(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663087
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】メタマテリアルを使った極薄マイクロストリップアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20150115BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20150115BHJP
H01P 7/08 20060101ALI20150115BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q1/38
H01P7/08
H01P11/00 P
【請求項の数】26
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-515302(P2013-515302)
(86)(22)【出願日】2010年6月15日
(65)【公表番号】特表2013-532436(P2013-532436A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】TH2010000019
(87)【国際公開番号】WO2011159262
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2013年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】512320124
【氏名又は名称】オフィス オブ ザ ナショナル ブロードキャスティング アンド テレコミュニケーションズ コミッション
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】ウォンカセム、 ナンタカン
(72)【発明者】
【氏名】チャロエン、 ブンイング
(72)【発明者】
【氏名】カムトンディー、 チャクリト
【審査官】
安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06967621(US,B1)
【文献】
特開2008−283381(JP,A)
【文献】
特表2005−533446(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/107684(WO,A1)
【文献】
特開2000−165134(JP,A)
【文献】
特開2005−260965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01P 7/08
H01P 11/00
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一または複数の周波数帯域の電磁信号を送受信するためのアンテナであって、
第1の側と、前記第1の側に対向する第2の側と、前記第1の側と前記第2の側との間に延びる第3の側および第4の側とを含む第1の面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板の前記第1の面に配置され、いくつかの自己相似の構造的特徴を有する少なくとも一つの放射エレメントと、
前記少なくとも一つの放射エレメントに接続された少なくとも一つのフィードラインと、
前記誘導体基板の前記第1の面に配置された一組のメタマテリアル共振体とを備え、
少なくとも一つの前記フィードラインは、前記少なくとも一つの放射エレメントと前記第1の側との間に延び、
前記一組のメタマテリアル共振体におけるメタマテリアル共振体のそれぞれは、互いに接触せず、前記少なくとも一つの放射エレメントの周辺に該放射エレメントと接触せずに配置され、前記少なくとも一つの放射エレメントの共振周波数と同時に動作するようにデザインされた共振周波数を有する
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナにおいて、
前記一組のメタマテリアル共振体が、前記第1の面の前記第1の側、前記第2の側、前記第3の側、および前記第4の側の少なくとも一つに配置されている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナにおいて、
前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体が、前記第1の面の前記第3の側および前記第4の側の少なくとも一つに配置されている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンテナにおいて、
前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体が、隣接するものどうしが垂直に配置された複数のメタマテリアル共振体を有する
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンテナにおいて、
前記一組のメタマテリアルのうち互いに隣接するメタマテリアル共振体が、少なくともλ/200(λは前記アンテナの動作波長)の空隙により互いに分離されている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項6】
請求項1又は5に記載のアンテナにおいて、
前記一組のメタマテリアル共振体におけるメタマテリアル共振体のそれぞれが、少なくともλ/200(λは前記アンテナの動作波長)の空隙により前記少なくとも一つの放射エレメントと分離されている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項7】
請求項1に記載のアンテナにおいて、
前記少なくとも一つの放射エレメントの前記いくつかの自己相似の構造的特徴が、複数のフラクタルエレメントを有する
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項8】
請求項1に記載のアンテナにおいて、
前記少なくとも一つの放射エレメントが、略平面である
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンテナにおいて、
前記誘電体基板が、略平面状であり、前記第1の面と対向する第2の面を含み、
前記少なくとも一つの放射エレメント及び前記一組のメタマテリアル共振体のそれぞれが前記誘電体基板の前記第2の面に対向する面に設けられている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項10】
請求項7に記載のアンテナにおいて、
前記複数のフラクタルエレメントが、略三角形状、略四角形状、および略五角形状のいずれか一つの特徴を有する
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項11】
請求項1に記載のアンテナにおいて、
前記少なくとも一つの放射エレメントが、Cu、Au、およびITOの少なくとも一つを有する
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項12】
請求項7に記載のアンテナにおいて、
前記複数のフラクタルエレメントが、コッホパターン、ブラックマン・コッホパターン、ロータスポッドパターン、シェルピンスキーパターン、亀甲パターン、および多角形パターンの少なくとも一つを有する
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項13】
請求項7に記載のアンテナにおいて、
前記複数のフラクタルエレメントが、少なくとも2の反復因数で生成されている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項14】
請求項1に記載のアンテナにおいて、
前記少なくとも一つの放射エレメントが、いくつかのボイドを有する
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項15】
請求項14に記載のアンテナにおいて、
前記いくつかのボイドが、前記少なくとも一つの放射エレメント上に対称的に配置されている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンテナにおいて、
前記一組のメタマテリアル共振体におけるメタマテリアル共振体のそれぞれが、分割リング共振器を有する
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンテナにおいて、
前記一組のメタマテリアル共振体におけるメタマテリアル共振体のそれぞれの共振周波数の許容誤差が、当該アンテナの動作周波数の±0.5〜5%である
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項18】
一または複数の周波数帯域の電磁信号を送受信するためのアンテナのコンピュータを用いた製造方法であって、
前記アンテナは、第1の側と、前記第1の側に対向する第2の側と、前記第1の側と前記第2の側との間に延びる第3の側および第4の側とを含む第1の面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板の前記第1の面に配置され、いくつかの自己相似の構造的特徴を有する少なくとも一つの放射エレメントと、
前記少なくとも一つの放射エレメントに接続され、前記少なくとも一つの放射エレメントと前記第1の側との間に延びる少なくとも一つのフィードラインと、
前記誘導体基板の前記第1の面に配置された一組のメタマテリアル共振体とを備えおり、
当該製造方法は、
所望の共振周波数で動作するように前記少なくとも一つの放射エレメントを拡大縮小するステップと、
前記少なくとも一つの放射エレメントの形状および幾何学的配置に依存する、前記少なくとも一つの放射エレメントの電界および磁界の方向を決定するステップと、
前記少なくとも一つの放射エレメントの共振周波数と同時となるように、前記一組のメタマテリアル共振体のうちのメタマテリアル共振体のそれぞれの共振周波数を規定するステップと、
前記一組のメタマテリアル共振体におけるメタマテリアル共振体のそれぞれが、互いに接触せず、前記少なくとも一つの放射エレメントの周辺に該放射エレメントと接触せずに配置されるように、前記決定された電界および磁界の方向に基づいて、前記誘電体基板の第1の面上に前記一組のメタマテリアル共振体のうちのメタマテリアル共振体のそれぞれを配置するためのいくつかの位置を決定するステップとを備え、
前記ステップのうちの少なくとも1つがプログラム命令の処理部により実行される
ことを特徴とするアンテナの製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載のアンテナの製造方法において、
前記一組のメタマテリアル共振体におけるメタマテリアル共振体のそれぞれを配置するためのいくつかの位置が、前記第1の面の前記第1の側、前記第2の側、前記第3の側、および前記第4の側の少なくとも一つにある
ことを特徴とするアンテナの製造方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載のアンテナの製造方法において、
前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置が、前記第1の面の前記第3の側および前記第4の側の少なくとも一つにある
ことを特徴とするアンテナの製造方法。
【請求項21】
請求項18に記載のアンテナの製造方法において、
当該アンテナのいくつかの仕様を作成するステップ、および
前記少なくとも放射エレメントの形状を反復的に決定するステップの少なくとも一つを備え、
所望の周波数で動作するように前記少なくとも一つの放射エレメントを拡大縮小するステップ、
前記少なくとも一つの放射エレメントの電界および磁界の方向を決定するステップ、
前記第1の面上に前記一組のメタマテリアル共振体におけるメタマテリアル共振体のそれぞれを配置するためのいくつかの位置を決定するステップ、
当該アンテナのいくつかの仕様を作成するステップ、および
前記少なくとも一つの放射エレメントの形状を反復的に決定するステップの少なくとも一つを、複数回実行する
ことを特徴とするアンテナの製造方法。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれか1項に記載のアンテナの製造方法において、
前記誘電体基板の前記第1の面に前記少なくとも一つの放射エレメントを配置するステップと、
前記一組のメタマテリアル共振体におけるメタマテリアル共振体のそれぞれを、前記誘電体基板の前記第1の面に配置するステップとを備えている
ことを特徴とするアンテナの製造方法。
【請求項23】
請求項18〜22のいずれか1項に記載のアンテナの製造方法において、
前記一組のメタマテリアル共振体における少なくとも一つのメタマテリアル共振体が、隣接するものどうしが垂直に配置された複数のメタマテリアル共振体からなる
ことを特徴とするアンテナの製造方法。
【請求項24】
請求項18〜23のいずれか1項に記載のアンテナの製造方法において、
前記一組のメタマテリアル共振体のうちのメタマテリアル共振体のそれぞれを配置するためのいくつかの位置を決定するステップは、前記一組のメタマテリアルのうち互いに隣接するメタマテリアル共振体が、少なくともλ/200(λは前記アンテナの動作波長)の空隙により互いに分離されるように位置を決定することを含む
ことを特徴とするアンテナの製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載のアンテナの製造方法において、
前記一組のメタマテリアル共振体のうちのメタマテリアル共振体のそれぞれを配置するためのいくつかの位置を決定するステップは、前記一組のメタマテリアル共振体におけるメタマテリアル共振体のそれぞれが、少なくともλ/200(λは前記アンテナの動作波長)の空隙により前記少なくとも一つの放射エレメントと分離されるように位置を決定することを含む
ことを特徴とするアンテナの製造方法。
【請求項26】
請求項18〜25のいずれか1項に記載のアンテナの製造方法において、
前記一組のメタマテリアル共振体のうちのメタマテリアル共振体のそれぞれは、分割リング共振器を有する
ことを特徴とするアンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、フラクタルエレメントおよびメタマテリアルを備えたアンテナデザインに関する。特に、本開示の局面は、自己相似の構造的特徴を呈する放射エレメントおよび当該放射エレメントの周辺に配置されたいくつかのメタマテリアル共振体を備えたアンテナデザインであって、当該放射エレメントおよび当該いくつかのメタマテリアル共振体が平面誘電体基板に対して共通の平面を共有するアンテナデザインに関する。
【背景技術】
【0002】
今日の技術的進歩により無線通信に対する要求が増しつつある。無線通信によって導体や電線なしでさまざまな距離で情報が伝送されるが、この情報伝送は電磁エネルギーを用いて実現される。アンテナは、無線通信ネットワークにおいて無線通信を容易にするのに必要不可欠な構成要素である。アンテナは、携帯電話機、携帯情報端末、ポータブルテレビ機器などの多くの無線機器に接続される。
【0003】
アンテナは、無線通信分野の電磁信号を放射および/または受信するのに用いられる。本来、アンテナは、電磁スペクトルの無線周波数の電磁波を電流に変換する変換器である。そこで、アンテナをデザインする際に、アンテナゲイン、指向性、効率などのパラメータが考慮される。アンテナは、単一周波数帯または多重周波数帯で動作可能である。前者は一般にシングルバンドアンテナとして知られており、後者はマルチバンドアンテナとよく呼ばれる。今日、マルチバンドアンテナはシングルバンドアンテナと比較してより広く用いられるが、そのサイズおよび複雑な回路のため高コスト化しつつある。近年、通信機器およびその他の個人電子機器の小型化のトレンドと相俟ってアンテナの小型化のニーズも高まりつつある。
【0004】
マイクロストリップパッチアンテナ、または単にパッチアンテナは、アンテナ素子パターンを絶縁誘電体基板に接合された金属パッチにエッチングして製造されたナローバンド、ワイドビームのアンテナである。誘電体基板の反対側に接合された連続メタル層は接地層を形成している。パッチアンテナの利用は、軽量、低プロファイル、低製造コスト、適合性、再現性、信頼性などの際だった物理特性を主たる要因として、ますます注目を浴びつつある。また、パッチアンテナは製造が容易で、半導体素子および無線技術機器との一体化が容易である。パッチアンテナは、四角形、三角形、円形、楕円形などのさまざまな形状で利用することができる。
【0005】
近年、パッチアンテナの欠点が表面化しつつある。マイクロ波帯域にデザインされた従来のパッチアンテナのサイズは概して大きく、それゆえそのようなアンテナを送受信機および中継器システムに取り付けると悪影響がある。また、そのようなアンテナは、狭帯域幅、低ゲイン、および弱い放射パターンの観点から限界がある。アンテナサイズを全体的に小さくするとゲインが低減し、また、表面派励振を引き起こしかねない基板特性によってもゲイン低減が起こり得る。それゆえ、最近の研究努力がマイクロストリップアンテナのデザインに向けられ、放射特性の向上およびそれと同時に小型化が進展しつつある。
【0006】
一般に、アンテナの面積と波長の間には、アンテナサイズがλ/4(λは動作波長である)よりも小さければ放射耐性、ゲイン、および帯域幅が減少するためアンテナが有効でなくなるといった重要な関係があり、それゆえアンテナサイズは大きくしなければならない。サイズおよび放射特性の問題を回避するために用いられる一つの有効な手段は、フラクタル放射パッチまたはフラクタルパッチアンテナを利用することである。フラクタルパッチアンテナとは、フラクタルまたは自己相似デザインを利用して、一定の全表面積または体積内で電磁信号を送受信可能な材料の長さを最大化または外周を増大させるアンテナである。このように、フラクタルパッチアンテナは、長大アンテナに匹敵する放射パターンおよび入力インピーダンスを達成することができ、さらにその形状における多くの曲線によりサイズ制約を克服することができる。自己相似デザインは、マイクロストリップから出発して反復を繰り返すことで生成される。しかし、これらフラクタルパッチアンテナには磁気/電気の不均衡から生じるエネルギーロスに起因して一つの欠点が生じている。
【0007】
図1は、分割リング共振器を有するアンテナ基板を示す。磁気/電気の不均衡によるエネルギーロスを低下させる問題を回避するために、分割リング共振器の形で磁気共鳴体がアンテナ基板の周辺に配置されていた。分割リング共振器はアンテナパッチに垂直に配置された。この配置は(ほとんどの場合または典型的に)電界および磁界の方向に従ってデザインされる。そのようなデザインの欠点の一つは、分割リング共振器のためアンテナ基板の厚みが増すということである。
【発明の概要】
【0008】
本開示の一局面に従うと、一または複数の周波数帯域の電磁信号を送受信するためのアンテナが開示される。当該アンテナは、第1の側、前記第1の側に対向する第2の側、前記第1の側と前記第2の側との間に延びる第3の側および第4の側を有する誘電体基板を備えている。また、当該アンテナは、前記誘電体基板の表面に配置された少なくとも一つの放射エレメントを備えている。前記少なくとも一つの放射エレメントは、いくつかの自己相似の構造的特徴を有する。前記少なくとも一つの放射エレメントが、いくつかのボイドを有していてもよい。前記少なくとも一つの放射エレメントの前記いくつかのボイドが、前記少なくとも一つの放射エレメント上に対称的に配置されていてもよい。前記少なくとも一つの放射エレメントには少なくとも一つのフィードラインが接続されている。前記少なくとも一つのフィードラインは、前記少なくとも一つの放射エレメントと前記第1の側との間に延びている。
【0009】
さらに、少なくとも一つのメタマテリアル共振体が、前記少なくとも一つの放射エレメントと同じ平面および前記誘電体基板の同じ表面に配置されている。前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体は、前記少なくとも一つの放射エレメントの周辺に配置されている。前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置が、前記誘電体基板の前記第1の側、前記第2の側、前記第3の側、および前記第4の側の少なくとも一つにあってもよい。例えば、ある実施形態では、前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置が、前記誘電体基板の前記第3の側および前記第4の側の少なくとも一つにあり得る。ある実施形態では、前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体が、隣接するものどうしが垂直に配置または積層された複数のメタマテリアル共振体を有し得る。
【0010】
本開示の別の局面に従うと、一または複数の周波数帯域の電磁信号を送受信するためのアンテナの製造方法が開示される。当該アンテナは、第1の側、前記第1の側に対向する第2の側、前記第1の側と前記第2の側との間に延びる第3の側および第4の側を有する誘電体基板を備えている。また、当該アンテナは、前記誘電体基板の表面に配置された少なくとも一つの放射エレメントを備えている。前記少なくとも一つの放射エレメントは、いくつかの自己相似の構造的特徴を有する。前記少なくとも一つの放射エレメントには少なくとも一つのフィードラインが接続されている。前記少なくとも一つのフィードラインは、前記少なくとも一つの放射エレメントと前記第1の側との間に延びている。さらに、少なくとも一つのメタマテリアル共振体が前記少なくとも一つの放射エレメントと同じ平面および前記誘電体基板の同じ表面に配置されている。前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体は、前記少なくとも一つの放射エレメントの周辺に配置されている。当該方法は、所望の周波数で動作するように前記少なくとも一つの放射エレメントを拡大縮小するステップと、前記少なくとも一つの放射エレメントの形状および幾何学的配置に依存する、前記少なくとも一つの放射エレメントの電界および磁界の方向を決定するステップと、前記誘電体基板上に前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置を決定するステップとを備えている。
【0011】
前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置が、前記誘電体基板の前記第1の側、前記第2の側、前記第3の側、および前記第4の側の少なくとも一つにあってもよい。例えば、ある実施形態では、前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置が、前記誘電体基板の前記第3の側および前記第4の側の少なくとも一つにあり得る。
【0012】
当該方法は、当該アンテナのいくつかの仕様を作成するステップ、および前記少なくとも放射エレメントの形状を反復的に決定するステップの少なくとも一つをさらに備えていてもよい。
【0013】
当該方法は、前記誘電体基板の表面に前記少なくとも一つの放射エレメントを配置するステップと、前記少なくとも一つの放射エレメントと同じ平面および前記誘電体基板の同じ表面に前記少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するステップとをさらに備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、分割リング共振器を有するアンテナ基板を示す図である。
【
図2】
図2aおよび2bは、それぞれ、本開示の特定の実施形態に係るアンテナの構造の平面図および側面図である。
【
図3】
図3aおよび3bは、それぞれ、本開示の一実施形態に係るアンテナの構造の平面図および側面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係るアンテナを備えた携帯受信機を持つ通信システムを示すブロック図である。
【
図5】
図5aおよび5bは、本開示のある実施形態に係るアンテナの平面図および側面図である。
【
図6】
図6は、本開示のいくつかの代表的な実施形態に係るアンテナを示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の別のいくつかの代表的な実施形態に係るアンテナを示す図である。
【
図8】
図8は、本開示のある実施形態に係るメタマテリアル共振体の代表的な実施形態を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示のある実施形態に係るさまざまな方向のいくつかの分割リング共振器(SRR)を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示のある実施形態に係る少なくとも一つの放射エレメントを示す図である。
【
図11】
図11は、本開示のある実施形態に係るいくつかのボイドを有する放射エレメントを示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の代表的な実施形態に係るアンテナの製造方法を示すフロー図である。
【
図13】
図13aおよび13bは、それぞれ、本開示の一実施形態に係る少なくとも一つの放射エレメントによって生成される電界および磁界のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態は、一または複数の周波数帯域の電磁信号を送受信するためのアンテナおよび/またはアンテナの製造方法に関する。
【0016】
特に、本開示は、少なくとも一つの放射エレメントおよび当該放射エレメントの周辺またはその近傍に配置された少なくとも一つのメタマテリアル共振体を有するアンテナに関する。さまざまな実施形態において、メタマテリアル共振体および放射エレメントは同じ平面を共有しており、したがって、少なくとも一つのメタマテリアル共振体の少なくとも一つの表面または部分は放射エレメントと同じ平面を共有する。ある実施形態では、少なくとも一つのメタマテリアル共振体が、隣接するものどうしが垂直に積層された複数のメタマテリアル共振体を有する。
【0017】
このようなアンテナの開発方法も開示される。少なくとも一つのメタマテリアル共振体を有するアンテナは少ないロスで動作する。少なくとも一つの放射エレメントと同じ平面および少なくとも一つの放射エレメントの周辺に少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置することで、アンテナの厚みを極薄にしつつ、磁気/電気の不均衡から生じるエネルギーロスが最小化される。
【0018】
例えば、本開示では約2.4GHzおよび5GHzの無線周波数帯で動作するアンテナについて説明する。しかし、このような周波数帯域に係る無線アプリケーションと類似の動作能力が要求されるほかのアプリケーションから本開示のさまざまな実施形態が排除されるわけではない。当然のことながら、本開示に係るアンテナはさまざまな周波数帯域または複数の周波数帯域内で動作可能である。
【0019】
以下の説明および関連する図面において、同様の要素には同様の符号を付して参照する。
【0020】
例えば、
図2aおよび2bは、それぞれ、本開示の特定の実施形態に係るアンテナ100の構造の平面図および側面図である。
図2aおよび2bを参照しながら本開示の特定の実施形態に係る空間的配置について説明する。この実施形態において、アンテナ100は誘電体基板102を有しており、誘電体基板102は、第1の側104、第1の側104に対向して配置された第2の側106、および第1の側104と第2の側106との間に延びる第3の側108および第4の側110を有する。少なくとも一つのフィードライン112が第1の側104と少なくとも一つの放射エレメント114との間に延びている。
図2bから、アンテナ100は、上部側116と、上部側116に対向する底部側118とを有する。放射エレメント114は上部側116に配置され、接地面層120が底部側118上に配置されている。便宜上、少なくとも一つの放射エレメント114が配置された誘電体基板の表面は、これ以降、上部側116として参照する。
【0021】
図3aおよび3bは、それぞれ、本開示の一実施形態に係るアンテナ100の構造の平面図および側面図である。アンテナ100は、誘電体基板102の上部側116の表面に配置された少なくとも一つの放射エレメント114を有する。少なくとも一つの放射エレメント114は、信号の送受信ができるように構成され、後述するようにいくつかの自己相似の構造的特徴122を呈する。
図3bに示すように、少なくとも一つの放射エレメント114は、誘電体基板102の上部側116の表面に平行かつ隆起しており(例えば、遥かに超えて広がる)、接地面層120に電気的に接続されている。少なくとも一つのフィードライン112が、少なくとも一つの放射エレメント114への/からの信号を増強し伝送する少なくとも一つの放射エレメント114に接続可能になっている。少なくとも一つのフィードライン112は、少なくとも一つの放射エレメント114と第1の側104との間に延びている。少なくとも一つのフィードライン112は、コネクタ124に電気的に接続可能になっていてもよい。少なくとも一つの放射エレメント114は略平面であり、誘電体基板102の略平面上に形成されている。少なくとも一つのメタマテリアル共振体126が、少なくとも一つの放射エレメント114の周辺、かつ、少なくとも一つの放射エレメント114と同じ誘電体基板102の上部側116の表面に配置されている。少なくとも一つの放射エレメント114および少なくとも一つのメタマテリアル共振体126は、同じまたは共通の面を共有または当該面上に共存する。
図3aおよび3bからわかるように、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126は、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126が誘電体基板102の上部側116に面するように誘電体基板102上に配置されている。
【0022】
図4は、本開示の一実施形態に係るアンテナ100を備えた携帯受信機202を持つ通信システム200を示すブロック図である。フィードライン112は、少なくとも一つの放射エレメント114への/からの信号を増強し伝送する少なくとも一つの放射エレメント114に接続されている。フィードライン112は、コネクタ124に電気的に接続されている。一方、コネクタ124は、携帯受信機202に接続されている。基地局250は、第1の通信パス300を介して放射エレメント114を通じてアンテナ100と通信するアンテナシステム260を有しており、これにより放射エレメント114は第1のいくつかの信号310を受信可能になっている。また、アンテナ100から基地局250へ第2のいくつかの信号330が送信可能なように第2の通信パス320が確立される。信号の送受信時の電磁波の相互作用により、アンテナ100のゲインが低減する。少なくとも一つのメタマテリアル共振体126は、電磁波の相互作用を低減するように、誘電体基板102の上部側116の表面、かつ、少なくとも一つの放射エレメント114と同じ平面に配置されている。少なくとも一つのメタマテリアル共振体126の平面は少なくとも一つの放射エレメント114と同じ誘電体基板102の表面に配置されているため、アンテナ100はコンパクトな構造にしてある。メタマテリアル共振体126の共振周波数は、アンテナ100の動作周波数と同時に動作するようにデザイン可能である。
【0023】
少なくとも一つのメタマテリアル共振体126を少なくとも一つの放射エレメント114と同じ平面に配置することで、透磁率の値を高めることができるとともにアンテナ100のゲインを増大することができる。なお、透磁率は磁気エネルギーに正比例し、少なくとも一つの放射エレメント114の周辺に少なくとも一つのメタマテリアル共振体126を配置することで、磁気/電気の不均衡から生じるアンテナ100のエネルギーロスが最小化される。後述するように、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126の配置方法は、少なくとも一つの放射エレメント114の電界および磁界の設定に依存する。
【0024】
図5aおよび5bは、本開示のある実施形態に係るアンテナ100の平面図および側面図である。
図5aに示すように、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126が、少なくとも一つの放射エレメント114の周辺、かつ、放射エレメント114と同じ誘電体基板102の表面に配置されている。ある実施形態では、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126は、隣接するものどうしが垂直に積層された複数のメタマテリアル共振体を有しており、少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128を形成し得る。
【0025】
図6は、本開示のいくつかの代表的な実施形態を示す。ある実施形態では、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126が、誘電体基板102の第1の側104、第2の側106、第3の側108、および第4の側110の少なくとも一つに配置されている。別のある実施形態では、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126が、誘電体基板102の第3の側108および第4の側110の少なくとも一つに配置されている。第3の側108および第4の側110の少なくとも一つにある少なくとも一つのメタマテリアル共振体126に加えて、誘電体基板102の第1の側104および第2の側の少なくとも一つに少なくとも一つのメタマテリアル共振体126があってもよい。少なくとも一つのメタマテリアル共振体126が少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128であってもよい。少なくとも一つのメタマテリアル共振体126または少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128は、少なくとも一つの放射エレメント114と同じ平面を共有する、または、少なくとも一つの放射エレメント114と同じ平面に配置されている。
【0026】
図7は、本開示の別のいくつかの代表的な実施形態を示す。
図7に示したように、少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128が、誘電体基板102の第1の側104、第2の側106、第3の側108、および第4の側110の少なくとも一つに配置されている。少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128は、少なくとも一つの放射エレメント114の周辺に配置されている。少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128および少なくとも一つの放射エレメント114は、誘電体基板102の同じ表面に配置されている。少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128は、少なくとも一つの放射エレメント114と同じ平面を共有する、または、少なくとも一つの放射エレメント114と同じ平面に配置されている。
【0027】
誘電体基板102上に配置すべきメタマテリアル共振体126の量は、少なくとも一つの放射エレメント114の電界および磁界の特性によって決めることができる。少なくとも一つのメタマテリアル共振体126は、電界および磁界の特性に基づいて配置することができる。後述するように、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126はさまざまな方向に配向することでさまざまな電磁特性を示し、その方向によって少なくとも一つの放射エレメント114との電磁的な相互作用が影響を受け得る。
【0028】
図8は、本開示のある実施形態に係るメタマテリアル共振体126の代表的な実施形態またはメタマテリアル共振体積層128の部分を示す。少なくとも一つのメタマテリアル共振体126および/または少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128は、分割リング共振器(SRR)であり得る。
図8に示したように、メタマテリアル共振体126は、複数の有ギャップ側134を有する。少なくとも一つのメタマテリアル共振体126または少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128の共振周波数は、少なくとも一つの放射エレメント114の動作周波数と同時に動作するようにデザイン可能である。本開示のある実施形態では、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126および/または少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128の共振周波数の許容誤差は、アンテナ100の動作周波数の±0.5〜5%であり得る。
【0029】
分割リング共振器は、磁気共鳴を起こして透磁率の負の実部の直前に大きな正のピークを生じさせることができる。共振前に生じるこの高い正値は、磁気/電気の不均衡から生じるエネルギーロスを安定化しようとする。これは概して共振体の共振時に価値がある。
【0030】
図9は、本開示のある実施形態に係るさまざまな方向のいくつかの分割リング共振器(SRR)を示す。励起波(k)、電界(E)、および磁界(H)の方向により磁気共鳴の発生が左右される。
図9に示したように、分割リング共振器の4つの異なる方向は、励起波k、電界E、および磁界Hの方向によって分類される。
図9aおよび9bに示したように、外部磁界Hが構造平面に垂直なときにのみ電磁波によって電磁共鳴が励起される。
図9cの分割リング共振器では、磁界Hが構造平面に垂直でないため、磁界Hから何も励起されない。それゆえ、
図9cの方向は、アンテナ100のゲインを増大させるには不適当であろう。
図9dでは、磁界Eが分割リング共振器の有ギャップ側134に平行、かつ、励起波kの方向が分割リング共振器の平面に垂直であるため、同じ共振でも電気共振が生じる。したがって、共振ディップを得るための分割リング共振器の配向として3通りの可能な方法(
図9a、9b、および9c)がある。
【0031】
アンテナ100の放射および透磁率に有害な影響がおよぶことを避けるために、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126または少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128は、隣り合うほかのメタマテリアル共振体126またはメタマテリアル共振体積層128または少なくとも一つの放射エレメント114に接触すべきでない。一般に、互いに隣り合うメタマテリアル共振体126またはメタマテリアル共振体積層128は、少なくともおよそλ/200(λはアンテナ100の動作波長である)の空隙を有するべきである。また好ましくは、メタマテリアル共振体126またはメタマテリアル共振体積層128は、少なくとも一つの放射エレメント114からおよそλ/200離隔すべきである。
【0032】
図10は、本開示のある実施形態に係る少なくとも一つの放射エレメント114を示す。少なくとも一つの放射エレメント114は、導電性であり、銅(Cu)、金(Au)、またはインジウムスズ酸化物(ITO)から作ることができる。フラクタル幾何学の観点から、少なくとも一つの放射エレメント114は、デザインまたはモチーフの反復により得られるいくつかの自己相似の構造的特徴122を有する。デザインまたはモチーフは、回転、移動、および/または拡大縮小によって反復される。ある実施形態では、回転、移動、および拡大縮小を任意に組み合わせていくつかの自己相似の構造的特徴122を得ることができる。いくつかの自己相似の構造的特徴122は複数のフラクタルエレメント130として周知である。複数のフラクタルエレメント130は、三角形、四角形、または五角形の少なくとも一つの形状をとり得る。複数のフラクタルエレメント130は、次の反復N+1のx軸およびy軸の座標を有し、当該座標はxN+1=f(xN,yN)およびyN+1=g(xN,yN)で定義される。ただし、xN,yNは一つ前の繰り返しの座標であり、f(x,y)およびg(x,y)はフラクタルのモチーフおよび振る舞いを定義する関数である。コッホパターン、ブラックマン・コッホパターン、ロータスポッドパターン、シェルピンスキーパターン、亀甲パターン、および多角形パターンが、本開示の複数のフラクタルエレメント130に適用可能な自己相似パターンである。なお、フラクタルエレメント130の自己相似パターンを変形して所望の動作周波数または動作周波数帯域を得ることができる。
【0033】
本開示のある実施形態によると、複数のフラクタルエレメント130は、三角形、四角形、および五角形などのさまざまな形状の反復因数2または3で生成される。好ましくは、本開示のほとんどの実施形態では、二つの反復回数のみ、すなわち、1番目および2番目が採用される。フラクタル幾何学の分野において、反復因数および反復回数は、フラクタル生成の構成側および反復処理の実施数を表す。放射エレメント114の平均的な電気的長さの伸長により反復回数および反復因数が増加するにつれ、放射エレメント114の共振周波数は低下する。
【0034】
複数のフラクタルエレメント130を構成して送信および/または受信のダイポール共振パターンを得ることができる。あるいは、位相配列デザインのようなほかのアンテナデザインを実装することもできる。これらアンテナデザインは、ダイポールデザインとは別に、またはダイポールデザインと組み合わせて実装することができる。
【0035】
アンテナ100の周波数帯域を拡張するために、アンテナ100に導体状の構造を追加することができる。当該導体は導線または電気配線であり得る。
【0036】
図11は、本開示のある実施形態に係るいくつかのボイド132を有する放射エレメント114を示す。いくつかのボイド132は、放射エレメント114上に対称的に配置され得る。いくつかのボイド132は配列の概念に従って生成することができ、通常これによりアンテナ100の放射特性が向上する。生成されたいくつかのボイド132により、放射エレメント114は互いに隣接する2以上の放射エレメント114があるかのように振る舞う。
【0037】
本開示のある実施形態では、誘電体基板102は、正方形、長方形、または円形の任意の形状であり得る。誘電体基板102の誘電率は2〜40の範囲にあり得る。好ましくは、誘電体基板102の誘電率は2〜3の範囲にある。誘電体基板102の大きさはアプリケーションに応じて変化し得る。多くのさまざまなタイプの非導電性素材を誘電体基板102として用いることができる。当該素材は、シリコンウェーハー、硬質または軟質のプラスチック様素材、紙、エポキシ、ガラス、グラスファイバー、セラミック素材、および電気の流れを妨げ得るほかの素材であり得る。本開示の好ましい実施形態では、誘電体基板102は、織りグラスファイバー/PTFEの複合材料でできている。
【0038】
なお、少なくとも一つのフィードライン112および接地面層120は、Cu、Au、およびITOなどの任意の導電性素材であり得る。コネクタ124は、7/16DINコネクタ、BNCコネクタ、Cコネクタ、およびDezifixコネクタを含み得る。
【0039】
図12は、本開示の代表的な実施形態に係るアンテナ100の製造方法400を示すフロー図である。当該方法400に係るステップ402、404、406、408、および410は、コンピュータまたはプロセッサでプログラム命令列(例えば、ソフトウェア)を実行することで実施することができる。なお、ソフトウェアを用いずに別の方法でこれらステップを実施することも可能である。代表的な実施形態では、ソフトウェアは、CST Microwave studio(ダルムシュタット、ドイツ)であり得る。当該方法400はステップ402から開始することができ、ステップ402では所望の周波数で動作するようにアンテナ100のいくつかの仕様が作成される。このステップでは考慮すべきいくつかの要因がある。当該要因には、誘電体基板102の素材およびタイプ、少なくとも一つの放射エレメント114の素材、アンテナ100の動作周波数、および複数のフラクタルエレメント130として採用すべきいくつかの自己相似パターンが含まれる。ある実施形態では、少なくとも一つのフィードライン112の位置も決定される。
【0040】
ステップ402で少なくとも一つの放射エレメント114が所望の周波数で動作するようにデザインされた後、次のステップ404で、少なくとも一つの放射エレメントの形状が反復的に決定される。少なくとも一つの放射エレメント114の形状は、初めは、所望の周波数で動作するマイクロストリップアンテナに類似の四角形に設定される。続いて、周知のフラクタル手法が適用される。フラクタル手法で適用される形状は、略三角形、略四角形、および略五角形を含む。ステップ404の反復手法により、放射エレメント114のわずかな不均衡に起因して少なくとも一つの放射エレメント114の動作周波数が影響を受けかねない。これを修正するために、ステップ406で、少なくとも一つの放射エレメントの拡大縮小が行われ、所望の動作周波数で動作するように少なくとも一つの放射エレメント114が微調整される。
【0041】
これに続いて、ステップ408で、少なくとも一つの放射エレメント114の電界および磁界の方向および強度が決定され得る。本開示のある実施形態では、電界および磁界の方向および強度はソフトウェアでシミュレートされる。電界および磁界の方向および強度は、放射エレメント114の形状および幾何学的配置に依存する。本ステップ中に、リターンロス、VSWR帯域幅、およびゲインなどの少なくとも一つの放射エレメント114のさまざまなパラメータが決定され得る。ステップ408の結果がアンテナ100の要求を満たしていれば、続くステップ410で、少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置が決定される。
【0042】
ステップ408から得られた少なくとも一つの放射エレメント114のシミュレートされた電界および磁界から、ステップ410で、少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置が決定され得る。
【0043】
本開示のある実施形態では、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126を配置するためのいくつかの位置が、誘電体基板102の第1の側104、第2の側106、第3の側108、および第4の側110の少なくとも一つにある。本開示の別のある実施形態では、いくつかの位置が、誘電体基板102の第3の側108および第4の側110の少なくとも一つにある。少なくとも一つのメタマテリアル共振体126は、隣接するものどうしが垂直に配置された複数のメタマテリアル共振体を有し、少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128を形成し得る。
【0044】
図13aおよび13bは、それぞれ、本開示の一実施形態に係る少なくとも一つの放射エレメント114によって生成される電界および磁界のシミュレーション結果を示す。
図13aからわかるように、矢印で表した電界が、誘電体基板102の第1の側、第2の側、第3の側、および第4の側に存在する。
図13bに示したように、矢印で表した磁界が、フィードライン112の近傍、誘電体基板102の第2の側、第3の側、および第4の側に存在する。上述したように、磁気共鳴を起こして透磁率の正のピークを得るために分割リング共振器が配置可能な方向が3つある。これら方向は
図9a、9b、および9cに示した通りである。これら3つの方向は、電界E、磁界H、および励起波kで並べることができる。
図13aおよび13bに示したシミュレートされた電界および磁界に基づいて、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126を配置するためのいくつかの位置は、電界Eおよび磁界Hの方向に着目して決定することができる。
【0045】
好ましくは、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126を配置するためのいくつかの位置は、少なくとも一つの放射エレメント114の電界および磁界の強度が最大である位置に決定される。電界および磁界の強度は、シミュレートデータから観測することができる。しかし、磁気/電気の不均衡から生じるエネルギーロスを補償するベストの位置がいつも存在するわけではない。これは、少なくとも一つの放射エレメント114と少なくとも一つのメタマテリアル共振体126との間の電磁気結合に起因し得る。なお、電界および磁界の強度が最大の位置は、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126を配置するための位置を決定するための格好の開始点になり得る。本ステップでは、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126の方向もまた重要である。当該方向によって、少なくとも一つの放射エレメント114のリターンロス、VSWR帯域幅、およびゲインが影響を受け得るからである。リターンロス、VSWR帯域幅、およびゲイン特性に基づく少なくとも一つの放射エレメント114の応答に応じて、少なくとも一つのメタマテリアル共振体126は複数のメタマテリアル共振体を有することができる。ある実施形態では、複数のメタマテリアル共振体は、隣接するものどうしが垂直に配置され、少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128を形成する。ある実施形態では、複数のメタマテリアル共振体が同じ方向に向き得る。別のある実施形態では、複数のメタマテリアル共振体が複数の方向に向き得る。さらに別のある実施形態では、メタマテリアル共振体積層128における各メタマテリアル共振体が複数の方向に向き得る。
【0046】
ステップ410で少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置が決定されたなら、ステップ412で、少なくとも一つの放射エレメントが誘電体基板102の表面に配置される。ある実施形態では、このステージで少なくとも一つのフィードライン112も配置される。続いて、ステップ414で、少なくとも一つのメタマテリアル共振体が、少なくとも一つの放射エレメントと同じ平面および誘電体基板の同じ表面に配置される。
【0047】
代表的な方法によると、当該ステージにおいてリソグラフィー技術が実施される。周知のように、少なくとも一つの放射エレメント114の形状および少なくとも一つのメタマテリアル共振体126位置および方向がリソグラフィー技術を用いて誘電体基板102上にまずプリントされる。本開示のある実施形態では、誘電体基板102は導電性の被服表面を有しており、プリントによって不要な導電性表面がエッチングされる。すでに述べたように、配置すべき少なくとも一つのメタマテリアル共振体126は複数のメタマテリアル共振体を含むことがあり、ある実施形態では、複数のメタマテリアル共振体のそれぞれが隣接するものどうしが垂直に配置されて少なくとも一つのメタマテリアル共振体積層128を形成している。リソグラフィー技術を用いる代わりに、当然のことながら、本開示のさまざまな実施形態に係るアンテナ100はほかの手法によっても製造することができる。
【0048】
本開示のある実施形態では、所望の周波数で動作するようにアンテナのいくつかの仕様を作成するステップ402、放射エレメントの形状を反復的に決定するステップ404、所望の周波数で動作するように少なくとも一つの放射エレメントを拡大縮小するステップ406、電界および磁界の方向を決定するステップ408、および少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置を決定するステップ410の、少なくとも一つのステップが少なくとも1回実行される。ある実施形態では、各ステップの結果に応じて、すでに実行されたステップが繰り返され得る。例えば、所望の周波数で動作するように少なくとも一つの放射エレメントを拡大縮小するステップ406の後に、放射エレメントの形状を反復的に決定するステップ404が繰り返され得る。別のある実施形態では、これらステップのすべてが少なくとも1回実行される。さらに別のある実施形態では、所望の周波数で動作するように少なくとも一つの放射エレメントを拡大縮小するステップ406、電界および磁界の方向を決定するステップ408、および少なくとも一つのメタマテリアル共振体を配置するためのいくつかの位置を決定するステップ410が、それぞれ、少なくとも1回実行される。
【0049】
図12に示した方法400は、本開示の代表的な実施形態に従ったものに過ぎない。なお、上述の方法におけるステップの具体的な順序または階層は代表的な手法の一例である。デザインの好ましさの観点から、本開示の範囲から逸脱することなく当該方法におけるステップの具体的な順序または階層を再編成し得ることが理解できるであろう。添付の方法クレームは例示的なさまざまなステップの要素を表すが、当該具体的な順序または階層に限定されることを意図するものではない。例えば、所望の周波数で動作するように少なくとも一つの放射エレメントを拡大縮小するステップ406は、少なくとも一つの放射エレメントの電界および磁界の方向を決定するステップ408の後に実行可能である。
【0050】
上記に基づくと、本開示の範囲および精神から逸脱することなくアンテナの外形およびデザインをさまざまに変更し得ることが理解できるであろう。ここで述べた外形、方法、およびデザインは単に例示的な実施形態であって、そのような変形はクレームによって包含されている。
【0051】
上記のように、少なくとも一つのメタマテリアル共振体を有するアンテナおよび低ロス性能で動作する少なくとも一つのメタマテリアル共振体を有するアンテナの開発方法を開示した。多くの実施形態を開示したが、これら開示について本開示の範囲および精神から逸脱することなく多くの変更および/または修正がなされ得ることは明らかである。