特許第5663072号(P5663072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5663072
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】パイプサポートスタンド
(51)【国際特許分類】
   E04G 25/00 20060101AFI20150115BHJP
   E04G 25/06 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   E04G25/00 E
   E04G25/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-220252(P2013-220252)
(22)【出願日】2013年10月23日
【審査請求日】2013年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】308003460
【氏名又は名称】株式会社フォービル
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100116344
【弁理士】
【氏名又は名称】岩原 義則
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】森本 隆之
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−042163(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0139742(US,A1)
【文献】 実開昭51−114830(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 25/00
E04G 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ調整のために互いに挿脱される差込み管及び腰管と、これら差込み管と腰管にそれぞれ軸方向に形成されたピン孔と、このピン孔に挿入される支持ピンと、前記差込み管と前記腰管の挿脱方向と反対方向の端部にそれぞれ設けられた受け台と台板からなるパイプサポートを自立させるために、前記台板に形成された固定孔に挿入されるピン及び軸方向に延設された補強リブが一端に形成された脚部を、前記台板の固定孔に取り付ける構成とすると共に、前記腰管の周面と前記脚部の前記補強リブとの隙間に、該腰管の周面と該補強リブとに当接するように挿入するくさびを有する構成としたことを特徴とするパイプサポートスタンド。
【請求項2】
脚部の断面形状が、三角又は円弧形状とされていることを特徴とする請求項1記載のパイプサポートスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面から上方に張り出した部分がなく、かつパイプサポートに強固に取り付けることができると共に該パイプサポートの傾倒はもちろんのこと傾動及び滑動を防止して安定的に自立立脚させることができるパイプサポートスタンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートにより構造体を構築する際には、当該構造体の形状となるように型枠を配置する。この型枠は、上方の例えば梁や天井面(上階から見れば床面)を構築するためには、その位置の床面にパイプサポートを複数立設して、このパイプサポートによって型枠を上方にて支持するようにしている。
【0003】
パイプサポートは、日本工業規格(JIS A8651)に寸法や強度等が定められており、内筒とする差込み管を外筒とする腰管に挿脱して長さ調整可能とされ、腰管の差込み管との挿脱部位には調整ねじ(おねじ)が形成され、ここに調整ねじ(ねめじ)が螺入される。差込み管と腰管には軸方向にピン孔が直径対向面に各々形成され、このピン孔に支持ピンを挿入して調整した長さに固定する。差込み管と腰管の挿脱方向と反対方向の端部には、差込み管においては受け台が、腰管においては台板が、各々設けられている。
【0004】
このパイプサポートを安定して自立させるために、例えば特許文献1〜4が提案されている。特許文献1,4は、腰管の挿脱部位と反対の端部に設けられた台板における中央の筒孔部位に挿入される支承部と、この支承部から連続して台板の面と積層される載置部と、載置部の床面に臨む側の面に複数形成された起立爪と、を有した構成の滑動防止金具が示されている。
【0005】
特許文献2は、例えば側面視A字状の脚部(いわゆるA型バリケード)に対してパイプサポートを取り付けるべく、パイプサポートの側面に当接する装着部と、装着部とパイプサポートとを固定するロック部材とが設けられた把持体とを備え、該把持体を脚部に係合させる構成とされた支持具が示されている。
【0006】
特許文献3は、パイプサポートを抱合保持するリング体と、リング体の外面に等間隔を隔てて取り付けられた3本の脚部とからなり、リング体は枢軸4を支点として開閉可能に連結されたリング半裁体によって形成され、これらリング半裁体の相対する遊端部に該遊端部を止着、解除する止着手段が設けられ、さらに脚部は上端部でリング体に対して所定角度開脚可能に取り付けられた構成のスタンドが示されている。
【0007】
しかし、特許文献1,4は、パイプサポートの滑動を防止するものであって、例えば天井面を構築するための型枠内に未だコンクリートが打設されていない、つまり上方から荷重がかかっていない場合には、パイプサポートは容易に傾倒あるいは滑動するといった問題があり、床面にパイプサポートを仮置きするにも容易に傾倒してしまう可能性がある。
【0008】
また、特許文献2はある程度の高さを有した安定自立した脚部に対してパイプサポートを取り付ける構成、特許文献3は腰管の軸方向途中部位から床面に向けて斜めに延びたいわゆる三脚をパイプサポートに取り付ける構成であって、いずれにおいてもパイプサポート以外の構成が床面から上方に張り出すこととなり、作業員の通行の妨げになる可能性がある。
【0009】
例えば特許文献2,3においてパイプサポート以外の床面から上方に張り出した構成に通行中の作業員(や運搬する資材)が接触すると、パイプサポートが傾倒、傾動、滑動してしまうこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−32642号公報
【特許文献2】特開2005−105692号公報
【特許文献3】特開平9−158499号公報
【特許文献4】特開平7−217229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題は、特許文献1,4の構成では上方から荷重のかかっていない状態のパイプサポートが容易に傾倒してしまう可能性があり、特許文献2,3の構成では脚部や三脚が床面から上方に張り出して作業員の通行の妨げになる可能性及びこれら脚部や三脚に接触することでパイプサポートが傾倒、傾動、滑動する可能性がある、点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために、本発明のパイプサポートスタンドは、長さ調整のために互いに挿脱される差込み管及び腰管と、これら差込み管と腰管にそれぞれ軸方向に形成されたピン孔と、このピン孔に挿入される支持ピンと、前記差込み管と前記腰管の挿脱方向と反対方向の端部にそれぞれ設けられた受け台と台板からなるパイプサポートを自立させるために、前記台板に形成された固定孔に挿入されるピン及び軸方向に延設された補強リブが一端に形成された脚部を、前記台板の固定孔に取り付ける構成とすると共に、前記腰管の周面と前記脚部の前記補強リブとの隙間に、該腰管の周面と該補強リブとに当接するように挿入するくさびを有する構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパイプサポートスタンドは、床面を這う脚部を取り付ける構成であるため、上方に脚部が張り出すことがなく、該床面の通行に支障を来すことがない。また、パイプサポートを自立させる際に、該パイプサポートの台板の隅部に形成された固定孔に脚部を取り付けるため非常に簡便な作業で済むと共に、パイプサポートの仮設置時点から安定的に自立させておけるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のパイプサポートスタンドをパイプサポートに取り付けた状況を示す図である。
図2】本発明のパイプサポートスタンドにおける脚部であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図、である。
図3】本発明のパイプサポートスタンドにおけるくさびであり、(a)は平面図、(b)は正面図、である。
図4】(a)〜(c)は本発明のパイプサポートスタンドをパイプサポートに取り付ける状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、上方から荷重がかかっていない状態のパイプサポートが仮設時に容易に傾倒してしまう可能性がある点、及び脚部が床面から上方に張り出すと作業員の通行の妨げになる点を、台版の隅部の固定孔に、該台板の隅部に形成された固定孔に挿入されるピン及び軸方向に延設された補強リブが一端に形成された脚部を取り付けることで解消した。
【0016】
また、本発明は、上記構成において、腰管の周面と脚部の補強リブとの隙間に、該腰管の周面と該補強リブとに当接するように挿入するくさびを有することで、パイプサポートの寸法種類に対応することができると共に脚部と腰管との結合がより強固となり、傾動が抑制される。
【0017】
さらに、本発明は、上記構成において、脚部の断面形状が、三角又は円弧形状とされていれば、例えば台車が脚部を容易に乗り越えることができると共に、作業員がつまずいたりすることが防止できる。
【実施例】
【0018】
本発明のパイプサポートスタンドの具体的な実施例について以下に図面を参照して説明する。なお、パイプサポートは、図1にのみ全体を示し、図2図4においては本発明のパイプサポートスタンドが取り付けられる部位(腰管と台板の部位)のみを示し、他部位の図示を省略している。
【0019】
パイプサポートスタンド1は、日本工業規格(JIS A8651)に規定されるパイプサポート11に取り付けられて安定的に自立させるものである。パイプサポート11は、内筒とする差込み管12と、外筒とする腰管13とを備え、腰管13に対して差込み管12を挿脱して長さ調整可能する構成とされている。
【0020】
差込み管12は腰管13に対する、腰管13は差込み管12に対する、各々の挿脱方向と反対の端部には差込み管12には受け台12A、腰管13には台板13Aが各々設けられている。
【0021】
これら、受け台12A、台板13Aは、軸方向から見た平面視略正方形の外形とされ、各々の四隅に、例えば端太(不図示)等に固定するためのボルト等が挿入される固定孔12a,13aがそれぞれ形成されている。この台板13Aの固定孔13aを本発明の後に詳述するパイプサポートスタンド1において利用する。
【0022】
さらに、差込み管12と腰管13の周面(直径対向面)には、各々軸方向に所定ピッチでピン孔12B,13Bが形成されている。ピン孔12B,13Bには、腰管13の差込み管12の挿脱部位に設けられたピン13Cが挿入される。腰管13の差込み管12との挿脱部位の周面には調整おねじ13Dが形成され、この調整おねじ13Dに調整ねめじ13Eが螺入される。
【0023】
パイプサポートスタンド1は、腰管13の台板13Aに形成された固定孔13aの数だけの脚部2と、本例では4本の脚部2と腰管13とを強固に結合させるためのくさび3とを備えている。
【0024】
脚部2は、所定長さの本体2Aと、この本体2Aの一方(本例では腰管13側を意味する)端部に形成された補強リブ2Bと、この補強リブ2Bが設けられた側と反対面に形成され、固定孔13aに対して挿入されるピン2Cと、該本体2Aの他方(本例では腰管13から離間した方向を意味する)端部でピン2Cと同じ方向及び高さで形成された脚2Dと、を有している。本例では脚部2は、台板2と平行で直線状に延伸している。
【0025】
本体2Aは、図示する本例では、断面形状が上方開放されたコ字状とされているが、例えば、断面形状が中空筒状で、上部に頂点を有する三角状、あるいは上部が円弧状とされた半円状、とすることで、床面からの突出が滑らかとなり、作業員がつまずいたりすることが防止できる。
【0026】
補強リブ2Bは、パイプサポート11の傾倒を防止するために、腰管13の周面と隙間を開けず、つまり当接するように、軸方向上方に突出して他方側にパイプサポート1が傾倒した際の荷重を支持できるだけの幅を持たせた形状とするが、本例のようにパイプサポート11の寸法種類によっては、腰管13の周面との隙間を開けた状態となる場合がある。また、ピン孔13Bとピン2Cとの嵌め合いの公差により僅かに傾動することがある。
【0027】
したがって、本例のように、パイプサポート11の種類によって腰管13の周面と補強リブ2Bとの隙間が生じる場合には、図3に示すようなくさび3を挿入する。くさび3を備える場合には、補強リブ2Bの上面に、くさび3の斜面部3Bが挿入される溝2Baが形成されている。なお、くさび3については後述する。
【0028】
ピン2Cと脚2Dは、同じ高さとされ、台板13Aの固定孔13aに挿入した本体2Aの一方端側と、他方端側に延びた本体2Aの水平を保つようにしているが、脚2Dに関しては、これを省略して、本体2Aの形状、すなわち本体2Aの他方端部へ向かう途中からピン2Cと同じ高さとなるようにしだい高さが大きくなる、あるいは途中から高さが大きくなるように異なる形状としてもよい。
【0029】
くさび3は、腰管13の周面に当接するよう、例えば本例では連続して隣接する2面が90°とされた当接部3Aと、この当接部3Aの角部に設けられた斜面部3Bとを有している。
【0030】
当接部3Aは腰管13の軸方向にある程度の高さを有しており、斜面部3Bは当接部3Aの高さ分の寸法で設けられ、脚部2の補強リブ2Bの溝2Baに挿入される。また、斜面部3Bは、腰管13の差込み管12との挿脱部位(これを上部とする)に向かって最上部が、該腰管13周面から最も張り出した状態とされ、下部に向かうにしたがって該張り出し量が小さくなる、つまり斜面状とされている。
【0031】
例えば、パイプサポート11の腰管13の外周と台板13Aの固定孔13aとの距離があって、この固定孔13aにピン2Cを挿入したときに、腰管13の外周と補強リブ2Bとの間に隙間が生じると、パイプサポート11が、傾動する(がたつく)ことがあるが、くさび3を挿入することで、腰管13と脚部2の固定が強固になると共にわずかな傾動やがたつきを抑えることができる。
【0032】
上記構成のパイプサポートスタンド1は、図4に示すようにして使用する。まず、パイプサポート11を設置する床面において、未だ差込み管12を上方へ伸張させていない状態で、図4(a)に示すように、台板13Aの固定孔13aに脚部2のピン2Cを挿入して、パイプサポート11を仮自立させる。
【0033】
続いて、腰管13の外周と補強リブ2Bとの間に隙間がある場合は、上記の後に、図4(b)に示すように、くさび3の斜面部3Bを脚部2の溝2Baに沿って挿入する。その後、図4(c)に示すように、斜面部3Bの上面をハンマーなどで下方へ打ち込んで脚部2と腰管13とを密着させる。
【0034】
こうしてパイプサポート11をパイプサポートスタンド1を用いて正式に自立させた後、差込み管12を伸ばし、高さ調整を行ってピン孔12B,13Bにピン13Cを挿入して設置完了となる。
【0035】
このように、本発明は、パイプサポートスタンド1の脚部2が上方の空間に大きく張り出すことなく、床面を這うようにしているので、従来のように作業員の通行の邪魔になることがない。
【0036】
また、本発明は、パイプサポートスタンド1の設置時から、つまり未だ型枠に荷重がかかっていない状態でも傾倒はもちろんのこと、傾動も滑動も生じることなく安定的に自立させることができるので、パイプサポート11を容易に設置して型枠を計画どおりに配置することができる。言うまでもなく本発明のパイプサポートスタンド1はパイプサポート11の設置時から型枠設置、コンクリートの打設、のどの時点においても滑動はもちろん傾動することがない。
【符号の説明】
【0037】
1 パイプサポートスタンド
2 脚部
2A 本体
2B 補強リブ
2Ba 溝
2C ピン
2D 脚
3 くさび
3A 当接部
3B 斜面部
11 パイプサポート
【要約】
【課題】上方から荷重のかかっていない状態のパイプサポートが容易に傾倒してしまう可能性、脚や三脚が床面から上方に張り出して作業員の通行の妨げになる可能性、を改善することを課題とする。
【解決手段】パイプサポートスタンド1は、パイプサポート11を自立させるために、台板13Aに形成された固定孔13aに挿入されるピン2C及び軸方向に延設された補強リブ2Bが一端に形成された脚部2を、前記台板13Aの固定孔13aに取り付ける構成としている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4