(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663281
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】曲げ損失が低減された高帯域幅マルチモード光ファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/028 20060101AFI20150115BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
G02B6/18
G02B6/22
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2010-266104(P2010-266104)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2011-118392(P2011-118392A)
(43)【公開日】2011年6月16日
【審査請求日】2013年8月27日
(31)【優先権主張番号】0958639
(32)【優先日】2009年12月3日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】61/266,754
(32)【優先日】2009年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507112468
【氏名又は名称】ドラカ・コムテツク・ベー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドウニ・モラン
(72)【発明者】
【氏名】マリアンヌ・ビゴ−アストラツク
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・シラール
(72)【発明者】
【氏名】クーン・デイ・ヨン
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/078962(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/028
G02B 6/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心から周縁に向かって、
半径r
1、アルファインデックスプロファイル、および前記半径r
1で、約−1×10
−3より大きい外側クラッドに対する負の屈折率差Δn
endを有する中心コアと、
幅w
2、および前記外側クラッドに対する屈折率差Δn
2を有する内側クラッドと、
幅w
3、約−15×10
−3と−3×10
−3との間の前記外側クラッドに対する屈折率差Δn
3、およ
び体積v
3を有するデプレスドトレンチと、
外側クラッドとを備
え、
前記中心コアのアルファインデックスプロファイルが、1.9と2.1の間のアルファパラメータを有し、
前記内側クラッドの幅w2が、約0.5ミクロンと2ミクロンの間であり、
前記内側クラッドの屈折率差Δn2の絶対値が、約0.2×10−3と2×10−3の間であり、
前記デプレスドトレンチの幅w3が、約3ミクロンと5ミクロンの間であり、
前記デプレスドトレンチの体積v3が、約200%・μm2と1,200%・μm2の間であり、
前記デプレスドトレンチの体積v3が、次式によって定義され、
【数1】
前記式で、rextおよびrintは、前記デプレスドトレンチのそれぞれ外半径および内半径であり、Δ%(r)は、パーセンテージで表された前記外側クラッドに対する前記デプレスドトレンチの屈折率差である、マルチモード光ファイバ。
【請求項2】
前記中心コアが、約11×10−3と18×10−3の間、好ましくは約13×10−3と16×10−3の間の前記外側クラッドに対する最大の屈折率差Δn1を有する、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項3】
前記内側クラッドの屈折率差Δn2および前記デプレスドトレンチの屈折率差Δn3が以下の不等式
1000×Δn3<−1.29×(1000×Δn2)2−1.64×1000×Δn2−2.51
を満足する、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項4】
前記内側クラッドの屈折率差Δn2および前記デプレスドトレンチの屈折率差Δn3が以下の不等式
−1.89×(1000×Δn2)2−7.03×(1000×Δn2)−9.91<1000×Δn3、および
1000×Δn3<−1.53×(1000×Δn2)2−3.34×1000×Δn2−4.25
を満足する、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項5】
前記デプレスドトレンチの屈折率差Δn3が、約−10×10−3と−5×10−3の間である、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項6】
前記デプレスドトレンチの半径routが、約32ミクロン以下、好ましくは30ミクロン以下である、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項7】
前記デプレスドトレンチの体積v3が、約250%・μm2と750%・μm2の間である、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項8】
850ナノメータの波長において15ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失が0.1dB未満、好ましくは0.05未満である、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項9】
850ナノメータの波長において10ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失が0.3dB未満、好ましくは0.1未満である、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項10】
850ナノメータの波長において7.5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失が0.4dB未満、好ましくは0.2dB未満、より好ましくは0.1dB未満、さらにより好ましくは0.01dB未満である、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項11】
850ナノメータの波長において5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失が1dB未満、好ましくは0.3dB未満である、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項12】
850ナノメータの波長において5.5ミリメートルの曲げ半径で半回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失が0.1dB未満である、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項13】
850ナノメータの波長において、光ファイバが、少なくとも約1,500MHz・km、好ましくは少なくとも約3,500MHz・kmの全モード励振(OFL)帯域幅を有する、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項14】
光ファイバが、0.185と0.215の間の開口数(NA)を有する、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項15】
850ナノメータの波長において光ファイバが、0.33ps/m未満の外側DMD値を有する、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項16】
前記中心コアの半径r1が25±1.5ミクロンであり、
850ナノメータの波長において光ファイバが、約0.14ps/m未満の外側DMD値(0−23ミクロン)を有する、
請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項17】
前記中心コアの半径r1が約23.5ミクロンと26.5ミクロンの間であり、
850ナノメータの波長において光ファイバが、約0.25ps/m未満の外側DMD値(0−23ミクロン)を有する、
請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項18】
請求項1に記載の光ファイバの少なくとも一部を備えるマルチモード光ファイバシステムであって、好ましくは約100メートルの距離に渡って少なくとも10GbE(Gb/s)のデータレートを有し、より好ましくは約300メートルの距離に渡って少なくとも10GbE(Gb/s)のデータレートを有する、マルチモード光ファイバシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送の分野に関し、より詳細には、高データレートアプリケーションのための低減された曲げ損失および高帯域幅を有するマルチモード光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ(すなわち、一般に1つまたは複数の被覆層によって包まれたガラス繊維)は従来、光信号を送信しかつ/または増幅する光ファイバコアと、光信号をコア内に閉じ込める光クラッドとを含む。したがって、コアの屈折率ncは一般に、光クラッドの屈折率ngより大きい(すなわち、nc>ng)。
【0003】
光ファイバでは、屈折率プロファイルは一般に、屈折率を光ファイバの半径に関連付ける関数のグラフ表示によって分類される。従来、光ファイバの中心への距離rがX軸に示され、(半径rにおける)屈折率と、光ファイバの外側クラッド(たとえば外側光クラッド)の屈折率との差がY軸に示される。屈折率プロファイルは、ステップ、台形、アルファまたは三角形の各々の形状を有するグラフについて、「ステップ」プロファイル、「台形」プロファイル、「アルファ」プロファイルまたは「三角形」プロファイルと呼ばれる。これらの曲線は一般に、光ファイバの理論的プロファイルまたは設定プロファイルを表す。しかし、光ファイバの製造の制約によって、実際のプロファイルがわずかに異なることになり得る。
【0004】
概して、光ファイバの2つの主要なカテゴリ:マルチモードファイバとシングルモードファイバが存在する。マルチモード光ファイバでは、所与の波長について、複数の光モードが光ファイバに沿って同時に伝搬されるが、シングルモード光ファイバでは、高次のモードが強く減衰される。シングルモードまたはマルチモードのグラスファイバの典型的な直径は、125ミクロンである。マルチモード光ファイバのコアは一般に、約50ミクロンと62.5ミクロンの間の直径を有するが、シングルモード光ファイバのコアは一般に、約6ミクロンと9ミクロンの間の直径を有する。マルチモードシステムは一般に、マルチモードの光源、コネクタおよび保守がより低いコストで取得され得るので、シングルモードシステムほど高価でない。
【0005】
マルチモード光ファイバは一般に、ローカルネットワークやLAN(local area network:ローカルエリアネットワーク)など、広帯域幅を必要とする短距離アプリケーションに使用される。マルチモード光ファイバは、具体的には光ファイバ互換性の要件に関する基準(たとえば帯域幅、開口数およびコア直径)を定義するITU−T G.651.1勧告に基づく国際的な標準化の主題であった。
【0006】
さらに、OM3規格は、長距離(すなわち300メートル超の距離)に渡り高帯域幅アプリケーション(すなわち1GbEより大きいデータレート)の要求を満たすように採用されてきた。高帯域幅アプリケーションの開発により、マルチモード光ファイバの平均コア径は、62.5ミクロンから50ミクロンに減少した。
【0007】
一般に、光ファイバは、高帯域幅アプリケーションでうまく機能するようにできるだけ広い帯域幅を有するべきである。所与の波長について、光ファイバの帯域幅は、いくつかの異なるやり方で特徴付けられ得る。一般に、いわゆる「全モード励振」状態(OFL:overfilled launch)帯域幅と、いわゆる「実効モード帯域幅」状態(EMB:effective modal bandwidth)との間で区別される。OFL帯域幅の取得は、(たとえばレーザダイオードまたは発光ダイオード(LED:light emitting diode)を使用して)光ファイバの半径方向面に渡り均一励起を示す発光源を使用することを前提とする。
【0008】
VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光半導体レーザ)などの高帯域幅アプリケーションで使用される最近開発された光源は、光ファイバの半径方向面に渡り不均一励起を示す。この種類の光源では、OFL帯域幅はそれほど適切でない測定値であり、したがって、実効モード帯域幅(EMB)を使用することが望ましい。計算された実効帯域幅(EMBc)は、使用されたVCSELの種類とは無関係に、マルチモード光ファイバの最小EMBを推定する。EMBcは、(たとえばFOTP−220規格に記載された)異モード遅延(DMD:differential−mode−delay)測定から得られる。
【0009】
DMDを測定し、実効モード帯域幅を計算する方法の一実施形態は、FOTP−220規格において見られ得る。この技法についてのさらなる詳細は、以下の刊行物に述べられている:P.F.KolesarおよびD.J.Mazzarese、「Understanding Multimode Bandwidth and Differential Mode Delay Measurements and Their Applications」、Proceedings of the 51st International Wire and Cable Symposium、453−460頁、D.ColemanおよびPhilip Bell、「Calculated EMB Enhances 10GbE Performance Reliability for Laser−Optimized 50/125μm Multimode Fiber」、Corning Cable Systems Whitepaper。
【0010】
図1は、2002年11月22日のTIA SCFO−6.6バージョンで公開されたFOTP−220規格の基準によるDMD測定の概略図を示している。
図1は、光ファイバの一部(すなわち、外側クラッドに囲まれた光コア)を表している。DMDグラフは、連続した各パルス間で半径方向にオフセットして、所与の波長λ0を有する光パルスをマルチモード光ファイバに連続的に注入することによって得られる。次いで、所与のファイバ長Lの後に、各パルスの遅延が測定される。複数の同一の光パルス(すなわち、同じ振幅、波長および周波数を有する光パルス)が、マルチモード光ファイバのコアの中心に対するそれぞれ異なる半径方向オフセットを伴って注入される。
図1に、注入された光パルスが、光ファイバの光コア上で黒点として示されている。光ファイバを直径50ミクロンで特徴付けるために、FOTP−220規格は、少なくとも24回の個々の測定が(すなわち24個の異なる半径方向オフセット値で)行われるよう推奨している。これらの測定から、モード分散および計算された実効モード帯域幅(EMBc)を決定することが可能である。
【0011】
TIA−492AAAC−A規格は、イーサネット(登録商標)高帯域伝送網アプリケーションで長距離に渡って使用される50ミクロン直径マルチモード光ファイバの性能要件を指定している。OM3規格は、850ナノメータの波長において、少なくとも2,000MHz・kmのEMBを必要とする。OM3規格は、300メートルの距離まで10Gb/s(10GbE)のデータレートへのエラーフリー伝送を保証する。OM4規格は、550メートルの距離まで10Gb/s(10GbE)データレートへのエラーフリー伝送を得るために、850ナノメータの波長で少なくとも4,700MHz・kmのEMBを必要とする。
【0012】
マルチモード光ファイバでは、光ファイバに沿ったいくつかのモードの伝搬時間または群遅延時間の差によって、光ファイバの帯域幅が決まる。具体的には、同じ伝搬媒質について(すなわちステップインデックスマルチモード光ファイバでは)、それぞれ異なるモードは、それぞれ異なる群遅延時間を有する。群遅延時間のこの差によって、光ファイバのそれぞれ異なる半径方向オフセットに沿って伝搬するパルス間でタイムラグが生じることになる。
【0013】
たとえば、
図1の右側のグラフに示されるように、タイムラグが、個々のパルス間で観測される。この
図1のグラフは、ミクロン単位の半径方向オフセット(Y軸)、およびパルスが光ファイバの所与の長さを通過するのに要したナノ秒単位の時間(X軸)に従ってそれぞれの個々のパルスを示している。
【0014】
図1に示されたよう、X軸に沿ってピークの位置は変化しており、それは、個々のパルス間のタイムラグ(すなわち遅延)を示している。この遅延は、結果として生じる光パルスの広がりを引き起こす。光パルスが広がると、パルスが立下りパルスに重畳されるリスクが増し、光ファイバによってサポートされる帯域幅(すなわちデータレート)が減少する。したがって、帯域幅は、光ファイバのマルチモードコア内で伝搬する光モードの群遅延時間に直接に関連している。したがって、広い帯域幅を保証するには、すべてのモードの群遅延時間が同一であることが望ましい。別の言い方をすると、所与の波長についてモード間分散はゼロ、または少なくとも最小限に抑えられるべきである。
【0015】
モード間分散を減少させるために、電気通信で使用されるマルチモード光ファイバは一般に、光ファイバの中心からクラッドとの界面に向かって累進的に減少する屈折率(すなわち「アルファ」コアプロファイル)をもつコアを有する。こうした光ファイバは、数年間使用されており、その特性については、「Multimode Theory of Graded−Core Fibers」、D.Glogeら、Bell system Technical Journal 1973、1563−1578頁に記載されており、「Comprehensive Theory of Dispersion in Graded−Index Optical Fibers」、G.Yabre、Journal of Lightwave Technology、2000年2月、18巻、2号、166−177頁に要約されている。
【0016】
グレーデッドインデックス型光ファイバ(すなわちアルファインデックスプロファイル)は、次式に従って、屈折率値nと光ファイバの中心からの距離rとの関係によって述べられ得る。
【数1】
ただし、α≧1であり、αは、インデックスプロファイルの形状を示す無次元のパラメータであり、
nは、光ファイバのコアの最大屈折率であり、
aは、光ファイバのコアの半径であり、
【数2】
ただし、n
0は、外側クラッド(ほとんどの場合、シリカで作られる)の屈折率に対応し得るマルチモードコアの最小屈折率である。
【0017】
したがって、グレーデッドインデックス(すなわちアルファプロファイル)を有するマルチモード光ファイバは、光ファイバのいずれかの半径方向に沿って屈折率の値が光ファイバのコアの中心からその周縁に向かって連続的に減少するように回転対称性を有するコアプロファイルをもつ。マルチモード光信号がこうしたグレーデッドインデックスコア内で伝搬するとき、それぞれ異なる光モードは、それぞれ異なる伝搬媒質に遭遇する(すなわち屈折率が変化するためである)。これは、結果として、それぞれの光モードの伝搬速度にそれぞれ異なるやり方で影響を及ぼす。したがって、パラメータαの値を調整することによって、すべてのモードに事実上等しい群遅延時間を得ることが可能である。別の言い方をすると、屈折率プロファイルは、モード間分散を減少させ、さらには除去するように変更されてよい。
【0018】
しかし、実際には、製造されたマルチモード光ファイバは、一定の屈折率の外側クラッドによって囲まれたグレーデッドインデックス型の中心コアを有する。コア−クラッド界面は、コアのアルファインデックスプロファイルを遮る。したがって、マルチモード光ファイバのコアは、理論上完全なアルファプロファイル(すなわちアルファ設定プロファイル)に決して対応しない。外側クラッドは、低次のモードに対して高次のモードを加速する。この現象は、「クラッド効果」として知られている。DMD測定では、最大の半径方向位置(すなわち外側クラッドに最も近い)について得られた応答は、複数のパルスを示し、それによって、応答信号の時間拡散がもたらされる。したがって、帯域幅は、このクラッド効果によって減少する。
【0019】
マルチモード光ファイバは一般に、ローカルエリアネットワーク(LAN)など、広帯域幅を必要とする短距離アプリケーションに使用される。こうしたアプリケーションでは、光ファイバは、偶然の、そうでなければ意図されない曲げを受けることがあり、それによって、光ファイバのモード電力分散および帯域幅が変更され得る。
【0020】
したがって、10ミリメートル未満の曲率半径を有する曲げの影響を受けないマルチモード光ファイバを達成することが望ましい。提案された1つの解決策は、コアとクラッドの間にデプレスドトレンチ(depressed trench)を加えることを伴う。しかし、トレンチの位置および深さは、光ファイバの帯域幅に著しく影響することがある。
【0021】
特開2006/47719号公報は、クラッド内にデプレスドトレンチを有するグレーデッドインデックス型光ファイバを開示している。しかし、開示された光ファイバは、所望の比較的に低い帯域幅よりも高い曲げ損失を示している。さらに、開示された光ファイバのクラッド効果については言及されていない。
【0022】
国際公報第2008/085851号は、クラッド内にデプレスドトレンチを有するグレーデッドインデックス型光ファイバを開示している。しかし、開示された光ファイバは、比較的に低い帯域幅を示しており、そのクラッド効果については言及されていない。
【0023】
米国特許出願公報第2009/0154888号明細書は、クラッド内にデプレスドトレンチを有するグレーデッドインデックス型光ファイバを開示している。しかし、開示された光ファイバは、比較的に低い帯域幅を示しており、そのクラッド効果については言及されていない。
【0024】
欧州特許第0131729号明細書は、クラッド内にデプレスドトレンチを有するグレーデッドインデックス型光ファイバを開示している。この特許によれば、高帯域を達成するために、グレーデッドインデックスコアの末端とデプレスドトレンチの始端のとの間の距離は、0.5ミクロンと2ミクロンの間であるべきである。しかし、開示された光ファイバは所望のものよりも高い曲げ損失を示している。さらに、開示された光ファイバのクラッド効果については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2006/47719号公報
【特許文献2】国際公報第2008/085851号
【特許文献3】米国特許出願公報第2009/0154888号明細書
【特許文献4】欧州特許第0131729号明細書
【特許文献5】米国特許第5,522,007号明細書
【特許文献6】米国特許第5,194,714号明細書
【特許文献7】米国特許第6,269,663号明細書
【特許文献8】米国特許第6,202,447号明細書
【特許文献9】国際公報第2009/078962号
【特許文献10】米国特許出願公報第2008/166094号明細書
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】P.F.KolesarおよびD.J.Mazzarese、「Understanding Multimode Bandwidth and Differential Mode Delay Measurements and Their Applications」、Proceedings of the 51st International Wire and Cable Symposium、453−460頁
【非特許文献2】D.ColemanおよびPhilip Bell、「Calculated EMB Enhances 10GbE Performance Reliability for Laser−Optimized 50/125μm Multimode Fiber」、Corning Cable Systems Whitepaper
【非特許文献3】「Multimode Theory of Graded−Core Fibers」、D.Glogeら、Bell system Technical Journal 1973、1563−1578頁
【非特許文献4】「Comprehensive Theory of Dispersion in Graded−Index Optical Fibers」、G.Yabre、Journal of Lightwave Technology、2000年2月、18巻、2号、166−177頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、高データレートアプリケーションのための、低減された曲げ損失および高帯域幅を有し、クラッド効果が減少したグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
一態様では、本発明は、中心コアと、内側クラッドと、デプレスドトレンチと、外側クラッド(たとえば外側光クラッド)とを含む光ファイバを包含する。一般に、中心コアは、アルファインデックスプロファイル(すなわちグレーデッドインデックス型プロファイル)および半径r
1を有するガラスベースの中心コアである。中心コアのアルファインデックスプロファイルは、外側クラッドに対する屈折率差Δn
endに対応する中心コアの半径r
1上で最小の屈折率を有する。別の言い方をすると、中心コアは、半径r
1およびアルファインデックスプロファイル、また中心コアの半径r
1で、外側クラッドに対する屈折率差Δn
endを有する。
【0029】
光ファイバの内側クラッドは、中心コアと外側クラッドの間に位置する。内側クラッドは、半径r
2、幅w
2、および外側クラッドに対する屈折率差Δn
2を有する。
【0030】
光ファイバのデプレスドトレンチは、内側クラッドと外側クラッドの間に位置する。デプレスドトレンチは、半径r
out、幅w
3、および外側クラッドに対する屈折率差Δn
3を有する。
【0031】
換言すると、本発明は、中心から周縁に向かって:− 半径r
1、アルファインデックスプロファイル、および前記半径r
1で、約−1×10
−3より大きい外側クラッドに対する負の屈折率差Δn
endを有する中心コアと、− 半径r
2、幅w
2、および前記外側クラッドに対する屈折率差Δn
2を有する内側クラッドと、− 半径r
out、幅w
3、約−15×10
−3と−3×10
−3の間の前記外側クラッドに対する屈折率差Δn
3、および(iv)体積v
3を有するデプレスドトレンチと、− 外側クラッドとを備えるマルチモード光ファイバに関する。
【0032】
換言すると、本発明は:(i)半径r
1、(ii)アルファインデックスプロファイル、(iii)前記半径r
1で、約−1×10
−3より大きい外側クラッドに対する負の屈折率差Δn
endを有する中心コアと、前記中心コアと前記外側クラッドの間に位置する内側クラッドであって、(i)半径r
2、(ii)幅w
2、および(iii)前記外側クラッド対する屈折率差Δn
2を有する内側クラッドと、前記内側クラッドと前記外側クラッドの間に位置するデプレスドトレンチであって、(i)半径r
out、(ii)幅w
3、(iii)約−15×10
−3と−3×10
−3の間の前記外側クラッドに対する屈折率差Δn
3、および(iv)体積v
3を有するデプレスドトレンチとを備えるマルチモード光ファイバに関する。
【0033】
別の実施形態では、中心コアのアルファインデックスプロファイルは、1.9と2.1の間のアルファパラメータを有する。
【0034】
別の実施形態では、中心コアは、約11×10
−3と18×10
−3の間の前記外側クラッドに対する最大屈折率差Δn
1を有する。
【0035】
別の実施形態では、中心コアは、約13×10
−3と16×10
−3の間の前記外側クラッドに対する最大の屈折率差Δn
1を有する。
【0036】
別の実施形態では、中心コアの屈折率差Δn
endは、負の数、一般には−1×10
−3と0の間(たとえば約−0.7×10
−3と−0.3×10
−3の間)である。
【0037】
別の実施形態では、デプレスドトレンチの屈折率差Δn
3は、−15×10
−3と−3×10
−3の間である。
【0038】
別の実施形態では、前記内側クラッドの屈折率差Δn
2および前記デプレスドトレンチの屈折率差Δn
3は、以下の不等式を満足する:
1000×Δn
3<−1.29×(1000×Δn
2)
2−1.64×1000×Δn
2−2.51。
【0039】
別の実施形態では、前記内側クラッドの屈折率差Δn
2および前記デプレスドトレンチの屈折率差Δn
3は、以下の不等式を満足する:
−1.89×(1000×Δn
2)
2−7.03×(1000×Δn
2)−9.91<1000×Δn
3、および
1000×Δn
3<−1.53×(1000×Δn
2)
2−3.34×1000×Δn
2−4.25。
【0040】
別の実施形態では、前記内側クラッドの屈折率差Δn
2の絶対値は、約0.2×10
−3および2×10
−3の間である。
【0041】
別の実施形態では、前記内側クラッドの幅w
2は、約0.5ミクロンと2ミクロンの間である。
【0042】
別の実施形態では、前記デプレスドトレンチの屈折率差Δn
3は、約−10×10
−3と−5×10
−3の間である。
【0043】
別の実施形態では、前記デプレスドトレンチの幅w
3は、約3ミクロンと6ミクロンの間、好ましくは3ミクロンと5ミクロンの間である。
【0044】
別の実施形態では、前記デプレスドトレンチの半径r
outは、約32ミクロン以下である。
【0045】
別の実施形態では、前記デプレスドトレンチの半径r
outは、30ミクロン以下である。
【0046】
別の実施形態では、前記デプレスドトレンチの体積v
3は、約200%・μm
2と1,200%μm
2の間である。
【0047】
別の実施形態では、前記デプレスドトレンチの体積v
3は、約250%・μm
2と750%・μm
2の間である。
【0048】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において15ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は0.1dB未満である。
【0049】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において15ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は0.05dB未満である。
【0050】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において10ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は0.3dB未満である。
【0051】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において10ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は0.1dB未満である。
【0052】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において7.5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は0.4dB未満(たとえば0.2dB未満)である。
【0053】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において7.5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は0.1dB未満(たとえば0.05dB未満)である。
【0054】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において7.5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は0.04dB未満(たとえば0.01dB未満)である。
【0055】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は1dB未満である。
【0056】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は0.3dB未満である。
【0057】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において5.5ミリメートルの曲げ半径で半回巻いた場合、光ファイバの曲げ損失は0.1dB未満である。
【0058】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において、光ファイバは、少なくとも約1,500MHz・kmの全モード励振(OFL)帯域幅を有する。
【0059】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において、光ファイバは、少なくとも約3,500MHz・kmの全モード励振(OFL)帯域幅を有する。
【0060】
別の実施形態では、光ファイバは、0.185と0.215の間の開口数(NA:numerical aperture)を有する。
【0061】
別の実施形態では、850ナノメータの波長において光ファイバは、0.33ps/m未満、好ましくは0.25ps/m未満、より好ましくは0.14ps/m未満の外側DMD値を有する。
【0062】
別の実施形態では、前記中心コアの半径r
1は、25±1.5ミクロンであり、850ナノメータの波長において光ファイバは、約0.14ps/m未満の外側DMD値(0−23ミクロン)を有する。
【0063】
特定の一実施形態では、本発明は、(i)半径r
1、(ii)アルファインデックスプロファイル、および(iii)前記半径rで、約−1×10
−3よりも大きい、外側クラッドに対する負の屈折率差Δn
endを有する中心コアと、前記中心コアと前記外側クラッドの間に位置する内側クラッドであって、(i)半径r
2、(ii)幅W
2、および(iii)前記外側クラッドに対する屈折率差Δn
2を有する内側クラッドと、前記内側クラッドと前記外側クラッドの間に位置するデプレスドトレンチであって、(i)約32ミクロン以下の半径r
out、(ii)幅w
3、(iii)約−15×10
−3と
−3×10
−3の間の前記外側クラッドに対する屈折率差Δn
3、および(iv)体積v
3を有するデプレスドトレンチとを備えるマルチモード光ファイバに関し、前記内側クラッドの屈折率差Δn
2および前記デプレスドトレンチの屈折率差Δn
3は、以下の不等式を満足する:
1000×Δn
3<−1.29×(1000×Δn
2)
2−1.64×1000×Δn
2−2.51。
【0064】
一実施形態では、前記中心コアの半径r
1は、約23.5ミクロンと26.5ミクロンの間であり、850ナノメータの波長において光ファイバは、約0.25ps/m未満の外側DMD値(0−23ミクロン)を有する。
【0065】
特定の実施形態では、本発明は、(i)半径r
1、(ii)アルファインデックスプロファイル、および(iii)前記半径r
1で、約−1×10
−3より大きい、外側クラッドに対する負の屈折率差Δn
endを有する中心コアと、前記中央コアと前記外側クラッドの間に位置する内側クラッドであって、(i)半径r
2、(ii)幅W
2、および(iii)前記外側クラッドに対する屈折率差Δn
2を有する内側クラッドと、前記内側クラッドと前記外側クラッドの間に位置するデプレスドトレンチであって、(i)半径r
out、(ii)幅w
3、(iii)約−15×10
−3と−3×10
−3の間の前記外側クラッドに対する屈折率差Δn
3、および(iv)体積v
3を有するデプレスドトレンチとを備えるマルチモード光ファイバに関し、850ナノメータの波長において光ファイバは、少なくとも2,000MHz・kmの実効モード帯域幅(EMB)を有し、前記内側クラッドの屈折率差Δn
2、および前記デプレスドトレンチの屈折率差Δn
3は、以下の不等式の両方を満足する:
−1.89×(1000×Δn
2)
2−7.03×(1000×Δn
2)−9.91<1000×Δn
3、および
1000×Δn
3<−1.53×(1000xΔn
2)
2−3.34×1000×Δn
2−4.25。
【0066】
別の態様では、本発明は、上記内容に従って光ファイバの一部を含む光伝送システムを包含する。
【0067】
一実施形態では、光システムは、少なくとも100メートル(たとえば300メートル)に渡って少なくとも10Gb/sのデータレートを有する。
【0068】
上記の例示的な要約、ならびに本発明の他の目的および/または利点、およびそれが達成されるやり方について、以下の詳細な説明およびその添付の図面内でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】DMD測定法およびグラフの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明による光ファイバの一実施形態の屈折率プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明は、クラッド効果の減少と共に、低減された曲げ損失および高帯域幅を達成するマルチモード光ファイバを包含する。このマルチモード光ファイバは、高データレートアプリケーションに特に適している。
【0071】
上述されたように、
図2は、本発明による光ファイバの一実施形態の屈折率プロファイルをグラフで示している。光ファイバは、外側クラッド(たとえば外側光クラッド)に囲まれる中心コアを含む。コストの理由により、外側クラッドは一般には天然シリカで作られるが、それは、ドープシリカで作られることもある。中心コアは、半径r
1、外側クラッドに対する屈折率差Δn
1、およびアルファインデックスプロファイルを有する。中心コアのアルファインデックスプロファイルは、外側クラッドに対する屈折率差Δn
endに対応する中心コアの半径r
1で最小の屈折率を有する。別の言い方をすると、中心コアの半径r
1で、中心コアは、外側クラッドに対する屈折率差Δn
endを有する。
【0072】
一般に、中心コアのアルファインデックスプロファイルは、中心コアの半径r
1で最小の屈折率値を有し、この最小屈折率値は、外側クラッドの屈折率値より小さい。したがって、Δn
endは、外側クラッドとの屈折率差(たとえばn
core(r
1)−n
cladding)として表される場合、負数である。一実施形態では、中心コアの屈折率差Δn
end(すなわち中心コアのアルファプロファイルの終端で)は、約−1×10
−3より大きく、かつ0未満である。別の言い方をすると、外側クラッドに対して中心コアは、約−1×10
−3より大きい負の屈折率差Δn
endを有する。
【0073】
一般的な実施形態では、中心コアの半径r
1は、約25ミクロンである。外側クラッドに対する中心コアの最大の屈折率差Δn
1は一般に、約11×10
−3と18×10
−3の間(たとえば13×10
−3と16×10
−3の間)である。さらに、中心コアのアルファインデックスプロファイルのアルファパラメータは一般に、約1.9と2.1の間である。
【0074】
光ファイバは、中心コアと外側クラッド(たとえば中心コアを直接囲む)の間に位置する内側クラッドをも含む。内側クラッドは、半径r
2、幅w
2、および外側クラッドに対する屈折率差Δn
2を有する。
【0075】
一部の実施形態では、内側クラッドの屈折率差Δn
2は、内側クラッドの幅w
2に渡って一定である。内側クラッドの屈折率差Δn
2の絶対値(すなわち|Δn
2|)は一般に、約0.2×10
−3より大きく、かつ2×10
−3未満である。内側クラッドの幅w
2は、約0.5ミクロンと2ミクロンの間である。
【0076】
デプレスドトレンチは一般に、内側クラッドと外側クラッド(たとえば内側クラッドを直接囲む)の間に位置する。デプレスドトレンチは、幅w
3、半径r
out、および外側クラッドに対する屈折率差Δn
3を有する。
【0077】
一般に、用語「デプレスドトレンチ」は、外側クラッドの屈折率より実質上小さい屈折率を有する光ファイバの半径部分について述べるために用いられる。デプレスドトレンチの屈折率差Δn
3は一般に、約−15×10
−3と−3×10
−3(たとえば−10×10
−3と−5×10
−3の間)である。デプレスドトレンチの幅w
3は一般に、約3ミクロンと5ミクロンの間である。
【0078】
概して、屈折率差は、次式を使用してパーセンテージとして表すこともできる:
【数3】
ただし、n(r)は、半径方向位置の関数として比較屈折率値(たとえばデプレスドトレンチの屈折率n
3)であり、n
claddingは、外側クラッドの屈折率値である。この数式は、屈折率が光ファイバの所与の区間に渡って変化する(すなわち屈折率が半径方向位置の関数として変化する)場合、または屈折率が所与の区間に渡って一定である場合に使用され得ることが当業者には認識されよう。
【0079】
外側クラッドは一般に、一定の屈折率を有することが当業者には認識されよう。そうではあるが、外側クラッドが一定でない屈折率を有する場合、屈折率差は一般に、外側クラッドの最も内側の部分(すなわち中心コアにも最も近く、光ファイバ内の光信号の伝搬に影響を及ぼし得る外側クラッドのその部分)に関して測定される。
【0080】
外側クラッドに対する一定の屈折率差は、次式を用いて、パーセンテージとして表すこともできる:
【数4】
ただし、nは、比較屈折率値(たとえばデプレスドトレンチの屈折率n
t)であり、n
claddingは、外側クラッドの屈折率値である。
【0081】
本明細書では、デプレスドトレンチの体積vは、次式によって定義される:
【数5】
この式で、r
extおよびr
intは、デプレスドトレンチのそれぞれ外半径および内半径であり、Δ%(r)は、パーセンテージで表された外側クラッドに対するデプレスドトレンチの屈折率差である。この数式は、非矩形トレンチと矩形トレンチの両方の文脈で用いられ得ることが当業者には理解されよう。
【0082】
デプレスドトレンチが矩形形状(すなわちステップインデックスプロファイル)を有する場合、数式(上記)は、次式へと簡略化され得る:
【数6】
この式で、r
extおよびr
intは、は、デプレスドトレンチのそれぞれ外半径および内半径であり、Δ%は、パーセンテージで表された外側クラッドに対するデプレスドトレンチの屈折率差である。
【0083】
したがって、内側クラッドを直接囲むデプレスドトレンチを含む光ファイバの一実施形態では、デプレスドトレンチは、次式によって定義された体積v
3を有する:
【数7】
デプレスドトレンチの体積v
3は一般に、約200%・μm
2と1,200%・μm
2の間(たとえば250%・μm
2と750%・μm
2の間)である。概して、第2のデプレスドトレンチの特性によって、低い曲げ損失の達成が促される。
【0084】
一実施形態では、内側クラッドの屈折率差Δn
2とデプレスドトレンチの屈折率差Δn
3は、以下の不等式を満足する:
1000×Δn
3<−1.29×(1000×Δn
2)
2−1.64×1000×Δn
2−2.51。
【0085】
特定の理論との結び付きなしに、本発明人は、内側クラッドの屈折率差Δn
2とデプレスドトレンチの屈折率差Δn
3のこの関係が、広帯域幅を保存しながら低い曲げ損失を達成することを見つけた。
【0086】
一部の実施形態では、光ファイバは850ナノメータの波長において、15ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合には0.1dB未満(たとえば0.05dB未満)の曲げ損失、10ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合には0.3dB未満(たとえば0.1dB未満)の曲げ損失、7.5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合には0.4dB未満(たとえば0.2dB未満)の曲げ損失、5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合には1dB未満(たとえば0.3dB未満)の曲げ損失を有する。
【0087】
一般に、この光ファイバは、従来技術のファイバより高い帯域幅を有する。具体的には、850ナノメータの波長において光ファイバは、6,000MHz・km以上など、少なくとも1500MHz・kmのOFL帯域幅を有し得る。より一般的には、光ファイバは、少なくとも10,000MHz・kmのOFL帯域幅を示す。
【0088】
しかし、上述されたように、OFL帯域幅は、光ファイバの高データレートアプリケーションへの適性を評価するために使用される唯一のパラメータではない。高データレートアプリケーションへの光ファイバ性能を向上させるには、(たとえばコア−クラッド界面上の)光ファイバのクラッド効果を減少させることが重要である。
【0089】
光ファイバのクラッド効果は、外側マスクで得られる異モード遅延測定を使用して評価することもできる。たとえば、50ミクロンの中心コア(すなわち50±3ミクロンの中心コア直径、または25±1.5ミクロンの半径)では、外側マスク0−23ミクロン上の異モード遅延値は、FOTP−220規格の方法を使用して取得されてよい。この点で、外側マスク0−23ミクロン(すなわち外側DMD(0−23ミクロン))上の異モード遅延値は、中心コア(すなわち0ミクロン)の中心から23ミクロンまでの半径方向オフセット範囲に渡ってDMD方法を用いて測定される。換言すると、光ファイバの外側DMD値を計算するとき、23ミクロンより大きい半径方向オフセット値の信号は考慮されない。外側マスクの寸法は、より大きいまたは小さいコア径を有する光ファイバに合わせて変更され得ることが当業者には認識されよう。たとえば、より大きい寸法(たとえばより大きい内半径および外半径)を有するマスクが、62.5ミクロンの直径コアを有するマルチモード光ファイバに対して使用され得る。同様に、より小さい寸法(たとえばより小さい内半径および外半径)を有するマスクが、50ミクロン未満のコアを有するマルチモード光ファイバに対して使用され得る。
【0090】
外側DMDは、750メートルの光ファイバに渡って測定されたDMDのプロットから生じる。使用される光源は、850ナノメータで放射するパルスTi:Sapphireレーザであってよい。光源は、4分の1の高さで40ps未満のパルスを放射し、RMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)スペクトル幅は、0.1ナノメータ未満である。
【0091】
本発明による光ファイバの一実施形態は、外側DMD遅延の改善を示す。具体的には、850ナノメータの波長において、この光ファイバの実施形態は一般に、約0.33ps/m未満(たとえば0.25ps/m未満)の外側DMD値を示す。より一般的には、光ファイバの実施形態は、0.14ps/m以下の外側DMD値を示す。
【0092】
一部の実施形態では、小さい外半径r
outをもつデプレスドトレンチを使用する光ファイバは、高帯域および改善された曲げ損失を有する。光ファイバの屈折率プロファイルによって、中心コアと内側クラッドとデプレスドトレンチとの総計幅を制限しながら、大きいデプレスドトレンチ体積v
3を使用することが可能となる。換言すると、光ファイバの屈折率プロファイルは、デプレスドトレンチの体積により高帯域および低い曲げ損失を達成するが、一般に小さいデプレスドトレンチ外半径r
outを維持する。
【0093】
光ファイバが光プリフォームから製造される場合、外半径r
outが小さくなるにつれて、ファイバ線引き後に取得され得る光ファイバの長さが長くなることが当業者には認識されよう。換言すると、デプレスドトレンチの外半径r
outが小さくなるにつれて、単一の光プリフォームから生産され得る光ファイバは多くなる。さらに、外半径r
outが小さい場合、中心コアのアルファインデックスプロファイルの品質を監視しやすくなる。したがって、光ファイバ製造コストを減少することができ、光ファイバ製造速度が増加され得る。
【0094】
一部の実施形態では、デプレスドトレンチの外半径r
outは、約32ミクロン以下(たとえば30ミクロン以下)である。さらに、850ナノメータの波長でこの光ファイバの実施形態は、7.5ミリメートルの曲げ半径で2回巻いた場合には0.1dB以下(たとえば0.01dB以下)の曲げ損失、5.5ミリメートルの曲げ半径で半回巻いた場合には0.1dB以下の曲げ損失、また0.1ps/nm以下(たとえば0.06ps/nm以下)の外側DMD遅延を示す。したがって、この光ファイバの実施形態は、制限された外半径r
outで低い曲げ損失および高帯域を達成することを可能にする。さらに、この光ファイバの実施形態は、製造コストの減少および製造速度の向上を促す。
【0095】
別の実施形態によれば、本発明による光ファイバは、OM3規格に準拠する。具体的には、850ナノメータの波長において光ファイバは、(i)2,000MHz・kmより大きい実効モード帯域幅(EMB)、(ii)0.3ps/m未満のモード分散外側DMD遅延、(iii)1,500MHz・kmより大きいOFL帯域幅、および(iv)0.185と0.215の開口数を有する。
【0096】
一実施形態では、内側クラッドの屈折率差Δn
2およびデプレスドトレンチの屈折率差Δn
3は、以下の不等式の両方を満足する:
−1.89×(1000×Δn
2)
2−7.03×(1000×Δn
2)−9.91<1000×Δn3、および
1000×Δn
3<−1.53×(1000×Δn
2)
2−3.34×1000×Δn
2−4.25。
【0097】
この実施形態の光ファイバは、低い曲げ損失と共に、少なくとも約4,700MHz・km(たとえば、10,000MHz・kmなど、少なくとも6,000MHz・km)の帯域幅を有する。さらに、光ファイバのこの実施形態は一般に、OM4規格に準拠する。具体的には、850ナノメータの波長において、光ファイバは、(i)少なくとも4,700MHz・kmの実効モード帯域幅(EMB)、(ii)0.14ps/m未満のモード分散外側DMD遅延、(iii)3,500MHz・kmより大きいOFL帯域幅、および(iv)0.185と0.215の間の開口数を有する。
【0098】
本発明は、表1に示された光ファイバプロファイルの実施形態を用いてよりよく理解されよう。表1(下記)は、本発明による光ファイバの実施形態の、シミュレーションされたファイバプロファイルパラメータおよび性能特性を示している。
【表1】
【0099】
表1の第1の列は、光ファイバの各実施形態の参照番号を示している。第2および第3の列はそれぞれ、内側クラッドの幅w
2およびデプレスドトレンチの幅w
3を示す。第4および第5の列はそれぞれ、内側クラッドの屈折率差Δn
2およびデプレスドトレンチの屈折率差Δn
3を示す。第6の列は、パーセンテージで表された、デプレスドトレンチの屈折率差Δ
3%を示す。第7の列は、デプレスドトレンチの体積v
3を示す。最後の4つの列は、外側DMD遅延、850ナノメータにおけるOFL帯域幅、850nmにおいて5ミリメートル曲げ半径で2回巻いた場合の曲げ損失、および850nmにおいて7.5ミリメートル曲げ半径で2回巻いた場合の曲げ損失を示す。
【0100】
例示的な光ファイバ1および2は、負の内側クラッド屈折率差Δn
2を有する。例示的な光ファイバ3から11は、正の内側クラッド屈折率差Δn
2を有する。例1から11は、デプレスドトレンチの体積v
3を増加させると、曲げ損失が5ミリメートルの曲げ半径では0.041dBに、7.5ミリメートルの曲げ半径では0.008dBに減少することを示している。さらに、外側DMD遅延およびOFL帯域幅は、悪い影響を受けない。したがって、内側クラッドの屈折率差Δn
2およびデプレスドトレンチの屈折率差Δn
3を調整することによって、約0.06ps/mの外側DMD遅延、および13200MHz・kmより大きいOFL帯域幅を保存しながら、曲げ損失を低減させる。
【0101】
一実施形態によれば、本発明の光ファイバは、ITU−T勧告G.651.1に準拠する。したがって、それは、50ミクロンの中心コア直径(すなわち25ミクロンの中心コア半径r
1)、および/または0.2±0.015の開口数を有する。
【0102】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示された、本発明による光ファイバの少なくとも一部を含むマルチモード光システムを包含する。具体的には、光システムは、少なくとも100メートル(たとえば300メートル)に渡って少なくとも10Gb/sのデータレートを示すことができる。
【0103】
この光ファイバは、最終プリフォームから線引きすることによって製造されてよい。
【0104】
最終プリフォームは、1次プリフォームに外側オーバークラッド層(すなわちオーバークラッドプロセス)を設けることによって製造されてよい。外側オーバークラッド層は一般に、ドープされた、またはドープされない天然または合成の石英ガラスからなる。外側オーバークラッド層を提供するためにいくつかの方法を使用することができる。
【0105】
方法の第1の実施形態では、外側オーバークラッド層は、熱の影響により1次プリフォームの外側周縁で天然または合成シリカ粒子を付着しまたはガラス化することによって提供されてよい。こうしたプロセスは、たとえば米国特許第5,522,007号、第5,194,714号、第6,269,663号および第6,202,447号から知られている。
【0106】
方法の別の実施形態では、1次プリフォームは、シリカスリービングチューブを使用してオーバークラッドされてよく、このシリカスリービングチューブはドープされてもよいし、ドープされなくてもよい。次いで、このスリービングチューブは、1次プリフォームへとコラプスされてよい。
【0107】
方法の別の実施形態では、オーバークラッド層は、外付け気相蒸着法(OVD:Outside Vapor Deposition)によって適用されてよい。ここで、まずスート層が、1次プリフォームの外周縁部に付着され、次いでスート層はガラス化されて、ガラスが形成される。
【0108】
1次プリフォームは、外付け気相蒸着法(OVD)および気相軸付け法(VAD:Vapor Axial Deposition)など、外付け気相蒸着技法によって製造されてよい。あるいは、1次プリフォームは、内付け蒸着技法によって製造されてよく、この内付け蒸着技法では、ガラス層は、改良型化学気相蒸着法(MCVD:Modified Chemical Vapor Deposition)、炉式化学気相蒸着法(FCVD:Furnace Chemical Vapor Deposition)およびプラズマ化学気相蒸着法(PCVD:Plasma Chemical Vapor Deposition)など、ドープまたは非ドープ石英ガラスの基材チューブの内側表面に付着される。
【0109】
例を挙げると、1次プリフォームは、PCVDプロセスを使用して製造されてよく、このPCVDプロセスは、中心コアの勾配屈折率プロファイルを正確に制御することができる。
【0110】
たとえばデプレスドトレンチは、化学気相蒸着プロセスの一環として基材チューブの内側表面に付着されてよい。より一般的には、デプレスドトレンチは、(i)勾配屈折率中心コアの付着のための内付け蒸着プロセスの開始点としてフッ素ドープ基材チューブを使用することによって、または(ii)勾配屈折率中心コアに渡ってフッ素ドープ石英管にスリービングすることによって製造されてよく、この勾配屈折率中心コアはそれ自体、外付け蒸着プロセス(たとえばOVDやVAD)を使用して製造されてよい。したがって、結果として生じるプリフォームから製造された構成ガラス繊維は、その中心コアの周縁部に位置するデプレスドトレンチを有してよい。
【0111】
上述されたように、1次プリフォームは、フッ素ドープ基材チューブを使用して内付け蒸着プロセスによって製造されてよい。付着された層を含む、結果として生じるチューブは、デプレスドトレンチの厚さを増し、またはその幅に渡って変化する屈折率を有するデプレスドトレンチを作成するために、1つまたは複数の追加のフッ素ドープ石英管によってスリービングされてよい。必要ではないが、1つまたは複数の追加のスリービングチューブ(たとえばフッ素ドープ基材チューブ)が、オーバークラッドステップが実施される前に1次プリフォームへとコラプスされてよい。スリービングおよびコラプスプロセスは、ジャケッティングと呼ばれることもあり、1次プリフォームの外側に複数のガラス層を構築するために繰り返されてよい。
【0112】
明細書および/または図では、本発明の一般的な実施形態について開示されている。本発明は、こうした実施形態に限定されない。用語「および/または」の使用は、リストされた関連するアイテムのいずれか、およびその1つまたは複数のすべての組合せを含むものである。図は、概略的な図であり、したがって、必ずしも一定の尺度で描かれていない。特に示されていない限り、特定の用語は、限定のためではなく、一般的で説明的な意味で用いられている。