【実施例】
【0078】
特に記載がない限り、本明細書全体にわたって使用される略語は、以下の意味を有する:
Å = オングストローム
A% = 全面積パーセント
aq.= 水性
cm = センチメートル
d = 二重項
DSC = 示差走査熱量測定
EDTA = エチレンジアミンテトラ酢酸
eq.= 当量
EtOH = エタノール
g = グラム
HPLC = 高性能液体クロマトグラフィー
hr = 時間
Hz = ヘルツ
IR = 赤外線
J = 結合定数
kg = キログラム
kV = キロボルト
L = リットル
LOD = 検出限界
M = モル
m = 多重項
mA = ミリアンペア
Me = メチル
MeO = メトキシ
MeOH = メタノール
mg = ミリグラム
min.= 分
mL = ミリリットル
mm = ミリメートル
MTBE = メチルt−ブチルエーテル
N = 規定の
nM = ナノモル
NMR = 核磁気共鳴
s = 一重項
TDS = 全溶解固形分
TGA = 熱重量分析
THF = テトラヒドロフラン
μM = マイクロモル
(実施例1 式IIの結晶多形塩の調製)
グラム規模の調製
冷却器を取り付けた1500mLの三つ口丸底フラスコに、式Iの遊離塩基化合物(25g、1当量)を充填し、9:1のEtOH/水(500mL)を攪拌しながら添加した。得られたスラリーを70℃に加熱した。マレイン酸(12.77g、2当量)を溶液(100mL、9:1のEtOH/水)として滴下し、50mLを添加した後に、溶液が顕著により清澄になった。マレイン酸溶液の添加が終了したら、温度を80℃に5分間維持した。容器を45℃に緩徐に冷却した後、MTBE 400mLを添加した。溶液を12時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過し、真空乾燥させた。式IIの塩を収率45%(14.2g)で回収した。
【0079】
キログラム規模の調製
式Iの化合物(24.6kg)を760L GLMS反応器(反応器A)に充填した。マレイン酸(12.7kg、2.0当量)、エタノール(445kg、18.1部)及び高純度の水(140kg、5.7部)を添加した。反応混合物を22℃(19〜25℃)に調節し、その温度にて約1時間攪拌した後、ポリッシングフィルターを介して、状態調節した780L ハステロイ反応器(反応器B)に移した。追加のエタノール(約45kg)を使用して、反応器Aのポンプ及びラインを、ポリッシングフィルターを介して反応器Bに向かって濯いだ。濾液を、45℃の温グリコール浴(反応器ジャケットの加熱用)の最大温度にて、約140L(5.7容量部)が残るまで真空濃縮した。反応器Bの含有物を、工程間のNMRのために採取し、この工程間のNMRは、エタノールと式IIのモル比が26であることを示した。高純度の水(49kg、2.0部)を反応器Bに充填し、約140L(5.7容量部)のポット容量が得られるまで真空濃縮を再び行った。工程間のNMRは、エタノールと式IIの塩のモル比が14であることを示した。高純度の水(49kg、2.0部)を再び充填し、約140Lのポット容量が得られるまで真空濃縮を再び行った。工程間のNMRは、エタノールと式IIの塩のモル比が5であることを示した。反応器Bの含有物の温後を22℃(19〜25℃)に調節し、スラリーの形成を目視確認した。反応混合物を22℃(19〜25℃)で約2時間攪拌した後、F−53濾布を取り付けた30インチの遠心機で濾過した。高純度の水を2回使用して(それぞれ約30kg)、反応器Bのポンプ及びラインを、ポリッシングフィルターを介して30インチの遠心機に向かって濯いだ。濾過ケーキを工程間のHPLCのために採取し、この工程間のHPLCは、生成物の純度が99.1A%であることを示し、最大不純度は0.26A%であり、従って再結晶は必要なかった。濾過ケーキ(33.1kg)を、40℃の温グリコール浴(反応器ジャケットの加熱用)の最大温度にて、真空乾燥させた。約30.5時間後、工程間のLOD分析は、溶媒含有量0%を示した。乾燥生成物(26.4kg)を排出し、2〜8℃にて保存した。最終生成物の収率は、予想より少し高い85%であった(予想50〜80%)。
【0080】
実施例4に記載の技法を使用して、式IIの塩を特性決定した。式IIの塩のX線回折パターンが
図1Aに示され、以下の近似ピーク位置によって特徴付けられる:4.9、9.7、11.8、13.8、14.1、15.2、17.6、18.5、19.9、20.8、21.6、22.7、24.1、25.0、26.3、26.8度2θ。示差走査熱量測定法(DSC、
図2Aの図形を参照)を使用して、197〜201℃の融点を測定した。更に、熱重量分析(TGA、
図2Bの図形を参照)によって、式IIの塩の100℃における損失重量0.62%を測定した。式IIの塩の水収着は可逆性であり、0.1〜3%の水吸収量を示した(
図3)。式IIの塩の純度を、HPLCによって測定される加水分解アミジン分の存在によって測定し、純度は99%超であった。
【0081】
1H NMR (DMSO−d
6): δ 3.0 (s, 3H), 3.2 (s, 3H), 3.82 (s, 3H), 7.2 (d, 1H, J = 9.0
Hz), 7.42 (s, 1H), 7.68 (d, 1H, J = 8.0
Hz), 7.95 − 8.15 (m, 2H), 8.12 (m), 8.18(m, 1H), 8.42 (s, 1H), 9.0 (s, 1H), 11.0 (s, 1H), 11.2 (s, 1H); IR (KBr, cm
−1):
3300, 1685, 1600, 1515, 1380, 1270, 1200, 1100, 1050, 880, 800, 710。
【0082】
(実施例2 式Iの化合物の調製)
【0083】
【化10】
【0084】
グラム規模の調製
THF(4.67kg、10.3部)中の式Fの化合物(455g、1.0当量)のスラリーを調製し、10℃未満に調節した。リチウムジメチルアミドを以下のように調製した:ヘキシルリチウム(2.3N/ヘキサン、2.45L、5.5当量)をジメチルアミン溶液(2N/THF、2.8L、5.5当量)に添加し、10℃未満に維持した。式Fの化合物を含有するスラリーに、リチウムジメチルアミド溶液を充填し、10℃未満のポット温度を維持した。反応の進行を工程間のHPLCによって監視し、式Fの化合物の量が1.0A%未満であることを確認した。脱イオン水(6.6kg、14.51部)中のNaHCO
3(490g、1.1部、5.7当量)及びNa
2CO
3(490g、1.1部、4.5当量)の緩衝液を調製し、この水溶液に前記の反応混合物を移し、5℃未満に維持した。生成物が沈殿し、得られたスラリーを12時間にわたり20℃に調節した。この固形物を濾過し、得られた湿ったケーキを脱イオン水3.5kg(7.7部)で洗浄した。固形物を粗いフリットガラスベンチフィルターで濾過し、冷たい(0〜5℃)無水エタノール(628g、1.4部)で前方へ濯いだ。生成物を30〜35℃にて乾燥させた。乾燥生成物を458g(収率73%)で得た。
【0085】
キログラム規模の調製
THF(251kg、8.0部)中の式Fの化合物(31.5kg、1.0当量)のスラリーを、780L ハステロイ反応器(反応器A)において調製し、0℃(−3〜3℃)に調節した。THF(161.0kg、5.0当量)中の2M ジメチルアミン、及びTHF(63kg、2部)を、1900L GLMS反応器(反応器B)に充填し、最大攪拌下に0℃(−3〜3℃)に調節した。ヘキシルリチウム(2.3M、97.2kg、4.5当量)を、最大温度10℃に維持しながら反応器Bに緩徐に充填した。THF(3.2kg)を使用して、ポンプ及びラインを反応器Bに向かって濯いだ。反応器Bの含有物を、0℃(−3〜3℃)に調節した後、反応器Aに移し、その間、反応器Aの温度を10℃以下に維持した。THF(31.4kg、1.0部)を使用して、反応器Bのポンプ及びラインを前方へ濯いだ。反応器Aの含有物を0℃(−3〜3℃)に調節し、HPLCによって反応の終了が確認されるまで(1〜2時間)、この温度にて攪拌した。約1時間の攪拌後に、工程間のHPLC分析が、0 A%の出発物質残留を示した(工程間の基準:最大1A%)。反応器Aの含有物を、−5℃(−8〜−3℃)に調節した。水を使用して反応器の工程間の洗浄を行った。前もって調製した2つの水溶液[水(236kg、7.5部)中のNaHCO
3(35.0kg、1.1部)、及び水(236kg、7.5部)中のNa
2CO
3(35.0kg、1.1部)]を反応器Bに充填し、−3℃(0〜6℃)に調節した。反応器Aの含有物を、絶縁ラインを介して反応器Bに移し、反応器Bの温度を−8℃〜最大5℃に維持した。反応器Aのポンプ及びラインを、冷たい[−5℃(−8〜−3℃)]THF(31.4kg、1.0部)で前方へ濯いだ。反応器Bの含有物を、22℃(19〜25℃)に調節し、約3時間攪拌した。スラリー形成を目視確認し、F−16濾布を取り付けた30インチの遠心機で、反応器Bの含有物を濾過した。飲料水(63kg、2部)を使用して、F−16濾布を取り付けた30インチの遠心機で、反応器Bのポンプ及びラインを前方へ濯いだ。湿った濾過ケーキ(66.5kg)を反応器Bに戻し、飲料水(1005kg、32部)中で22℃(19〜25℃)にて約1時間にわたりスラリー洗浄に付した。生成物を30インチの遠心機で濾過し(工程間の洗浄及びF−53濾布の取り付け後)、反応器Bのライン及びポンプを、飲料水(63kg、2部)で前方へ濯いだ。濯ぎ水をTDSによる試験のために採取し、それは0.46%であることがわかった。反応器Bのポンプ、ライン及び湿った濾過ケーキを、冷たい[0℃(−3〜3℃)]エタノール(44kg、1.39部)で更に濯いだ。湿った濾過ケーキを、35℃の水浴(反応器ジャケットの加熱用)の最大温度にて真空乾燥させた。工程間のLODは、約24時間の乾燥後に0%であり、生成物(24.8kg)を収率76.7%で排出した。HPLCは、98%純度を示し、脱塩素不純物は1.14%であった。
【0086】
(実施例3 式Fの化合物の調製)
手順1.2−ニトロ−N−(5−クロロ−ピリジン−2−イル)−5−メトキシ−ベンズアミド(C)の合成
【0087】
【化11】
【0088】
5−メトキシ−2−ニトロ安息香酸(A)(25.0kg、1.0当量)、2−アミノ−5−クロロピリジン(B)(16.3kg、1.0当量)、及びアセトニトリル(87.5kg、3.5部)を、380L GLMS反応器に充填した。反応混合物を22℃(19〜25℃)に調節し、無水ピリジン(30.0kg、3.0当量)を添加した。ポンプ及びラインをアセトニトリル(22.5kg、0.9部)で前方へ濯ぎ、反応器の含有物を19〜22℃の温度に調節した。25℃(22〜28℃)の温度を維持しながら、オキシ塩化燐(23.3kg、1.20当量)を、計量型ポンプを介して反応器の含有物に添加した。温度を25℃(22〜28℃)に維持しながら、計量型ポンプ及びラインを、アセトニトリル(12.5kg、0.5部)で前方へ濯いだ。約1/3のPOCl
3の添加後に、反応混合物は一般的に、スラリーから透明溶液になった。添加の終了時に、それは濁った。添加の終了後に、反応混合物を25℃(22〜28℃)で約1時間攪拌し、その際に、HPLC分析は反応の終了を確認した。溶液を15℃(12〜18℃)に冷却し、反応温度を12〜30℃に維持しながら、飲料水(156.3kg、6.25部)を緩徐に充填した。次に、反応混合物を22℃(19〜25℃)に調節し、発熱が止むまで約5時間攪拌した。スラリーの形成を目視確認し、反応器の含有物を、F−19濾布を取り付けた圧力ヌッツェで濾過した。反応器、ポンプ及びラインを、飲料水で2回(それぞれ62.5kg、2.5部)、圧力ヌッツェ上で前方へ洗浄した。濾液はpH値7を有していた。50℃の水浴(反応器ジャケットの加熱用)の最大温度にて、生成物(41.8kg)を真空乾燥させた。約12時間後に、工程間のLOD分析は、溶媒含有量0.72%を示した。乾燥生成物(C)(34.4kg)を、HPLCにより88.2%収率及び99.1%純度で排出した。
【0089】
手順2.2−アミノ−N−(5−クロロ−ピリジン−2−イル)−5−メトキシ−ベンズアミド(D)の合成
【0090】
【化12】
【0091】
780L ハステロイ反応器に、化合物C(33kg、1.0当量)、5%白金炭素(硫化、0.33kg、0.010部)及びジクロロメタン(578kg、17.5部)を充填した。攪拌を開始し、反応器含有物を22℃(19〜25℃)に調節した。反応器を約30psiの水素で加圧し、反応混合物を28℃(25〜31℃)に徐々に加熱した。HPLCにより反応が終了するまで、反応器含有物の水素化を約30psiで28℃(25〜31℃;最大31℃)において行った。16.5時間後、出発物質の消失(0.472 A%)を確認した後に、反応が終了したと考えられた。反応器の含有物を、8インチのスパークラーフィルター中に準備した状態調節したセライトパッド(20〜55kgのジクロロメタンで状態調節した0.2〜0.5kgのセライト)を通って循環させて、白金触媒を除去した。反応器及びセライト床を、ジクロロメタンで2回(それぞれ83kg、2.5部)前方へ濯いだ。濾液を、570L GLMS反応器に移し、大気圧下に約132L(4容量部)に濃縮した。エタノール(69kg、21.部)を充填し、濃縮を大気圧下に継続して、約99L(3容量部)にした。工程間のNMRは、ジクロロメタン含有量が39%であることを示した。エタノール(69kg、2.1部)を再び充填し、再び濃縮を継続して、約99L(3容量部)にした。工程間のNMRは、ジクロロメタン含有量が5%であることを示した。次に、反応混合物を3℃(0〜6℃)に調節し、約1時間攪拌し、得られたスラリーを、F−19濾布を取り付けたジャケット付き圧力ヌッツェで濾過した。反応器、ポンプ及びラインを、冷たい[3℃(0〜6℃)]エタノール(26kg、0.8部)で前方へ濯いだ。湿った濾過ケーキ(36.6kg)を、50℃の水浴(反応器ジャケットの加熱用)の最大温度にて、40〜50℃において真空乾燥させた。12.5時間後のLOD分析は、溶媒含有量0.1%を示した。乾燥生成物(D)(26.4kg)を収率89.5%で排出した。HPLCは、98.4 A%純度、脱塩素不純物0.083%を示した。
【0092】
手順3.N−(5−クロロ−ピリジン−2−イル)−2−(4−シアノ−ベンゾイル−アミノ)−5−メトキシ−ベンズアミドヒドロクロリド(F)の合成
【0093】
【化13】
【0094】
780L ハステロイ反応器に、4−シアノベンゾイルクロリド(E)(17.2kg、1.1当量)及びTHF(92kg、3.5部)を充填した。反応器の含有物を22℃(19〜25℃)で、全固形物が溶解するまで攪拌した。得られた溶液を、下部受け器に移し、反応器をTHF(26kg、1部)で前方へ濯いだ。化合物D(26.4kg、1当量)、THF(396kg、15部)及びピリジン(2.90kg、0.4当量)を、清浄反応器に充填した。ポンプ及びラインをTHF(34kg、1.3部)で前方へ濯いだ。計量型ポンプを介して、4−シアノベンゾイルクロリド/THF溶液を反応器に充填し、温度を30℃以下に維持し、THF(約10kg)で前方へ濯いだ。得られた黄色スラリーを、22℃(19〜25℃)で約2時間攪拌した。2時間後に行った工程間のHPLCは、式Dの化合物の含有量0%を示し、反応の終了を示した。F−19濾布を取り付けた圧力ヌッツェでスラリーを濾過した。反応器、ポンプ、ライン及び湿ったケーキを、エタノールで3回(それぞれ約15kg)濯いだ。湿った濾過ケーキ(65.4kg)を排出し、反応器に戻して、エタノール(317kg、12部)中において22℃(19〜25℃)で約1時間にわたりスラリー洗浄した。スラリーを圧力ヌッツェで濾過し、反応器、ポンプ、ライン及び湿った濾過ケーキを、エタノールで2回(それぞれ約15kg)及びTHFで2回(それぞれ約15kg)濯いだ。湿った濾過ケーキを、40℃の温グリコール浴(反応器ジャケットの加熱用)の最大温度にて真空乾燥させた。14.5時間乾燥させた後に、LODは0.75%であった。乾燥物質を粉砕して(スクリーン0.125インチ)、生成物31.8kgを得て、これを更に10.5時間真空乾燥させた。乾燥後のLODは1.8%であり、生成物(31.5kg)を収率74.8%(予想60〜90%)で排出した。HPLCは100%純度を示した。
【0095】
(実施例4 塩の選別)
一次選別
3mLの10%(水性)THF混合物中の遊離塩基20mgに、エタノール1mL中の酸1.1当量を添加した。混合物を2時間振とうした後、t−ブチルメチルエーテル2mLを添加して、沈殿を誘発し、更に2時間振とうした。次に、試料を濾過し、乾燥させた後、分析して、これらの純度、結晶度及び安定度を評価した。以下の表1に結果を示し、試験した酸を列記する。
【0096】
【表1】
【0097】
+++:結晶形態、相転移なし、高純度;++:非晶質、幾らかの相転移、中〜高純度;+:殆ど又は全く結晶性なし、より低い結晶形態への相転移、低純度;−:沈殿なし。
【0098】
二次選別
幾つかの塩形態の二次評価を、以下に記載の方法によって行い、結果を、表5及び
図1A、1B、2A、2B及び3に要約する。
【0099】
示差走査熱量測定(DSC)
50位自動試料採取器を取り付けたTA計測器Q1000によって、DSCデータを収集した。エネルギー及び温度校正標準はインジウムであった。試料を、10℃/分の速度で25〜350℃に加熱した。30mL/分での窒素パージを、試料上に維持した。特に記載がない限り、1〜3mgの試料を使用し、全ての試料を密閉アルミニウムパンにおいてクリンピングした。
【0100】
熱重量分析(TGA)
ニッケル/アルメルで校正され、10℃/分の走査速度で操作されるTA計測器Q500 TGAによって、TGAデータを収集した。60mL/分での窒素パージを、試料上に維持した。一般的に10〜20mgの試料を、前もって風袋計量した白金るつぼに装填した。
【0101】
XRPD(X線粉末回折)
CuKα放射線(40kV、40mA)、θ−θゴニオメータ、自動発散及び受取りスリット、グラファイト二次モノクロメータ及びシンチレーションカウンターを使用してSiemens D5000回折計によって、X線粉末回折パターンを収集した。計測器は、認定コランダム標準(NIST 1976)を使用して性能検査する。
【0102】
周囲条件下で試験される試料を、粉末を使用して平板試料として調製した。研磨ゼロバックグラウンド(510)シリコンウエハに切り込んだ空洞に、約35mgの試料を緩く詰める。分析の間に、試料をそれ自身の面内で回転させた。データ収集の詳細は、以下の表2における方法に関して示されている。
【0103】
【表2】
【0104】
EVA(評価ソフトウェア)を使用してKα
2成分を除去した後に、Cu Kα
1(λ=1.5406Å)を使用して回折データを記録し、WIN−INDEXを使用してITO法によって粉末図形を表示し、WIN−METRICを使用して原格子定数を精密化した。
【0105】
単結晶XRD(X線回折)
Oxford Cryosystems Cryostream冷却装置を備えたBruker AXS 1K SMART CCD回折計によって、データを収集した。SHELXS又はSHELXDプログラムを使用して構造を解析し、Bruker AXS SHELXTLスイートの一部としてのSHELXLプログラムで精密化した。特に記載がない限り、炭素に結合する水素原子は、幾何学的に配置され、ライディング等方性置換パラメータで精密化することが可能にされた。ヘテロ原子に結合する水素原子は、差分フーリエ合成において位置決定され、等方性置換パラメータで自由に精密化することが可能にされた。
【0106】
重量測定水蒸気収着(GVS)試験
全ての試料を、Hiden IGASorp水分収着分析器作動CFRSorpソフトウェアで処理した。試料の大きさは一般的に10mgであった。水分吸着脱着等温線を以下に概説するように行った(2走査が1全サイクルを与える)。全ての試料を、典型的な室湿度及び温度(40%RH、25℃)で充填/取出した。全ての試料を、GVS後のXRPD分析によって分析した。標準等温線を、25℃、0〜90%RH範囲おいて10%RH間隔で得た。式IIの塩は、優れた水分安定度を示した。
【0107】
溶解度
これは、溶媒(水)0.25mLに充分な塩を懸濁させて、塩の親遊離形態の最大最終濃度(10mg/mL以上)を得ることによって測定した。懸濁液を25℃にて24時間平衡化した後、pH検査し、ガラス繊維C96ウェルプレートで濾過した。次に、濾液を101倍に希釈した。約0.1mg/mLでDMSOに溶解した標準を基準にして、HPLCによって定量化した。種々の容量の、標準、希釈及び非希釈試料を注入した。溶解度を、標準導入におけるピーク最大と同じ保持時間において見出されたピーク面積の積分によって算出した。濾板に充分な固形物が存在する場合、XRPDを、相転移、水化物形成、非晶質化、結晶化等について一般的に検査した。
【0108】
酢酸塩は10mg/mL以上の溶解度を生じ、マレイン酸塩は約2.05mg/mL〜約2.27mg/mLの溶解度を生じた。
【0109】
pKa測定
これは、D−PAS付属装置を有するSirius GlpKa計測器で行った。測定は、水中でUVによって、及びメタノールと水との混合物中で25℃において電位差測定によって、行った。滴定媒質は、0.15M KClで調節されたイオン濃度であった。メタノールと水との混合物において見出された数値を、Yasuda−Shedlovsky外挿法によって0%補助溶媒に補正した。Refinement Proソフトウェア、Ver.1.0を使用して、データを精密化した。ACD pKa予測ソフトウェア、Ver.8.08を使用して、pKa値の予測を行った。式IIの塩のデータを以下の表3に示す。
【0110】
【表3】
【0111】
LogP測定
これは、オクタノール対ISA水の3つの比率を使用してSirius GlpKa計測器での電位差滴定によって行って、Log P、Log P
ion、及びLog D値を得た。Refinement Proソフトウェア、Ver.1.0を使用して、データを精密化した。LogPの予測は、ACD Ver.8.08及びSyracuse KNOWWIN Ver.1.67ソフトウェアを使用して行った。マレイン酸塩のデータを以下の表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
カールフィッシャー水測定
Hydranal Coulomat AG試薬及びアルゴンパージを使用して、Mettler Toledo DL39電量計によって、水分を測定した。水の浸入を防ぐためにスバシールに連接された白金TGAパン上に秤量された固形物として、試料を容器に導入した。1滴定につき約10mgの試料を使用し、各分析を二重に行った。
【0114】
安定度
試料を57℃の温度及び7%室湿度に暴露した後に、安定度の測度として、加水分解アミジン分を、HPLC(Agilent HP1100)(保持時間34分)によって測定した。試料溶媒はメタノールであり、0.1%トリフルオロ酢酸の移動相調節剤を使用した。データを3、6及び10日後に収集し、但し、プロピオン酸塩に関するデータは0、3及び8日目に収集した。結果を表5に、酸加水分解生成物の割合として示し、主ピークのパーセンテージとして表す。全ての他の不純物ピークは、計算において無視した。
【0115】
【表5】
【0116】
式IIの塩に関する結晶データ
全ての実験を、Oxford Cryosystems Cryostream 冷却装置を備えたBruker−Nonius Kappa CCD回折計で行う。構造を一般的に、SIR−97又はSHELXS−97で解析し、SHELXL−97で精密化する。特に記載がない限り、水素原子は、幾何学的に配置され、等方性置換パラメータで精密化することが可能にされる。以下の表(表6及び表7)には、式IIの塩についての結晶データ及び構造精密化を示す。
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】
以上において前記の発明を、理解を明確にするために、図示及び実施例により幾分詳細に説明してきたが、当業者は、特許請求の範囲内で特定の変更及び改変が行われる場合があることを認識するであろう。更に、本明細書に示した各文献は、それぞれの文献が個別に参考として援用されるのと同様に、全体が参考として援用される。
【0120】
好ましい実施形態において、本発明は、例えば、以下を提供する。
(項1)
式I:
【0121】
【化1】
【0122】
の化合物並びに塩酸、乳酸、マレイン酸、フェノキシ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、アジピン酸、アスコルビン酸、樟脳酸、グルコン酸、燐酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、グリコール酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ゲンチジン酸及びベンゼンスルホン酸からなる群から選択される酸を含む塩。
(項2)
前記酸が、塩酸、乳酸、マレイン酸、フェノキシ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、アジピン酸、アスコルビン酸、樟脳酸、グルコン酸、燐酸、酒石酸、クエン酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択される、上記項1に記載の塩。
(項3)
前記酸が、塩酸、乳酸、マレイン酸、フェノキシ酢酸、プロピオン酸及びコハク酸からなる群から選択される、上記項1に記載の塩。
(項4)
前記酸がマレイン酸である、上記項1に記載の塩。
(項5)
前記酸がプロピオン酸である、上記項1に記載の塩。
(項6)
前記塩が式II:
【0123】
【化2】
【0124】
により表わされる、上記項4に記載の塩。
(項7)
結晶多形形態を有する、上記項6に記載の塩。
(項8)
4.9、9.7、13.8、14.1、15.2、17.6、18.5、20.8、21.6、22.7、24.1、26.3、26.8度2θから選択される少なくとも4つの近似固有ピーク位置を有する粉末X線回折パターンを有する、上記項7に記載の塩。
(項9)
4.9、9.7、11.8、13.8、14.1、15.2、17.6、18.5、19.9、20.8、21.6、22.7、24.1、25.0、26.3、26.8度2θから選択される少なくとも8つの近似固有ピーク位置を有する粉末X線回折パターンを有する、上記項7に記載の塩。
(項10)
図1に示す粉末X線回折パターンに近似した粉末X線回折パターンを有する、上記項7に記載の塩。
(項11)
図2に示す示差走査熱量測定パターンに近似した示差走査熱量測定を有する、上記項7に記載の塩。
(項12)
望ましくない血栓症を特徴とする哺乳動物における状態を予防又は治療するための薬学的組成物であって、薬学的に許容される担体、及び治療有効量の上記項1〜11の何れか1項に記載の塩を含む、薬学的組成物。
(項13)
錠剤形態の、上記項12に記載の薬学的組成物。
(項14)
カプセル剤形態の、上記項12に記載の薬学的組成物。
(項15)
ロゼンジ剤形態の、上記項12に記載の薬学的組成物。
(項16)
輸液、注射又は経皮送達に好適な形態の、上記項12に記載の薬学的組成物。
(項17)
望ましくない血栓症を特徴とする哺乳動物における状態を予防又は治療するための方法であって、治療有効量の上記項1〜11の何れか1項に記載の塩を、該哺乳動物に投与することを含む、方法。
(項18)
前記状態が、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、不安定狭心症、不応性狭心症、血栓溶解療法後又は冠動脈形成術後に発生する閉塞性冠動脈血栓、血栓媒介性脳血管症候群、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、一過性虚血発作、静脈血栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓、凝固障害、播種性血管内凝固、血栓性血小板減少性紫斑病、閉塞性血栓性血管炎、ヘパリン誘発血小板減少に関連した血栓性疾患、体外循環に関連した血栓性合併症、器械使用に関連した血栓症合併症、及び補てつ具の取付けに関連した血栓性合併症からなる群から選択されるメンバーである、上記項17に記載の方法。
(項19)
血液試料の凝固を阻害するための方法であって、該試料を、上記項1〜11の何れか1項に記載の塩と接触させる工程を含む、方法。
(項20)
式I:
【0125】
【化3】
【0126】
の化合物を調製する方法であって、LiN(CH
3)
2を、式III:
【0127】
【化4】
【0128】
の化合物又はその塩と、式Iの化合物を形成する条件下において、接触させる工程を含む、方法。
(項21)
式IIIの化合物の前記塩がHCl塩である、上記項20に記載の方法。
(項22)
前記条件が、非極性非プロトン溶媒を使用することを含む、上記項20に記載の方法。(項23)
前記溶媒が、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシメタン、ジオキサン、ヘキサン、メチルt−ブチルエーテル、ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群から選択されるメンバーである、上記項22に記載の方法。
(項24)
前記条件が、前記方法を10℃未満の温度にて行うことを含む、上記項20に記載の方法。
(項25)
式Iの化合物が少なくとも50%の収率で得られる、上記項20に記載の方法。
(項26)
式Iの化合物が少なくとも65%の収率で得られる、上記項20に記載の方法。
(項27)
式Iの化合物が少なくとも75%の収率で得られる、上記項20に記載の方法。
(項28)
式Iの化合物がグラム規模又はキログラム規模で調製される、上記項20に記載の方法。