(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663090
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータの曲げ振動制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 41/09 20060101AFI20150115BHJP
H01L 41/253 20130101ALI20150115BHJP
【FI】
H01L41/09
H01L41/253
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-523645(P2013-523645)
(86)(22)【出願日】2011年9月2日
(65)【公表番号】特表2013-541179(P2013-541179A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011065238
(87)【国際公開番号】WO2012028735
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2013年2月8日
(31)【優先権主張番号】102010036257.3
(32)【優先日】2010年9月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510263560
【氏名又は名称】エプコス アーゲー
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100160772
【弁理士】
【氏名又は名称】大串 賢
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルド ガブル
【審査官】
上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/104258(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009003270(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102005053331(DE,A1)
【文献】
米国特許第06953977(US,B2)
【文献】
米国特許第06336366(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0100176(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第00675365(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/09,41/253,
H02N 2/00,
F02M 51/00,
B06B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電アクチュエータの曲げ振動を制御する方法であって,
・圧電アクチュエータ(1)を縦振動(4)が励起される長手方向(3)で保持部(2)間に取り付け,
・縦振動(4)を励起させる為に設けられた圧電アクチュエータ(1)の取り付け状態における小信号スペクトル(10,11)を測定し,
・該小信号スペクトル(10,11)において発生する共振(12,13)に基づいて圧電アクチュエータ(1)内における横振動(5)の励起を検出し,
・望ましくない強さの横振動(5)が発生した場合に,圧電アクチュエータ(1)の取り付け状態を変更し,
・小信号スペクトル(10,11)の測定及び取り付けの変更を,小信号スペクトル(10,11)内に共振(12,13)が確認されるまで反復し,横振動(5)が全く励起されないように,又は所定の閾値以下の横振動(5)しか励起されないように制御する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において,
・測定及び取り付けの変更を,小信号スペクトル(10,11)内における共振(12,13)が,常に所定の最小周波数間隔内でしか発生されなくなるまで反復する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において,測定及び取り付けの変更を,小信号スペクトル(10,11)内における共振(12,13)が,常に所定の最小周波数以上しか発生されなくなるまで反復する方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の方法において,取り付けの変更の為に,保持部(2)に対する圧電アクチュエータ(1)の取り付け位置及び/又は取り付け角度を変更する方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の方法において,取り付けの変更の為に,保持部(2)が圧電アクチュエータ(1)に及ぼす機械的応力を変更する方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の方法において,小信号スペクトル(10,11)として,印加される交流電圧の周波数fに対する圧電アクチュエータ(1)のインピーダンス絶対値|z|を測定する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において,圧電アクチュエータ(1)の並列共振(12)及び直列共振(13)を決定する方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の方法において,小信号スペクトル(10,11)を電子制御回路により測定及び評価する方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の方法において,圧電アクチュエータ(1)を車両用
エンジンに組み込み,又は取り付ける方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,取り付け状態における圧電アクチュエータの曲げ振動を制御する方法及び/又は圧電アクチュエータの取り付け方法に関し,特に,圧電アクチュエータにおける曲げ振動の発生を可能な限り抑制しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
ピエゾアクタ又はピエゾアクチュエータとも称される圧電アクチュエータは,圧電材料で構成され,電圧を印加することにより圧電アクチュエータの寸法,例えば長さを変化させるための機械的駆動手段として使用されている。圧電アクチュエータは,典型的には圧電積層体として構成され,この積層体において,互いに異なる極性の圧電材料層が,金属電極と交互に配列されている。これらの電極は,その配置順で交互に2つの外部電極の内の一つと接続されている。
【0003】
外部電極に印加される交流電圧は,圧電積層体の長手方向,即ち,圧電積層体の層が互いに重ねられる方向に縦振動を生じさせる。圧電アクチュエータの縦振動は,燃料噴射装置等,種々の用途に使用される。この為,圧電積層体はその長手方向において,保持部又は支持部の間に取り付けられる。通常は一つ又は複数の共振周波数が発生し,この共振周波数においては縦振動が特に強く励起される。
【0004】
圧電アクチュエータは横振動も発生するが,これは望ましくない。横振動は,圧電アクチュエータに撓みを生じさせ,これにより圧電アクチュエータの機能を損ない,場合によっては圧電積層体のエッジ面に有害な損傷を生じるからである。典型的に,横振動の共振周波数は,縦振動の共振周波数よりも大幅に低い。例えば,30mm圧電アクチュエータにおいて,縦振動の共振周波数は典型的には約12kHzであるが,横振動は圧電アクチュエータの取り付け状態に応じて2kHz〜3kHzでも発生し,比較的低い周波数の信号によって励起される。
【0005】
圧電アクチュエータが通常は構造的対称性を有するため,圧電アクチュエータを保持部に対して対称的に取り付ける際には横振動を発生させないことが理想的である。しかしながら,実際には,圧電アクチュエータを取り付ける際の僅かな非対称性や,これにより生じる機械的応力が必ずしも除外されるとは限らない。更に,圧電アクチュエータには製造公差に基づく非対称性が存在する場合があり,これも横振動の発生を誘発する。
【0006】
取り付け又はアセンブリに際しては,保持部間における圧電アクチュエータの幾何学的配列を測定することにより,可能な限り対称的な取り付けを行っている。しかしながら,これにより圧電アクチュエータ自体における既存の非対称性を補償することはできない。更に,この取り付け方法では,曲げ振動に対する圧電アクチュエータの実際の傾きを評価することができない。その結果,圧電アクチュエータの動作中における曲げ振動の発生が,特に最初の起動時からより長時間が経過した場合に制御不能となり,これは,例えば車両用エンジンの為に組み込まれる圧電アクチュエータの場合に望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は,圧電アクチュエータの曲げ振動を制御して可能な限り抑制する為に,アクチュエータの取り付け時又は作動中に適用可能な制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は,請求項1の特徴を有する制御方法によって解決される。更に,本発明の好適な実施形態は従属請求項に記載したとおりである。
【0009】
圧電アクチュエータの曲げ振動を制御する為の本発明に係る制御方法は,縦振動を励起する為に設けられた圧電アクチュエータの取り付け状態における小信号スペクトルを測定し,その小信号スペクトル内で発生する共振から,圧電アクチュエータ内における横振動の励起を検出するものである。
【0010】
本発明に係る制御方法を圧電アクチュエータの取り付けに適用する場合,圧電アクチュエータは,交流電圧の印加によって縦振動を励起することのできる長手方向で,保持部間に取り付ける。保持部は,例えば圧電アクチュエータを機械的に結合するための装置の一部で構成され,当該部分には圧電アクチュエータの動作中に生じた運動が伝達される。
【0011】
取り付け状態における圧電アクチュエータの小信号スペクトルを所定の周波数範囲で測定し,その小信号スペクトル内で検出できる共振から,圧電アクチュエータにおける横振動の発生を検出する。望ましくない強さの横振動が検出された場合には,圧電アクチュエータの取り付け状態を調整等により変更する。この場合,好適には,主として圧電アクチュエータの横振動の傾きに影響を与えるパラメータを変更する。取り付け状態の測定及び変更を,小信号スペクトルにおける共振に応じて,横振動が実質的に発生しなくなるまで,又は発生した横振動又は曲げ振動が所定の閾値,特に所定の最大振幅を下回るまで,必要に応じて反復する。
【0012】
本発明によれば,小信号スペクトル内の振動共振が,常に最小周波数間隔内でのみ発生しているか否かを確認することにより,横振動を十分に抑制することができる。代替的又は追加的に,小信号スペクトル内における振動共振が,常に,横振動の実質的に発生しなくなる最小周波数以上でのみ発生しているか否かを確認することができる。
【0013】
横振動の発生と関連する可能性がある取り付けパラメータには,例えば,保持部間における圧電アクチュエータの位置関係,特に,圧電アクチュエータの長手方向と保持部の向きとの間の角度や,保持部が圧電アクチュエータに及ぼす機械的応力の強さ及び方向が含まれる。
【0014】
圧電アクチュエータの曲げ振動を制御する為の本発明に係る制御方法は,圧電アクチュエータがセンサとしても機能し得ることに基づいている。このような圧電デバイスは,電気信号を機械的動作に変換し,かつ,機械的動作を電気信号に変換することができるからである。小信号スペクトルとして,特に,圧電アクチュエータの周波数に対応するインピーダンスの絶対値を測定することができる。圧電アクチュエータのインピーダンススペクトルは,機械的な固有振動領域において,典型的には直列共振と,より高い周波数で発生する並列共振とを有している。
【0015】
直列共振とは,キャパシタンス及びインダクタンスで構成された直列回路の共振を意味している。この直列回路に交流電流を流すと,キャパシタンスとインダクタンスに,それぞれ相互に反対方向に90°の位相シフト電圧が発生する。共振周波数によれば,直列回路のインピーダンスが理論的にゼロとなり,実際には常に存在するオーム抵抗により極小値まで減少する。並列共振とは,キャパシタンス及びインダクタンスで構成された並列回路の共振を意味している。共振周波数によれば,並列回路のインピーダンスが理論的は無限大となり,実際には常に存在するオーム抵抗により極大値まで増加する。
【0016】
取り付け状態における圧電アクチュエータのインピーダンスを周波数の関数として測定すれば,取り付けられた圧電アクチュエータ及び保持部の全体における電気機械的な固有振動が識別可能である。機械的振動は,圧電アクチュエータによる電気的結合と同様に,この手法により直ちに検出することができる。機械的振動が配置固有の振動を有する場合,当該固有振動に特有の周波数範囲において,直列共振周波数と並列共振周波数とを有するインピーダンススペクトルが得られる。従って,小信号インピーダンスの測定から,取り付け状態における圧電アクチュエータの振動挙動,特に曲げ振動の発生を特定することができる。小信号スペクトルの測定及び評価は,電子ループを使用使用して行うことができる。小信号スペクトルに発生した共振に基づいて圧電アクチュエータの取り付け状態を変更することにより,必要に応じて最適化を達成することができ,曲げ振動がほとんど発生しなくなり,理想的には存在しなくなる。
【0017】
本発明に係る制御方法の利点は,圧電アクチュエータの振動挙動を直ちに検出するものであり,保持部間における圧電アクチュエータの位置決めに係る幾何学的な最適化のみを目的とする従来方法とは異なり,圧電アクチュエータ内における非対称性も考慮することによって曲げ振動を従来技術におけるよりも効果的に回避可能とすることである。
【0018】
以下,本発明に係る制御方法を図示の実施形態について更に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】圧電アクチュエータの取り付け状態を示す略線図である。
【
図2】本発明に係る方法を圧電アクチュエータの取り付けに適用する実施形態のフローチャートである。
【
図3】インピーダンススペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は,圧電アクチュエータ1を保持部2間に取り付けた配置を示す線図である。保持部2は,例えば装置の一部で構成することができる。圧電アクチュエータ1は,長手方向3に配置されており,長手方向においては縦振動4を励起することができ,その縦振動は圧電アクチュエータ1の本来の用途の為に必要なものである。横振動5は,縦振動4の方向と交差して発生するものであるが,圧電アクチュエータ1の望ましくない,又は有害な撓みを生じさせることがある。
【0021】
横振動を可能な限り抑制する為に,特に圧電アクチュエータの取り付けに際しては,本発明に係る制御方法を,
図2のフローチャートに示す手順で適用する。第1ステップ6において,先ず圧電アクチュエータの取り付けを行う。第2ステップ7では,横振動の発生し得る領域において,取り付けられた圧電アクチュエータの小信号スペクトルの測定及び評価を行う。第2ステップ7に引き続き,又は第2ステップと同時に行われる第3ステップ8では,横振動を抑制する為に,インピーダンススペクトルが目標値に達するまで圧電アクチュエータの取り付け変更を行い,特に,取り付けパラメータの調整又は再調整を行う。第2ステップ7及び第3ステップ8の反復9により最適化を行うことができ,最終的に許容できる最小曲げ振動が達成され,理想的には曲げ振動が完全に抑制される。
【0022】
図3は,インピーダンススペクトルのグラフを示している。このグラフは,Hz(ヘルツ)で表される周波数fに対する,Ω(オーム)で表されるインピーダンスの絶対値|z|を示す。最適化前に測定したインピーダンス曲線10は,複数の並列共振12及び直列共振13を示している。同図から明らかな通り,圧電アクチュエータの取り付けの最適化後に得られたインピーダンス曲線11では,共振がより大きな周波数間隔で発生しており,インピーダンス曲線における大きな極大値および極小値はもっぱら高い周波数帯域で発生している。そのため,最適化によって曲げ振動の発生が大幅に抑制されているものと認められる。
【0023】
本発明に係る制御方法は,発生する横振動を所定の手法で検出することに基づく特別な利点を有している。即ち,圧電アクチュエータの動作中の曲げ振動の大きさを直ちに制御し,具体的には,取り付け状態の圧電アクチュエータの小信号スペクトル,特にインピーダンススペクトルの測定中又は測定直後に制御して,取り付けの変更により曲げ振動を改善することができる。望ましい状態から逸脱した場合には,関係する取り付けパラメータを,曲げ振動の十分な最小化が測定されるまで変更することができ,又は圧電アクチュエータをユニットとして完全に交換することができる。他の利点は,本発明に係る制御方法が,電子制御ループの使用により実行できること,例えば,電子保守回路若しくは電子診断回路,又は自動組立てラインのような構成において実行できることにある。これにより,高速で信頼性が高く,費用効果に優れた応用が可能となる。本発明に係る制御方法を適用する圧電アクチュエータは,例えば,車両用エンジンに組み込み,又は取り付けることができる。これにより本発明に係る制御方法を,例えば車両のインジェクタにおいてモニタリング目的で使用して,信頼性の高い動作にとって望ましくない,有害な曲げ振動を早期に検出することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 圧電アクチュエータ
2 保持部
3 長手方向
4 縦振動
5 横振動
6 第1ステップ
7 第2ステップ
8 第3ステップ
9 ステップの反復
10 最適化前のインピーダンス曲線
11 最適化後のインピーダンス曲線
12 並列共振
13 直列共振