特許第5663001号(P5663001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663001
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】同時示差熱分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/20 20060101AFI20150115BHJP
   G01G 19/00 20060101ALI20150115BHJP
   G01G 21/20 20060101ALI20150115BHJP
   G01N 5/04 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   G01N25/20 G
   G01G19/00 A
   G01G21/20
   G01N5/04 A
   G01N25/20 D
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-508618(P2012-508618)
(86)(22)【出願日】2010年4月28日
(65)【公表番号】特表2012-525593(P2012-525593A)
(43)【公表日】2012年10月22日
(86)【国際出願番号】US2010032669
(87)【国際公開番号】WO2010126941
(87)【国際公開日】20101104
【審査請求日】2013年4月3日
(31)【優先権主張番号】12/766,964
(32)【優先日】2010年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/173,764
(32)【優先日】2009年4月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131764
【氏名又は名称】ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダンリー,ロバート・エル
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,シヤオピン
【審査官】 遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−129015(JP,A)
【文献】 米国特許第3685604(US,A)
【文献】 特開2008−82861(JP,A)
【文献】 特開平4−323546(JP,A)
【文献】 特開平3−142341(JP,A)
【文献】 特許第2649814(JP,B2)
【文献】 国際公開第2008/145426(WO,A1)
【文献】 特開平1−223332(JP,A)
【文献】 実開平1−75849(JP,U)
【文献】 特開昭61−272615(JP,A)
【文献】 特許第3581493(JP,B2)
【文献】 実開昭62−119651(JP,U)
【文献】 実開昭58−36323(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0144694(US,A1)
【文献】 特開平8−184545(JP,A)
【文献】 特開平5−80005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00 − 25/72
G01G 19/00 − 21/30
G01N 5/00 − 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天秤に使用するための結合アセンブリであって、
第1の複合部材と、
第1の複合部材に隣接する第2の複合部材と、
第1及び第2の複合部材を機械的かつ電気的に結合するように構成されピボットアセンブリとを備え、
結合アセンブリが、第1の複合部材の少なくとも一部に沿ってかつ第1及び第2の複合部材間をかつ第2の複合部材の少なくとも一部に沿って延びる少なくとも1つの連続する導電路を提供するように構成され
第1及び第2の複合部材が計器可動部天秤の水平釣合い梁の一部である、前記結合アセンブリ。
【請求項2】
天秤が同時示差熱分析装置の一部である、請求項1に記載の結合アセンブリ。
【請求項3】
第1及び第2の複合部材のうちの1つまたはそれ以上が導電路を備えるプリント基板材料である、請求項1に記載の結合アセンブリ。
【請求項4】
ピボットアセンブリが薄い平面導電たわみ部を備える、請求項1に記載の結合アセンブリ。
【請求項5】
ピボットアセンブリが、第1の複合部材へ取り付けられる第1の交差たわみ部材と、第2の複合部材へ取り付けられる第2の交差たわみ部材とを備える交差たわみピボットである、請求項1に記載の結合アセンブリ。
【請求項6】
計器であって、
DSC及びDTA測定の一方のために構成されている試料及び基準センサを含むホルダアセンブリと、
ホルダアセンブリの試料センサに機械的に結合され第1の試料天秤部材と、
第1のピボットアセンブリを用いて第1の試料天秤部材に枢動可能結合され第2の試料天秤部材と
ホルダアセンブリの基準センサに機械的に結合された第1の基準天秤部材と、
第2のピボットアセンブリを用いて第1の基準天秤部材に枢動可能に結合された第2の基準天秤部材とを備え、
秤部材各々、複合部材の絶縁部分に固定された導電路を含む複合部材であり、
計器が、電気信号を、試料及び/または基準ホルダアセンブリから各々の第1の天秤部材の少なくとも一部に沿ってかつピボットアセンブリを介しかつ各々の第2の天秤部材の少なくとも一部に沿って延びる導電路に沿って伝導するように構成されてい、前記計器。
【請求項7】
秤部材のうちの少なくとも1つが金属製導電トレースを含むプリント基板材料を備える、請求項に記載の計器。
【請求項8】
秤部材が各々略平坦な平面表面を備え、
秤部材を画定する平面表面間の角度が、約ゼロ度及び約90度のうちの一方である、請求項に記載の計器。
【請求項9】
試料及び基準天秤部材の各々機械的に結合され計器可動部をさらに備え、計器可動部がトートバンドダルソンバール計器可動部と、第1の計器可動部腕と、第2の計器可動部腕とを備える、請求項6に記載の計器。
【請求項10】
1及び第2のピボットアセンブリが交差たわみピボットである、請求項に記載の計器。
【請求項11】
1及び第2のピボットアセンブリが平面たわみピボットである、請求項に記載の計器。
【請求項12】
第1及び第2のピボットアセンブリが、個々の試料及び基準天秤部材を個々の試料及び基準天秤部材の重心に極く近い第1及び第2の位置で支えるように構成されている、請求項に記載の計器。
【請求項13】
第1の計器可動部腕及び第2の計器可動部腕が略水平方向に延びる、請求項に記載の計器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年4月29日に提出された米国仮特許出願第61/173,764号、及び2010年4月26日に提出された米国特許出願第12/766,964号に対する優先権を主張するものである。これらの出願は共に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、物質試料の熱的性質を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
同時熱分析計または同時示差熱分析計(SDT)は、熱重量分析計と、TGA(熱天秤としても知られる)と、示差熱分析計(DTA)または示差走査熱量計(DSC)の何れかとによる組合せを備える。従って、この計器は、ユーザが質量変化を同時に測定しかつ試料内の顕熱または潜熱変化を基礎として信号を監視することを可能にする。
【0004】
従って、SDTは、ユーザが物質内の遷移に関連づけられる熱流(DSCまたはDTA)及び重量変化(TGA)の双方を制御雰囲気内の温度及び時間の関数として測定することを可能にする。これらの主要な物質特性の同時的測定は、生産性を向上させるだけでなく、結果の解釈も単純にする。入手される相補的情報は、重量損失に関係しない吸熱及び発熱イベント(例えば、融解及び結晶化)と、重量損失を伴うイベント(例えば、分解)との間の区別化を可能にする。また、組み合わされる評価は、双方の測定の等しい実験及びサンプリング条件を保証し、これにより、これらの不確定性ソースが排除される。同時DSC−TGAは、周囲温度未満から1500゜Cを超える温度までの広い温度範囲をカバーし、特にポリマーである有機物質及びセラミック、金属及び他の無機物質を含む広範な物質を調査するための強力なツールとなっている。
【0005】
典型的には、このようなSDT計器等の設計は、既存の微量天秤コンポーネントとDTAまたはDSC測定コンポーネントとの組合せを含む。実際に、初期のSDT計器は、既存の実験用天秤を基礎としていた。
【0006】
概して、SDT及びTGA計器には共用される2タイプの微量天秤があり、これらは共に、天秤を平衡状態に維持するために天秤構造体へ復元力が加えられる、というヌルバランスの原理を採用している。重量変化に比例する復元力は、各タイプの微量天秤において測定された量である。双方の事例において、復元力は、典型的には光学的手段によって検出される天秤構造体の変位に対する応答として電磁的に加えられる。このような天秤の使用により、極めて高度な質量感度及び極めて高い質量変化分解能が容易に達成される。
【0007】
第1のタイプの天秤は、ダルソンバール計器可動部(本明細書では、「計器可動部天秤」とも称される)が釣合い梁を支持しかつ復元力をトルクとして加える、デュアルアームの計器可動部天秤である。
【0008】
ダルソンバール計器(「計器可動部」とも称される)を採用するSDT計器では、天秤へ接続される試料ホルダ内の試料重量が実験中に変わると、TGA天秤に近い変位センサが平衡位置から離れる天秤の移動を検知し、かつ電気回路が天秤を平衡へと復元するために必要な電流を生成する。
【0009】
SDT及びTGA計器に用いられる第2のタイプの天秤は、重み付けされた質量が重み付けされた質量の移動を拘束する機構によって支持される誘導式天秤である。典型的には、誘導式天秤機構は、弾性たわみピボットを有する平行四節リンク機構を備える。この機構は、平行誘導天秤と称される。リンク機構への復元力の印加には電磁アクチュエータが用いられ、一方で変位センサは並行位置から離れる移動を検出し、電気回路は天秤を平衡へと復元するために必要な任意の電流を生成する。
【0010】
SDT及びTGA計器は、加熱炉の方向性及び天秤の相対位置を基礎として水平または垂直計器に分類される場合がある。原則的には、重量の測定は、炉内へ広がる構造体の熱膨張によって、かつガス密度の変化から結果的に生じる浮力に加えて、炉をパージする作用により、または浮力に誘導される流れにより引き起こされる炉内のガス移動で与えられる力によって摂動される場合がある。これらの計量誤差の大きさは、SDT計器の配置に依存する。水平炉では、炉内へ広がる梁の熱膨張は多大な計量誤差を引き起こす場合があるが、垂直炉配置は、熱膨張が地球の重力場に対して平行に発生することから、これらによる影響がほとんどない。一方で、垂直計器は、炉内の温度勾配が浮力駆動の流れに有利に働く重力場の方向に対して平行であることから、かつ天秤機構の移動がパージガスの流れの方向に対して平行であることから、流体の力によってはるかに影響されやすい。水平計器は、炉内の温度勾配が浮力駆動の流れに不利に働く重力場に直交し、かつ天秤機構の移動がパージガスの流れの方向に直交することから、これらの力にほとんど影響されない。最終的に、ガス密度の変化に起因する浮力は、水平及び垂直炉配置の双方に同程度の影響を与える場合がある。
【0011】
上述したように、SDT計器は、TGA測定と、熱流量検出デバイスの少なくとも試料側が天秤機構によって支持されることを要求するDTAまたはDSCタイプの測定とを組み合わせる。試料測定の間、試料は、温度変化によって誘発される試料の変化を観察するために加熱または冷却されることが可能である。試料を加熱する場合、加熱は、試料を支持する部材の少なくとも一部が試料の加熱に用いられる炉内へと延びる間に行われる。試料が加熱されるにつれて、試料の質量変化は天秤機構を平衡から偏向させ、よって平衡を維持するために必要な復元力が測定されることが可能である。同時に、試料領域から計器の固定部分まで延びるワイヤを用いて熱信号(DTAまたはDSCの何れか)が伝送され、よって、発生する物質変化の分析が試料から受信される熱信号を基礎として実行されることが可能である。従って、試料領域からのDSCまたはDTA信号を伝送するワイヤは、天秤の可動部を固定部へと接続しなければならない。これらの信号ワイヤは、典型的には、天秤へ計量誤差となる寄生力を加える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
SDT測定においてワイヤが計量誤差に寄与するという結果は、幾つかの要素によって導かれる可能性がある。原則的には、ワイヤによって天秤に加えられる力は、変位に対するワイヤ内の反応が線形弾性的である限り、必ずしも計量誤差には繋がらない。言い替えれば、ワイヤが加える力がワイヤの変位に対して厳密に線形比例し、かつその比例定数が変わらなければ、ワイヤに起因して生じる計量誤差は回避される可能性もある。ワイヤの反応が線形弾性的でなければ、計量誤差が生じる。ワイヤは通常、SDT装置の据付け中に変形されることから、ワイヤは、天秤位置または何らかの動作が生じているかどうかに関わらず、天秤にほぼ常時幾分かの力を加えている。ワイヤによる力が天秤に加わらないのは、ワイヤが変形されていない位置に存在する場合に限られる。発生する可能性がある別の問題点は、ワイヤは時間と共に緩む場合があり、その結果、ワイヤによって加えられる力が変化することにある。典型的には、ワイヤは、SDT装置内に据え付けられる際に必要な形状に曲げられ、よって、ワイヤの変形は本来少なくとも部分的に塑性的である。経時的に、塑性歪の中には弛緩し、よって静止位置にあるワイヤによって加えられる力、並びに天秤の変位から生じる力を変えるものがある。原則的には、ワイヤは焼鈍される、または応力除去されることが可能であるが、これらが概して細くかつ曲りやすいことを考えれば、ワイヤを変形させることなく取り扱って据え付けることは困難である。
【0013】
ワイヤの他に、天秤の固定部を天秤の可動部へ接続するために必要な、または天秤の2つの可動部を接続するピボット構造体も、試料重量の測定に影響を与え得る力をもたらす可能性がある。
【0014】
これらの2タイプの天秤のうち、計器可動部タイプの方が、そのより低い質量及びより低い剛性を所与として、より感度が高くかつより速い動特性を有する。誘導式天秤はよりロバスト性が高く、かつ水平配置での使用に際して上述した熱膨張効果に影響されない。誘導天秤型のSDT計器は、垂直または水平炉配置の何れかと合同して使用される場合がある。概して、計器可動部天秤は、水平炉配置と共に使用される。
【0015】
水平配置において、計器可動部天秤は、典型的には、2つの天秤、即ち試料天秤及び基準天秤が平行して動作される示差秤量配置で使用される。一方の天秤は試料及びその容器を秤量し、もう一方の天秤は空容器または容器内の不活性基準試料を秤量する。試料重量測定値から基準重量測定値の減算は、計量構造体の熱膨張に起因する計量誤差、及び装置に作用する浮力に起因する計量誤差をなくする。試料浮力もやはり、二重天秤配置における誤差の潜在的ソースである。二重天秤配置は水平炉配置を採用することから、これらの天秤は、原因がパージガスの流れであるか炉内の温度変化から生じる浮力の差であるかに関わらず流体動作から生じる力からは大きく隔絶される。その理由は、これらの力が重力場に対して直交的に作用することにある。
【0016】
二重天秤計器可動部タイプのSDT(以下「二重天秤SDT」とも称される)では、試料天秤及び基準天秤の各々が計器可動部コンポーネントと、光変位センサと、個々の天秤を平衡位置に維持するための電子機器とを含む。コンポーネントの二重化に起因して望ましくないコストがかかることの他に、二重天秤SDTシステムには、計器可動部の場合のように2つの天秤アセンブリのコンポーネント間の潜在的不整合という不利益がある。この設計の別の欠点は、計器可動部コンポーネント(または「計器可動部」)が釣合い梁及びDTAまたはDSC試料ホルダ構造体の全重量を支えなければならないことにある。
【0017】
ダルソンバール計器可動部は、計器の回転部を支持する宝石ベアリングまたは薄いトートバンドの何れかによって作製される場合がある。概して、摩擦なしに動作するという理由でトートバンドサスペンションが好適である。計器可動部の変位は、トートバンドを僅かに捻れさせる。トートバンドの弾性たわみ部は極めて線形的かつ再現性が高いのに対して、宝石ベアリングにおける摩擦ははるかに非線形的であって再現性がはるかに低い。一方で、宝石ベアリング計器可動部は、トートバンドサスペンションによって支えられるものよりはるかに大きい荷重を支えることができる。トートバンドサスペンションは、梁、試料(または基準)ホルダ、DTAまたはDSCセンサ及び試料の重量全体を支えなければならないことから、秤量はトートバンドの容量の極く一部に制限され、その大部分が梁、ホルダ及びセンサを支えるために使用される。このように、トートバンド計器は、低い秤量を有する傾向がある。
【0018】
上記に鑑みて、SDT計器内の天秤装置のさらなる改良が必要とされていることは認識される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様において、ある改良されたSDT配置は、プリント基板材料(PCB)から構築される1つまたは複数の部材を含む水平計器可動部天秤構造体を含む。PCB部材は、天秤の構成成分として作用すること、及びDTAまたはDSC測定に使用される試料または基準温度センサからの信号を導くことの双方を目的とするように構成される。
【0020】
本発明の別の態様において、SDT天秤は、構成成分として作用しかつ試料及び基準ホルダ内に位置決めされるセンサエレメントからの電気信号を導くように構成成分の表面に沿って、かつ/または構成成分内を延びる導体を含む複数のPCB部材を備える。本発明の一態様では、第1のPCB部材から隣接する第2のPCB部材へ繋がる連続する導電路が形成され、第1及び第2のPCB部材は導電性のたわみピボットによって相互に接続される。
【0021】
本発明のさらなる態様においては、PCBベースのSDT装置の1つまたは複数のピボットは薄い平面ストリップたわみ部を用いて構成され、かつ薄い平面ストリップたわみ部が天秤構造体のコンポーネント間でDTAまたはDSC信号を伝送できるように構築される。言い替えれば、薄い平面ストリップたわみ部は2つの別々の機能を果たし、即ち、1)隣接するPCB部材間、またはPCB部材とSDT装置の別の構造部材との間の導電リンク、及び2)隣接するPCB部材、またはPCB部材及び他の構造部材が互いの周りを旋回できるようにするピボット手段を提供する。
【0022】
本発明によれば、薄い平面ストリップたわみ部は導電性の可撓性部材と、突合せ構造体とを備える。突合せ構造体は2つの突合せ部を備え、第1の突合せ部は可撓性部材の一方の端へ取り付けるように構成され、かつ第2の突合せ部は可撓性部材のもう一方の端へ取り付けるように構成される。
【0023】
本発明の一実施形態では、薄い平面ストリップたわみ部は、プリント基板材料上の導電トレースへ直にはんだ付けされる。この実施形態では、第1のPCB上の導体と隣接するPCB上の導体との間にたわみ部を介して連続する電気路が形成される。連続する電気路は、第1のPCB上の導体から、第1のPCBへ取り付けられる第1の突合せ部、第1の領域内で第1の突合せ部へ取り付けられる薄い平面ストリップたわみ部材及び第2の領域における薄い平面ストリップたわみ部材へ取り付けられる第2の突合せ部を介して、隣接するPCB上の第2の突合せ部へ接続される第2の導体内へと延びる。
【0024】
本発明の別の実施形態では、薄い平面ストリップたわみピボットは、プリント基板材料上の導電トレースへ機械的に締め付けられる。この実施形態では、第1のPCB上の導体と隣接するPCB上の導体との間にたわみ部を介する連続する電気路が形成される。連続する電気路は、第1のPCB上の導体から、第1のPCBへ取り付けられる第1の突合せ部、第1の領域内で第1の突合せ部へ取り付けられる薄い平面ストリップたわみ部材及び第2の領域における薄い平面ストリップたわみ部材へ取り付けられる第2の突合せ部を介して、隣接するPCB上の第2の突合せ部へ取り付けられる第2の導体内へと延びる。
【0025】
例えば、SDT装置内の薄い平面ストリップたわみ部の突合せ構造体は、例えば銅または他の高導電性金属であるシートメタル等の材料の導電シートを備える。本発明の1つの配置において、突合せ部は、間に薄い平面可撓性部材が保持される1対の平らな長方形シートまたはブロックを備える。薄い平面ストリップたわみ部の各端における突合せ部は正確にアセンブリの可撓部を画定し、かつたわみアセンブリを天秤構造体へ取り付けるための導電表面を提供する。
【0026】
本発明の一実施形態では、PCBベースのSDT装置の1つまたは複数のピボットは交差たわみ設計を用いて構成され、かつ交差たわみ部が天秤構造体のコンポーネント間でDTAまたはDSC信号を伝送できるように構築される。言い替えれば、交差たわみ部は2つの別々の機能を果たし、即ち、1)隣接するPCB部材間、またはPCB部材とSDT装置の別の構造部材との間の導電リンクを提供し、かつ2)隣接するPCB部材、またはPCB部材及び他の構造部材が互いの周りを旋回できるようにするピボット手段を提供する。
【0027】
本発明によれば、交差たわみピボットは、1対の交差した導電可撓性部材と、突合せ構造体とを備える。突合せ構造体は2対の突合せ部を備え、第1の可撓性部材が第2の可撓性部材と交差するように、第1の対の突合せ部は可撓性部材対の個々の第1の端へ取り付けるように構成され、かつ第2の対の突合せ部は可撓性部材対の個々の第2の端へ取り付けるように構成される。
【0028】
本発明の一実施形態では、交差たわみピボットは、プリント基板材料上の導電トレースへ直にはんだ付けされる。この実施形態では、第1のPCB上の導体と隣接するPCB上の導体との間に交差たわみピボットを介して連続する電気路が形成される。連続する電気路は、第1のPCB上の導体から、第1のPCBへ取り付けられる第1の突合せ部、第1の領域内で第1の突合せ部へ取り付けられる第1の交差たわみ部材及び第2の領域における交差たわみ部材へ取り付けられる第2の突合せ部を介して、隣接するPCB上の第2の突合せ部へ接続される第2の導体内へと延びる。
【0029】
本発明の好適な一実施形態では、交差たわみピボットは、プリント基板材料上の導電トレースへ機械的に締め付けられる。この実施形態では、第1のPCB上の導体と隣接するPCB上の導体との間に交差たわみピボットを介する連続する電気路が形成される。連続する電気路は、第1のPCB上の導体から、第1のPCBへ取り付けられる第1の突合せ部、第1の領域内で第1の突合せ部へ取り付けられる第1の交差たわみ部材及び第2の領域における交差たわみ部材へ取り付けられる第2の突合せ部を介して、隣接するPCB上の第2の突合せ部へ接続される第2の導体内へと延びる。
【0030】
本発明のある変形例では、SDT装置内の交差たわみピボットの突合せ構造体は、例えば銅または他の高導電性金属であるシートメタル等の導電シート材料を備える。本発明の1つの配置において、突合せ部は概してL字形の構造体を備え、「L」の第1の脚部はPCB等の構造部材の表面へ取り付けられ、かつ「L」の第2の脚部は構造部材の表面から外側へ延びる。本発明の一実施形態において、突合せ部の「L」の第2の脚部はそれ自体に、平らな可撓性部材の端部分を収容するスロット領域を形成するように折り畳まれる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、平らな可撓性部材の対は、SDT装置が秤量のための平衡位置にあるときに略直交クロスを形成する。本発明の一配置において、平らな可撓性部材は各々、ストリップの平面がPCB部材の平面に略直交する薄い平面導電ストリップを備える。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、突合せ部は、PCB上に位置決めされる導電トレースへ容易にはんだ付けされるように構成される銅等のシートメタル材料を備える。
【0033】
本発明の実施形態によれば、SDT計器は、隣接する構造部材が交差たわみピボットを用いて電気的かつ機械的に結合される2つの異なるPCB部材またはPCB部材及び非PCB部材を備える、PCB/交差たわみピボット設計を備える。SDT計器は、水平計器可動部天秤を備える。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、異なる材料が接触している場合に、例えばフレックスピボットがPCB材料へはんだ付けされる場合に発生される可能性もある外来熱電電圧を回避するために、天秤構造体は均一な定温に維持されるエンクロージャ内に収容される。試料ホルダを支えるために用いられる梁は、定温エンクロージャ内で天秤構造体へ取り付けられる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、計器可動部天秤SDTにおいて、DTAまたはDSC測定用の熱電対を含む試料ホルダは、高純度セラミックプラチナ合金等の高温耐熱材料で製造される。
【0036】
本発明の別の配置によれば、単一天秤計器可動部SDT計器(「単一計器可動部SDT」)は、単一の計器可動部と、単一の変位センサと、二重天秤配置に取って代わるように構成される単一セットの制御電子機器とを備え、よって複雑さが低減され、かつ異なる計器可動部、変位検出器及び関連電子機器間の不整合に起因する計量誤差が解消される。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、単一計器可動部SDTは、各々が等腕計器可動部天秤の一方の端へ接続される2つの釣合い梁アセンブリを備える。本発明の一実施形態によれば、各釣合い梁アセンブリは、試料または基準ホルダと、DTAまたはDSC測定用センサと、DTAまたはDSCセンサ信号用導体を含むプリント基板材料で製造される釣合い梁部材と、釣合い梁アセンブリを支えるためのたわみピボットアセンブリとを含む構造体を備える。たわみピボットは、平らな平面ストリップたわみピボット、または交差たわみピボットの何れかを備えてもよい。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、単一計器可動部SDTは、計量構造体の重量の大部分が計器可動部のトートバンドではなくたわみピボットによって支えられるようにして構築される。
【0039】
本発明の別の実施形態では、単一計器可動部SDTにおいて使用される回転の中心は平らな平面ストリップたわみピボットである。ピボットの適切な配置によって、計器可動部は試料と試料及び基準容器との重量を支えるだけでよく、天秤の秤量が増大される。言い替えれば、平らな平面ストリップたわみピボットのアセンブリは、各釣合い梁アセンブリをその重心に極く近い位置で支え、よって、平らな平面ストリップたわみピボットが釣合い梁アセンブリの質量の大部分を支え、試料ホルダは相応に梁アセンブリの一方の端に配置され、かつ等腕計器可動部天秤へのアタッチメントは梁アセンブリの反対端に配置される。
【0040】
本発明の別の実施形態では、単一計器可動部SDTにおいて使用される回転の中心は交差たわみピボットである。ピボットの適切な配置によって、計器可動部は試料と試料及び基準容器との重量を支えるだけでよく、天秤の秤量が増大される。言い替えれば、交差たわみピボットのアセンブリは、各釣合い梁をその重心に極く近い位置で支え、よって、交差たわみピボットが釣合い梁アセンブリの質量の大部分を支え、試料ホルダは相応に梁アセンブリの一方の端に配置され、かつ等腕計器可動部天秤へのアタッチメントは梁アセンブリの反対端に配置される。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、単一計器可動部SDTの第1及び第2の釣合い梁アセンブリは平行に配置され、各々が等腕計器可動部天秤の第1及び第2の腕へ個々の第1及び第2の可撓性リンクによって接続される。本発明のこの実施形態において、好適には、各釣合い梁アセンブリの重量の大部分は、釣合い梁アセンブリの重心近くに置かれる平らな平面ストリップたわみピボットまたは交差たわみピボット等のピボットによって支えられる。従って、単一計器可動部天秤によって支えられる荷重は、実験試料、試料容器、もしあれば基準材料及び基準容器によって与えられるものだけに低減される。
【0042】
本発明の好適な一実施形態によれば、単一計器可動部天秤配置の回転の中心は、釣合い梁によって計器可動部の両腕に加えられる力が計器可動部のフレーム及びコイルの重量と相殺され、よって計器可動部のトートバンドに計器可動部のフレーム及びコイルの重量がほとんど、または全くかからないように調整される。
【0043】
単一計器可動部SDTの釣合い梁部材が少なくとも部分的にPCB材料で製造されかつたわみピボットによって支えられる本発明の一実施形態によれば、試料及び基準DTAまたはDSCセンサからの信号は、釣合い梁アセンブリのPCB材料部分に配置される導体によってたわみピボットを介してSDTの静止部へ伝送され、そうでなければ基準及び試料ホルダからの信号伝送に必要であるワイヤの寄生力がなくされる。水平示差秤量アセンブリの熱膨張力と流体力とが相殺される優位点も、保全される。
【0044】
異なる材料が接続している場合に、例えばフレックスピボットがPCB材料へはんだ付けされる場合に発生される可能性もある外来熱電電圧を回避するために、天秤構造体は均一な定温に維持されるエンクロージャ内に収容される。DTAまたはDSC測定用センサを含む試料ホルダは、典型的には高純度セラミックプラチナ合金である高温耐熱材料で製造される。両梁は、定温エンクロージャ内で天秤構造体へ取り付ける。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1a】計器可動部天秤を用いるSDTの測定装置部分の先行技術配置を示す斜視図である。
図1b図1aの装置の試料ホルダを示す拡大図である。
図2】本発明の一実施形態による、隣接する構造部材同士を結合するための薄い平面ストリップたわみ部を有する天秤の一部を描いたものである。
図3】本発明の一実施形態による、隣接する構造部材同士を結合するための交差たわみピボットを有する天秤の一部を描いたものである。
図4】本発明の一実施形態に従って配置されている、SDT装置の単一計器可動部天秤及び熱測定腕を略示した斜視図である。
図5】本発明による薄い平面ストリップたわみ部を使用する単一計器可動部天秤を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に従って配置されている、SDT装置の熱測定腕を含む単一計器可動部天秤を示す斜視図である。
図7】ハウジング部分を取り除いた図6の装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、試料の同時重量測定を試料エリアから電気信号を記録するための装置への電気信号伝搬を必要とする試料測定と組み合わせる、装置内で使用されることが可能なコンポーネントの新規かつ発明的配置を提供する。例えば、本発明の実施形態は、SDT装置における熱測定と共同して使用され得る試料測定天秤の改良された配置を提供する。
【0047】
先に記述したように、DSCまたはDTA等のSDT装置は、同時重量測定法を熱測定と共に実行する。SDT装置は、加熱の間に発生する、重量変化、相変化等の複数の試料特性の変化を同時に測定することができる。
【0048】
図1a及び図1bは、SDT装置の測定装置部分100、この事例では計器可動部天秤SDTの知られている配置を描いている。装置100は、試料ホルダ112内に置かれる試料の同時熱測定(例えば、DSCまたはDTA)及び重量測定を実行するためのハードウェアを含む。本明細書において「熱測定」という用語は、試料または基準ホルダに、またはその近くに位置決めされる熱電対または類似デバイスを用いることによって促進される測定を指す。熱測定は、例えば、知られているDSC/DTAセンサの場合のように熱流量を感知するための測定であることが可能である。熱測定の特質は、電気信号が試料エリアから延びる導体に沿って伝搬し、かつ測定装置100の外部にあるコンポーネント(不図示)によって検出されて分析されることにある。
【0049】
装置100は、2つの計器可動部106と、個々の試料及び基準天秤腕108の試料及び基準ホルダ内に置かれる試料及び基準物を別々に秤量するために用いられる付属センサとを含む水平差動天秤を含む。電気信号は、試料または基準物から電気信号を検出するための外部ポイントまで延びるワイヤを用いて各熱電対から導かれる。この装置の場合、電線は天秤腕に、試料内に発生する重量変化の正確な測定を妨げ得る力を与える可能性がある。例えば、試料ホルダへ結合されるワイヤセットは試料天秤腕上へ、基準ホルダへ結合されるワイヤによって基準天秤腕へかけられるものとは異なる力をかける場合がある。この方法では、試料が加熱されるにつれて発生し得る試料及び基準材料間の重量の差動変化が、予測不可能であって大きさも未知であり得るワイヤによってかけられる力の寄生効果によって分かりにくくされる可能性がある。同様に、平行誘導天秤の場合、例えば天秤腕の回転の中心において試料及び基準ホルダへ結合されるワイヤは、重量測定の精度を低下させる可能性がある。
【0050】
本発明によれば、電気信号が天秤へ結合される試料ホルダから導かれるSDT装置における使用に適合する改良された天秤アセンブリが提供される。本発明の一実施形態では、天秤アセンブリは、絶縁部分と、例えば試料または基準センサからの電気信号を導くように構成される導電路である導電部分とを含む1つまたは複数の複合構造部材(本明細書では「複合部材」とも称され、部材が絶縁部と導電部とを有してもよいという事実を指す)を含む。従って構造部材は機械的機能を実行し、かつ電気的機能も実行してもよい。例えば、構造部材は、プリント基板材料(PCB)または類似材料、またはガラス、ガラスセラミックもしくは他の材料等の別のタイプの絶縁材料から製造されることが可能である。導電材料は、絶縁体上及び/または絶縁体内に配置される。導電材料は、メッキ金属、溶着金属または例えばプリント基板に使用される知られている類似導体であることが可能である。
【0051】
本発明の一実施形態では、複合部材は、計器可動部天秤の水平天秤腕の水平部材等のSDT天秤の水平部材として用いられる。本発明の実施形態によれば、複合部材の表面内及び/または表面上に配置される導電路は、試料センサ及び基準センサからの電気信号を導くワイヤの代わりに用いられる。
【0052】
本発明の実施形態によれば、複合部材は、コンポーネント間で相対動作が生じる場合に隣接するコンポーネント間で信号を伝送するためにワイヤが用いられる知られているSDT天秤に比較して天秤に作用する任意の寄生力を減じるために、天秤アセンブリの他の部分と機械的に結合するように構成される。本発明の一変形例では、複合部材の隣接部材への機械的結合は、交差たわみピボット等のピボットを用いて促進される。ピボットは、シートメタル等の導電材料から形成され、かつ隣接コンポーネント間に隣接コンポーネントが互いに対して回転される際にも中断されない連続する電気路を形成するために、複合部材上へ配置される導電路を隣接コンポーネント内に配置される導体と電気結合するように構成される。
【0053】
図2は、本発明の一実施形態による、薄い平面ストリップたわみ部が隣接する複合部材同士を機械的かつ電気的に結合するように構成されている、天秤の結合アセンブリ200を描いている。隣接する複合部材202及び203は、例えば、その表面上及び/または基板内に導電路(本明細書では「トレース」とも称される)を装備している絶縁基板であることが可能である。具体的には、複合部材202及び203は、導電路204及び205を装備したPCB材料であってもよい。複合部材はまた、他の材料の中でもとりわけセラミック、ガラスセラミック及びガラス等の別の絶縁体の上及び/または内部に形成される導電トレースを用いて形成されてもよい。本発明の一変形例では、結合アセンブリ200は水平天秤腕のためのピボットである。図2に描かれている本発明の実施形態において、隣接する複合部材202及び203は、PCBには典型的な略平坦な構造体である。平らな平面ストリップたわみ部206は、たわみ部材207と、突合せ部208とを備える。たわみ部材207は、高い導電性及び高い機械的強度を有するベリリウム銅等の薄いシートメタルを備える。例えば、ベリリウム銅合金はベリリウム含有が1.8%から2.0%までであってもよい。ストリップの典型的なサイズは、厚さ0.001”×幅0.065”×長さ0.200”である。突合せ部208は各々、たわみ部材207よりはるかに厚くかつ間にたわみ部が取り付けられる1対の正方形銅板209(好適には、無酸素銅)を備える。本発明では、ねじ210が突合せ部及びたわみ部内の穴を通過してこれらを互いに締め付け、かつこれらをPCB構造体202及び203へ固定する。突合せ部は導電トレース204及び205にも接触し、これにより、2つのトレース間に突合せ構造体及びたわみ部材を介して導電路が生成される。或いは、突合せ構造体がたわみ部へはんだ付けされる可能性もあり、かつアセンブリが導電トレースへはんだ付けされる可能性もある。
【0054】
図3は、本発明の一実施形態による、交差たわみピボットが隣接する複合部材同士を機械的かつ電気的に結合するように構成される、天秤の結合アセンブリ300を描いている。隣接する複合部材302は、例えば、その表面上及び/または基板内に導電路(本明細書では「トレース」とも称される)を装備した絶縁基板であってもよい。具体的には、複合部材302は、導電路304を装備したPCB材料であってもよい。複合部材は、他の材料の中でもとりわけセラミック、ガラスセラミック及びガラス等の別の絶縁体の上及び/または内部に形成される導電トレースを用いて形成されてもよい。
【0055】
例えば、結合アセンブリ300は、水平天秤腕の回転の中心であってもよい。図3に描かれている本発明の実施形態では、隣接する複合部材302はPCBには典型的な略平坦な構造体である。
【0056】
隣接する複合部材302は各々2つの突合せ部310を含み、これらは、垂直たわみ部306及び水平たわみ部308と共に隣接する複合部材を接続する交差たわみピボット305を形成する。本発明の一実施形態によれば、突合せ部310は、例えば無酸素銅または導電路304へ容易に電気結合されることが可能な他の金属であるシートメタル等の薄い導電材料から形成される。ある例では、突合せ部310は導電路304へはんだ付けされる。本発明の代替実施形態によれば、突合せ部310へ結合される導電路304は、DTAもしくはDSCセンサからの信号を導くようにさらに構成されることが可能であり、または、専ら突合せ部を複合部材302の本体へ取り付ける目的で使用されることが可能である。
【0057】
図3に示されている例では、突合せ部310は「L」字形を有する。しかしながら、突合せ部310は他の形状を想定することもできる。交差するたわみ部306、308は各々、シートメタル等の薄い導電材料から形成される。
【0058】
本発明の実施形態によれば、結合アセンブリ300は、SDT装置等の測定装置の性能を向上させるように構成される。複合部材302は、上述したように、天秤の構造部材として作用するのに十分な機械的剛性及び強度を提供するように構成される。さらに、複合部材302の本体は電気絶縁性であることから、他の経路から電気絶縁される複数の導電路304が複合部材上に形成されることが可能である。さらに、交差たわみピボット305は、互いに隣接する部材302同士が、隣接する複合部材上の導電路間に導電接続を同時に提供しながら、互いに対して回転する手段を提供する。これは、隣接部材間を結合するための導電ワイヤを不要にする。従って、天秤部材に作用する可能性もあるワイヤからの寄生機械力が排除される。
【0059】
図3に示されている例では、隣接する複合部材302は互いに対して略平行に配置される。本発明の他の実施形態では、交差たわみピボットを有する結合アセンブリは、互いに対してある角度で、例えば直角に配置される隣接する複合部材を備える可能性もある。さらに、隣接する一方の複合部材は電気トレースを有するPCB基板であってもよく、隣接するもう一方の複合部材は導電路をサポートする別の絶縁体であってもよい。
【0060】
図4は、本発明の一実施形態による、単一計器可動部天秤配置400を描いた略図である。単一計器可動部天秤配置400は、例えばTGA計器において、または個々の試料及び基準ホルダ402及び404が釣合い梁403へ結合されかつ試料及び基準ホルダへの温度及び熱流量を測定するための熱電対リード(不図示)等のリードへも接続されるSDT装置において使用されることが可能である。ホルダ402及び404から導かれる電気信号は、例えば熱流に関するデータを計算し、表示し、または記憶するために構成される外部デバイスへ向かって導かれる。単一計器可動部天秤配置400は、試料が炉(不図示)内へ置かれる際に試料内に生じる重量変化を測定するためのより単純化された配置を提供する。天秤配置400は、基準ホルダ404及び試料ホルダ402毎に1つずつである2つの別々の釣合い梁403を含むが(単純化を期して、天秤腕403以外の基準及び試料ホルダ腕は示されていない)、釣合い梁は各々、試料ホルダ402内の試料の質量の相対変化を記録する同じ単一計器可動部406へ接続される。これは、各釣合い梁403を計器可動部406の個々の天秤腕409へ結合することによって達成される。図示されているように、釣合い梁403は、可撓性リンク408を介して計器可動部406へ結合される。
【0061】
本発明によれば、天秤配置400の単一計器可動部406は、知られている等腕計器可動部に類似して構成される。言い替えれば、計器可動部406の梁は、2つの等腕部分が固定的に取り付けられる中心セクションを含む一元構造体を備える。梁の中心セクションは、計器可動部へ取り付けられる。中心セクション及び等腕部分は、天秤の片側がもう一方の側より重いと一緒に回転する。従って、2つの釣合い梁403によって経験される重量の相対変化に応じて、一方の天秤腕409は上昇しやすく、かつ一方の天秤腕は降下しやすい。変位センサ(不図示)は動作を検出し、計器コイル(不図示)内では、天秤を平衡位置へと回復させるトルクを生成する電流が発生される。モータ電流は、天秤の重い方の側の余分な重量に比例する。合成質量及び天秤の風袋重量を量るために要求されるゼロオフセットの決定に当たっては、発生される計器電流に対する比例定数の適用を除いて必要な計算は存在しない。従って、単一計器可動部天秤は天秤腕間の重量差を直に測定する。これに対して、知られている二重天秤配置では、2つの重量測定が別々に実行され、天秤装置の浮力及び熱膨張効果を補償するために2つの別個の測定値の差が求められる。
【0062】
図4に描かれている単一計器可動部配置は、従来の二重計器可動部天秤(図1a参照)に存在する二重の計器可動部、センサ及びカウンターウェイトを排除している。さらに、単一計器可動部及び検出器しか使用されないことから、異なる計器可動部間及び異なる検出器間の不整合に起因する計量誤差が解消される。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、各ピボット410は、個々の釣合い梁403上の釣合い梁重心に極めて近い位置に置かれる。従って、ピボット410は各釣合い梁の質量の大部分を支え、よって試料及び基準ホルダ402及び404は各釣合い梁アセンブリの一方の端に配置され、かつ等腕計器可動部天秤406へのアタッチメントは天秤アセンブリの反対の端に配置される。
【0064】
従って、単一計器可動部天秤によって支えられる荷重は、実験試料、試料容器、もしあれば基準材料及び基準容器によって与えられるものだけに低減される。これは、トートバンドが釣合い梁アセンブリの全体重量を支えなければならない従来の配置に比較して、トートバンド計器可動部の試料秤量を増大させる。
【0065】
例えば、図1aを再度参照すると、従来の天秤100の天秤腕103は計器可動部106のトートバンドによって支持されかつこれの周りを回転し、これにより、天秤腕の全体重量がトートバンドにかけられる。
【0066】
本発明の一実施形態では、単一計器可動部配置400に用いられる回転の中心は薄い平面ストリップたわみ部である。
【0067】
本発明の別の実施形態では、単一計器可動部配置400に用いられる回転の中心は交差たわみピボットである。
【0068】
本発明の実施形態では、釣合い梁403の1つまたは複数の部分は、上述したように、PCB材料の上及び/または内部に形成される導電路を有するPCB材料等の複合部材で製造されることが可能である。本発明のさらなる実施形態では、釣合い梁403はPCB材料で構築され、かつピボット410は上述したように動作する薄い平面ストリップたわみ部である。本発明のさらに別の実施形態では、釣合い梁403はPCB材料で構築され、かつピボット410は上述したように動作する交差たわみピボットである。
【0069】
試料または基準皿上にかかる力が変わり、例えば試料ホルダ402内の試料または基準ホルダ404の質量が変わり、その力によって個々の釣合い梁403が動くと、この動きは可撓性リンク408を介して計器可動部406の腕409に力をかける。例えば、試料ホルダ402内の試料が重くなると、試料ホルダ402及び試料梁は可撓性リンク408を中心にして下方へ回転し、これがピボットとして作用して釣合い梁の後部を可撓性リンク408により形成されるピボットを中心にして上方へ回転させる。上向きの回転は可撓性リンク408にかかる上向きの力を誘発し、これにより、計器可動部左腕409にかかる上向きの力が誘発される。これにより、計器可動部腕の回転が促進され、よって変位センサは動作を検出し、かつ計器コイル内に天秤を平衡位置へと回復させるトルクを生成する電流を発生させる。計器電流の変化は、天秤の試料側の余分な重量に比例する。従って、試料を加熱または冷却する間、計器電流の単一読取りから、試料及び基準ホルダ402及び404間の重量差を決定することができる。基準/基準ホルダ/基準梁が質量変化を経験しない限りにおいて、2つの天秤腕間のこの重量差は試料ホルダ402における試料の質量変化を表す。
【0070】
試料及び基準ホルダ/梁の双方が重量の同時的変化を経験する場合、計器可動部406は、試料及び基準ホルダ間の相対的な試料重量変化のみを記録する。従って、浮力が両ホルダに同時に作用すれば、試料及び基準ホルダは同じ力を経験するが、これらは互いに相殺され、よって計器可動部腕409に回転は生じない。
【0071】
従って、実験中に天秤及び基準腕に作用する浮力及び装置熱膨張を含む試料質量に関係しない力の変化が、両ホルダに等しくかつ同様に作用する傾向がある限り、TGA測定は、試料及び基準ホルダ間の実際の質量差の直接的な測定を提供することができる。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、図5は、SDT装置の試料及び基準ホルダ及び梁を含む、薄い平面ストリップたわみ部を使用する単一計器可動部を有する2梁水平天秤500を描いた斜視図である。試料皿及び基準皿にかかる力に関連する、図4に示されている計器を参照して行った先の論考は、図5に示されている計器、並びに後述する図6及び図7に示されている計器にも等しく当てはまる。
【0073】
試料及び基準ホルダ502及び503は、試料及び基準横部材506及び507によって支えられる試料及び基準梁504及び505へ接合される。PCB材料で製造される試料横部材506は、導電トレース509へ取り付けられる1対の薄い平らな平面ストリップたわみ部206の各々の一端によって支えられる。各たわみ部の反対端は、静止PCB部材510の導電トレースへ取り付けられる。試料ホルダ502内の温度センサからの信号ワイヤ(不図示)は、横部材506上の導電トレース509へ接続される。後部梁511の一端は、試料梁504とは反対側の横部材506へ取り付けられる。試料ホルダ502、試料梁504、横部材506及び後部梁511は、試料梁アセンブリ512を構成する。従って、試料梁アセンブリ512は薄い平面ストリップたわみ部206によって支えられかつこれを中心にして回転し、かつ試料センサからの電気信号はたわみ部を通過し、可動試料梁をアセンブリの静止部へ接続する信号ワイヤが不要にされる。
【0074】
後部梁511の反対端は可撓性リンク408へ付着し、可撓性リンク408は計器可動部406の腕409へ取り付ける。同様にして、基準試料ホルダ503は基準梁505へ取り付けられ、かつ薄い平面ストリップたわみ部206により支えられる基準横部材507は、静止部材513へ取り付けられる。基準ホルダ503内の温度センサからの信号は、試料側のそれと類似する方法でセンサと静止部材513との間で伝送される。あらゆる点で、基準梁アセンブリ514は、鏡像的であるが試料梁アセンブリ512に等しい。
【0075】
温度センサからの電気信号経路が異なった組成の材料を介して、センサワイヤの接続ポイントから静止部材へと通るものとすれば、外来熱電電圧が発生する可能性がある。試料及び基本温度信号の双方に対する温度測定誤差として現出すると思われるこれらの熱電電圧は、相互接続システムが等温であると保証することによって略排除される場合がある。相互接続システムは、信号ワイヤの端と、横部材上の導電トレースへの接続部と、横部材上及び静止部材上の双方の導電トレースと、突合せ部及び可撓性部材を含むたわみ部と、静止部材上の導電トレースへ接続する銅線の端とを含む。銅線は、試料及び基準温度信号を測定電子機器へ伝送する。相互接続システムが等温であることを保証するために、高熱伝導性材料(典型的には銅または無酸素銅であり、銀またはアルミニウムまたは他の高熱伝導性材料が使用されることも可能である)の厚板(不図示)が、横部材及びその導電トレースと、静止部材及びその導電トレースと、たわみアセンブリ及びそのアタッチメントと、横部材上の導電トレースへ接続する温度センサ信号ワイヤの端と、静止部材上の導電トレースへ接続する銅信号ワイヤの端とを囲みかつ封じる。さらに、等温の板及びそれらが封じる相互接続システム、後部梁、可撓性リンク及び計器可動部アセンブリは、エンクロージャ内の全てのものが定温に保たれることを保証するために、温度が正確に周囲温度より高く調整されるエンクロージャ内に収容される。これは、等温板及びそれらが封じる温度信号相互接続システムの温度均一性及び安定性を向上させ、さらに、外来熱電電圧によって試料及び基準温度センサ信号に温度誤差が生成されないことを保証する。試料及び基準ホルダ内の温度センサが熱電対である事例では、基準接合部補償の適用に必要な基準接合部温度センサが等温板の1つに設置され、基準接合部温度センサがこれらの板及び延ては相互接続システムと同じ温度にあることが保証される。
【0076】
さらに、これは、計器可動部内部の永久磁石が、それが生成する磁場が一定に保たれるように定温のままであることを保証する。これは、磁石の温度変化は磁石によって発生される磁場を変化させ、測定される質量に対する計器コイル電流の比例性が変わり、よって計量誤差がもたらされるという理由によって重要である。また等温板は、薄い平面たわみ部を試料及び基準釣合い梁アセンブリの過剰なたわみによる物理的損傷から防護する働きもする。等温板は横部材にかなりぴったりと嵌るように製造され、よってその動作は、天秤アセンブリがその平衡位置から外されてもその動作は小さく、たわみ部の弾性限界が超過されないように限定される。たわみ部の弾性限界が超過されると、測定重量に誤差が生じることになる。本発明の一実施形態によれば、図6及び図7は各々、SDT装置の試料及び基準ホルダ腕を含む交差たわみピボットを使用する単一計器可動部天秤700を所定位置にあるハウジング部分と共に描いた場合と省略した場合の斜視図である。
【0077】
試料及び基準ホルダ502及び503は各々、試料及び基準梁504及び505へ接続される。試料及び基準梁504及び505は各々、個々の試料または基準釣合い梁601へ接続される。各釣合い梁601は、ハウジング602の頂部上に配置されるピボットアセンブリ603を中心にして回転するように構成される。試料または基準釣合い梁601の何れかにおいて誘発される回転行動は、個々の計器可動部腕409へ接続される個々の可撓性リンク408に力をかける。計器可動部406のフレーム構造は、その軸の近くで計器可動部406へ取り付ける一元構造体と、2つの計器可動部腕409とを備える。フレーム構造は計器可動部の軸を中心として回転するように構成され、よって、2つの計器可動部腕409は一致して回転する。従って、一方の計器可動部腕に回転動作が加わると、もう一方の計器可動部腕にも同じ回転方向の付随的な回転動作が加わる。
【0078】
図5に描かれているようなシステム配置500は、さらに幾つかの発明的特徴を提供する。図1aの二重計器可動部システムとは対照的に、天秤腕409の回転軸(延てはその回転)は計器可動部406の回転軸に直交する。他の優位点の中でもとりわけ、これは、釣合い梁アセンブリ512及び514のピボットを釣合い梁沿いの任意の所望されるポイントに置く能力をもたらす。従って、たわみ部206は、可撓性リンク408上へ計器可動部406のフレーム重量を相殺する上向きの力をかけるように置かれることが可能である。これは、図5に示されている天秤並びに図6及び図7に示されている天秤が、釣合い梁アセンブリにより計器可動部406のトートバンドへ加えられる静的力を最小限に抑えることを可能にし、よってアセンブリの秤量は増大される。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、試料及び基準ホルダ502及び503は各々熱センサを含む。試料及び基準ホルダ内の熱流量は、1つまたはそれ以上の知られている技法に従って、センサから受信される電気信号に基づいて監視されることが可能である。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、釣合い梁512及び514は、導電路を提供するPCB材料等の複合材料を含む。例えば、横部材506及び507は、上述したような複合PCB/導体であってもよい。さらに、ピボット206のうちの1つまたはそれ以上は、図2に関連してその構造及び動作について上述した薄い平面ストリップたわみ部であることが可能である。従って、電気信号を外部デバイスへ伝えるために釣合い梁アセンブリ512及び514を天秤アセンブリの静止部へ接続するためのワイヤは不要である。
【0081】
要約すると、本発明の実施形態は、試料及び基準ホルダ内のセンサからの電気信号の伝導を必要とする、試料の同時熱重量測定またはDSCもしくはDTAタイプの測定を実行するための新規かつ改良された配置を提供する。本発明の実施形態によれば、機械的部材として及び試料/基準ホルダからの電気信号を伝導するための手段の双方として機能する天秤の複合部材は、機械的機能のみを果たす従来の天秤部材の代わりに使用される。薄い平面ストリップまたは交差たわみピボットの配置は、1つまたは複数の複合部材と共に提供される。これらの配置は、互いに対して移動可能である部材間の接合部におけるワイヤの必要性をなくする働きをする。複合部材/薄い平面ストリップたわみ部または交差たわみピボット配置の1つまたは複数の態様は、例えば2つの等腕の各々を介して、個々の試料及び基準釣合い梁アセンブリへ結合される2梁水平単一計器可動部天秤へ組み込まれることが可能である。
【0082】
上述の本発明の好適な実施形態の開示は、例示及び説明を目的として提示されたものである。その開示は、網羅的であること、または本発明を開示された精密な形態に限定することは意図されていない。以上の開示に照らせば、一般的な当業者には、本明細書に記述されている実施形態の多くの変形及び修正が明らかとなる。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲及びその同等物によってのみ規定されるべきである。
【0083】
さらに、本発明の代表的な実施形態を記述するに当たって、本明細書は本発明の方法及び/またはプロセスを特定のステップシーケンスとして提示している場合がある。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載されている特定のステップ順序に依存するものでない限り、その方法またはプロセスは記述されている特定のステップシーケンスに限定されるべきではない。一般的な当業者には認識されるが、他のステップシーケンスも可能である場合がある。従って、本明細書に記載された特定のステップ順序は、特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。さらに、本発明の方法及び/またはプロセスに関する特許請求の範囲は、記載されている順序でのそのステップパフォーマンスに限定されるべきではなく、当業者であれば、シーケンスは変更される場合があり、しかも本発明の精神及び範囲に含まれることを容易に認識することができる。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7