑油供給機構による、排気側カムシャフト42のカム42a・42aへの潤滑油の供給の態様について説明する。
なお、エンジン1の潤滑油供給機構による、吸気側カムシャフト40のカム40a・40aへの潤滑油の供給の態様も略同様であるため、以下では説明を省略する。
【0075】
図9(a)に示すように、エンジン1が駆動することによって排気側カムシャフト42が回転し、シャフト内油路42bの一端がシリンダヘッド10のカムジャーナル用油路18と対向していない場合、オイルギャラリー16を流通する潤滑油は、カムジャーナル用油路18を介して排気側軸受部14へと供給される。当該潤滑油はシャフト内油路42b内には供給されず、排気側カムシャフト42と排気側軸受部14(及び排気側軸受部60)との摺動面を潤滑する。
【0076】
図9(b)に示すように、排気側カムシャフト42が360度回転するごとに1度だけシャフト内油路42bの一端がシリンダヘッド10のカムジャーナル用油路18と対向すると共に、シャフト内油路42bの他端が排気側連通油路66と対向する。この場合、オイルギャラリー16を流通する潤滑油は、カムジャーナル用油路18を介してシャフト内油路42bへと供給される。さらに、当該潤滑油は当該シャフト内油路42b、排気側連通油路66を介して排気側貫通孔64へと供給される。当該排気側貫通孔64にはボルト140が挿通されているが、当該排気側貫通孔64とボルト140との間には隙間があるため、潤滑油は当該排気側貫通孔64内を流通することができる。当該潤滑油は、排気側貫通孔64を上方へと流通し、給油部材100(より詳細には、第二板材120の貫通孔122)へと供給される。
【0077】
第二板材120の貫通孔122へと供給された潤滑油は、第一油路124内を流通し、当該第一油路124の他端(右前端)から第二油路126及び第三油路128(
図8等参照)へと分岐して供給される。第二油路126へと供給された潤滑油は、第一吐出口130を介して下方へと吐出される。また、第三油路128へと供給された潤滑油は、第二吐出口132を介して下方へと吐出される。
図10に破線の矢印で示すように、給油部材100の第一吐出口130及び第二吐出口132から吐出された潤滑油は、当該第一吐出口130及び第二吐出口132の下方に配置されたカム42a・42aに供給され、当該カム42a・42aを潤滑することができる。
【0078】
このようにして、排気側カムシャフト42が所定の角度まで回転した際に、潤滑油がカム42a・42aへと供給される。すなわち、潤滑油を間欠的に(排気側カムシャフト42が1回転する間に一度だけ)カム42a・42aへと供給することができる。このように、潤滑油は常時カム42a・42aへと供給されるわけではないため、当該カム42a・42aへ潤滑油が過剰に供給されるのを防止することができる。
【0079】
また、第二油路126及び第三油路128は、平面視において前後方向に対称となり、かつ断面形状が互いに同一形状となるように形成されている。すなわち、第二油路126及び第三油路128は、互いに同じ長さ、断面形状、屈曲回数及び屈曲角度を有するように形成されている。これによって、第一油路124から供給される潤滑油が第二油路126及び第三油路128を流通する際の圧力損失は略同一となるため、当該第二油路126及び第三油路128を流通する潤滑油の流量は略同一となる。従って、カム42a・42aに略同量の潤滑油を供給することができる。
【0080】
以上の如く、本実施形態に係るエンジン1の潤滑油供給機構は、シリンダヘッド10、カムシャフト(吸気側カムシャフト40及び排気側カムシャフト42)及びカムキャップ50を介して動弁機構30のカム(カム40a及びカム42a)へと潤滑油を供給するエンジン1の潤滑油供給機構であって、その上端が、高さ方向においてカムキャップ50の上端以下となるように当該カムキャップ50に設けられると共に、カムキャップ50を介して供給される潤滑油をカム40a及びカム42aへと案内する油路(第一油路124、第二油路126及び第三油路128)が形成された給油部材100を具備するものである。
このように構成することにより、カムキャップ50の上方のスペースを必要とすることなく、カム40a及びカム42aへと潤滑油を供給することができる。これによって、部材同士の干渉を防止することができ、また当該干渉を避けるための設計変更等の必要が無くなる。
【0081】
また、カムキャップ50には、当該カムキャップ50をシリンダヘッド10に固定するためのボルト穴(吸気側貫通孔56及び排気側貫通孔64)の周囲に凹部(吸気側凹部54及び排気側凹部62)が形成され、給油部材100は、当該給油部材100の一部が前記凹部内に収容され、ボルト140によってカムキャップ50と共にシリンダヘッド10に固定されるものである。
このように構成することにより、既存のボルト140(カムキャップ50をシリンダヘッド10に固定するためのボルト)を用いて給油部材100を固定することができるため、別途ボルト等の締結部材を追加する必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0082】
また、給油部材100は、複数(2枚)の板材(第一板材110及び第二板材120)を重ね合わせて形成され、給油部材100の油路の一部(第一油路124、第二油路126及び第三油路128)は、当該給油部材100の2枚の板材が互いに当接する面のうちの1つ(第二板材120の上面)に溝を掘ることで形成されるものである。
このように構成することによって、給油部材100の油路を容易に形成することができる。
【0083】
また、給油部材100の油路は、2つのカム42a・42aへと潤滑油を案内するように、その中途部から2本(第二油路126及び第三油路128)に分岐して形成され、かつ2つのカム42a・42aへそれぞれ同量の潤滑油が供給されるように形成されるものである。
このように構成することにより、2つのカム42a・42aを等しく潤滑することができる。
【0084】
なお、本実施形態に係るエンジン1は、直列4気筒16バルブのDOHCガソリンエンジンであるものとして説明したが、本発明を適用することが可能なエンジンはこれに限るものではない。
また、本実施形態においては、給油部材100の油路(第一油路124、第二油路126及び第三油路128)を第二板材120に形成するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、第一板材110に形成する構成や、第一板材110及び第二板材120の両方に形成する構成(板材が互いに当接する面のうち少なくとも1つに形成する構成)とすることも可能である。
また、給油部材100の形状は、本実施形態の如く平面視略L字状に限るものではなく、カム(カム40a及びカム42a)に潤滑油を供給できる形状であれば良い。
また、本実施形態において、給油部材100は2枚の板材(第一板材110及び第二板材120)によって構成されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、給油部材100がカムキャップ50よりも上方に突出しなければ、例えば当該給油部材100をパイプ等により構成することも可能である。
また、本実施形態において、給油部材100を形成する板材は2枚(第一板材110及び第二板材120)であるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、給油部材100を、3枚以上の板材を重ね合わせて形成することも可能である。この場合、当該複数(3枚以上)の板材が互いに当接する面のいずれかに溝を掘ることで、潤滑油を案内する油路が形成される。
また、本実施形態において、給油部材100は複数(2枚)の板材(第一板材110及び第二板材120)を重ね合わせて形成されるものとしたが、当該複数の板材の間にガスケット等のシール部材を介設する構成とすることも可能である。
また、本実施形態においては、給油部材100の油路は、その中途部(第一油路124)から2つ(第二油路126及び第三油路128)に分岐するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、給油部材100の油路は、その上流端部から2本に分岐して形成する構成、すなわち、1本の油路の中途部から分岐するのではなく最初から2本の油路で構成することも可能である。
【0085】
以下では、本発明に係るエンジンの潤滑油供給機構のその他の実施形態について説明する。
【0086】
第二の実施形態として、第二板材120に形成される第二油路126及び第三油路128は、
図11に示すように、それぞれ任意に異なる長さ、断面形状、屈曲回数又は屈曲角度等を有するように形成することも可能である。
【0087】
具体的には、
図11に示す第二板材120においては、第二油路126の断面形状は第三油路128の断面形状よりも大きく(幅が広く、かつ深さが深く)形成されている。また、第二油路126は第三油路128よりもゆるやかに屈曲するように形成され、これによって、第二油路126の長さは第三油路128よりも短くなっている。
【0088】
このように、第二油路126及び第三油路128を互いに非対称となるような形状に形成することで、第一油路124から供給される潤滑油が第二油路126及び第三油路128を流通する際の圧力損失に差をつけ、当該第二油路126及び第三油路128を流通する潤滑油の流量を意図的に異ならせることができる。
【0089】
第三の実施形態として、
図12に示すように、給油部材100を形成する複数(2枚)の板材(第一板材110及び第二板材120)のうち最下層(本実施形態においては、2枚の板材のうち下側(カムキャップ50側))に位置する第二板材120を、カムキャップ50と一体となるように形成することも可能である。具体的には、第二板材120・120がカムキャップ50の吸気側凹部54及び排気側凹部62からそれぞれ前方へと延出するように当該カムキャップ50と一体化し、当該カムキャップ50及び第二板材120・120を1つの部材として扱うことができる。このように構成することにより、当該カムキャップ50及び第二板材120・120の部品管理や、シリンダヘッド10への取り付けが容易になる。
【0090】
第四の実施形態として、
図13に示すように、4つの気筒に対応するようにそれぞれ設けられる4つのカムキャップ50・50・・・を、一体となるように構成することも可能である。具体的には、カムキャップ50・50・・・の左右両端部を互いに連結することで、4つのカムキャップ50・50・・・を一体化し、1つの部材として扱うことができる。このように構成することにより、当該カムキャップ50・50・・・の部品管理や、シリンダヘッド10への取り付けが容易になる。
【0091】
第五の実施形態として、
図14に示すように、シャフト内油路42bを排気側カムシャフト42の回転軸の中心を通る直線状に形成することも可能である。この場合、カムジャーナル用油路18の他端は排気側軸受部14の右端部に連通される。このように構成することにより、排気側カムシャフト42が180度回転するごとにシャフト内油路42bの端部がカムジャーナル用油路18と対向する。これによって、排気側カムシャフト42が180度回転するごとに(排気側カムシャフト42が1回転する間に二度)潤滑油をカム42a・42aへと供給することができる。
【0092】
第五の実施形態(
図14)においては、排気側カムシャフト42が180度回転するごとに、シャフト内油路42b内の潤滑油が流通する方向が逆方向に切り換わる。排気側カムシャフト42が低速で回転している間は、排気側カムシャフト42が180度回転するごとに流通方向を切り換えながら、シャフト内油路42b内の潤滑油は排気側連通油路66へと供給される。一方、排気側カムシャフト42の回転が高速になると、シャフト内油路42b内の潤滑油の流通方向は円滑に切り換わることができず、当該シャフト内油路42b内で停滞してしまう。すなわち、排気側カムシャフト42が高速で回転する場合には、カム42a・42aへの潤滑油の供給が断たれる。
【0093】
しかしながら、排気側カムシャフト42の回転が高速になった場合には、カム42a・42aには他の部材の運動によって跳ね上げられた潤滑油が付着するため、当該カム42a・42aを潤滑する必要がない。すなわち、第五の実施形態の如く排気側カムシャフト42が高速で回転する場合にはカム42a・42aへの潤滑油の供給を断つことで、過剰な(無駄な)潤滑油の供給を防止することができる。