(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明がどのような技術思想のもとでなされたかについて記述する。
従来における反射防止膜の設計思想は、可視光域で光線の反射を一様に低く抑えるというものである。また、反射防止膜による光の反射防止効果は、反射防止膜の表面で反射する光と反射防止膜の裏面で反射する光が干渉し、これによって互いの光の波を消し合うことにより得られるものである。このとき、反射防止効果が得られる波長帯は、反射防止膜の構成材料、屈折率、膜厚等のパラメータによって変わる。このため、反射防止膜を多層化すると、より広い波長域で、光線の反射をより低く抑えることが可能となる。したがって、従来の設計思想では、反射防止膜を多層化して所望の反射率特性を得ている。
【0018】
しかしながら、本発明者による実験の結果では、従来の設計思想のもとで可視光域での光線の反射を低く抑えた反射防止膜を用いても、撮像光学系におけるゴーストの発生を有効に低減することができない現象が認められた。具体的には、凹メニスカスレンズを第1レンズに用いた撮像光学系において、凹面が球面に形成された凹メニスカスレンズと、凹面が非球面に形成された凹メニスカスレンズに対して、それぞれ従来の設計思想に基づく同一特性の反射防止膜を形成し、撮像光学系におけるゴーストの発生状況を確認した。ゴーストの評価は、光学的なデータ(輝度のデータなど)で評価する場合と、撮像した画像を目視で評価する場合があるが、本発明者は目視で評価した。その結果、凹面が球面に形成された凹メニスカスレンズを用いた場合は、レンズの光学面に入射する光線の入射角が変わっても、ゴーストの発生が十分に抑えられていた。これに対して、凹面が非球面に形成された凹メニスカスレンズを用いた場合は、光線の入射角が特定の範囲(30°〜70°)にあるときにゴーストの発生が顕著になる現象が認められた。
【0019】
こうした事実に鑑みて本発明者は、単に可視光域での光線の反射を一様に低く抑えるという従来の設計思想ではなく、実際に撮像光学系で生じるゴーストのカラーバランスまでも考慮して、ゴーストの低減に有効な反射防止膜の光学特性を着想するに至った。以下、説明する。
【0020】
まず、本発明の主たる技術思想は、光学部材の光学面に形成され、この光学面に入射した光線の反射を防止する反射防止膜の、光学面に光線が入射角0度で入射したときの分光反射率特性として、第1の波長領域における最大反射率P1と第1の波長領域よりも長波長側となる第2の波長領域における最大反射率P2とがP1>P2の関係を満たし、反射率が所定値以下の波長範囲を第2の波長領域よりも長波長側にシフトさせることにより、第2の波長領域における反射率を低減させるとともに、第1の波長領域と第2の波長領域のゴーストの輝度相違を小さくするように、第1の波長領域における反射率を増加させる、というものである。第1の波長領域は、波長450nm以上550nm未満の範囲内の波長領域であり、光の色で表現すると、黄色〜赤色の波長領域に相当する。第2の波長領域は、600nm以上750nm未満の範囲内の波長領域であり、光の色で表現すると、青色〜緑色の波長領域に相当する。
【0021】
ゴーストの輝度相違とは、ゴーストの発生要因となる光(以下、「ゴースト光」ともいう)の色ごとの輝度の相違をいう。ゴースト光の色成分のうち、黄色〜赤色、特に赤色の輝度が高くなると、実際に撮像した画像中で実像とゴーストとの色差が顕著になるため、ゴーストが目立ってしまう。そこで、本発明においては、反射防止膜の光学特性として、ゴーストとして目立つ黄色〜赤色の波長領域における反射率を低下させ、そのうえで、黄色〜赤色の波長領域と青色〜緑色の波長領域のゴーストの輝度相違を小さくするように(好ましくは、当該輝度相違を相殺する程度に)、青色〜緑色の波長領域における反射率を増加させることにより、ゴーストの低減を図った。青色〜緑色の波長領域における反射率をどの程度増加させるかは、たとえば、そのときに画像中に残存しているゴーストの輝度相違をどの程度小さくしたいか、あるいは青色と赤色でどの程度相違しているか、などによって決めればよい。
【0022】
また、本発明においては、光学面に光線が入射角0度で入射したときの分光反射率特性として、反射率が所定値以下の波長範囲を黄色〜赤色の波長領域よりも長波長側にシフトさせることにより、黄色〜赤色の波長領域における反射率を低減させた。
【0023】
また、本発明においては、光学面に光線が入射角0度で入射したときの分光反射率特性として、黄色の波長領域よりも短波長側の反射率R1と、黄色の波長領域よりも長波長側の反射率R2とが、R1≧R2の関係を満たすように、青色〜緑色の波長領域における反射率を増加させた。
ここで記述する「入射角」とは、光学面に垂直な軸に対して、光学面に入射する光線のなす角度をいう。このため、たとえば、光学面がレンズの表面であれば、レンズの光軸に対して、レンズの表面に入射する光線のなす角度が入射角となる。
【0024】
上記光学特性を有する反射防止膜によれば、黄色〜赤色の波長領域における反射率を低減させることにより、黄色〜赤色の波長領域のゴーストの輝度が低く抑えられる。これに加えて、青色〜緑色の波長領域における反射率を増加させると、もともと赤色が目立ちやすいゴーストのカラーバランスが補正される。具体的には、青色〜緑色の波長領域(第一の領域)のゴーストによって、黄色〜赤色の波長領域(第二の領域)のゴーストが打ち消される。このため、ゴースト(特に、赤色のゴースト)を目立たない状態にすることができる。なお、相対的に短波長側となる第一の領域と長波長側となる第二の領域は、黄色の波長帯と緑色の波長帯の境界の波長を基準に区分される。
【0025】
(反射防止膜の光学特性)
以下、本発明の技術思想に基づく反射防止膜の光学特性について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る反射防止膜の分光反射率特性を示す図である。
図1においては、光学部材の光学面に形成された反射防止膜に関して、光学面に光線が入射角0度で入射したときの分光反射率特性を、縦軸に光の反射率(%)、横軸に波長(nm)をとって、実線カーブで示している。
また、図中の符号は、以下の事項を示している。
W1:第1の波長領域の波長幅
W2:第2の波長領域の波長幅
P1:第1の波長領域(W1)における最大反射率
P2:第2の波長領域(W2)における最大反射率
Q1:第1の波長領域(W1)における最小反射率
Q2:第2の波長領域(W2)における最小反射率
H1:第1の波長領域(W1)における最大反射率P1と最小反射率Q1との差(反射率差)
H2:第2の波長領域(W2)における最大反射率P2と最小反射率Q2との差(反射率差)
第1の波長領域としてのW1は、分光反射率特性における最も短波長側の極小点から長波長側へ所定の波長幅(50nm〜200nm)を有する。W1の短波長側となる一端(極小点)は、400nmから500nmの範囲に含まれる。W1の長波長側の他端は、500nm〜600nmの範囲に含まれる。
第2の波長領域としてのW2は、W2の短波長側の一端から長波長側へ所定の波長幅(50nm〜200nm)を有する。W2の短波長側の一端は、分光反射率特性におけるW1の長波長側の他端と同じである。このため、W2の短波長側の一端は、500nm〜600nmの範囲に含まれる。W2の長波長側の他端は、550nm〜750nmの範囲に含まれる。
したがって、第2の波長領域(W2)の長波長側の他端がとり得る波長範囲は、第1の波長領域(W1)の短波長側の一端がどの位置(波長)になるか、そしてそこからどの程度の波長幅のところに第1の波長領域(W1)の長波長側の他端および第2の波長領域(W2)の短波長側の一端が存在し、さらにそこから所定の波長幅のところに第2の波長領域(W2)の長波長側の他端が存在するかによって決まる。このため、たとえば、第1の波長領域(W1)の短波長側の一端が400nmのところにあり、W1の波長幅が200nm、W2の波長幅が200nmであるとすると、第2の波長領域(W2)の長波長側の他端は、上記の波長範囲の制限により750nmのところになる。また、第1の波長領域(W1)の短波長側の一端が450nmのところにあり、W1の波長幅が50nm、W2の波長幅が100nmであるとすると、第2の波長領域(W2)の長波長側の他端は、600nmのところになる。
【0026】
(長波長側へのシフト)
図示した反射防止膜の分光反射率特性においては、反射率が所定値以下の波長範囲が、赤色の波長領域よりも長波長側にシフトしている。一例として、所定値を1.0%とすると、反射率が1.0%以下の波長範囲は、おおむね430nm〜820nmの範囲になっている。この場合、反射率が1.0%以下の波長範囲の中心波長は約625nmとなる。これに対して、可視光域を400nm〜700nmとすると、可視光域の中心波長は550nmとなる。このことから、反射率が1.0%以下の波長範囲の中心波長は、可視光域の中心波長よりも長波長側にずれている。具体的には、可視光域の中心波長から50nm超の75nmほどずれている。このため、可視光域を中心にみると、分光反射率特性の特性曲線全体が長波長側にシフトしている。そして、赤色の波長領域(〜780nm)よりも長波長側となる波長820nmまでの範囲の反射率が1.0%以下に抑えられている。つまり、反射率が1.0%以下の波長域が赤色の波長領域を超えて長波長側に拡大している。
【0027】
(短波長側と長波長側の反射率の相対関係)
上記反射防止膜の分光反射率特性として、黄色の波長領域よりも短波長側の反射率R1と、黄色の波長領域よりも長波長側の反射率R2とが、R1≧R2の関係を満たしている。短波長側の反射率R1は、波長幅W1で規定する第1の波長領域における最大反射率に相当し、長波長側の反射率R2は、波長幅W2で規定する第2の波長領域における最大反射率に相当する。最大反射率P1は、波長450nm以上550nm未満の範囲に存在している。最大反射率P2は、波長600nm以上750nm未満の範囲に存在している。波長450nm以上550nm未満の波長範囲において、反射率が最大となる位置を「最大反射率P1」とすればよい。波長450nm以上550nm未満の波長範囲に複数の極大値が存在する場合は、相対的に反射率が高いほうの極大値を「最大反射率P1」とすればよい。同様に、波長600nm以上750nm未満の範囲において、反射率が最大となる位置を「最大反射率P2」とすればよい。波長600nm以上750nm未満の波長範囲に複数の極大値が存在する場合は、相対的に反射率が高いほうの極大値を「最大反射率P2」とすればよい。
【0028】
最大反射率P1は、好ましくは波長450nm以上550nm未満の範囲内、さらに好ましくは波長470nm以上530nm未満の範囲内に存在するのがよい。本実施の形態においては、最大反射率P1が波長500nmの近傍に存在している。波長500nmは、波長別の光の色成分でみると、ちょうど青色と緑色の境界部分に相当する波長になる。最大反射率P2は、波長600nm以上750nm未満の範囲内において、波長650nmの近傍に存在している。波長650nmは、波長別の光の色成分でみると、ちょうど赤色成分の波長帯の中間部分に相当する波長になる。
【0029】
最大反射率P1は、たとえば、0.5%以上3.0%以下、0.5%以上2.5%以下、好ましくは0.5%以上2.0%以下、さらに好ましくは0.6%以上1.5%以下、さらに好ましくは0.6%以上1.0%以下であるのがよい。本実施の形態においては、最大反射率P1が約0.75%になっている。最大反射率P2は、上述したR1≧R2の関係を満たすことを条件に、たとえば、2.5%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下であるのがよい。本実施の形態においては、最大反射率P2における反射率が約0.45%になっている。最大反射率P1における反射率R1は、波長450nm以上550nm未満の範囲における最大反射率となっており、最大反射率P2における反射率R2は、波長600nm以上750nm未満の範囲における最大反射率となっている。
【0030】
反射防止膜の分光反射率特性を示す特性曲線のなかで、最大反射率とは、上側に凸の形状で山形に分布する波形の頂部に対応する反射率を意味する。この頂部が存在しない波長域では、この波長域における最大の反射率を意味する。波形の頂部の数は、反射防止膜の層数で決まる。本実施の形態においては、一例として、3層構造の反射防止膜を想定している。このため、頂部の数が2つになっている。また、本明細書においては、波形の頂部を通って山形に分布する波形を「ピーク波形」と定義し、この定義にしたがって、最大反射率P1のときの頂部を通って山形に分布する波形をピーク波形1とし、最大反射率P2のときの頂部を通って山形に分布する波形をピーク波形2とする。ピーク波形1は、短波長側となる第1の波長領域(W1)に存在し、ピーク波形2は、長波長側となる第2の波長領域(W2)に存在している。ピーク波形1については、最大反射率P1のときの頂部を略中心に左右対称な形状になっていることが好ましい。この点は、ピーク波形2についても同様である。また、ピーク波形の分布幅は、ピーク波形の一方(短波長側)のボトム部分から他方(長波長側)のボトム部分までの幅を波長換算で規定するものとし、ピーク波形の高さは、ピーク波形の頂部とボトム部分の高低差を反射率換算で規定するものとする。ピーク波形の高さを規定するときに適用するボトム部分に関しては、相対的に反射率が低いほうのボトム部分を適用する。
【0031】
第1の波長領域であるW1は、たとえば、波長換算で50nm以上200nm以内の範囲、好ましくは100nm以上150nm以内の範囲とするのがよい。
図1に示す本実施の形態では、W1が約120nmになっている。また、第2の波長領域であるW2は、W1よりも大きくなっている。具体的には、W2が波長換算で約180nmになっている。
【0032】
(P1−Q1)で示される反射率差H1は、たとえば、反射率換算で0.3%以上、好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.5%以上とするのがよい。本実施の形態では、反射率差H1が反射率換算で約0.7%になっている。また、(P2−Q2)で示される反射率差H2は、反射率差H1よりも低くなっている。具体的には、反射率差H2が反射率換算で約0.4%になっている。
【0033】
上記反射防止膜の分光反射率特性においては、反射率が所定値以下の波長範囲を赤色の波長領域よりも長波長側にシフトさせることにより、黄色〜赤色の波長領域における反射率を低減させている。このため、黄色〜赤色の波長領域のゴーストを軽減することができる。また、上記反射防止膜の分光反射率特性においては、黄色の波長領域よりも短波長側の反射率を長波長側の反射率以上とすることにより、青色〜緑色の波長領域における反射率を相対的に増加させている。このため、黄色〜赤色の波長領域のゴーストを青色〜緑色の波長領域のゴーストでキャンセルすることができる。
【0034】
また、黄色〜赤色の波長領域における反射率を低減させ、かつ、青色〜緑色の波長領域における反射率を増加させることにより、ゴーストの輝度相違を小さくすれば、ゴーストのカラーバランスの偏りが解消される。このため、ゴーストとして目立ちやすい黄色〜赤色(特に、赤色)のゴーストを大幅に低減することができる。
【0035】
また、
図1に示す本実施の形態に係る反射防止膜は、上記のピーク波形1を有する分光反射率特性を備え、このピーク波形1にしたがって反射率が高くなる色成分の光線を利用してゴーストを打ち消すような構成となっている。このため、可視光域の反射率を一様に低く抑えるために多層化した従来の反射防止膜と比べると、それよりも少ない層数でゴーストを有効に低減することができる。また、同じ層数の反射防止膜で比べた場合は、可視光域での反射率を単に低く抑える設計思想の反射防止膜よりも高いゴースト低減効果が得られる。また、反射防止膜12の分光反射率特性として、波長450nm以上550nm未満の範囲に最大反射率P1が存在するピーク波形1を含んでいるため、撮像光学系で目立ちやすい黄色〜赤色成分(特に、赤色成分)のゴーストを効果的に低減することができる。その際、最大反射率P1の存在によって青色〜緑色の波長領域の反射率が増加するが、増加の程度は、黄色〜赤色の波長領域と青色〜緑色の波長領域のゴーストの輝度相違を小さくする程度であればよく、好ましくは相殺する程度とするのがよい。
【0036】
ここで、比較のために、従来の反射防止膜と分光反射率特性と本発明の実施の形態に係る反射防止膜の分光反射率特性を
図2に示す。
図2においては、従来の反射防止膜の分光反射率特性を点線で示し、本発明の実施の形態に係る反射防止膜の分光反射率特性を実線で示している。図から分かるように、従来の反射防止膜の分光反射率特性では、波長400nm以上500nm未満の範囲に最大反射率P3が存在するとともに、波長500nm以上660nm未満の範囲に最大反射率P4が存在している。ただし、最大反射率P3における反射率は0.5%よりも低くなっている。また、最大反射率P3における反射率は、最大反射率P4における反射率よりも低くなっている。さらに、反射率が1.0%以下の波長範囲(405nm〜735nm)の中心波長(570nm)は、可視光域の中心波長付近に位置している。また、波長700nmから800nmにかけて反射率が急激に上昇し、波長800nmにおける反射率が約3.5%と高くなっている。これに対して、本発明の実施の形態に係る反射防止膜の分光反射率特性では、波長450nm〜550nmの範囲に高い反射率を示す特異な帯域が存在している。また、本発明の反射防止膜の分光反射率特性では、従来の比較して、反射率を1.0%以下に抑えた波長帯域が全体的に長波長側にシフトし、その波長範囲もワイドになっている。
【0037】
図3は本発明の実施の形態に係る光学素子の構成例を示す断面図であり、
図4は
図3のK部(光軸近傍部)拡大図である。
図示した光学素子10は、光学部材の一例として凹メニスカスレンズ11を用いた構成となっている。凹メニスカスレンズ11は、たとえば、高屈折率(屈折率ndが1.50以上であればよく、好ましくは1.70以上であり、更に好ましくは1.85以上のガラスとする)の光学ガラスをレンズ基材として一体に成形されたものである。凹メニスカスレンズ11は、それぞれに光学面となる第1面r1と第2面r2を有している。第1面r1は、ほぼフラットな面になっている。ただし、第1面r1は、フラットな状態よりも僅かに突出した非球面形状の凸面、またはフラットな状態よりも僅かにへこんだ非球面形状の凹面になっていてもよい。第2面r2は、フラットな状態から大きくへこんだ凹面になっており、さらに詳しくは非球面形状の凹面になっている。この場合における最大面角度は40〜70°とすることができ、以下の実施例においては43°とした。
【0038】
凹メニスカスレンズ11の第2面r2(非球面形状)には反射防止膜12が形成されている。この反射防止膜12は、上記
図1に示す分光反射率特性を有する膜である。この場合の分光反射率特性は、凹メニスカスレンズ11の光学中心に入射角0度で光線が入射したときに得られるものである。反射防止膜12は、第1層12a、第2層12bおよび第3層12cからなる3層構造になっている。各層は、凹メニスカスレンズ11の第2面r2に近い側から、第1層12a(第1の屈折率を有する第1の層)、第2層12b(第2の屈折率を有する第2の層)および第3層12c(第3の屈折率を有する第3の層)の順に積層されている。各々の層は、互いに異なる構成材料を用いて形成されている。
【0039】
本発明の実施の形態に係る反射防止膜の基本的な膜構成は、たとえば、上述した3層構造であれば、レンズ基材側から空気側(外側)に向かって、xM、yH、zLを順に積層した構造とする。記号M.H.Lはそれぞれ薄膜材料の屈折率を意味し、Mは1.55〜1.80(第1の屈折率)であり、Hは1.80〜2.60(第2の屈折率)であり、Lは1.30〜1.55(第3の屈折率)とすることができ、M.H.Lの値が重複しないように設定することができる。また、記号x.y.zはそれぞれ光学膜厚を意味し、Sub/xM/yH/zL/Airのように表記することができる。この光学膜厚は、nd=k/4×λ0と表せ、kは光学膜厚係数である。ここでは、λ0=550nmとする。また、記号x.y.zの数値は、以下の数値範囲を適用可能である。
x=0.70〜2.40
y=0.70〜2.40
z=0.70〜1.30
また、本発明の実施の形態に係る反射防止膜は等価膜に置き換えることができる。
なお、反射防止膜の層構造は3層に限らず、第1の屈折率Mを有する第1の層を、複数の層から構成される等価膜に置き換えることができる。この第1の屈折率Mと等価な等価膜は、第1の層と同等の特性を有しており、後述するように4〜7層まで適用可能である。また、各層の膜材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化タンタル、フッ化マグネシウム等を適用することができ、例えば、酸化ジルコニウムと酸化チタンを所定の割合で混合し、1層の膜材として使用することができる。より好ましくは、以下の通りである。また、以下の説明においてAirの屈折率は1.0000であるものとして説明する。
【表1】
なお、上記表1は以下で説明する全ての実施例、及び、変形例において適用されるものとする。
【0040】
図5に反射防止膜の具体的な第1の実施例(膜構成:Sub/xM/yH/zL/Air)を示す。
図5においては、基準波長λoを550nmとしたときの光の屈折率nを表記している。また、各層の膜厚については、膜厚dと光学膜厚を並記している。光学膜厚は、数式“nd=k/4×λ0”で表現される。kは光学膜厚係数を意味する。まず、構成材料について記述すると、凹メニスカスレンズ11の基材にはHOYA株式会社製の光学ガラス(硝種名:M−TAF101)を用いている。また、反射防止膜を構成する各層のうち、第1層12aは酸化アルミニウム(Al
2O
3)で構成し、第2層12bはキヤノンオプトロン社製の光学膜材料(製品名:OH−5(酸化ジルコニウムと酸化チタンの混合膜(ZrO
2+TiO
2)))で構成し、第3層12cはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成している。また、第2層を構成する混合物の比率は、ZrO
2:TiO
2=9:1としている。各層の膜構成については、
図5に記載したとおりである。
【0041】
(反射防止膜の製造方法)
上記構成の反射防止膜は、周知の成膜方法を適用して形成することができる。たとえば、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などの物理蒸着法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法、光CVD法などの化学蒸着法、ゾル−ゲル法などを適用することができる。本発明者は、一実施例として、真空蒸着法により反射防止膜を形成した。以下に具体的な形成条件を記述する。
【0042】
第1層:Al
2O
3膜の形成条件
第1層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入後の成膜時真空度:7.2×10
-3Pa(ただし、7.1〜7.3×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0043】
第2層:ZrO
2+TiO
2混合膜の形成条件
第2層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入後の成膜時真空度:8.5×10
-3Pa(ただし、8.4〜8.6×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0044】
第3層:MgF
2膜の形成条件
第3層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0045】
(第一の実施例の変形例1)
また、上記第一の実施例の変形例1として、上記第一の実施例における第1層及び第2層を2回に分けて成膜した3層の反射防止膜の膜構成を
図6に示すとともに、当該反射防止膜の形成方法を以下に記述する。なお、比較的厚い膜を2回に分けることで、膜厚方向の膜質(屈折率、膜密度など)の均一性を向上でき、成膜膜厚制御性を高めることができるので、所望の膜設計値(光学的膜厚)を有する膜を安定に成膜できる。
【0046】
第1層:Al
2O
3膜の形成条件
第1層の成膜は2回にわけて行い、膜構成が等しくなるように行った。
(1回目の成膜)
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入後の成膜時真空度:7.2×10
-3Pa
・成膜速度:約0.5nm/sec
(2回目の成膜)
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入後の成膜時真空度:7.2×10
-3Pa
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0047】
第2層:ZrO
2+TiO
2混合膜の形成条件
第2層の成膜は2回にわけて行い、膜構成が等しくなるように行った。
(1回目の成膜)
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入後の成膜時真空度:8.5×10
-3Pa(ただし、8.4〜8.6×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
(2回目の成膜)
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入後の成膜時真空度:8.5×10
-3Pa(ただし、8.4〜8.6×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0048】
第3層:MgF
2膜の形成条件
第3層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0049】
図7は第一の実施例およびその変形例1に係る反射防止膜の分光反射特性を示す図である。図示した分光反射特性においては、最大反射率P1のときの波長が約520nm、P2のときの波長が約630nm、波長幅W1が約90nm、W2が約150nm、反射率差H1が約0.3%、H2が約0.2%となっている。
【0050】
(第一の実施例の変形例2)
また、上記第一の実施例の変形例2として、上記第一の実施例における第1層及び第2層を2回に分け、膜構成は一回目の成膜と二回目の成膜とに差異を設けて光学特性を微調整するように成膜した3層の反射防止膜の膜構成を
図8に示すとともに、当該反射防止膜の形成方法を以下に記述する。なお、変形例2において、第1層と第2層を2回に分け、膜構成は差異を設けて成膜する理由は、膜厚方向の膜質変化がある場合に、同じ構成材料において、成膜条件に差異を設けることで、膜厚方向の膜質変化をキャンセルさせることができ、所望の膜設計値(光学的膜厚)を有する膜を安定して成膜することができるからである。つまり、蒸着中の異常粒子成長を抑制でき、均一で光散乱の小さい光学膜を成膜することができる。
【0051】
第1層:Al
2O
3膜の形成条件
第1層の成膜は2回にわけて行った。
(1回目の成膜)
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入後の成膜時真空度:7.2×10
-3Pa
・成膜速度:約0.5nm/sec
(2回目の成膜)
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入後の成膜時真空度:7.2×10
-3Pa
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0052】
第2層:ZrO
2+TiO
2混合膜の形成条件
第2層の成膜は2回にわけて行った。
(1回目の成膜)
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入後の成膜時真空度:8.45×10
-3Pa(ただし、8.4〜8.5×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
(2回目の成膜)
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入後の成膜時真空度:8.45×10
-3Pa(ただし、8.4〜8.5×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0053】
第3層:MgF
2膜の形成条件
第3層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0054】
ここで、上述の変形例2のように、凹メニスカスレンズ11の第2面r2に反射防止膜12の第1層12aを形成する場合に、同じ構成材料で2回にわけて成膜することにより、たとえば、膜質のバラつきによって所望の光学特性が得られなかったときに、1回目の成膜と2回目の成膜とで光学膜厚係数kもしくは屈折率nに差異を設けて光学特性を微調整することができる。この点は、第2層12bや第3層12cを形成する場合も同様である。また、所望の光学特性が得られない場合だけでなく、所望の光学特性が得られた場合であっても二以下以上にわけて成膜しても構わない。
【0055】
図9は第一の実施例の変形例2に係る反射防止膜の分光反射特性を示す図である。図示した分光反射特性においては、最大反射率P1のときの波長が約490nm、P2のときの波長が約665nm、波長幅W1が約125nm、W2が約170nm、反射率差H1が約0.7%、H2が約0.4%となっている。
【0056】
上述の説明では3層の反射防止膜について、一回又は二回の成膜を行うことにより各層を成膜する例を示したが、以下の説明においては、一回の成膜により1層を成膜することにより得られる4層から7層の反射防止膜の例を示し本発明について説明する。なお、一回の成膜により1層を成膜する例を示すが、本発明はこれに限定されるものではなく、任意の1層を二回又は三回以上の成膜により成形してもよい。
【0057】
(第二の実施例)
図10に反射防止膜の具体的な第二の実施例(4層の膜構成:Sub/x
1L/x
2M/yH/zL/Air)を示す。まず、構成材料について記述すると、凹メニスカスレンズ11の基材にはHOYA株式会社製の光学ガラス(硝種名:M−BACD12)を用いている。また、反射防止膜を構成する各層のうち、第1層12aはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成し、第2層12bは酸化アルミニウム(Al
2O
3)で構成し、第3層12cはキヤノンオプトロン社製の光学膜材料(製品名:OH−5(酸化ジルコニウムと酸化チタンの混合膜(ZrO
2+TiO
2)))で構成し、第4層12dはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成されている。また、第3層を構成する混合物の比率は、ZrO
2:TiO
2=9:1としている。また、記号x.y.zの数値は、以下の数値範囲を適用可能である。
x
1=0.01〜0.50
x
2=1.00〜1.60
y=0.70〜2.30
z=0.70〜1.30
各層の膜構成については、
図10に記載したとおりである。
【0058】
(反射防止膜の製造方法)
上記構成の反射防止膜は、上記第一の実施例と同様に真空蒸着法により反射防止膜を形成した。以下に具体的な形成条件を記述する。
【0059】
第1層:MgF
2膜の形成条件
第1層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0060】
第2層:Al
2O
3の形成条件
第2層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入後の成膜時真空度:7.2×10
-3Pa(ただし、7.1〜7.3×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0061】
第3層:ZrO
2+TiO
2膜の形成条件
第3層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入後の成膜時真空度:8.45×10
-3Pa(ただし、8.4〜8.5×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0062】
第4層:MgF
2膜の形成条件
第4層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0063】
図11は第二の実施例に係る反射防止膜の分光反射特性を示す図である。図示した分光反射特性においては、最大反射率P1のときの波長が約490nm、P2のときの波長が約680nm、波長幅W1が約135nm、W2が約115nm、反射率差H1が約0.6%、H2が約0.3%となっている。
【0064】
(第三の実施例)
図12に反射防止膜の具体的な第三の実施例(4層の膜構成:Sub/x
1L/x
2M/yH/zL/Air)を示す。まず、構成材料について記述すると、凹メニスカスレンズ11の基材にはHOYA株式会社製の光学ガラス(硝種名:M−BACD12)を用いている。また、反射防止膜を構成する各層のうち、第1層12aは酸化ケイ素(SiO
2)で構成し、第2層12bは酸化アルミニウム(Al
2O
3)で構成し、第3層12cはキヤノンオプトロン社製の光学膜材料(製品名:OH−5(酸化ジルコニウムと酸化チタンの混合膜(ZrO
2+TiO
2)))で構成し、第4層12dはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成している。また、第3層を構成する混合物の比率は、ZrO
2:TiO
2=9:1としている。また、記号x.y.zの数値は、以下の数値範囲を適用可能である。
x
1=0.01〜0.50
x
2=1.00〜1.60
y=0.70〜2.30
z=0.70〜1.30
各層の膜構成については、
図11に記載したとおりである。
【0065】
(反射防止膜の製造方法)
上記構成の反射防止膜は、上記第一の実施例と同様に真空蒸着法により反射防止膜を形成した。以下に具体的な形成条件を記述する。
【0066】
第1層:SiO
2膜の形成条件
第1層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0067】
第2層:Al
2O
3の形成条件
第2層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入後の成膜時真空度:7.2×10
-3Pa(ただし、7.1〜7.3×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0068】
第3層:ZrO
2+TiO
2膜の形成条件
第3層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入後の成膜時真空度:8.5×10
-3Pa(ただし、8.4〜8.6×10
-3Paの範囲で設定可)
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0069】
第4層:MgF
2膜の形成条件
第4層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0070】
図13は第三の実施例に係る反射防止膜の分光反射特性を示す図である。図示した分光反射特性においては、最大反射率P1のときの波長が約490nm、P2のときの波長が約700nm、波長幅W1が約130nm、W2が約150nm、反射率差H1が約0.6%、H2が約0.3%となっている。
【0071】
上述の実施例における膜構成では、屈折率Mを有する第1の層と、屈折率Hを有する第2の層と、屈折率Lを有する第3の層とを備える3層構造の反射防止膜について説明したが、第1の層は屈折率Mを有する複数層から形成される下記の等価膜構成に置き換えることができる。
具体的には、
図14に示すように、反射防止膜の膜構成が5層であって、第1層の屈折率がL、第2層の屈折率がH、第3層の屈折率がL、第4層の屈折率がH、第5層の屈折率がLである。このような場合には、第1層から第3層までを組み合わせた3つの層を、等価的に反射率がMの単層(第1の層)とみなすことができる。また、これ以外にも、たとえば、第2層と第3層を組み合わせた2つの層を、等価的に反射率がMの単層(第1の層)とみなすこともできる。
図16に示すように、反射防止膜の膜構成が6層であって、第1層の屈折率がH、第2層の屈折率がL、第3層の屈折率がH、第4層の屈折率がL、第5層の屈折率がH、第6層の屈折率がLである場合は、第1層から第4層までを組み合わせた4つの層を、等価的に反射率がMの単層(第1の層)とみなすことができる。また、これ以外にも、たとえば、第1層と第2層を組み合わせた2つの層を、等価的に反射率がMの単層(第1の層)とみなしたり、第3層と第4層を組み合わせた2つの層を、等価的に反射率がMの単層(第1の層)とみなしたりすることもできる。
図18に示すように、反射防止膜の膜構成が7層であって、第1層の屈折率がL層、第2層の屈折率がH、第3層の屈折率がL、第4層の屈折率がH、第5層の屈折率がL、第6層の屈折率がH、第7層の屈折率がLである場合は、第1層から第5層までを組み合わせた5つの層を、等価的に反射率がMの単層(第1の層)とみなすことができる。また、これ以外にも、たとえば、第1層から第3層までを組み合わせた3つの層を、等価的に反射率がMの単層(第1の層)とみなしたり、第4層と第5層を組み合わせた2つの層を、等価的に反射率がMの単層(第1の層)とみなしたりすることもできる。
以下、具体的に記述する。
「第四の実施例(第一の実施例の変形例)」
図14に反射防止膜の具体的な第四の実施例(5層の膜構成:Sub/(x
1L/y
1H/x
2L/y
2H/zL/Air)を示す(記号に付した数字は各記号を識別するために付している)。まず、構成材料について記述すると、凹メニスカスレンズ11の基材にはHOYA株式会社製の光学ガラス(硝種名:M−TAFD305)を用いている。また、反射防止膜を構成する各層のうち、第1層12aはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成し、第2層12bは酸化ジルコニウム(ZrO
2)で構成し、第3層12cはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成し、第4層12dは酸化ジルコニウム(ZrO
2)で構成し、第5層はフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成されている。また、記号x.y.zの数値は、以下の数値範囲を適用可能である。
x
1=0.01〜0.50
x
2=0.01〜0.50
y
1=0.30〜0.90
y
2=0.70〜2.60
z=0.70〜1.30
各層の膜構成については、
図14に記載したとおりである。
【0072】
(反射防止膜の製造方法)
上記構成の反射防止膜は、上記第一の実施例と同様に真空蒸着法により反射防止膜を形成した。以下に具体的な形成条件を記述する。
【0073】
第1層:MgF
2膜の形成条件
第1層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0074】
第2層:ZrO
2膜の形成条件
第2層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0075】
第3層:MgF
2膜の形成条件
第3層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0076】
第4層:ZrO
2膜の形成条件
第4層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0077】
第5層:MgF
2膜の形成条件
第5層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0078】
図15は第四の実施例に係る反射防止膜の分光反射特性を示す図である。図示した分光反射特性においては、最大反射率P1のときの波長が約480nm、P2のときの波長が約640nm、波長幅W1が約120nm、W2が約170nm、反射率差H1が約0.8%、H2が約0.35%となっている。
【0079】
「第五の実施例(第一の実施例の変形例)」
図16に反射防止膜の具体的な第五の実施例(6層の膜構成:Sub/y
1H/x
1L/y
2H/x
2L/y
3H/zL/Air)を示す(記号付した数字は各記号を識別するために付している)。まず、構成材料について記述すると、凹メニスカスレンズ11の基材にはHOYA株式会社製の光学ガラス(硝種名:M−TAFD305)を用いている。また、反射防止膜を構成する各層のうち、第1層12aは酸化ジルコニウム(ZrO
2)で構成し、第2層12bはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成し、第3層12cは酸化ジルコニウム(ZrO
2)で構成し、第4層はフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成し、第5層は酸化ジルコニウム(ZrO
2)で構成し、第6層はフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成している。また、記号x.y.zの数値は、以下の数値範囲を適用可能である。
x
1=0.01〜0.50
x
2=0.01〜0.50
y
1=0.10〜0.80
y
2=0.90〜1.60
y
3=0.20〜0.90
z=0.70〜1.30
各層の膜構成については、
図16に記載したとおりである。
【0080】
(反射防止膜の製造方法)
上記構成の反射防止膜は、上記第一の実施例と同様に真空蒸着法により反射防止膜を形成した。以下に具体的な形成条件を記述する。
第1層:ZrO
2膜の形成条件
第1層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0081】
第2層:MgF
2膜の形成条件
第2層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0082】
第3層:ZrO
2膜の形成条件
第3層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0083】
第4層:MgF
2膜の形成条件
第4層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0084】
第5層:ZrO
2膜の形成条件
第5層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0085】
第6層:MgF
2膜の形成条件
第6層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0086】
図17は第5の実施例に係る反射防止膜の分光反射特性を示す図である。図示した分光反射特性においては、最大反射率P1のときの波長が約515nm、P2のときの波長が約750nm、波長幅W1が約200nm、W2が約110nm、反射率差H1が約0.5%、H2が約0.2%となっている。
【0087】
「第六の実施例(第一の実施例の変形例)」
図18に反射防止膜の第6の実施例(7層の膜構成:Sub/x
1L/y
1H/x
2L/y
2H/x
3L/y
3H/zL/Air)を示す(記号付した数字は各記号を識別するために付している)。まず、構成材料について記述すると、凹メニスカスレンズ11の基材にはHOYA株式会社製の光学ガラス(硝種名:M−TAFD305)を用いている。また、反射防止膜を構成する各層のうち、第1層12aはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成し、第2層12bは酸化ジルコニウム(ZrO
2)で構成し、第3層12cはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成し、第4層12dは酸化ジルコニウム(ZrO
2)で構成し、第5層12eはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成し、第6層12fは酸化ジルコニウム(ZrO
2)で構成し、第7層12gはフッ化マグネシウム(MgF
2)で構成されている。また、記号x.y.zの数値は、以下の数値範囲を適用可能である。
x
1=0.01〜0.50
x
2=0.01〜0.60
x
3=0.01〜0.50
y
1=0.30〜1.00
y
2=0.80〜1.50
y
3=0.40〜1.00
z=0.70〜1.30
各層の膜構成については、
図18に記載したとおりである。
【0088】
(反射防止膜の製造方法)
上記構成の反射防止膜は、上記第一の実施例と同様に真空蒸着法により反射防止膜を形成した。以下に具体的な形成条件を記述する。
(反射防止膜の製造方法)
上記構成の反射防止膜は、上記第一の実施例と同様に真空蒸着法により反射防止膜を形成した。以下に具体的な形成条件を記述する。
【0089】
第1層:MgF
2膜の形成条件
第1層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0090】
第2層:ZrO
2膜の形成条件
第2層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0091】
第3層:MgF
2膜の形成条件
第3層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0092】
第4層:ZrO
2膜の形成条件
第4層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0093】
第5層:MgF
2膜の形成条件
第5層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0094】
第6層:ZrO
2膜の形成条件
第6層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約0.8nm/sec
【0095】
第7層:MgF
2膜の形成条件
第7層の成膜は1回で行った。
・基板加熱温度:約260℃(250℃〜270℃の範囲で設定可)
・酸素導入:なし
・成膜速度:約1.0nm/sec
【0096】
図19は第六の実施例に係る反射防止膜の分光反射特性を示す図である。図示した分光反射特性においては、最大反射率P1のときの波長が約480nm、P2のときの波長が約630nm、波長幅W1が約110nm、W2が約180nm、反射率差H1が約0.4%、H2が約0.2%となっている。
なお、上述の第一の実施例〜第三の実施例では、3層の膜構成(第1の層は屈折率M、第2の層は屈折率H、第3の層は屈折率Lを有する3層の膜構成)について説明したが、上述の第四の実施例〜第六の実施例においては、屈折率Mを有する第1の層と等価な3層〜5層の複数の層から形成される等価膜に置き換えた場合について説明した。
第四の実施例については、説明の便宜上、
図14に示される第1層から第5層と記載しているが、
図14に示される第1層から第3層は、屈折率Mを有する第1の層の等価膜を形成し、
図14の第4層は第2の層を形成し、そして、
図14の第5層は第3の層を形成している。
第五の実施例については、第四の実施例と同様に、
図16に示される第1層から第4層は、屈折率Mを有する第1の層の等価膜を形成し、
図16の第5層は第2の層を形成し、そして、
図16の第6層は第3の層を形成している。
また、第六の実施例については、第四、五の実施例と同様に、
図18に示される第1層から第5層により屈折率Mを有する第1の層の等価膜を形成し、
図18の第6層は第2の層を形成し、そして、
図18の第7層は第3の層を形成している。
図14、
図16、
図18からわかるように、第1の層を形成する各層は、屈折率LとHとが交互に配置されている。そして、第1の層の最表層を形成する層の屈折率L(
図14の第3層、
図16の第4層、
図18の第5層)は、第2の層の屈折率H(
図14の第4層、
図16の第5層、
図18の第6層)に対して小さくなっている。
上記において、3層の膜構成として、第1の層は屈折率M、第2の層は屈折率H、第3の層は屈折率Lを有する膜構成の場合を例に説明したが、第1の層を屈折率M、第2の層を屈折率L、第3の層を屈折率Hとする膜構成にしてもよい。その場合においても、上述の方法と同じ方法により、屈折率Mを有する第1の層を複数の層から形成される等価膜へと置き換えることができる。
【0097】
(光学特性のシフトによる優位性)
一般に、球面または非球面の光学面に真空蒸着法等によって反射防止膜を形成する場合は、レンズ中心部が所望の膜厚となるように成膜条件を設定しても、レンズ中心部から離れたレンズ周縁部で所望の膜厚が得られないことがある。具体的には、レンズ中心部からレンズ周縁部に変位するにつれて膜厚が徐々に薄くなる傾向がある。その場合、膜厚の変化に伴って、レンズ中心部とレンズ周縁部で反射防止膜の分光反射率特性に差異が生じる。具体的には、反射防止膜の膜厚が薄くなるにつれて低反射の波長域が短波長側にシフトする。特に、上述した光学機能面が非球面形状に成形された凹メニスカスレンズ11の場合は、その傾向が強くなる。理由は、第2面r2が非球面の凹面になっており、その面角度がレンズ中心部からレンズ周縁部にかけてきつくなっているため、成膜時に膜厚が薄くなるからである。本発明を適用することのできる非球面形状の凹メニスカスレンズの凹面における最大面角度は、例えば40〜70°とすることができる。
【0098】
そうした場合、反射防止膜の分光反射率特性として、反射率が所定値(たとえば、1.0%)以下の波長範囲を赤色の波長領域よりも長波長側にシフトさせておけば、仮に成膜時の膜厚の変化によって低反射の波長域が短波長側にシフトしても、レンズの径方向全域にわたって良好な反射防止効果が得られる。また、球面や非球面に対して均一な膜厚で反射防止膜を形成する技術(以下、「膜厚均一化技術」)もあるが、本発明によれば、そのような技術をわざわざ適用しなくてもレンズ全体の反射率特性を良好に維持することができる。ただし、本発明は膜厚均一化技術を適用した反射防止膜を除外するものではない。
【0099】
また、光学面が球面の凹メニスカスレンズの場合は、光学面の曲率が一定であるため、光学面で反射したゴースト光が撮像面に均一に分散する傾向がある。これに対して、光学面が非球面の凹メニスカスレンズの場合は、光学面の面角度が一様ではないため、光学面で反射したゴースト光が撮像面の一部に集中する傾向がある。このため、前者の凹メニスカスレンズでは反射防止膜の形成によってゴーストが十分に低く抑えられていても、それと同じ分光反射率特性の反射防止膜を後者の凹メニスカスレンズに形成した場合に、画像の一部に顕著な赤色のゴーストが生じる場合がある。特に、光学面が凹面でその面角度がレンズ周縁部側できつくなっている凹メニスカスレンズの場合は、レンズの光軸に対して光学面のなす角度がレンズ周縁部側で急に大きくなるため、特定の入射角範囲でゴースト光の集中が起こりやすくなる。このような場合に、本発明に係る反射防止膜を光学面に形成しておけば、光学面が非球面の凹メニスカスレンズで生じるゴーストを、反射防止膜による輝度相違の相殺によって大幅に軽減することができる。ただし、本発明は非球面レンズに限らず、球面レンズへの適用も可能である。
【0100】
ここで、本発明者によるシミュレーションの結果を
図20および
図21を用いて説明する。
まず、
図20および
図21においては、光線の入射角ごとに、下記の従来例、実施例、比較例の反射防止膜を、それぞれ非球面に成形された凹メニスカスレンズの第2面に形成した場合に得られたR(赤),G(緑),B(青)の各色成分のゴーストの輝度を示している。また、図中の(A)は広角で撮像した場合、(B)は標準で撮像した場合、(C)は望遠で撮像した場合を示している。
(従来例)
上記
図2の点線カーブで示す分光反射率特性を有する反射防止膜。
(実施例)
上記
図2の実線カーブで示す分光反射率特性を有する反射防止膜。
(比較例)
反射防止膜を9層構造にして低反射の波長帯域を可視光域から赤外線領域までワイドに拡大した分光反射率特性を有する反射防止膜。
【0101】
また、
図20(A)〜(C)においては、従来例の反射防止膜を用いた場合に得られるRGBの輝度を「L1」、実施例の反射防止膜を用いた場合に得られるゴーストのRGBの輝度を「L2」、RGB各々の輝度と各々の入射角度について輝度L1に対する輝度L2の比率を「ΔLa」と表記している。一方、
図21(A)〜(C)においては、従来例の反射防止膜を用いた場合に得られるRGBの輝度を「L1」、比較例の反射防止膜を用いた場合に得られるRGBの輝度を「L3」、輝度L1を100%としたときの輝度L3の変化率を「ΔLb」と表記している。
【0102】
図示したシミュレーションの結果から分かるように、実施例の反射防止膜を用いた場合は、従来例の反射防止膜を用いた場合に比べて、本実施例のゴーストのRの輝度は従来例のおおむね20数%ほどに低下している(おおむね80%ほど低下している)。一方、比較例の反射防止膜を用いた場合も、従来例の反射防止膜を用いた場合に比べて、Rの輝度がかなり低下しているものの、実施例の場合に比較して低下度合いは小さくなっている。また、実施例の反射防止膜を用いた場合は、従来例の反射防止膜を用いた場合に比べて、GおよびBの輝度が若干低下しているものの、おおむね60%〜100%の範囲内におさまっている。このため、実施例の反射防止膜を用いた場合は、ゴースト部のカラーバランスの悪化を抑えたうえで、Rの輝度の低下によってゴーストを低下させることができる。また、
図20の(A)〜(C)を対比すると分かるように、Rの輝度の低下率は、標準撮影や望遠撮影に比べて、広角撮影のときが最も大きくなっている。このことから、実施例の反射防止膜を用いた場合、特に広角の撮影で顕著な効果を奏することができる。
実際の本発明者が実験した結果でも、入射角40度〜70度の範囲で発生していたゴースト(赤色が主体)が、実施例の反射防止膜を形成した後は、目視による評価でゴーストがほとんど目立たないレベルまで改善されていた。
【0103】
一方、比較例の反射防止膜を用いた場合は、従来例の反射防止膜を用いた場合に比べて、Bの輝度が各入射角で130%以上、最大でみると200%以上に増加している。このため、比較例の反射防止膜を用いた場合は、Rの輝度の低下によってゴーストの発生を抑えられても、Bの過剰な輝度の増加によってゴースト部の青色の輝度が強くなり、画質が著しく低下してしまうと考えられる。また、比較例の反射防止膜を用いた場合は、
図21の(B)および(C)で示されるように、標準撮像では入射角42度、43度でGの輝度が過剰に高くなっており、望遠撮影では入射角54度、55度でGの輝度が過剰に高くなっている。この点も画質低下の一因になると考えられる。
【0104】
(斜入射の光線に対する分光反射率特性)
上記実施の形態においては、反射防止膜の光学特性として、入射角が0度のときの分光反射率特性を
図1に示したが、参考までに、入射角が0度を超える場合の分光反射率特性を以下に示しておく。
【0105】
図22は入射角が20度と30度のときの膜厚分布を考慮した分光反射率特性を示す図である。
【0106】
図23は入射角が40度と50度のときの膜厚分布を考慮した分光反射率特性を示す図である。
【0107】
図24は入射角が60度と70度のときの膜厚分布を考慮した分光反射率特性を示す図である。
【0108】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0109】
たとえば、反射防止膜の各層を構成する構成材料、屈折率、膜厚等のパラメータや、反射防止膜が形成されるレンズ等の基材を適宜変更してもよい。
【0110】
また、本発明は、上述した反射防止膜12や光学素子10として具現化するだけでなく、上記の反射防止膜12を有する光学素子10を備え、この光学素子10に入射する光を結像させる結像光学系として具現化したり、この結像光学系によって結像された光を受光する撮像素子を備える撮像光学系として具現化したりしてもよい。その場合、結像光学系の一例としては、カメラ用のレンズユニットなどが考えられる。また、撮像光学系の一例として、写真用カメラなどが考えられる。
また、本発明を適用してもゴーストが残る(気になる)場合には、画像処理やカラーフィルターを併用して、さらなるゴーストの低減を図ってもよい。つまり、本発明は、画像処理やカラーフィルターによってゴーストを低減する技術の適用を除外するものではない。
【0111】
(付記)
以下、本発明の好ましい他の形態を付記する。
[付記1]
光学部材の光学面に形成され、前記光学面に入射した光線の反射を防止する反射防止膜であって、
黄色〜赤色の波長領域における反射率を低減させるとともに、黄色〜赤色の波長領域と青色〜緑色の波長領域のゴーストの輝度相違を小さくするように、青色〜緑色の波長領域における反射率を増加させた
ことを特徴とする反射防止膜。
[付記2]
前記光学面に光線が入射角0度で入射したときの分光反射率特性として、反射率が所定値以下の波長範囲を黄色〜赤色の波長領域よりも長波長側にシフトさせることにより、前記黄色〜赤色の波長域における反射率を低減させた
ことを特徴とする付記1に記載の反射防止膜。
[付記3]
前記光学面に光線が入射角0度で入射したときの分光反射率特性として、黄色の波長領域よりも短波長側の反射率R1と、黄色の波長領域よりも長波長側の反射率R2とが、R1≧R2の関係を満たすように、青色〜緑色の波長域における反射率を増加させた
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の反射防止膜。
[付記4]
光学面を有する光学部材と、前記光学面に形成された反射防止膜とを備える光学素子であって、
前記反射防止膜は、
黄色〜赤色の波長領域における反射率を低減させるとともに、黄色〜赤色の波長領域と青色〜緑色の波長領域のゴーストの輝度相違を小さくするように、青色〜緑色の波長領域における反射率を増加させたものである
ことを特徴とする光学素子。
[付記5]
前記光学部材は、非球面形状の凹面を有する凹メニスカスレンズであり、
前記反射防止膜は、前記凹メニスカスレンズの凹面に形成されている
ことを特徴とする付記4に記載の光学素子。
[付記6]
光学部材の光学面に形成され、前記光学面に入射した光線の反射を防止する反射防止膜の設計方法であって、
赤色の波長領域における反射率を低減させるとともに、赤色の波長領域と青色の波長領域のゴーストの輝度相違を小さくするように、青色の波長領域における反射率を増加させた分光反射率特性とする
ことを特徴とする反射防止膜の設計方法。
[付記7]
光学部材の光学面に形成され、前記光学面に入射した光線の反射を防止する反射防止膜の製造方法であって、
赤色の波長領域における反射率を低減させるとともに、赤色の波長領域と青色の波長領域のゴーストの輝度相違を小さくするように、青色の波長領域における反射率を増加させた分光反射率特性となるように成膜する
ことを特徴とする反射防止膜の製造方法。
[付記8]
光学面を有する光学部材と、前記光学面に形成された反射防止膜とを備える光学素子を用いた結像光学系であって、
前記反射防止膜は、
赤色の波長領域における反射率を低減させるとともに、赤色の波長領域と青色の波長領域のゴーストの輝度相違を小さくするように、青色の波長領域における反射率を増加させたものである
ことを特徴とする結像光学系。
[付記9]
付記8に記載の結像光学系と、
前記結像光学系によって結像された光を受光する撮像素子と
を備えることを特徴とする撮像光学系。