(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662986
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】粉末皮膚洗浄料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20150115BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20150115BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20150115BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20150115BHJP
C11D 1/10 20060101ALI20150115BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20150115BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/73
A61K8/02
A61Q19/10
C11D1/10
C11D3/37
C11D17/06
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-239479(P2012-239479)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-88347(P2014-88347A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2014年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(72)【発明者】
【氏名】中武 良一
【審査官】
川島 明子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−077184(JP,A)
【文献】
特開2005−232049(JP,A)
【文献】
特開2005−232271(JP,A)
【文献】
特開2005−200413(JP,A)
【文献】
特開平08−134104(JP,A)
【文献】
特開2003−238337(JP,A)
【文献】
特開2010−196042(JP,A)
【文献】
特表2006−508911(JP,A)
【文献】
特開平06−048920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C11D 1/00−19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アシルグルタミン酸塩とポリデキストロースを含有することを特徴とする粉末または顆粒状の皮膚洗浄料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状または顆粒状の皮膚洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末皮膚洗浄料は、洗浄剤とビルダーとなる無機粉体や有機粉体を混合粉砕して調製され、また、顆粒状皮膚洗浄料とする場合には混合粉砕ののち至適条件で造粒して調製された。粉末状または顆粒状皮膚洗浄料は液状やジェル状に比べ、水分がない為、防腐剤や殺菌剤無配合のより安全性の高い製品の提供が可能であった。ところが、粉末状または顆粒状皮膚洗浄料は、手の平やスポンジなどで水に溶かす際に均一に溶けず、「ダマ」または「継粉(ままこ)」と呼ばれる塊ができる欠点があった。また、起泡性も液状やジェル状に比べると劣る欠点があった。特にN−アシルグルタミン酸塩は弱酸性であり、皮膚への刺激が少ないことから、安全性の高い洗浄成分として多用されるが、水に溶解しにくく、粉末洗浄料としたときに起泡性に劣ることが欠点であった。本出願人は、処方中にカチオン化デキストランを配合することにより、安全性の高い、使用時の溶解性を向上させ、起泡性にも優れ、更には手のひらなどでの泡立ての際、ザラツキを生じず使用性を高めた皮膚洗浄料を提案した(特許文献2:特開2002−338994号公報)。さらに、N−アシルグルタミン酸塩または高級脂肪酸塩と、ポリアミノ酸と、中性アミノ酸を配合した泡立ちに優れた洗浄料組成物を提案した(特許文献3:特開2009−196971号公報)。しかしながら、さらなる性能の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−338994号公報
【特許文献2】特開2009−196971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、N−アシルグルタミン酸塩を配合した粉末状または顆粒状の皮膚洗浄料において、泡質及び起泡性に優れた洗浄料組成物を開発し、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、N−アシルグルタミン酸塩と、環状構造保有分岐状グルカン、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、ポリデキストロースからなる群から選ばれる一種以上を組み合わせることにより、優れた泡質と起泡性を実現する粉末状または顆粒状の皮膚洗浄料である。
本発明の構成は、次のとおりである。
N−アシルグルタミン酸塩と環状構造保有分岐状グルカン、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、ポリデキストロースからなる群から選ばれる一種以上を含有することを特徴とする粉末または顆粒状の皮膚洗浄料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の組成により泡質及び起泡性に優れた粉末状または顆粒状の皮膚洗浄料を開発し、提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に用いるN−アシルグルタミン酸塩としては、N−ラウロイルグルタミン酸塩、N−ミリストイルグルタミン酸塩、N−パルミトイルグルタミン酸塩、N−ステアロイルグルタミン酸塩、N−オレオイルグルタミン酸塩等が挙げられる。また、それらの混合物としてN−(ヤシ脂肪酸/パーム脂肪酸/ヒマワリ脂肪酸)アシルグルタミン酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸塩、N−パーム油脂肪酸アシルグルタミン酸塩、N−水素添加牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸塩等が挙げられる。また、塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
【0008】
本発明に用いられる環状構造保有分岐状グルカンは、分岐状グルカン構造の一部が環を形成している化合物であり、特開2012−120471号公報に記載された製法により製造することができる。具体的には、分岐状グルカンにブランチングエンザイムを作用させ、次いで4−α−グルカノトランスフェラーゼを作用させるか、分岐状グルカンに4−α−グルカノトランスフェラーゼを作用させ、次いでブランチングエンザイムを作用させるか、または、分岐状グルカンにブランチングエンザイム及び4−α−グルカノトランスフェラーゼを同時に作用させることにより、環状構造保有分岐状グルカンを製造することができる。
本発明に用いられる環状構造保有分岐状グルカンとして市販品を用いることが可能であり、例えば、日本食品化工(株)製「クラスターデキストリン」が挙げられる。
【0009】
本発明に用いられるヒドロキシアルキルデンプンリン酸は、ヒドロキシアルキルデンプンがリン酸架橋されたものである。ヒドロキシアルキルデンプンはデンプンとアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドを反応させて得られる。
ヒドロキシアルキルデンプンリン酸は市販品を用いることができ、例えばアクゾノーベル(株)製ヒドロキシプロピルデンプンリン酸「STRUCTURE XL」が挙げられる。
【0010】
本発明に用いられるポリデキストロースは、難消化性の水溶性食物繊維であり、グルコース、ソルビトール、クエン酸を反応させて得られる。
ポリデキストロースとして市販品を用いることができ、例えば、ダニスコジャパン(株)製「ライテスウルトラ」が挙げられる。
【0011】
その他配合成分
本発明の皮膚洗浄料には界面活性剤として、N−アシルグルタミン酸塩以外のアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤を配合することができる。
アニオン界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、N−アシルアラニン塩、N−アシルメチルタウリン塩、N−アシルイセチオン酸塩、N−アシルグリシン塩、モノアルキルリン酸塩、エ−テルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、カルボベタイン型界面活性剤、スルホベタイン型界面活性剤、アミドベタイン型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤等が挙げられる。
【0012】
本発明の皮膚洗浄料には、多価アルコール類、糖類、糖アルコール類、有機粉体、無機粉体、高分子類、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、保湿剤、香料、pH調整剤、乾燥剤、等を含有させることができる。その他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0013】
多価アルコール類としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、ジグリセリン等が挙げられる。
【0014】
糖類、糖アルコール類としては、グルコース、ソルビトール、マンノース、マンニトール、ガラクトース、ガラクチトール、マルトース、マルチトール、トレハロース、エリスロース、エリスリトール、キシロース、キシリトール、スクロース、ラクトース、ラクチトール、ダイフラクトースアンハイドライド等が挙げられる。
【0015】
有機粉体としてはポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、ポリメチルメタアクリレート粉末、ナイロン粉末、ポリウレタン粉末、寒天粉末、コルク粉末、澱粉等を挙げることができる。
無機粉体としては、タルク、カオリン、シリカ、雲母、ゼオライト、ベントナイト、二酸化チタン等が挙げられる。
【0016】
高分子類としては、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、クインスシード、デキストラン、カチオン化デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチンメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等を挙げることができる。
【0017】
防腐剤として、例えばメチルパラベン、エチルパラベン等を挙げることができる。
【0018】
金属イオン封鎖剤として、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を挙げることができる。
薬効成分としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類等、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ぶなの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。
【0019】
本発明の皮膚洗浄料組成物は、粉末状または顆粒状である。
本発明の皮膚洗浄料は、洗顔や、身体の洗浄に使用することができる。
【実施例】
【0020】
表1に示す各成分を0.5、1、3、5質量%の濃度で、N−(ヤシ脂肪酸/パーム脂肪酸/ヒマワリ脂肪酸)アシルグルタミン酸ナトリウムに配合し、実施例1〜3、比較例1〜12の各4種類の粉末状皮膚洗浄料を調製した。調製した粉末状皮膚洗浄料の泡質と起泡性を以下の基準にて評価した。
【0021】
泡質の評価
専門パネラー10名に、調製した試料0.6gを手のひらにとり、水道水約2〜3mLを加えて、両手をこすり合わせるように約30秒間泡立てさせ、その後泡に空気を巻き込むようにしっかりと泡立て動作をさせた。
(ヤシ脂肪酸/パーム脂肪酸/ヒマワリ脂肪酸)アシルグルタミン酸ナトリウム単独の粉末状皮膚洗浄料の泡質を標準として、以下の基準により評価させた。
4点:著しく弾力があり、キメが細かい。
3点:弾力があり、キメが細かい。
2点:変わらない。
1点:弾力が少なく、キメが粗い。
0点:著しく弾力が少なく、キメが粗い。
10名の評価点の平均値を表1に示す。
【0022】
起泡性の評価
専門パネラー10名に、泡質の評価と同時に起泡性を評価させた。
(ヤシ脂肪酸/パーム脂肪酸/ヒマワリ脂肪酸)アシルグルタミン酸ナトリウム単独の粉末状皮膚洗浄料の起泡性を標準として、以下の基準により評価させた。
4点:著しく泡立ちが速い。
3点:泡立ちが速い。
2点:変わらない。
1点:泡立ちが遅い。
0点:著しく泡立ちが遅い。
10名の評価点の平均値を表1に示す。
【0023】
総合評価
泡質の評価の平均値と起泡性の評価の平均値を合計し、以下の基準により評価した。
◎:6点以上8点以下
○:5点以上6点未満
△:4点以上5点未満
×:4点未満
総合評価を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
(ヤシ脂肪酸/パーム脂肪酸/ヒマワリ脂肪酸)アシルグルタミン酸ナトリウムに環状構造保有分岐状グルカン、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、ポリデキストロースを配合した実施例1〜3の粉末状皮膚洗浄料は、いずれも泡質、起泡性に優れていた。
オクテニルコハク酸化デンプンを配合した比較例12の粉末状皮膚洗浄料は、0.5〜1質量%の配合量で優れた起泡性を示したが、配合濃度を増すにつれて泡質が顕著に低下する傾向にあった。
PEGを配合した比較例4、5については、1〜5質量%配合して泡立てた際に、不溶物の固まりが顕著に出現したため、評価しなかった。
【0026】
処方例1 洗顔パウダー
成分 配合量(質量%)
N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウム 40
ポリγグルタミン酸ナトリウム 0.02
L−セリン 0.02
マンニトール 30
ブドウ糖 10
環状構造保有分岐状グルカン 3
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 3
ポリデキストロース 3
タルク 残余
【0027】
処方例2 洗顔パウダー
成分 配合量(質量%)
N-ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム 30
ラウリン酸ナトリウム 10
N-ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム 10
ポリγグルタミン酸ナトリウム 4
L−セリン 4
マンニトール 20
ブドウ糖 10
環状構造保有分岐状グルカン 1
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 1
ポリデキストロース 1
タルク 残余
【0028】
処方例3 洗顔パウダー
成分 配合量(質量%)
N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウム 10
N-ミリストイルグルタミン酸カリウム 18
ミリスチン酸カリウム 2
ポリγグルタミン酸ナトリウム 0.3
L−セリン 0.3
ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム 10
マンニトール 10
マルチトール 10
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]
デキストラン 0.1
寒天粉末 2
デキストリン末 2
環状構造保有分岐状グルカン 5
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 5
ポリデキストロース 5
タルク 残余