特許第5663091号(P5663091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663091
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】医薬品送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20150115BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   A61M5/24 530
   A61M5/20 510
   A61M5/20 570
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-527037(P2013-527037)
(86)(22)【出願日】2011年8月23日
(65)【公表番号】特表2013-536726(P2013-536726A)
(43)【公表日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】SE2011051012
(87)【国際公開番号】WO2012030277
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2013年4月26日
(31)【優先権主張番号】61/380,291
(32)【優先日】2010年9月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1050913-1
(32)【優先日】2010年9月6日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】61/378,603
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1050897-6
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】503211493
【氏名又は名称】エス・ホー・エル・グループ・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】SHL GROUP AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルムクビスト,アンデシュ
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,セバスチャン
【審査官】 倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−509659(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/147026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
A61M 5/20
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品送達装置であって、
ハウジングを含み、ハウジングは、互いに対して可動に配置され搭載された近位ハウジング部(12)および遠位ハウジング部(10)を含み、前記医薬品送達装置はさらに、
前記遠位ハウジング部に収容され、接続手段を含む駆動力機構と、
前記近位ハウジング部内に配置された、医薬品が充填された容器(22)と、
前記駆動力機構に動作可能に接続され、前記駆動力機構を負荷状態で保持するための保持部材(50)とを含み、前記保持部材は係合手段を含み、前記医薬品送達装置はさらに、
駆動力機構をその負荷状態から解除するために前記保持部材と相互作用するよう配置された作動部材(56)を含み、前記作動部材は接続手段と被係合手段を含み、
前記医薬品送達装置は、
前記保持部材(50)は、前記ハウジング部が互いに向かって動かされると、作動部材(56)の接続手段を駆動力機構の接続手段に係合するために、保持部材(50)の係合手段と作動部材(56)の係合手段とがともに相互作用するように、近位ハウジング部(12)によって、保持部材が作動部材から係合解除される係合解除位置から、保持部材が作動部材に係合される係合位置へと動かされるよう配置されていることを特徴とし、
保持部材(50)の係合手段は、遠位方向に延在する舌状部であり、作動部材(56)の被係合手段は、近位方向に延在する可撓性舌状部であり、
作動部材(56)の接続手段は、作動部材の近位方向に延在する可撓性舌状部上の径方向内側に延在する突起であり、駆動力機構の被接続手段は、駆動部材(40)の遠位外面上の窪みであり、前記窪みは、前記径方向内側に延在する突起を受けるよう構成されている、医薬品送達装置。
【請求項2】
近位ハウジング部(12)は協働手段(60)を含み、保持部材(50)は協働手段(62)を含み、それらは、保持部材を係合解除位置から係合位置へと動かすためにともに相互作用する、請求項1に記載の医薬品送達装置。
【請求項3】
作動部材(56)は、遠位ハウジング部(10)から突出する可触部を含み、
前記作動部材は、保持部材(50)の係合解除位置における作動部材(56)が、前記駆動力機構に作用することなく、遠位ハウジング部に対して動かされ得るように、前記遠位ハウジング部に弾性的に配置されている、請求項1または2に記載の医薬品送達装置。
【請求項4】
駆動力機構は、プランジャロッド(32)と、駆動力ばね(34)と、駆動部材(40)とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬品送達装置。
【請求項5】
駆動部材(40)は解除可能手段(44)を含み、プランジャロッド(32)は解除可能手段(42)を含み、それらは、プランジャロッドを駆動部材に解除可能に係合するためにともに相互作用する、請求項4に記載の医薬品送達装置。
【請求項6】
駆動部材(40)の解除可能手段(44)は、内側に延在する棚部(46)が設けられた、径方向に屈曲するアームであり、プランジャロッド(32)の解除可能手段(42)は、その円周方向外面上の溝であり、
内側に延在する棚部(46)は前記溝に嵌まり、
保持部材(50)は、前記保持部材が係合解除位置にある場合、径方向に屈曲するアームを完全に包囲して配置されている、請求項5に記載の医薬品送達装置。
【請求項7】
近位ハウジング部(12)の協働手段(60)は、近位ハウジング部(12)の遠位端環状面であり、保持部材(50)の協働手段(62)は、保持部材の外周上の環状棚部である、請求項2〜6のいずれかに記載の医薬品送達装置。
【請求項8】
前記保持部材は、前記近位ハウジング部(12)によって、係合解除位置から、保持部材が径方向に屈曲するアーム(44)を部分的に包囲し、作動部材に係合される係合位置へと動かされる、請求項5〜6のいずれかに記載の医薬品送達装置。
【請求項9】
前記容器(22)はマルチチャンバ医薬品容器であり、それにより、マルチチャンバは、前記ハウジング部を互いに向かって動かすことによって混合可能である、請求項1〜のいずれかに記載の医薬品送達装置。
【請求項10】
保持部材の係合位置は、マルチチャンバが混合されるマルチチャンバの位置に対応している、請求項に記載の医薬品送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医薬品を安全かつ信頼できる方法で投与、分配、または送達するための医薬品送達装置に関する。より特定的には、それは、注射装置であって、前記装置に配置された針を手動で穿通し、マルチチャンバ容器から薬物混合物を自動的に注射するための注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
長期間保存可能であり、また、液体状態のすぐに使える医薬品を収容する容器、たとえばカートリッジ、シリンジ、アンプル、キャニスタなどに充填された、さまざまな種類の医薬品がある。しかしながら、医薬剤(たとえば、凍結乾燥された、粉末状の、または濃縮された液体)および希釈剤(たとえば、水、ブドウ糖液、または食塩水)という2つの物質の混合物である他の種類の医薬品もあり、これらの種類の医薬品を予め混合して長期間保存することはできない。なぜなら、この医薬剤は不安定で劣化するおそれがあり、その効果を急速に失うためである。このため、ユーザ、たとえば患者自身、医者、看護師、病院職員、または訓練された人は、ある投与量の医薬品を患者に送達する前の限られた期間内で混合を行なう必要がある。また、医薬剤の中には、混合中に著しい化学変化に遭遇しがちなものもある。そのような敏感な医薬剤は特定の処理を必要とし、そのため、前記医薬剤を希釈剤と混合する際、過度の混合力が前記医薬剤を劣化させるであろう。
【0003】
混合を容易にするために、少なくとも2つのチャンバを含み、マルチチャンバ容器として公知である多数の混合用容器が開発されてきた。これらのマルチチャンバ容器は、医薬剤を収容する第1のチャンバと、希釈剤を収容する少なくとも第2のチャンバとを含む。これらのチャンバは、医薬剤が劣化しないよう、ストッパで密封されている。投与直前に医薬剤を混合しようとする際、通常、容器の遠位ストッパを、次に仕切りストッパを若干押すことにより、チャンバ間で方向変更通路が開放される。これらの通路により、医薬剤と希釈剤との混合が可能になり、医薬品はすぐに送達できる状態になる。
【0004】
上述の要件は、普通の皮下注射器といった単純な医薬品送達装置によって達成可能であるが、手順はもちろん、特にこれらの装置の取扱いに慣れていないユーザにとっては、かなり厄介なものである。患者自身が予め定められた投与量の医薬品を簡単で安全でかつ信頼できる方法で投与することを容易にするために、また、病院職員が同様に容易になった方法で医薬品を投与することを容易にするために、多くの自動および反自動装置が、送達前混合を得るために、これらのマルチチャンバ解決策と組合されて開発されてきた。
【0005】
混合および注射の双方がばねおよび他の手段としての機械的手段によって自動的に行なわれる、二重チャンバ容器が配置された自己注射装置が、US4,755,169に開示されている。同様の解決策がUS6,793,646に開示されており、二重チャンバカートリッジの混合は、装置の起動とともにばねによって自動的に行なわれ、注射は、力をプランジャロッドへと前方に手動で加えることによって行なわれる。これらの装置の欠点は、医薬剤が受ける混合力が当初、フックの法則により強過ぎることである。このため、医薬剤が劣化するおそれがある。
【0006】
別の解決策がWO2004004809に開示されており、混合および注射の双方が電子制御手段によって自動的に行なわれる。この装置の欠点は、電子機器がバッテリに依存しており、ノイズ、湿気、水などに非常に敏感で、機能不良につながり得るということである。また、これらの装置の製造は、機械的装置の製造よりも費用がかかる。
【0007】
US6,319,225では、二重チャンバアンプルの混合が手動で行なわれる。この装置は平面上に垂直になるようセットされ、次に、混合が得られるようにアンプル内の作用を目視観察しつつ、その近位ケースに対して下向きに押すことにより、そのプランジャロッドがアンプルのストッパを押す相対的に上向きの動きが生じる。US6,319,225では、医薬剤を希釈剤と混合するための最適なプロセスは、目視観察によって監視されるであろう適切な遅さで希釈剤流の手動制御を行なうことによるということが開示されているが、この装置の欠点は、ユーザがストレスを受けて装置をできるだけ早く使用したい場合に、医薬剤が受ける混合力が強くなり得るということである。このため、医薬剤が劣化するおそれがある。
【0008】
さらに、ある程度の自動機能と緊急状況での即時アクセス性とを有する注射器装置の取扱いおよび安全性の局面は、この種の装置を開発する際に多くの注目を集める事項である。
【0009】
手動混合と自動注射とを達成するために使用される自動注射器を取扱う際の重要な安全性の一局面は、手動混合が完了する前に、プランジャロッドを駆動するために配置された注射手段、たとえば圧縮ばねをロックすることである。
【0010】
そのような装置が、自己注射装置に二重チャンバ本体が配置されたUS6,893,420に開示されている。混合はねじを締める動作によって手動で行なわれ、装置は、混合が完全に終了する前に自動穿通および注射手段が解除されないようにする、ラッチ手段をロックするためのロック手段を含む。しかしながら、この解決策はかなりかさ高く、また多くの構成要素が協働しておよび順々に、1つが別のものをトリガするよう作用することに依存しており、それは、機能不良、投与量の精度不良、または装置が複雑化して使いにくくなるということにつながる場合がある。この装置は、混合終了後に装置からロック手段を自発的に取外さなければならないという欠点を抱えている。これは、ロック手段を取外す代わりに押そうとしがちなユーザには直感で理解できない工程である。別の欠点は投与量の精度である。なぜなら、穿通によりストッパが押され始め、穿通シーケンス全体を通して医薬品が放出されるため、意図された穿通深さで所要の投与量を注射する代わりに、いわゆる湿潤注射、および穿通シーケンス全体を通した医薬品の送達につながるためである。
【0011】
別のそのような装置が、マルチチャンバ容器内の成分を混合するために注射装置に対して手動で動かすことができる、マルチチャンバ容器を内部に有する容器ホルダを有する注射装置に関するWO2007/115424A1に開示されている。この装置はさらに、注射装置の一部に当たり得るばねと、容器ホルダを注射装置内へと動かす間にばねに張力がかかるように、容器ホルダをばねに結合するための結合要素とを含む。この装置は起動ノブおよびプッシュボタンも含み、起動ノブは、プッシュボタンをハウジングから強制突出させ、それにより装置をすぐに注射送達できる状態に設定するために、回転されなければならない。しかしながら、この解決策は、混合終了後にプッシュボタンを解除するために起動ノブを自発的に操作しなければならないという欠点を抱えている。これは、ノブを回転させる代わりにプッシュボタンまたは起動手段がどこに位置するかを見付けようとしがちなユーザには直感で理解できない工程である。
【0012】
さらに、本願の出願人の先行特許出願であるWO2009/147026A1に開示された別の装置は、自動注射がいつ開始し、いつ終了するかをユーザに示していないという問題を抱えている。
【0013】
US6,893,420、WO2007/115424A、およびWO2009/14
7026A1に記載の装置は、良好に機能し、ある程度の安全性を示すことが判明しているが、そのような装置の改良に対する要望は常に存在し、それらの中には、製造および組立を簡略化し、コストを下げるための機構の設計があり、しかしながら同時に、装置の機能および安全性の信頼性を維持またはさらには改良する、改良された特徴を有することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の簡単な説明
この発明の目的は、装置の偶発的な早期発射のリスクを妨げ、または最小限に抑える、医薬品送達を安全かつ信頼できる方法で取扱うことが可能な改良された医薬品送達装置を提供することである。
【0015】
この目的は、独立特許請求項に記載の医薬品送達装置によって、この発明の主な局面に従って得られる。この発明の技術的および/または機能的特徴の好ましい詳細は、従属特許請求項の主題を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の主な局面によれば、それは、医薬品送達装置であって、ハウジングを含み、ハウジングは、互いに対して可動に配置され搭載された近位ハウジング部および遠位ハウジング部を含み、前記医薬品送達装置はさらに、前記遠位ハウジング部に収容され、接続手段を含む駆動力機構と、前記近位ハウジング部内に配置された、医薬品が充填された容器と、前記駆動力機構に動作可能に接続され、前記駆動力機構を負荷状態で保持するための保持部材とを含み、前記保持部材は係合手段を含み、前記医薬品送達装置はさらに、駆動力機構をその負荷状態から解除するために前記保持部材と相互作用するよう配置された作動部材(56)を含み、前記作動部材は接続手段と被係合手段を含み、前記保持部材は、前記ハウジング部が互いに向かって動かされると、作動部材の接続手段を駆動力機構の接続手段に係合するために、保持部材の係合手段と作動部材の係合手段とがともに相互作用するように、近位ハウジング部によって、保持部材が作動部材から係合解除される係合解除位置から、保持部材が作動部材に係合される係合位置へと動かされるよう配置されている、医薬品送達装置によって特徴付けられている。
【0017】
この発明の別の局面によれば、近位ハウジング部は協働手段を含み、保持部材は協働手段を含み、それらは、保持部材を係合解除位置から係合位置へと動かすためにともに相互作用する。
【0018】
この発明のさらなる局面によれば、作動部材は、遠位ハウジング部から突出する可触部を含み、前記作動部材は、保持部材の係合解除位置における作動部材が、前記駆動力機構に作用することなく、遠位ハウジング部に対して動かされ得るように、前記遠位ハウジング部に弾性的に配置されている。
【0019】
この発明の別のさらなる局面によれば、駆動力機構は、プランジャロッドと、駆動力ばねと、駆動部材とを含む。
【0020】
この発明の別の局面によれば、駆動部材は解除可能手段を含み、プランジャロッドは解除可能手段を含み、それらは、プランジャロッドを駆動部材に解除可能に係合するためにともに相互作用する。
【0021】
この発明のさらに別の局面によれば、駆動部材の解除可能手段は、内側に延在する棚部が設けられた、径方向に屈曲するアームであり、プランジャロッドの解除可能手段は、
その円周方向面上の溝であり、内側に延在する棚部は前記溝に嵌まり、保持部材は、前記保持部材が係合解除位置にある場合、径方向に屈曲するアームを完全に包囲して配置されている。
【0022】
この発明のさらなる局面によれば、近位ハウジング部の協働手段は、近位ハウジング部の遠位端環状面であり、保持部材の協働手段は、保持部材の外周上の環状棚部である。
【0023】
この発明の別のさらなる局面によれば、保持部材の係合手段は、遠位方向に延在する舌状部であり、作動部材の係合手段は、近位方向に延在する可撓性舌状部である。
【0024】
この発明の別の局面によれば、作動部材の接続手段は、作動部材の近位方向に延在する可撓性舌状部上の径方向内側に延在する突起であり、駆動力機構の接続手段は、駆動部材の遠位外面上の窪みであり、前記窪みは、前記径方向内側に延在する突起を受けるよう構成されている。
【0025】
この発明のさらに別の局面によれば、保持部材は、前記近位ハウジング部によって、係合解除位置から、保持部材が径方向に屈曲するアームを部分的に包囲し、作動部材に係合される係合位置へと動かされる。
【0026】
この発明のさらなる局面によれば、容器はマルチチャンバ医薬品容器であり、それにより、マルチチャンバは、前記ハウジング部を互いに対して動かすことによって混合可能である。
【0027】
この発明の別のさらなる局面によれば、保持部材の係合位置は、マルチチャンバが混合されるマルチチャンバの位置に対応している。
【0028】
この発明に従った医薬品送達装置には多くの利点がある。2つのハウジング部が互いに対して初期位置にある場合、作動部材および保持部材が互いから係合解除されているという事実は、装置が偶発的に起動されることはあり得ないこと、すなわち、装置を起動するにはユーザによる自発的作用が必要であることを確実にする。この起動は、ハウジング部を互いに対して、より好ましくは、装置の長手方向軸に沿って互いに向かって動かすことによって行なわれる。この発明の一局面によれば、この起動はハウジング部を互いに対して回転させることによって行なわれ、それは直感的動作である。好ましくは、ハウジング部は互いに螺着され、それにより、一方のハウジング部が他方の内部へと動かされる。
【0029】
ハウジング部を動かす間、作動部材は依然として保持部材から切り離され、それにより駆動力機構から係合解除されており、このため、起動を行なうことはできない。作動部材を駆動力機構に、より好ましくは駆動部材に係合するために、保持部材が作動部材と動作可能に相互作用するように、2つのハウジング部が互いに対して完全に動かされて初めて、医薬品容器から投与量の送達を行なうことが可能になる。その点で、医薬品容器は好ましくはマルチチャンバ容器であり、それにより、起動、すなわちハウジング部を動かすことにより、マルチチャンバ容器の遠位ストッパがプランジャロッドの近位端に押付けられ、容器内の成分の混合が行なわれる。
【0030】
全体として、マルチチャンバ医薬品容器も取扱うことができる、単純で信頼できる装置が得られる。
【0031】
図面の簡単な説明
以下のこの発明の詳細な説明では、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】初期位置にあるこの発明の一実施例の側面図である。
図2図1の装置の断面側面図である。
図3図2の区域IIIからの詳細図である。
図4】ある機能的位置における図1の装置の断面図である。
図5】ある機能的位置における図1の装置の断面図である。
図6】ある機能的位置における図1の装置の断面図である。
図7】ある機能的位置における図1の装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な説明
本願では、「遠位部/端」という用語を使用する場合、これは、患者の医薬品送達部位から最も遠くに位置する、送達装置の部分/端、またはその部材の部分/端を指す。これに応じて、「近位部/端」という用語を使用する場合、これは、患者の医薬品送達部位の最も近くに位置する、送達装置の部分/端、またはその部材の部分/端を指す。
【0034】
この発明は、医薬品送達装置であって、ハウジング、より好ましくは装置の長手方向軸に沿って延在する概して細長いハウジングを含み、ハウジングは、装置の長手方向軸に沿って互いに対して可動に配置され搭載された近位ハウジング部12および遠位ハウジング部10を含み、前記医薬品送達装置はさらに、前記遠位ハウジング部に収容され、遠位ハウジング部に対して摺動可能に配置された駆動力機構と、前記近位ハウジング部内に配置された、医薬品が充填された容器22と、前記駆動力機構を負荷状態で保持するための保持部材50とを含み、前記保持部材は、前記ハウジング部が装置の長手方向軸に沿って互いに向かって動かされると、近位ハウジング部によって、遠位ハウジング部に対して、装置の遠位端に向かって予め定められた距離だけ、軸方向に動かされるよう配置されており、前記医薬品送達装置はさらに、駆動力機構をその負荷状態から解除するために前記保持部材と相互作用するよう配置された作動部材56を含み、前記保持部材は、前記ハウジング部を互いに対して動かすことによって、保持部材が作動部材から係合解除される係合解除位置から、保持部材が作動部材に係合される係合位置へと動かされるよう配置されている、医薬品送達装置に関する。
【0035】
この発明では、近位ハウジング部12は協働手段60を含み、保持部材50は協働手段62を含み、それらは、保持部材を遠位ハウジング部に対して装置の遠位端に向かって予め定められた距離だけ、係合解除位置から係合位置へと動かすためにともに相互作用する。作動部材56は接続手段(図示せず)を含み、駆動力機構は接続手段(図示せず)を含む。また、保持部材50は係合手段(図示せず)を含み、作動部材56は係合手段(図示せず)を含み、保持部材は、前記ハウジング部が互いに向かって動かされると、作動部材56の接続手段を駆動力機構の接続手段に係合するために、保持部材50の係合手段と作動部材56の係合手段とがともに相互作用するように、近位ハウジング部12によって、保持部材が作動部材から係合解除される係合解除位置から、保持部材が作動部材に係合される係合位置へと動かされるようになっている。
【0036】
この発明では、作動部材56は、遠位ハウジング部から突出する可触部を含み、前記作動部材は、保持部材50の係合解除位置における作動部材56が、前記駆動力機構に作用することなく、遠位ハウジング部に対して動かされ得るように、前記遠位ハウジング部10に弾性的に配置されている。
【0037】
この発明では、容器22は、たとえばマルチチャンバ医薬品容器であり、マルチチャンバは、前記ハウジング部を装置の長手方向軸に沿って互いに向かって動かすことによって混合可能である。また、保持部材の係合位置は、マルチチャンバが混合されるマルチチャ
ンバの位置に対応している。
【0038】
図1〜7は、この発明の例示的な一実施例を示す。
例示的な実施例(図1)におけるハウジングは、遠位ハウジング部10と近位ハウジング部12とを含み、前記近位ハウジング部は、マルチチャンバ医薬品容器としての容器22を収容するよう配置されており、それにより、マルチチャンバ医薬品容器は、前記ハウジング部を装置の長手方向軸に沿って互いに向かって動かすことによって、好ましくは前記ハウジング部をねじ込むことによって混合可能である。近位ハウジング部12の外面は、遠位ハウジング部10の内面上の対応するねじ山16と協働するよう配置されたねじ山14を含む。近位ハウジング部の近位端にはさらにネック部18が配置され、ネック部18には、医薬品送達部材(図示せず)を取付けるための取付手段が配置されており、医薬品送達部材は好ましくは注射針である。しかしながら、マウスピースまたはノーズピース、ノズル、噴霧ユニットなどの他の種類の医薬品送達部材を採用してもよいことが理解されるべきである。近位ハウジング部12にはまた、長手方向に延在する羽根といった回転部材20が配置されており、それは、遠位ハウジング部に対する近位ハウジング部の手動回転を容易にする。
【0039】
この例示的な実施例では、マルチチャンバ医薬品容器22は、たとえば、2つの区画24を有して設計された二重チャンバ容器であり、一方の区画は好ましくは、粉末状の医薬品を収容し、他方の区画は好ましくは、希釈剤を収容する(図2)。これら2つの区画は、弾性の可動ストッパ28によって分離されており、このストッパは、動かされると、医薬品を希釈剤と混合するために区画間の通路を開放する。遠位に配置された第2のストッパ30が、医薬品容器の遠位端を閉鎖している。
【0040】
例示的な実施例における駆動力機構は、駆動力ばね34と、細長いプランジャロッド32と、駆動部材40とを含む。駆動部材40は、概して管状の形状を有しており、プランジャロッド上に同軸状に配置され、前記プランジャロッドを部分的に包囲している。細長いプランジャロッド32の近位端は、遠位ストッパ30と接触している。プランジャロッド32の内部には、駆動力ばね34が、プランジャロッド32の近位端壁36と駆動部材40の遠位端壁38との間に配置されている(図2)。駆動部材40は解除可能手段44を含み、プランジャロッド32は解除可能手段42を含み、それらは、プランジャロッドを駆動部材に解除可能に係合するためにともに相互作用する。
【0041】
例示的な実施例では、駆動部材40の遠位管状部の外面は環状棚部を含み、それは、駆動部材の遠位管状部の一部が、遠位ハウジング部の内面上の円周方向棚部によって形成された開口を通過すると、遠位ハウジング部の内面上の円周方向棚部に当接するよう配置されている。駆動部材40の解除可能手段44は、内側に延在する棚部46が設けられた、径方向に屈曲するアームであり、プランジャロッド32の解除可能手段42は、その円周方向外面上の溝であり、内側に延在する棚部46は前記溝に嵌まる。好ましくは、前記長手方向に延在しかつ径方向に屈曲するアームは、径方向外側に向けられた力をかけるように構成されている。各アーム44にはさらに、外側に向けられた棚部48が配置されている。
【0042】
例示的な実施例の保持部材50は、概して管状の形状を有しており、駆動部材40上に同軸状に配置されている。保持部材は、保持部材が径方向に屈曲するアームを完全に包囲している場合、すなわち、アーム44の棚部48が保持部材50の内面によって完全に包囲されている場合、係合解除位置にある。保持部材50は、遠位ハウジング部に対して軸方向に可動であり、好ましくは、前記ハウジング部が互いに向かって動かされると、近位ハウジング部によって、遠位ハウジング部に対して、装置の遠位端に向かって予め定められた距離だけ、軸方向に動かされるよう配置されている。言い換えれば、保持部材50は
、近位ハウジング部によって、遠位ハウジング部に対して、装置の遠位端に向かって予め定められた距離だけ、係合解除位置から、保持部材が径方向に屈曲するアームを部分的に包囲する、すなわち、アーム44の棚部48が保持部材50の内面によって部分的に包囲される係合位置へと、摺動可能に動かされる。駆動部材40にはさらに、外側に延在する隆起または突起54がその外周面上に配置されており、保持部材が係合解除位置にある場合に駆動部材40に対して保持部材50を所定の位置に保持し、駆動部材40に対して保持部材50が摺動しないようにする。
【0043】
駆動力ばね34が前記プランジャロッド内で予め張力をかけられている場合、駆動部材40がプランジャロッド32に係合されている場合、および保持部材50が係合解除位置または係合位置のいずれかにある場合、駆動力機構は負荷状態にある。
【0044】
作動部材56は、例示的な実施例では好ましくはプッシュボタンとしてのスリーブの形状をしており、遠位ハウジング部10から突出する可触部を含む。好ましくは、作動部材の遠位部は、遠位ハウジング部の遠位端から突出する。作動部材は好ましくは、装置の長手方向軸に沿った長手方向において、遠位ハウジング部に対して可動である。作動部材56には、装置の長手方向軸に沿って延在する内部スリーブが設けられており、そこに駆動部材40の遠位管状部の一部が嵌まる。好ましくは、駆動部材40の遠位端壁と作動部材56の横断壁との間には、ある距離がある。作動部材56は、作動部材が付勢されるたびにその後それが後戻りするように、遠位ハウジング部に弾性的に接続される。このため、作動部材56の横断壁と、遠位ハウジング部の内面上の円周方向棚部との間に、弾性部材58が配置される。したがって、作動部材は、遠位ハウジング部に対して、作動部材が遠位ハウジング部から部分的に突出する非動作位置から、作動部材が遠位ハウジング内に閉じ込められる動作位置へと付勢可能であり、付勢後いつも後戻りする。
【0045】
例示的な実施例では、近位ハウジング部12の協働手段60は、近位ハウジング部の遠位端環状面であり、保持部材の協働手段62は、保持部材の外周上の環状棚部である。
【0046】
例示的な実施例では、保持部材50の係合手段は、遠位方向に延在する舌状部(図示せず)、すなわち、装置の長手方向軸に沿って装置の遠位端に向かって延在する舌状部である。作動部材56の係合手段は、近位方向に延在する可撓性舌状部(図示せず)、すなわち、装置の長手方向軸に沿って装置の近位端に向かって延在する舌状部である。好ましくは、前記近位方向に延在する可撓性舌状部は、作動部材56の内部スリーブから駆動部材の遠位管状部上へと延在している。
【0047】
例示的な実施例では、作動部材56の接続手段は、作動部材56の近位方向に延在する可撓性舌状部上の径方向内側に延在する突起(図示せず)であり、駆動力機構の接続手段は、駆動部材40の遠位外面上の窪み(図示せず)であり、前記窪みは、前記径方向内側に延在する突起を受けるよう構成されている。
【0048】
例示的な実施例の装置は、以下のように機能するよう意図されている。装置がユーザに届けられると、近位ハウジング部12が遠位ハウジング部10に対して伸長される(図1)。まず、ユーザは、近位ハウジング部12の近位ネック部18に医薬品送達部材(図示せず)を取付ける。次の工程は、マルチチャンバ医薬品容器22内の医薬品を混合することである。ユーザは次に、遠位ハウジング部10に対して近位ハウジング部12を回転させ、それにより、近位ハウジング部は遠位ハウジング部内へと動かされ、または引っ込められる。2つのハウジング部のこの相対運動により、プランジャロッド32は、その近位端が遠位ストッパ30を近位方向に押すように、医薬品容器22に対して動くようになる。これは次に、2つの区画間で通路が開放されて混合が行なわれるように、弾性の可動近位ストッパ28を動かす(図4)。
【0049】
容器内で成分を混合する前は、作動部材56は非動作位置にあり、それは駆動力機構から切り離されている。また、保持部材50は係合解除位置にある。好ましくは、作動部材56は駆動部材40から切り離されている。より好ましくは、作動部材56の近位方向に延在する可撓性舌状部上の径方向内側に延在する突起は、駆動部材40の遠位外面上の窪みから切り離されている。例示的な実施例における保持部材の係合解除位置は、保持部材50が作動部材56から切り離されている場合の、および、アーム44の内側に向けられた棚部46がプランジャロッド32の溝42に保持され、それにより駆動力ばね34がプランジャロッド32内で予め張力をかけられて保持されるように、すなわち駆動力機構が負荷状態にあるように、保持部材50が駆動部材40の径方向に屈曲するアーム44を完全に包囲している場合の保持部材50の位置によって特徴付けられる。好ましくは、保持部材50の係合手段が作動部材56の係合手段から切り離され、またはそれと当接せず、またはそれと動作可能ではない場合、保持部材50は作動部材56から係合解除されている。より好ましくは、保持部材50の遠位方向に延在する舌状部が作動部材56の近位方向に延在する可撓性舌状部から切り離され、またはそれと当接せず、またはそれと動作可能ではない場合、保持部材50は作動部材56から係合解除されている。また、保持部材50が係合解除位置にあり、作動部材56が付勢される場合、ばね58は圧縮され、駆動部材40の遠位端壁と作動部材56の横断壁との間の距離が克服される。作動部材が圧力または付勢から解除されると、圧縮されたばねは後戻りし、それにより作動部材が装置の遠位端に向かって強制的に動かされる。しかしながら、保持部材50が係合解除位置にあるため、混合の前に装置を起動することはできない。
【0050】
混合が完了する直前、保持部材が駆動部材40に対して係合解除位置から係合位置へと動かされるように、近位ハウジング部12の遠位端環状面60が、保持部材50の外周上の環状棚部62と接触するよう動かされる。好ましくは、保持部材50は、装置の長手方向軸に沿って装置の遠位端に向かって軸方向に動かされる。次に、保持部材は、遠位ハウジング部の内面上の円周方向棚部と近位ハウジング部の遠位環状棚部との間で固定されて保持される。例示的な実施例における保持部材の係合位置は、保持部材50の遠位方向に延在する舌状部が作動部材56の近位方向に延在する可撓性舌状部上を摺動し、近位方向に延在する可撓性舌状部を径方向内側に強制屈曲させて、近位方向に延在する可撓性舌状部の径方向内側に向けられた突起が駆動部材40の窪みと係合するように、保持部材が作動部材56に係合される場合の、および、アーム44の棚部48の一部が保持部材50の近位端から突出するように、すなわち、アーム44の棚部48が保持部材50の内面によって部分的に包囲されるように、保持部材が駆動部材に対して位置付けられる場合の保持部材50の位置によって特徴付けられる(図5)。
【0051】
次の工程は、ここで投与量送達を行なうことである。ユーザは次に、装置の近位部を医薬品送達部位に位置付ける。注射針を使用する場合、装置は患者の皮膚表面に押しつけられ、それにより針の穿通が行なわれる。
【0052】
この後、作動部材、すなわちプッシュボタン56が押圧または付勢される(図7)。これにより、弾性部材58は圧縮され、駆動部材40は、保持部材が近位ハウジング部12の遠位端面に固定されて保持された状態で、アーム44の棚部48が保持部材50の近位端を通過するまで、駆動部材とプランジャロッドとの接続により、プランジャロッド32とともに装置の近位端に向かって動かされるようになる。駆動部材40のアーム44はそれにより、径方向外側方向に自由に広がり、それにより、内側に向けられた棚部46はプランジャロッド32の溝42から出る。後者はここで、駆動ばね34の力によって近位方向に自由に動き、それは医薬品容器22のストッパ28、30を近位方向に動かし、それにより医薬品送達部材を通してある投与量の医薬品が放出される(図7)。注射シーケンスの間、作動部材は、駆動部材と作動部材との係合により、遠位ハウジング部内に保持さ
れる。また、装置の近位端に向かって駆動部材を動かすことにより、駆動部材の遠位管状部の外面上の環状棚部と、遠位ハウジング部の内面上の円周方向棚部との間に、間隙が生じる。
【0053】
注射シーケンスの最後に、プランジャロッド32の遠位端が駆動部材40の近位端を通過する。駆動部材40のアーム44は次に、保持部材50の内部で径方向内側に自由に動き、駆動ばね34の残留力により、駆動部材40および作動部材56は、駆動部材の遠位管状部の外面上の環状棚部が遠位ハウジング部の内面上の円周棚部に当たるまで、遠位方向に押されるであろう。この接触は、クリックなどの聞こえる音、および作動部材の触覚を提供し、それは送達の終わりを示す。作動部材はまた、後戻りする。ユーザが依然として作動部材を押している場合、ユーザには、送達の終わりを示す触覚フィードバックが提供されるであろう。
【0054】
医薬品送達動作が完了すると、装置を医薬品送達部位から取外し、安全な方法で廃棄してもよい。
【0055】
上に説明し、図面に示した実施例は単に、この発明の非限定的な例として見なされるべきであること、および、それは特許請求の範囲内で多くの方法で修正されてもよいことが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7