(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、
前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、1〜200Ωcmであり、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、それぞれの前記電極部の中心角の0.5倍が、15〜65°であり、
触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能するハニカム構造体。
それぞれの前記電極部の、前記セルの延びる方向に直交する断面における中央部であり、且つ前記セルの延びる方向における中央部に、電気配線を繋ぐための電極端子突起部が配設された請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0018】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、
図1〜
図3に示すように、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有する筒状のハニカム構造部4と、ハニカム構造部4の側面5に配設された一対の電極部21とを備え、ハニカム構造部4の電気抵抗率が、1〜200Ωcmであり、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成され、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設され、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍(中心角αの0.5倍の角度θ)が、15〜65°である。
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
図3は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。尚、
図3においては、隔壁が省略されている。
【0019】
このように、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の電気抵抗率が1〜200Ωcmであるため、電圧の高い電源を用いて電流を流しても、過剰に電流が流れず、ヒーターとして好適に用いることができる。また、「一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成され、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心を挟んで反対側に配設され、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍(中心角αの0.5倍の角度θ)が、15〜65°である」ため、一対の電極部21,21間に電圧を印加したときの、ハニカム構造部4の温度分布の偏りを抑制することができる。特に、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍の角度θが、15〜65°であるため、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。
【0020】
ここで、「セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設される」とは、セル2の延びる方向に直交する断面において、「一方の電極部21の中央点(「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点)とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分」と、「他方の電極部21の中央点(「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点)とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分」と、により形成される角度β(「中心O」を中心とする角度(
図3を参照))が、170°〜190°の範囲となるような位置関係になるように、一対の電極部21,21がハニカム構造部4に配設されていることを意味する。また、「電極部21の中心角α」は、
図3に示されるように、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ2本の線分により形成される角度(セルの延びる方向に直交する断面において、「電極部21」と、「電極部21の一方の端部と中心Oとを結ぶ線分」と、「電極部21の他方の端部と中心Oとを結ぶ線分」とにより形成される形状(例えば、扇形)における、中心Oの部分の内角)である。
【0021】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1及び外周壁3の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするものであることが好ましく、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素であることが更に好ましい。「隔壁1及び外周壁3の材質が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものである」というときは、隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。このような材質を用いることにより、ハニカム構造部の電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。ここで、珪素−炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、炭化珪素は、炭化珪素が焼結したものである。ハニカム構造部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0022】
本実施形態のハニカム構造体100は、
図1〜
図3に示されるように、ハニカム構造部4の側面5に一対の電極部21,21が配設されている。本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21間に電圧を印加することにより、発熱する。印加する電圧は12〜900Vが好ましく、64〜600Vが更に好ましい。
【0023】
図1〜
図3に示されるように、一対の電極部21,21のそれぞれは、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる「帯状」に形成されている。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心部Oを挟んで反対側に配設されている。そして、更に、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍(中心角αの0.5倍の角度θ)が、15〜65°である。このように、電極部21を帯状に形成し、帯状の電極部21の長手方向が、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びるようにするとともに、一対の電極部21,21がハニカム構造部4の中心部Oを挟んで反対側に配設されるようにし、更に、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍の角度θを、15〜65°としたため、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。
【0024】
セル2の延びる方向に直交する断面において、電極部21,21の「中心角αの0.5倍の角度θ」の上限値は、60°が好ましく、55°が更に好ましい。また、セル2の延びる方向に直交する断面において、電極部21,21の「中心角αの0.5倍の角度θ」の下限値は、20°が好ましく、30°が更に好ましい。また、一方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」は、他方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」に対して、0.8〜1.2倍の大きさであることが好ましく、1.0倍の大きさ(同じ大きさ)であることが更に好ましい。これにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。
【0025】
電極部21の厚さは、0.01〜5mmであることが好ましく、0.01〜3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、均一に発熱することができる。電極部21の厚さが0.01mmより薄いと、電気抵抗が高くなり均一に発熱できないことがある。5mmより厚いと、キャニング時に破損することがある。
【0026】
また、
図4に示すように、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21が、ハニカム構造部4の外周に沿って並ぶ複数の領域(電極部における領域A、電極部における領域B、電極部における領域C)を有し、セルの延びる方向に直交する断面において、中央に位置する領域が最も厚く、外側に位置する領域ほど薄く形成され、両端に位置する領域が最も薄く形成されていることが好ましい。このように、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部の外側に位置する領域ほど薄く形成されることにより、電極部に電圧を印加したときにハニカム構造部の温度分布の偏りをより小さくすることができる。電極部が複数の領域を有する場合、その領域の数は、特に限定されず、2〜4程度が好ましい(段差の無い「連続的に厚さが変化する」滑らかな形状でも良い)。
図4は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態(ハニカム構造体200)の、セルの延びる方向に直交する断面の一部を示す模式図である。
図4においては、隔壁は省略されている。本実施形態のハニカム構造体200の各条件は、電極部21が上記のように外側ほど薄い複数の領域を有すること以外は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態(ハニカム構造体100)における各条件と同じであることが好ましい。
【0027】
電極部21が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることが好ましく、通常含有される不純物以外は、炭化珪素粒子及び珪素を原料として形成されていることが更に好ましい。ここで、「炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」とは、炭化珪素粒子と珪素との合計質量が、電極部全体の質量の90質量%以上であることを意味する。このように、電極部21が炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極部21の成分とハニカム構造部4の成分とが同じ成分又は近い成分(ハニカム構造部の材質が炭化珪素である場合)となるため、電極部21とハニカム構造部4の熱膨張係数が同じ値又は近い値になる。また、材質が同じもの又は近いものになるため、電極部21とハニカム構造部4との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極部21がハニカム構造部4から剥れたり、電極部21とハニカム構造部4との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。
【0028】
図1、
図2に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びると共に「両端部間(両端面11,12間)に亘る」帯状に形成されている。このように、一対の電極部21,21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように配設されていることにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りをより効果的に抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りをより効果的に抑制することができる。ここで、「電極部21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成(配設)されている」というときは、電極部21の一方の端部がハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面)に接し、電極部21の他方の端部がハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面)に接していることを意味する。
【0029】
一対の電極部21,21は、上記のように、「ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りをより効果的に抑制し、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りをより効果的に抑制する」という観点からは、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成されていることが好ましい。一方、
図8、
図9に示すように、電極部21の「ハニカム構造部4のセル2の延びる方向」における両端部21a,21bが、ハニカム構造部4の両端部(両端面11,12)に接していない(到達していない)状態も好ましい態様である。また、電極部21の一方の端部21aが、ハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面11)に接し(到達し)、他方の端部21bが、ハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面12)に接していない(到達していない)状態も好ましい態様である。このように、電極部21の少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いない構造であると、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。つまり、一対の電極部21,21のそれぞれは、「ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる」という観点からは、少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いない構造であることが好ましい。以上より、「ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りをより効果的に抑制し、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りをより効果的に抑制する」という観点を重視する場合には、一対の電極部21,21がハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成されていることが好ましく、「ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる」という観点を重視する場合には、一対の電極部21,21のそれぞれにおける少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いないことが好ましい。
【0030】
また、一対の電極部21,21の中の片方の電極部21における一方の端部21aから、「ハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面11)」までの距離は、一対の電極部21,21の中の残りの片方の電極部21における一方の端部21aから、「ハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面11)」までの距離と、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。また、一対の電極部21,21の中の片方の電極部21における他方の端部21bから、「ハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面12)」までの距離は、一対の電極部21,21の中の残りの片方の電極部21における他方の端部21bから、「ハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面12)」までの距離と、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。尚、電極部21の一方の端部21aは、ハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面11)側を向く端部であり、電極部21の他方の端部21bは、ハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面12)側を向く端部である。
図8は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態(ハニカム構造体400)を模式的に示す斜視図である。
図9は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態(ハニカム構造体400)の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。本実施形態のハニカム構造体400の各条件は、電極部21の少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いないこと以外は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態(ハニカム構造体100)における各条件と同じであることが好ましい。
【0031】
電極部21の少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いない場合、当該接していない「電極部21の端部」と「ハニカム構造部の端部(端面)」の間の距離は、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向における長さの50%以下であることが好ましく、25%以下であることが更に好ましい。50%より長いと、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制し難くなることがある。
【0032】
本実施形態のハニカム構造体においては、例えば、
図1〜
図3に示されるように、電極部21は、平面状の長方形の部材を、円筒形状の外周に沿って湾曲させたような形状となっている。ここで、湾曲した電極部21を、湾曲していない平面状の部材に変形したときの形状を、電極部21の「平面形状」と称することにする。上記、
図1〜
図3に示される電極部21の「平面形状」は、長方形になる。そして、「電極部の外周形状」というときは、「電極部の平面形状における外周形状」を意味する。
【0033】
本実施形態のハニカム構造体においては、
図1〜
図3に示されるように、帯状の電極部21の外周形状が長方形であってもよいが、
図10に示されるように、帯状の電極部21の外周形状が、長方形の角部が曲線状に形成された形状であることが好ましい態様である。また、
図11に示されるように、帯状の電極部21の外周形状が、長方形の角部が直線状に面取りされた形状であることも好ましい態様である。
【0034】
図10に示される電極部21の外周形状は、長方形の4つの角部が曲線状に形成された形状である。電極部21の外周形状は、長方形の4つの角部が曲線状に形成された形状であることが好ましい態様であるが、少なくとも一の角部が曲線状に形成された形状であればよい。このように、電極部21の外周形状が、長方形の少なくとも一の角部が曲線状に形成された形状であることにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。電極部の角部が直角であると、ハニカム構造部における「当該電極部の角部」付近の応力が他の部分と比較して相対的に高くなる傾向にあるのに対し、電極部の角部を曲線状にすると、ハニカム構造部における「当該電極部の角部」付近の応力を低下させることが可能となる。
【0035】
曲線状に形成された角部は、
図10に示されるように、円弧状であることが好ましいが、円弧以外の曲線であってもよい。また、曲線状に形成された角部と、長方形の「辺」に相当する部分とは、滑らかにつながっている(接続部分のそれぞれの接線が共通になっている)ことが好ましいが、頂点を形成するように尖った接続部分を形成してもよい。尖った接続部分を形成する場合、当該接続部分の内角が90°以上であることが好ましい。尚、接続部分とは、直線と直線、曲線と直線、又は曲線と曲線が接続されている部分であり、例えば、長方形の場合、2つの辺が接続されている角部(頂点部分)のことであ。また、
図10に示されるように、曲線状に形成された角部は、外側に凸になっているが、内側に凸(外側に凹)であってもよい。曲線状に形成された角部が内側に凸の場合、接続部分の内角が90°以上であることが好ましい。曲線と直線とが接続されている場合の「内角」は、直線と、接続部分における曲線の接線との角度である。
【0036】
「曲線状に形成された角部」の「セルの延びる方向Iにおける」長さ(角部のセル方向長さ)Eは、電極部21の「セルの延びる方向Iにおける」長さの2〜35%が好ましく、5〜25%が更に好ましい。2%より短いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる効果が低くなることがある。35%より長いと、ハニカム構造体に電圧を印加したときに、均一に発熱させ難くなることがある。また、「曲線状に形成された角部」の「セルの延びる方向Iに直交する方向における」長さ(角部の垂直方向長さ)Fは、電極部21の「セルの延びる方向Iに直交する方向における」長さの2〜35%が好ましく、5〜25%が更に好ましい。2%より短いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる効果が低くなることがある。35%より長いと、ハニカム構造体に電圧を印加したときに、均一に発熱させ難くなることがある。
【0037】
また、
図11に示される電極部21の外周形状は、長方形の4つの角部が直線状に面取りされた形状である。このように、電極部21の外周形状は、長方形の4つの角部が直線状に面取りされた形状であることも好ましい態様であるが、少なくとも一の角部が直線状に面取りされた形状であればよい。電極部21の外周形状を、長方形の少なくとも一の角部が直線状に面取りされた形状とすることにより、「電極部21の外周形状を、長方形の少なくとも一の角部が曲線状に形成された形状とする」ときに得られた効果と同様の効果を得ることができるが、角部を曲線状にするほうが、より高い効果を得ることができる。
【0038】
「直線状に面取りされた角部」の「セルの延びる方向Iにおける」長さ(角部のセル方向長さ)Gは、電極部21の「セルの延びる方向Iにおける」長さの2〜35%が好ましく、5〜25%が更に好ましい。2%より短いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる効果が低くなることがある。35%より長いと、ハニカム構造体に電圧を印加したときに、均一に発熱させ難くなることがある。また、「直線状に面取りされた角部」の「セルの延びる方向Iに直交する方向における」長さ(角部の垂直方向長さ)Hは、電極部21の「セルの延びる方向Iに直交する方向における」長さの2〜35%が好ましく、5〜25%が更に好ましい。2%より短いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる効果が低くなることがある。35%より長いと、ハニカム構造体に電圧を印加したときに、均一に発熱し難くなることがある。また、電極部21の外周形状は、曲線状に形成された角部と、直線状に面取りされた角部の両方を有する長方形であってもよい。
【0039】
また、
図12に示すように、電極部21の「ハニカム構造部4の周方向」における両端部23,23が、「ハニカム構造部4の周方向」の外側に向かって漸次(連続的に)薄くなるように形成されていることが好ましい。「漸次(連続的に)薄くなるように形成された部分(両端部23,23)」は、それぞれ「ハニカム構造部4の周方向」において3〜10mmの範囲であることが好ましい。尚、「漸次(連続的に)薄くなるように形成された部分(両端部23,23)」は、「ハニカム構造部4の周方向」における先端(最先端)が、最も薄く形成されている。
図12は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態(ハニカム構造体500)の、セルの延びる方向に直交する断面の一部を示す模式図である。
【0040】
電極部21の電気抵抗率は、0.1〜100Ωcmであることが好ましく、0.1〜50Ωcmであることが、更に好ましい。電極部21の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の電気抵抗率が0.1Ωcmより小さいと、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端付近のハニカム部の温度が上昇し易くなることがある。電極部21の電気抵抗率が100Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。電極部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0041】
電極部21は、気孔率が30〜60%であることが好ましく、30〜55%であることが更に好ましい。電極部21の気孔率がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21の気孔率が、30%より低いと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の気孔率が、60%より高いと、電気抵抗率が高くなりすぎることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0042】
電極部21は、平均細孔径が5〜45μmであることが好ましく、7〜40μmであることが更に好ましい。電極部21の平均細孔径がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21の平均細孔径が、5μmより小さいと、電気抵抗率が高くなりすぎることがある。電極部21の平均細孔径が、45μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0043】
電極部21の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合に、電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.1〜100Ωcmの範囲で制御することができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、10μmより小さいと、電極部21の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、60μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0044】
電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される珪素の質量の比率が、20〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.1〜100Ωcmの範囲にすることができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがあり、40質量%より大きいと、製造時に変形し易くなることがある。
【0045】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁厚さが50〜200μmであり、70〜130μmであることが好ましい。隔壁厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。隔壁厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。隔壁厚さが200μmより厚いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0046】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル密度が40〜150セル/cm
2であることが好ましく、70〜100セル/cm
2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm
2より低いと、触媒担持面積が少なくなることがある。セル密度が150セル/cm
2より高いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0047】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子(骨材)の平均粒子径は、3〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることが更に好ましい。ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造部4の400℃における電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が大きくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が小さくなることがある。更に、炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0048】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4の電気抵抗率は、1〜200Ωcmであり、10〜100Ωcmであることが好ましい。電気抵抗率が1Ωcmより小さいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れることがある。電気抵抗率が200Ωcmより大きいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがある。ハニカム構造部の電気抵抗率は、四端子法により測定した値である。
【0049】
本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21の電気抵抗率は、ハニカム構造部4の電気抵抗率より低いものであることが好ましく、更に、電極部21の電気抵抗率が、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下であることが更に好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。電極部21の電気抵抗率を、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下とすることにより、電極部21が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0050】
本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム構造部4の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合、ハニカム構造部4に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることが更に好ましい。10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。
【0051】
ハニカム構造部4の隔壁1の気孔率は、35〜60%であることが好ましく、35〜45%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0052】
ハニカム構造部4の隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0053】
また、本実施形態のハニカム構造体100の最外周を構成する外周壁3の厚さは、0.1〜2mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと、ハニカム構造体100の強度が低下することがある。2mmより厚いと、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0054】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせ、であることが好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体100に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0055】
本実施形態のハニカム構造体の形状は特に限定されず、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の筒状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が2000〜20000mm
2であることが好ましく、4000〜10000mm
2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0056】
本実施形態のハニカム構造体100のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることが更に好ましい。アイソスタティック強度は、値が大きいほど好ましいが、ハニカム構造体100の材質、構造等を考慮すると、6MPa程度が上限となる。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0057】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図5〜
図7に示されるように、本実施形態のハニカム構造体300は、上記本発明のハニカム構造体100(
図1〜
図3参照)において、それぞれの電極部21,21の、セルの延びる方向に直交する断面における中央部であり、且つセルの延びる方向における中央部に、電気配線を繋ぐための電極端子突起部22が配設されたものである。電極端子突起部22は、電極部21,21間に電圧を印加するために、電源からの配線を接続する部分である。このように、それぞれの電極部21,21の、セルの延びる方向に直交する断面における中央部であり、且つセルの延びる方向における中央部に、電気配線を繋ぐための電極端子突起部22が配設されることにより、電極部に電圧を印加したときに、ハニカム構造部の温度分布の偏りを、より小さくすることができる。
図5は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。
図6は、
図5における、A−A’断面を示す模式図である。
図7は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す側面図である。
【0058】
本実施形態のハニカム構造体300の各条件は、「それぞれの電極部21,21の、セル2の延びる方向に直交する断面における中央部であり、且つセル2の延びる方向における中央部に、電気配線を繋ぐための電極端子突起部22が配設されている」こと以外は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態(ハニカム構造体100)における各条件と同じであることが好ましい。
【0059】
電極部21の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合、電極端子突起部22の主成分も、炭化珪素粒子及び珪素であることが好ましい。このように、電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極部21の成分と電極端子突起部22の成分とが同じ(又は近い)成分となるため、電極部21と電極端子突起部22の熱膨張係数が同じ(又は近い)値になる。また、材質が同じ(又は近く)になるため、電極部21と電極端子突起部22との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極端子突起部22が電極部21から剥れたり、電極端子突起部22と電極部21との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。ここで、「電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」というときは、電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0060】
電極端子突起部22の形状は、特に限定されず、電極部21に接合され、電気配線を接合できる形状であればよい。例えば、
図5〜
図7に示すように、電極端子突起部22は、四角形の板状の基板22aに、円柱状の突起部22bが配設された形状であることが好ましい。このような形状にすることにより、電極端子突起部22は、基板22aにより電極部21に強固に接合されることができ、突起部22bにより電気配線を確実に接合させることができる。
【0061】
電極端子突起部22において、基板22aの厚さは、1〜5mmが好ましい。このような厚さとすることにより、電極端子突起部22を確実に電極部21に接合することができる。1mmより薄いと、基板22aが弱くなり、突起部22bが基板22aから、はずれやすくなることがある。5mmより厚いと、ハニカム構造体を配置するスペースが必要以上に大きくなることがある。
【0062】
電極端子突起部22において、基板22aの、「ハニカム構造部4の、セルの延びる方向に直交する断面における外周方向」における長さ(幅)は、電極部21の、「ハニカム構造部4の、セルの延びる方向に直交する断面における外周方向」における長さの、10〜50%であることが好ましく、20〜40%であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、電極端子突起部22が、電極部21から外れ難くなる。10%より短いと、電極端子突起部22が、電極部21から外れ易くなることがある。50%より長いと、質量が大きくなることがある。電極端子突起部22において、基板22aの、「セル2の延びる方向」における長さは、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの、5〜30%が好ましい。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さをこのような範囲とすることにより、十分な接合強度が得られる。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さを、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの5%より短くすると、電極部21から外れ易くなることがある。そして、30%より長くすると、質量が大きくなることがある。
【0063】
電極端子突起部22において、突起部22bの太さは3〜15mmが好ましい。このような太さにすることにより、突起部22bに、電気配線を確実に接合させることができる。3mmより細いと突起部22bが折れ易くなることがある。15mmより太いと、電気配線を接続し難くなることがある。また、突起部22bの長さは、3〜20mmが好ましい。このような長さにすることにより、突起部22bに、電気配線を確実に接合させることができる。3mmより短いと電気配線を接合し難くなることがある。20mmより長いと、突起部22bが折れ易くなることがある。
【0064】
電極端子突起部22の電気抵抗率は、0.1〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.1〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、高温の排ガスが流れる配管内において、電極端子突起部22から、電流を電極部21に効率的に供給することができる。電極端子突起部22の電気抵抗率が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電流を電極部21に供給し難くなることがある。
【0065】
電極端子突起部22は、気孔率が30〜45%であることが好ましく、30〜40%であることが更に好ましい。電極端子突起部22の気孔率がこのような範囲であることにより、適切な電気抵抗率が得られる。電極端子突起部22の気孔率が、45%より高いと、電極端子突起部22の強度が低下することがあり、特に突起部22bの強度が低下すると突起部22bが折れ易くなることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0066】
電極端子突起部22は、平均細孔径が5〜20μmであることが好ましく、7〜15μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の平均細孔径がこのような範囲であることにより、適切な電気抵抗率が得られる。電極端子突起部22の平均細孔径が、20μmより大きいと、電極端子突起部22の強度が低下することがあり、特に突起部22bの強度が低下すると突起部22bが折れ易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0067】
電極端子突起部22の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合に、電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極端子突起部22の電気抵抗率を、0.1〜2.0Ωcmにすることができる。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、10μmより小さいと、電極端子突起部22の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、60μmより大きいと、電極端子突起部22の電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0068】
電極端子突起部22に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極端子突起部22に含有される珪素の質量の比率が、20〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることが更に好ましい。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、0.1〜2.0Ωcmの電気抵抗率を得やすくなる。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。そして、40質量%より大きいと、製造時に変形してしまうことがある。
【0069】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。上記本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態である、ハニカム構造体300(
図5〜
図7参照)を製造する方法を示す。
【0070】
まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜50μmが好ましく、3〜40μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。尚、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素−炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造部の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0071】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0072】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜60質量部であることが好ましい。
【0073】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0074】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0075】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0076】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0077】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0078】
得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0079】
ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0080】
次に、電極部を形成するための電極部形成原料を調合する。電極部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0081】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極部形成原料を作製する。炭化珪素粉末及び金属珪素の合計質量を100質量部としたときに、金属珪素の質量が20〜40質量部となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0082】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。
【0083】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、15〜60質量部であることが好ましい。
【0084】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0085】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0086】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、ペースト状の電極部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0087】
次に、得られた電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷方法を用いることができる。また、電極部形成原料は、上記本発明のハニカム構造体における電極部の形状になるように、ハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部の厚さは、電極部形成原料を塗布するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができるため、非常に容易に電極部を形成することができる。
【0088】
次に、ハニカム成形体の側面に塗布した電極部形成原料を乾燥させることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0089】
次に、電極端子突起部形成用部材を作製することが好ましい。電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体に貼り付けられて、電極端子突起部となるものである。電極端子突起部形成用部材の形状は、特に限定されないが、例えば、
図5〜
図7に示すような形状に形成することが好ましい。そして、得られた電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体の、電極部形成原料が塗布された部分に貼り付けることが好ましい。尚、ハニカム成形体の作製、電極部形成原料の調合、及び電極端子突起部形成用部材の作製の、順序はどのような順序でもよい。
【0090】
電極端子突起部形成用部材は、電極端子突起部形成原料(電極端子突起部形成用部材を形成するための原料)を成形、乾燥して得ることが好ましい。電極端子突起部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極端子突起部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0091】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極端子突起部形成原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が20〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子(金属珪素)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0092】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0093】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜40質量部であることが好ましい。
【0094】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0095】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0096】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、電極端子突起部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、混練機を用いることができる。
【0097】
得られた電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にする方法は特に限定されず、押し出し成形後に加工する方法を挙げることができる。
【0098】
電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にした後に、乾燥させて、電極端子突起部形成用部材を得ることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0099】
次に、電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体(ハニカム成形体の電極部形成原料が塗布された部分)に貼り付ける方法は、特に限定されないが、上記電極部形成原料を用いて電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。例えば、電極端子突起部形成用部材の「ハニカム成形体に貼り付く面(ハニカム成形体に接触する面)」に電極部形成原料を塗布し、「当該電極部形成原料を塗布した面」がハニカム成形体に接触するようにして、電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。
【0100】
そして、「電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム成形体」を乾燥し、焼成して、本発明のハニカム構造体とすることが好ましい。
【0101】
このときの乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0102】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0103】
尚、電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体を焼成する前に貼り付けてもよいし、焼成した後に貼り付けてもよい。電極端子突起部形成用部材を、ハニカム成形体を焼成した後に貼り付けた場合は、その後に、上記条件によって再度焼成することが好ましい。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0105】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合し、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とし、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部であり、造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部であり、水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。炭化珪素、金属珪素及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0106】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断した。
【0107】
次に、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合し、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、保湿剤としてグリセリン、分散剤として界面活性剤を添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して電極部形成原料とした。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.5質量部であり、グリセリンの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに10質量部であり、界面活性剤の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.3質量部であり、水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。混練は、縦型の撹拌機で行った。
【0108】
次に、電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に、厚さが1.5mm、「セルの延びる方向に直交する断面において中心角の0.5倍が15°」になるようにして、ハニカム成形体の両端面間に亘るように帯状に塗布した。電極部形成原料は、乾燥させたハニカム成形体の側面に、2箇所塗布した。そして、セルの延びる方向に直交する断面において、2箇所の電極部形成原料を塗布した部分の中の一方が、他方に対して、ハニカム成形体の中心を挟んで反対側に配置されるようにした。
【0109】
次に、ハニカム成形体に塗布した電極部形成原料を乾燥させた。乾燥条件は、70℃とした。
【0110】
次に、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合し、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して電極端子突起部形成原料とした。電極端子突起部形成原料を、真空土練機を用いて坏土とした。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに4質量部であり、水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに22質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0111】
得られた坏土を、真空土練機を用いて成形し、
図5〜
図7に示される電極端子突起部22のような形状(基板と突起部とからなる形状)に加工し、乾燥して、電極端子突起部形成用部材を得た。また、乾燥条件は、70℃とした。板状の基板22aに相当する部分は、「3mm×12mm×15mm」の大きさとした。また、突起部22bに相当する部分は、底面の直径が7mmで、中心軸方向の長さが10mmの円柱状とした。電極端子突起部形成用部材は2つ作製した。
【0112】
次に、2つの電極端子突起部形成用部材のそれぞれを、ハニカム成形体の2箇所の電極部形成原料を塗布した部分のそれぞれに貼り付けた。電極端子突起部形成用部材は、電極部形成原料を用いて、ハニカム成形体の電極部形成原料を塗布した部分に貼り付けた。その後、「電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム成形体」を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。酸化処理の条件は、1300℃で1時間とした。
【0113】
得られたハニカム構造体の隔壁の平均細孔径(気孔径)は8.6μmであり、気孔率は45%であった。平均細孔径および気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。また、ハニカム構造体の、隔壁の厚さは90μmであり、セル密度は90セル/cm
2であった。また、ハニカム構造体の底面は直径93mmの円形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは100mmであった。また、得られたハニカム構造体のアイソスタティック強度は2.5MPaであった。アイソスタティック強度は水中で静水圧をかけて測定した破壊強度である。また、ハニカム構造体の、2つの電極部の、セルの延びる方向に直交する断面における中心角の0.5倍は、15°であった。また、2つの電極部の厚さは、いずれも1.5mmであった。また、電極部の電気抵抗率は、1.3Ωcmであり、ハニカム構造部の電気抵抗率は、100Ωcmであり、電極端子突起部の電気抵抗率は、1.3Ωcmであった。
【0114】
得られたハニカム構造体に200Vの電圧を印加したときの、ハニカム構造部の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極部の端部が接する位置P(
図6を参照)の温度(最高温度)を測定した。ハニカム構造部における、電極部の端部が接する位置が、最も電流が流れる位置であり、ハニカム構造体において最も高い温度となる部分である。結果を表1に示す。
【0115】
尚、ハニカム部、電極部及び電極端子突起部の電気抵抗率は、以下の方法で測定した。測定対象と同じ材質で10mm×10mm×50mmの試験片を作成した(つまり、ハニカム構部の電気抵抗率を測定する場合にはハニカム構造部と同じ材質で、電極部の電気抵抗率を測定する場合には電極部と同じ材質で、そして、電極端子突起部の電気抵抗率を測定する場合には電極端子突起部と同じ材質で、それぞれ試験片を作製した。)。試験片の両端部全面に銀ペーストを塗布し、配線して通電できるようにした。試験片に電圧印加電流測定装置をつなぎ印加した。試験片中央部に熱伝対を設置し、電圧印加時の試験片温度の経時変化をレコーダーにて確認した。100〜200V印加し、試験片温度が400℃の状態における電流値及び電圧値を測定し、得られた電流値及び電圧値、並びに試験片寸法から電気抵抗率を算出した。
【0116】
【表1】
【0117】
(実施例2〜13、比較例1,2)
ハニカム構造体の、「2つの電極部の、セルの延びる方向に直交する断面における中心角の0.5倍の値」、及び「2つの電極部の厚さ」を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、ハニカム構造体の「最高温度」を測定した。結果を表1に示す。
【0118】
表1より、「ハニカム構造体の、2つの電極部の、セルの延びる方向に直交する断面における中心角の0.5倍の値」が、15〜65°のときに、ハニカム構造体の最高温度が低下することがわかる。ハニカム構造体の最高温度が低下しているということは、ハニカム構造体における温度分布の偏りが、抑制されていることを示す。尚、上記ハニカム構造体の最高温度が200℃以下であれば、ハニカム構造体における温度分布の偏りが抑制された状態であるということができる。