【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるエラストマー系の仕上がりまで硬化可能なシリコーン組成物を用いてエアバッグまたはエアバッグ用布をコーティングする工程であって、前記シリコーン組成物は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を含む有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基の反応を促進する触媒および補強材を含み、前記オルガノポリシロキサン(A)は、
(i)式(SiO
4/2)の1以上のQ単位、
(ii)式R
b2SiO
2/2の15〜6000のD単位および
(iii)式R
aR
b2SiO
1/2[式中、R
a置換基はそれぞれ1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、分岐鎖シロキサンの3つ以上のR
a置換基は、アルケニルまたはアルキニル単位であって、R
b置換基はそれぞれ1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基およびメタクリレート基からなる群から選択される]のM単位
からなり、
単位(i)および(ii)が適切な組み合わせで連結される、分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)を含む。
【0012】
本発明は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を含むオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した、3つ以上の水素原子を含む有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基の反応を促進する触媒および補強材を含むシリコーン組成物の硬化生成物であり、オルガノポリシロキサン(A)は、上記のような分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)を含む、エラストマー性コーティングでコーティングされたエアバッグを包含する。
【0013】
本発明は、さらにエラストマー系の仕上がりまで硬化可能なシリコーン組成物でコーティングされたエアバッグ用布を含み、前記シリコーン組成物は脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した、3つ以上の水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基の反応を促進する触媒および補強材を含み、前記オルガノポリシロキサン(A)は、上記の様な分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)を含むシリコーン組成物でコーティングされたエアバッグ用布を包含する。
【0014】
本発明は、さらに、
(i)式(SiO
4/2)の1以上のQ単位、
(ii)式R
b2SiO
2/2の15〜6000のD単位、および
(iii)式R
aR
b2SiO
1/2[式中、R
a置換基はそれぞれ1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、分岐鎖シロキサンの3つ以上のR
a置換基は、アルケニルまたはアルキニル単位であって、R
b置換基はそれぞれ1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基およびメタクリレート基からなる群から選択される]のM単位であって、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を含むオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合する3つ以上の水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基の反応を促進する触媒および補強材を含むエアバッグコーティングの、オルガノポリシロキサン(A)の全てまたは一部とされるM単位、からなり、
単位(i)および(ii)が適切な組み合わせで連結されている、分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)の使用を含む。
【0015】
分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は1以上のSiO
4/2単位(Q単位)を有し、SiO
4/2単位の全数または一部は、平均して1を超えていてもよく、例えば2〜4のSiO
4/2単位を有していてもよい。
【0016】
なお、分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は、式R
b2SiO
2/2の15〜6000のD単位を包含する。R
b基は、それぞれ、好適には、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルのアルキル基である。最も好ましくは、全てのR
b基がメチル基である。
【0017】
分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は、1を超えるSiO
4/2単位のそれぞれに結合した、1以上のR
b2SiO
2/2単位を包含する。好ましくは、分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は、1つが、または各々がSiO
4/2単位に結合した、4ブロックの(CH
3)
2SiO
2/2単位を有する。(CH
3)
2SiO
2/2単位のブロックは、20〜400の個別の(CH
3)
2SiO
2/2単位を含むが、この範囲に制限されるものではない。通常、分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)では、120〜400の4ブロックの(CH
3)
2SiO
2/2単位が、各々SiO
4/2単位に結合し、分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は、総計で480〜5,000の(CH
3)
2SiO
2/2単位を有する。単に記述的な目的から、SiO
4/2に結合した(CH
3)
2SiO
2/2単位の鎖の化学構造を下記に示す。ここで、nは20〜400である(nはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい)。
【0018】
【化1】
【0019】
分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)はR
aR
b2SiO
1/2単位も包含する(M単位)。R
bは前記R
bと同じであり、好ましくはメチルである。R
aは、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル部分、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル部分および1〜6個の炭素原子を有するアルキニル部分の群から選択される。好ましくは、50%以上のR
a置換基はアルケニル基である。最も好ましくは、R
a置換基がそれぞれアルケニル基である。アルケニル基は、それぞれ例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基およびヘキセニル基から選択されるが、好ましくはビニル基およびヘキセニル基から選択され、最も好ましくはビニル基である。R
aR
b2SiO
1/2単位は、それぞれR
b2SiO
2/2単位に結合させて、分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)を官能性末端基でキャッピングすることが好ましい。典型的なこの配列の化学構造を下記に示す:
【0020】
【化2】
【0021】
分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は、主に分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)内のR
b2SiO
2/2単位に対する、アルケニルを含有するR
aR
b2SiO
1/2単位の比率に依存して、0.025〜10重量%のアルケニル基、例えばビニル基を有することができる。
【0022】
分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は、シロキサン樹脂と環状ポリシロキサンの重合生成物を含む。シロキサン樹脂は、好ましくは0.2:99.8〜4:96の重量比で環状ポリシロキサンと重合する。シロキサン樹脂は、実験式(SiO
4/2)(R
aR
b2SiO
1/2)
xのMQ樹脂であり、xは1.05〜4であることが好ましい。環状ポリシロキサンは、一般的にR
b2SiO
2/2の3〜6の反復単位からなる環式ポリジアルキルシロキサン、好ましくはR
b置換基がそれぞれメチル基、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはデカメチルシクロペンタシロキサンである。シロキサン樹脂および環状ポリシロキサンは、シロキサン開環用の触媒、好ましくは米国特許第6806339号明細書に記載のホスファゼン塩基触媒の存在下で反応させる。
【0023】
分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有する、オルガノポリシロキサン(A)の全体または一部として使用することができる。好ましくは、分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)が、オルガノポリシロキサン(A)の単なる一部として形成される。分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は、例えばオルガノポリシロキサン(A)の0.2〜50重量%を占める。オルガノポリシロキサン(A)の主要部は主に直鎖分子構造を有することが好ましい。
【0024】
コーティング組成物の全オルガノポリシロキサン(A)は、通常、5重量%未満、好ましくは3重量%未満のアルケニル基を含む。全オルガノポリシロキサン(A)は、好ましくは0.02〜2重量%のアルケニル基を含む。
【0025】
主要な直鎖オルガノポリシロキサン(A)のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基およびヘプテニル基が例示され、この中でもビニル基が好ましい。オルガノポリシロキサン(A)に含まれるアルケニル基以外のケイ素に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはアルキル基の類似体を例示することができ、フェニル基、トリル基、キシリル基またはアリール基の類似体;または3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基またはハロゲン置換基の類似体が例示される。アルケニル基以外の基としてはメチル基、および任意にフェニル基を含むことが好ましい。
【0026】
主要な直鎖オルガノポリシロキサン(A)は、例えばα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサンとジメチルシロキサン単位のα,ω−ビニルジメチルシロキシ共重合体、および/またはメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサン単位のα,ω−トリメチルシロキシ共重合体を含み得る。ポリオルガノシロキサン(A)の粘度は、好ましくは、25℃で100mPa・S以上、好ましくは300mPa・S以上であり、90000mPa・S以下、好ましくは70000mPa/S以下である。最も好ましくは、ポリオルガノシロキサン(A)は、25℃で粘度が100〜90000mPa・Sの1以上のα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンを含む。ポリオルガノシロキサン(A)は、例えば、米国特許第6709752号明細書に記載されているように、25℃で粘度が50〜650mPa・Sの第1のα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサン、および25℃で粘度が10,000〜90000mPa・Sの第2のα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンを含む(下記において他に粘度測定が記載されていない限り、全ての粘度は10rpm、スピンドル7のブルックフィールド(登録商標)粘度計を用いて25℃で測定される)。
【0027】
オルガノポリシロキサン(A)は、さらにSiに結合したメチル基およびビニル基を含むオルガノポリシロキサンオリゴマー、例えばシラノール末端基を含むオルガノポリシロキサンオリゴマーを包含する。このようなオルガノポリシロキサンオリゴマーは、特にオルガノポリシロキサンオリゴマーが組成物に存在する補強材を前処理するために使用される場合、本発明で形成されるコーティングの気密性を高めることができる。
【0028】
オルガノポリシロキサンオリゴマーは、例えば、両方の分子末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルポリシロキサン、または両方の分子末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサン単位の共重合体であってもよい。オルガノポリシロキサンオリゴマーは、オルガノポリシロキサン分子の混合物であってもよく、両方の分子末端にシラノール末端基があるものであってもよく、1つだけシラノール基、例えばジメチルヒドロキシシロキシ末端単位を有し、他方の末端基は、例えばジメチルメトキシシロキシ単位、トリメチルシロキシ単位またはジメチルビニルシロキシ単位を有するものであってもよい。好ましくは、オルガノポリシロキサンオリゴマーの50重量%超、より好ましくは60−100重量%を、両分子末端にシラノール末端基を有する分子が占める。
【0029】
オルガノポリシロキサンオリゴマーは、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上のビニル基を含み、35、または40重量%以下のビニル基を含有することができる。最も好ましくは、オルガノポリシロキサンオリゴマーは、5〜30重量%のビニル基を含有する。オルガノポリシロキサンオリゴマーの分子量は、好ましくは1000〜10000である。オルガノポリシロキサンオリゴマーの粘度は、好ましくは50mPa・S以下、より好ましくは0.1〜40mPa・S、最も好ましくは1〜40mPa・Sである(25℃で測定する)。オルガノポリシロキサンオリゴマーは、例えばコーティング組成物に全ポリオルガノシロキサン(A)0.1重量%〜10重量%を含んでいてもよい。
【0030】
本発明のエラストマー形成コーティング組成物に使用するための有機ケイ素架橋剤は、好ましくはシラン、低分子量の有機ケイ素樹脂および短鎖オルガノシロキサンポリマーから選択される。架橋化合物はケイ素に結合した水素を1分子当たり3つ以上有していて、前記分子はアルケニルまたは他の脂肪族不飽和基のポリオルガノシロキサン(A)と反応することができる。適切な短鎖オルガノシロキサンポリマーとしては、直鎖または環状のものを含む。好ましい有機ケイ素架橋剤は一般式
R
3R
42SiO(R
42SiO)
p(R
4HSiO)
qSiR
42R
5 または
【0031】
【化3】
【0032】
(式中、R
4は最高10個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基、R
3はR
4基または水素原子、pは0〜20、qは1〜70であり、ケイ素に結合した水素原子が1分子当たり3つ以上存在する)で表される。R
4は3個以下の炭素原子を有する低級アルキル基を示すことが好ましく、最も好ましくはメチル基である。R
3はR
4基と同一であることが好ましい。好ましくはp=0、qは2〜70、より好ましくは2〜30であるか、または環状有機ケイ素物質が使用される場合、3〜8である。有機ケイ素架橋剤は、25℃で粘度が1〜150mPa・Sのシロキサンポリマーであることが最も好ましく、より好ましくは2〜100mPa・S、最も好ましくは5〜60mPa・Sの粘度である。架橋有機ケイ素化合物は、前記のいくつかの物質を含むことができる。したがって、適切な有機ケイ素架橋剤の例としては、トリメチルシロキサン末端ブロック化されたポリメチルヒドロシロキサン、ジメチルヒドロシロキサン末端ブロック化されたメチルヒドロシロキサン、ジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンの共重合体、およびテトラメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
【0033】
有機ケイ素架橋剤のSi−H基のオルガノポリシロキサン(A)の脂肪族不飽和基に対するモル比は、好ましくは、1:1以上であり、8:1または10:1以下である。最も好ましいSi−H基の脂肪族不飽和基に対するモル比は、1.5:1〜5:1である。
【0034】
有機ケイ素架橋剤のSi−H基とオルガノポリシロキサン(A)の脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒は、好ましくは白金族金属(周期表のVIII族)またはその化合物である。白金および/または白金化合物、例えば微粉化した白金;塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液;塩化白金酸とアルケニルシロキサンの合成物;白金−ジケトンの合成物;シリカ、アルミナ、カルボンまたは同様のキャリアの白金金属;または白金化合物を含む熱可塑性樹脂が好ましい。他の白金族金属触媒としては、ロジウム、ルテニウム、イリジウムまたはパラジウム化合物が例示される。例えばこれらの触媒は、以下の式で示される:RhCl(PPh
3)
3、RhCl(CO)(PPh
3)
2、Ru
3(CO)
12、IrCl(CO)(PPh
3)
2およびPd(PPh
3)
4(Phはフェニル基を示す)。
【0035】
触媒は、好ましくはポリオルガノシロキサン(A)に基づいて0.5〜100ppmw(parts per million weight)、より好ましくは1〜50ppmである。
【0036】
コーティング組成物には、追加の触媒、例えばテトラ(イソプロポキシ)チタン(TiPT)等のチタン化合物を含有させてもよい。
【0037】
コーティング組成物に存在する補強材は、好ましくはシリカ補強材、例えばCabotから商標Cab−O−Sil MS−75として販売されているヒュームド(焼成)シリカ、沈降シリカまたはゲル生成シリカである。このシリカ補強材の比表面積は、好適には50m
2/g以上である。
【0038】
一般的に、シリカ充填剤は全コーティング組成物の1重量%以上を占め、例えばコーティング組成物の40重量%以下を占めることができる。好ましくは、シリカ充填剤はコーティング組成物の2〜30重量%を占める。
【0039】
本発明のコーティング組成物を調製する際、充填剤を任意に脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換されたオルガノポリシロキサン(A)の一部と混合してマスターバッチを形成し、該マスターバッチは脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換されたオルガノポリシロキサン(A)をさらに含む他のコーティング組成物の成分と混合することができる。マスターバッチは、例えばエラストマー形成コーティング組成物に使用した全ポリオルガノシロキサン(A)5〜50重量%を含有していてもよい。分岐鎖オルガノポリシロキサン(A1)は、マスターバッチを形成するために用いられるオルガノポリシロキサン(A)および/または後にマスターバッチと混合されるオルガノポリシロキサン(A)に存在させてもよい。
【0040】
コーティング組成物がSiに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を含有するオルガノポリシロキサンオリゴマーを含有する場合、好適には、充填剤をコーティング組成物の主要部と混合する前に、充填剤を、別途に、またはマスターバッチ形成時に、このオルガノポリシロキサンオリゴマーを用いて前処理する。シリカ充填剤は、例えば、他のオルガノポリシロキサンの不存在下で、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を含有するオルガと混合することができる。少量(通常、混合物全体の25重量%以下)の水、有機溶媒および/またはオルガノポリシロキサンオリゴマーのシリカ充填剤への接着性の改良に適合するカップリング剤を、混合工程の際に配合する。カップリング剤は、例えばヘキサメチルジシラザンまたはテトラメチルジシラザン等のシラザンであってもよい。処理された充填剤は、その後、コーティング組成物の他の成分と混合することができる。或いは、オルガノポリシロキサンオリゴマーでオルガノポリシロキサン(A)の一部を形成し、充填剤マスターバッチを形成することができる。
【0041】
エラストマーを形成するコーティング組成物は、単に所望の比率で原料を混合すれば調製することができる。しかしながら、保存安定性、および組成物を織布に塗布する前の、または塗布時の浴寿命の理由から、通常、触媒と有機ケイ素架橋剤とを分けて、組成物を2部に分けて保存することが好ましい。充填剤のマスターバッチまたは任意の処理済みシリカ充填剤を含む、組成物の他の成分は、どちらの組成物部にあってもよく、好ましくは均等に両方の部位に分散することで、2部を塗布する直前、容易に混合することができる。このように容易に混合できる比率は、例えば1/10または1/1の比率とできる。
【0042】
本発明のコーティング組成物に含有させることができる、他の追加の成分としては、例えば接着促進剤、他の充填剤、顔料、色素、粘度調整剤、浴寿命延長剤、阻害剤および/または軟化剤が挙げられる。
【0043】
接着促進剤の使用においては、布、例えばエアバッグ基布に一般的に使用されるナイロン織布またはポリエステル織布に優れた接着力を与え、長期間布を高温、且つ、高湿度にさらした後でも、コーティングの布への持続的な接着力が保たれることが望まれる。適切な接着促進剤としては、ジルコニウムキレート化合物およびエポキシ官能基またはアミノ官能化有機ケイ素化合物が挙げられる。従来技術において、既知の適切なジルコニウムキレート化合物としては、下記の例が挙げられる:ジルコニウム(IV)テトラアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)トリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−ヘプタンエチオネート)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ジブトキシビス(エチルアセトネート)、ジイソプロポキシビス(2,2,6,6−テトラメチル−ヘプタンチオネート)ジルコニウムまたはβ−ジケトンを有する同様のリガンドとして使用されるジルコニウム複合体(そのアルキル置換型およびフルオロ置換型)が挙げられる。これらの化合物のうち最も好ましいのは、アセトアセテートのジルコニウム複合体である(アルキル置換型およびフルオロ置換型を含む)。このようなジルコニウムキレート化合物は、エポキシ含有アルコキシシラン、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランと共に使用することができる。
【0044】
他の充填剤を使用する場合、該充填剤としては、石英粉末、微粉化硬化シリコーンゴム粒子および炭酸カルシウムが挙げられる。このような他の充填剤は、好ましくはシリカ補強材より少量で配合する。好ましくはこれら他の充填剤は、その表面が疎水性となるように処理される。他の充填剤が使用される場合、それらをシリカ充填剤と共にオルガノポリシロキサンオリゴマーで処理することが有利である。
【0045】
適切な阻害剤の例としては、エチレン性または芳香族不飽和アミド、アセチレン化合物、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン系シロキサン、不飽和炭化水素ジエステル、共役エン−イン、ヒドロペルオキシド、ニトリルおよびジアジリジンが挙げられる。具体例としては、メチルブチノール、ジメチルヘキシノール、エチニルシクロヘキサノール、トリメチル(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)シラン、マレイン酸塩、例えばマレイン酸ビス(2−メトキシ−1−メチルエチル)またはマレイン酸ジアリル、フマル酸塩、例えばフマル酸ジエチルまたはフマル酸塩/アルコールの混合物が挙げられ、アルコールとしては、例えばベンジルアルコールまたは1−オクタノールおよびエテニルシクロヘキサン−1−オルが挙げられる。阻害剤が使用される場合は、例えば放出コーティング組成物の0.1〜3重量%で使用することができる。
【0046】
本発明は、布を本発明の組成物でコーティングするコーティング工程を包含する。前記布は好ましくは織布、特に平織布であるが、例えば編地または不織布であってもよい。布は合成繊維からできているか、天然繊維および合成繊維の混合物からできていて、例えばナイロン−6,6、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレンポリプロピレン、ポリエステル綿またはガラス繊維を使用できる。エアバッグ用布として使用するため、繊維は十分に柔軟性があり、比較的低い容積に畳むことができるが、十分に頑丈であり、高速での展開や、例えば炸薬の影響に耐えることができる必要がある。本発明のコーティング組成物は、通常は接着性を持たせるのが困難な、平織ナイロン布に良好な接着力を有する。本発明のコーティング組成物は、布に塗布した直後に特に良好な接着力を有し、フィルム形成特性を有するため、コーティングされる布の表面のフィルム形成は均一であり、このことから1枚の織布エアバッグコーティング、クッションと縫い目のフィルムはコーティング工程の際に維持される。また、本発明のコーティング組成物は、良好に繊維へ浸透する。本発明によるコーティング組成物により、ガス透過性を低減させることができる。本発明による被コーティングエアバッグ、特に本発明に従ってコーティングされた1枚の織布エアバッグ、および本発明に従ってコーティングされた裁ち縫い繊維からできているエアバッグは、気密性が改良される。
【0047】
本発明のコーティング組成物は、既知の技術に従って、基布に塗布することができる。既知の塗布方法としては、スプレー、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、パディング、ディッピングおよびスクリーンプリンティングが挙げられる。組成物は、エア式ナイフコーティング法またはロール式ナイフコーティング法によって塗布することが好ましい。コーティング組成物は、エアバッグ用布をバラバラに切断し、縫い合わせてエアバッグを組み立てたものにも、1枚の織布エアバッグにも塗布することができる。コーティング組成物は、一般的に10g/m
2以上、好ましくは15g/m
2以上のコーティング量で塗布され、100または150g/m
2以下で塗布することができる。本発明のコーティング組成物は、軽量のコーティング、即ち50g/m
2未満、例えば15〜40g/m
2で塗布した場合、エアバッグの十分な気密性を達成するのに特に有利である。
【0048】
好ましい形態ではないが、全コーティング量を上記のようにして、組成物を複数の層となるように塗布してもよい。コーティング組成物上に、さらにコーティング、例えば摩擦を低減する物質、または本発明のコーティングと同様の成分で、分岐鎖オルガノポリシロキサン(A)を含まないコーティングを塗布してもよい。
【0049】
本発明のコーティングは、長時間かけて環境温度で硬化させてもよいが、コーティングの好適な硬化条件は、例えば120〜200℃の高温において、実際に適用した温度に応じた時間、例えば5秒〜5分間硬化させることである。