【実施例】
【0052】
以下、実施例により、本発明によるモノクローナル抗体及びその製造方法並びに該モノクローナル抗体を用いた免疫染色法、さらに該モノクローナル抗体を用いてストロムライシン1を免疫学的に定量する方法について具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1 抗原及び標準品の作製)
以下のように、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992に記載の方法に従って、正常ヒト皮膚線維芽細胞NB1RGB(RCB222)培養上清より、ストロムライシン1を精製した。NB1RGB細胞を、10%ウシ胎児血清、14mM HEPES、1.4g/l NaHCO3含有RITC80−7基礎培地(pH7.2)中、5%CO2存在下、37℃でコンフルエントまで培養した。細胞を100mlのRITC80−7基礎培地で洗浄後、2g/lラクトアルブミン水解物及び10000U/lインターロイキン1α含有無血清RITC80−7基礎培地300ml中で培養し、その上清を回収した。
【0054】
上記上清を、セファロース4Bカラムに供した。このセファロース4Bカラムには、ストロムライシン1に対するモノクローナル抗体55−3G3(国際寄託番号:FERM BP−3744、寄託日:平成3年6月12日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)を、マニュアル記載の操作法に従ってCNBr−活性化セファロース(GEヘルスケア社)に予め結合させたものが充填してある。上清を供したカラムを0.1M NaCl、5mM CaCl
2及び5g/l CHAPS含有30mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄し、カラムに結合したタンパク質を3M KSCNで溶出した。次に、0.4M NaCl、10mM CaCl
2及び0.5g/l Brij 35含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したセファデックスG−25カラム(GEヘルスケア社)に、上記溶出液を供した。ボイドボリューム画分を集め、セファデックスG−25カラムを平衡化したのと同じ緩衝液で平衡化したコンカナバリンA−セファロースカラム(GEヘルスケア社)に供し、カラムに結合しなかったタンパク質を集めた。最後に、ウルトロゲルAcA44カラム(PALL社)に、コンカナバリンAカラムに結合しなかったタンパク質画分を供し、クロマト分画した。
【0055】
タンパク質の純度は、ドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した。精製した酵素は均一であり、分子量57kDaを示した。この精製酵素を抗原及び標準品とした。ストロムライシン2はR&D Systems社製のものを、ストロムライシン3はAbcam社製のものを標準品として使用した。
【0056】
(実施例2 モノクローナル抗体の調製)
以下のように、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992に記載の方法に従って、実施例1で精製したストロムライシン1を抗原としてモノクローナル抗体を調製した。
【0057】
(a)ストロムライシン1による動物の免疫
実施例1に記載の方法により調製したストロムライシン1を44.6μg、等重量のフロイント完全アジュバントと共に6週齢BALB/c雌マウス2匹に腹腔内投与し初回免疫とした。その後19日目に0.4MNaCl、10mM CaCl2及び0.5g/l Brij35含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に溶解した40.4μgのストロムライシン1で追加免疫した。最終免疫として55日目に43.2μgのストロムライシン1で免疫した。最終免疫から3日後にマウス脾臓を取り出し脾臓細胞を調製した。
【0058】
(b)抗体産生細胞とミエローマ細胞の細胞融合
以下の材料及び方法を用いた。
RPMI 1640培地:RPMI 1640(JRH Biosciences製)に24mM重炭酸ナトリウム、1mMピルビン酸ナトリウム、50U/mlペニシリンGカリウム、50μg/ml硫酸ストレプトマイシン及び100μg/ml硫酸アミカシンを加え、ドライアイスでpHを7.2にし、0.22μmミリポアフィルターで除菌ろ過した。
NS−1培地:上記RPMI−1640培地に除菌ろ過したFBS(JRHBiosciences製)を15%(v/v)の濃度に加える。
PEG4000溶液:RPMI−1640培地にポリエチレングリコール4000(PEG4000,Merck and CO.,Inc.製)50%(w/w)無血清溶液を調製した。
【0059】
脾臓細胞と8−アザグアニン耐性ミエローマ細胞SP2(SP2/0−Ag14)との融合は、Oiら,Selected Methods in Cellular Immunology,351−371,W.H.Freeman&Co.,1980の方法に準じて行った。(a)で調製した脾臓細胞(生細胞率100%)とミエローマ細胞(生細胞率100%)とを5:1の割合で融合した。脾臓細胞とミエローマ細胞をそれぞれ前記RPMI−1640培地で洗浄した。次に、それぞれ同じ培地に懸濁させた脾臓細胞3.2×10
8個とミエローマ細胞6.4×10
7個を混合した。次に、1000r.p.m.で10分間の遠心分離により細胞を沈殿させ上清を完全に吸引除去した。沈殿した細胞に37℃に加温したPEG4000溶液2.1mlを穏やかに攪拌しながら1分間で滴下し、1分間攪拌し細胞を再懸濁、分散させた。次に37℃に加温したRPMI−1640培地4.2mlを2分間で滴下した。同培地14.7mlを2〜3分間で常に攪拌しながら滴下し、細胞を分散させた。これを1000r.p.m.で7分間遠心分離し上清を完全に吸引除去した。次にこの沈殿細胞に37℃に加温したNS−1培地21mlを速やかに加え、大きい細胞塊を注意深くピペッティングで分散させた。さらに同培地42mlを加えて希釈しポリスチレン製96穴マイクロウェル(岩城硝子製)にウェルあたり6×10
5個/0.1mlの細胞を加えた。このマイクロウェルを7%CO2/93%空気中で温度37℃、湿度100%下で培養した。
【0060】
(c)選択培地によるハイブリドーマの選択的増殖
使用する培地は以下のとおりである。
HAT培地:前記実施例2(b)で述べたNS−1培地にさらにヒポキサンチン(100μM)、アミノプテリン(0.4μM)及びチミジン(16μM)を加えた。
HT培地:アミノプテリンを除去した以外は上記HAT培地と同一組成のものである。
【0061】
前記(b)の培養開始後翌日(1日目)、細胞にピペットでHAT培地2滴(約0.1ml)を加えた。2、3、5及び8日目に培地の半分(約0.1ml)を新しいHAT培地で置き換えた。11日目にハイブリドーマの充分な生育が観察された全ウェルについて、以下(d)に記載のELISAにより陽性ウェルを調べた。
【0062】
(d)細胞融合直後のELISAによる抗ストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマの選択
以下のようにして、直接吸着法によるELISAを行った。96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に100ng/ウェルになるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈したストロムライシン1を抗原としてコートした。4℃で一晩以上放置後、コーティング液を吸引し、0.05%Tween20含有PBS(pH7.2)でマイクロウェルプレートを洗浄した。確認したいハイブリドーマの培養上清(一次抗体)を100μl/ウェル加えて、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−ペルオキシダーゼ(POD)(CAPPEL社)をブロッキング液で1/10000に希釈したものを100μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、基質である過酸化水素とテトラメチルベンジジン(TMB)を100μl/ウェル加え、室温で約20分反応させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TOSOH、MPR A4)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。ストロムライシン1との反応が陽性を示した16ウェルについて、細胞の凍結及び復元を実施し、限界希釈法によるクローニングを実施した。
【0063】
(e)クローニング
以下の材料及び方法を用いた。
RPMI 1640培地−(2):RPMI1640 MEDIUM(SIGMA R8758)500ml(1本)に、FOETAL BOVINE SERUM (SIGMA F9423)50ml、PENICILLIN−STREPTOMYCIN SOLUTION(SIGMA P0781)2.5mlを添加した。
BriClone含有RPMI 1640培地;RPMI 1640培地−(2)にBriClone(Hybridoma cloning Medium)(NICB社製)を5%になるように添加した。
【0064】
凍結細胞をRPMI 1640培地−(2)中に復元させ、BriClone含有RPMI 1640培地を用いて、96穴マイクロウェルの36ウェル、36ウェル及び24ウェルにウェル当りそれぞれ5個、1個及び0.5個のハイブリドーマを加えた。5日目に全ウェルに約0.1mlのRPMI 1640培地−(2)を追加した。クローニング開始後、11日目から14日目でハイブリドーマの充分な生育が認められ、それらについて下記(f)に記すELISAを行った。テストした全ウェルが陽性でない場合、抗体陽性ウェル中のコロニー数を確認し、ウェル中に1コロニー(ない場合はできるだけコロニー数の少ないウェル)を1〜3個選び、再クローニングを行った。その結果、表1に示すように、ストロムライシン1に対するモノクローナル抗体産生細胞を12クローン得た。
【0065】
(f)クローニング時のELISAによる抗ストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマの選択
以下のようにして、直接吸着法によるELISAを行った。直接吸着法によるELISAでは、96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に50ng/ウェルになるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈したストロムライシン1を抗原としてコートした。4℃で一晩以上放置後、コーティング液を吸引し、200μl/ウェルのブロッキング液(1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液、pH7.0)を用い、室温で1時間以上ブロッキングを行った。0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)でマイクロウェルプレートを洗浄後、確認したいハイブリドーマの培養上清(一次抗体)を100μl/ウェル加えて、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−ペルオキシダーゼ(POD)(CAPPEL社)をブロッキング液で1/3000に希釈したものを100μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、TMB One Component HRP Microwell Substrate (BioFX社, Product# TMBW−1000−01)を100μl/ウェル加え、室温で約5〜10分反応させた。1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。
【0066】
(実施例3 モノクローナル抗体のサブクラスの同定)
実施例2(d)記載のELISAに従って、以下のようにモノクローナル抗体のサブクラスを同定した。実施例2(d)に記載の、ストロムライシン1をコートした96穴マイクロウェルのブロッキングまでの操作を行った。0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、各モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清を100μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、アイソタイプ特異的ウサギ抗マウスIg抗体(Mouse MonoAb−ID Kit、Zymed Laboratories社)を50μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。更に洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)抗体をブロッキング液で1/50に希釈した溶液を50μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、TMB One Component HRP Microwell Substrate (BioFX社、Product#TMBW−1000−01)を100μl/ウェル加えて発色させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、測定波長450nmでの吸光度を測定した。その結果、表1に示すように、得られたモノクローナル抗体は、γ1/κが4個、γ2b/κが3個、μ/κが4個、α/κが1個であった。
【0067】
【表1】
【0068】
(実施例4 培養上清を用いたストロムライシン2及び3との反応性)
実施例2で得られた12種類のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清に対し、抗原としてストロムライシン1の代わりにストロムライシン2又はストロムライシン3を用いて、実施例2(d)の方法に従ってELISAを行った。ストロムライシン1の吸光値を100%としたときの、ストロムライシン2及び3の吸光値の割合を表2に示す。296−29C1、296−12H8、296−7B10の3クローンの抗体は、同培養上清のストロムライシン1に対する反応性を100%とすると、ストロムライシン2に対しての反応性が1%であり、ストロムライシン2と交差反応しなかった。それ以外のクローンの抗体は、ストロムライシン2に対しての反応性が10%〜337%であり、ストロムライシン2との交差反応性が認められた。また、ストロムライシン3に対する反応性は0%〜6%であり、交差反応しないものがほとんどであった。
【0069】
(実施例5 免疫染色)
ストロムライシン1及び2の各抗原をc−PAGEL(アトー社)でそれぞれ電気泳動に供した後、Sequi−Blot PVDF Membrane for Protein Sequencing(厚さ0.2μm)(Bio Rad社)にトランスファーを行った。SDSを除去するために0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で、トランスファーした膜を洗浄した。さらに、1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)でブロッキングを行った。この膜を、得られた12種類のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清中で、4〜8℃で一晩静置した。膜を洗浄後、2次抗体反応として、ヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−POD(CAPPEL社)をブロッキング液で1/3000に希釈した溶液中で、室温で約2時間振とうした。膜を洗浄後、基質である過酸化水素とジアミノベンジジン(DAB)を加えて発色を行った。結果を表2に示す。296−29C1、296−12H8、296−7B10の3クローンの抗体は、ストロムライシン1との反応が認められたが、ストロムライシン2との反応が認められなかった。296−21C4、296−21F3、296−21E4、296−33F3、296−33E4、296−23A8、296−24C8、296−30C12、296−31A4の9クローンの抗体は、ストロムライシン1との反応が認められたが、ストロムライシン2とも反応が認められた。
【0070】
【表2】
【0071】
(実施例6 モノクローナル抗体の精製)
表1に示すクローンのうち、296−21C4、296−29C1、296−12H8、296−7B10、296−33F3及び296−23A8を選択し、抗体精製を行った。296−21C4、296−29C1、296−12H8、296−7B10の4種類については、細胞を増殖させ、その細胞をBalb/cマウス5匹の腹腔内に投与し、腹水を採取した。採取した腹水は、硫酸アンモニウム(硫安)分画を行い、DEAEイオン交換クロマトグラフィーにより抗体を精製した。296−33F3については、細胞を増殖させ、その細胞をBalb/cマウス5匹の腹腔内に投与し、腹水を採取した。採取した腹水を、硫安分画により抗体を精製した。296−23A8については、細胞を増殖させ、増殖後、培地を無血清培地(E−RDF培地)に交換し、約1lの培養上清を回収した。回収した培養上清より、硫安分画により抗体を精製した。
【0072】
(実施例7 精製抗体を用いたストロムライシン2及び3との反応性)
実施例2(d)の方法に従って、ELISAにより、実施例6で精製した抗体のストロムライシン2及び3に対する交差反応性を調べた。一次抗体として精製抗体を100ng/ウェル用い、測定波長450nmでの吸光度を測定した。A450(一次抗体が0ng/mlのときとの差)を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
296−29C1、296−12H8、296−7B10の3クローンの抗体はストロムライシン2と交差反応しなかった。296−33F3、296−23A8、296−21C4の順に抗体のストロムライシン2に対する交差反応性が強く認められた。公知のモノクローナル抗体55−2A4(国際寄託番号:FERM BP−3743、寄託日:平成3年6月12日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)は、ストロムライシン2に対する交差反応性が85.1%と高く、ストロムライシン1に対する公知のモノクローナル抗体の中にストロムライシン2と交差反応性を示すものがあることが確認された。ストロムライシン3に対しては、どのクローンの抗体もほとんど反応性が認められなかった。
【0075】
(実施例8 ストロムライシン1の免疫学的測定)
サンドイッチ法のELISAによる免疫学的測定により、ストロムライシン1の定量を行った。96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に、実施例6で得られた精製抗体100μg/ml含有0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を100μl/ウェル加え、4℃で16時間静置した。抗体溶液を除き、1%BSA、0.1M NaCl及び10mM EDTA含有0.01M リン酸緩衝液(pH7.0)を300μl/ウェル加え、4℃で一晩以上ブロッキングを行い、抗体結合ウェルとした。使用時にウェルを0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(以下、「洗浄液」という)で洗浄した。
【0076】
標準品ストロムライシン1を1000、250、62.5、15.6ng/mlに、また標準品ストロムライシン2及びストロムライシン3を20000、5000、1250、313、78ng/mlになるように、1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(以下、「アッセイbuffer」という)で希釈して標準液とし、ビニルプレートに20μl取った。試料として、ヒト血清も同様にビニルプレートに20μl取った。
【0077】
一方、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992に記載の方法に従って、55−2A4のモノクローナル抗体をHRP(ロシュ ダイアグノスティックス社)で標識した。標識抗体をアッセイbufferで1.3μg/mlになるように希釈し、標準液又は試料を加えたウェルに100μlずつ加えた。上記ウェルから100μlを抗体結合ウェルに加えて、4℃で16時間インキュベート(静置)した。洗浄液で抗体結合ウェルを3回洗浄後、TMB One Component HRP Microwell Substrate(BioFX社)を100μl/ウェル加え、25℃で20分間反応させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。各抗体を用いたときのA450(標識抗体が0ng/mlのときとの差)をストロムライシン1については表4に、ストロムライシン2については表5に、血清については表6に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
選択した各精製抗体で、ストロムライシン1の濃度の標準曲線を描くことができた。しかし、296−21C4及び296−33F3の抗体を用いた場合、他の抗体を用いた場合に比べ吸光度が低く、これらの抗体のストロムライシン1分子上の結合部位が、標識抗体に使用した55−2A4のストロムライシン1分子上の結合部位と同じであるか、又は55−2A4のストロムライシン1分子上の結合部位と近いために、反応性が低いと考えられた。どの抗体も、ストロムライシン1に対する反応性と比較して、ストロムライシン2に対する反応性が低かった(表4及び5)。ストロムライシン2を用いたときの吸光度を各濃度について両対数グラフにプロットし、1000ng/mlのときの吸光度を算出し、ストロムライシン1の1000ng/mlのときの吸光度と比較した(表7)。
【0082】
【表7】
【0083】
1000ng/mlにおける、ストロムライシン2に対する反応性は、ストロムライシン1に対する反応性の0.5%〜26.9%であり、296−21C4の抗体で最も大きな交差反応性を示した。交差反応性が5%以下を許容範囲とすると、296−21C4及び296−33F3の抗体は、サンドイッチ法によるELISAでのストロムライシン1の免疫学的測定に使用できないと考えられた。直接吸着法によるELISAで、ストロムライシン2に対する交差反応性が17.1%であった296−23A8の抗体の場合、サンドイッチ法によるELISAでは2.4%と許容範囲に入っており、サンドイッチ法によるELISAでの免疫学的測定に使用できると考えられた。296−29C1、296−12H8、296−7B10の抗体は、ストロムライシン2に対する交差反応性が低く、サンドイッチ法によるELISAでの免疫学的測定に使用可能と考えられた。一方、血清を試料として用いた場合、296−21C4、296−33F3、296−7B10の抗体では血清に対する反応が認められなかった。また、296−12H8の抗体は、296−29C1や296−23A8の抗体と比べ、血清に対する反応性が低かった。296−29C1(国際寄託番号:FERM BP−11199、寄託日:平成20年12月19日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)や296−23A8(国際寄託番号:FERM BP−11198、寄託日:平成20年12月19日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)の抗体は、血清に対しても反応性がよく、血清中のストロムライシン1の免疫学的測定に利用できると考えられる。
【0084】
(実施例9 ストロムライシン1上の反応部位の解析)
以下のようにして、実施例6で得られた精製モノクローナル抗体について、ストロムライシン1分子上の反応部位の解析を行った。
【0085】
(a)ストロムライシン1の分解
エッペンドルフチューブに、0.1M Tris−HCl(pH8.5)34μl及び51μg(17μl)のストロムライシン1を加えた。さらにリジルエンドペプチダーゼ26.1mU(17μl)を加え、反応を開始した。反応は37℃、15分間行なった。反応後、反応液(分解液)をSDS−PAGEに供したところ、リジルエンドペプチダーゼのバンドは確認されたが、ストロムライシン1のバンドは認められず、充分分解されたことが示された。
【0086】
(b)分解後のストロムライシン1に対するモノクローナル抗体の反応性
リジルエンドペプチダーゼによる分解後のストロムライシン1に対する抗体の反応性を直接吸着法のELISAにより調べた。(a)で得られたストロムライシン1の分解液に932μlの0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を加えた液の一部を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で1/100(ストロムライシン1濃度に換算して510ng/ml)に希釈後、96穴マイクロウェルに100μlを加え、4℃で一晩静置してコーティングした。コントロールとして、51μg/mlの分解前のストロムライシン1を同様に510ng/mlになるように希釈してコーティングした。コーティング後、1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(アッセイbuffer)300μlを加え、一晩静置した。使用時にウェルを0.01%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(洗浄液)で洗浄した。
【0087】
一次抗体として、表8に示すモノクローナル抗体を10μg/mlになるようアッセイbufferで希釈し、分解後ストロムライシン1又は分解前ストロムライシン1が結合したウェルに各100μl/ウェル加えて、25℃で1時間インキュベート(静置)した。洗浄液でウェルを洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−POD(CAPPEL社、Cat#55556)をアッセイbufferで1/1000に希釈したものを100μl/ウェル加え、25℃で40分間インキュベート(静置)した。洗浄液でウェルを洗浄後、発色剤を100μl/ウェル加え、25℃で15分間反応させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。A450(一次抗体が0ng/mlのときとの差)及び分解前の反応性に対する分解後の反応性(%)を表8に示す。
結果を表8に示す。
【0088】
【表8】
【0089】
296−33F3及び296−12H8は、リジルエンドペプチダーゼによるストロムライシン1の分解により、その反応性がほとんど消失した。したがって、リジルエンドペプチダーゼによる分解物には反応しないことから、これらの抗体は、スロトムライシン1タンパク質の二次構造及び三次構造等の立体的な構造を認識すると考えられる。また、296−21C4及び296−29C1は、分解後のストロムライシン1に対する反応性が残存しているものの、分解前に比べて大きく低下した。また、296−23A8及び296−7B10は、分解後も高い割合で分解前のストロムライシン1に対する反応性が残存していた。55−2A4については、分解後も分解前のストロムライシン1に対する反応性の80%の反応性が残った。それぞれの抗体で、リジルエンドペプチダーゼによる分解後の反応性が低下することから、少なくとも高次構造を認識していることが示唆された。
【0090】
(c)ストロムライシン1ペプチドのFPLCによる分画
上記反応液に932μlの0.1%TFAを加え、950μlをFPLC(Fast protein liquid chromatography、AKTA explorer、GEヘルスケア社)に供するサンプルとした。カラムはC18Sephasil peptideを用い、溶出は0.1%TFA(A液)と、80%アセトニトリルを含む0.1%TFA(B液)とを用いて、20カラム容量でB液が100%となるようにした。サンプルアプライ後、6mlのA液でカラムを洗浄(1ml/画分)し、その後A液とB液のグラジエント溶液約33.2mlで溶出(0.5ml/画分)した。フラクションはサンプルアプライ後からA1とし、洗浄、溶出画分を連続して採取した。画分はA1〜A12、B1〜B12というように、12画分ずつ番号付けした。
【0091】
(d)FPLC画分に対するモノクローナル抗体の反応性
各FPLC画分に対するモノクローナル抗体の反応性を直接吸着法のELISAにより調べた。96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に各FPLC画分の10倍希釈溶液100μl(0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈)を加え、4℃で一晩静置した。各ウェルの液を除去し、アッセイbufferを300μl/ウェル加え、4℃で一晩ブロッキングを行いペプチド結合ウェルとした。使用時にウェルを洗浄液で洗浄した。次に、296−29C1及び296−7B10を10μg/mlになるようアッセイbufferで希釈し、ペプチド結合ウェルに各100μl/well加えて、25℃で1時間インキュベート(静置)した。洗浄液でウェルを洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−POD(CAPPEL社、Cat#55556)をアッセイbufferで1/3000に希釈したものを100μl/ウェル加え、25℃で40分間インキュベート(静置)した。洗浄後、発色剤を100μl/ウェル加え、25℃で15分間反応し、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。各画分の吸光度のグラフを
図1に示す。296−29C1及び296−7B10は、FPLC画分C10及びD9(以下それぞれ「Fr.C10」及び「Fr.D9」という)と反応性を示した。2つの画分に反応のピークが認められることから、リジルエンドペプチダーゼの部分分解により、2つの画分に同一の配列が含まれている可能性がある。
【0092】
(e)Fr.C10のN末端アミノ酸配列の同定
296−29C1及び296−7B10が反応したFPLC画分のうち、Fr.D9は測定波長230nmの吸光度が高い第1及び第2のピークの後に続く画分であり、ペプチドの分離が充分ではないと考えられたため、比較的シャープなピークであったFr.C10のN末端アミノ酸配列分析を行った。N末端アミノ酸配列分析は、アプロサイエンスへ外注し、Edman分解法により行なわれた。Fr.C10を50μl使用し、N末端5残基の測定をしたが、各サイクルで複数のアミノ酸が検出され、配列の確定には至らなかった。そこで、検出されたいくつかアミノ酸の中から、検出量および配列等からそのペプチド配列を推定した。その結果、QIAEDである配列が候補に挙げられた。各アミノ酸の検出量は約9pmolであった。ストロムライシン1の全アミノ酸配列(配列番号1)から候補ペプチド配列を照合し、Fr.C10に含まれるペプチドを推定した。ペプチドは、QIAEDFPGIDSK(配列番号1の425番〜436番)であることが推定された。ストロムライシン2の全アミノ酸配列(配列番号2)の中で上記ペプチド配列に相応するアミノ酸配列は、LIADDFPGVEPK(配列番号2の424番〜435番)であり、12個のアミノ酸中7個(58%)のアミノ酸が一致していた。
【0093】
(f)ストロムライシン1ペプチドとモノクローナル抗体との反応性
ペプチドQIAEDFPGIDSKを合成し、モノクローナル抗体との反応性を調べた。ペプチドの合成はInvitrogen社に外注し、95.15%の純度で8mgのペプチドを得た。測定分子量は1318.40であり、理論分子量1319.45とほぼ一致していた。このペプチドを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で500ng/mlになるよう希釈後、96穴マイクロウェルに100μlを加え、4℃で一晩静置してコーティングした。洗浄液で洗浄後、表9に示す各モノクローナル抗体をアッセイbufferで6.3μg/mlに希釈し、ペプチドをコーティングしたウェルに100μl/ウェルずつ加えて、25℃で1時間インキュベート(静置)した。後の操作は実施例9(b)に記載の方法と同様に行った。本実施例で得られたペプチドを抗原としたときのA450(一次抗体が0ng/mlのときとの差)を表9に示す。
【0094】
【表9】
【0095】
表9より、ストロムライシン1ペプチドQIAEDFPGIDSKに対して、296−29C1は反応性を示したが、296−7B10は反応性が低かった。Fr.C10のN末端アミノ酸配列分析の結果から、Fr.C10に含まれるペプチドのアミノ酸配列を推定し合成したが、Fr.C10には多数のペプチドが混在しており、ストロムライシン1ペプチドQIAEDFPGIDSKは、296−7B10が反応するペプチドではなかったことが示された。その他、このペプチドには、296−21C4、296−23A8及び55−2A4が反応性を示したが、これらのモノクローナル抗体はストロムライシン2との交差反応性が認められることから、交差反応性の有無は、このペプチドとその他別のペプチドや構造が関与していることが示唆された。