特許第5662987号(P5662987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662987
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   G03G15/20 555
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-247493(P2012-247493)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-95818(P2014-95818A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2013年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片倉 宙
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂
【審査官】 山本 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−248825(JP,A)
【文献】 特開平10−161469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部を備え、記録媒体に消色トナー像を定着する定着部と、
前記定着部にて前記記録媒体に前記消色トナー像を定着する場合の外部環境条件を検知する環境検知部と、
複数の外部環境条件に対応して低温異常検出温度、高温異常検出温度、及びプリント時制御温度を含む温度条件セットであって、外部環境条件毎に異なる前記低温異常検出温度及び記高温異常検出温度と、前記プリント時制御温度が前記低温異常検出温度及び前記高温異常検出温度に対して一定の温度幅を持つよう設定された温度条件セットを記憶している記憶部と、
前記環境検知部の検知結果に応じて前記記憶部に予め記憶される温度条件セットから前記低温異常検出温度、前記高温異常検出温度、前記プリント時制御温度を選択して、前記発熱部を制御する制御部とを具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記温度条件セットは、プリント時温度降下開始温度を更に含み、
前記記憶部は、前記外部環境条件に対応して前記低温異常検出温度、前記高温異常検出温度に対して前記プリント時温度降下開始温度が第2の一定の温度幅を持つ設定を更に記憶し、
記制御部が、前記環境検知部の検知結果に応じて前記記憶部に予め設定される前記温度条件セットから前記プリント時温度降下開始温度を選択して、前記発熱部を更に制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記温度条件セットはレディ時制御温度を更に含み、
前記記憶部は、前記外部環境条件に対応して前記低温異常検出温度、前記高温異常検出温度に対して前記レディ時制御温度が第3の一定の温度幅を持つ設定を更に記憶し、
記制御部が、前記環境検知部の検知結果に応じて前記記憶部に予め設定される前記温度条件セットから前記レディ時制御温度を選択して、前記発熱部を更に制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記温度条件セットはウォーミングアップ目標温度を更に含み、
前記記憶部は、前記外部環境条件に対応して前記低温異常検出温度、前記高温異常検出温度に対して前記ウォーミングアップ目標温度が第4の一定の温度幅を持つ設定を更に記憶し、
記制御部が、前記環境検知部の検知結果に応じて前記記憶部に予め設定される前記温度条件セットから前記ウォーミングアップ目標温度を選択して、前記発熱部を更に制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記外部環境条件を予め複数区分に分割し、
前記記憶部が、前記複数区分毎に、前記区分で共通の低温異常検出温度、高温異常検出温度と、プリント時制御温度を記憶し、前記プリント時制御温度が各区分において低温異常検出温度及び高温異常検出温度に対して前記一定の温度幅を持つよう設定された温度条件セットを記憶していることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、定着装置の制御温度を補正する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートにトナー像を加熱定着する定着装置を搭載する画像形成装置では、定着装置の温度を検知しながら定着装置を所定の制御温度で温度制御して、良好な定着画像を得る装置がある。他方、エネルギーを加えることにより消える消色トナーを用いる画像形成装置では、画像を消色することなく良好な定着を得るよう、シートの状態に応じて狭い定着温度幅の範囲内で定着温度を制御する装置がある。しかしながらシートにトナー像を加熱定着する画像形成装置では、画像形成装置の環境条件の変化に伴い、定着装置の加熱温度に影響を生じる恐れがある。このため環境条件の変化にかかわらず、定着装置の定着温度を安定に維持するための制御を、高精度で且つ簡便に行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−292990号公報
【特許文献2】特開2010−253949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、環境条件の変化に伴い、定着装置を高精度且つ簡便に制御することにより、定着装置の定着温度を安定に維持する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、実施形態の画像形成装置は、発熱部を備え、記録媒体に消色トナー像を定着する定着部と、前記定着部にて前記記録媒体に前記消色トナー像を定着する場合の外部環境条件を検知する環境検知部と、複数の外部環境条件に対応して低温異常検出温度、高温異常検出温度、及びプリント時制御温度を含む温度条件セットであって、外部環境条件毎に異なる前記低温異常検出温度及び記高温異常検出温度と、前記プリント時制御温度が前記低温異常検出温度及び前記高温異常検出温度に対して一定の温度幅を持つよう設定された温度条件セットを記憶している記憶部と、前記環境検知部の検知結果に応じて前記記憶部に予め記憶される温度条件セットから前記低温異常検出温度、前記高温異常検出温度、前記プリント時制御温度を選択して、前記発熱部を制御する制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態のMFPを示す概略構成図。
図2】第1の実施形態の定着装置を示す概略構成図。
図3】第1の実施形態のMFPの定着装置の制御を主体とする制御系を示す概略ブロック図。
図4】第1の実施形態のヒートローラの表面温度の推移を示すグラフ。
図5】第1の実施形態の外部温度の変化に対応する補正制御温度を1℃毎に示すグラフ。
図6】第2の実施形態の外部温度の変化を4区分に分けて設定した補正制御温度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下実施形態について説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の画像形成装置を図1乃至図5を参照して説明する。図1は第1の実施形態の画像形成装置の一例であるMulti Function Peripheral(以下MFPと略称する。)10を示す概略構成図である。MFP10は、画像形成部であるプリンタ部11、スキャナ部12、給紙部13、排紙部22を備える。MFP10は、MFP10の全体を制御する制御部であるCPU100を備える。MFP10は、例えば給紙部13に、MFP10の外部環境条件を検知する環境検知部である温湿度センサ70を備える。温湿度センサ70の配置位置は限定されない。
【0009】
給紙部13は、それぞれ給紙ローラ15a、15bを有する第1及び第2の給紙カセット13a、13bを備える。給紙カセット13a、13bは、記録媒体であるシートPとして、未使用のシート及びリユースのシート(画像を消色処理により消去したシート)を共に給紙可能である。温湿度センサ70は、例えば給紙カセット13aの内部に配置する。温湿度センサ70を、シートPに近い場所に設置して、シートPの状態を検知する。
【0010】
プリンタ部11は、矢印m方向に回転する感光体ドラム14を一様に帯電する帯電器16、スキャナ部12からの画像データ等に基づいたレーザ光17aを、帯電された感光体ドラム14に照射して、感光体ドラム14上に静電潜像を形成するレーザ露光器17を備える。プリンタ部11は、感光体ドラム14上の静電潜像にトナーを供給する現像器18、感光体ドラム14上に形成されたトナー像を記録媒体であるシートPに転写する転写器20、クリーナ21を備える。
【0011】
現像器18は、例えばトナーと磁性キャリアの混合物である二成分現像剤を用いて感光体ドラム14上の静電潜像にトナーを供給する。二成分現像剤に用いるトナーは、例えば所定の温度で加熱することにより消色可能な消色トナーである。消色トナーは、バインダー樹脂に、着色剤、呈色性化合物及び顕色剤を含有させてなる。消色トナーを用いて形成した定着トナー画像を所定の温度で加熱すると、消色トナー中の呈色性化合物と顕色剤とが解離して、トナー画像を消色する。例えば消色トナーは、比較的低い温度でシートに定着でき、定着温度より例えば10℃程度高い温度で消色する。
【0012】
プリンタ部11は、感光体ドラム14から排紙部22に達する間に、定着装置31を備える。MFP10は、給紙部13から感光体ドラム14、定着装置31を経て排紙部22にシートPを搬送する搬送部である搬送路27を備える。搬送路27は、搬送ローラ28、感光体ドラム14上のトナー像に同期して、感光体ドラム14及び転写器20間にシートPを搬送するレジストローラ対30及び定着後にシートPを排紙部22に排出する排紙ローラ32を備える。
【0013】
これらの構成によってMFP10は、給紙部13から給紙されたシートPに、プリンタ部11によって形成された消色トナー画像を転写する。MFP10は、消色トナー画像を有するシートPを定着装置31で定着し、プリント完成後排紙部22に排紙する。画像形成装置はこれに限らない。画像形成装置は、消色トナーを用いるプリンタ部と非消色トナーを用いるプリンタ部の複数のプリンタ部を備えても良い。インクジェット方式のプリンタ部を備えていても良い。
【0014】
次に定着装置31について詳述する。定着装置31は、図2に示すように、定着部32を備える。定着部32は、例えばヒートローラ33と、加圧ベルト機構34を備える。定着部32は、ヒートローラ33と加圧ベルト機構34の間にニップ36を形成し、シートPをニップ36に挟んで搬送して、シートPにトナー像を加熱加圧定着する。
【0015】
ヒートローラ33は、中空のアルミ(Al)ローラの表面に離型層を被覆している。ヒートローラ33は中空内部に、発熱部であり発熱量が同じである2本のハロゲンランプ37a、37bを備える。例えば、2本のハロゲンランプ37a、37bのうちの1本の配光エリアを、ヒートローラ33の軸方向のセンタエリアとし、他の1本の配光エリアを、ヒートローラ33のセンタエリアの両側のサイドエリアとする。2本のハロゲンランプ37a、37bで、ヒートローラ33の軸方向の全長のエリアを発熱する。発熱部はヒータランプ方式に限らず、IHヒータ方式であっても良い。
【0016】
加圧ベルト機構34は、加圧ベルト38、加圧ベルト38をヒートローラ33側に加圧する加圧部であるニップパッド40を備える。ニップパッド40は、ニップパッド40をヒートローラ33方向に加圧する加圧機構40aを備える。加圧ベルト機構34は、加圧ベルト38の矢印q方向の回転方向において、ニップパッド40より上流にベルトヒートローラ41を備え、加圧ベルト38の矢印q方向の回転方向において、ニップパッド40より下流に出口加圧ローラ42を備える。加圧ベルト機構34は、ベルトヒートローラ41と出口加圧ローラ42間の距離を調整するテンションローラ43を備える。
【0017】
加圧ベルト38は、ニッケル(Ni)にゴム層を積層した表面をフッ素チューブ等で被覆している。ベルトヒートローラ41は、中空のアルミ(Al)ローラの表面に離型層を被覆している。ベルトヒートローラ41は中空内部に、発熱部であるハロゲンランプ41aを備える。出口加圧ローラ42は、芯金の周囲にシリコンゴムを配置し、表面をフッ素チューブ等で被覆している。出口加圧ローラ42は、加圧ベルト38をヒートローラ33に対向し接触する。
【0018】
テンションローラ43は、加圧ベルト38を一定のテンションで引っ張る。ベルトヒートローラ41、出口加圧ローラ42及びテンションローラ43により加圧ベルト38を張架する。定着部32は、加圧ベルト機構34のニップパッド40から出口加圧ローラ42までの加圧ベルト38がヒートローラ33と接触して、ワイドなニップ36を形成する。
【0019】
定着装置31は、例えばモータ44により出口加圧ローラ42を駆動して加圧ベルト38を矢印q方向に回転し、モータ45によりヒートローラ33を矢印r方向に回転する。ヒートローラ33或いは加圧ベルト38のいずれかを駆動し、他方を従動させても良い。
【0020】
定着装置31は、ヒートローラ33の温度を検知する第1のサーミスタ47と加圧ベルト38の温度を検知する第2のサーミスタ48を備える。第1のサーミスタ47は、ヒートローラ33のセンタセンサ47aとヒートローラ33のサイドセンサ47bを備える。
【0021】
CPU100は、予め設定される定着温度条件である各種制御温度に従って、定着部32の温度を制御する。CPU100は、第1のサーミスタ47による第1の検知結果と第2のサーミスタ48による第2の検知結果から定着部32が予め定めた制御温度に達すると、ハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御して、定着部32の表面温度を所定温度に保持する。
【0022】
図3を参照して定着装置31の制御を主体とする、MFP10の制御系50について説明する。制御系50は、例えば、MFP10全体を制御するCPU100、記憶部であるROM101及びRAM102、モータ類44、45、ハロゲンランプ類37a、37b、41a、第1のサーミスタ47(47a、47b)、第2のサーミスタ48、温湿度センサ70を備える。
【0023】
CPU100は、ROM101或いはRAM102に記憶されるプログラムを実行することにより画像形成のための処理機能を実現する。ROM101は、画像形成処理の基本的な動作を司る制御プログラム及び制御データなどを記憶する。ROM101は、制御データとして、外部環境条件(例えば外部温度)に応じて予め設定される、定着部32の補正制御温度を記憶する。RAM102は、制御パラメータ、プリント枚数、プリント時間等を記憶する。
【0024】
ROM101は、例えば外部温度が常温(23℃)の場合の基準制御温度と、外部環境条件に応じて各種制御温度を変動するのに用いるパラメータとを記憶しても良い。
【0025】
ROM101に記憶する、外部環境条件に応じて予め設定される、例えばヒートローラ33の補正制御温度の例を説明する。ヒートローラ33の温度を制御するのに必要な定着温度条件である各種制御温度を、例えばウォーミングアップ目標温度Tw、レディ時制御温度Tr、プリント時制御温度Tp、低温異常検出温度Tl、高温異常検出温度Th、プリント時温度降下開始温度Tdの6条件とする。定着温度条件はこれに限らない。
【0026】
ウォーミングアップ目標温度Twは、MFP10のウォーミングアップ時或いは省電力モードからの復帰時に目標とする制御温度、レディ時制御温度Trは、MFP10がレディ状態の間の制御温度、プリント時制御温度Tpは、MFP10でプリントを行う間の制御温度である。低温異常検出温度Tlは、MFP10のプリント中にヒートローラ33或いは加圧ベルト38が温度降下した場合に、CPU100が、MFP10のプリント動作を停止(低温Wait)制御させるための閾値温度である。
【0027】
ヒートローラ33或いは加圧ベルト38の温度降下により低温Waitした後、ヒートローラ33及び加圧ベルト38の温度が、適正な値(例えばレディ時制御温度Tr)まで上昇すると、CPU100は、MFP10の低温Waitを停止して、プリント動作を再開させる。MFP10を低温Waitすることにより、定着時の定着不良を防ぐ。
【0028】
高温異常検出温度Thは、MFP10のプリント中にヒートローラ33或いは加圧ベルト38が温度上昇した場合に、CPU100が、MFP10のプリント動作を停止(高温Wait)制御させるための閾値温度である。ヒートローラ33或いは加圧ベルト38の温度上昇により高温Waitした後、ヒートローラ33及び加圧ベルト38の温度が、適正な値(例えばレディ時制御温度Tr)まで降下すると、CPU100は、MFP10の高温Waitを停止して、プリント動作を再開させる。MFP10を高温Waitすることにより、定着時に高温オフセットを生じるのを防ぐ。
【0029】
プリント時温度降下開始温度Tdは、MFP10が高温Waitするのを防ぐために、プリントの途中でCPU100が、プリント時制御温度Tpを下げる制御(プリント時温度降下制御)を開始するための閾値温度である。
【0030】
MFP10の外部温度が常温(23℃)の場合に予め設定される制御温度を基準制御温度(Tws、Trs、Tps、Tls、Ths、Tds)として、CPU100がハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御した場合の、ヒートローラ33の表面温度の推移を図4に示す。実線[A]は、第1のサーミスタ47で検知したヒートローラ33の表面温度の推移である。基準制御温度は、例えばTws=Trs=Tpsとする。
【0031】
ウォーミングアップを開始後、時間t1でヒートローラ33の表面温度がウォーミングアップ目標温度Twsに達すると、MFP10は、レディ状態となる。レディ時、CPU100はヒートローラ33がレディ時制御温度Trsを保持するようハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する。時間t2でプリントが開始されると、CPU100はヒートローラ33がプリント時制御温度Tpsを保持するようハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する。プリント開始直後は、ハロゲンランプ37a、37b、41aによる熱供給がシートPに奪われる熱量に追いつかず、ヒートローラ33の表面温度は一時的に降下する。例えば時間t3でヒートローラ33の表面温度が、低温異常検出温度Tlsを下回ると、CPU100は、MFP10のプリント操作を低温Waitする。時間t4で、ヒートローラ33の表面温度が、レディ時制御温度Trsに回復したら、CPU100は、低温Waitを停止して、MFP10のプリント動作を再開する。
【0032】
プリント動作を継続する間に、MFP10内部の温度上昇の影響を受けて、例えばサイドエリアではヒートローラ33の表面温度が徐々に上昇する。時間t5で、ヒートローラ33の表面温度がプリント時温度降下開始温度Tdsに達すると、CPU100は、MFP10が高温Waitするのを防ぐために、プリント時温度降下制御を開始する。
【0033】
この後プリントを継続して、例えばサイドエリアでヒートローラ33の表面温度が更に上昇し、例えば時間t6でヒートローラ33の表面温度が、高温異常検出温度Thsを上回ると、CPU100は、MFP10のプリント操作を高温Waitする。時間t7で、ヒートローラ33の表面温度が、レディ時制御温度Trsに回復したら、CPU100は、高温Waitを停止して、MFP10のプリント動作を再開する。
【0034】
MFP10の外部温度が変化した場合に、制御温度を、基準制御温度(Tws、Trs、Tps、Tls、Ths、Tds)のままで定着部32を温度制御すると、定着部32は安定した定着温度を保持出来ず、定着装置31は良好な定着を得られない。外部温度の変化にかかわらず、定着部32の安定した定着温度を保持するために、CPU100は、外部温度の変化に応じて基準制御温度を補正した補正制御温度を用いてハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する。MFP10は、外部温度の変化に伴い1℃毎に基準制御温度を補正した補正制御温度(Twc、Trc、Tpc、Tlc、Thc、Tdc)をROM101に記憶する。
【0035】
補正制御温度の低温異常検出温度Tlcと、高温異常検出温度Thcは、例えばMFP10の外部温度を変化してプリント操作を実施した場合に定着不良を生じる低温異常検出温度Tlと、高温オフセットを生じる高温異常検出温度Thを測定して得る。補正制御温度のウォーミングアップ目標温度Twc、レディ時制御温度Trc、プリント時制御温度Tpc、プリント時温度降下開始温度Tdcは、測定して得られた低温異常検出温度Tlcと高温異常検出温度Thcから算出する。
【0036】
補正制御温度のウォーミングアップ目標温度Twc、レディ時制御温度Trc、プリント時制御温度Tpc、プリント時温度降下開始温度Tdcの算出は、例えば、基準制御温度の低温異常検出温度Tlsと高温異常検出温度Thsの温度幅ω内での、ウォーミングアップ目標温度Tws、レディ時制御温度Trs、プリント時制御温度Tps、プリント時温度降下開始温度Tdsの温度幅の比率を適用する。
【0037】
図4に示すように、基準制御温度のTws=Trs=Tpsは、Thsからの温度幅がαであり、Tlsからの温度幅がβである。Tws=Trs=Tpsは、温度幅ωに対して、α:βとなる温度である。基準制御温度のTdsは、Thsからの温度幅がγであり、Tlsからの温度幅がδである。Tdsは、温度幅ωに対して、γ:δとなる温度である。
【0038】
補正制御温度Twc=Trc=Tpcは、1℃毎に測定した低温異常検出温度Tlcと、高温異常検出温度Thcの温度幅内で温度幅の比率がα:βとなる温度とする。補正制御温度Tdcは、1℃毎に測定した低温異常検出温度Tlcと、高温異常検出温度Thcの温度幅内で温度幅の比率がγ:δとなる温度とする。MFP10の外部温度が10℃〜30℃に変化した場合の測定値、Tlc及びThcと、算出値Twc=Trc=Tpc及びTdsを図5に示す。
【0039】
図5では、低温異常検出温度Tlcと高温異常検出温度Thcの温度幅をωcとしたときに、Twc=Trc=Tpcは、Thcからの温度幅がαcであり、Tlcからの温度幅がβcであり、Tdcは、Thcからの温度幅がγcであり、Tlcからの温度幅がδcとなる。図5に示す、1℃毎の測定値、Tlc及びThcと、算出値Twc=Trc=Tpc及びTdcを、補正制御温度としてROM101に記憶する。
【0040】
尚、補正制御温度(Twc、Trc、Tpc、Tlc、Thc、Tdc)の設定はこれに限らない。例えば基準制御温度は、外部温度が23℃の場合の制御温度でなくても良い。また、外部温度の変化の範囲も10℃〜30℃に限らない。また予め設定された補正制御温度(Twc、Trc、Tpc、Tlc、Thc、Tdc)を記憶する記憶部はROM101に限定されず、外部メモリ等であっても良い。
【0041】
更に、図5に示す、1℃毎のTlc、Thc、Twc=Trc=Tpc及びTdcを、補正制御温度としてROM101に記憶するのではなく、例えば、外部温度が1℃変化する毎に測定した補正制御温度のThc及びTlcと、基準制御温度の温度幅内の比率α:β及び、比率γ:δを予めROM101に記憶して、温湿度センサ70の検知温度に応じて、Thc及びTlcと、比率α:βと比率γ:δから補正制御温度Twc=Trc=Tpc及びTdcを算出する等しても良い。
【0042】
外部温度の変化に対応する定着部32の温度制御について述べる。例えば、プリント開始時に、温湿度センサ70で検知した外部温度が常温(23℃)であれば、CPU100は、ROM101に記憶される、図5に示す1℃ごとの補正制御温度(Twc、Trc、Tpc、Tlc、Thc、Tdc)から、外部温度が23℃の場合の補正制御温度で、ハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する。外部温度が常温(23℃)の場合の補正制御温度は、基準制御温度(Tws、Trs、Tps、Tls、Ths、Tds)であることから、プリントを実施する間、ヒートローラ33の表面温度は図4に示すように推移して、良好な定着画像を得ると共に、消色トナーによりプリント形成したトナー画像を誤って消色する恐れがない。
【0043】
プリント中に外部温度が変化した場合には、プリント途中であっても、定着部32の制御温度を補正する。温湿度センサ70が外部温度の変化を検知すると、CPU100は、ROM101に記憶される、図5に示す1℃ごとの補正制御温度(Twc、Trc、Tpc、Tlc、Thc、Tdc)から、外部温度に対応する補正制御温度を選択して、定着部32の制御温度を、常温(23℃)の基準制御温度から選択した補正制御温度に変更して、ハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する。外部温度が変化しても、ヒートローラ33の表面温度を図4に示す常温(23℃)時とほぼ同じ温度推移にて保持でき、良好な定着画像を得ると共に、消色トナーによりプリント形成したトナー画像を誤って消色する恐れがない。
【0044】
例えば、プリント開始時に、外部温度が30℃であれば、CPU100は、ROM101に記憶される、図5に示す1℃ごとの補正制御温度(Twc、Trc、Tpc、Tlc、Thc、Tdc)から、外部温度が30℃の場合の補正制御温度(Tw1、Tr1、Tp1、Tl1、Th1、Td1)を選択して定着部32を温度制御する。ハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する制御温度を低下して制御することにより、外部温度の上昇にかかわらず、ヒートローラ33の表面温度は図4に示す常温(23℃)時とほぼ同じ温度推移を保持でき、良好な定着画像を得ると共に、消色トナーによりプリント形成したトナー画像を誤って消色する恐れがない。
【0045】
外部温度が30℃以上の場合は、外部温度が30℃の場合の補正制御温度を適用して、定着部32を温度制御する。プリント途中に、外部温度が変化したら、定着装置31の制御温度を補正する。
【0046】
例えば、プリント開始時に、外部温度が10℃であれば、CPU100は、ROM101に記憶される、図5に示す1℃ごとの補正制御温度(Twc、Trc、Tpc、Tlc、Thc、Tdc)から、外部温度が10℃の場合の補正制御温度(Tw2、Tr2、Tp2、Tl2、Th2、Td2)を選択して定着部32を温度制御する。ハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する制御温度を上昇して制御することにより、外部温度の降下にかかわらず、ヒートローラ33の表面温度は図4に示す常温(23℃)時とほぼ同じ温度推移を保持でき、良好な定着画像を得ると共に、プリントトナーにより形成されたトナー画像を誤って消色する恐れがない。
【0047】
外部温度が10℃以下の場合は、外部温度が10℃の場合の補正制御温度を適用して、定着部32を温度制御する。プリント途中に、外部温度が変化したら、定着装置31の制御温度を補正する。
【0048】
尚、外部温度の変化に伴う定着部32の温度制御は、ヒートローラ33の温度制御に限定されない。外部温度の変化に伴う、加圧ベルト38の制御温度の補正にも適用可能である。
【0049】
第1の実施形態によれば、1℃毎の外部温度の変化に対応した定着部32の補正制御温度を、ROM101に記憶する。CPU100は、温湿度センサ70で検知した外部温度に応じた補正制御温度をROM101から選択し、選択した補正制御温度でハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する。外部温度の変化に伴い、迅速にヒートローラ33の制御温度を補正できる。外部温度の変化にかかわらず、ヒートローラ33の表面温度を常温時とほぼ同じに推移でき、良好な定着画像を得ると共に、消色トナーによりプリントされたトナー画像を誤って消色する恐れがない。第1の実施形態によれば、1℃毎の外部温度の変化に対応して補正制御温度を予め設定してROM101に記憶する。外部温度の1℃毎の変化に応じて、ヒートローラ33を細かく温度制御でき、高精度の温度制御を得られる。狭い温度幅内での高精度の温度制御を要求される、消色トナーを採用するMFP10においても、画像を消色することなく確実な定着を得られる。
【0050】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の画像形成装置を、図6を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態において、プリンタ部は、非消色の二成分現像剤を用いてなるトナー画像を形成する。また、外部温度変化を複数区分に分けて、それぞれの区分毎に共通の補正制御温度を設定して、定着部の制御温度を補正するものである。第2の実施形態にあって、前述の第1の実施形態で説明した構成と同一構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
MFP10において現像器18は、例えば非消色のトナーと磁性キャリアの混合物である非消色の二成分現像剤を用いて感光体ドラム14上の静電潜像にトナーを供給する。また例えば10℃〜30℃の外部温度の変化の範囲を、複数の区分に分ける。基準温度を補正した補正制御温度(Twc、Trc、Tpc、Tlc、Thc、Tdc)を、それぞれの区分毎に1つ設定して、予めROM101に記憶する。
【0052】
例えば10℃〜30℃の外部温度の変化を、図6に示すように、15℃未満の区分1、15〜23℃未満の区分2、23〜28℃未満の区分3、28℃以上の区分4の4つの区分に分ける。区分毎に共通する補正制御温度として例えば図6に示す、13℃、18℃、26℃、30℃の場合の低温異常検出温度Tlc、高温異常検出温度Thc、ウォーミングアップ目標温度Twc、レディ時制御温度Trc、プリント時制御温度Tpc及びプリント時温度降下開始温度Tdcを、ROM101に記憶する。ROM101は、区分毎に共通する補正制御温度(Twc、Trc、Tpc、Tlc、Thc、Tdc)の他に、基準制御温度(Tws、Trs、Tps、Tls、Ths、Tds)を記憶する。
【0053】
補正制御温度の低温異常検出温度Tlc及び高温異常検出温度Thcは、第1の実施形態と同様にして、MFP10の外部温度を13℃、18℃、26℃、30℃としてプリントを実施した場合に定着不良を生じる低温異常検出温度Tlと、高温オフセットを生じる高温異常検出温度Thを測定してROM101に記憶する。補正制御温度のウォーミングアップ目標温度Twc、レディ時制御温度Trc及びプリント時制御温度Tpcは、第1の実施形態と同様にして、外部温度が13℃、18℃、26℃、30℃のときの低温異常検出温度Tlcと高温異常検出温度Thcの温度幅ωcに、比率α:βを適用して、Thcからの温度幅αc、Tlcからの温度幅βcを算出して求めて、ROM101に記憶する。プリント時温度降下開始温度Tdcは、第1の実施形態と同様にして、外部温度が13℃、18℃、26℃、30℃のときの温度幅ωcに、比率γ:δを適用してThcからの温度幅γc、Tlcからの温度幅δcを算出して求めて、ROM101に記憶する。
【0054】
温湿度センサ70で検知した外部温度が15℃未満の区分1の範囲であれば、CPU100は、区分1に共通の13℃のときの補正制御温度でヒートローラ33を温度制御する。外部温度が15〜23℃未満の区分2の範囲であれば、CPU100は、区分2に共通の18℃のときの補正制御温度でヒートローラ33を温度制御する。外部温度が23〜28℃未満の区分3の範囲であれば、CPU100は、区分3に共通の26℃のときの補正制御温度でヒートローラ33を温度制御する。外部温度が28℃以上の区分4の範囲であれば、CPU100は、区分4に共通の30℃のときの補正制御温度で定着部32を温度制御する。
【0055】
但し、温湿度センサ70で検知した外部温度が常温(23℃)であれば、CPU100は、ROM101に記憶される、基準制御温度(Tws、Trs、Tps、Tls、Ths、Tds)で定着部32を制御する。プリントを実施する間、ヒートローラ33の表面温度は第1の実施形態と同様に、図4に示すように推移して、良好な定着画像を得る。プリント中に外部温度が変化した場合には、CPU100は、ROM101に記憶される、図6に示す温度の区分から、外部温度が属する区分を選択し、ヒートローラ33の制御温度を、基準制御温度(Tws、Trs、Tps、Tls、Ths、Tds)から選択された区分に共通の補正制御温度に変更して、ハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する。外部温度が変化しても、ヒートローラ33の表面温度は図4に示す常温(23℃)時とほぼ同じ温度推移を保持でき、良好な定着画像を得る。
【0056】
例えば、プリント開始時に、外部温度が29℃であれば、CPU100は、ROM101に記憶される、図6に示す温度の区分から、28℃以上の区分4を選択し、ヒートローラ33の制御温度を、区分4に共通の外部温度が30℃の場合の補正制御温度(Tw1、Tr1、Tp1、Tl1、Th1、Td1)として、ハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する。ヒートローラ33の制御温度を低下して制御することにより、外部温度の上昇にかかわらず、ヒートローラ33の表面温度を図4に示す常温(23℃)時とほぼ同じ温度推移に保持でき、良好な定着画像を得る。
【0057】
例えば、プリント開始時に、外部温度が10℃であれば、CPU100は、ROM101に記憶される、図6に示す温度の区分から、15℃未満の区分1を選択し、ヒートローラ33の制御温度を、区分1に共通の外部温度が13℃の場合の補正制御温度(Tw3、Tr3、Tp3、Tl3、Th3、Td3)として、ハロゲンランプ37a、37b、41aを、オン/オフ制御する。ヒートローラ33の制御温度を上昇して制御することにより、外部温度の降下にかかわらずヒートローラ33の表面温度を図4に示す常温(23℃)時とほぼ同じ温度推移に保持でき、良好な定着画像を得る。
【0058】
第2の実施形態によれば、外部温度の変化を複数に区分し、それぞれの区分に共通の補正制御温度を1つ設定して、ROM101に記憶する。温湿度センサ70で検知した外部温度が属する温度の区分に共通の補正制御温度をROM101から選択し、選択した補正制御温度でヒートローラ33を温度制御する。外部温度の変化に伴い、迅速にヒートローラ33を温度制御できる。外部温度の変化にかかわらず、ヒートローラ33の表面温度を常温時とほぼ同じに推移でき、良好な定着画像を得る。第2の実施形態によれば、外部温度の区分毎にヒートローラ33の補正制御温度の共通値を1つ設定してヒートローラ33を制御する。共通値を用いることにより、外部温度が変化しても同じ区分の範囲であれば、CPU100はヒートローラ33の制御温度を変更する必要がなく、ヒートローラ33の温度制御を簡素化できる。
【0059】
以上説明した実施形態では、外部環境条件として、外部温度を用いて発熱部を温度制御したが、外部環境条件として外部湿度の変化に応じて発熱部を温度制御しても良い。外部湿度の変化に応じて発熱部を温度制御する場合は、外部湿度が高いとシートが水分を多く含み、外部湿度が低いとシートが含む水分が少ないことから、例えば50%の基準湿度に対して、高湿度であれば発熱部の制御温度を上昇制御し、低湿度であれば発熱部の制御温度を低下制御しても良い。
【0060】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、外部環境条件の変化に対応する定着温度条件を予め設定して記憶部に記憶し、環境検知部で検知した外部環境条件に応じて、記憶部内の設定温度条件を選択して、発熱部を制御する。外部環境条件の変化に伴い、迅速に発熱部を温度制御でき、外部環境条件の変化にかかわらず良好な定着画像を得られる。
【0061】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10…MFP
11…プリンタ部
31…定着装置
32…定着部
37a、37b、41a…ハロゲンランプ
70…温湿度センサ
100…CPU
101…ROM
図1
図2
図3
図4
図5
図6