特許第5663014号(P5663014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5663014虚血および/または再灌流関連疾患の処置に使用されるジヒドロ−1,3,5−トリアジンのアミノ誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663014
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】虚血および/または再灌流関連疾患の処置に使用されるジヒドロ−1,3,5−トリアジンのアミノ誘導体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/53 20060101AFI20150115BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20150115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150115BHJP
   C07D 251/48 20060101ALN20150115BHJP
【FI】
   A61K31/53
   A61P9/10
   A61P9/00
   A61P13/12
   A61P25/00
   A61P9/06
   A61P9/04
   A61P43/00 105
   !C07D251/48
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-520049(P2012-520049)
(86)(22)【出願日】2010年7月16日
(65)【公表番号】特表2012-533529(P2012-533529A)
(43)【公表日】2012年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2010060292
(87)【国際公開番号】WO2011006984
(87)【国際公開日】20110120
【審査請求日】2012年5月14日
(31)【優先権主張番号】0954977
(32)【優先日】2009年7月17日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510210335
【氏名又は名称】ポクセル・エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】POXEL SAS
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100122736
【弁理士】
【氏名又は名称】小國 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】メサンジョー,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】ルヴェルヴ,グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】クラヴォ,ダニエル
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−523140(JP,A)
【文献】 特表2003−520858(JP,A)
【文献】 特表2009−523142(JP,A)
【文献】 特表2006−522753(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/006573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 201/00−521/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血および/または再灌流に関連する病変、障害または疾患の治療および/または予防のための、式(Ia):
【化5】

で示される化合物またはその互変異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体およびエピマー形ならびに薬学的に許容されうる塩の一つを含む、医薬組成物。
【請求項2】
化合物が、(+)5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンまたはその塩酸塩であることを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
化合物が、(−)5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンまたはその塩酸塩であることを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
化合物が、塩酸塩の形であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項5】
心臓、腎臓、および脳合併症の治療および/または予防のための、請求項1〜のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項6】
心臓不整脈、心筋梗塞または心不全を誘導する心肥大の治療および/または予防のための、請求項記載の医薬組成物。
【請求項7】
脳血管障害の治療および/または予防のための、請求項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、虚血および/または再灌流によって誘導される疾患、特に心臓および腎臓合併症の治療および/または予防のために使用される、ジヒドロ−1,3,5−トリアジンのアミノ誘導体に関するものである。
【0002】
技術的背景
心筋虚血は、酸素の必要と供給の間の不均衡として定義される。この不均衡は、心機能障害につながる。ほとんどの場合、心筋虚血は、心筋組織への血液循環不全により心筋細胞からその酸素供給が欠乏するか、または該供給が激しく減少することによって引き起こされる。これらの虚血は、血管閉塞(血栓症)、動脈内径の減少(狭窄症)、または内毒素血症性ショックでの重症敗血症に関連する循環不全の状態におけるような冠血流量の減少(低灌流)が原因でありうる。これに関係して、重症敗血症は、直接的な心筋抑制を伴う血行力学的機能障害にもつながることに留意すべきである。しかしながら現時点では、どのメカニズムが心筋機能の低下、低灌流または循環サイトカインによる心筋抑制に最も重要であるかは明らかでない。
【0003】
梗塞は、虚血の主な結果の一つである。梗塞という用語は、組織壊死の局所領域を表している。したがって、心筋梗塞は、心筋細胞の死滅のせいで心臓の一部の破壊につながる。心筋梗塞は、非常によく見られる事象である。例えば、フランスでは1年に約180000〜200000人の主に男性がこの疾患を患うと推定される。心筋梗塞は、特に喫煙、肥満、糖尿病、高脂血症または動脈性高血圧のような心血管危険因子を有する対象に生じる。心筋梗塞の程度は、心筋の収縮機能回復および患者の長期予後に関する決定因子である。
【0004】
急性心筋梗塞(AMI)は、虚血心筋を再灌流することならびに最初の数時間または最初の数日内に患者の死亡につながることが多い、可能性のある梗塞関連合併症を予防および/または制限する目的で急性期を処置する専門の医療および病院サービスによる管理を必要とする全くの心臓緊急状態を成す。
【0005】
再灌流は、酸素の必要と供給との間で均衡を再び達成できるように、虚血組織内で十分な血液循環を再確立することと定義される。冠血流量が完全に遮断された場合の再灌流は、一般に、閉塞した動脈を開通することによって実施される。
【0006】
再灌流は、疑いなく、虚血の持続によって引き起こされる細胞死から心筋細胞を保護するものの、収縮機能(心筋気絶)、心調律(不整脈の発生)および組織灌流(「ノーリフロー(no-reflow)」)に対する有害作用も伴う。最近のデータは、逆説的に、再灌流が再灌流された細胞の一部を死滅させるおそれがある(再灌流壊死)ことさえも示している。
【0007】
心筋梗塞の再灌流の間に、様々な治療クラスに属する薬物、例えばアセチルサリチル酸などの抗血小板薬、β遮断薬、変換酵素阻害薬(CEI)またはスタチン類が、患者の予後に有益作用を有する。しかし、再灌流の間に投与されたこれらの薬物または現在入手可能な他の薬物のどれも心筋梗塞サイズを制限することができない。
【0008】
虚血状態は、腎臓(Zhao, Jing; Dong, et al. Guoji Bingli Kexue Yu Linchuang Zazhi(2007), 27(6), 539-544)または脳(Zhu, Xia-Ling, Neuroscience Letters, 2009)などの他の器官の正常な機能の変化にもつながるおそれがある。
【0009】
さらに、次の一般式(I)のジヒドロ−1,3,5−トリアジンのアミノ誘導体が、欧州特許EP 1 250 328から公知である:
【0010】
【化1】
【0011】
これらの化合物は、ストレプトゾトシンによってラットに誘導された非インスリン依存性糖尿病の実験モデルにおいて抗糖尿病活性を表すことが実証された。
【0012】
本発明は、式(I)で示されるジヒドロ−1,3,5−トリアジンのアミノ誘導体が虚血および/または再灌流に関連する疾患、特に心臓および腎臓合併症の治療および/または予防を改善することを可能にするという、本発明者らによる予想外の実証の結果としてもたらされる。さらに詳細には、化合物E008が電子の逆流を阻害することによって内皮細胞の呼吸鎖複合体IによるROS産生を減少させることを可能にしたことが実証された。さらに、この化合物は、ミトコンドリア膜電位低下を防止することができ、特に虚血および/または再灌流事象の間にミトコンドリア膜透過性遷移孔(PTP)の開口を減少させることができる。
【0013】
したがって、本発明は、虚血および/または再灌流に関連する病変、障害または疾患の治療および/または予防に使用するための、一般式(I):
【0014】
【化2】

[式中:
・ R1、R2、R3、およびR4は、以下の基:
− H、
− 非置換またはハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、シクロアルキル(C3−C8)で置換されたアルキル(C1−C20)、非置換またはハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)で置換されたアルケニル(C2−C20)、非置換またはハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)で置換されたアルキン(C2−C20)、
− 非置換またはアルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)で置換されたシクロアルキル(C3−C8)、
− N、O、Sより選択される1個または複数個のヘテロ原子を有し、かつ非置換またはアルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)で置換されたヘテロシクロアルキル(C3−C8)、
− 非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたアリール(C6−C14)アルキル(C1−C20)、
− 非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたアリール(C6−C14)、
− N、O、Sより選択される1個または複数個のヘテロ原子を有し、かつ非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたヘテロアリール(C1−C13)
より独立して選択され、
一方でR1およびR2、他方でR3およびR4は、窒素原子と一緒になって、N、O、Sより選択される1個または複数個のヘテロ原子を含むかまたは含まない環員n(nは3〜8)の環を形成してもよく、そしてこれは以下の基:アミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルの1個または複数個で置換されていてもよく、
・ R5およびR6は、以下の基:
− H、
− 非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたアルキル(C1−C20)、
− 非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたアルケニル(C2−C20)、
− 非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたアルキニル(C2−C20)、
− 非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたシクロアルキル(C3−C8)、
− N、O、Sより選択される1個または複数個のヘテロ原子を有し、かつ非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたヘテロシクロアルキル(C3−C8)、
− 非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたアリール(C6−C14)、
− N、O、Sより選択される1個または複数個のヘテロ原子を有し、かつ非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたヘテロアリール(C1−C13)、
− 非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されたアリール(C6−C14)アルキル(C1−C5)
より独立して選択され、そして
R5およびR6は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、N、O、Sより選択される1個または複数個のヘテロ原子を含むかまたは含まない環員m(mは3〜8)の環を形成してもよく、そしてこれはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチルで置換されていてもよいか、あるいは
その炭素原子と一緒になって、非置換またはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルもしくはカルボキシエチルで置換されたC10−C30多環式残基を形成してもよく、そして
R5およびR6は、一緒になって基=Oまたは=Sを表してもよく、
さらに、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール基の窒素原子は、アルキル(C1−C5)、シクロアルキル(C3−C8)、アリール(C6−C14)、アリール(C6−C14)アルキル(C1−C5)またはアシル(C1−C6)基で置換されていてもよい]
で示される化合物、ならびに互変異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体およびエピマー形ならびに薬学的に許容されうる塩に関する。
【0015】
本発明は、また、虚血および/または再灌流に関連する病変、障害または疾患の予防および/または治療を目的とする薬物を調製するための、上記と同義の式(I)で示される化合物の使用に関する。
【0016】
本発明は、また、患者における虚血および/または再灌流に関連する病態の予防および/または治療方法であって、上記と同義の式(I)で示される化合物の予防または治療有効量を該患者に投与する方法に関する。
【0017】
発明の詳細な説明
「R5およびR6によって形成される環員mの環」は、特に、シクロヘキシル、ピペリジニルまたはテトラヒドロピラニル基などの飽和環を意味する。
【0018】
「R5およびR6によって形成される多環式基」は、場合により置換された炭素含有多環式基、特にステロイド残基を意味する。
【0019】
式(I)で示される化合物の特定群は、R5が水素である化合物である。
【0020】
式(I)で示される化合物の別の特定群は、R5およびR6が、それらが結合している炭素原子と一緒になって、N、O、Sより選択される1個または複数個のヘテロ原子を含むかまたは含まない環員m(mは3〜8)の環を形成し、それが以下の基:
アルキル(C1−C5)、アミノ、ヒドロキシ、アルキルアミノ(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アリール(C6−C14)、アリール(C6−C14)−アルコキシ(C1−C5)
の1個または複数個で置換されている化合物であるか、
あるいはその炭素原子と一緒になって、非置換またはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルもしくはカルボキシエチルで置換されたC10−C30多環式残基を形成する化合物である。
【0021】
式(I)で示される化合物の別の特定群は、R5およびR6が、以下の基:
非置換あるいはアミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、アルキル(C1−C5)、アルコキシ(C1−C5)、アルキルチオ(C1−C5)、アルキルアミノ(C1−C5)、アリール(C6−C14)オキシ、アリール(C6−C14)アルコキシ(C1−C5)、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、カルボキシメチルまたはカルボキシエチル
で置換されたアルキル(C1−C20)より独立して選択される化合物である。
【0022】
本発明は、また、一般式(I)で示される化合物の互変異性体形、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、エピマー、および有機または無機塩に関する。
【0023】
十分に酸性の官能基または十分に塩基性の官能基またはその両方を有する、上記と同義の式(I)で示される本発明の化合物には、有機もしくは無機酸または有機もしくは無機塩基の対応する薬学的に許容されうる塩が含まれうる。特に、一般式(I)で示される化合物は、有機または無機酸によって一酸塩(monosalify)または二酸塩(disalify)にすることのできる塩基性窒素原子を有する。好ましくは、本発明による化合物は、塩酸塩の形である。
【0024】
好ましくは、R6は、(C1−C20)アルキル基、特にメチル基である。好ましくは、R1および/またはR2は、(C1−C20)アルキル基、特にメチル基を表す。好ましくは、R3および/またはR4は、水素原子を表す。好ましくは、R1およびR2はメチル基であり、R3およびR4は水素を表す。
【0025】
式(I)で示される好ましい化合物の中で、本発明者らは、特に式(Ia):
【0026】
【化3】

で示される化合物E008、ならびにその互変異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体およびエピマー形ならびに/または薬学的に許容されうる塩を挙げることができる。
【0027】
本発明の好ましい態様では、一般式(I)で示される化合物は、(+)5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンまたはその塩酸塩である。本発明の好ましい態様では、一般式(I)で示される化合物は、(−)5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンまたはその塩酸塩である。
【0028】
別の局面によると、本発明は、虚血および/または再灌流に関連する疾患、特に心臓または腎臓合併症の治療および/または予防に使用するための、上記と同義の式(I)で示される化合物に関する。心臓の病態の例として、本発明者らは、特に心臓不整脈、心筋梗塞または心臓発作を挙げることができる。
【0029】
本発明によると「アルキル」基は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する、直鎖または分岐の飽和炭化水素基を表す。本発明者らは、アルキル基が直鎖の場合、特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、およびオクタデシル基を挙げることができる。本発明者らは、アルキル基が分岐または1個もしくは複数個のアルキル基で置換されている場合、特にイソプロピル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチルまたは3−メチルヘプチル基を挙げることができる。
【0030】
本発明による「アルコキシ」基は、式−O−アルキル[アルキルは、前記と同義である]で示される基である。
【0031】
「アルキルチオ」は、アルキル−S−基[アルキル基は、上記と同義である]を意味する。
【0032】
「アルキルアミノ」は、アルキル−NH−基[アルキル基は、上記と同義である]を意味する。
【0033】
ハロゲン原子の中で、本発明者らは、さらに詳細にはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子を挙げることができる。
【0034】
「アルケニル」基は、直鎖状または直鎖の炭化水素基を表し、1個または複数個のエチレン性不飽和結合を含む。アルケニル基の中で、本発明者らは、特にアリルまたはビニル基を挙げることができる。
【0035】
「アルキニル」基は、直鎖状または直鎖の炭化水素基を表し、1個または複数個のアセチレン性不飽和結合を含む。アルキニル基の中で、本発明者らは、特にアセチレン基を挙げることができる。
【0036】
「シクロアルキル」基は、3〜10個の炭素原子を有する、飽和または部分不飽和で非芳香族の単環式、二環式または三環式炭化水素基、特にシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはアダマンチルなど、および1個または複数個の不飽和結合を含む対応する環である。
【0037】
「ヘテロシクロアルキル」基は、3〜8個の炭素原子を有する、N、OまたはSより選択される1個または複数個のヘテロ原子を含む、飽和または部分不飽和で非芳香族の単環式または二環式系を意味する。
【0038】
「アリール」は、6〜10個の炭素原子を有する単環式または二環式の芳香族炭化水素系を意味する。アリール基の中で、本発明者らは、特にフェニルまたはナフチル基、さらに詳細には少なくとも1個のハロゲン原子で置換されたものを挙げることができる。
【0039】
「アリールアルキル」または「アラルキル」基は、アリールおよびアルキル基が上記と同義のアリール−アルキル基である。アラルキル基の中で、本発明者らは、特にベンジルまたはフェネチル基を挙げることができる。
【0040】
「アリールオキシ」は、アリール基が上記と同義のアリール−O−基を意味する。
【0041】
「アリールアルコキシ」は、アリールおよびアルコキシ基が上記と同義のアリール−アルコキシ基を意味する。
【0042】
「ヘテロアリール基」は、窒素、酸素または硫黄より選択される1個または複数個のヘテロ原子を含む芳香族系であって、5〜10個の炭素原子を有する単環式または二環式の芳香族系を意味する。ヘテロアリール基の中で、本発明者らは、ピラジニル、チエニル、オキサゾリル、フラザニル、ピロリル、1,2,4−チアジアゾリル、ナフチリジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、シンノリニル、トリアジニル、ベンゾフラザニル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、チエノピリジル、チエノピリミジニル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、ベンゾアザインドール、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリル、フラニル、イミダゾリル、インドリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、プリニル、キナゾリニル、キノリニル、イソキノリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアゾリル、トリアジニル、イソチアゾリル、カルバゾリル、およびそれら相互の縮合またはそれらとフェニル核との縮合により生じる対応する基を挙げることができる。
【0043】
「カルボキシアルキル」は、アルキル基が上記と同義のHOOC−アルキル基を意味する。カルボキシルアルキル基の例として、本発明者らは、特にカルボキシメチルまたはカルボキシエチルを挙げることができる。
【0044】
「薬学的に許容されうる塩」という表現は、本発明の化合物の比較的無毒で無機および有機の酸付加塩ならびに塩基との付加塩を表す。これらの塩は、化合物の最終単離および精製の間にin situで調製することができる。特に酸付加塩は、精製された化合物をその精製された形で有機または無機酸とそれぞれ反応させること、およびそのように形成した塩を単離することによって調製することができる。酸付加塩の例には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフトエ酸塩(naphthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩(glucoheptanate)、ラクトビオン酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、メチレンビス−b−ヒドロキシナフトエ酸、ゲンチジン酸、イセチオン酸塩、ジ−p−トルオイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩およびキナ酸ラウリルスルホン酸塩(quinateslaurylsulfonate)、ならびにアナログが含まれる(例えばS.M. Berge et al. "Pharmaceutical Salts" J. Pharm. Sci, 66:p.1-19(1977)参照)。酸付加塩は、また、精製された化合物をその酸型で有機または無機塩基とそれぞれ反応させること、およびそのように形成された塩を単離することによって調製することができる。酸付加塩は、アミノ塩および金属塩を含む。適切な金属塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウムおよびアルミニウム塩を含む。ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましい。塩基付加の適切な無機塩は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛を含む金属塩基から調製される。塩基付加の適切なアミノ塩は、安定な塩を形成するために十分なアルカリ度を有するアミンから調製され、好ましくは、医学的使用のためのその低毒性および認容性ゆえに医薬品化学においてしばしば使用されるアミン:アンモニア、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジル−フェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェナミン、デヒドロアビエチルアミン、N−エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸、例えばリシンおよびアルギニン、およびジシクロヘキシルアミン、ならびにアナログを含む。
【0045】
一般式(I)で示される化合物は、それ自体公知のおよび/または当業者の能力の範囲内の任意の方法、特にLarockによってComprehensive Organic Transformations, VCH Pub., 1989に記載された方法の適用または適応によって、あるいはEP 1 250 328に記載された方法の適用または適応によって調製することができる。
【0046】
本発明による薬学的化合物は、非経口、経口、直腸、経粘膜または経皮経路による投与を目的とする形態で提供することができる。
【0047】
したがって、これらの式(I)で示される化合物を含む薬学的組成物は、液剤または注射用懸濁剤または多回用ボトルの形態で、裸錠またはコーティング錠、糖衣丸剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、散剤、坐剤または直腸用カプセル剤、液剤または懸濁剤の形態で、経皮使用のために極性溶媒に入れて、経粘膜使用のために提示される。
【0048】
これらの剤形に適切な賦形剤は、固形形態についてはセルロースまたは微結晶セルロースの誘導体、アルカリ土類炭酸塩、リン酸マグネシウム、デンプン、加工デンプン、乳糖である。
【0049】
直腸使用のために、カカオ脂またはステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましい賦形剤である。
【0050】
非経口使用のために、水、水性溶液、生理的血清、および等張性溶液は、最も頻繁に使用されるビヒクルである。
【0051】
薬量は、治療的適応および投与経路、ならびに対象の年齢および体重に応じて広い範囲0.5mg〜1000mg)で変動しうる。
【0052】
「虚血−再灌流に関連する病変、障害または疾患」という表現は、虚血および/または再灌流の結果として少なくとも部分的に引き起こされるかまたは維持される全ての病変、障害または疾患を意味する。この表現は、また、虚血および/または再灌流事象の結果である病変、障害または疾患を意味する。
【0053】
好ましくは、本発明による式(I)で示される化合物は、心臓合併症、特に心臓不整脈、心筋梗塞または心肥大(後者は一般に心不全を誘導する)の治療および/または予防に有用である。
【0054】
別の好ましい態様によると、式(I)で示される化合物は、腎臓合併症の治療または予防に有用である。
【0055】
さらに別の好ましい態様によると、式(I)で示される化合物は、脳合併症、特に脳血管障害(CVA)の治療または予防に有用である。
【0056】
本発明の文脈において、「処置」という用語は、予防的、治療的、待期的処置、および患者の管理、罹患の軽減、寿命の改善、生活の質の改善、または疾患進行の減速を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】未処置(対照)、またはメトホルミンもしくはE008で処置され、蛍光プローブであるテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)と共にインキュベーションされ、共焦点顕微鏡で観察されたミトコンドリア細胞を示す図である:処置前(ベースライン)、60分の虚血後(Isch 60’)、90分の再灌流後(Reperf 90’)および120分の再灌流後(Reperf 120’)(図1)。
図2】心筋梗塞のモデルにおいてウサギに投与された処置の関数としての危険領域(area at risk)のサイズに対する梗塞サイズを示す図である。
【0058】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるのであって、どのような場合も本発明の範囲を限定するものと見なしてはならない。
【0059】
実施例
実施例1:虚血/再灌流による血管損傷にE008が及ぼす保護作用の評価
本研究の目的は、虚血/再灌流により誘導されるミトコンドリア膜電位の消失に化合物E008が及ぼす作用を測定することによって、虚血/再灌流による血管損傷にE008が及ぼす保護作用を評価することである。
【0060】
材料および方法
細胞培養
ヒト不死化微小血管皮膚内皮細胞系HMEC−1を使用した。
【0061】
処理
以下のスキームに従って細胞を処理した:
− 対照群:無処理、続いて60分の虚血および120分の再灌流。
− メトホルミン群:濃度10mMのメトホルミンと共に30分間インキュベーション、続いて60分の虚血および120分の再灌流。
− E008群:濃度10mMの化合物E008と共に30分間インキュベーション、続いて60分の虚血および120分の再灌流。
【0062】
ミトコンドリア膜電位の測定
ミトコンドリア電位を測定するために、上記処理の間に細胞を濃度30nMの蛍光プローブであるテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)と共にインキュベーションした。
【0063】
処理前、60分の虚血後、90分の再灌流後、および120分の再灌流後に共焦点顕微鏡で細胞を分析した(図1)。
【0064】
結果
対照群および処理群において、虚血時間によりミトコンドリア膜電位は変化しなかった。
【0065】
しかし、90分の再灌流は対照群におけるミトコンドリア膜電位の大きな消失を引き起こした。膜電位は、120分の再灌流後に消失さえしたが、これは細胞が死滅したことを意味する。
【0066】
対照的に、メトホルミンおよびE008で処理された細胞について、それらのミトコンドリア膜電位は、再灌流による損傷から保護された。E008は、膜電位の消失に対してメトホルミンよりも良好な保護作用すら示す。
【0067】
したがって、E008は、虚血および再灌流後に細胞保護作用を示す。特に、この化合物は、虚血によって誘導されるミトコンドリア膜電位消失を軽減する。この観察された作用は、ミトコンドリア透過性遷移孔(MPTP)の開口を減少させる、MPTPに対するE008の阻害作用によると考えられる。これらの結果は、E008が虚血期後の心臓および腎臓保護に役立つことを実証している。
【0068】
実施例2:ウサギ心筋梗塞モデルにおけるE008を用いた梗塞サイズの減少
プロトコール:
外科的準備:
この研究は、米国国立衛生研究所によって出版された「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」(NIH Publication No. 85-23、1996年改訂)に準拠する。
【0069】
キシラジン(5mg/kg)およびケタミン(50mg/kg)の筋肉内注射によって、体重2.2から2.5kgの間の雄性ニュージーランド白ウサギを麻酔した。試験の間中、キシラジン(20〜50μg/kg/min)とケタミン(40〜100μg/kg/min)の混合物の静脈内注入を維持した。
【0070】
頸部を正中切開後に、気管切開を行い、動物に外界空気により酸素供給した。医薬品および液体を投与するために右内頸静脈に、および血圧測定のために左頸動脈にカニューレを挿入した。フェンタニル(10mg/kg)の静脈内ボーラス投与後に、左第4肋間腔の位置で左開胸を行った。心膜を開き、心臓を露出させた。小型弯針に通した3.0縫合糸を左冠状動脈回旋枝の縁枝周囲に渡した。糸の両端を小さなビニルチューブに通し、動脈を閉塞させるために締め、動脈を再灌流するために緩めることができる環を形成させた。腹腔内温度計により体温をモニターし、加熱ブロックにより一定に保った。心拍および動脈圧をGould記録計(Gould Inc., Cleveland, OH)で連続的にモニターした。術後、15分の安定化期間を観察した。
【0071】
処置プロトコール:
ウサギを無作為に4群に振り分ける。全ての動物に30分間の冠状動脈の長期閉塞を受けさせ、続いて4時間再灌流する。再灌流の5分前に、ウサギに:
− ビヒクル(E008の用量1または2に対応する体積)(対照、C)、
− 用量1のE008、
− 用量2のE008、
− 10mg/kgのシクロスポリンA(CsA)
のいずれかの静脈内注射を受けさせる。
【0072】
標本サイズは1群あたり8〜10匹である。これらの群において、4時間の再灌流期間の終わりに心臓を採集し、梗塞サイズのその後の評価に供した。
【0073】
危険領域および梗塞サイズの決定
4時間の再灌流後に、冠状動脈を一時的に再閉塞させ、危険領域の境界をin vivoで定めるために0.5mg/kg Uniperse blue色素(Ciba-Geigy(登録商標), Hawthorne NY)を静脈内注射した。この技法を用いると、これまでに非虚血性の心筋は青色に見えるが、一方で既に虚血性の心筋(危険領域)は未染色のまま残る。
【0074】
次に、ペントバルビタールの静脈内注射によって、麻酔されたウサギを安楽死させた。心臓を切除し、房室溝と平行に厚さ5〜6mmの横断切片を切り出した。右心室組織の除去後に、各切片を秤量した。後ほど危険領域を測定するために各切片の基底面を撮影した。次に、梗塞した(淡い)心筋帯と生存している(赤レンガ色)心筋帯を識別するために、各切片を1%塩化トリフェニルテトラゾリウム溶液中に37°Cで15分間インキュベーションした。次に、切片を再度撮影した。危険領域(AR)および壊死領域(AN)の境界を決定するためにこれらの切片の拡大投射をトレースした。これらの危険領域および壊死領域の程度をコンピュータによる面積測定によって定量し、組織切片の重量に対して補正した。次に、危険領域および壊死領域の合計重量を計算し、それぞれグラム単位で、総左心室(LV)および危険領域の重量に対するパーセンテージとして表現した。危険領域が左心室重量の10%を超えなかった心臓を研究から除外した。梗塞サイズの評価は盲検的に行った。
【0075】
結果:
群の全ての動物についての平均値の形で、結果を次の表に提示するが、カッコ内の数字は異なる動物について測定された値の程度を表す。
AR:危険領域
AN:壊死領域
LV:左心室
【0076】
【表1】
【0077】
結果を図2にも示す。
化合物E008は、対照に比べて梗塞サイズの有意な減少を許す。5mg/kgの用量は、シクロスポリンAに比べたときでさえも梗塞サイズの減少を与える。したがって、5mg/kgの用量は、この心筋梗塞モデルにおいて有意な保護を提供する。
図1
図2