(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663219
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】冷媒タンク
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
F25B43/00 T
F25B43/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-158565(P2010-158565)
(22)【出願日】2010年7月13日
(65)【公開番号】特開2012-21681(P2012-21681A)
(43)【公開日】2012年2月2日
【審査請求日】2013年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】細川 侯史
【審査官】
鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−121031(JP,A)
【文献】
特開2009−121782(JP,A)
【文献】
実開昭54−017260(JP,U)
【文献】
特開2008−249242(JP,A)
【文献】
特開2009−180469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒流入孔及び冷媒流出孔が設けられたタンク本体と、
一端が前記冷媒流出孔に接続された状態で該タンク本体内に配置されたU字状の冷媒出口管と、
前記タンク本体内に配置され、乾燥剤を内包するバッグとを備え、
該バッグは、前記乾燥剤を収容する収容部と、該収容部に隣接して形成された延長部とを備え、前記収容部は前記冷媒出口管の対向する側管部の間に配置され、前記延長部に、前記冷媒出口管の底管部を挿通する挿通部が設けられ、
前記バッグは、布部材を二つ折り又は同一形状の布部材を重ねて形成され、
前記収容部は、前記二つ折りにした状態の布部材又は重ねた状態の布部材の一部の領域において、周囲を塞ぐように該布部材が接合されて形成され、
前記延長部は、前記二つ折りにした状態の布部材又は重ねた状態の布部材の残りの領域において、少なくとも該布部材の下端部が未接合とされて形成されたことを特徴とする冷媒タンク。
【請求項2】
前記挿通部が一対の通し孔によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の冷媒タンク。
【請求項3】
前記冷媒出口管に、該冷媒出口管の表面に対して凸となる部材が付設され、該部材が前記一対の通し孔の間に位置するように前記冷媒出口管が挿通されることを特徴とする請求項2に記載の冷媒タンク。
【請求項4】
前記タンク本体は、上端が開口した有底筒状の胴体と、前記冷媒流入孔及び冷媒流出孔が設けられ、該胴体の開口端を封止するヘッダとを備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の冷媒タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを循環する冷媒等を気液分離して貯留するアキュムレータやレシーバタンク等の冷媒タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを循環する冷媒等を気液分離して貯留するため、アキュムレータやレシーバタンク等が用いられる。例えば、特許文献1には、
図8(a)に示すように、下側タンク32と、冷媒流入口34及び冷媒流出口35が設けられた上側タンク33とからなるタンク本体31を備え、タンク本体31内に、冷媒流入口34から流入した冷媒を気液分離する気液分離板36と、乾燥剤(吸湿剤)を内包するバッグ37と、気液分離及び吸湿された冷媒を冷媒流出口35に導く冷媒出口管(インナーパイプ)38等を配置したアキュムレータ30が記載されている。
【0003】
このアキュムレータ30では、
図9に示すように、バッグ37の中央部に一対の貫通孔41、42が穿設されるとともに、これらの貫通孔41、42に冷媒出口管38が挿通され、これにより、バッグ37の位置が固定される。この構成によれば、バッグ37を固定するための専用部材が不要となるため、部品点数を低減することができ、また、バッグ37の貫通孔41、42に冷媒出口管38を挿通するのみで足りるため、バッグ37の取り付けが簡単になる。
【0004】
また、上記アキュムレータ30では、
図8に示すように、冷媒出口管38の底管部38aにオイル戻し孔39が設けられるとともに、このオイル戻し孔39を被うようにストレーナ40が取り付けられる。ストレーナ40は、オイル中の異物が冷媒出口管38内に流入するのを防止するために備えられ、円筒状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−121031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のアキュムレータ30においては、バッグ37の中央部に形成した貫通孔41、42に冷媒出口管38を挿通するため、バッグ37は、
図8(b)に示すように、中央部を折り目とした二つ折りの状態で冷媒出口管38に吊り下げられ、ストレーナ40に被さるように配置される。このため、アキュムレータ30が揺れてバッグ37が動くと、ストレーナ40の角部40a(
図8(a)参照)に接触して擦れ、バッグ37が破損するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、バッグの取り付けの簡単化及び部品点数の低減を図りつつ、バッグの破損を防止することが可能な冷媒タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、冷媒タンクであって、冷媒流入孔及び冷媒流出孔が設けられたタンク本体と、一端が前記冷媒流出孔に接続された状態で該タンク本体内に配置され
たU字状の冷媒出口管と、前記タンク本体内に配置され
て乾燥剤を内包するバッグとを備え、
該バッグ
は、前記乾燥剤を収容する収容部と、該収容部に隣接して形成された延長部とを備え、
前記収容部は前記冷媒出口管の対向する側管部の間に配置され、
前記延長部に、前記冷媒出口管
の底管部を挿通する挿通部が設けられ
、前記バッグは、布部材を二つ折り又は同一形状の布部材を重ねて形成され、前記収容部は、前記二つ折りにした状態の布部材又は重ねた状態の布部材の一部の領域において、周囲を塞ぐように該布部材が接合されて形成され、前記延長部は、前記二つ折りにした状態の布部材又は重ねた状態の布部材の残りの領域において、少なくとも該布部材の下端部が未接合とされて形成されたことを特徴とする。
【0009】
そして、本発明によれば、乾燥剤を収容する収容部に隣接して延長部を形成するとともに、この延長部に冷媒出口管を挿通する挿通部を設けるため、バッグの取り付けの簡単化及び部品点数の低減を図りつつ、バッグの破損を防止することが可能になる。
【0011】
上記冷媒タンクにおいて、前記挿通部を一対の通し孔によって構成することができる。
【0012】
上記冷媒タンクにおいて、前記冷媒出口管に、該冷媒出口管の表面に対して凸となる部材を付設し、該部材が前記一対の通し孔の間に位置するように前記冷媒出口管を挿通することができる。
【0014】
上記冷媒タンクにおいて、前記タンク本体が、上端が開口した有底筒状の胴体と、前記冷媒流入孔及び冷媒流出孔が設けられ、該胴体の開口端を封止するヘッダとを備えることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、バッグの取り付けの簡単化及び部品点数の低減を図りつつ、バッグの破損を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる冷媒タンクの一実施の形態としてのアキュムレータを示す断面図である。
【
図4】
図1のバッグを示す図であり、(a)は、一部を断面化した状態の正面図、(b)は、断面化しない状態で示した側面図である。
【
図5】(a)は、
図1のC−C線断面図であり、(b)は、(a)において、ストレーナ及び取付クリップを装着する前の状態を示す図である。
【
図6】バッグの他の例を示す図であり、(a)は、一部を断面化した状態の正面図、(b)は、断面化しない状態で示した側面図である。
【
図7】
図6のバッグを胴体内に配置した状態を、
図1のC−C線に相当する断面で示した図である。
【
図8】従来の冷媒タンクの一例を示す図であり、(a)は断面図、(b)は、(a)のG−G線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明にかかる冷媒タンクの一実施の形態としてのアキュムレータを示し、このアキュムレータ1は、大別して、両端が閉口した円筒状のタンク本体2と、タンク本体2内に配置される冷媒出口管(インナーパイプ)5及びバッグ6から構成される。タンク本体2及び冷媒出口管5は、例えば、アルミニウム合金等の金属によって形成され、バッグ6は、例えば、プラスチック製の不織布によって形成される。
【0019】
タンク本体2は、上端が開口した有底円筒状の胴体3と、溶接部9を介して胴体3と溶接接合され、胴体3の開口端を封止する円板状のヘッダ4とから構成される。
【0020】
図1及び
図2に示すように、ヘッダ4の天井面(下面)4aには、平面視略瓢箪形の第1及び第2の凸部4b、4cと、平面視略台形の第3の凸部4dとが凸設される。第1の凸部4bには、冷媒を胴体3内に導くための冷媒流入孔7が穿設され、また、第2の凸部4cには、水分が除去された冷媒を排出するための冷媒流出孔8が穿設される。
【0021】
第2の凸部4cの下部には、略U字状に曲げ加工された冷媒出口管5の一端部5aが挿入され、これにより、冷媒流出孔8と冷媒出口管5が接続される。冷媒出口管5の他端部5bは、ヘッダ4の天井面4aとの間に隙間10を形成する状態で、第1の凸部4b及び第3の凸部4dの間に挟入される。
【0022】
また、冷媒出口管5の底管部5cには、胴体3の底に溜まったコンプレッサオイル(以下、「オイル」という)を冷媒出口管5内に導くためのオイル戻し孔11が穿設され、このオイル戻し孔11を被うようにストレーナ12が配置される。ストレーナ12は、オイル中の異物が冷媒出口管5内に流入するのを防止するために設けられ、
図3に示すように、取付クリップ13によって冷媒出口管5の底管部5cに固定される。
【0023】
さらに、
図1に示すように、冷媒出口管5の内側(対向する側管部5d、5e同士の間)には、乾燥剤(吸湿剤)15を内包するバッグ6が配置される。バッグ6は、
図4に示すように、内側に乾燥剤15を収容する袋状の収容部6aと、収容部6aに隣接して形成され、下方に延設されたスカート状の延長部6bとを備え、延長部6bには、冷媒出口管5の外径と略々同寸の径を有する一対の通し孔6c、6dが穿設される。
【0024】
図1及び
図5(a)に示すように、延長部6bの通し孔6c、6dには、冷媒出口管5の底管部5cが挿通され、これにより、バッグ6の鉛直方向の固定が行われる。一方、バッグ6の水平方向の固定は、
図1に示すように、バッグ6の厚さD1を側管部5d、5eの間隔D2と同程度又は間隔D2よりも大きくし、側管部5d、5eでバッグ6を挟扼することにより行われる。尚、
図1においては、図を見易くするため、バッグ6の厚さD1を小さくして描いている。また、
図4に示す横幅D3を胴体3の内径と同程度又は該内径よりも大きくすることで、バッグ6の水平方向の固定を行うようにしてもよい。
【0025】
次に、上記構成を有するアキュムレータ1の動作について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、アキュムレータ1を冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間に配置し、蒸発器からの冷媒に含まれる水分を除去してガス冷媒を生成し、これを圧縮機へ戻す場合を例にとって説明する。
【0026】
蒸発器から冷媒が排出されると、接続配管(不図示)を通じてアキュムレータ1に搬送される。アキュムレータ1に到達した冷媒は、
図1に示すように、ヘッダ4の冷媒流入孔7に流入し、胴体3の底部に向かって流れる。その過程で、バッグ6内の乾燥剤15と接触し、これにより、冷媒中の水分が除去される。
【0027】
水分が除去された冷媒(ガス冷媒)は、胴体3の底部で折り返されて上昇し、冷媒出口管5の他端部5bに導かれる(
図2の矢印E参照)。そして、他端部5bから流れ込んだ冷媒は、冷媒出口管5の内部を流れ、冷媒流出孔8に導かれる。このとき、オイル戻し孔11を通じて、胴体3の底に溜まったオイルが吸引され、ガス冷媒とともに冷媒流出孔8に導かれる。その後、オイルを含んだガス冷媒は、冷媒流出孔8から排出され、接続配管(不図示)を通じて圧縮機に搬送される。
【0028】
次に、バッグ6の製造方法について、
図4を参照しながら説明する。
【0029】
先ず、通し孔6c、6dを穿設した1枚の長方形状の不織布を二つ折りに折り畳み、その状態で、前部側の長辺(繋がっていない側の長辺)6eの2/3程度の領域6fを超音波溶着等により接合する(溶着部6g)。この際、残りの1/3程度の領域、すなわち、溶着部6gよりも下の領域6hは、溶着接合せず、開放した状態とする。
【0030】
次いで、溶着部6gの下端から、長辺6eに直交する方向へ直線状に溶着接合し(溶着部6i)、収容部6aの底を形成する。その後、収容部6aの上方から乾燥剤15を投入し、最後に、上辺6jを直線状に溶着接合して収容部6aを閉じる(溶着部6k)。このため、収容部6aは、周囲を塞ぐように袋状に閉じられ、一方、延長部6bは、下端部6m及び前部6nが開口された状態となる。
【0031】
尚、不織布の接合方法は、溶着に限らず、縫い糸による縫合を用いてもよい。また、通し孔6c、6dは、必ずしも最初に形成する必要はなく、接合時又は最後に形成してもよい。
【0032】
次に、
図1に示すアキュムレータ1の組立方法について、
図1及び
図5を参照しながら説明する。
【0033】
上述のようにしてバッグ6を作成した後、
図5(b)に示すように、ストレーナ12及び取付クリップ13を装着していない状態の冷媒出口管5を、バッグ6の通し孔6c、6dに挿通する。次いで、
図5(a)に示すように、バッグ6の延長部6bを左右(
図5(b)の矢印F方向)に拡開し、冷媒出口管5の底管部5cにストレーナ12及び取付クリップ13を装着する。
【0034】
このとき、バッグ6の延長部6bの位置を調整し、ストレーナ12及び取付クリップ13を延長部6bの内側(通し孔6c、6dの間)に位置させる。これにより、ストレーナ12又は取付クリップ13を、延長部6bが冷媒出口管5に沿って移動した際のストッパとして機能させ、延長部6bの位置が大きくずれるのを防止する。
【0035】
次に、
図1に示すように、冷媒出口管5の一端部5a、他端部5bをヘッダ4に固定し、冷媒出口管5とヘッダ4を接合する。冷媒出口管5の固定は、冷媒出口管5の一端部5aをヘッダ4の第2の凸部4c内に挿入した後、所定の治具を用いて一端部5aを拡径することにより行う。最後に、冷媒出口管5を取り付けたヘッダ4を胴体3の開口部に被せ、ヘッダ4と胴体3を溶接接合する。
【0036】
以上のように、本実施の形態によれば、乾燥剤15を収容する収容部6aに隣接して延長部6bを形成するとともに、この延長部6bに通し孔6c、6dを穿設し、これら通し孔6c、6dに冷媒出口管5の底管部5cを挿通してバッグ6を固定するため、冷媒出口管5の側管部5d、5eの間に収容部6aを位置させた状態で、バッグ6を固定することができる。このため、収容部6aを取付クリップ13(有角物)に接触させることなくバッグ6を固定することができ、バッグ6の破損を防止することが可能になる。また、ストレーナ12にバッグ6が接触しないことで、ストレーナ12の網目がバッグ6で塞がれないため、オイル戻し性が損なわれることもない。
【0037】
また、
図8に示す従来のアキュムレータ30と同様に、バッグ6を固定するための部材が不要であるため、部品点数を低減することができ、また、バッグ6の通し孔6c、6dに冷媒出口管5を挿通するのみで足りるため、バッグ6の取り付けが簡単になる。
【0038】
尚、上記実施の形態においては、
図4に示すように、延長部6bの前部6nを接合せずに開口する状態としたが、
図6及び
図7に示すように、バッグ6の前部側の長辺6eの全体(領域17)を溶着部18によって接合し、延長部6bの下端部6mのみを開口させるようにしてもよい。この場合、延長部6bが曲折し難くなるため、収容部6aを適切に支持することが可能になる。
【0039】
また、上記実施の形態においては、1枚の不織布を二つ折りにしてバッグ6を形成するが、同一形状を有する複数の不織布を重ねて形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 アキュムレータ
2 タンク本体
3 胴体
4 ヘッダ
4a 天井面
4b 第1の凸部
4c 第2の凸部
4d 第3の凸部
5 冷媒出口管
5a 一端部
5b 他端部
5c 底管部
5d、5e 側管部
6 バッグ
6a 収容部
6b 延長部
6c、6d 通し孔
6e 前部側の長辺
6f 領域
6g 溶着部
6h 領域
6i 溶着部
6j 上辺
6k 溶着部
6m 下端部
6n 前部
7 冷媒流入孔
8 冷媒流出孔
9 溶接部
10 隙間
11 オイル戻し孔
12 ストレーナ
13 取付クリップ
15 乾燥剤
17 領域
18 溶着部