(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662999
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】最小限の侵襲性の脊柱補強及び安定化のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
A61B17/56
【請求項の数】28
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-504778(P2012-504778)
(86)(22)【出願日】2010年4月6日
(65)【公表番号】特表2012-523280(P2012-523280A)
(43)【公表日】2012年10月4日
(86)【国際出願番号】US2010030089
(87)【国際公開番号】WO2010118021
(87)【国際公開日】20101014
【審査請求日】2013年4月8日
(31)【優先権主張番号】61/168,046
(32)【優先日】2009年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505377463
【氏名又は名称】ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】シャヴァット クリス
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー マルクス
【審査官】
村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−530151(JP,A)
【文献】
特表2004−526525(JP,A)
【文献】
特開2004−248791(JP,A)
【文献】
特表2002−531229(JP,A)
【文献】
特表2006−522612(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/097659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎体を増強するように形成されるシステムであって、このシステムが、
拡張可能な格納装置であって、拡張可能な格納装置は、内部装置キャビティを形成し、さらに、椎体に拡張可能な格納装置を挿入する方向に対する前縁と、前縁と反対の位置にあり且つ第1の方向にほぼ沿う前縁から離間された後縁と、を形成している、上記拡張可能な格納装置と、
シャーシであって、拡張可能な格納装置を少なくとも部分的に受け入れるように形成されている、内部シャーシキャビティを形成してなる、上記シャーシと、
カニューレであって、近位カニューレ端と、近位カニューレ端と反対の位置にある遠位カニューレ端と、近位カニューレ端と遠位カニューレ端との間に延在する通路とを具備してなる、上記カニューレと、
ガイドワイヤであって、カニューレ通路内に受け入れられるようにサイズ合わせされ且つ遠位ガイドワイヤ端部分を有し、遠位ガイドワイヤ端部分をカニューレの内側からカニューレの外側に移動させることにより、遠位ガイドワイヤ端部分を、遠位ガイドワイヤ端部分が椎体カニューレの内側に配置されるとき、該遠位ガイドワイヤ端部分が、椎体を横切って概略横方向に延在するような形状に変更させる、上記ガイドワイヤと、
スリーブであって、スリーブ通路を形成し、スリーブは、カニューレ通路の中に挿入されるサイズ及び構造をもち、スリーブは、シャーシに着脱可能に結合されるように形成され、充填材料を、スリーブ通路を通して、内部装置キャビティ中に導入でき、拡張可能な格納装置が内部シャーシキャビティ内に少なくとも部分的に配置されるとき、拡張可能な格納装置を第1の方向とほぼ垂直である第2の方向に沿って拡張させ、それによって、拡張可能な格納装置の少なくとも一部を第2の方向に沿ったシャーシに対して外側に配置させる、上記スリーブと、
を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
システムがさらに、プランジャを備え、プランジャは、少なくとも部分的に可撓性である遠位端部分と、ボアとを具備し、プランジャは、ガイドワイヤにかぶさって前進できることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
シャーシは、前方部分と、前方部分と反対の位置にある後方部分とを具備し、前方部分は窓を形成し、この窓が、充填材料が内部装置キャビティに導入されるとき、拡張可能な格納装置が椎体の前方部分に向かって拡張するように拡張可能な格納装置の一部を露出させ、拡張可能な格納装置及びシャーシが椎体の内側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
シャーシは、前縁と、前縁と反対の位置にある後縁と、を形成し、シャーシの前縁は、テーパノーズを具備している請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
シャーシは、遠位ガイドワイヤ端部分がカニューレの外側に配置されるとき、遠位ガイドワイヤ端部分の曲率と同様な曲率を有している請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
格納装置の中間部分のうち、少なくとも一部分は、前方に配置された複数のセメント導入孔を具備していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
ガイドワイヤは、形状記憶材料を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
遠位ガイドワイヤ端部分は、第1の形状と、第1の形状と異なる第2の形状を有し、遠位ガイドワイヤ端部分をカニューレの内側からカニューレの外側に移動させることにより、遠位ガイドワイヤ端部分を第1の形状から第2の形状に移行させる請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
第1の形状はほぼ直線形状であり、第2の形状は湾曲された形状であり、そして、湾曲された形状において、遠位ガイドワイヤ端部分が、カニューレの外側及び椎体の内側に配置されるとき、椎体の前縁に面する凸側を形成する請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
湾曲された形状において、遠位ガイドワイヤ端部分が、カニューレの外側及び椎体の内側に配置されるとき、遠位ガイドワイヤ端部分が、椎体の後縁に面する凸側を形成する請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
シャーシは、拡張可能な格納材料が、内部装置キャビティ内への充填材料の導入により拡張する間、拡張可能な格納装置に対して静止状態を保つように形成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
ガイドワイヤは、第2のガイドワイヤであり、このシステムは、椎体内に延びるように形成されている第1のガイドワイヤをさらに備え、第1のガイドワイヤは、カニューレが遠位カニューレ端が椎体に隣接して配置されるまで第1のガイドワイヤに沿って移動するとき、カニューレ通路内に受け入れられるように形成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
第1のガイドワイヤは、カニューレ通路から取り外し可能であり、第2のガイドワイヤは、カニューレ通路を通って椎体に続いて挿入可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
拡張可能な格納装置が、シャーシ及び拡張可能な格納装置が椎体に同時に導入されるように、シャーシに連結されている請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
拡張可能な格納装置が、拡張可能な格納装置の少なくとも一部が、一度シースが椎体の内側に配置されると、シースの前縁と後縁との間に配置されるように、シャーシに連結されている請求項4に記載のシステム。
【請求項16】
椎体を増強するように形成されるシステムであって、このシステムが、
内部装置キャビティを形成する拡張可能な格納装置と、
カニューレであって、近位カニューレ端と、近位カニューレ端から離間された遠位カニューレ端と、近位カニューレ端と遠位カニューレ端との間に延在するカニューレ通路とを形成している、上記カニューレと、
シャーシであって、このシャーシは拡張可能な格納装置を少なくとも部分的に受け入れるように形成されている内部シャーシキャビティを形成し、シャーシはカニューレ通路内に受け入れられるように形成され、シャーシは、挿入端と、前縁と反対の位置にある後縁とを形成し、シャーシは、シャーシ軸線に沿って延び、シャーシは、第1の形状と、第1の形状と異なる第2の形状を有し、シャーシをカニューレの内側からカニューレの外側に移動させることにより、シャーシがシャーシ軸線に沿って湾曲されるように、シャーシを第1の形状から第2の形状に移行させる、上記シャーシと、
スリーブであって、スリーブは、スリーブ通路を形成し、スリーブは、カニューレ通路の中に受け入れられるようなサイズにされ、スリーブは、シャーシに着脱可能に結合されるように形成され、充填材料を、スリーブ通路を通して、内部装置キャビティ中に導入でき、拡張可能な格納装置が内部シャーシキャビティ内に少なくとも部分的に配置されるとき、拡張可能な格納装置を拡張させる、上記スリーブと、
を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項17】
第1の形状はカニューレ通路の形状とほぼ同様の形状であり、第2の形状は、シャーシがシャーシ軸線に沿って湾曲されたときとして定義される請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
シャーシが形状記憶材料を有している請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
シャーシが、前方部分と、前方部分と反対の位置にある後方部分とを有し、後方部分と前方部分とが共動して内部シャーシキャビティを少なくとも部分的に形成し、前方部分が内部シャーシキャビティに通じる窓を形成し、この窓が、シャーシが椎体内側に配置されるとき、充填材料の内部装置キャビティへの導入によって拡張可能な格納装置の一部を椎体の前方部分に向かって拡張するように拡張可能な格納装置の一部を露出させる請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
シャーシを、カニューレの内側からカニューレの外側に移動させることにより、シャーシがシャーシ軸線に沿って湾曲されるように、シャーシを第2の形状に曲がらせる請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
椎体を増強するように形成されるシステムであって、このシステムが、
内部装置キャビティを形成する拡張可能な格納装置と、
カニューレであって、近位カニューレ端と、近位カニューレ端から挿入方向に沿って離間された遠位カニューレ端と、近位カニューレ端と遠位カニューレ端との間に延在するカニューレ通路とを形成している、上記カニューレと、
シャーシであって、このシャーシは拡張可能な格納装置を少なくとも部分的に受け入れるように形成されている内部シャーシキャビティを形成し、シャーシはカニューレ通路内に受け入れられるように形成され、シャーシは、第1の形状と、第1の形状と異なる第2の形状を有し、シャーシをカニューレの内側からカニューレの外側に移動させることにより、シャーシを第1の形状から、シャーシが挿入方向に対して横方向に延びるように湾曲するような第2の形状に移行させる、上記シャーシと、
スリーブであって、スリーブは、スリーブ通路を形成し、スリーブは、カニューレ通路の中に受け入れられるようなサイズにされ、スリーブは、シャーシに着脱可能に結合されるように形成され、充填材料を、スリーブ通路を通して、内部装置キャビティ中に導入でき、拡張可能な格納装置が内部シャーシキャビティ内に少なくとも部分的に配置されるとき、拡張可能な格納装置を拡張させる、上記スリーブと、
を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項22】
シャーシを、カニューレの内側からカニューレの外側に移動させることにより、シャーシを第2の形状に曲がらせる請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
さらに、カニューレ通路内に受け入れられるようにサイズ合わせされ且つ遠位ガイドワイヤ端部分を有するガイドワイヤを備え、遠位ガイドワイヤ端部分をカニューレの内側からカニューレの外側に移動させることにより、遠位ガイドワイヤ端部分が椎体カニューレの外側に配置されるとき、遠位ガイドワイヤ端部分を、挿入方向に対してほぼ横方向に延在するような形状に変更させる請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
シャーシが、前方部分と、前方部分と反対の位置にある後方部分とを有し、後方部分と前方部分とが共動して内部シャーシキャビティを少なくとも部分的に形成し、前方部分が内部シャーシキャビティに通じる窓を形成し、この窓が、シャーシが椎体内側に配置されるとき、充填材料の内部装置キャビティへの導入によって拡張可能な格納装置の一部を椎体の前方部分に向かって拡張するように拡張可能な格納装置の一部を露出させる請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
拡張可能な格納装置が、シャーシ及び拡張可能な格納装置が椎体に同時に導入されるように、シャーシに連結されている請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
シャーシが形状記憶材料を有している請求項21に記載のシステム。
【請求項27】
遠位ガイドワイヤ端部分は、遠位ガイドワイヤ端部分が椎体カニューレの内側に配置されるとき、第1の方向と横に且つ椎体を横切る横方向に沿って概ね湾曲する請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
カニューレの内側からカニューレの外側にシャーシを移動することにより、シャーシが挿入方向と横向きである横方向に沿って延びて湾曲するように、シャーシを第1の形状から第2の形状に移行させる請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最小限の侵襲性の脊柱補強及び安定化のシステム及び方法に関する。本願は、2009年4月9日に出願された、発明の名称を「最小限の侵襲性の脊柱補強及び安定化のシステム及び方法("Minimally Invasive Spine Augmentation and Stabilization System and Method")」とする、米国仮特許出願第61/168,046号を基礎とする優先権を主張し、その内容をここで参照によって完全に引用する。
【背景技術】
【0002】
椎骨圧縮破損("VCF")は、脊柱の傷害の代表であり、長期にわたる障害をもたらす。一般的に、VCFは、脊柱における1又は複数の椎体の崩壊を伴う。VCFは通常、胸部脊柱の下部椎骨又は腰部脊柱の上部椎骨において発症する。代表的に、椎体の前方部分が、後方部分に比べて、よりひどく崩壊して、VCFが起こったときに、潜在的に、楔形状の圧縮された椎体をもたらす。VCFは、脊柱における影響を受けた領域において、椎体の正常な整列ないし彎曲、例えば、前彎に変形をもたらす。VCF及び/又は関連する脊柱変形は、例えば、脊柱の疾患の転移や、外傷、及び/又は骨粗しょう症から始まる。最近まで、VCF及び関連する脊柱変形に対して、医者が有する治療のオプションは限られていた。
【0003】
VCFを治療するための、最小限の侵襲性の外科的処置が開発された。代表的には、カニューレ又はその他のアクセスツールが、通常のそうした処置では、椎弓根を介して、目標とする椎体の後方から挿入される。例えば、米国公開特許公報第2009−0069850号においては、後方ダクトを通して、圧縮された椎体の中へ挿入可能であり、元の間隔ないし形状へ向けて椎体の終板を拡張すべく促すような、インプラントが取り付けられたバルーンが開示されている。
【0004】
別のそのような処置は、一般的に、椎骨形成術("vertebralplasty")と称されるもので、患者の背中の軟質組織に、カニューレ又は骨針を挿通させるものである。いったん圧縮された椎体の内部に配置されると、少量のポリメチルメタクリレート(PMMA)やその他の整形外科用の骨セメントが、針を通して、目標とする椎体の中へ注入される。この技術は、破損疼痛の減少ないし解消や、更なる崩壊の防止、及び患者の運動力の回復のために効果的である。しかしながら、この技術は、代表的に、破損した骨を元のサイズ及び/又は形状に整復するものではなく、従って、破損に起因する脊柱変形の問題点を解決するものではない。
【0005】
VCFに対するその他の治療法は、一般的に、2つの段階を含み、すなわち、(1)椎体を元の高さに整復ないし復旧させて、脊柱曲率の彎曲を矯正する段階と、(2)破損ないし崩壊した椎体を支持又は強化するために、材料を増強又は追加する段階とを含んでいる。この処置は、カイフォプラスティ("Kyphoplasty")と通称され、一般に、米国特許第6,241,734号に開示されている。
【0006】
そのような1つの治療法は、遠位端にバルーンの取り付けられたカテーテルを、破損した椎体の内部空間中へ挿入することを伴い、ここで、内部空間は、破損した皮質性骨によって取り囲まれた、比較的軟質である海綿状の骨を有している。バルーンは、内部空間の中で拡張されて、椎体を元の高さに向けて回復させようと試みる。バルーンは、収縮されて、内部空間から取り出され、椎体の内部には空洞が残される。次に、PMMA又はその他の骨充填材料が、カニューレを通して空洞内に注入され、椎体を安定化させる。そして、カニューレは取り出され、セメントが硬化して、椎体のサイズと概形を補強し、充填し、又は固定する。
【0007】
VCFを治療する別のアプローチは、拡張可能なメッシュバルーンを目標とする椎体の中へ挿入することを伴う。バルーンは、バルーンがPMMAや同種移植品で膨らまされた後、椎体の内部に取り残され、整復された終板の高さの術中損失は限られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インプラントやバルーンなどの格納装置を、患者の骨の内部空間中へ挿入するための、最小限の侵襲性の、改良されたシステム、方法、及び器具を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般的に、例えば、椎体などの骨又はその他の構造物を増強する、システム、方法、及び手段に関する。より詳しくは、本発明は、格納装置や、インプラント、バルーンなどを、圧縮された骨空洞、とりわけ、椎骨の圧縮破損を治療すべく、患者の椎体の内部空間中へ挿入する、改良されたシステム及び方法に関する。
【0010】
本発明の第1の好ましい実施形態においては、椎体の内部空間中へ格納装置をアクセスして挿入するためのシステムは、拡張可能な格納装置と、シャーシと、第1のガイドワイヤと、作業用カニューレと、第2のガイドワイヤと、スリーブと、シャーシとを具備している。拡張可能な格納装置は、好ましくは、内部キャビティを取り囲む外面を具備している。シャーシは、好ましくは、拡張可能な格納装置を少なくとも部分的に取り囲む、内部キャビティを具備している。作業用カニューレは、好ましくは、近位端と、遠位端と、近位端から遠位端へと延在してなる中空の内部通路とを具備している。第2のガイドワイヤは、好ましくは、部分的に可撓性である遠位端部分を具備しており、遠位端部分は、一般的に、挿入位置において椎体の前方部分を横方向に横切って延在している。スリーブは、好ましくは、近位側部分と、遠位側部分と、近位側部分から遠位側部分へと延在してなるカニューレ通路とを具備している。スリーブは、作業用カニューレの内部通路の中に挿入されるためのサイズ及び構造になっている。スリーブの遠位側部分は、シャーシに着脱可能に結合されており、一方、近位側部分は、好ましくは、骨充填材注入機構と機能的に関連し、スリーブのカニューレ通路を通して、格納装置の内部キャビティ中へ、骨充填材料を導入する。
【0011】
また、システムは、好ましくは、プランジャを具備し、プランジャは、一部分に可撓性をもった遠位端部分と、カニューレボアとを具備しており、プランジャは、第2のガイドワイヤにかぶせて前進できるようになっている。
【0012】
シャーシは、好ましくは、前縁、後縁、前方部分、及び後方部分を具備しており、前方部分は窓を具備して、骨充填材料が導入されている間に、拡張可能な格納装置の外方への拡張を導くことを可能にする。格納装置は、好ましくは、前方に配置されてなる複数のセメント導入孔を具備している。
【0013】
椎体を増強するための好ましい方法は、以下の段階を必要とするもので、すなわち、(a)第1のガイドワイヤを、椎体における横突起及び椎弓根のうちの1つに通して、椎体の内部に挿通する段階と、(b)作業用カニューレを第1のガイドワイヤにかぶせて前進させて、椎体に接触させる段階と、(c)作業用カニューレの位置を維持しつつ、第1のガイドワイヤを椎体から取り出す段階と、(d)第2のガイドワイヤを、作業用カニューレに通して、椎体の内部へ入れる段階であって、第2のガイドワイヤは、好ましくは、作業用カニューレの遠位端から出る際に曲線状の形態を呈し、第2のガイドワイヤの凸側は、椎体の前方部分に対面し、第2のガイドワイヤの凹側は、挿入された形態において、椎体の後方部分に対面し、第2のガイドワイヤが椎体の内部を前進すると、曲線的な導入経路を形成する、上記段階と、(e)プランジャを、第2のガイドワイヤにかぶせて、作業用カニューレに通し、第2のガイドワイヤによって形成された曲線状の導入経路の寸法を拡大させる段階であって、プランジャは、作業用カニューレを通して摺動可能である曲線状の遠位側部分を具備し、作業用カニューレの遠位端から出る際には、曲線状の形態を呈する、上記段階と、(f)第2のガイドワイヤと作業用カニューレとの位置を維持しつつ、プランジャを取り出す段階と、(g)第2のガイドワイヤに沿って作業用カニューレに通してカニューレスリーブを前進させる段階であって、カニューレスリーブは、その遠位端にて、シャーシに着脱可能に結合され、シャーシは少なくとも部分的に拡張可能な格納装置を取り囲み、シャーシは、拡張可能な格納装置の拡張を導くために、前方に面した窓を具備している、上記段階と、(h)骨セメントを、カニューレスリーブに通して、拡張可能な格納装置へ導入する段階とであって、それにより、拡張可能な格納装置を、シャーシに形成された窓から出るように前方へ拡張させ、骨セメントの塊をシャーシに対して前方へ分泌させる段階と、(i)シャーシの近位端から、カニューレスリーブの遠位端を係脱し及び取り外す段階と、(j)第2のガイドワイヤを取り出す段階と、を備えている。
【0014】
骨セメントの導入段階は、好ましくは、2段階の工程を具備しており、所定量の低い粘性のセメントを導入し、続いて、所定量の高い粘性のセメントを導入する。
【0015】
上述した要旨、並びに、本願の増強及び安定化システム、方法、及び手段に関する以下の好ましい実施形態についての詳細な説明は、添付図面に関連させて読むことでより良く理解されよう。本願における最小限の侵襲性の脊柱増強及び安定化のシステム、方法、及び手段を例証する目的のために、図面には好ましい実施形態を示している。しかしながら、本願は、図示の正確な構成及び手段に限定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図2】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図3】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図4A】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図4B】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図5A】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図5B】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図6A】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図6B】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図7A】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図7B】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図8A】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図8B】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図9A】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図9B】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図10A】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図10B】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図11A】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図11B】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図12A】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図12B】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図13】本発明による最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおける、好ましい方法を実践する様々な段階を示しており、図面の明瞭化のために、椎骨部分は、一般に透明に示している。
【
図14A】最小限の侵襲性の脊柱の増強及び安定化システムにおけるシャーシを示した正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ある種の用語は、以下の説明において、便利さのためだけに使用されて、制限的ではない。用語“右”、“左”、“下方”、及び“上方”は、参照がなされている図面内での方向を指示する。用語“内方”又は“遠位側”及び“外方”又は“近位側”は、患者の身体、又は最小限の侵襲性の脊柱増強及び安定化システムとその関連部品の幾何学的中心に向かう、及び遠のく方向をそれぞれ参照する。用語“前方”、“後方”、“上位”、“下位”、“内側”、“側方”及び関連語及び/又はフレーズは、参照がなされている人体に対して好ましい配置又は向きを指示し、限定を意味しない。用語は、上に列挙した用語の他、それらの派生語、及び類義語を含む。
【0018】
次に、ある種の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。一般に、そのような実施形態は、椎体Vの内部空間の中へ、インプラントや、格納装置、又はバルーン(以下、集合的に、格納装置125と称する。)を挿入するためのシステム、方法、及び手段に関係している。いったん挿入された、格納装置125は、好ましくは、椎体Vの内部空間にキャビティを形成し、椎体Vの高さを回復させ、椎体Vに形成されたキャビティが充填されて安定化させ、患者の椎体V及び脊柱を補助及び/又は増強する。当業者には一般的に理解されるだろうが、好ましい格納装置125は、一般には脊柱(例えば、腰部、胸部、又は頚部の領域)において使用されているけれども、当業者ならば認識するように、格納装置125は、身体の他の部分にも使用でき、例えば、長骨や、手、顔、足、四肢、頭蓋の骨、又は人体のほとんどあらゆる骨に使用できることを理解されたい。
【0019】
図10A乃至
図13を参照すると、2007年11月16日に出願された、発明の名称を“Porous Containment Devices and Associated Methods for Stabilization of Vertebral Compression Fractures”とする、米国仮特許出願第60/988,696号に基礎付けられる優先権を主張してなされた、2008年11月13日付けの、発明の名称を“Porous Containment Device and Associated Method for Stabilization of Vertebral Compression Fractures”とする、国際出願PCT/US2008/083350号(国際公開番号WO2009/064847号)に開示されているように、本発明によるシステム、方法、及び手段は、目標とする椎体Vの解剖学的構造を回復させるために、目標とする椎体Vの内部空間の中に移植されるべき、好ましくは、多孔質又は透過性の格納装置125と関連して使用されるので、前述した文献の内容をここで参照によって完全に引用するものとする。格納装置125は、例えば、骨セメントなどの骨充填材料によって、挿入形態から拡張形態へと拡張することができる。骨充填材料の注入によって格納装置125が拡張されると、好ましくは、(i)目標とする椎体Vの内部空間の中にキャビティが形成され、(ii)目標とする椎体Vの高さが回復され、(iii)目標とする椎体Vの内部空間に形成されたキャビティが充填され、及び(iv)目標とする椎体Vの安定化、補助、及び/又は、増強が得られる。多孔質又は透過性の格納装置125によれば、好ましくは、(i)制御された骨セメントの流出が可能になり、(ii)周囲の海綿状骨との接触面が大きくなり、及び(iii)周囲の海綿状骨に対する、多孔質である格納装置125の回転及び軸線並進の運動の安定化が得られる。
【0020】
格納装置125は、従順な、略従順な、又は非従順な、材料から形成される。格納装置125は、好ましくは、PEEK材料から構成され、拡張した形態においては、事前に定められた、特定の形状を有するように設計される。より詳しくは、格納装置125は、犬の骨のような形状、又はボディービル用のバーベルのような形状を、拡張形態において有し、周囲の海綿状骨との安定性を向上させる。すなわち、格納装置125は、拡張時ないし膨張時には、前縁部分125aと、後縁部分125bと、これらの間の中間部分125cとを具備し、格納装置125は、第1及び第2の膨らんだ端部部分と、比較的細身の中間部分とを有する。
【0021】
格納装置125は、好ましくは、骨充填材料が、格納装置125から流出し、又はその外面を通過することを許容する。好ましくは、格納装置125は、複数の孔又は細孔(図示せず)を、外面に形成されて具備し、骨充填材料を分泌させる。好ましくは、複数の孔又は細孔は、格納装置125における中間部分125cの前方に面した表面に配置され、格納装置125が骨充填材料の注入によって拡張したとき、格納装置125から出る骨充填材料の排出を、前方へ導く。拡張した形態における格納装置125の幾何学形状は、骨充填材料130の排出された塊を拡張した格納装置125に閉じ込める障壁として働き、格納装置125の中間部分125cに対して後方又は側方に骨充填材料が流れるのを閉じ込める。また、細孔ないし孔は、特別に設計された形状及び構造を有し、骨充填材料の分泌、組織への浸潤、及び格納装置125の周囲の骨組織への固定に関する要求条件を最適に満たす。
【0022】
変形例としては、格納装置125は、流れを導く1又は複数の触手(図示せず)を具備することもでき、それらは、外面から延びるか、透過性の材料から少なくとも部分的に形成されるか等、骨充填材料が格納装置125から分泌されて、周囲の骨組織と交互嵌合することが可能になるようにしても良い。
【0023】
また、格納装置125は、格納装置125が周囲の骨組織に固定されるのを促進するために、1又は複数のノブ又はリブ(図示せず)を具備したり、1又は複数の空気又は流体排出細孔(図示せず)を備えて、格納装置125の内部空間から空気や流体が逃げるのを許容したり、及び/又は、1又は複数のX線不透過のリングないしマーカ(図示せず)を設けて、外科医が、X線画像を見ながら、格納装置125を位置決め及び/又は配置できるようにしても良い。
【0024】
本発明によるシステム、方法、及び手段は、好ましくは、国際特許出願第PCT/US2008/083350号に開示された格納装置125の挿入と関連して使用されるけれども、本発明は、それに限られるものではなく、他の現在公知の又は将来開発される格納装置に関連しても使用できることを理解されたい。
【0025】
図1乃至
図13を参照すると、好ましい実施形態によるシステム、方法、及び手段であって、崩壊、破損、又はその他の傷害を受けた椎体Vの内部空間の中へ格納装置125をアクセスして挿入するものが図示されている。当業者によって一般的に理解されるように、目標とする椎体Vは、前方側と、後方側と、これらの間にある横方側と、上位部分と、下位部分と、これらの間の高さと、棘突起と、第1及び第2の横突起と、損傷した椎体Vに対して上位及び下位の両方にて付着した椎間板とを具備しており、椎間板は、損傷した椎体Vを隣接する椎体又は椎骨から隔てている。
図1乃至
図13においては、損傷を受けた椎体Vは、一般的に透明な状態に図示しており、好ましい最小限の侵襲性の脊柱増強及び安定化システム及び方法における構成要素と段階が示される明瞭さを改善している。
【0026】
図1乃至
図4Bを参照すると、システム及び方法は、好ましくは、堅固な第1のガイドワイヤ102と、作業用カニューレ103と、第2のガイドワイヤ104とを具備している。第1のガイドワイヤ102は、スタイレットや、Kワイヤ、ガイドピンなどである。作業用カニューレ103は、好ましくは、近位端(図示せず)と、遠位端103aと、近位端から遠位端103aへ延在してなる中空の内部通路(図示せず)とを具備し、目標とする椎体Vの中へ、他の器具や要素を進めることができる。第2のガイドワイヤ104もまた、スタイレット、Kワイヤ、又はガイドピンの形態であり、その少なくとも遠位側部分104aが少なくとも部分的に可撓性であるように設計及び構築されている。このように、第2のガイドワイヤ104は、曲線状の遠位側部分104aを具備している。第2のガイドワイヤ104における曲線状の遠位側部分104aは、第2のガイドワイヤ104を形状記憶材料から製造することで構築され、第2のガイドワイヤ104における曲線状の遠位側部分104は、作業用カニューレ103の中空の内部通路に挿通できるように、直線状の形態を呈することができる。その後、第2のガイドワイヤ104における少なくとも遠位側部分104aは、作業用カニューレ103の遠位端103aから出ると、再び屈曲ないし曲線状になる。
【0027】
第2のガイドワイヤ104は、形状記憶材料から製造されるとは限られず、第2のガイドワイヤ104は、その遠位側部分104aが曲線状又は屈曲した遠位端を有していて、第2のガイドワイヤ104が挿入位置におけるカニューレ103から延出したとき、遠位端104aが、椎体Vの前方部分を側方向に横切って、横へ延びるように設計及び構築されている限り、あらゆる材料から製造できることに留意されたい。
【0028】
図5A及び
図5Bを参照すると、システム及び方法は、好ましくは、中空のプランジャ又はその他のキャビティ形成装置105を具備しており、これは、第2のガイドワイヤ104にかぶせられて、椎体Vの中へ前進可能になっている。プランジャ又はその他のキャビティ形成装置105は、第2のガイドワイヤ104が形成する経路に沿って案内される。プランジャ又はその他のキャビティ形成装置105は、システムにおける続いて導入される要素のために、導入経路をさらに形成ないし拡大し、そのためには、第2のガイドワイヤ104の外側に沿ってキャビティを形成し、もって、第2のガイドワイヤ104によって形成された経路を拡大する。プランジャ105の外側には、波形や、その他の外面特徴が具備され、経路の拡大の助けになる。
【0029】
中空のプランジャ又はキャビティ形成装置105は、好ましくは、少なくとも部分的に可撓性を有しており、屈曲ないし曲がり得る遠位側部分105aを具備し、作業用カニューレ103の遠位端103aから出たとき、プランジャ又はキャビティ形成装置105の遠位側部分105aは、第2のガイドワイヤ104の経路に追従して、屈曲ないし曲がるようになっている。第2のガイドワイヤ104と同じく、プランジャ又はキャビティ形成装置105も、形状記憶材料から製造され、プランジャ又はキャビティ形成装置105の遠位側部分105aは、当初には、直線状の形態を呈していて、作業用カニューレ103の中空の内部通路に挿通することができる。その後、プランジャ又はキャビティ形成装置105における少なくとも遠位側部分105aは、作業用カニューレ103の遠位端103aから出たときに、再び、遠位側に屈曲した又は曲線状の形状を呈することになる。
【0030】
プランジャ又はキャビティ形成装置105は、形状記憶材料から製造されるとは限られず、プランジャ又はキャビティ形成装置105は、その遠位側部分105aが曲線状又は屈曲した遠位端を有していて、遠位端105aが、第2のガイドワイヤ104の経路に追従すべく屈曲ないし曲がり得るように設計及び構築されている限り、あらゆる材料から製造できることに留意されたい。例えば、プランジャ又はキャビティ形成装置105は、一般的に可撓性を有し、第2のガイドワイヤ104の経路に追従し、椎体Vの内部にある第2のガイドワイヤ104によって形成された経路に沿うように、プランジャ又はキャビティ形成装置105の遠位端105aが向けられる。
【0031】
図7A乃至
図14Bを参照すると、システム及び方法は、好ましくは、カニューレスリーブ108と、格納装置シャーシ110と、格納装置125とを具備している。カニューレスリーブ108は、近位側部分(図示せず)と、遠位側部分(図示せず)と、近位側部分から遠位側部分へと延在してなる内部通路とを具備している。使用に際しては、カニューレスリーブ108は、作業用カニューレ103の内部通路に挿入されるサイズ及び構造になっている。カニューレスリーブ108の遠位側部分は、好ましくは、格納装置シャーシ110に着脱可能に結合される。近位側部分は、好ましくは、例えば、骨充填材料又は骨セメントを、カニューレスリーブ108に通して、好ましくはシャーシ110の内側に収容されている、格納装置125の内部へと導入する、シリンジ(図示せず)などの機構に結合可能であると好ましい。
【0032】
図14A及び
図14Bに最良に示されるように、シャーシ110は、前縁110aと、後端110bとを具備し、ここで、前端110aは、椎体Vの内部へ容易に前進できるように、弾丸ノーズ状の先端部又はその他のテーパを具備している。前述したように、後端110bは、カニューレスリーブ108に、着脱可能に結合される。また、シャーシ110は、好ましくは、中空のキャビティ110cを具備しており、そのサイズ及び構造は、格納装置125が挿入状態にあるとき、格納装置125を収容し乃至収められるようになっている。シャーシ110における前方部分は、好ましくは、窓111を具備し、骨充填材料又は骨セメントで膨張したときの、格納装置125の外方への拡張を導く。シャーシ110の曲率は、好ましくは、第2のガイドワイヤ104の遠位端104a、及びプランジャ又はキャビティ形成装置105の遠位端105aの曲率と同様になっている。そして、シャーシ110は、形状記憶材料から製造され、シャーシ110が作業用カニューレ103に挿通されているとき、シャーシ110は、作業用カニューレ103の中空の内部通路の形状を呈する。作業用カニューレ103の遠位端103aから排出されると、シャーシ110は、好ましくは、再び、その曲線状の形状を呈するようになる。
【0033】
シャーシ110は、形状記憶材料から製造されるとは限られず、シャーシ110は、シャーシ110が、第2のガイドワイヤ104の経路に追従して、曲がったり屈曲したりできる限り、あらゆる材料から製造できることに留意されたい。シャーシ110は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)や、ニチノール、チタンなどの材料から形成するのが好ましいが、これに限られるものではない。シャーシ110の後方外面又は内面は、好ましくは、溝部又はスロット114を具備しており、これは、第2のガイドワイヤ104と合致するように構成され、シャーシ110が、第2のガイドワイヤ104に沿って導かれて、損傷した椎体Vの内部の所望位置に入るようになっている。
【0034】
シャーシ110の近位端110bと、カニューレスリーブ108の遠位端との着脱可能な結合は、現在公知の又は将来開発される、あらゆる機構で良く、それらには、限定はしないが、摩擦係合、プレス嵌め、又は圧力嵌めなどが含まれる。このように、カニューレスリーブ108は、圧力によってシャーシ110に結合され、すべての力は摩擦によって伝達される。使用に際しては、シャーシ110は、シャーシ110を所定位置に保持して、シャーシ110からカニューレスリーブ108を引っ張ることで、カニューレスリーブ108から係脱できる。変形例としては、カニューレスリーブ108は、シャーシ108に、ねじ結合によって、又はバヨネット結合によって、又はシャーシ110に形成されたスロットに係合すべくカニューレスリーブ108にピンを形成してなる、プラグインコネクタによって、結合される。
【0035】
代わりに、カニューレスリーブ108は、弾性要素(図示せず)の変形を介して、シャーシ110に結合されても良い。すなわち、カニューレスリーブ108は、内側カニューレスリーブ(図示せず)と、外側カニューレスリーブ(図示せず)とを具備し、ここで、外側カニューレスリーブは、内側カニューレスリーブと可動に関係しても良い。弾性要素は、内側カニューレスリーブを、好ましくは、その遠位端に隣接して取り囲む。内側カニューレスリーブと、弾性要素とは、シャーシ110の中に挿入される。その後、外側カニューレスリーブは、内側カニューレスリーブに対して動かされ、外側カニューレスリーブの遠位端が、弾性要素に接触する。外側カニューレスリーブを引き続き動かすと、弾性要素は変形し、弾性要素の直径の増大をもたらし、そのため、弾性要素は、シャーシ110の内面に対して圧迫される。
【0036】
変形例としては、外側カニューレスリーブを弾性圧縮リングに結合し、外側カニューレスリーブに対して内側カニューレスリーブが動くと、内側カニューレスリーブが弾性圧縮リングに接触し、続いてこれを圧縮するようにして、それにより、圧縮リングが拡張して、シャーシ110に対して押圧されるものでも良い。
【0037】
さらに、カニューレスリーブ108は、中間的なクランプ要素(図示せず)によって、シャーシ110に結合しても良い。例えば、カニューレスリーブ108は、内側カニューレスリーブ(図示せず)と、外側カニューレスリーブ(図示せず)とを具備し、ここで、外側カニューレスリーブを、内側カニューレスリーブに対して可動に関連させる。中間的なクランプ要素は、内側カニューレスリーブに形成され又は結合され、好ましくは、内側カニューレスリーブの遠位端に隣接した外面に設けられる。シャーシ110は、その後、内側カニューレスリーブと、中間的なクランプ要素との間に配置される。その後、内側カニューレスリーブに対して外側カニューレスリーブが動くと、外側カニューレスリーブは、中間的なクランプ要素の上を移動し、もって、シャーシ110を固定する。さらに、カニューレスリーブ108は、シャーシ110と一体的に形成しても良い。一体的に形成された、カニューレスリーブ108と、インプラントシャーシ110とは、所定の破断領域にて分離されるようにしておき、手術中に、破断領域を壊すことで、カニューレスリーブ108からシャーシ110を切り離す。
【0038】
引き続き、
図1乃至
図13を参照して、格納装置125を、目標とする椎体Vの内部空間へ挿入するための、好ましい方法について以下に説明する。修繕の必要がある、損傷した椎体Vが確認されると、
図1に示すように、第1のガイドワイヤ102が、皮膚及び筋肉を通して導入されて、目標とする損傷した椎体Vの内部空間へ入れられる。第1のガイドワイヤ102は、1つの横突起を通して、又は椎弓根の1つを通して導入される。次に、作業用カニューレ103が、第1のガイドワイヤ102にかぶせられて導入され、作業用カニューレ103の遠位端103aは、
図2に示すように、目標とする椎体Vの外側に隣接して配置される。変形例としては、作業用カニューレ103の遠位端103aは、椎体Vの内部空間に配置しても良い。次に、第1のガイドワイヤ102は、
図3に示すように、作業用カニューレ103を所定位置に残して取り出される。
【0039】
次に、第2のガイドワイヤ104が、作業用カニューレ103に通して導入され、
図4Aに示すように、椎体Vの内部へ入れられる。作業用カニューレ103の遠位端103aが出ると、第2のガイドワイヤ104は、第2のガイドワイヤ104が椎体Vの内部空間の中へ導入されているために、椎体Vの反対側へ向けて曲がり又は屈曲する。第2のガイドワイヤ104が曲がり又は屈曲すると、第2のガイドワイヤ104は、椎体Vの後方に面した凹側と、椎体Vの前方に面した凸側とを有してなる椎体Vの内部の経路に追従する。第2のガイドワイヤ104の遠位端104aは、好ましくは、椎体Vの後壁の近くに位置する。第2のガイドワイヤ104を挿入して位置決めすることで、システムにおける続いて導入される要素のための導入経路が作られる。
【0040】
いったん第2のガイドワイヤ104が椎体Vの内部空間の中にて位置決めされると、プランジャ又はキャビティ形成装置105が、第2のガイドワイヤ104にかぶされて導入される。プランジャ又はキャビティ形成装置105は、
図5A及び
図5Bに示すように、第2のガイドワイヤ104によって形成された経路に沿って導かれる。プランジャ又はキャビティ形成装置105は、システムにおける続いて導入される要素のために、導入経路をさらに拡大し、そのためには、第2のガイドワイヤ104の外側に沿ってキャビティを形成し、もって、第2のガイドワイヤ104によって形成された経路を拡大する。プランジャ105の外側には、波形や、その他の外面特徴が具備され、経路の拡大の助けになる。次に、プランジャ105は、椎体Vの内部空間から取り出され、一方、第2のガイドワイヤ104と作業用カニューレ103とは、
図6A及び
図6Bに示すように、所定位置に取り残される。
【0041】
次に、カニューレスリーブ108は、その遠位端に着脱可能にシャーシ110を結合させた状態で、作業用カニューレ103に通されて前進し、第2のガイドワイヤ104とプランジャ又はキャビティ形成装置105とによって形成された導入経路に沿って、椎体Vの内部空間の中へ入る。シャーシ110は、第2のガイドワイヤ104にかぶせられて挿入されて移動する。これを助けるために、シャーシ110の内側又は外側の後方表面に形成されたスロット114が、好ましくは、第2のガイドワイヤ104と相互作用して、
図7A乃至
図8Bに示すように、椎体Vの内部の所定位置へ、シャーシ100を操舵する。折り畳まれた格納装置125は、シャーシ110によって部分的に取り囲まれることで、挿入中に破損しないように保護される。
【0042】
変形例としては、格納装置125は、シャーシ110の位置決めの後に行われる第2段階において導入されても良く、格納装置125の充填及び拡張は、後述するように実行される。
【0043】
図9A乃至
図11Bを参照すると、格納装置125は、次に、骨充填物質(例えば、骨セメント)の導入によって拡張される。骨セメントの導入は、好ましくは、2段階の工程によって実行される。すなわち、低い粘性の骨セメントが、カニューレスリーブ108を通して格納装置125の中へ注入され、格納装置125は、畳まれた状態から広げられ、シャーシ110に形成された前方の窓111から前方へ出るように、途中まで拡張する。加えて、少量の骨セメントが、椎体Vの前方部分へ向けて、細孔を通して分泌される。骨セメントが細孔を通して分泌されることで、好ましくは、セメントの塊130が形成される。次に、より高い粘性の骨セメントが、好ましくは、カニューレスリーブ108を通して格納装置125の中へ注入されて、格納装置125をさらに拡張させる。さらに、追加的な骨セメントが、格納装置125に形成された細孔を通して分泌される。加えて、高い粘性の骨セメントの注入によって、好ましくは、椎体Vの高さが回復される。細孔を通しての骨セメントの流出は、セメントの塊130をもたらすが、これは、好ましくは、前方に導かれ、椎体Vの内部における後方又は側方のセメント流れは制限される。後方及び側方へのセメント流れが制限されるのは、拡張した格納装置125の幾何学的形状と、シャーシ110とで形成される障壁による。
【0044】
分泌された骨セメント130は、好ましくは、交互嵌合と安定化とを提供し、格納装置125と、椎体Vの内部の周囲の骨組織との間におけるスリップを制限する。加えて、格納装置125の中へ注入された骨セメントは、椎体Vの終板同士の間において、高さの回復と、間隔の維持とを提供する。椎体Vの内部における後方へのセメント流れに対する障壁は、拡張した格納装置125の幾何学形状によって提供され、シャーシ110は、すべての椎体骨折の症例のうち約40%あると言われる、椎体Vの後方壁に固有な骨折を通して骨セメントが漏出するのを制限する。
【0045】
好ましい方法においては、骨セメントを注入するために、2段階の工程を用いたけれども、システム及び方法は、それに限られるものではなく、格納装置125は、単一の段階の工程や、2以上の段階を伴う工程を用いて膨張させても良いことを理解されたい。
【0046】
1つの横突起又は椎弓根を通して、格納装置125を導入することと、第2のガイドワイヤ104の細長くて曲線状又は屈曲した幾何学形状とによって、椎体Vの内部に一対の装置又はインプラントを導入する、二重椎弓根のアプローチや、二重横突起のアプローチに比べて、低い侵襲性の処置が許容される。望ましい格納装置125の拡張及びセメント塊130の生成に際しては、上述したいずれかの適切な係脱機構を動作させ又は採用することで、シャーシ110を、カニューレスリーブ108の遠位端から係脱させるが、それは、カニューレスリーブ108が、作業用カニューレ103から取り外される時点にて、システムのために選ばれた特定の機構に依存する。作業用カニューレ103と第2のガイドワイヤ104とは、好ましくは、
図12A乃至
図13に示すように、患者の身体から取り外され、一方、格納装置125とシャーシ110とは、セメント塊130と併せて、椎体Vの内部に取り残される。変形例としては、格納装置125は、椎体Vから部分的に又は完全に取り去ることもでき、そのためには、格納装置125に脆弱な部分を作っておき、それに沿って、格納装置125を裂いて、格納装置125の少なくとも一部分を椎体Vから取り出しても良い。
【0047】
当業者にあっては、上述した実施形態に、その広い発明的概念から逸脱せずに、変更を加えることが可能であることを認識されたい。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本明細書によって定義された本発明の精神及び範囲内において、変形例を包含する意図であることを理解されたい。