(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663000
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】逆拡散抑制構造
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20150115BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20150115BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20150115BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20150115BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/205
H01L21/302 105A
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-504802(P2012-504802)
(86)(22)【出願日】2010年4月7日
(65)【公表番号】特表2012-523700(P2012-523700A)
(43)【公表日】2012年10月4日
(86)【国際出願番号】US2010030180
(87)【国際公開番号】WO2010118092
(87)【国際公開日】20101014
【審査請求日】2013年3月28日
(31)【優先権主張番号】61/167,817
(32)【優先日】2009年4月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511243668
【氏名又は名称】エフィシエント パワー コンヴァーション コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ガング,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ジャンジュン
【審査官】
棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−153330(JP,A)
【文献】
特開2008−091392(JP,A)
【文献】
特開2008−140812(JP,A)
【文献】
特開2003−151996(JP,A)
【文献】
特開2003−068981(JP,A)
【文献】
特開2009−200395(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/091383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/205
H01L 21/3065
H01L 21/337
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 27/095
H01L 27/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
遷移層と、
III族窒化物材料を有するバッファ層と、
III族窒化物材料を有するバリア層と、
ドレインコンタクト及びソースコンタクトと、
少なくとも1つのp型ドーパントを含有するIII族窒化物層と、該III族窒化物層の上に位置するコンタクト層とを有するゲートと、
前記ゲートと前記バッファ層との間に配置された拡散バリアであり、該拡散バリアはIII族窒化物材料を有し且つ或るAlの割合を有し、該拡散バリアの全体が前記バリア層を覆って配置され、該拡散バリアの前記Alの割合は前記バリア層のAlの割合より高い、拡散バリアと、
を有するエンハンスメントモードIII族窒化物トランジスタ。
【請求項2】
前記バッファ層は、x+y≦1として、InxAlyGa1−x−yNを有する、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記バリア層は、x+y≦1として、前記バッファ層より広いバンドギャップを有するInxAlyGa1−x−yNを有する、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記p型ドーパントは、Mg、C、Ca、Fe、Cr、V、Mn及びBeからなる群から選択されている、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記拡散バリアは、x+y≦1として、前記バリア層より高いAlの割合を有するInxAlyGa1−x−yNを有する、請求項3に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ゲートは、x+y≦1として、アクセプタ型元素をドープされたInxAlyGa1−x−yN層である、請求項5に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記拡散バリアは前記バリア層の上且つ前記ゲートの下に位置する、請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項8】
基板と、
遷移層と、
III族窒化物材料を有するバッファ層と、
III族窒化物材料を有するバリア層と、
ドレインコンタクト及びソースコンタクトと、
ゲートであり:
各々が或るp型ドーパント濃度を有する第1領域及び第2領域を有するIII族窒化物層であり、前記第1領域の前記p型ドーパント濃度は前記第2領域の前記p型ドーパント濃度より低く、該III族窒化物層の全体が前記バリア層より上に位置する、III族窒化物層、及び
前記III族窒化物層の上に位置するコンタクト層
を有するゲートと、
を有するエンハンスメントモードIII族窒化物トランジスタ。
【請求項9】
前記バッファ層は、x+y≦1として、InxAlyGa1−x−yNを有する、請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項10】
前記バリア層は、x+y≦1として、InxAlyGa1−x−yNを有する、請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項11】
前記III族窒化物層は更に、前記第2領域より上に位置する第3領域を有し、該第3領域は或るp型ドーパント濃度を有する、請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項12】
前記第3領域の前記p型ドーパント濃度は前記第2領域の前記p型ドーパント濃度より高い、請求項11に記載のトランジスタ。
【請求項13】
前記第3領域の前記p型ドーパント濃度は前記第2領域の前記p型ドーパント濃度より低い、請求項11に記載のトランジスタ。
【請求項14】
前記第3領域は或るn型ドーパント濃度を有する、請求項11に記載のトランジスタ。
【請求項15】
前記第3領域の前記n型ドーパント濃度は、前記第3領域の頂部付近で前記第3領域の前記p型ドーパント濃度より高く、前記第3領域の前記n型ドーパント濃度は、前記第3領域の底部付近で前記第3領域の前記p型ドーパント濃度より低い、請求項14に記載のトランジスタ。
【請求項16】
前記第3領域は、前記第3領域の前記p型ドーパント濃度より低いn型ドーパント濃度を有する、請求項14に記載のトランジスタ。
【請求項17】
前記III族窒化物層は、前記第1領域より下に位置するアンドープの第4領域を有する、請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項18】
前記第2領域は前記第1領域より上に位置する、請求項8に記載のトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンハンスメントモード窒化ガリウム(GaN)トランジスタの分野に関する。より具体的には、本発明は、拡散バリアを備えたエンハンスメントモードGaNトランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(ガリウムナイトライド;GaN)半導体デバイスは、大電流を担持し且つ高電圧に対応することができることにより、パワー半導体デバイスにとってますます望ましいものとなっている。これらのデバイスの開発は、概して、大電力/高周波用途に狙いを定めてきた。このような用途のために製造されるデバイスは、高電子移動度を示す一般的なデバイス構造に基づいており、ヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、又は変調ドープ電界効果トランジスタ(MODFET)のように様々に呼ばれている。これらの種類のデバイスは、典型的に、例えば100kHz−10GHzといった高周波数で動作しながら、例えば100Vといった高電圧に耐えることができる。
【0003】
GaN HEMTデバイスは、少なくとも2つの窒化物層を備えた窒化物半導体を含んでいる。半導体上あるいはバッファ層上に形成された異なる複数の材料により、これらの層は異なるバンドギャップを有するようにされる。隣接する窒化物層内の異なる材料はまた、分極を生じさせ、これが、2つの層のジャンクション(接合)付近の、具体的には、狭い方のバンドギャップを有する層内の、導電性の2次元電子ガス(2DEG)領域に寄与する。
【0004】
分極を生じさせる窒化物層は典型的に、電荷がデバイス中を流れることを可能にする2DEGを含むGaNの層に隣接してAlGaNのバリア層を含む。このバリア層は、ドープされることもあるし、ドープされないこともある。2DEG領域がゼロゲートバイアスでゲート下に延在するため、大抵の窒化物デバイスはノーマリーオンデバイスすなわちデプレッションモードデバイスである。ゲートの下でゼロの印加ゲートバイスで2DEG領域が空乏化すなわち除去される場合には、デバイスはエンハンスメントモードデバイスとなることができる。エンハンスメントモードデバイスは、ノーマリーオフであり、それにより安全性が付加されるため、また、単純な低コストの駆動回路で制御することが容易であるため、望ましいものである。エンハンスメントモードデバイスは、電流を導通するために、ゲートに正バイアスが印加されることを必要とする。
【0005】
図1は、拡散バリアを有しない従来のエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイス100を例示している。デバイス100は、シリコン(Si)、炭化ケイ素(シリコンカーバイド;SiC)、サファイア又はその他の材料からなり得る基板101と、典型的に約0.1μmから約1.0μmの厚さのAlN及びAlGaNからなる複数の遷移層102と、典型的に約0.5μmから約10μmの厚さのGaNからなるバッファ材料103と、約0.005μmから約0.03μmの厚さを有した、Gaに対するAlの比が約0.1から約0.5であるAlGaNから典型的になるバリア材料104と、p型AlGaN105と、高濃度ドープされたp型GaN106と、アイソレーション(分離)領域107と、パッシベーション領域108と、典型的に例えばNi及びAuなどのキャップ金属を備えたTi及びAlからなる、ソース及びドレインのオーミックコンタクト金属109及び110と、p型GaNゲート上の、典型的にニッケル(Ni)及び金(Au)の金属コンタクトからなるゲート金属111とを含んでいる。
【0006】
図1に示した従来のエンハンスメントモードGaNトランジスタには幾つかの欠点が存在する。アンドープのGaN103又はAlGaN104の上への(例えば、
図1内の)p型AlGaN105の成長中に、Mg原子が、デバイスのアクティブ領域内へと結晶内を下方に拡散することになり、層104及び103の意図しないドーピングを生じさせる。これらのMg原子はアクセプタとして作用し、電子を取り込み、負に帯電される。負に帯電されたMgは、2次元電子ガスから電子をはじき出す。これは、ゲートの下に、より高い閾値電圧をもたらすとともに、ゲートとオーミックコンタクトとの間の領域内に、より低い導電率をもたらす。さらに、これらのMg原子の帯電及び放電は、デバイスの閾値及び導電率に、時間に依存した変動を生じさせ得る。従来のGaNトランジスタの第2の欠点は、ゲートコンタクトに正電圧を印加することによってトランジスタをターンオンさせるときの高いゲートリークである。(例えば、
図1内の)層106の成長中に、Mg原子が成長表面に拡散する。成長が終了されるとき、高濃度にドープされた層が表面に存在する。ゲートコンタクトに正バイアスが印加されるとき、この層の頂部における高濃度ドーピングによって大きい電流が生成されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
故に、従来技術の上述の欠点を回避する拡散抑制構造を備えたGaNトランジスタを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、基板と、遷移層と、III族窒化物材料を有するバッファ層と、III族窒化物材料を有するバリア層と、ドレインコンタクト及びソースコンタクトと、アクセプタ型ドーパント元素を含有するゲートと、前記ゲートと前記バッファ層との間の、III族窒化物材料を有する拡散バリアと、を有するエンハンスメントモードIII族窒化物トランジスタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】従来のエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを例示する断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に従って形成されるエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを例示する断面図である。
【
図3】従来のGaNトランジスタ及び
図2のデバイスにおけるアルミニウム含有量を比較する模式図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に従って形成されるエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを例示する断面図である。
【
図5】従来のGaNトランジスタ及び
図4のデバイスにおけるアルミニウム含有量を比較する模式図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に従って形成されるエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを例示する断面図である。
【
図7】従来のGaNトランジスタ及び
図6のデバイスにおけるアルミニウム含有量を比較する模式図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に従って形成されるエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを例示する断面図である。
【
図9】従来のGaNトランジスタ及び
図8のデバイスにおけるマグネシウム含有量を比較する模式図である。
【
図10】本発明の第5実施形態に従って形成されるエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを例示する断面図である。
【
図11】従来のGaNトランジスタ及び
図10のデバイスにおけるマグネシウム含有量を比較する模式図である。
【
図12】本発明の第6実施形態に従って形成されるエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを例示する断面図である。
【
図13】従来のGaNトランジスタ及び
図12のデバイスにおけるマグネシウム含有量を比較する模式図である。
【
図14】本発明の第7実施形態に従って形成されるエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを例示する断面図である。
【
図15A】本発明の一実施形態に係るエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを形成する方法を例示する図である。
【
図15B】本発明の一実施形態に係るエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを形成する方法を例示する図である。
【
図15C】本発明の一実施形態に係るエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを形成する方法を例示する図である。
【
図15D】本発明の一実施形態に係るエンハンスメントモードGaNトランジスタデバイスを形成する方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明においては、特定の実施形態を参照する。これらの実施形態は、当業者がこれらの実施形態を実施することができるよう、十分に詳細に説明される。理解されるように、その他の実施形態も用いられることができ、また、様々な構造的、論理的及び電気的な変更が為され得る。
【0011】
ここで説明する本発明の実施形態は、Mg原子がデバイスのアクティブ領域へと結晶中を拡散することを阻止する拡散バリアを備えた、エンハンスメントモードGaNトランジスタに関する。これらの実施形態は、ドーパント原子(例えば、Mg)の拡散を抑制あるいは排除する拡散バリア及び/又は傾斜ドーピングプロファイルを付加することに基づく。本発明の一実施形態において、主(プライマリ)チャネル層の上に、この領域内へのMgの逆拡散(バックディフュージョン)を阻止するために、薄いAlN、又は高いAl含有量のAlGaN層が堆積される。本発明の他の一実施形態において、バリア層内又はバリア層上に、薄いAlN、又は高いAl含有量のAlGaN層が堆積される。他の一実施形態において、p−GaN層とバリア層との間にアンドープ領域を付加することによって、バリア層内へ或いはバリア層中を拡散されるMgの量を低減するようにMgドーピングプロファイルが制御される。更なる他の一実施形態において、オーミックコンタクト又はショットキーコンタクトの何れかの形成を支援するために、ゲートコンタクト付近でのドーピング変更が用いられる。
【0012】
図2を参照して、エンハンスメントモードGaNトランジスタの形成に関して第1実施形態を説明する。
図2は、デバイス200の断面図を示している。デバイス200は、Si、SiC、サファイア又はその他の材料からなる基板21と、典型的に約0.1μmから約1.0μmの厚さのAlN及びAlGaNからなる複数の遷移層22と、典型的に約0.5μmから約10μmの厚さのGaNからなるバッファ層23と、典型的に約0.01μmから約0.3μmの厚さを有するGaN又はInGaNからなるチャネル層20と、典型的に約0.005μmと約0.03μmとの間の厚さを有した、Alの割合が約0.1から約0.5であるAlGaNからなるバリア層27と、典型的に例えばTa、Ti、TiN、W又はWSi
2などの高融点金属コンタクトを備えたp型GaNからなるゲート構造26と、を含んでいる。このp型GaN及び高融点金属コンタクトは各々、厚さにおいて約0.01μmと約1.0μmとの間である。オーミックコンタクト金属24、25は、例えばNi及びAuなどのキャップ金属を備えたTi及びAl、又はTi及びTiNからなる。拡散バリア28は典型的に、約0.001μmと約0.003μmとの間の厚さを有した、Alの割合が約0.2と約1との間であるAlGaNからなる。Alの割合とは、Alの割合にGaの割合を足し合わせたものが1に等しくなるようにしたAlの含有量である。バッファ層23、バリア層27及び拡散バリア28は、III族の窒化物材料で形成される。III族の窒化物材料は、x+y≦1として、In
xAl
yGa
1−x−yNからなり得る。
【0013】
上述の実施形態によれば、異なるAl含有量の二重層が形成される。
図2の構造は、チャネル層の近くで高めのAl含有量を有し、ゲート層の近くで低めのAl含有量を有する。従来のGaNトランジスタと
図2の構造とにおける、チャネル層とゲート層との間のAl含有量の比較を
図3に示す。
図2に示した構造において、チャネル層上の拡散バリア層28はAlにおいて高く、バリア層27はより低いAl含有量を有する。
図3は、一定のAl含有量の2つの別個の層を示しているが、Al含有量がチャネル層付近での高からゲート構造付近の低まで傾斜されるように、傾斜したAl含有量の1つの層へと層28及び27が結合されたものを採用することも可能である。この傾斜付け(グレーディング)は、様々に行われることができ、例えば、直線的、多段降下、平均Al含有量を次第に低下させながら高と低と間でAl含有量を交番させること、又は、チャネル付近での、より厚い高Al層から、ゲート付近での、より薄い高Al層へと、高Al層及び低Al層の厚さを変化させながら、高と低との間でAl含有量を交番させることなどで行われる。高Al含有量の層は、Mgの拡散を阻止し、それをチャネル層
より上の領域に閉じ込める。高Al含有量の層はまた、高い電子移動度をもたらす。しかしながら、
図2に示した構造においては、依然として拡散が頂部のバリア層内まで進む。
【0014】
次に、
図4を参照して、エンハンスメントモードGaNトランジスタの形成に関して第2実施形態を説明する。
図4は、デバイス300の断面図を示している。
図4は
図2と同様であるが、拡散バリア38及びバリア層37が
図2におけるそれらの位置とは逆にされており、故に、拡散バリア38をゲート構造36に隣接して設けている点で異なっている。様々な層の寸法及び組成は、第1実施形態のそれらと同様である。
【0015】
この実施形態によれば、第1実施形態と同様の利点を備えた異なるAl含有量の二重層が設けられる。従来のGaNトランジスタと
図4の構造とにおける、チャネル層とゲート層との間のAl含有量の比較を
図5に示す。
図4に示した構造において、チャネル層上のバリア層37はAlにおいて低く、拡散バリア層38はより
高いAl含有量を有する。高Al含有量の材料は、Mgの拡散を阻止し、それをバリア層
より上の領域に閉じ込める。しかしながら、
図4に示した構造においては、より低いAl含有量の層は、第1実施形態が有する一層高い電子移動度の利点を有しない。
【0016】
次に、
図6を参照して、エンハンスメントモードGaNトランジスタの形成に関して第3実施形態を説明する。
図6は、デバイス400の断面図を示している。第3実施形態は基本的に、上述の第1及び第2の実施形態の組み合わせであり、バリア層47のそれぞれの側に1つの、2つの拡散バリア層48、49を含んでいる。様々な層の寸法及び組成は、第1及び第2の実施形態のそれらと同様である。
【0017】
この実施形態は、上述の第1及び第2の実施形態の双方の利点を有する。
図6の構造は、ゲート層の近くで一層高いAl含有量を有し且つチャネル層の近くで一層高いAl含有量を有した、異なるAl含有量の三重層を有する。従来のGaNトランジスタと
図6の構造とにおける、チャネル層とゲート層との間のAl含有量の比較を
図7に示す。
図6に示した構造において、チャネル層上の拡散バリア層49はAlにおいて高く、バリア層47はより低いAl含有量を有し、もう一方の拡散バリア層48は再び高いAl含有量を有する。層48の高Al含有量の材料は、Mgの拡散を阻止し、それをバリア層
より上の領域に閉じ込める。層49の高Al含有量の材料は、より高い電子移動度をもたらす。
【0018】
次に、
図8を参照して、エンハンスメントモードGaNトランジスタの形成に関して第4実施形態を説明する。
図8は、デバイス500の断面図を示している。この実施形態は、上述の第1及び第2の実施形態と同様であるが、或るMgドーピングプロファイルを有するp型GaNゲートを有しており、拡散バリア層を有していない。この実施形態におけるゲート層57は、バリア層54付近で、より低いMg濃度を有し、ゲートコンタクト58付近で、より高いMg濃度を有している。ゲート層57内のMg濃度の典型値は、バリア層付近で約10
16原子/cm
3であり、ゲートコンタクトの位置での約5×10
19原子/cm
3まで高まっていく。
【0019】
この実施形態によれば、ゲート層57のMgドーピングレベルは、バリア層54付近で低く、ゲートコンタクト58付近でそれより高い。これを、従来のGaNトランジスタと比較して
図9に示す。
図8の構造は、ゲート層の近くで、より高いMg含有量を有する。Mgの濃度レベルは、ゼロ又は例えば約10
16原子/cm
3といった低レベルで始まり、ゲートコンタクトに向かって増大する。p型GaNゲート層57全体のMg濃度の形状は様々に異なっていてもよく、その一部(例えば、直線的に傾斜されたMg濃度、又はゲートコンタクト付近で急増された(スパイク状の)Mg濃度)が
図9に示されている。これらには、Mgを含有しないスペーサ層がバリア上に存在するように変形されたものも含まれる。この低Mg領域に、ドーピングオフセット厚さが関連付けられる。
図8の構造は様々な利点を有する。バリア層付近の低Mg濃度により、バリア層内への逆拡散が低減される。ドーピングオフセットと組み合わせることで、バリア層及びバッファ層の意図しないドーピングを非常に低くすることを達成することができる。ゲートコンタクト付近の高Mg濃度は、ゲートコンタクトとp型GaNとの間にオーミックコンタクトを作り出すことの助けとなる。これは、改善されたデバイスターンオン特性をもたらす。
【0020】
次に、
図10を参照して、エンハンスメントモードGaNトランジスタの形成に関して第5実施形態を説明する。
図10は、デバイス600の断面図を示している。この実施形態は、p型GaNゲート層67のMgドーピングプロファイルが異なることを除いて、第4実施形態と同様である。この実施形態におけるゲート層67は、バリア層64付近及びゲートコンタクト68付近で、より低いMg濃度を有し、中央部で高められた濃度を有する。Mg濃度の典型値は、バリア層付近で約10
16原子/cm
3であり、p−GaNゲートの中央付近での約5×10
19原子/cm
3まで高まっていき、そしてゲートコンタクト付近での約10
16原子/cm
3まで低まっていく。
【0021】
この実施形態によれば、Mgドーピングレベルは、バリア層付近で低く、ゲートの中央付近でそれより高い。これを、従来のGaNトランジスタと比較して
図11に示す。p型GaN層全体のMg濃度の形状は様々に異なっていてもよく、その一部(例えば、1つのピークを有するようにされたMg濃度、又は頂部をフラットにされたMgプロファイル)が
図11に示されている。
図10の構造は、ゲート層の中央で、より高い
Mg含有量を有する。バリア層付近の低Mg濃度により、バリア層内への逆拡散が低減される。ドーピングオフセットと組み合わせることで、バリア層、チャネル層及びバッファ層の意図しないドーピングを非常に低くすることを達成することができる。ゲートコンタクト付近の低Mg濃度は、ゲートコンタクトとp型GaNとの間にショットキーコンタクトを形成することを可能にする。これは、改善されたデバイスゲートリークをもたらす。
【0022】
次に、エンハンスメントモードGaNトランジスタの形成に関して第6実施形態を説明する。
図12は、デバイス700の断面図を示している。この実施形態は、ゲートコンタクト付近のゲート層77内へのSiの付加によってn型ドーピングが実現されることを除いて、第5実施形態と同様である。Mg濃度の典型値は第5実施形態と同様である。ゲートコンタクト付近のSi濃度は、約10
15原子/cm
3から約10
19原子/cm
3までの範囲とし得る。
【0023】
この実施形態によれば、Mgドーピングレベルは、バリア層付近で低く、ゲートの中央付近でそれより高い。ゲートコンタクト付近にSi原子が付加される。これを、従来のGaNトランジスタと比較して
図13に示す。バリア層付近の低Mg濃度により、バリア層内への逆拡散が低減される。ドーピングオフセットと組み合わせることで、バリア層、チャネル層及びバッファ層の意図しないドーピングを非常に低くすることを達成することができる。ゲートコンタクト付近の低Mg濃度は、低い正孔密度をもたらす。正孔密度は、Si原子の付加によって更に低減される。
図13のa)は、正孔の密度を低下させるためのSi原子の付加を示している。Si原子の密度はMg原子の密度より低いか等しいかである。この非常に低い正孔密度は、ショットキーコンタクトの形成を改善する。Mgのレベルを超えるまで更にSi含有量を増加させることは、p−n接合を生じさせる。
図13のb)は、ゲートコンタクト付近での、Mg原子の密度を遙かに上回るSi原子の付加を示している。これは、ゲート構造内にp−n接合を生じさせ、ゲートリークの更なる低減をもたらすことができる。
【0024】
次に、エンハンスメントモードGaNトランジスタの形成に関して第7実施形態を説明する。
図14は、デバイス800の断面図を示している。この実施形態は、ゲート領域の外側の領域内のバリア層上にスペーサ層の一部からなる領域89が残されていることを除いて、第5及び第6の実施形態と同様である。層89の厚さの典型値は、スペーサ層の厚さの約0%から約80%である。
【0025】
この低ドープあるいはアンドープの層による更なる利点は、製造に起因するダメージの低減、及び製造許容度の改善である。
図15A−15Dを参照するに、製造工程群は:(a)基板81上への、AlN及びAlGaNの遷移層82、GaNバッファ層83、チャネル層80、バリア層84、p−GaN層87及びゲートコンタクト材料の堆積;(b)材料89を少量残す、ゲートコンタクト及びp−GaN層87の大部分のエッチング;(c)例えばSiNなどの絶縁材料90の堆積による表面のパッシベーション;及び(d)コンタクト領域をエッチング開口し、オーミックコンタクト材料を堆積することによる、ソース86及びドレイン85の形成;を有する。上記利点は工程(b)にて達成される。p−GaNのエッチングにおいて、このエッチングはバリア層に達する前に停止される。これは、チャネル層における高い抵抗率とSiN界面での電荷のトラッピングをもたらし得るこの敏感な層へのダメージが生じることを回避するために行われる。低ドープのスペーサ層を用いない場合、層89はp−GaNからなる。これは、チャネル層から電子をはじき出してデバイスがオンのときに電流に対する抵抗を増大させる負電荷を層89内に生じさせる。アンドープのスペーサ層の使用は、工程(b)のエッチングがバリア層の上で終了することで、チャネル層の抵抗に弊害をもたらす高濃度ドープされた材料を残さずにダメージを回避することを可能にする。スペーサ層は、非常に高い温度(およそ1000℃からおよそ1100℃)で成長されてもよいし、高いアンモニアを用いて成長されてもよいし、且つ/或いは非常にゆっくりと成長されてもよい。
【0026】
以上の説明及び図面は単に、ここで説明した特徴及び利点を達成する特定の実施形態の例示と見なされるべきものである。具体的なプロセス条件には変更及び代用が為され得る。従って、本発明の実施形態は、以上の説明及び図面によって限定されるものとして見なされるものではない。