(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663143
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール、及び、太陽電池モジュールの取付方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/042 20140101AFI20150115BHJP
【FI】
H01L31/04 R
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-112933(P2009-112933)
(22)【出願日】2009年5月7日
(65)【公開番号】特開2010-263090(P2010-263090A)
(43)【公開日】2010年11月18日
【審査請求日】2012年4月20日
【審判番号】不服2013-23291(P2013-23291/J1)
【審判請求日】2013年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小宮 英孝
(72)【発明者】
【氏名】小川 晴果
(72)【発明者】
【氏名】奥田 章子
【合議体】
【審判長】
北川 清伸
【審判官】
土屋 知久
【審判官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−111036(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/063660(WO,A2)
【文献】
特開2000−196120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/04-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する太陽電池セルと、
前記太陽電池セルの受光面側を覆い可撓性を有する表面保護部材と、
前記太陽電池セルの反受光面側を覆い可撓性を有する構造用ファスナーと、
前記表面保護部材と前記構造用ファスナーとの間にて前記太陽電池セルを被覆するとともに、前記表面保護部材、前記構造用ファスナー、及び、前記太陽電池セルを接着し、柔軟性を有する接着材と、
を有することを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池モジュールであって、
前記表面保護部材は、フッ素系樹脂であることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の太陽電池モジュールであって、
前記構造用ファスナーは、フッ素系樹脂で形成されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の太陽電池モジュールであって、
前記構造用ファスナーの接着面は、表面活性化処理が施されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の太陽電池モジュールが有する前記構造用ファスナーと建物の外装材に取り付けられた構造用ファスナーとを係合させて前記太陽電池モジュールを前記建物に取り付けることを特徴とする太陽電池モジュールの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール、及び、太陽電池モジュールの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールの一例として、太陽電池素子(セル)が設けられている補強板と透光フィルムとの間にエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が充填された太陽電池モジュールが知られている。この太陽電池モジュールには、補強板としてステンレス板、メッキ鋼板、ガルバニウム鋼板等が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3752861号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記太陽電池モジュールに用いられている補強板は、ステンレス板、メッキ鋼板、ガルバニウム鋼板等であり剛性が高い。ところが、太陽電池モジュールを取り付けられる建物の屋根や外装材は、必ずしも平坦ではないため、剛性が高い補強板を有する太陽電池モジュールは、施工箇所に対する適応性が悪い。このため、施工箇所に取り付け台や取り付け治具を備えることが余儀なくされ、取り付け作業が煩雑で取り付け難いという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、容易に取り付けることが可能な太陽電池モジュール、及び、この太陽電池モジュールの取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、可撓性を有する太陽電池セルと、前記太陽電池セルの受光面側を覆い可撓性を有する表面保護部材と、前記太陽電池セルの反受光面側を覆い可撓性を有する構造用ファスナーと、前記表面保護部材と前記構造用ファスナーとの間にて前記太陽電池セルを被覆するとともに、前記表面保護部材、前記構造用ファスナー、及び、前記太陽電池セルを接着し、柔軟性を有する接着材と、を有することを特徴とする太陽電池モジュールである。
このような太陽電池モジュールによれば、太陽電池モジュールを構成する太陽電池セル、表面保護部材、及び、構造用ファスナーのいずれもが可撓性を有し、表面保護部材と構造用ファスナーとの間にて太陽電池セルを被覆する接着材が柔軟性を有しているので、太陽電池モジュールとしても柔軟性を備えている。このため、太陽電池モジュールが取り付けられる建物などの屋根や外装材の表面の凹凸に太陽電池モジュールを沿わせて取り付けることが可能である。
【0007】
また、太陽電池モジュールの反受光面側には構造用ファスナーが設けられているので、太陽電池モジュールが取り付けられる建物などの屋根や外装材等にも構造用ファスナーを取り付けておくことにより、容易に着脱可能な太陽電池モジュールを提供することが可能である。
【0008】
かかる太陽電池モジュールであって、前記表面保護部材は、フッ素系樹脂であることが望ましい。
太陽電池モジュールは、屋外に設置されて日光に直接晒されることはもちろん、雨や風にも晒されるので、耐候性に優れたフッ素系樹脂にて形成された表面保護部材を備えることにより、耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することが可能である。
【0009】
かかる太陽電池モジュールであって、前記構造用ファスナーは、フッ素系樹脂で形成されていることが望ましい。
太陽電池モジュールは、屋外に設置されるので、太陽電池セルの裏面側であっても日光や風雨に晒される。このため、耐候性に優れたフッ素系樹脂にて形成された構造用ファスナーを備えることにより、より耐侯性に優れた太陽電池モジュールを提供することが可能である。
【0010】
かかる太陽電池モジュールであって、前記構造用ファスナーの接着面は、表面活性化処理が施されていることが望ましい。
フッ素系樹脂は、難接着材料なので、単に接着しただけでは高い接着力が得られないが、表面活性化処理が施されたフッ素系樹脂の構造用ファスナーが接着されているので、十分な接着強度にて接着された構造用ファスナーを備えた太陽電池モジュールを提供することが可能である。このため、屋根や外装材の表面の凹凸に沿って取り付けられる太陽電池モジュールが屈曲されて取り付けられたとしても構造用ファスナーが剥がれ難いので、より確実に太陽電池モジュールを取り付けることが可能である。
【0011】
また、前記太陽電池モジュールが有する前記構造用ファスナーと建物の外装材に取り付けられた構造用ファスナーとを係合させて前記太陽電池モジュールを前記建物に取り付けることを特徴とする太陽電池モジュールの取付方法である。
このような太陽電池モジュールの取付方法によれば、屋根や外装材の表面が凸凹していてもその不陸に沿わせて、太陽電池モジュールを容易に取り付けることが可能であるとともに、より確実に取り付けることが可能であり、また、容易に交換することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容易に取り付けることが可能な太陽電池モジュール、及び、この太陽電池モジュールの取付方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る太陽電池モジュールの構成を示す断面の模式図である。
【
図2】太陽電池モジュールに備えられた面ファスナーの変形例を示す断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る太陽電池モジュールの構成を示す断面の模式図である。
図1に示すように、太陽電池モジュール10は、可撓性を有する太陽電池セル12と、太陽電池セル12の受光面12a側を覆い可撓性を有する表面保護部材としての表面保護シート14と、太陽電池セル12の反受光面側を覆い可撓性を有する構造用ファスナーとしての面ファスナー20と、柔軟性を有し、表面保護シート14と面ファスナー20との間にて太陽電池セル12を被覆するとともに、表面保護シート14、面ファスナー20、及び、太陽電池セル12を接着する接着材としてのエチレン−酢酸ビニル重合体(EVA)樹脂18と、を有している。
【0016】
太陽電池セル12は、薄い板状をなす光電変換素子であり、例えばシリコーン等にて形成されて可撓性を有している。本太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池セル12が平面状に接合されて一体に形成されている。
【0017】
表面保護シート14は、フッ素樹脂、たとえば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)にて形成され、厚さが20〜100μmのシートである。フッ素系樹脂であるエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)は、光透過性を有するとともに耐候性に優れる一方で、難接着性を有する。このため、表面保護シート14と面ファスナー20の太陽電池セル12側の接着面14a、20bには、表面活性化処理として金属ナトリウム処理が施されている。この金属ナトリウム処理により、接着面のフッ素原子が飛ばされて炭素骨格が構築され接着性が高められている。金属ナトリウム処理された接着面14a、20bは、トルエン等を用いて脱脂処理されている。ここで、表面活性化処理として、コロナ放電処理、プラズマ処理またはスパッタリング処理が施されていても良い。
【0018】
エチレン−酢酸ビニル重合体(EVA)樹脂18は、透明で柔軟性があり、弾性及び接着性にも優れている。このため、エチレン−酢酸ビニル重合体(EVA)樹脂18は、太陽電池セル12を保護するように被覆した状態にて、表面保護シート14と面ファスナー20との間に介在されて、表面保護シート14、面ファスナー20、及び、太陽電池セル12を接着している。
【0019】
面ファスナー20は、対をなす2つの部材が互いの表面を対向させて押圧することにより、各々の対面する部位に設けられた係合部分20aが係合されて接合される面ファスナーである。太陽電池モジュール10には、対をなす面ファスナー20の一方が設けられている。面ファスナー20は、耐候性に優れたフッ素系樹脂であるエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)にて形成されており、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)は難接着性も有するため、接着面20bは、表面活性化処理及び脱脂処理が施されて接着されている。ここで、対をなす面ファスナー20の一方、すなわち太陽電池モジュール10に設けられた面ファスナー20はフッ素系樹脂としたが、屋根や壁側となる基材側に取り付けられる面ファスナ−は、ふっ素樹脂でなくてもPET(ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂)、PP(ポリプロピレン樹脂)、PC(ポリカ−ボネ−ト)樹脂、アクリル樹脂でも良い。
【0020】
図2は、太陽電池モジュールが有する面ファスナーの変形例を示す断面の模式図である。面ファスナー20としては、
図1に示したような一方がフック状をなし、他方がループ状をなす形態の面ファスナー20だけでなく、
図2に示すように、接合される面ファスナー21のいずれもが、先端が拡径された突起21aを有し、突起21a同士が係合する形態の面ファスナー21であっても構わない。
【0021】
本実施形態の太陽電池モジュール10の製造方法は、予め表面保護シート14の接着面14aと面ファスナー20の接着面20bに金属ナトリウム処理及び脱脂処理を施しておく。そして、平面状に接合された複数の太陽電池セル12をエチレン−酢酸ビニル重合体(EVA)樹脂18にて被覆するとともに表面保護シート14の接着面14aと面ファスナー20の接着面20bとの間に介在させて、表面保護シート14、面ファスナー20、及び、太陽電池セル12を接着する。
【0022】
本実施形態の太陽電池モジュール10は、両面テープ32等にて面ファスナー20が予め取り付けられている建物等の屋根や外装材30に取り付けられる。すなわち、太陽電池モジュール10の取付方法は、設置場所となる建物等の屋根や外装材30に予め設けられた面ファスナー20と、太陽電池モジュール10に設けられた面ファスナー20を接合するだけで完了する。
【0023】
本実施形態の太陽電池モジュールによれば、太陽電池モジュールを構成するシート状をなす複数の太陽電池セル12、表面保護シート14、及び、面ファスナー20のいずれもが可撓性を有し、表面保護シート14と面ファスナー20との間にて太陽電池セル12を被覆する接着材としてのエチレン−酢酸ビニル重合体(EVA)樹脂18が柔軟性を有しているので、太陽電池モジュール10も柔軟性を備えている。このため、太陽電池モジュール10が取り付けられる建物などの屋根や外装材30の表面の凹凸に拘わらず、太陽電池モジュール10を屋根や外装材30の表面に沿わせて取り付けることが可能である。このため、太陽電池モジュール10を設置する場所が平坦な場所に限定されず、また、太陽電池モジュール10の設置場所に取り付け台や取り付け治具を備える等、平坦な下地を設ける必要がないので、汎用性及び施工性に優れた太陽電池モジュール10を提供することが可能である。また、太陽電池モジュール10を取り付けるための取り付け台や取り付け治具を備えないので、大幅な軽量化を図ることが可能であり屋根や外装材30に作用する荷重の増大を抑えることが可能である。
【0024】
また、太陽電池モジュール10の反受光面側には面ファスナー20が設けられているので、太陽電池モジュール10が取り付けられる建物などの屋根や外装材30等にも面ファスナー20を取り付けておくことにより、容易に着脱可能な太陽電池モジュール10を提供することが可能である。このため、太陽電池モジュール10の取り付けだけでなく、万一、太陽電池モジュール10の交換が必要となった場合であっても、容易に交換することが可能である。
【0025】
また、太陽電池モジュール10は、屋外に設置されて日光に直接晒されることはもちろん、雨や風にも晒されるので、耐候性に優れたフッ素系樹脂であるエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)にて形成された表面保護シート14を備えることにより、耐侯性に優れた太陽電池モジュール10を提供することが可能である。さらに、面ファスナー20もフッ素系樹脂のエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)としたので、より耐侯性に優れた太陽電池モジュール10を提供することが可能である。
【0026】
ところで、フッ素系樹脂であるエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)は、難接着材料なので、単に接着しただけでは高い接着力が確保できないが、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)の面ファスナー20は、接着面20bに金属ナトリウム処理及び脱脂処理が施されて接着されているので、十分な接着強度にて接着された面ファスナー20を備えた太陽電池モジュール10を提供することが可能である。このため、屋根や外装材30の表面の凹凸に沿って取り付けられる太陽電池モジュール10が屈曲された状態にて取り付けられたとしても面ファスナー20は剥がれ難いので、より確実に太陽電池モジュール10を取り付けることが可能である。
【0027】
また、本実施形態の太陽電池モジュール10の取付方法によれば、太陽電池モジュール10が有する面ファスナー20と、建物の外装材30に取り付けられた面ファスナー20とを係合させるだけで、屋根や外装材30の表面の凹凸に沿わせるとともに、より確実にかつ容易に太陽電池モジュール10を取り付けること、及び、交換することが可能である。特に、太陽電池モジュール10を面ファスナー20にて着脱可能とし、取り付け作業には特別な施工技術を必要としないので、専門の作業者でなくとも太陽電池モジュール10を容易に取り付け及び交換することが可能である。
【0028】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
10 太陽電池モジュール
12 太陽電池セル
12a 受光面
14 表面保護シート
14a 接着面
18 エチレン−酢酸ビニル重合体(EVA)樹脂
20 面ファスナー
20a 係合部分
20b 接着面
21 面ファスナー
21a 突起
30 外装材
32 両面テープ