(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662998
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】懸濁液を脱水するためのプレス装置
(51)【国際特許分類】
D21F 3/02 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
D21F3/02 Z
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-504038(P2012-504038)
(86)(22)【出願日】2010年3月23日
(65)【公表番号】特表2012-523503(P2012-523503A)
(43)【公表日】2012年10月4日
(86)【国際出願番号】FI2010050225
(87)【国際公開番号】WO2010116026
(87)【国際公開日】20101014
【審査請求日】2013年1月8日
(31)【優先権主張番号】0900479-7
(32)【優先日】2009年4月9日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】500403468
【氏名又は名称】アンドリツ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100123180
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 克則
(74)【代理人】
【識別番号】100072822
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徹
(72)【発明者】
【氏名】ブリャットゴールド、ヨーラン
【審査官】
中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−047602(JP,A)
【文献】
特開2002−242087(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01035250(EP,A1)
【文献】
特開2001−252505(JP,A)
【文献】
特公昭50−018082(JP,B1)
【文献】
米国特許第04559104(US,A)
【文献】
特表平09−508681(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/051157(WO,A1)
【文献】
特表2010−539348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス装置であって、
固体の生物由来物質の液体懸濁液を受け入れ、また前記懸濁液を脱水ドラム(8)に沿って水平方向に分散させるように配置された分散装置(2)と、
前記脱水ドラム(8)の下に配置された案内プレート(22)及びトラフ(24)であって、一方の側の前記脱水ドラム(8)と他方の側の前記案内プレート(22)及び前記トラフ(24)との間にギャップ(20)を形成するように前記脱水ドラム(8)から所定の距離に配置されており、それによって前記ギャップ(20)内において、前記プレス装置の動作の下で前記懸濁液から液体が搾り出されて、脱水された前記固体の生物由来物質のパルプを形成することができる案内プレート(22)及びトラフ(24)と、
前記液体懸濁液を前記分散装置(2)から前記ギャップ(20)へ導くように配置された供給路(18)と
を有するプレス装置において、
前記案内プレート(22)が、該案内プレート(22)の第1の端部(44)に配置された水平シャフト(30)のまわりで回転可能であり、それによって移動部材(50)が、前記案内プレート(22)の前記脱水ドラム(8)からの距離(S)を調整するために、前記プレートの前記第1の端部(44)と反対側の前記案内プレート(22)の第2の端部(48)で前記案内プレート(22)に接続されることを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記案内プレート(22)の前記第1の端部(44)が、垂直方向に見て、前記案内プレートの前記第2の端部(48)より上に位置決めされる請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記案内プレート(22)が、前記供給路(18)より下に配置される請求項1又は2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記案内プレート(22)が、前記脱水ドラム(8)と共に前記ギャップ(20)を形成するように配置されたプレス面(36)を有し、それによって前記供給路(18)が、前記プレス装置(1)の動作中に前記プレス面(36)の上側端部(38)と通じるように配置されたノズル端部(42)を有する請求項1から3までのいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項5】
前記プレス面(36)の前記上側端部(38)と前記供給路(18)に含まれる下側供給プレート(34)との間に、シール・ストリップ(40)が配置される請求項4に記載のプレス装置。
【請求項6】
前記案内プレート(22)が、少なくとも部分的に前記分散装置(2)と同じ水平高さに配置される請求項1から5までのいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項7】
前記案内プレート(22)が、少なくとも部分的に前記分散装置(2)と前記脱水ドラム(8)の間に配置される請求項1から6までのいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項8】
前記案内プレート(22)の中心部分(C)が、前記分散装置(2)と前記脱水ドラム(8)の間に配置される請求項7に記載のプレス装置。
【請求項9】
前記移動部材が油圧で操縦される移動部材(50)である請求項1から8までのいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項10】
前記移動部材(50)が、本質的に水平な方向(B)に動作するように配置される請求項1から9までのいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項11】
固体の生物由来物質の液体懸濁液を脱水するためのプレス装置を清浄化する方法あって、前記プレス装置が、
固体の生物由来物質の液体懸濁液を受け入れ、また前記懸濁液を脱水ドラム(8)に沿って水平方向に分散させるように配置された分散装置(2)と、
前記脱水ドラム(8)の下に配置された案内プレート(22)及びトラフ(24)であって、一方の側の前記脱水ドラム(8)と他方の側の前記案内プレート(22)及び前記トラフ(24)との間にギャップ(20)を形成するように前記脱水ドラム(8)から所定の距離に配置されており、それによって前記ギャップ(20)内において、前記プレス装置の動作の下で前記懸濁液から液体が搾り出されて、脱水された前記固体の生物由来物質のパルプを形成することができる案内プレート(22)及びトラフ(24)と、
前記液体懸濁液を前記分散装置(2)から前記ギャップ(20)へ導くように配置された供給路(18)と
を有している方法において、
前記案内プレート(22)が、該案内プレート(22)の第1の端部(44)に配置された水平シャフト(30)のまわりで回転可能であり、それによって移動部材(50)が、前記案内プレート(22)の前記脱水ドラム(8)からの距離(S)を調整するために、前記プレートの前記第1の端部(44)と反対側の前記案内プレート(22)の第2の端部(48)で前記案内プレート(22)に接続され、それによって、清浄化のために前記案内プレート(22)と前記脱水ドラム(8)の間の空間(20)がアクセス可能になるように、前記プレス装置(1)の清浄化中に前記案内プレート(22)の前記第2の端部(48)が前記移動部材(50)によって前記脱水ドラム(8)から離れる方向(B)に動かされることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記プレス装置(1)の清浄化中、前記脱水ドラム(8)の下側部分にアクセスするために、前記トラフ(24)が垂直方向下方に動かされる請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス装置に関するものであり、このプレス装置は、固体の生物由来物質の液体懸濁液を受け入れ、且つ懸濁液を脱水ドラムによって水平方向に分散させるように配置された分散装置と、脱水ドラムの下に配置された案内プレート及びトラフであって、一方の側の脱水ドラムと他方の側の案内プレート及びトラフとの間にギャップを形成するように前記脱水ドラムから所定の距離に配置され、それによってギャップ内において、固体の生物由来物質から脱水されたパルプを生成するために、プレス装置の動作の際に懸濁液から液体が搾り出されることができる案内プレート及びトラフと、液体懸濁液を分散装置からギャップへ導くように配置された供給路とを有する。
【0002】
本発明はまた、前述のタイプのプレス装置を清浄化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
固体の生物由来物質の液体懸濁液の脱水を目的とするプロセスは、懸濁液からドラム内に水を搾り出すプレス装置を多くの場合に利用し、それによって、生物由来物質から比較的乾燥したパルプが得られる。そうしたプロセスの実例は、セルロース繊維からの製紙用パルプの生成であり、このプロセスは、パルプを脱水し、場合によっては洗浄する1つ又は複数のプレス装置を有することが多い。多くの場合に脱水プレス装置又は洗浄プレス装置と呼ばれるそうした種類のプレス装置は、パルプを脱水するだけか、又は洗浄も行うかどうかに応じて、パルプが押し付けられる少なくとも1つの回転ドラムを有することが多い。パルプがドラムに押し付けられると、水がドラムの内部に搾り出され、脱水されたパルプがドラムの外面上に残り、例えばいわゆるスクレーパによって、ドラムの外面からこすり落とされる。パルプのプレスは、ドラムを囲むトラフ及び案内プレートによって行われる。
【0004】
一方の側のトラフ及び案内プレートと他方の側のドラムとの間に、ドラムの回転方向に収束するギャップが形成される。
【0005】
脱水されたパルプを生成するために、前述のタイプのプレス装置において液体懸濁液を脱水する間に、パルプが、前記ギャップ、液体懸濁液をプレス装置に供給する装置、又は脱水されたパルプをプレス装置から放出する装置の中に詰まることがある。そのような場合にはプレス装置を停止し、内部に残るパルプを除去しなければならない。欧州特許第1035250号は、内部に存在し得るパルプにアクセスするためにトラフの下側部分を下げることができるプレス装置について記述している。さらにトラフの側部を、ドラムのさらに他の部分にアクセスするためのバッフルとして外側下向きに傾斜させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1035250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、固体の生物由来物質の液体懸濁液を脱水するためのプレス装置を提供することであり、このプレス装置は、従来技術よりも簡単にプレス装置の内側に詰まった物質を除去する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、固体の生物由来物質の液体懸濁液を受け入れ、且つ懸濁液を脱水ドラムによって水平方向に分散させるように配置された分散装置と、脱水ドラムの下に配置された案内プレート及びトラフであって、一方の側の脱水ドラムと他方の側の案内プレート及びトラフとの間にギャップを形成するように脱水ドラムから所定の距離に配置され、それによってギャップ内で、固体の生物由来物質からなる脱水されたパルプを形成するためにプレス装置の動作の際に懸濁液から液体が搾り出されることができる案内プレート及びトラフと、液体懸濁液を分散装置から前記ギャップへ導くように配置された供給路とを有するプレス装置によって実現され、このプレス装置はまた、案内プレートがその第1の端部に配置された水平シャフトのまわりで回転可能であり、また移動部材がプレートの第1の端部と反対側の案内プレートの第2の端部で案内プレートに接続され、それによって案内プレートの脱水ドラムからの距離を調整可能であることを特徴とする。
【0009】
このプレス装置の利点は、その構造がコンパクト且つ単純であると同時に、起こり得る運転停止時にプレス装置を迅速に清浄化することができるように、ドラムと案内プレートの間に詰まった可能性のあるパルプへの単純な通路を提供することである。
【0010】
一実施例によれば、案内プレートの第1の端部は、垂直方向に見て、案内プレートの他端より上に位置決めされる。この実施例の利点は、ドラムと案内プレートの間に詰まったパルプが、重力によって、場合によってはいくつかの器具にも助けられて落下し、ギャップから離れることができるように、案内プレートの下側部分をドラムから移動させることが可能であることである。
【0011】
一実施例によれば、案内プレートは前記供給路より下に配置される。この実施例の利点は、パルプが、供給路から下方へ案内プレートに向かって導かれることであり、それによって、案内プレートとドラムの間でパルプが詰まる又は押しつぶされる危険性が低減され、いずれにしても起こるであろう場合においてパルプの除去が簡単になる。
【0012】
好ましくは、案内プレートは、脱水ドラムと共に前記ギャップを形成するように設けられたプレス面を有し、それによって供給路は、プレス装置が作動している間、プレス面の上側端部と通じるように配置されたノズル端部を有する。このことの利点は、案内プレートが供給路まで延びるため、案内プレートとドラムの間のギャップ内に詰まったパルプを除去する間、適切なアクセスがもたらされることである。
【0013】
一実施例によれば、プレス面の上側端部と供給路に含まれる下側供給プレートとの間に、シール・ストリップが配置される。このことの利点は、プレス装置の動作中、液体懸濁液の漏出の危険性がわずかであることと組み合わせて、案内プレートとドラムの間のギャップへの適切なアクセスが得られることである。
【0014】
一実施例によれば、案内プレートは、少なくとも部分的に分散装置と同じ水平面上に配置される。この実施例の利点は、コンパクトなプレス装置が提供されることである。
【0015】
一実施例によれば、案内プレートは、少なくとも部分的に分散装置と脱水ドラムの間に配置される。この実施例は、分散装置と案内プレートが脱水ドラムの横の共通の空間を共有するため、きわめてコンパクトな構造を提供する。さらに、案内プレートのためにプレス装置の側面に空間が不要であるか、又はきわめて小さい空間しか必要としない。より好ましくは、案内プレートの中央部分が、分散装置と脱水ドラムの間に配置される。
【0016】
好ましい実施例によれば、移動部材は油圧で操縦される移動部材である。そうした種類の移動部材は操縦が簡単であり、またドラムと案内プレートの間のギャップ内でパルプをプレスするとき、高い力をもたらす。
【0017】
好ましい実施例によれば、移動部材は、本質的に水平な方向に動作するように配置される。これにより、移動部材についてきわめてコンパクト且つフレキシブルな実施例が提供される。
【0018】
本発明の他の目的は、固体の生物由来物質の液体懸濁液を脱水するためのプレス装置を清浄化するフレキシブルな方法を提供することである。
【0019】
この目的は、固体の生物由来物質の液体懸濁液を脱水するためのプレス装置を清浄化する方法によって実現され、この方法において、プレス装置は、固体の生物由来物質の液体懸濁液を受け入れ、且つ懸濁液を脱水ドラムによって水平方向に分散させるように配置された分散装置と、脱水ドラムの下に配置された案内プレート及びトラフであって、一方の側の脱水ドラムと他方の側の案内プレート及びトラフとの間にギャップを形成するように脱水ドラムから所定の距離に配置されており、このギャップ内において、固体の生物由来物質から脱水されたパルプを得るためにプレス装置の動作中に懸濁液から液体を搾り出すことができる案内プレート及びトラフと、液体懸濁液を分散装置から前記ギャップへ導くように配置された供給路とを有しており、またこの方法は、案内プレートがその第1の端部に配置された水平シャフトのまわりで回転可能であり、移動部材がプレートの第1の端部と反対側の案内プレートの第2の端部で案内プレートに接続され、それによって案内プレートの脱水ドラムからの距離を調整することができ、またプレス装置の清浄化中に案内プレートの第2の端部を移動部材によって脱水ドラムから離れる方向に移動させることによって、清浄化のために案内プレートと脱水ドラムの間の空間にアクセスが可能となることを特徴とする。
【0020】
この方法の利点は、案内プレートとドラムの間に詰まった物質へのアクセス及びその除去が、きわめてフレキシブル且つ簡単になることである。
【0021】
本発明の他の利点及び特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【0022】
以下では、例示的な実施例によって、また添付図面を参照して、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例による、繊維懸濁液を脱水するため及び場合によって洗浄するためのプレス装置を示す斜視図である。
【
図2】断面II−IIに沿った
図1のプレス装置を示す断面図である。
【
図3】
図1及び2の案内プレートを拡大したものを示す断面図である。
【
図4】プレス装置の動作中の、
図3の案内プレートを示す断面図である。
【
図5】メンテナンス状態の
図3の案内プレートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び2は、例えば紙の製造のためにセルロース繊維の液体懸濁液を脱水するためのプレス装置1を概略的に示している。
図1はプレス装置1を、一部は詳しく示し、一部のカバーは上げて外した状態の斜視図として示しており、
図2は、
図1の断面II−IIに沿って示されたプレス装置1を示している。
【0025】
プレス装置1は、
図1に最もよく示されるように、長手方向の第1の分散スクリュー2を備えている。分散スクリュー2は、セルロース繊維の形態の固体の生物由来物質の液体懸濁液のための、中央に配置された入口4を有している。液体懸濁液中のセルロース繊維の重量百分率は、典型的には3〜15重量%である。液体懸濁液は場合により不純物も含むが、通常は約1重量%以下であり、残りの部分、すなわち84〜96重量%は水である。液体懸濁液を液体懸濁液の供給源(図示せず)、例えばパルプ製造機から入口4へ導入するために、入口管路6が配置される。
【0026】
第1の分散スクリュー2は、点形式の(point−formed)入口4を介して受け入れられた液体懸濁液を、第1の脱水ドラム8に沿って分散させる。脱水ドラム8は、穴のあいたプレート又は濾布など液体を通すことができる層を有し、それによって、懸濁液をドラム8の外周部に押し付けている間に脱水されたパルプの形のセルロース繊維はドラム8の表面上に残され、液体はドラム8の内部にプレスされ、運び去られる。
【0027】
分散スクリュー2は、本質的に脱水ドラム8の全長に沿って延びる。それは実際には、分散スクリュー2の有効長さLF(有効長さLFとは、分散スクリュー2が液体懸濁液をそれに沿って脱水ドラム8へ導入する長さである)が、典型的には脱水ドラム8の有効長さLT(有効長さLTとは、脱水ドラム8がパルプをそれに沿って受け入れ、プレスする長さである)の約75〜120%、より典型的には80〜110%であることを意味する。
図1に示される前述の有効長さLF及びLTに加えて、分散スクリュー2及びドラム8はどちらも、とりわけ、言及したように液体懸濁液をそれに沿って分散させる長さである有効長さではなく、そのそれぞれの全長の中に含まれる軸受及び端部であって、それぞれ押されてさらに乾燥したパルプを生成する、
図1に示さていない軸受及び端部を有することが理解される。
【0028】
図1及び2から明らかになるように、プレス装置1は、第2の分散スクリュー10、液体懸濁液を第2の分散スクリュー10に導入するように配置された管路11、及び第2の脱水ドラム12も備えている。
図2から、プレス装置1はその中心部のまわりで本質的に対称であることが明らかになる。このため、主に
図2に示すプレス装置1の右側部分について説明するが、プレス装置1の左側部分が本質的に対応する形を有すること、すなわち鏡面反転しただけであることが理解される。
【0029】
分散スクリュー2は、
図1を詳細に拡大したものから明らかになるように、ケーシング14を有し、ケーシング14の内側には、スクリュー16が分散スクリュー2の動作下で回転するように配置される。スクリュー16に関して、その中心部分はスクリュー16の中心から見ると両方向で円錐形であり、点形式の入口4を介して供給される液体懸濁液は、脱水ドラム8の有効長さLTに沿って均一に分散される。
図2に示すように、供給路18は、供給スクリュー2の上側部分から本質的に水平に、ハウジング14の周縁部に沿って見るとほぼ11時の位置で、脱水ドラム8に向かって延びている。
図1から、供給路18は、本質的に分散スクリュー2の有効長さLFと同じである有効長さLIを有することが明らかになり、より正確には、長さLIは通常、長さLFの80〜110%である。
【0030】
プレス装置1の動作下において、液体懸濁液は管路6を介して入口4に供給される。液体懸濁液は、例えば繊維の洗浄から得ることができ、又はプロセスを考慮してプレス装置1の上流に配置された、プレス装置1に類似する別のプレス装置に接続されたパルプ製造機から得ることができる。懸濁液は、分散スクリュー2のスクリュー16によって分散され、供給路18を介して、一方の側の脱水ドラム8と他方の側の案内プレート22及びトラフ24との間に形成されたギャップ20へ導かれる。
図2から明らかになるように、ギャップ20は、供給路18からさらに、ドラム8の回転方向Rに見て、収束する幅を有する。結果として、液体懸濁液がドラム8によって、収束するギャップ20内でまず案内プレート22に、その後トラフ24に押し付けられると、液体懸濁液から液体がプレスされてドラム8に入り、それによって、ドラム8の外側に残るセルロース繊維が、さらに脱水されたセルロース繊維のパルプを形成する。次いで、例えば乾燥固体の含有量が15〜55重量%、より典型的には20〜50重量%である脱水されたパルプは、
図2に従ってドラム8の周縁部に沿って見るとほぼ9時の位置でドラム8から放出され、洗浄及び/又は乾燥など次の処理のために、シェダー・スクリュー26によって運び去られる。
【0031】
プレス装置1は、1つ又は複数の洗浄装置28を備えることが可能であり、それによって、パルプから不純物を洗い落とすために、パルプがギャップ20の中に残っている間に、清浄な水、又は他のプロセス段階からの濾過水若しくは凝縮水などの洗浄液をパルプに導入することができる。
【0032】
プレス装置1の動作中、パルプがギャップ20内で詰まる可能性がある。このためにプレス装置1の運転停止が起こり、したがってドラム8にアクセスしてパルプの除去を行うことができるように、トラフ24を、
図2の矢印Nに示す垂直方向下方へ下げなければならない。本発明に従い、以下にさらに詳しく示す方法によって、案内プレート22をフレキシブルな方法で下げることも可能である。
【0033】
図3は、動作状態の準備ができている、すなわち液体懸濁液を分散スクリュー2に導入することができる状態にある本発明の一実施例による案内プレート22を示している。案内プレート22は、水平シャフト30によって回転可能である。
図1から明らかになるように、案内プレート22は、水平方向に見ると本質的にドラム8の有効長さLT全体に沿って延びる。すなわち、案内プレート22は、典型的にはドラム8の有効長さLTの80〜120%である有効長さLPを有する。シャフト30は、プレス装置1内のそのそれぞれの端部に軸受によって取り付けられるが、プレス装置1内の案内プレート22の長さLPに沿った1つ又は複数の他の位置に、軸受によって取り付けることもできる。
【0034】
図3に見られるように、案内プレート22は、少なくとも部分的に分散スクリュー2と同じ水平高さに配置され、案内プレート22の中心部分Cは、分散スクリュー2と脱水ドラム8の間に配置される。
【0035】
図3に最もよく示されるように、供給路18は、上側供給プレート32及び下側供給プレート34を有する。案内プレート22は、ドラム8と共にギャップ20を形成するように設けられたプレス面36を有する。プレス面36の上側端部38は、シール・ストリップ40を介して下側供給プレート34のノズル部分42と接触し、そのノズル部分において供給路18がギャップ20へと出る。案内プレート22は、その上側端部44にノッチ46を有し、ノッチ46には水平シャフト30が、例えば溶接によって固定される。
【0036】
案内プレート22は、分散スクリュー2の上側部分の高さにある位置から、分散スクリュー2の下側部分より低い位置まで延びる。その下側端部48において、案内プレート22は油圧ピストン50に接続される。油圧ピストン50はプレス装置1に固定され、
図3に見られるように、分散スクリュー2の下に配置される。油圧ピストン50は、本質的に水平な位置で動作するように配置される。
図1から明らかになるように、案内プレート22の長さLPに沿って、いくつかの油圧ピストン50を配置することができる。油圧ピストン50は、
図1に示す加圧作動液の供給源52に接続することができる。制御ユニット54が、前記供給源52から油圧ピストン52に導入される加圧作動液の量を制御し、それによって、水平方向における油圧ピストン50の移行点を調整することができる。油圧ピストン50の移行点の調整中、制御ユニット54は、加圧作動液の供給源52からピストン50への加圧作動液の供給を制御する。
【0037】
図3から明らかになるように、水平方向おける油圧ピストン50の水平移行点を制限するために、プレス装置に機械的なアレスタ(拘束具)56が設けられる。油圧ピストン50のピストンはチャック58を備え、チャック58は、
図3の油圧ピストン50の位置でアレスタ56に押し付けられる。それによって、油圧ピストン50及び案内プレート22は、案内プレート22とドラム8の間に所望の幅のギャップ20を形成する第1の端部位置に達する。好ましくは、油圧ピストン50のチャック58がアレスタ56に押し付けられたとき、ギャップ20の幅を細かく調整するために、油圧ピストン50のピストンはねじ付きの調整装置を備える。
【0038】
図3の動作の準備ができた状態では、油圧ピストン50は、動作に所望されるギャップ20の幅を形成するために、案内プレート22の下側部分48をドラム8に向かう方向に移動させている。油圧ピストン50は、それ自体は周知の機械的な締め具を備えることが好ましく、油圧システムの圧力が解放された後も、油圧ピストン50は、締め具によって
図3に示す位置に固定される。油圧ピストン50自体におけるそうした機械的な締め具に対する別法として、トラフ24は、代替的実施例に従って、
図3に上向きのピン60として示すピンを備えることが可能であり、ピンは、案内プレート22を動作位置に固定する。トラフ24が垂直方向上向きにその動作位置まで押され、案内プレート22をその動作位置に固定すると、このピン60は、案内プレート22の下側部分48に押し込まれる。
図5を参照してさらに詳しく説明する清浄化のためにトラフ24が下げられると、ピン60は下方へそれに追従して案内プレート22から引き出され、したがって、案内プレート22が解放される。他の代替的実施例は、プレス装置の動作下で、油圧ピストン50を常に加圧状態に保ち、それによって案内プレート22をその動作位置に保つことである。
【0039】
図4は、プレス装置1の動作中の
図3に示した案内プレート22を示すものである。
図4に示す位置では、油圧ピストン50は、案内プレート22を、所望の幅のギャップ20を形成する位置に保つ。
図4から明らかになるように、液体懸濁液は入口4を介して、さらに分散スクリュー2まで導かれる。分散スクリュー2は液体懸濁液を、
図1に示すドラム8の有効長さLTに沿って分散させ、次いで液体懸濁液を、さらに供給路18まで導く。液体懸濁液は、供給路18を介してギャップ20に達し、さらに乾燥したパルプを生成する間、矢印Rで示されるドラム8の回転下において、ドラム8と案内プレート22のプレス面36との間でプレスされる。
図4に部分的に示すが、
図2から最も明らかになるように、案内プレート22のプレス面36とドラム8との間でプレスされた後、パルプは、ドラム8とトラフ24の間でさらに高い乾燥固体の含有量までさらにプレスされる。
【0040】
図5は断面図であり、メンテナンス位置における本発明の一実施例による
図3の案内プレート22を示している。メンテナンス位置は、例えばパルプがギャップ20内で詰まったときに用いられる。その種の状態では、
図1及び2に示すトラフ24は、
図2の矢印Nに従って垂直方向下方へ下げられ、それにより、清浄化のためにドラム8の下側部分にアクセスすることが可能になる。そのようにトラフを垂直方向に下げること自体は知られており、例えばEP1035250の
図1の右側の欄に記載されている。再び本発明の
図5を参照すると、トラフ24はもはやその動作位置にないことが明らかになる。案内プレート22はプレス装置1自体に取り付けられ、移動可能なトラフ24上にないため、案内プレート22はトラフ24から解放されている。そのため案内プレート22は、トラフ24を垂直方向下方に下げても追従しない。トラフ24を下方に下げることに加えて、本発明の一実施例の方法に従って、案内プレート22をドラム8から引き戻すために
図1の制御システム54が加圧作動液の供給源52を制御すると、やはり油圧ピストン50が作動状態になる。すなわち、油圧ピストン50が案内プレート22の下側端部48を方向Bに引いてドラム8から離し、それによって案内プレート22は、水平シャフト30のまわりで分散スクリュー2に向かう方向に回される。
図5に示す位置では、油圧ピストン50は、案内プレート22を機械的なアレスタ56に向かって引き、それによって、油圧ピストン50及び案内プレート22がもう1つの端部位置に達する。油圧ピストン50が下側端部48を引くと、案内プレート22は、その上側端部44でシャフト30の対称軸のまわりを回転するようになる。この動きによって、ギャップ20は、
図5にSで示される拡幅された最も長い距離になるが、それは、ドラム8と案内プレート22のプレス面36との間の案内プレート22の下側端部48に形成される。結果として、プレス面36とドラム8の間に堆積したパルプは自然に解放され、ギャップ20から下方へ落下することが可能になり、且つ/又は油圧ピストン50が案内プレート22の下側端部48を引き戻すことによって、オペレータは、アクセス可能な幅まで拡幅されたギャップ20の中に清浄化用の器具若しくは単に自身の手を簡単に挿入し、詰まったパルプを解放することが可能になる。
図5から明らかになるように、ギャップ20は、案内プレート22の上側端部44まで、すなわち供給路18内への入口までの経路全体で拡幅され、その結果、オペレータは、供給路18がギャップ20に出る位置まで、ギャップ20に詰まったパルプに簡単にアクセスすることが可能になり、それは、従来技術、例えば対応する入口の近くに詰まったパルプにアクセスし、それを解放することがきわめて難しいEP1035250に比べると本質的な利点となる。さらに本発明によれば、案内プレート22は、EP1035250に示されるバッフルより著しく単純な構造を有する。さらなる利点は、案内プレート22は、EP1035250に示される解決策とは異なり、
図5に示す引き戻された位置においてプレス装置の側面にいかなる空間も必要としないことである。したがって、本発明による案内プレート22を備えたプレス装置1は、空間が限られた場所に配置することが可能である。
【0041】
ギャップ20を清浄化しパルプが除かれると、案内プレート22を油圧ピストン50によって
図3に示す動作の準備ができた状態に戻すこと、及びトラフ24を
図1に示す位置に戻すことが可能になり、したがって、繊維懸濁液を再び入口4、分散スクリュー2及び供給路18を介して、ギャップ20に供給できるようになる。
【0042】
前述の実施例の多くの変更形態が、添付の特許請求の範囲によって定められる範囲内で考えられることが理解されるであろう。
【0043】
これまで、セルロース繊維を含む液体懸濁液を脱水するために、プレス装置1をどのように利用するかについて説明してきた。プレス装置1は、他のタイプの固体の生物由来物質の懸濁液を脱水するために利用することも可能であることが理解される。そうした物質の実例には、例えばエタノール生成プロセス、バイオガス生成プロセス又は燃料ペレット生成プロセスによる燃料の生成に使用する前に脱水され、場合によっては洗浄される様々なタイプのバイオマスが含まれる。バイオマスをその燃焼前に脱水するのに、プレス装置を利用することも可能である。前述のプレス装置で脱水可能なバイオマスの実例には、わら、バガス、他の一年生植物、草、野菜の頂部、葉、針葉樹の落葉落枝、藻類、コケなどが含まれる。懸濁液中の液体は水とすることができるが、脱水される懸濁液中に、例えば様々な有機溶媒若しくは無機溶媒など他の液体が存在してもよい。
【0044】
これまで、プレス装置1が1つ又は複数の洗浄装置28を備えるものについて説明してきた。脱水される物質の洗浄が不要である場合には、プレス装置は、こうした装置なしで設計することも可能であることが理解される。
【0045】
これまで、案内プレート22の位置を制御するために、加圧作動液の供給源52に接続された油圧ピストン50をどのように利用することができるかについて説明してきた。水平方向に動作する他の移動部材を利用することが可能であることが理解される。例えば油圧ピストンを、案内プレート22に対する所望の位置まで手動で上下に動かす通常の油圧リフタで置き換えることができる。他の可能性は、移動部材として、分散スクリュー22の下で作動し、その移動位置を固定のキーによって調整することができる、調整用のボルトを備えたねじ付きのロッドを利用することである。
【0046】
これまで、2つの反対方向に回転する脱水ドラム8、12を有するプレス装置1について説明してきた。本発明は、単一の脱水ドラムを有するプレス装置に適用することも可能である。