(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663095
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】セメントパネルのための移動式生産システム
(51)【国際特許分類】
B28B 5/04 20060101AFI20150115BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20150115BHJP
B28B 23/00 20060101ALI20150115BHJP
B28B 13/02 20060101ALI20150115BHJP
B28B 15/00 20060101ALI20150115BHJP
B28B 1/16 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
B28B5/04
E04G21/16
B28B23/00
B28B13/02
B28B15/00
B28B1/16
【請求項の数】32
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-534861(P2013-534861)
(86)(22)【出願日】2010年10月22日
(65)【公表番号】特表2014-500809(P2014-500809A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】SG2010000404
(87)【国際公開番号】WO2012053973
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2013年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】513097160
【氏名又は名称】ジー クォン ジェームス リム
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】ジー クォン ジェームス リム
【審査官】
相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04266916(US,A)
【文献】
特開昭61−239905(JP,A)
【文献】
特開昭53−137221(JP,A)
【文献】
米国特許第03525131(US,A)
【文献】
実開昭63−197105(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/16, 1/29
B28B 5/00〜 5/12
B28B 13/00〜15/00
B28B 23/00〜23/22
B28C 1/00〜 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体ボードが埋め込まれた複合セメントパネルを製造するための移動式生産システムであって、
上側、底側、第1の側部、第2の側部、第1の端部、および第2の端部を有するコンテナと、
前記コンテナの前記第1の端部から前記第2の端部へと前記コンテナの長手方向軸にほぼ沿って並べられた前記コンテナの内側の搬送システムと、
前記搬送システムに沿った前記コンテナの内側の複数の製造ステーションであって、前記複合セメントパネルの製造中、前記複合セメントパネルを鋳造するための鋳物用トレイが、前記搬送システムに沿って前記複数の製造ステーションの各々まで進行する、複数の製造ステーションと、
前記コンテナの前記第1の端部の近傍であって前記コンテナの外側の上側に取り外し可能に取り付けることができるモルタル混合ステーションであって、
モルタルを調製するための混合タンクと、前記コンテナの内側の上側に取り付けられ、前記混合タンクによって調製された前記モルタルを前記コンテナの前記上側の開口部を通して前記複数の製造ステーションまで運ぶための装填シュートと、を備えるモルタル混合ステーションを備え、
該モルタル混合ステーションが、前記複合セメントパネルの製造中に、前記コンテナの前記外側の上側に取り付けられ、前記移動式生産システムの輸送中に、前記コンテナの前記外側の上側から取り外され、前記コンテナの内側に置かれる、移動式生産システム。
【請求項2】
前記コンテナの前記外側の上側に取り付けられた、前記移動式生産システムへの電気を生成するための太陽電池パネルをさらに備える、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項3】
前記コンテナの前記外側の上側に取り付けられた前記太陽電池パネルを含む複数の太陽電池パネルと、
前記移動式生産システムの輸送中に、前記複数の太陽電池パネルを保護するために、前記複数の太陽電池パネルが前記コンテナの前記上側の周囲に折り畳まれる第1の位置と、前記複数の太陽電池パネルが広げられ、前記コンテナの前記上側の前記周囲を超えて延びる第2の位置との間を移動可能なヒンジ部材を備える、前記複数の太陽電池パネルのための装着構造体と、
をさらに備える、請求項2に記載の移動式生産システム。
【請求項4】
前記コンテナが、標準的な国際発送用コンテナである、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項5】
前記複数の製造ステーションが、前記コンテナの前記長手方向軸にほぼ沿って配置されて、前記コンテナの前記第1および第2の側部の第1のものの近傍に製造通路、および前記コンテナの前記第1および第2の側部の第2のものの近傍に保全通路を形成する、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項6】
前記コンテナの内底側の床部が、滑り止めコーティングの層でコーティングされる、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項7】
前記コンテナが、前記移動式生産システムの輸送中に、前記複数の製造ステーションを収容するための格納箱としての役割を果たす、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項8】
プロセッサと、
前記移動式生産システム内の製造プロセスを制御するために前記プロセッサによって実行可能な命令を保存する記憶装置と、
を含む主制御システムをさらに備える、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項9】
前記主制御システムが、
前記鋳物用トレイの存在を検出するために前記主制御システムに接続された前記搬送システムの近傍のセンサであって、前記主制御システムが、前記鋳物用トレイの存在の検出に応答して、前記複数の製造ステーションの1つを始動させて製造プロセスを開始させるセンサを備える、請求項8に記載の移動式生産システム。
【請求項10】
前記移動式生産システム内で製造プロセスを監視し制御するためのユーザインターフェースを提供するために前記主制御システムに接続された主制御パネルをさらに備える、請求項8に記載の移動式生産システム。
【請求項11】
前記複数の製造ステーションの1つおよび前記モルタル混合ステーションを監視し制御するためのユーザインターフェースを提供するために前記複数の製造ステーションの前記1つに関連付けられる、前記主制御システムに接続されたステーション制御パネルをさらに備える、請求項8に記載の移動式生産システム。
【請求項12】
前記主制御システムに接続された、前記移動式生産システムの所定の異常を報告するためのアラームシステムをさらに備える、請求項8に記載の移動式生産システム。
【請求項13】
前記主制御システムが、前記セメント複合パネルの複数のタイプの1つを生産するように前記複数の製造ステーションおよび前記モルタル混合ステーションに指令を与える、請求項8に記載の移動式生産システム。
【請求項14】
前記モルタル混合ステーションが、さらに、
前記混合タンクの近傍の表面上に装着された複数の脚部を有するプラットフォームであって、ユーザが、モルタル粉末を前記混合タンク内に装填するために前記プラットフォーム上に立つことを可能にするプラットフォームを備える、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項15】
前記複数の製造ステーションが、
分配タンクと、前記分配タンクの開口部に取り付けられ、予め決められた量の前記モルタルを、タイマによって制御されて、前記鋳物用トレイ内に分配するために開位置と閉位置の間で移動可能であるシャッタと、を備える分配ステーションを備える、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項16】
前記モルタル混合ステーションの前記装填シュートが、前記分配タンクと連結する、請求項15に記載の移動式生産システム。
【請求項17】
前記分配タンクが、さらに、
前記モルタルをさらに混合し、前記モルタルを前記分配タンクから分配することを容易にする力を生み出すために、定間隔で前記モルタルを撹拌するための撹拌器を備える、請求項15に記載の移動式生産システム。
【請求項18】
前記分配ステーションが、さらに、
前記鋳物用トレイの下方に置かれ、前記モルタルが充填された前記鋳物用トレイを計量するための計量器を備える、請求項15に記載の移動式生産システム。
【請求項19】
前記複数の製造ステーションが、
前記搬送システムによって前記分配ステーションから移送された前記鋳物用トレイ内の前記モルタルを水平化するための水平化ステーションを備える、請求項15に記載の移動式生産システム。
【請求項20】
前記複数の製造ステーションが、水平化ステーションを含み、前記水平化ステーションが、
前記鋳物用トレイを適所に固定するために前記鋳物用トレイの縁を押さえる複数のトレイプレス板と、
発泡体ボードを前記鋳物用トレイ内で中心に置くために前記発泡体ボードの縁と接触する複数の発泡体ガイドと、
前記発泡体ボードが、前記鋳物用トレイの内側の底面から突出する複数のトレイピンと接触するように前記発泡体ボードを押し下げることによって前記発泡体ボードを前記鋳物用トレイ内に配置するための複数の発泡体プレスピンと、
を含む位置決めユニットを備える、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項21】
前記水平化ステーションが、さらに、
前記鋳物用トレイが前記位置決めユニットによって固定されているときに、前記モルタルが充填された前記鋳物用トレイを振動させるための振動モータを備える、請求項20に記載の移動式生産システム。
【請求項22】
前記複数の製造ステーションが、さらに、
前記水平化ステーションによって水平化された前記モルタルの層が充填された前記鋳物用トレイ内に発泡体ボードを装填するための発泡体ボード挿入ステーションを備える、請求項20に記載の移動式生産システム。
【請求項23】
前記複数の製造ステーションが、さらに、
前記搬送システムによって前記水平化ステーションから移送された前記鋳物用トレイ内の前記モルタルの上面を平滑化するためのならしステーションを備える、請求項20に記載の移動式生産システム。
【請求項24】
前記複数の製造ステーションが、
前記複数の発泡体ボードの1つを前記モルタルの層が充填された前記鋳物用トレイ内に誘導するための複数の側部ガイドを含む、複数の発泡体ボードを格納するための装填ユニットを備える発泡体ボード挿入ステーションを含む、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項25】
前記複数の製造ステーションが、さらに、
前記発泡体ボード挿入ステーションから前記複数の発泡体ボードの前記1つが挿入された前記鋳物用トレイ内に、予め決められた量の前記モルタルを分配するための分配ステーションを備える、請求項24に記載の移動式生産システム。
【請求項26】
前記複数の製造ステーションが、
前記鋳物用トレイ内の前記複合セメントパネルの上面を平滑化するためのならし刃を含むならしユニットを備えるならしステーションを含む、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項27】
前記ならしステーションが、さらに、
前記ならしユニットに取り付けられた前記ならし刃を、前記鋳物用トレイ内の前記複合セメントパネルの前記上面に対してある角度で傾斜させた状態で、前記ならしユニットを前記複合セメントパネルの第1の縁から第2の縁に移動させるためのリニアシャフトを備える、請求項26に記載の移動式生産システム。
【請求項28】
前記複数の製造ステーションが、
前記搬送システムによって前記ならしステーションから移送された前記鋳物用トレイ内の前記複合セメントパネルの前記上面を仕上げるための仕上げステーションを備える、請求項26に記載の移動式生産システム。
【請求項29】
前記複数の製造ステーションが、
前記複合セメントパネルの上面にわたって小石を広げるための、小石が充填された供給ユニットを備える小石仕上げステーションを備える、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項30】
前記小石仕上げステーションが、さらに、
前記小石を前記複合セメントパネルの前記上面に押し込むプレス板を有する押さえユニットを備える、請求項29に記載の移動式生産システム。
【請求項31】
前記複数の製造ステーションが、
前記複合セメントパネルの前記上面内にパターンを形成するための刻印スタンプを含む刻印ユニットを備える刻印ステーションを含む、請求項1に記載の移動式生産システム。
【請求項32】
前記刻印ステーションが、さらに、
ブラシと、油受けと、を含み、前記ブラシが前記油受けからの油を使用して前記刻印スタンプを洗浄する洗浄ユニットを備える、請求項31に記載の移動式生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントパネルまたは複合セメントパネルを製作するための自動移動式生産システムに関する。より詳細には、本発明は、移動可能なコンテナの内側に搬送システムに沿って並べられた複数の独立した製造ステーションを有する自動移動式生産システムに関する。さらにより詳細には、本発明は、システムが作動しているときはコンテナの外側の上側に取り付けられ、システムの輸送中は取り外され、コンテナの内側に格納される、取り外し可能なモルタル混合ステーションを有する、自動移動式生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築業界では、さまざまなタイプのセメントパネルまたは複合セメントパネルが、ルーフデッキまたは他の表面のための排水、断熱、または防水システムの一部を提供するために使用される。セメント内に封入された断熱発泡体ボードを有する複合セメントパネル、およびこのパネルを製作する方法は、Lim Jee Keng Jamesによる、2008年5月9日出願の特許文献1、表題「Composite Cement Panel」で開示された。一般的に、セメントパネルまたは複合セメントパネルは、手動で、または自動のもしくは半自動の生産設備で製作され、その後、異なる場所にある建築現場に運ばれる。建築現場は、生産施設からいくらか離れたところにある場合がある。したがって、パネルを建築現場に運ぶ輸送費用が、パネルのコストに加えられなければならない。さらに、パネルおよびセメント粉末や発泡体ボードなどの原料は、材料およびパネルが管轄区域から管轄区域に輸送されるとき、プロセスのすべてのステップにおいて課税される場合があり、それによってパネルのコストが増大する。さらには、パネルは、その相対的に大きなサイズ、大きな重量、および壊れやすさのために容易に輸送および輸出ができない。パネルの生産施設が建築現場から遠隔にあることはまた、追加のパネルが生産プラントから建築現場に輸送される場合、建築に遅れを生じさせることもある。したがって、当業者は、パネルの製造コストを低減し、建築日数の遅れを最小限に抑えるために建築現場で直接これらのパネルを製造することができる設備を提供しようと絶えず努力をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/143591号(国際出願番号:PCT/SG2008/000174)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明による、複合セメントパネルまたはセメントパネルのための移動式生産システムにより、上記および他の問題が解決され、当技術分野にいて進歩が生み出される。本発明による自動移動式生産システムの1つの利点は、システムが小型であり、現場で直接的にパネルを製作するためにいかなる建築現場にも移動可能であり、それによって輸送および生産コストが削減され、顧客に対するサービスレベルが向上し、生産空間が削減されることである。本発明によるシステムの第2の利点は、システムが自動化され、パネルを生産するための手作業がそれほど必要とされないことである。これにより、さらに生産コストが最小限に抑えられ、処理量が増大され、パネルの品質が一貫していることが保証される。本発明によるシステムの第3の利点は、システムが、短時間で容易に組み立て可能および分解可能であるより小さい独立したいくつかのステーションを含んで、システムのすばやい展開および移転を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複合セメントパネルまたはセメントパネルを製作するための自動移動式生産システムに関する。本発明の一部の実施形態によれば、移動式生産システムは、上側、底側、第1の側部、第2の側部、第1の端部、および第2の端部を有するコンテナを含む。コンテナの内底側の床部は、滑り止めコーティングの層でコーティングされる。これらの実施形態の一部によれば、コンテナは、標準的な国際発送用コンテナである。さらに、コンテナはまた、システムの輸送中、システムのすべてのステーションおよび構成要素、場合によってセメントパネルの原料を収容するための格納箱としての役割も果たす。
【0006】
移動式生産システムは、さらに、コンテナの第1の端部から第2の端部へとコンテナの長手方向軸にほぼ沿って並べられたコンテナの内側の搬送システムを含む。移動式生産システムは、さらに、コンテナの内側に、搬送システムに沿って位置する複数の製造ステーションを含む。製造ステーションの各々は、複合セメントパネルの製造における処理ステップを実行する。本発明の一部の実施形態によれば、製造ステーションは、コンテナの長手方向軸にほぼ沿って配置されて、搬送システムおよび製造ステーションによって分離されたコンテナの両側に保全通路および生産通路を形成する。
【0007】
移動式生産システムはまた、取り外し可能なモルタル混合ステーションも含む。モルタル混合ステーションは、コンテナの第1の端部の近傍のコンテナの外側の上側に取り外し可能に取り付けることができる。モルタル混合ステーションは、モルタルを調製するための混合タンクと、装填シュートとを含む。装填シュートは、コンテナの内側の上側に取り付けられ、混合タンク内で調製されたモルタルを、コンテナの上側の開口部を通してコンテナ内の製造ステーションまで運ぶ。モルタル混合ステーションは、複合セメントパネルの製造中、コンテナの外側の上側に取り付けられる。モルタル混合ステーションはその後、コンテナの外側の上側から取り外され、移動式生産システムの輸送中、コンテナの内側に置かれる。本発明の一部の実施形態によれば、モルタル混合ステーションは、混合タンクの近傍の表面上に装着された脚付きのプラットフォームであって、ユーザが、モルタル粉末を混合タンク内に装填する、または保全作業を行うためにそのプラットフォーム上に立つことを可能にする、プラットフォームを含む。
【0008】
本発明の一部の実施形態によれば、移動式生産システムは、コンテナの外側の上側に取り付けられた、システムへの電気を生成するための太陽電池パネルを含む。これらの実施形態の一部によれば、太陽電池パネルの配列は、コンテナの外側の上側に取り付けられる。さらに別の実施形態によれば、太陽電池パネル電池は、コンテナの外側の上側から取り外し可能にし、システムの輸送中、コンテナの内側に格納することができる。太陽電池パネルの装着構造体は、第1の位置と第2の位置の間で移動可能なヒンジ部材を含むことができる。第1の位置では、太陽電池パネルは、システムの輸送中太陽電池パネルを保護するために、コンテナの上側の周囲内に折り畳まれる。第2の位置では、太陽電池パネルは、広げられ、コンテナの上側の周囲を超えて延びる。一部の他の実施形態によれば、太陽電池パネルの折り畳み可能で巻くことができる膜タイプが使用されてよい。
【0009】
本発明の一部の実施形態によれば、生産は、プロセッサおよび記憶装置を含む主制御システムを含むことができる。記憶装置は、製造プロセスを制御するためにプロセッサによって実行可能な命令を保存する。主制御システムは、さまざまなタイプのパネルを生産するための指令を与え、収集されたデータおよび/または生成されたデータを無線または他のネットワーク接続を介して主サーバに中継する。これらの実施形態の一部によれば、搬送システムの一方の側の近傍のセンサが、鋳造用トレイの存在を検出するために主制御システムに接続される。主制御システムは、鋳造用トレイの検出に応答して、ステーションの1つにおいて製造プロセスの開始を引き起こす。これらの実施形態の他のものによれば、主制御パネルおよび/または副制御パネルが、移動式生産システムの製造プロセスを監視し制御するためのユーザインターフェースを提供するために主制御システムに接続され得る。本発明の別の実施形態によれば、製造ステーションの一部は、ステーションによって実行されたプロセスを監視し制御するためのユーザインターフェースを提供するために主制御システムに接続された関連するステーション制御パネルを含むことができる。本発明のさらに別の実施形態によれば、移動式生産システム内の所定の異常を報告するためのアラームシステムが、主制御システムに接続され得る。
【0010】
本発明の一部の実施形態によれば、製造ステーションは、分配ステーションを含む。分配ステーションは、分配タンクおよびシャッタを含むことができる。シャッタは、予め決められた量のモルタルを鋳物用トレイに分配するために分配タンクの開口部に取り付けられ得る。シャッタの開閉は、好ましくはタイマによって制御される。これらの実施形態の一部によれば、分配システムは、予め決められた量のモルタルを、搬送システムによって発泡体ボード挿入ステーションから移送された鋳物用トレイ内の発泡体ボード上に分配する。一部の実施形態によれば、モルタル混合ステーションの装填シュートは、コンテナの内側で分配ステーションの分配タンクと連結する。これらの実施形態の一部によれば、分配タンクは、さらに、モルタルを混合し、モルタルを分配タンクの下方に置かれた鋳物用トレイ内に分配することを容易にする力を生み出すために、定間隔でモルタルを撹拌するための撹拌器を含むことができる。一部の別の実施形態によれば、計量器が、モルタルで充填された鋳物用トレイを計量するために分配ステーション内の鋳物用トレイの下方に置かれ得る。
【0011】
本発明の一部の実施形態によれば、製造ステーションは、搬送システムによって分配ステーションから搬送された鋳物用トレイ内のモルタルを水平化するための水平化ステーションを含む。本発明の一部の実施形態によれば、水平化ステーションは、トレイプレス板、発泡体ガイド、および発泡体プレスピンを有する位置決めユニットを含むことができる。トレイプレス板は、鋳物用トレイの縁部を押さえて鋳物用トレイを適所に固定する。発泡体ガイドは、発泡体ボードの縁と接触して、発泡体ボードを鋳物用トレイ内で位置合わせし、中心に置き、配置する。発泡体プレスピンは、発泡体ボードを鋳物用トレイ内に押し込んで、鋳物用トレイの内側の底面から突出するトレイピンに発泡体ボードを接触させる。これらの実施形態の別のものでは、水平化ステーションは、位置決めユニットによって固定された鋳物用トレイを振動させ、故にモルタルを鋳物用トレイ内で水平化する振動モータを含むことができる。
【0012】
本発明の一部の実施形態によれば、製造ステーションは、搬送システムによって水平化ステーションから搬送されたモルタルの(底部の)層が充填された鋳物用トレイ内に、発泡体ボードを装填するための発泡体ボード挿入ステーションを含む。これらの実施形態の一部によれば、発泡体ボード挿入ステーションは、発泡体ボードを格納するための装填ユニットを含むことができる。装填ユニットはまた、発泡体ボードを鋳物用トレイ内へと誘導するための側部ガイドも含む。一部の特定の実施形態では、装填ユニットは、最大35枚の発泡体ボードを保持することができる。
【0013】
本発明の一部の実施形態によれば、製造ステーションはまた、搬送システムによって水平化ステーションから移送された鋳物用トレイ内の複合セメントパネルのモルタルの上面を水平化するおよび/または平滑化するためのならしステーションも含む。これらの実施形態の一部によれば、ならしステーションは、鋳物用トレイ内の複合セメントパネルの上面を水平化するおよび/または平滑化するためのならし刃を含む。これらの実施形態の別のものでは、ならしステーションはまた、ならし刃を鋳物用トレイ内の複合セメントパネルの上面に対して調整可能な角度で傾斜させた状態で、この刃を複合セメントパネルの第1の縁から第2の縁に移動させるためのリニアシャフトを含むこともできる。
【0014】
本発明の一部の実施形態によれば、製造ステーションは、搬送システムによってならしステーションから移送された鋳物用トレイ内の複合セメントパネルの上面に対して仕上げを実行する任意選択の仕上げステーションを含むことができる。これらの実施形態の一部によれば、仕上げステーションは小石仕上げステーションでよい。小石仕上げステーションは、鋳物用トレイ内の複合セメントパネルの上面にわたって小石を広げるための、小石が充填された供給ユニットを含むことができる。一部の別の実施形態では、小石仕上げステーションはまた、鋳物用トレイ内の複合セメントパネルの上面に小石を押し込むプレス板を有する押さえユニットを含むこともできる。
【0015】
本発明の一部の実施形態によれば、仕上げステーションは、刻印ステーションでよい。刻印ステーションは刻印ユニットを含むことができる。刻印ユニットは、鋳物用トレイ内の複合セメントパネルの上面内にパターンを形成するための刻印スタンプを含むことができる。一部の特定の実施形態によれば、刻印ステーションは、洗浄ユニットを含むことができる。洗浄ユニットは、ブラシおよび油受けを含むことができる。ブラシは、油受けからの油を使用して刻印スタンプを洗浄する。
【0016】
上記および他の問題は、以下の詳細な説明で説明しかつ以下の図面で示す、本発明による自動移動式生産システムの特徴および利点によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による移動式生産システムの側面図である。
【
図2】
図1に示す移動式生産システムの実施形態のコンテナの内側に格納されたモルタル混合ステーションを示す図である。
【
図3】太陽電池パネルが折り畳み位置にある状態の、
図1に示す移動式生産システムの実施形態の上面図である。
【
図4】太陽電池パネルが広がった位置にある状態の、
図1に示す移動式生産システムの実施形態の上面図である。
【
図5】
図1に示す移動式生産システムの実施形態の搬送システムの側面図である。
【
図7】
図1に示す移動式生産システムの実施形態のモルタル混合ステーションの側面図である。
【
図8】
図1に示す移動式生産システムの実施形態の分配ステーションの側面図である。
【
図9】
図1に示す移動式生産システムの実施形態の発泡体ボード挿入ステーションの側面図である。
【
図10】
図1に示す移動式生産システムの実施形態の水平化ステーションの側面図である。
【
図11】
図1に示す移動式生産システムの実施形態のならしステーションの側面図である。
【
図12】
図1に示す移動式生産システムの実施形態の小石仕上げステーションの側面図である。
【
図13】
図1に示す移動式生産システムの実施形態の刻印ステーションの側面図である。
【
図14】
図1に示す移動式生産システムの実施形態による主制御パネルの正面図である。
【
図15】
図1に示す移動式生産システムの実施形態による設定パラメータのディスプレイスクリーンを示す図である。
【
図16】
図1に示す移動式生産システムの実施形態によるアラームメッセージのディスプレイスクリーンを示す図である。
【
図17】
図1に示す移動式生産システムの実施形態によるステーションの状態のディスプレイスクリーンを示す図である。
【
図18】
図1に示す移動式生産システムの実施形態による生産情報のディスプレイスクリーンを示す図である。
【
図19】
図1に示す移動式生産システムの実施形態によるアラームイベントのディスプレイスクリーンを示す図である。
【
図20】
図1に示す移動式生産システムの実施形態を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、セメントパネルまたは複合セメントパネルを製作するための自動移動式生産システムに関する。複合セメントパネルが以下では説明されているが、システムはまた、セメントパネルを製作するために使用されてもよい。より具体的には、本発明は、移動可能なコンテナの内側に搬送システムに沿って並べられた複数の独立した製造ステーションを有する自動移動式生産システムに関する。さらにより具体的には、本発明は、システムが作動しているときはコンテナの外側の上側に取り付けられ、システムの輸送中は取り外され、コンテナの内側に格納される、取り外し可能なモルタル混合ステーションを有する、自動移動式生産システムに関する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態による自動移動式生産システム100の側面図である。移動式生産システム100は、コンテナ110と、コンテナ110の外側の上側の太陽電池パネル120と、コンテナ110の内側の搬送システム200と、コンテナ110の外側の上側のモルタル混合ステーション300と、コンテナ110の内側の独立した製造ステーションと、コンテナ110の内側のサービスユニット130とを備える。独立した製造ステーションは、第1および第2の分配ステーション401および402(または集合的に分配ステーション400)と、発泡体ボード挿入ステーション500と、第1および第2の水平化ステーション601および602(または集合的に水平化ステーション600)と、第1および第2のならしステーション701および702(または集合的にならしステーション700)と、1つまたは複数の任意選択の仕上げステーション(図示せず)とを含む。仕上げステーションは、小石仕上げステーション800(
図12)および/または刻印ステーション900(
図13)でよい。サービスユニットキャビネット130は、乾燥器132、圧縮機134および変圧器136を封入し得る。システム100は、さらに、主制御パネル140および/または副制御パネル141を用いてインターフェース接続され得る主制御システムを含む。コンテナ110は、さらに、換気ファン150を含むことができる。所望の場合、追加のステーションを設置するための空間102が搬送システム200に沿って存在する。コンテナ110の内側の搬送システム200の形状構成を示す移動式生産システム100の上から見た図が、
図20に示されている。本発明から逸脱することなく他の形状が使用されてよいことを、当業者は認識されよう。さらに、システム100はまた、コンテナ110の内側の照明、非常用照明、および安全装置、ならびにコンテナ110の外部に取り付けられた取り外し可能な避雷針を含むこともできる。
【0020】
図1〜4に示すように、コンテナ110は、上側111、底側112、第1の側部113、第2の側部114、第1の端部115、および第2の端部116を有する。コンテナ110の第1の端部115および/または第2の端部116には、ドア117および118が取り付けられてよく、これらのドアは、
図3および4に示すようにシステム100の作動中全開することができる。コンテナ110の内底側112の床部は、滑り止めコーティング119の層でコーティングされる。コンテナ110は頑丈で、積み重ね可能な金属箱であり、好ましくは、標準的な国際発送用/貨物コンテナの一般的なサイズ、たとえば長さ30フィート(9.14m)または40フィート(12.19m)および高さ7.5フィート(2.29m)または8.5フィート(2.59m)などである。本発明から逸脱することなく、移動式である他の寸法のコンテナが使用されてよいことを当業者は認識されよう。さらには、コンテナ110は、移動式であり、コンテナ110を場所間で輸送するために、クレーンによって持ち上げられ、トラックによって運搬されおよび/または船上に積まれ得ることを、当業者は認識されよう。
【0021】
図2は、移動式生産システム100のコンテナ110の内側に格納されたモルタル混合ステーション300を示している。システム100の輸送中、モルタル混合ステーション300は、コンテナ110の外側の上側111から取り外され、コンテナ110の内側に格納される。システム100のすべての製造ステーション(分解状態であれ、部分的に組み立てられた状態であれ、完全に組み立てられた状態であれ)、あらゆるモジュールおよび構成要素、ならびに場合によっては複合セメントパネルを製作するための原料(集合的に箱104で示す)もまた、システム100の輸送中、コンテナ110の内側に格納される。
【0022】
図3は、太陽電池パネル120が折り畳まれた位置(または第1の位置)にあり、モルタル混合ステーション300の近傍のコンテナ110の外側の上側111に取り付けられた移動式生産システム100の上面図を示している。折り畳まれた位置では、太陽電池パネル120は、システム100の輸送中、太陽電池パネル120を保護するためにコンテナ110の上側111の周囲内に折り畳まれる。
図4は、広げられた位置にある(または第2の位置)太陽電池パネル120を示している。広げられた位置では、太陽電池パネル120は、露出され、コンテナ110の上側111の周囲を超えて延びて、太陽エネルギーを収集し、移動式生産システム100への電気を生成する。太陽電池パネル120の装着構造体は、太陽電池パネル120に取り付けられ、太陽電池パネル120が折り畳まれた位置と広げられた位置の間を移動することを可能にする移動可能なヒンジ部材122を含む。太陽電池パネル120によって生成される電気が、システム100には不十分であるという場合に、コンテナ110の内側の変圧器136が含まれてもよい。太陽電池パネル120は、コンテナ110の外側の上側111から取り外し可能になり得る。取り外された太陽電池パネル120は、システム100の輸送中、コンテナ110の内側に格納され得る。太陽電池パネル120が、さまざまなタイプ、サイズ、および形状で形成されてよく、また本発明から逸脱することなく他の形でコンテナ110に取り付けられてよいことを、当業者は認識されよう。複数の太陽電池パネルが
図1〜4に示されているが、本発明から逸脱することなく、単一の太陽電池パネルが使用されてもよい。さらに、本発明から逸脱することなく、折り畳み可能で巻くことができる膜タイプの太陽電池パネルが使用されてよい。
【0023】
図1に示す搬送システム200は、直線に連結され、コンテナ110の第1の端部115から第2の端部116へと長手方向軸にほぼ沿って並べられた複数の搬送モジュール201(
図5および6)から構成される。特定の実施形態では、搬送システム200は、6つの搬送モジュール201で構成される。搬送システム200は、システム100が作動しているとき、鋳物用トレイ202を製造ステーションの各々に移送する。
図5および6は、搬送モジュール201の側面図および上面図を示している。搬送モジュール201は、搬送モジュール201の第1の側部208および第2の側部209の近傍の2本の平行な搬送ベルト206および207を駆動するモータ204を含む。好ましくは金属から作製された複数の縦長ローラ210が、2つの搬送ベルト206と207の間に並べられる。各ローラ210は、第1の搬送ベルト206と接触する第1の端部212と、第2の搬送ベルト207と接触する第2の端部214とを有する。搬送ベルト206および207は、モータ204によって駆動されてローラ210を回転させる。鋳物用トレイ202は、回転するローラ210上に載置し、1つのステーションから別のステーションに進行する。搬送モジュール201は、搬送モジュール201の第1の側部208または第2の側部209の一方に実質的に取り付けられたストッパ216およびゾーンセンサ218を含むことができ、主制御システムに通信可能に接続される。本発明の一部の実施形態では、ゾーンセンサ218は、対象とするゾーン内で鋳物用トレイ202を検出する。一部の特定の実施形態では、センサ218は、鋳物用トレイ202が所定の時間内に検出されない場合に信号を主制御システムに送り、アラームを引き起こしてトレイが搬送モジュール201に沿って詰まっているまたは見失われていることを示す。
【0024】
搬送モジュール201が作動しているとき、ローラ210は連続的に回転し、ストッパ216は、鋳物用トレイ202が搬送モジュール201内で進行することを防止するために延長された位置にある。図示する実施形態によれば、鋳物用トレイ202がゾーンセンサ218によって検出されたとき、鋳物用トレイ202の存在の検出に応答して、信号が主制御システムに送信されて製造ステーションを始動させ、ステーションによって実行される製造プロセスを開始させる。プロセスの完了後、ストッパ216は解放され、鋳物用トレイ202は、搬送モジュール201から離れ、次の製造ステーションまで進行することが可能にされる。鋳物用トレイ202が検出ゾーンを離れた後、すなわちゾーンセンサ218がオフになった後、ストッパ216は、延長された位置まで戻るように作動される。
【0025】
図7は、複合セメントパネルを鋳造するための事前混合されたモルタルを調製するための移動式生産システム100のモルタル混合ステーション300の側面図を示している。モルタル混合ステーション300は、システム100が作動しているとき、コンテナ110の第1の端部115の近傍のコンテナ110の外側の上側111に取り外し可能に取り付けることができる。モルタル混合ステーション300は、システム100の輸送中、コンテナ110の外側の上側111から取り外され、コンテナ110の内側に格納される。モルタル混合ステーション300は、混合タンク302および装填シュート310を備える。混合タンク302は、モータ318によって駆動される撹拌器304を含む。混合タンク302には、装填ホッパ316からモルタル粉末が、水入口306から水が、適切な比で供給される。水センサが、モルタル粉末との混合に必要とされる水量を制御するために水入口306に取り付けられ得る。混合タンク302内で調製されたモルタルは、コンテナ110の上側111内の開口部312を貫通して取り付けられたホッパ308内に注がれる。ホッパ308は、コンテナ110の内側の上側111に取り付けられた2つの装填シュート310と連結する。装填シュート310は、モルタルをコンテナ110の内側の第1の分配ステーション401および第2の分配ステーション402の分配タンク403(
図8)に運ぶ。モルタル混合ステーション300は、さらに、プラットフォーム314を含むことができる。プラットフォーム314は、好ましくは、金属から作製され、混合タンク302の近傍の表面上に装着され、ユーザが原料を混合タンク302内に装填する、および/または、保全作業を行うためにプラットフォーム314上に立つことを可能にする。プラットフォーム314は、地面の表面に堅固に装着される複数の脚部(図示せず)を含む。モルタル混合ステーション300は、モルタルがモルタル混合ステーション300の構成要素のすべて内側に堆積し硬化することを防止するために、毎日、または各生産シフトの終了後に洗浄される必要がある。
【0026】
複数の製造ステーションが、コンテナ100の内側に設置される。製造ステーションは、搬送システム200の近傍に位置しており、コンテナ110の第1の端部115から第2の端部116へとコンテナ110の長手方向軸に沿って並べられる。好ましくは、
図20に示すように、保全通路252および生産通路254が、コンテナの110の第1の側部113および第2の側部114の近傍に、コンテナ110内の製造ステーションの形状構成によって形成される。生産通路254は、ユーザが原料を輸送し、鋳物用トレイを装填し、および/または、降ろし、ステーションごとに標準的な生産ルーチンを実行することを可能にする。保全通路252は、技術者が保全およびトラブル解決のために製造ステーションの反対側にアクセスすることを可能にする。製造ステーションの各々は、他のステーションから独立して作動する。さらに、各ステーションは、好ましくは、主制御システムに連結され、これによって制御される。処理ステーションのこのモジュラーシステムは、システム100の設計および制御を簡易化して、システム100の容易な保全を可能にする。製造ステーションは、互いから独立して作動することにより、ステーションのいずれか1つの故障がシステム100全体の作動に影響を及ぼすことを防止する。ステーションの数、タイプ、および順序は、特有の製品レシピによって決まり、本発明から逸脱することなく変更してよいことを、当業者は認識されよう。
図1に示すステーションの順序は、次のように配置される:モルタル混合ステーション300、第1の分配ステーション401、第1の水平化ステーション601、発泡体ボード挿入ステーション500、第2の分配ステーション402、第2の水平化ステーション602、第1のならしステーション701、第2のならしステーション702、および刻印ステーション800または小石仕上げステーション900を含む1つまたは複数の任意選択の仕上げステーション。各ステーションの調製可能なパラメータは、本発明から逸脱することなく製品レシピのさまざまなタイプに合わせて変更することができる。モルタル混合ステーション300を含む製造ステーションの一部は、ユーザがステーションの作動を操作し、ステーションの作動モード、すなわち自動または手動を選択することを可能にするステーション制御パネルを有することができる。
【0027】
2つの分配ステーション401および402(または集合的に分配ステーション400)が、移動式生産システム100内で使用される。第1の分配ステーション401は、空の鋳物用トレイ内にモルタルの底層を形成する。第2の分配ステーション402は、発泡体ボード挿入ステーション500から移送された鋳物用トレイ内の発泡体ボードの上部およびその周りにモルタルの上層を形成する。複合セメントパネルのモルタルの上層および底層の厚さは異なり得るため、第1の分配ステーション401および第2の分配ステーション402から分配されるモルタルの量は、異なり得る。
図8は、移動式生産システム100の個々の分配ステーション400の側面図である。分配ステーション400は、分配タンク403および計量器(図示せず)を備える。分配タンク403は、分配タンク403内の開口部406に取り付けられたシャッタ404を含む。シャッタ404は、開位置と閉位置の間で移動して予め決められた量のモルタルを鋳物用トレイ408内に分配する。鋳物用トレイ408内に分配されるモルタルの量は、シャッタ404を開位置と閉位置の間で移動させる、ユーザによって調整可能なタイマによって制御される。ドリップトレイ410が、鋳物用トレイ408からの余分なモルタルの滴下を収集するために鋳物用トレイ408の下方に置かれ得る。分配タンク403は、さらに、モルタルをさらに混合し、分配コンテナ403からのモルタルの分配を容易にする力を作り出すために定間隔でモルタルを撹拌するための、モータ414によって駆動される撹拌器412を含む。鋳物用トレイ408内に分配されたモルタルの量が制御限界値内にあることを確実にするために、予め決められた公差を有する計量器が、モルタルの底層および/または上層を計量するために鋳物用トレイ408の下方に置かれ得る。センサ418は、分配タンク403内のモルタルのレベルを検出するために分配タンク403に取り付けられる。分配タンク403内のモルタルのレベルが予め決められたレベルを下回る場合、アラーム信号が生成される。
【0028】
発泡体ボード挿入ステーション500は、1枚の発泡体ボードを、第1の水平化ステーション601によって水平化されたモルタルの底層が充填された鋳物用トレイ内に挿入する。
図9は、移動式生産システム100の発泡体ボード挿入ステーション500の側面図を示している。発泡体ボード挿入ステーション500は、予め決められた数の発泡体ボード504を格納するための装填ユニット502を含む。装填ユニット502内に格納される発泡体ボード504の数は、発泡体ボード504の厚さおよび装填ユニット502の高さによって決まり得る。本発明の一部の特定の実施形態では、装填ユニット502は、35枚の発泡体ボードを格納することができる。しかし、本発明から逸脱することなく、任意の数の発泡体ボードが格納されてよい。最小数の発泡体ボード504が装填ユニット502内で利用可能であることを確実にするために、センサ501が、発泡体ボードのレベルを検出するために装填ユニット502に取り付けられる。たとえば、装填ユニット502内にある発泡体ボード504が5枚を下回ることがセンサ501によって検出された場合、アラーム信号が生成される。装填ユニット502に取り付けられたエスケーパ506が解放されたとき、1枚の発泡体ボード504が、装填ユニット502の下側508から延びる側部ガイド512によって誘導されながら鋳物用トレイ510内に落下する。
【0029】
2つの水平化ステーション601および602(または集合的に水平化ステーション600)が、移動式生産システム100内で使用される。第1の水平化ステーション601は、第1の分配ステーション401から移送された鋳物用トレイ内のモルタルの底層を水平化する。第2の水平化ステーション602は、第2の分配ステーション402から移送された鋳物用トレイ内のモルタルの上層を水平化する。
図10は、移動式生産システム100の個々の水平化ステーション600の側面図を示している。水平化ステーション600は、振動モータ603および位置決めユニット604を備える。位置決めユニット604は、鋳物用トレイ610を固定するためのトレイプレス板608と、発泡体ガイド612と、発泡体ボード616を鋳物用トレイ610内で中心に配置するための発泡体プレスピン614とを含む。トレイプレス板608、発泡体ガイド612、および発泡体プレスピン614は、縦方向に移動可能である板618の底面617に取り付けられる。作動においては、位置決めユニット604は、トレイプレス板608が鋳物用トレイ610の縁と接触して鋳物用トレイ610を適所に固定するまで、鋳物用トレイ610に向かって下げられる。発泡体ガイド612は、発泡体ボード616の縁と接触して、発泡体ボード616の周囲と鋳物用トレイ610の内側の側面との間に隙間624を残して、発泡体ボード616を鋳物用トレイ610内に配置/位置合わせする。発泡体プレスピン614は、発泡体ボード616の上面と接触し、発泡体ボード616が完全にモルタルによって取り囲まれ、鋳物用トレイ610の内側の底面から突出するトレイピン(図示せず)上に載置するまで、発泡体ボード616を鋳物用トレイ610に押し込む。振動モータ603が、タイマによって制御される所定の時間、鋳物用トレイ610を振動させてモルタルの表面を水平化し、このとき鋳物用トレイ610(ならびに第2の水平化ステーション602の発泡体616)は、位置決めユニット604によって固定されている。タイマはユーザによって事前に設定され得る。モータ603の振動は、他の製造ステーションへの妨害を防止するためにゴム装着体626によって遮断される。発泡体ボード616は、第1の水平化ステーション601では鋳物用トレイ610内に存在していないため、発泡体ガイド612および発泡体プレスピン614はこのステーションでは機能しない。
【0030】
2つのならしステーション701および702(または集合的にならしステーション700)が、移動式生産システム100内で使用される。第1のならしステーション701(粗めのならしステーションとも呼ばれる)は、第2の水平化ステーション602から移送された鋳物用トレイ内の複合セメントパネルの上面を水平化する。第2のならしステーション702(平滑ならしステーションとも呼ばれる)は、第1のならしステーション701から移送された鋳物用トレイ内の複合セメントパネルの上面を平滑化する。
図11は、移動式生産システム100の個々のならしステーション700の側面図を示している。ならしステーション700は、ならしユニット703およびリニアシャフト704を含む。ならしユニット703はならし刃706を含む。ならし刃706は、好ましくは矩形の形状の薄板であり、鋳物用トレイ708内の複合セメントパネルの上面を水平化または平滑化するために約50cm(すなわちほぼ鋳物用トレイの幅)の長さを有する。ならしユニット703は、リニアシャフト704に取り付けられる。ならしユニット703は、リニアシャフト704の第1の端部710と第2の端部712の間を移動する。ならしユニット703が、リニアシャフト704に沿って第1の端部710から第2の端部712に移動するとき、ならし刃706は、鋳物用トレイ708内の複合セメントパネルの上面を横断する。作動においては、ならしユニット703は、鋳物用トレイ708に向かって鋳物用トレイ708の第1の縁714の近傍に下げられる。ならし刃706は次いで、ならし刃706の第1の縁718が複合セメントパネルの上面と接触するように鋳物用トレイ708の上面に対して調製可能な角度716で、時計周り方向に回転する。角度716は、設計選択として任意の角度に事前設定可能であることを当業者は認識することであろう。ならしユニット703は、次いで、リニアシャフト704に沿って第1の端部710から第2の端部712に移動し、さらにならし刃706を鋳物用トレイ708の第1の縁714から第2の縁720に移動させて複合セメントパネルの上面を水平化または平滑化する。ならしユニット703がリニアシャフト704の第2の端部712(すなわち鋳物用トレイ708の第2の端部720)に到達したとき、ならし刃706は、ならし刃706の第2の縁722が複合セメントパネルの上面と接触するように鋳物用トレイ708の上面に対して調製可能な角度716で、反時計周り方向に回転する。ならしユニット703は、リニアシャフト704の第1の端部710に戻る前、短時間だけリニアシャフト704の第2の端部712に留まり得る。ならしプロセスは、ならしユニット703が、ユーザによって事前設定されたサイクル数の間、リニアシャフト704の第1の端部710と第2の端部712の間で移動する状態で反復され得る。リニアシャフト704に沿って移動するならしユニット703の速度およびならし刃706の角度716は、主制御システムおよび/またはステーション制御パネルによって調整可能になり得る。第1のならしステーション701および第2のならしステーション702は、本発明から逸脱することなく、ならし刃706の設計、ならし刃706の傾斜角度716、ならびにリニアシャフト704に沿って移動するならしユニット703の速度の面において異なることができる。たとえば、リニアシャフト704に沿って移動するならしユニット703の速度は、図示する実施形態の第1のならしステーション701内より第2のならしステーション702内の方が遅い。ならしプロセスが完了した後、パネルの高さが制御限界値内にあることを確実にするために、完成した複合セメントパネルの上面のレベルが、レベルセンサを用いて確認される。
【0031】
任意選択の仕上げステーションが、ならしステーション700から移送された鋳物用トレイ内の完成した複合セメントパネルの上面に仕上げを行う。仕上げステーションは、小石仕上げステーション800、刻印ステーション900、ガラス玉ステーション、および色付けステーションの1つまたは複数を含むことができる。
図12は、移動式生産システム100の1つの実施形態による小石仕上げステーション800の側面図を示している。小石仕上げステーション800は、供給ユニット802および押さえユニット850を含む。供給ユニット802は、小石が充填された小石タンク804を有し、この小石タンクは、完成した複合セメントパネルの上面にわたって小石を広げるために鋳物用トレイ810の第1の縁806と第2の縁808の間で移動可能である。小石タンク804の上方のホッパ812は、小石タンク804内の小石のレベルが予め決められた閾値を下回るとき、小石を小石タンク804内に放出する。押さえユニット850は、平坦なプレス板852およびクランパ854を含む。プレス板852は、小石および複合セメントパネルの上面を押さえ込み複合セメントパネルの上面に小石を埋め込み、このとき鋳物用トレイ810はクランパ854によって固定される。
【0032】
図13は、移動式生産システム100の1つの実施形態による刻印ステーション900の側面図を示している。刻印ステーション900は、刻印ユニット902および洗浄ユニット950を含む。刻印ユニット902は、パターンが刻まれた刻印スタンプ904を有する。刻印プリント904が、完成した複合セメントパネルの上面内にさまざまなパターンを形成するために使用され得るさまざまな設計を有する複数の刻印スタンプの1つでよいことを、当業者は認識されよう。完成した複合セメントパネルを有する鋳物用トレイ906が、クランプ留め要素908によって適所に固定されるとき、刻印ユニット902は、刻印スタンプ904が複合セメントパネルの上面を押さえ付けてパターンを上面内に形成するまで鋳物用トレイ906に向かって下げられる。洗浄ユニット950が、刻印スタンプ904の下方のスライド棒952に取り付けられる。洗浄ユニット950は、刻印スタンプ904を洗浄するためにスライド棒952の第1の端部954と第2の端部956の間で移動可能である。洗浄ユニット950は、ブラシ958および油受け960を含む。ブラシ958は油受け960からの油を使用し、洗浄ユニット950がスライド棒952の第1の端部954と第2の端部956の間を移動する間回転して刻印スタンプ904を洗浄する。
【0033】
主制御システムは、製造ステーションのすべてを含む移動式生産システム100全体を制御し監視するための命令を保存し実行するとともに、収集されたデータおよび/または生成されたデータを無線または他のネットワーク接続を介して主サーバに中継する、プロセッサおよび記憶装置を備える。主制御システムは、ユーザによって選択された複合セメントパネルの特定のタイプ(すなわち製品レシピ)を生産するように各製造ステーションに指令を与えることができる。主制御パネル140および副制御パネル141は、主制御システムに接続され、移動式生産システム100内のすべての製造プロセスを制御し監視するためのユーザインターフェースを提供する。主制御パネル140の実施形態の正面図が、
図14に示されている。主制御システムは、ユーザが、複合セメントパネルのさまざまなモデルの製品レシピおよび設定をタッチスクリーン142によって選択することを可能にする。特定の製品モデルに対する設定スクリーンの一例が、
図15に示されている。ユーザは、主制御パネル140または他の同様の装置に取り付けられたタッチスクリーン142を用いて選択を入力することができる。
【0034】
主制御パネル140に加えて、移動式生産システム100の製造ステーションの一部は、主制御システムに接続されこれによって制御されるステーション制御パネルを含むことができる。各ステーション制御パネルは、製造ステーションの1つに関連付けられ、これらのステーションの限定された制御および監視を実現する。移動式生産システム100はまた、システム100の所定の異常を監視し報告するアラームシステムも含む。報告されたアラームメッセージは、主制御パネル130に取り付けられたタッチスクリーン142上に表示される。タッチスクリーン142上に表示されたアラームメッセージの一例が、
図16に示されている。異常が報告されたとき、システム100は、異常の深刻度に応じて作動を変更または停止することができる。一部のアラーム基準は、タッチスクリーン142を用いてユーザによって「無効化」または「有効化」することができる。システム100のすべてのステーションの状態を示す一例が、
図17に示されている。
図17では、指示ランプが、不具合の場所をユーザに表示している。
図17に示す不具合状態は、「発泡体ボードのレベルが低い」および「搬送器が第2のならしステーションで動かなくなっている」を含む。システム100の一部の空気圧シリンダが、センサと共に設置され、シリンダのあらゆる不完全なまたは異常な動作を監視し報告するために主制御システムに接続される。さらに、あらゆるモータの故障が、アラームシステムを始動させる。システム100は、さらに、製造ステーションの監視される構成要素から関連情報を収集するカウンタ、データロガー、およびイベントレジスタを含む。各々の生産された複合セメントパネルの関連情報は、生産カウンタ内に記録される。関連情報の記録されたデータは、日付、実行時間、中断時間、シフト当たりの総数、受け入れおよび拒否の総数などを含む。タッチスクリーン142上に表示された、収集された生産情報の一例が、
図18に示されている。すべてのアラームイベントは、アラーム履歴を後で追跡することを可能にするために、時系列で記録され、タッチスクリーン142から見ることができる。アラームイベントの一例が
図19に示されている。生産情報およびアラームイベントを含むすべての収集されたデータは、主制御システムに接続されたコンピュータまたはサーバ内に保存することができる。
【0035】
移動式生産システム100は、さらに、電気をシステム100に供給するための変圧器136と、圧縮空気をシステム100に供給するための圧縮機134と、コンテナ110を貫通する開口部に関連付けられた、コンテナ110内に換気をもたらす換気ファン150とを備える。
【0036】
本発明の好ましい実施形態が、上記で説明され例示されてきたが、これらは本発明の例であり、限定的であると解釈されるものではないことを理解されたい。当業者が、特許請求の範囲に記載されたように本発明に抵触する代替の実施形態を設計することができ、また設計することになることが予想される。