特許第5662984号(P5662984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662984
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】樽詰め果実酒製品及びこれに関する方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 1/00 20060101AFI20150115BHJP
   C12G 3/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   C12G1/00
   C12G3/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-235694(P2012-235694)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-39529(P2014-39529A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2012年11月26日
【審判番号】不服2013-12042(P2013-12042/J1)
【審判請求日】2013年6月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-165518(P2012-165518)
(32)【優先日】2012年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年2月9日 株式会社ピューターズ本社での見本サンプル及び説明資料の提供 平成24年2月24日 BARESPANOL LA BODEGAでの見本サンプル及び説明資料の提供 平成24年1月27日 株式会社サッポロライオン本社での見本サンプル及び説明資料の提供 平成24年1月27日 株式会社トラベルカフェ本社での見本サンプル及び説明資料の提供 平成24年2月2日 ピッツァ専門店 ドリーム★ファクトリーでの見本サンプル及び説明資料の提供 平成24年2月23日 ビアホール だん家 田町グランパーク店での見本サンプル及び説明資料の提供 平成24年2月3日 株式会社ヒューマンウェブ本社での見本サンプル及び説明資料の提供 平成24年2月29日 恵比寿17番への製品の納入 平成24年2月28日 BARESPANOL LA BODEGAへの製品の納入 平成24年2月28日 銀座ライオン アトレ恵比寿店への製品の納入 平成24年2月28日 銀座ライオン 銀座松坂屋別館店への製品の納入 平成24年2月28日 銀座ライオン青山一丁目店への製品の納入 平成24年2月28日 銀座ライオン 八重洲地下街店への製品の納入 平成24年2月28日 トラベルカフェ 有楽町店への製品の納入 平成24年2月28日 ピッツァ専門店 ドリーム★ファクトリーへの製品の納入 平成24年2月28日 ビアホール だん家 田町グランパーク店への製品の納入 平成24年2月28日 ガンボ&オイスター 東京駅八重洲地下街店への製品の納入
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】河村 篤毅
【合議体】
【審判長】 千壽 哲郎
【審判官】 紀本 孝
【審判官】 山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−113069(JP,A)
【文献】 特開2010−158207(JP,A)
【文献】 特開2009−213393(JP,A)
【文献】 特表2005−512588(JP,A)
【文献】 特開2010−279349(JP,A)
【文献】 特開2003−112796(JP,A)
【文献】 特開2003−231592(JP,A)
【文献】 特開2000−85895(JP,A)
【文献】 サッポロ生ビール 樽生ビール技術マニュアル、2004年2月、p.10−13
【文献】 「KIRIN News Release」、[online]、2010年1月13日掲載、[平成26年7月8日検索]、インターネット<URL:http://www.kirin.co.jp/company/news/2010/10005.html>
【文献】 「SO32−イオンを含む硫酸塩溶液中における軟鋼及びステンレス鋼の腐食挙動」、第28回腐食防食討論会予稿集、1981年、p.1−3
【文献】 本村 幹、「醸造タンクとステンレス鋼」、JSSC、社団法人日本鋼構造協会、2011年、No.4、p.15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
B65D
B67C,D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積が5〜30LであるSUS304又はSUS304L製の内面を有する樽と、
前記樽に充填された、亜硫酸が添加されていない発泡性果実酒と
を含み、
前記樽は、前記樽以外の容器を使用してアルコール発酵を行うことにより予め製造された前記発泡性果実酒が充填されるものであり、前記樽に充填された前記発泡性果実酒を飲用容器に注ぐためのサーバーが取り付けられる注出口部を有し、
前記樽内の20℃における炭酸ガス圧は、1.5〜5.0kg/cmの範囲内である
ことを特徴とする樽詰め果実酒製品。
【請求項2】
前記樽の前記内面は、不働態被膜を形成する処理が施されていない
ことを特徴とする請求項1に記載の樽詰め果実酒製品。
【請求項3】
容積が5〜30LであるSUS304又はSUS304L製の内面を有する樽に、亜硫酸が添加されていない発泡性果実酒を充填することを含み、
前記樽は、前記樽以外の容器を使用してアルコール発酵を行うことにより予め製造された前記発泡性果実酒が充填されるものであり、前記樽に充填された前記発泡性果実酒を飲用容器に注ぐためのサーバーが取り付けられる注出口部を有し、
前記樽に、前記樽内の20℃における炭酸ガス圧が1.5〜5.0kg/cmの範囲内となるように、前記発泡性果実酒を充填する
ことを特徴とする樽詰め果実酒製品の製造方法。
【請求項4】
前記樽の前記内面は、不働態被膜を形成する処理が施されていない
ことを特徴とする請求項3に記載の樽詰め果実酒製品の製造方法。
【請求項5】
亜硫酸が添加されていない発泡性果実酒が充填され、サーバーが取り付けられた容積が5〜30LであるSUS304又はSUS304L製の内面を有する樽を準備することと、
前記樽から、前記サーバーを介して、前記発泡性果実酒を飲用容器に注出することと
を含む方法であって、
前記樽は、前記樽以外の容器を使用してアルコール発酵を行うことにより予め製造された前記発泡性果実酒が充填されるものであり、前記樽に充填された前記発泡性果実酒を前記飲用容器に注ぐための前記サーバーが取り付けられる注出口部を有し、
前記樽内の20℃における炭酸ガス圧は、1.5〜5.0kg/cmの範囲内である
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記樽の前記内面は、不働態被膜を形成する処理が施されていない
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樽詰め果実酒製品及びこれに関する方法に関し、特に、果実酒が充填されるステンレス製樽の腐食防止に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、内面に耐食コーティングが施されたツーピースアルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法が記載されている。また、ワインには、酸化防止剤として亜硫酸を添加することが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−503971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、亜硫酸が添加されたワインをステンレス製の樽に充填すると、当該樽が腐食することがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、ステンレス製樽の腐食が効果的に抑制された樽詰め果実酒製品及びこれに関する方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る樽詰め果実酒製品は、ステンレス製の樽と、前記樽に充填された、亜硫酸が添加されていない果実酒とを含むことを特徴とする。本発明によれば、ステンレス製樽の腐食が効果的に抑制された樽詰め果実酒製品を提供することができる。
【0007】
また、前記樽詰め果実酒製品において、前記果実酒は、発泡性果実酒であることとしてもよい。この場合、前記樽内の20℃における炭酸ガス圧は、1.5〜5.0kg/cmの範囲内であることとしてもよい。また、前記樽の容積は、5〜50Lであることとしてもよい。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る樽詰め果実酒製品の製造方法は、ステンレス製の樽に、亜硫酸が添加されていない果実酒を充填することを含むことを特徴とする。本発明によれば、ステンレス製樽の腐食が効果的に抑制された樽詰め果実酒製品の製造方法を提供することができる。
【0009】
また、前記樽詰め製品の製造方法において、前記果実酒は、発泡性果実酒であることとしてもよい。この場合、前記樽に、前記樽内の20℃における炭酸ガス圧が1.5〜5.0kg/cmの範囲内となるように、前記果実酒を充填することとしてもよい。また、前記樽の容積は、5〜50Lであることとしてもよい。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、ステンレス製の樽に、亜硫酸が添加されていない果実酒を充填することにより、亜硫酸が添加された果実酒を充填する場合に比べて、前記樽の腐食を抑制することを特徴とする。本発明によれば、果実酒が充填されたステンレス製樽の腐食を効果的に抑制する方法を提供することができる。
【0011】
また、前記方法において、前記果実酒は、発泡性果実酒であることとしてもよい。この場合、前記樽に、前記樽内の20℃における炭酸ガス圧が1.5〜5.0kg/cmの範囲内となるように、亜硫酸が添加されていない前記発泡性果実酒を充填することにより、前記樽の腐食を抑制するとともに、前記炭酸ガス圧が前記範囲外である場合に比べて、前記発泡性果実酒の香味劣化を抑制することとしてもよい。また、前記樽の容積は、5〜50Lであることとしてもよい。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、亜硫酸が添加されていない果実酒が充填され、注出器具が取り付けられたステンレス製の樽を準備することと、前記樽から、前記注出器具を介して、前記果実酒を飲用容器に注出することとを含むことを特徴とする。本発明によれば、ステンレス製樽の腐食を効果的に抑制しつつ当該樽から果実酒を供給する方法を提供することができる。
【0013】
また、前記方法において、前記果実酒は、発泡性果実酒であることとしてもよい。この場合、前記樽内の20℃における炭酸ガス圧は、1.5〜5.0kg/cmの範囲内であることとしてもよい。また、前記樽の容積は、5〜50Lであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ステンレス製樽の腐食が効果的に抑制された樽詰め果実酒製品及びこれに関する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る実施例1において、果実酒の官能検査を行った結果の一例を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る実施例2において、果実酒の官能検査を行った結果の一例を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る実施例3において、果実酒が充填された樽からの鉄の溶出を評価した結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0017】
本実施形態に係る樽詰め果実酒製品(以下、「本製品」という。)は、ステンレス製の樽と、当該樽に充填された、亜硫酸が添加されていない果実酒とを含む。
【0018】
本製品に含まれる樽は、果実酒を充填できる樽であって、ステンレス製のものであれば、特に限られない。樽は、例えば、果実酒の輸送用の容器である。すなわち、この場合、樽は、予め製造された果実酒(例えば、当該樽以外の容器を使用して予め製造された果実酒)を出荷する際等、当該果実酒を輸送する際に当該果実酒を充填する樽である。
【0019】
また、樽は、当該樽に充填された果実酒を飲用容器(ワイングラス、シャンパングラス等)に注ぐための注出器具(いわゆるサーバー、ディスペンサー等)が取り付けられる注出口部を有していることとしてもよい。また、樽には、注出器具が取り付けられていることとしてもよい。
【0020】
樽を構成するステンレスは、特に限られないが、例えば、当該樽が、亜硫酸に対する耐腐食性が比較的低いステンレス(すなわち、亜硫酸により腐食され得るステンレス)製である場合には、当該樽の腐食を防止するという本発明の効果が顕著なものとなる。
【0021】
この場合、樽は、例えば、Moの含有量が2.00%未満のステンレス製であることとしてもよく、Moを実質的に含まないステンレス(例えば、Moの含有量が0.6%以下のステンレス)製であることとしてもよい。
【0022】
また、樽は、例えば、Niの含有量が10.00%未満のステンレス製であることとしてもよく、Niの含有量が10.00%未満であってMoの含有量が2.00%未満のステンレス製であることとしてもよく、Niの含有量が10.00%未満であってMoを実質的に含まないステンレス(例えば、Moの含有量が0.6%以下のステンレス)製であることとしてもよい。
【0023】
具体的に、樽を構成するステンレスは、例えば、SUS304又はSUS304Lであることとしてもよい。SUS304は、Crを18.00〜20.00%、Niを8.00〜10.50%含み、Moを実質的に含まず、亜硫酸との接触によって腐食され得る。SUS304Lは、Crを18.00〜20.00%、Niを9.00〜13.00%含み、Moを実質的に含まず、亜硫酸との接触によって腐食され得る。
【0024】
なお、例えば、Crを16.00〜18.00%、Niを12.00〜15.00%、さらにMoを2〜3%含むSUS316Lや、Crを16.00〜18.00%、Niを10.00〜14.00%、さらにMoを2〜3%含むSUS316は、耐腐食性が比較的高い。
【0025】
樽の容積は、特に限られないが、例えば、5〜50Lであるであることとしてもよく、5〜30Lであることとしてもよい。なお、一般に、果実酒の発酵に使用されるタンク(発酵用タンク)の容積は25000〜150000Lであり、発酵後の果実酒と他の成分とのブレンドに使用されるタンク(ブレンド用タンク)の容積は200〜5000Lである。また、一般に、発酵用タンク及びブレンド用タンクは、SUS316L等の耐腐食性が比較的高いステンレス製である。
【0026】
本製品に含まれる果実酒は、原料として果実を使用して製造されるアルコール飲料であれば特に限られない。果実は、アルコール飲料の製造に使用されるものであれば特に限られず、例えば、ブドウ、リンゴ、モモ、ナシ、オレンジ、グレープフルーツ、レモン及びベリー(例えば、ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、グーズベリー、ブラックベリー及びクランベリーからなる群より選択される1種以上)からなる群より選択される1種以上を使用することとしてもよい。果実酒は、このような果実から採取された果汁を使用して製造される。
【0027】
果実酒は、原料として果実を使用し、アルコール発酵を行って製造されることとしてもよい。この場合、例えば、果実から採取された果汁を含む発酵前液を調製し、当該発酵前液に酵母(例えば、ワイン酵母)を添加してアルコール発酵を行うことにより、果実酒を製造する。また、果実酒は、アルコール発酵過程の途中及び/又はアルコール発酵過程終了後等のタイミングで、蒸留酒(ブランデー等)及び/又は糖類等の成分を添加して製造されることとしてもよい。
【0028】
果実酒のアルコール含有量は特に限られないが、当該果実酒は、例えば、5〜20体積%のエタノールを含有することとしてもよい。具体的に、果実酒は、例えば、ワイン又はシードルであることとしてもよい。果実酒がワインである場合、当該ワインは、例えば、フルーツワインであることとしてもよい。果実酒の色は特に限られないが、例えば、当該果実酒がワインである場合、当該果実酒は、赤ワイン、白ワイン又はロゼワインであることとしてもよい。
【0029】
また、果実酒は、発泡性果実酒であることとしてもよい。発泡性果実酒は、炭酸を含有し、発泡性を有する果実酒である。具体的に、発泡性果実酒は、例えば、スパークリングワイン等の発泡性ワイン又は発泡性シードルであることとしてもよい。果実酒が発泡性ワインである場合、当該発泡性ワインは、例えば、発泡性フルーツワインであることとしてもよい。発泡性果実酒の色は特に限られないが、例えば、当該果実酒がスパークリングワインである場合、当該果実酒は、スパークリング赤ワイン、スパークリング白ワイン又はスパークリングロゼワインであることとしてもよい。
【0030】
なお、果実酒は、発泡性果実酒であるものに限られず、発泡性を有しない非発泡性果実酒であることとしてもよい。すなわち、例えば、果実酒がワインである場合、当該果実酒は、スパークリングワインであることとしてもよいし、非発泡性のワインであることとしてもよい。
【0031】
そして、本製品に特徴的な点の一つは、果実酒に亜硫酸が添加されていないことである。すなわち、例えば、一般に、ワイン等の果実酒には、その製造過程において、酸化防止剤として亜硫酸が添加される。この亜硫酸の外的な添加は、亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、ピロ亜硫酸カリウム及びピロ亜硫酸ナトリウムからなる群より選択される1種以上)の添加により行われる。
【0032】
これに対し、本製品に含まれる果実酒には、その製造過程において、亜硫酸が添加されていない。なお、酵母を使用したアルコール発酵を行って果実酒を製造する場合、当該果実酒は、当該酵母により生成された微量の亜硫酸を含み得る。
【0033】
ただし、このような酵母により生成された亜硫酸は、外的に添加されたものではなく、その濃度は、酸化防止剤として外的に添加される亜硫酸の濃度に比べて顕著に小さい。すなわち、例えば、一般に、ワインに酸化防止剤として亜硫酸を添加する場合、当該果実酒の亜硫酸含有量は、50〜350ppmとなる。
【0034】
これに対し、本製品に含まれる、亜硫酸が添加されていない果実酒の亜硫酸含有量は、例えば、20ppm未満である。なお、果実酒の亜硫酸含有量は、例えば、日本国の国税庁所定分析法(所定法)である通気蒸留・滴定法(ランキン法)により測定される。
【0035】
本製品においては、ステンレス製の樽に、亜硫酸が添加されていない果実酒を充填しているため、当該樽の腐食が効果的に防止される。すなわち、ステンレス製の樽に、亜硫酸が添加された果実酒を充填する場合、例えば、当該樽のステンレス製の内面は、当該亜硫酸と接触することによって腐食され得る。これに対し、本製品においては、ステンレス製の樽に、亜硫酸が添加されていない果実酒を充填しているため、当該樽のステンレス製の内面の腐食は、効果的に防止される。また、本製品において、果実酒が発泡性果実酒である場合には、酸化による当該果実酒の香味劣化を効果的に防止することができる。
【0036】
さらに、本製品が発泡性果実酒を含む場合、樽内の20℃における炭酸ガス圧は、1.5〜5.0kg/cmの範囲内であることとしてもよく、1.5〜3.5kg/cmの範囲内であることとしてもよく、1.5〜3.0kg/cmの範囲内であることとしてもよい。樽内の炭酸ガス圧が上記範囲内であることにより、酸化による果実酒の香味劣化を効果的に防止するとともに、当該果実酒の香味を効果的に向上させることもできる。
【0037】
本実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)は、例えば、樽詰め果実酒製品(本製品)の製造方法であって、ステンレス製の樽に、亜硫酸が添加されていない果実酒を充填することを含む方法である。
【0038】
この場合、本方法においては、例えば、亜硫酸を添加することなく予め製造された果実酒を、ステンレス製の樽に充填する。この果実酒は、例えば、樽以外の容器を使用して、亜硫酸を添加することなく予め製造された果実酒であることとしてもよい。
【0039】
また、果実酒は、例えば、アルコール発酵を行うことにより予め製造された果実酒であることとしてもよい。この場合、果実酒は、例えば、樽以外の容器を使用して、亜硫酸を添加することなく、アルコール発酵を行うことにより予め製造された果実酒であることとしてもよい。
【0040】
本方法においては、予め製造された果実酒を出荷する際等、当該果実酒を輸送する際に、当該果実酒をステンレス製の樽に充填することとしてもよい。この場合、樽は、上述したように、注出器具が取り付けられる注出口部を有していることとしてもよい。また、樽には、注出器具が取り付けられていることとしてもよい。
【0041】
本方法において、果実酒は、発泡性果実酒であることとしてもよい。この場合、本方法においては、樽に、当該樽内の20℃における炭酸ガス圧が1.5〜5.0kg/cmの範囲内となるように、果実酒を充填することとしてもよい。
【0042】
また、果実酒は、樽内の20℃における炭酸ガス圧が、1.5〜3.5kg/cmの範囲内となるように充填されることとしてもよく、1.5〜3.0kg/cmの範囲内となるように充填されることとしてもよい。なお、樽内の炭酸ガス圧を調節する方法は特に限られず、例えば、公知の方法を採用することとしてもよい。
【0043】
また、本方法は、上述したような果実酒の製造工程を含むこととしてもよい。すなわち、この場合、本方法は、例えば、果実から採取された果汁を含む発酵前液を調製し、当該発酵前液に酵母(例えば、ワイン酵母)を添加してアルコール発酵を行って、亜硫酸を添加することなく果実酒を製造する工程をさらに含み、当該工程により製造された当該果実酒を、ステンレス製の樽に充填することとしてもよい。
【0044】
本方法は、例えば、ステンレス製の樽に、亜硫酸が添加されていない果実酒を充填することにより、亜硫酸が添加された果実酒を充填する場合に比べて、当該樽の腐食を抑制する方法であることとしてもよい。
【0045】
すなわち、本方法においては、ステンレス製の樽に充填される果実酒として、亜硫酸が添加されていない果実酒を採用することにより、当該果実酒に亜硫酸が添加されている場合に比べて、当該樽の腐食を効果的に抑制することができる。
【0046】
また、本方法において、果実酒は、発泡性果実酒であることとしてもよい。この場合、ステンレス製の樽に、当該樽内の20℃における炭酸ガス圧が1.5〜5.0kg/cmの範囲内となるように、亜硫酸が添加されていない発泡性果実酒を充填することにより、当該樽の腐食を抑制するとともに、当該炭酸ガス圧が当該範囲外である場合に比べて、当該発泡性果実酒の香味劣化を抑制する方法であることとしてもよい。
【0047】
なお、発泡性果実酒は、樽内の20℃における炭酸ガス圧が、1.5〜3.5kg/cmの範囲内となるように充填されることとしてもよく、1.5〜3.0kg/cmの範囲内となるように充填されることとしてもよい。
【0048】
ステンレス製の樽に充填される果実酒として、亜硫酸が添加されていない発泡性果実酒を採用し、且つ当該樽内の炭酸ガス圧が上記範囲内となるように当該発泡性果実酒を当該樽内に充填することにより、当該樽の腐食を効果的に抑制するのみならず、当該樽内における酸化による当該発泡性果実酒の香味劣化を効果的に抑制し、且つ当該発泡性果実酒の香味を効果的に向上させることもできる。
【0049】
本方法は、例えば、亜硫酸が添加されていない果実酒が充填され、注出器具が取り付けられたステンレス製の樽を準備することと、当該樽から、当該注出器具を介して当該果実酒を飲用容器に注出することとを含む方法であることとしてもよい。
【0050】
すなわち、本方法においては、果実酒を注ぐための注出器具が取り付けられた本製品を準備し、当該本製品から当該果実酒を当該注出器具を介して飲用容器に注出することにより、当該樽の腐食を効果的に抑制しつつ、当該果実酒を需要者に供給することができる。
【0051】
また、本方法において、果実酒は、発泡性果実酒であることとしてもよい。この場合、樽内の20℃における炭酸ガス圧は、1.5〜5.0kg/cmの範囲内であることとしてもよい。なお、樽内の炭酸ガス圧は、1.5〜3.5kg/cmの範囲内であることとしてもよく、1.5〜3.0kg/cmの範囲内であることとしてもよい。
【0052】
本製品に含まれる樽内の炭酸ガス圧が上記範囲内であることによって、当該樽の腐食を効果的に抑制するのみならず、当該樽内における酸化による香味劣化が効果的に抑制され、且つ香味が効果的に向上した発泡性果実酒を需要者に供給することができる。
【0053】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0054】
[果実酒の製造]
果実酒として、亜硫酸が添加されていないスパークリング白ワインを製造した。すなわち、白ブドウの果汁を含有し、糖度が5w/v%であり、酸度が0.6w/v%である白ワイン用の果汁原料を準備した。次いで、発酵用タンクにおいて、果汁原料にワイン酵母(サッカロミセス・セレヴィシエ)を添加し、アルコール発酵を行った。そして、アルコール発酵後の粗ワインにろ過処理を施して、清澄な白ワインを得た。
【0055】
さらに、ブレンド用タンクにおいて、白ワインに他の成分(液糖等)を添加するとともに、当該白ワインに炭酸ガスを溶解させるガス付けを行い、スパークリング白ワインを得た。
【0056】
こうして製造されたスパークリング白ワイン250mLを、250mL用のガラス製の瓶(250mLの白ワインを充填した後の空寸体積は約10mL)に、当該瓶内の20℃における炭酸ガス圧が所定値(0.0kg/cm、0.5kg/cm、1.0kg/cm、1.5kg/cm、2.0kg/cm、2.5kg/cm、3.0kg/cm又は3.5kg/cm)となるように充填し、密封することにより、瓶詰めスパークリング白ワイン製品を製造した。
【0057】
[官能検査]
上述のようにして製造された瓶詰めスパークリング白ワイン製品を開封し、当該瓶からスパークリング白ワインをグラスに注ぎ、熟練したパネリスト4名による官能検査を行った。官能検査においては、スパークリング白ワインの「爽快な飲み口(フレッシュな果実香を含む)」(評価I)及び「切れの良い後味」(評価II)という2点を評価した。
【0058】
評価においては、各パネリストが各製品に対して1、2、3、4又は5点を付与し、各製品について、4名により付与された点数の算術平均値(平均点数)を算出した。なお、評価が高いほど、高い点数が付与された。
【0059】
[結果]
図1には、官能検査における評価結果を示す。図1に示すように、炭酸ガス圧が高くなるにつれて、官能検査で付与された平均点数も増加する高くなる傾向が示された。特に、炭酸ガス圧が1.5kg/cm以上の場合には、平均点数が3を超え、高い評価が得られた。
【実施例2】
【0060】
[果実酒の製造]
果実酒として、亜硫酸が添加されていないスパークリング赤ワインを製造した。すなわち、赤ブドウの果汁を含有し、糖度が5w/v%であり、酸度が0.6w/v%である赤ワイン用の果汁原料を準備した。次いで、発酵用タンクにおいて、果汁原料にワイン酵母(サッカロミセス・セレヴィシエ)を添加し、アルコール発酵を行った。そして、アルコール発酵後の粗ワインにろ過処理を施して、清澄な赤ワインを得た。
【0061】
さらに、ブレンド用タンクにおいて、赤ワインに他の成分(液糖等)を添加するとともに、当該赤ワインに炭酸ガスを溶解させるガス付けを行い、瓶詰めスパークリング赤ワインを得た。
【0062】
こうして製造されたスパークリング赤ワイン250mLを、250mL用のガラス製の瓶(250mLの白ワインを充填した後の空寸体積は約10mL)に、当該瓶内の20℃における炭酸ガス圧が所定値(0.0kg/cm、0.5kg/cm、1.0kg/cm、1.5kg/cm、2.0kg/cm、2.5kg/cm又は3.0kg/cm)となるように充填し、密封することにより、スパークリング赤ワイン製品を製造した。
【0063】
[官能検査]
上述のようにして製造された瓶詰めスパークリング赤ワイン製品を開封し、当該瓶からスパークリング赤ワインをグラスに注ぎ、熟練したパネリスト4名による官能検査を行った。官能検査においては、スパークリング赤ワインの「爽快な飲み口(フレッシュな果実香を含む)」(評価I)及び「切れの良い後味」(評価II)という2点を評価した。評価においては、各パネリストが各製品に対して1、2、3、4又は5点を付与し、各製品について、4名により付与された点数の算術平均値(平均点数)を算出した。
【0064】
[結果]
図2には、官能検査における評価結果を示す。図2に示すように、炭酸ガス圧が高くなるにつれて、官能検査で付与された平均点数も増加する高くなる傾向が示された。特に、炭酸ガス圧が1.5kg/cm以上の場合には、平均点数が3以上となり、高い評価が得られた。
【実施例3】
【0065】
[果実酒の製造]
上述の実施例1と同様に、果実酒として、亜硫酸が添加されていないスパークリング白ワインを製造した。
【0066】
[果実酒の樽への充填]
ステンレス製の樽として、未使用の樽と、既に一度、スパークリング白ワインが充填され、その後、洗浄された使用済みの樽とを使用した。これらの樽は、ビールにも使用される、10L用のステンレスSUS304製の樽であった。
【0067】
そして、各樽に、上述のようにして製造したスパークリング白ワイン10Lを、当該樽内の20℃における炭酸ガス圧が2.7kg/cmとなるように充填した。10Lのスパークリング白ワインが充填された樽の空寸部の体積は約70mLであった。
【0068】
[鉄溶出の評価]
上述のようにスパークリング白ワインが充填された樽を27℃で4週間保存した。この間、スパークリング白ワインの樽への充填の直後、当該充填から2週間が経過した時点、及び当該充填から4週間が経過した時点において、当該樽内のスパークリング白ワインに含まれる鉄の濃度を測定した。
【0069】
具体的に、まず、樽から採取したスパークリング白ワインからなる試料20mLに硝酸5mLを添加し、内部標準としてイットリウムを5mg/Lとなるように添加した。次いで、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICPE−9000、株式会社島津製作所製)を使用して、試料中の鉄の濃度を測定した(鉄測定波長:238.204nm)。なお、検量線は、使用済みの樽に充填した直後に採取した試料に、0.0mg/L、0.1mg/L、1.0mg/L又は10.0mg/Lとなるように鉄標準溶液を添加して調製した標準試料を使用して作成した。
【0070】
[結果]
図3には、各保存時間において樽から採取されたスパークリング白ワイン中の鉄濃度(mg/L)を測定した結果を示す。図3に示すように、未使用の樽及び使用済みの樽のいずれを使用した場合も、保存期間を通じて当該樽内のスパークリング白ワイン中の鉄濃度は実質的に変化しなかった。
【0071】
すなわち、亜硫酸が添加されていないスパークリング白ワインをステンレス製の樽に充填して保存した場合、当該当該スパークリング白ワインと接触している樽のステンレス製の内面からの鉄の溶出(当該内面の腐食)は実質的に起こらないことが確認された。
図1
図2
図3