【文献】
山脇 成人,「うつ病の脳科学」,日本臨牀,株式会社日本臨牀社,2007年 9月 1日,Vol. 65, No. 9,p. 1554-1557
【文献】
伊賀 淳一, 上野 修一,大森 哲郎,「うつ病の分子マーカー」,分子精神医学,株式会社先端医学社,2008年 1月10日,Vol. 8, No. 1,p. 2-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記数値が、上記対象由来の生物学的試料中のバイオマーカーレベルであり、上記生物学的試料が、全血、血清、血漿、尿または脳脊髄液であり、上記対象がヒトであり、上記結果値がp<0.05で上記対照の結果値と統計学的に異なる、請求項1記載の方法。
磁気共鳴画像診断、磁気共鳴分光診断、体重指数、HPA活性化の基準、甲状腺機能の基準、エストロゲンレベルの基準またはテストステロンレベルの基準からなる群より選択される一つまたは複数のパラメータの数値を提供する工程;
上記対象由来の生物学的試料を提供する工程;および
上記複数のパラメータの各々のレベルを計測して上記数値を得る工程
の一つまたは複数をさらに含む、請求項1記載の方法。
工程(b)が、各パラメータに特異的な方法で各数値を個々に重み付けして、各パラメータの重み付けされた値を得る工程、および各重み付けされた値を含む式に基づき、結果値を算出する工程を含む、請求項5記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
向精神薬の開発は、精神病理学的パラメータ(たとえば、ハミルトンうつ病評価尺度)による疾病重篤度の定量に依存するものであった。自覚的要因および正しい定義の欠如がそのようなパラメータに影響することは避けがたい。同様に、精神病患者のフェーズIIおよびフェーズIII治験への登録のための診断パラメータは、症候学的尺度の計測による疾病重篤度および特異性の評価を中心としたものであり、患者選択に役立つことができる、疾病特性および状態に関する妥当化された生物学的相関はない。分子診断学における近年の進歩にもかかわらず、薬物治療に対する可能性のある表現型応答に関する、患者遺伝子型に含まれる潜在的情報は、特に非研究的状況では、事実上、獲得されていない。
【0025】
本明細書に記載される技術は、一部には、うつ障害状態の診断、うつ障害状態の素因およびうつ障害状態の予後を確立する方法、ならびにうつ障害状態と診断され、うつ障害状態の治療を受けている対象の治療をモニタリングする方法の識別に基づく。本明細書に提供される方法は、アルゴリズムを開発する工程、多数のパラメータを評価(たとえば計測)する工程、およびアルゴリズムを使用して定量診断スコアのセットを決定する工程を含むことができる。次に、血清または血漿のような生物学的試料からの多数のバイオマーカーの値を組み込むアルゴリズムを患者層別化に適用することができ、また、薬力学的マーカーの識別に使用することができる。本明細書に記載される手法は、単一マーカーまたは単一マーカーの群における変化を多数の時点で計測するのではなく、アルゴリズムの構築におけるバイオマーカーへのより従来的な手法とは異なる。
【0026】
本明細書で使用する「バイオマーカー」とは、生物学的もしくは病原性プロセスまたは治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に計測し、評価することができる特徴である。バイオマーカーは、たとえば、タンパク質、核酸、代謝産物、物理的計測値またはそれらの組み合わせであることができる。「薬力学的」バイオマーカーとは、疾病の経過、重篤度、状態、徴候または消散に対する、治療または治療的介入の影響を定量的に評価(計測)するために使用することができるバイオマーカーである。本明細書に使用される「分析対象物」とは、イムノアッセイ法または質量分析法のような分析手法で客観的に計測し、測定することができる物質または化学成分である。したがって、分析対象物はある種のバイオマーカーであるといえる。
【0027】
アルゴリズム
たとえば診断、状態または治療に対する応答を判定するためのアルゴリズムは、臨床状態に関して決定することができる。本明細書に提供される方法で使用されるアルゴリズムは、非限定的に、医療装置、臨床評価スコアまたは生物学的試料の生物学的/化学的/物理的試験を使用して定量することができる多数のパラメータを組み込む数学的関数であることができる。各数学的関数は、選択された臨床状態に関連することが決定されているパラメータのレベルの重み調節表現であることができる。重み付けおよび多数のマーカーパネルの複雑さのせいで、一般に、データを分析するためには相当な計算能力を有するコンピュータが必要である。アルゴリズムは一般に、式(1)のフォーマットで表すことができる:
診断スコア=f(x1, x2, x3, x4, x5...xn) (1)。
【0028】
診断スコアは、診断または予後結果である値であり、「f」は任意の数学的関数であり、「n」は任意の整数(たとえば1〜10,000の整数)であり、x1、x2、x3、x4、x5・・・xnは、たとえば医療装置、臨床評価スコアおよび/または生物学的試料(たとえばヒト生物学的試料、たとえば血液、尿または脳脊髄液)の試験結果によって決定される計測値である「n」パラメータである。
【0029】
アルゴリズムのパラメータは、個々に重み付けすることができる。そのようなアルゴリズムの例が式(2)に示されている:
診断スコア=a1
*x1+a2
*x2−a3
*x3+a4
*x4−a5
*x5 (2)。
【0030】
ここで、x1、x2、x3、x4およびx5は、医療装置、臨床評価スコアおよび/または生物学的試料(たとえばヒト生物学的試料)の試験結果によって決定される計測値であることができ、a1、a2、a3、a4およびa5は、それぞれx1、x2、x3、x4およびx5に関して重み調節された因数である。
【0031】
診断スコアを使用して、医学的状態もしくは疾病または医学的治療の効果を定量的に決定することができる。たとえば、アルゴリズムを使用して、うつ病のような障害の診断スコアを決定することができる。そのような態様において、うつ病の程度は、式(1)に基づいて、以下の一般式によって決定することができる:
うつ病診断スコア=f(x1, x2, x3, x4, x5...xn)。
【0032】
うつ病診断スコアは、個人におけるうつ病の状態または重篤度を計測するために使用することができる定量的数字であり、「f」は任意の数学的関数であり、「n」は任意の整数(たとえば1〜10,000の整数)であり、x1、x2、x3、x4、x5・・・xnは、たとえば、医療装置、臨床評価スコアおよび/または生物学的試料(たとえばヒト生物学的試料)の試験結果を使用して決定される計測値である「n」パラメータである。
【0033】
より一般的な形態において、式(3)に示すように、多数の式をバイオマーカー計測値の群に適用することにより、多数の診断スコアSmを生成することができる:
スコアSm=fm(x1,...xn) (3)。
【0034】
多数のスコアが、たとえば副次的指示のために、たとえばMDDおよび/または関連もしくは非関連障害のサブタイプを診断するために有用であることができる。多数のスコアのいくつかはまた、患者治療の進行および/または選択された治療の有用性を示すパラメータであることができる。うつ障害の場合、治療進行スコアは、医療従事者(たとえば医師または他の臨床従事者)が治療用量および期間を調節することを支援することができる。副次的指示スコアもまた、医療従事者が、治療に使用するのに最適な薬または薬の組み合わせを選択することを支援することができる。
【0035】
バイオマーカーライブラリの構築
どのパラメータが診断アルゴリズムに含めるのに有用であるかを決定するために、分析対象物のバイオマーカーライブラリを開発することができ、ライブラリからの個々の分析対象物を、特定の臨床状態に関するアルゴリズムへの包含に関して評価することができる。バイオマーカーライブラリ開発の初期段階において、焦点は、広範に関連する臨床的内容、たとえば炎症を示す分析対象物、Th1およびTh2免疫応答、接着因子および組織再構築に関与するタンパク質(たとえば、基質メタロプロテイナーゼ(MMP)および基質メタロプロテイナーゼの組織阻害因子(TIMP))に向けることができる。いくつかの態様において(たとえば、初期ライブラリ開発中)、ライブラリは、12またはそれ以上のマーカー、100のマーカーまたは数百のマーカーを含むことができる。たとえば、バイオマーカーライブラリは数百のタンパク質分析対象物を含むことができる。バイオマーカーが構築されるとき、新たなマーカーが追加されることができる(たとえば、個々の疾病状態に特異的なマーカーおよび/またはより汎化されたマーカー、たとえば成長因子)。いくつかの態様において、発見研究(たとえば、ディファレンシャルディスプレイ技術、たとえば同位体コード化アフィニティータグ(ICAT)または質量分析法を使用)から得られた疾病関連タンパク質の追加により、分析対象物を追加してライブラリを拡大し、特異性を、炎症、腫瘍学および神経心理学的焦点を越えるほどに高めることができる。
【0036】
新たな分析対象物のバイオマーカーライブラリへの追加は、精製または組み換え分子および新たな分析対象物を捕獲し、検出するのに適切な抗体を要することがある。従来のELISAプラットフォームへのバイオマーカーライブラリの適用は分析対象物ごとに多数の抗体を要することがあるが、Ridge Diagnostics, Inc.("Ridge," Research Triangle Park, NC、旧社名Precision Human Biolaboratories, Inc.)によって開発されたMIMS(分子相互作用計測システム)を作動させて分析対象物ごとに単一の特異的抗体を使用することができることが注目される。個々の「新たなまたは新規な」バイオマーカーの発見は、有用なアルゴリズムを開発するために必要ではないが、そのようなマーカーを含めることもできる。MIMSプラットフォームおよび多分析対象物検出法に適する他の技術は一般に、融通が利き、新たな分析対象物の追加に対して開かれている。MIMSプラットフォームは、光学的感知に基づく無標識システムであり、MIMIの特定の特徴は、参照により本書類の開示の一部として組み入れられる、「Optical Molecular Detection」と題する、PCT公開公報WO2007/067819として公開されたPCT出願PCT/US2006/047244に記載されている。
【0037】
本書類は、臨床状態の診断、治療およびモニタリングに関連する分析対象物のロバストで確実な計測を提供することができる多重化検出システムを提供する。バイオマーカーパネルは、拡張され、無標識アレイに移されることができ、アルゴリズム(たとえば、コンピュータベースのアルゴリズム)は、臨床従事者および臨床研究を支援するために開発されることができる。
【0038】
約25〜50の抗原に関してカスタム抗体アレイを設計し、開発し、分析的に妥当化することができる。まず、たとえば罹患対象を非罹患対象から区別する能力または既定の試料セットから患者における疾病の段階を区別する能力に基づいて、約5〜10(たとえば、5、6、7、8、9または10)の分析対象物のパネルを選択することができる。しかし、豊富なデータベース、普通は10を超える有意な分析対象物が計測されるデータベースが、試験アルゴリズムの感度および特異性を増すことができる。
【0039】
個々のパラメータの選択
ライブラリまたはパネルの構築において、マーカーおよびパラメータは、多様な方法のいずれかを使用して選択することができる。疾病特異的ライブラリまたはパネルの構築のための主要な推進力は、疾病に対するパラメータの関連の知識であることができる。たとえば糖尿病のライブラリを構築する場合、その疾病の理解は、血糖値の包含を保証する可能性が高い。文献検索または実験を使用して、含めるべき他のパラメータ/マーカーを識別することもできる。たとえば糖尿病の場合、文献検索は、ヘモグロビンA1c(HbAC)の潜在的有用性を示すかもしれないが、具体的な知識または実験は、II型糖尿病の対象において上昇することが示されている炎症マーカー、腫瘍壊死因子(TNF)-α受容体2、インターロイキン(IL)-6およびC反応性タンパク質(CRP)の包含を招くかもしれない。
【0040】
いくつかの態様において、うつ病診断スコアを算出するために使用することができるパラメータは免疫系バイオマーカーを含むことができる。炎症には多種多様なタンパク質が関与し、それらのいずれか一つが、そのタンパク質の正常な発現および機能を損傷または他のやり方で混乱させる遺伝子突然変異を受ける。炎症はまた、高い全身レベルの急性期タンパク質を誘発する。これらのタンパク質は、一定範囲の全身効果を生じさせるC反応性タンパク質、血清アミロイドA、血清アミロイドP、バソプレシンおよび糖質コルチコイドを含む。炎症はまた、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの放出を伴う。
【0041】
免疫系は、健康および疾病の両方で、神経系とで複雑で動的な関係を有する。免疫系は、中枢および末梢神経系を監視し、異物タンパク質、感染性因子、ストレスおよび新生物に応答して活性化することができる。逆に、神経系は、神経内分泌軸および迷走神経遠心性線維の両方を介して免疫系機能を変調する。この動的な関係が動揺すると、神経精神医学的疾病が起こることができる。事実、慢性的な炎症応答を特徴とするいくつかの疾病(たとえば関節リウマチ)がうつ病を伴うことが報告されている。加えて、炎症誘発性サイトカインの投与(たとえばガンまたはC型肝炎治療における)がうつ症候を誘発することがある。動物における炎症誘発性サイトカインの投与は、ヒトにおけるうつ病の行動的症候に非常に似ている行動変化のパターンである「病的行動」を誘発する。たとえば、「Inflammatory Response System (IRS) model of depression」(Maes (1999) Adv. Exp. Med. Biol. 461:25-46)は、神経調節物質として作用する炎症誘発性サイトカインが、うつ障害の行動的、神経内分泌および神経化学的特徴の媒介において主要因となることを述べている。
【0042】
MDDスコアを決定するためのアルゴリズムにおいて有用であるかもしれないバイオマーカーの他のクラスは、たとえば、神経栄養バイオマーカー、代謝バイオマーカーおよび視床下部下垂体副腎(HPA)軸バイオマーカーを含む。HPA軸(HPTA軸とも呼ばれる)は、視床下部(中空で漏斗形の脳部分)と下垂体(視床下部の下方に位置する豆状の構造)と副腎(各腎臓の上に位置する小さな対を成す錐状器官)との間の直接的な影響およびフィードバック相互作用の複雑なセットである。これら三つの器官の間の綿密な恒常性相互作用が、ストレスに対する反応を制御し、消化を含む体のプロセス、免疫系、気分および性欲ならびにエネルギー利用を調整する、神経内分泌系の主要部分であるHPA軸を構成する。
【0043】
図1に示すように、HPA軸の活性は、視床下部からのコルチコトロピン放出ホルモン(CRHまたはCRF)の分泌によって支配される。CRHは、下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を活性化する。ACTHは逆に、副腎からの糖質コルチコイド(ヒトにおけるコルチゾル)の分泌を刺激する。血流中へのコルチゾルの放出は、血糖値の上昇を含む多数の効果を有することができる。視床下部、下垂体および免疫系へのコルチゾルの負のフィードバックが損なわれ、HPA軸の継続的な活性化および過剰なコルチゾル放出を招く。コルチゾル受容体が脱感作されて、炎症誘発性免疫媒介物の活性増大および神経伝達物質伝達の混乱を招く。
【0044】
うつ病患者は、上昇した基底血清コルチゾルレベルおよび脳脊髄液(CSF)中のCRHを有することができる。数多くの神経内分泌負荷試験が、HPA軸の様々なレベルにおける機能を精査している。うつ病患者は、デキサメタゾン抑圧試験(DST)におけるコルチゾルの非抑圧、鈍いACTHおよびCRHに対する正常なコルチゾル応答ならびにデキサメタゾンによる前治療後に誇張されたACTHおよびCRHに対するコルチゾル応答を有することができる(Dex/CRH試験)。しばしば「機能亢進」と呼ばれるHPA機能障害のこのようなパターンは、疾病スコアを算出するためのアルゴリズムの一部として有用であることができる。
【0045】
免疫システムから出る可溶性因子、すなわちサイトカインは、神経内分泌系、特にHPA軸に対して深い影響を有することができる。サイトカインによるHPA活性化(糖質コルチコイドの放出による)は逆に、免疫応答を抑制し、形成する際に決定的な役割を演じることがわかった。このように、サイトカイン−HPA相互作用は、疾病において危うくなることがある恒常性の維持に関して基本的考慮事項を代表する。
【0046】
HPA軸における機能不全的変化を特性決定するためのバイオマーカーは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、BDNF、コルチゾル、DA、IL-1、IL-18、セロトニン、ノルエピネフリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、バソプレシンおよびコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)の一つまたは複数を含むことができる。数値は、対象由来の生物学的試料中のバイオマーカーレベルであることができる。生物学的試料は、全血、血清、血漿、尿または脳脊髄液であることができる。対象はヒトであることができる。所定のしきい値は統計学的有意(たとえばp<0.05)であることができる。統計学的有意を決定する方法は、当技術分野で慣例的に使用されている方法、たとえばt統計法、カイ自乗統計法、F統計法などを含むことができる。
【0047】
以下の段落は、本明細書の実施例でさらに説明するように、計測することができ、MDDアルゴリズムに含めることができる分析対象物の例を提供する。
【0048】
BDNF:
BDNFは、HPA軸の調整に深く関与している。加えて、BDNFレベルは、対照と比較してうつ病患者で低下し、抗うつ剤治療は、うつ病患者における血清BDNFレベルを高めることができる。血漿BDNFのレベルはまた、電気痙攣療法によって高めることもでき、非薬物療法がBDNFレベルを調整することができることを示唆している(Marano et al. (2007) J. Clin. Psych. 68:512-7)。単変量分析(以下の実施例1を参照)が、統計学的有意をもってBDNFをマーカーとして識別したが、二つの群のBDNFレベルの範囲は有意に重複して、血清BDNFそのものがMDDの良好な予測子ではないことを示している。
【0049】
IL-18:
心的および物理的ストレスが自己免疫および炎症疾患を悪化させることがある。大うつ病性障害またはパニック障害の患者においては、正常な対照と比較して、IL-18の血漿濃度が有意に上昇する。血漿IL-18レベルの上昇は、ストレス性状況下での中枢神経系中のIL-18の産生および放出の増加を反映するかもしれない(Sekiyama (2005) Immunity 22:669-77)。IL-18の評価は対照対象からのうつ病患者のいくらかの分別を提供したが、この単一マーカー試験は、十分な診断差別能または臨床実践で使用されるためのロバストさを有しない。
【0050】
FABP:
脳は、脳の構造的および生物学的機能において重要な役割を演じる長鎖多不飽和脂肪酸(PUFA)を非常に豊富に含む。リソホスファチジルコリンおよびリポタンパク質中の遊離脂肪酸またはエステル化FAの形態における血漿輸送ならびに新規合成が長鎖PUFAの脳付着成長に寄与する。ドコサヘキサエン酸(DHA)は抗うつ剤であり(Mischoulon and Fava (2000) Psychiatr. Clin. North Am. 23:785-94)、FABPは、脳卒中および神経変性性疾患において上昇することが示されている(Pelsers and Glatz (2005) Clin. Chem. Lab. Med. 43:802-809およびZimmermann-Ivol et al. (2004) Mol. Cell. Proteomics 3:66-72)。
【0051】
IL-10:
炎症誘発性サイトカインと抗炎症性サイトカインとの不均衡が大うつ病の病態生理学に影響すると考えられる。炎症誘発性サイトカインは主にTヘルパー(Th)-1細胞によって媒介され、IL-1β、IL-6、TNF-αおよびインターフェロンγを含む。抗炎症性サイトカインはTh-2細胞によって媒介され、IL-4、IL-5およびIL-10を含む。ヒトにおいて、抗うつ剤はIL-10の産生を有意に増加させる。
【0052】
IL-7:
IL-10と同様に、血漿中のIL-7のレベルもまた、対照に比べて、うつ病男性対象において低下した。IL-7は、Bリンパ球およびTリンパ球の発達において重要な機能を有する造血性サイトカインである。IL-7はまた、発達中の脳において栄養性を示す。発達中の脳における配位子および受容体の発現と組み合わさったIL-7の直接的な神経栄養性が、中枢神経系個体発生中、IL-7が生理学的に有意な神経細胞成長因子であるかもしれないことを示唆する(Michealson et al. (1996) Dev. Biol. 179:25l-263)。うつ病の病因および治療において成人神経形成が関係している。一部のうつ病患者に存在し、うつ病の発症を誘発することができる上昇したストレスホルモンレベルは動物モデルにおける神経形成を低下させる。逆に、様々なクラスの薬物、電気痙攣療法および行動治療を含む実質的にすべての抗うつ治療は神経形成を増大させる(Drew and Hen (2007) CNS Neurol. Disord. Drug Targets 6:205-218)。
【0053】
GST:
三環系抗うつ剤が、ヒト脳の様々な部位(たとえば頭頂葉、前頭皮質および脳幹)から単離されたGSTの活性を抑制する。抑制効果は、酵素の脳限局化よりも化学構造に大きく依存する。三環系は、GSTのエフェクタ部位に非特異的に結合する。脳GSTに対する三環系抗うつ剤の抑制効果は、毒性の求電子体から脳を保護する酵素バリヤの効率を低下させ、それらの副作用に寄与するおそれがある。他方、脳GSTは、リガンドとして結合することにより、三環系抗うつ剤の治療効果を低下させるおそれがある(Baranczyk-Kuzma et al. (2001) Pol. Merkur Lekarski 11:472-475)。
【0054】
EGF:
神経可塑性に関与するおそれのある様々な要因のうち、グリア細胞は、チロシンキナーゼ活性を賦与された受容体を介して作用するEGFファミリの成長因子メンバーを使用して、形態学的変化を生じさせ、近傍のニューロンを直接励起させる神経活性物質を放出する。チロシン−キナーゼ受容体のアゴニスト(たとえばNGF、EGFおよび基本的なFGF)は、ラット脳からのシナプトソームを豊富に含むP(2)画分におけるNa
+依存性セロトニン吸収を高める(Gil et al. (2003) Neurochem. Int. 42:535-542。
【0055】
IL-13:
IL-13は通常、抗炎症性サイトカインとして作用するため、IL-13のより低いレベルは免疫系の調節不全を増大させて、炎症誘発性サイトカインの活性増大を生じさせるということが示唆される。バクテリア内毒素リポ多糖(LPS)の全身性投与は、脳内のIL-1、IL-6および腫瘍壊死因子α(TNF-α)のような炎症誘発性サイトカインの誘導性発現によって媒介される多大なうつ効果を行動に及ぼす。LPSおよびIL-13が同時に注射された場合、IL-13はうつ効果を増強した(Bluthe et al. (2001) Neuroreport 12:3979-3983)。
【0056】
PAI-1:
組織タイププラスミノーゲン活性化因子(tPA)は、プロテイナーゼプラスミンからのチモーゲンプラスミノーゲンの生成を触媒する高特異性セリンプロテイナーゼである。プラスミンによるプロBDNF、すなわちBDNF前駆体のBDNFへのタンパク質分解開裂が、BDNF作用が制御される機構を表す。さらには、tPAを欠くマウスを使用した実験が、tPAがストレス反応にとって重要であり、MDDの一般的な誘発因子であることを実証した。tPAの主要抑制因子であるPAI-1の血清レベルが、正常な対照よりもMDDの女性において高いということが示された。たとえば、Tsai (2006) Med. Hypotheses 66:319-322を参照すること。
【0057】
RANTES:
RANTES(Regulated upon Activation, Normal T-cell Expressed, and Secreted)(CCL5とも知られる)は、化学走化性サイトカインまたはケモカインとして分類される8kDタンパク質である。RANTESは、T細胞、好酸球および好塩基球に対して化学走化性であり、白血球を炎症部位に動員する際に積極的な役割を演じる。RANTESの組み合わせ効果が、中枢神経系内で炎症応答を増幅するように働くおそれがある(Luo et al. (2002) Glia 39:19-30)。
【0058】
第VII因子:
心理学的ストレッサならびにうつおよび不安障害はまた、冠動脈疾患とも関連する。血液凝固、抗凝血および線維素溶解活性における変化が、心理学的要因を冠動脈症候群とリンクさせる心理生物学的経路を構成するおそれがある(von Kanel et al. (2001) Psychosom. Med. 63:531-544)。第VII因子のレベルは、正常な対照に比べてMDDの対象においてより低いことがわかった。この発見は、うつ病患者、特に心臓血管障害を抱えたうつ病患者における凝固亢進のいくつかの報告とは相反する。しかし、うつ病は、心臓血管疾病を有しない人々における炎症および凝固因子と関連することが示されており、うつ病個人における冠動脈心疾患のイベントの頻度の増大につながる可能な経路が示唆されている(Panagiotakos (2004) Eur. Heart J. 25:492-499)。
【0059】
IL-15:
IL-15は、炎症性/自己免疫疾患の病因に関与する炎症誘発性サイトカインである。加えて、IL-15は、体細胞起源性であることが示されている(Kubota et al. (2001) Am. J. Physiol. Regul. Integr. Comp. Physiol. 281:R1004-R1012)。
【0060】
TIMP-1:
サイトカインによって発現が制御されることができる基質メタロプロテイナーゼ(MMP)およびメタロプロテイナーゼの組織抑制因子(TIMP)は、生理学的および病理学的プロセスにおける細胞外基質再構築において役割を演じる。血漿ノルエピネフリンレベルとMMP-2タンパク質レベルとの正の関係ならびに血漿コルチゾルレベルとMMP-2レベルとの負の相関が観察されている(Yang et al. (2002) J. Neuroimmunol. 133:144-150)。
【0061】
A1-AT:
うつ病においては、プロリルエンドペプチダーゼ(PEP)およびジペプチジルペプチダーゼIV(DDP IV)のようなペプチダーゼの活性の低下が起こる。重篤なうつ病の対象においては、正常な対照と比べて、α-1アンチトリプシンの血漿濃度の増大が見られ、軽度のうつ病は中間的なポジションを示すということを示す研究がある(Maes (1992) J. Affect. Disord. 24:183-192)。
【0062】
A2M:
A2Mは、血清パンプロテアーゼ抑制因子であり、炎症性疾患と関連する急性期タンパク質である。A2Mはまた、βアミロイド沈着物の主成分であるAβのクリアランスおよび分解を媒介するその能力に基づいて、アルツハイマー病にも関連している。非メランコリー型うつ病患者が、疾病の急性期ならびに2および4週間の治療後でA2M血清濃度の増大を示している(Kirchner (2001) J. Affect. Disord. 63:93-102)。
【0063】
B2M:
B2Mは、免疫学的防御において主要な役割を演じる小さな(99アミノ酸)タンパク質である。B2Mは、58位置のリシンの除去によって修飾されて、アミノ酸1〜57および59〜99の二つのジスルフィド結合鎖を有するタンパク質を残すことができる。この修飾形態(desLys−58−β2−ミクログロブリンまたはΔK58-β2m)が慢性炎症状態と関連することが示されている(Nissen (1993) Danish Med. Bul. 40:56-64)。B2Mは、いくつかの自己免疫障害において疾病活性と相関することがわかっており、多発性硬化症においてインターフェロンβ治療の薬力学的マーカーとして使用されている。
【0064】
コルチゾル:
コルチゾルは、副腎皮質によって産生されるコルチコステロイドホルモンである。コルチゾルは、ストレスに対する応答に関与するため「ストレスホルモン」とも呼ばれることが多い重要なホルモンである。このホルモンは血圧および血糖値を上げ、免疫抑制作用を有する。コルチゾルは、CRHの分泌を抑制して、ACTH分泌のフィードバック抑制を生じさせる。この正常なフィードバックシステムは、ヒトが慢性的ストレスに暴露されたとき崩壊することがあり、うつ病の根本的原因であるかもしれない。上昇した平均24時間血清コルチゾル濃度および増大した24時間コルチゾル尿分泌によって反映されるように、うつ病における高コルチゾル症が報告されている。加えて、長期的な高コルチゾル血症は神経毒性であるおそれがあり、上昇したコルチゾルと関連する再発性うつ病エピソードは進行性脳損傷を招くおそれがある。
【0065】
チロキシン(T4):
T
4は、体における代謝プロセスの速度を制御し、身体発達に影響することに関与している。甲状腺および甲状腺ホルモンは一般に、大うつ病の病因において重要であると考えられている。たとえば、研究が、一次うつ病患者における視床下部下垂体副腎(HPT)軸の成分の変化を記録している。しかし、スクリーニング甲状腺試験は、多くの場合、診断評価をほとんど加えず、顕性甲状腺疾患はうつ病入院患者の中ではまれである。うつ病が自己免疫無症状性甲状腺炎と共存することができるという発見は、うつ病が、免疫系における変化を生じさせるかもしれない、またはそのものが自己免疫障害であるかもしれないことを示唆する。また、治療の結果およびうつ病の過程が甲状腺状態に関連しているかもしれない。甲状腺ホルモン(主にT
3)の同時投与による抗うつ剤治療法の増強が難治性うつ病患者のための治療オプションである。
【0066】
AVP:
以前の研究が、大うつ病性障害における神経下垂体分泌物の異常を報告している。これらの分泌物の一つがAVPであり、いくつかの研究で、特にうつ病の特定のサブクラス(たとえばメランコリー型、不安関連)の患者において、MDDと関連づけられている。バソプレシンは、その名が示すように、末梢血管の抵抗を高め、ひいては動脈血圧を上昇させる。動物実験が、AVPがストレス応答の神経調節物質として機能することを示している。ヒト実験が、様々なストレス条件下でAVPの血漿濃度が増減するが、正常な放出は浸透圧および体積受容体によって制御されることを示している。最後に、AVPの血漿レベルがMDD患者において上昇することが示された(van Londen et al. (1997) Neuropsychopharm. 17:284-292)。したがって、AVPレベルの計測は、治療法を分離し、モニタリングする能力に貢献することができる。
【0067】
NPY:
NPYは、脳および自律神経系において見られる36アミノ酸ペプチド神経伝達物質である。NPYは、エネルギー均衡、記憶および学習の調節を含む、脳における数多くの生理的プロセスならびにてんかんと関連している。NPY増大の主な効果は、食物摂取の増大および身体活動の減少である。豊富なデータが、神経ペプチド、たとえばNPY、CRH、ソマトスタチン、タキキニンおよびCGRPが情動障害およびアルコール使用/乱用において役割を有するということを示している。MDD患者における血漿NPYの代謝機能障害および血漿NPYの減少がMDDの病因論および病態生理学に関与しているかもしれない(Hashamoto et al. (1996) Neurosci Lett. 216(1):57-60)。したがって、本明細書に記載されるように、NYPレベルの計測は、治療法を分離し、モニタリングする能力に貢献することができる。
【0068】
ACTH:
ACTH(コルチコトロピンとも呼ばれる)は、下垂体によって産生され、分泌されるポリペプチドホルモンである。視床下部下垂体副腎軸における重要な働き手である。ACTHは、副腎皮質を刺激し、コルチコステロイド、主に糖質コルチコイドおよび性ステロイド(アンドロゲン)の合成をブーストする。血漿ACTHは、特に高コルチゾル血症の患者において上昇することがある。
【0069】
CRH:
CRHは、元はコルチコトロピン放出因子(CRF)と呼ばれており、ストレス応答に関与するポリペプチドホルモンかつ神経伝達物質である。CRHおよびコルチゾルの血漿濃度は、比較群におけるよりも大うつ病および気分変調において有意に高かった。大うつ病患者は、気分変調と有意に異なるCRHおよびコルチゾルレベルを示さなかった。重篤な大うつ病性障害は、軽度または中程度のエピソードよりも有意に高いCRH血漿レベルを示した。血漿コルチゾルおよびCRF濃度は有意に相関した。
【0070】
DA:
DAは、視床下部によって放出される神経ホルモンである。ホルモンとしてのその主な機能は、下垂体の前葉からのプロラクチンの放出を抑制することである。近年、単極性うつ病および動機付け構造の病因の両方において、DAの役割への関心が増大している。その後の数十年にわたって実施された基本的な科学的および臨床研究が、うつ病の病因においてノルエピネフリン(NE)およびDAが決定的な役割を演じるということを確認した。しかし、これは、近年におけるうつ病の選択的セロトニン再吸収阻害剤(SSRI)治療の到来とともに、セロトニンへの注目によって大きく影が薄れてしまった。うつ病において血漿DAレベルはHAM-Dスコアと負に相関する(Hamner and Diamond (1996) Psychiatry Res. 64:209-211)。加えて、抗治療性うつ病において、HVA(DAの代謝産物)の静脈動脈血漿濃度の低下が観察されている(Lambert et al. (2000) Arch. Gen. Psychiatry 57:787-793)。ドーパミン作動活性の低下が快感消失症と関連している。
【0071】
IL-1:
IL-1は、HPA軸の活性化に強く関与している。また、IL-1の末梢および中枢投与は、脳内、もっとも顕著には視床下部におけるNE放出を誘発する。脳DAの小さな変化がときおり観察されるが、これらの効果は部位選択的ではない。IL-1はまた、トリプトファンの脳濃度および脳内のセロトニン(5-HT)の代謝を部位非選択的に増大させる。また、トリプトファンおよび5-HTの増大がIL-6によって顕在化されるが、NEの増大はIL-6によって顕在化されず、それがまたHPA軸を活性化するが、それらの点ではIL-1よりもずっと弱い。ラットへのIL-1β投与は、視床下部におけるIL-1βmRNAの発現を99%刺激したが、IL-6の発現を刺激しなかった。また、副腎におけるACTH、PRL、CORTおよびCORT産生の血漿レベルを有意に活性化した。これらの結果は、IL-1βの急性末梢増強が、視床下部におけるそれ自体の発現の中間活性化を介して神経内分泌変化をも誘発するかもしれないことを示すが、視床下部におけるIL-6のそれは見られなかった。
【0072】
レプチン:
レプチンは、食欲および代謝の調節(低下)および(増大)を含むエネルギー摂取およびエネルギー出費を調節する際に重要な役割を演じる16kDaタンパク質ホルモンである。多くの物質とは異なり、レプチンは、その血漿濃度に比例してCNSに進入する。レプチンは、HPA皮質軸を含むいくつかの神経内分泌系を活性化することによって食欲を抑制する。レプチンおよびコレステロールレベルは、大うつ病性障害の患者においては低く、精神分裂病患者においては高かった。他者が、MDD患者におけるBDIスコアと血清コレステロールまたはレプチンレベルとの間に負の相関を見いだしている。
【0073】
NE:
NEは、ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼによってDAから合成される。副腎髄質から血液中にホルモンとして放出され、また、中枢神経系および交感神経系においては、ノルアドレナリン作動性ニューロンから放出される神経伝達物質である。NEの作用は、アドレナリン作動性受容体への結合によって実施される。ストレスホルモンとして、NEは、注意および応答行動が制御される脳の部分に影響する。エピネフリンと同様に、NEもまた、ファイトオアフライト反応の基礎となり、心拍数を直接上昇させ、エネルギー貯蔵からのグルコースの放出を起動し、骨格筋への血流を増大させる。NEレベルは双極性疾患において有意に低いため、血漿NEは、単極性うつ病を双極性うつ病から区別するのに有用であるかもしれない。
【0074】
セロトニン:
ある範囲の研究が、双極性および単極性のうつ病がセロトニン(5-HT2)活性の機能レベルの低下を伴うことを示唆している。セロトニンレベルの低下はまた、他の関連形態のうつ病、たとえば季節性感情障害(SAD)にも関連している。血液または血清中のセロトニンを試験する有用性はごくわずかであるが、血小板および/または脳脊髄液中のセロトニンレベルの計測は有用なデータを提供することができる。うつ病精神科入院患者および正常な対照の実験において、血小板セロトニン(血中セロトニン)含量は、気分障害の最近のケースを有するうつ病精神科入院患者の間で、気分障害の最近の病歴を有しないうつ病精神科入院患者の間よりも有意に高かった。他の結果が、異常な人格障害を有するうつ病患者が、人格障害を有しない患者よりも高い血小板セロトニンレベルを有することを示唆した。血小板および脳における5-HT2Aセロトニン受容体の間の類似に加えて、血小板膜中のセロトニン輸送体(SERT)のレベルはCNS中で見られるレベルと同一である。多数の研究が、健常な対象の血小板中のSERT密度と比較して、うつ病個人の血小板中のSERT密度の低下を示している。
【0075】
神経精神医学的疾病を評価するための血清マーカーの評価に関して疑問が上がっている。たとえば、テストステロンレベルおよび気分障害を調査する研究は、矛盾する結果を示している。しかし、多くの場合、データの解釈に伴う問題は、まずい実験設計によるものであった。特に、単一アッセイまたはアッセイ群からの結果は、アルゴリズムを使用して分析されるのではなく、単一アッセイとみなされていた。抗体の拡大ライブラリ(たとえば、約200のマーカーの能力を有する、Ridgeの高度多重化スクリーニング技術)を、十分に特性決定された患者からの試料(たとえば血漿または血清)に拡大することができる。さらなる実験において、治療の前および治療中に、対象のタンパク質(たとえばモノアミンおよび甲状腺ホルモン)の抗体を使用して患者および対照の体液中のレベルを計測することができる。逐次サンプリングの機会を提供するために、最小侵襲法によって得られた試料と適合するような表面およびアレイ設計を開発することができる。一般に血清および血漿が使用されるが、本明細書に示されるように、他の生物学的試料もまた有用であることができる。たとえば、尿中の特定のモノアミンを計測することができる。加えて、群としてのうつ病患者が、健常な対照対象よりも多量のカテコールアミンおよび代謝産物を尿中に分泌することがわかっている。分析対象物は、たとえば、ノルエピネフリン、エピネフリン、バニリルマンデル酸(VMA)および3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルグリコール(MHPG)を含む。プロテオーム研究が、尿が、疾病状態で示差的に発現することができるタンパク質およびペプチドの豊富なソースであることを示した。また、神経精神医学的疾病に関連するマーカーを評価することもできる(たとえば、うつ病対象からの脳脊髄液中で質量分析法ベースの発見を実施する教育機関研究室と共同で)。
【0076】
選択された分析対象物(たとえばタンパク質、ペプチドまたは核酸)マーカーに加えて、アルゴリズムは、単極性うつ病の診断および/またはMDDを他の気分障害(たとえば躁うつ障害、外傷後ストレス疾患(PTSD)、精神分裂病、季節性感情障害(SAD)、産後うつ病および慢性疲労症候群)から区別する際に有用な他の計測可能なパラメータを含むことができる。たとえば、本明細書の表1に提供される18の分析対象物のパネル、本明細書の表9に提供される13の分析対象物のパネルまたはそれらのサブセット(たとえば、本明細書の表2〜7および10〜16にリストされるような)を、単独で、または他の計測可能なパラメータと組み合わせて使用して、MDDを、うつ病を伴う高齢者の他の疾病、たとえば、非限定的に血管性痴呆、アルツハイマー病、慢性疼痛および能力障害から区別することができる。同様に、若年層のうつ病は、孤立問題を呈することはめったになく、一般に、診断および治療の両方にとって難問であることができる、行動的関心の複雑なパターンの一部である。たとえば、うつ病の若者は、多くの場合、少なくとも一つの他の診断、たとえば不安、物質乱用および分裂的行動傷害を有する。さらには、うつ病の若者は、時間とともに双極性気分障害を発症するおそれがある。そのような場合の診断を、本明細書に記載されるように、特定の分析対象物のレベルを計測し、MDDスコアを算出することにより、支援することができる。
【0077】
いくつかの態様において、MDDスコアは、他の計測可能なパラメータ、たとえばコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを使用する画像診断、磁気共鳴画像診断(MRI)、分子共鳴分光写真(MRS)、他の物理的計測、たとえば体重指数(BMI)および甲状腺機能の基準(たとえばTSH、遊離チロキシン(fT
4)、遊離トリヨードチロニン(fT
3)、リバースT
3(rT
3)、抗チログロブリン抗体(抗TG)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO)、fT
4/fT
3およびfT
3/rT
3)のさらなる考慮を含むことができる。たとえば、患者を細分類し、さらに特性決定するために、対象をCTスキャンまたはリン磁気共鳴分光法(
31P-MRS)を含むMRSで画像診断することもできる。同様な研究が、脳代謝変化がMDDの病理に関連することを示唆している。
31P-MRSを使用する実験は、主にアデノシン三リン酸(ATP)の脳レベルを反映する脳エネルギー代謝(たとえばβヌクレオシド三リン酸(β-NTP))が、うつ病対象において、正常な対照においてよりも低く、うつ病の重篤度と正に相関することを証明した。β-NTPレベルはまた、成功した抗うつ剤治療の後では正常化するように思われるが、非応答者の治療においては正常化しないと思われる。3D化学シフト画像診断を含む
31P-MRS法は、特定の脳部位からの
31P-MRS代謝産物を計測する可能性を提供する。
【0078】
さらに、生殖年数中のエストロゲン産生における男女対比が性別間でのうつ病の発現を示差的に変調させると提案されている。月経周期の後期黄体期中および産後に気分変化がしばしば報告される。閉経期におけるうつ病の危険の増大の発見が一貫して再現されているわけではないが、最近の疫学的研究が、閉経後、エストロゲンレベルが低下するときに大うつ病の発症が増加し、このエストロゲン産生の減少のせいで、閉経後女性がうつ病に対してますます脆弱になるということを見いだした。同様に、テストステロンとうつ病全般との間には弱い関係しかないが、テストステロンと、治療に応答しないうつ病との間にははるかに強い関係がある。
【0079】
したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、血液、血清、脳脊髄液および/または尿からの多数のバイオマーカーの測定のためのカスタムタンパク質アレイの感度および特異性を利用することができる。加えて、アルゴリズムが、タンパク質サインと画像診断ならびに心理学的試験との間の一致を反映することができる。
【0080】
図2は、たとえば診断または予後を決定する際に使用するための疾病特異的ライブラリまたはパネルの開発に含めることができる第一の工程を詳細に示す流れ図である。プロセスは、二つの統計学的手法、すなわち1)疾病と関連するバイオマーカーの分布を単変量分析によって試験する手法、および2)バイオマーカーを非重複一次元クラスタに分割するツールを使用してバイオマーカーを群にクラスタ化する手法、すなわち主成分分析に類似したプロセスを含むことができる。初期分析ののち、各クラスタからの二つまたはそれ以上のバイオマーカーのサブセットを識別して、さらなる分析のためのパネルを設計することができる。選択は一般に、マーカーの統計学的強度および疾病の現在の生物学的理解に基づく。
【0081】
図3は、たとえば診断または予後を確立する際に使用するための疾病特異的ライブラリまたはパネルを開発するために含めることができる工程を示す流れ図である。
図3に示すように、関連するバイオマーカーの選択は、
図2に記載される選択プロセスに依存する必要はないが、第一のプロセスが効率的であり、実験および統計に基づくマーカーの選択を提供することができる。しかし、プロセスは、仮説および現在利用可能なデータに完全に基づいて選択されたバイオマーカーの群によって開始することもできる。一般に、関連する患者集団および適切に合致した(たとえば年齢、性別、人種、BMIなど)正常な対象の集団の選択がプロセスに含まれる。いくつかの態様において、患者診断は、現在の技術水準の方法を使用して、場合によっては、患者集団との適切な経験を有する単一の医師群によって実施されることができる。バイオマーカー発現レベルは、MIMS計器または単一アッセイ法(たとえばELISAまたはPCR)を含む任意の他の適当な技術を使用して計測することができる。従来の統計学的ツール(たとえば、非限定的に、T検定、主成分分析(PCA)、線形判別分析(LDA)またはバイナリロジスティック回帰)を使用して、単変量および多変量分析を実施することができる。
【0082】
分析対象物計測
本明細書に提供されるような、うつ障害を診断し、うつ病治療に対する対象の応答をモニタリングする方法は、対象から収集された生物学的試料中のバイオマーカーの群のレベルを決定することを含むことができる。例示的な対象はヒトであるが、対象は、ヒト疾病のモデルとして使用される動物(たとえばマウス、ラット、ウサギ、イヌおよび非ヒト霊長類)をも含むことができる。バイオマーカーの群は特定の疾病に特異的であることができる。たとえば、複数の分析対象物がMDDに特異的なパネルを形成することができる。
【0083】
本明細書に使用される「生物学的試料」とは、核酸、ポリペプチドまたは他の分析対象物を取得することができる細胞または細胞物質を含有する試料である。実施される分析のタイプに依存して、生物学的試料は、血清、血漿または血液細胞(たとえば、標準的技術を使用して単離された血液細胞)であることができる。血清および血漿が例示的な生物学的試料であるが、他の生物学的試料を使用することもできる。他の適当な生物学的試料の例は、非限定的に、脳脊髄液、胸膜液、気管支洗浄液、痰、腹膜液、膀胱洗浄液、分泌物(たとえば乳房分泌物)、口腔洗浄液、スワブ(たとえば口腔スワブ)、単離細胞、組織試料、触診標本および細針吸引物を含む。いくつかの場合において、生物学的試料がすぐに試験されるならば、試料は室温で維持することができる。そうでなければ、試料は、アッセイまで冷蔵または冷凍(たとえば−80℃で)することができる。
【0084】
バイオマーカー(たとえば分析対象物)を定量するためには多数の方法を使用することができる。たとえば、計測値は、一つまたは複数の医療装置または臨床評価スコアを使用して対象の状態を評価する、または生物学的試料の試験を使用して特定の分析対象物のレベルを測定することによって得ることができる。多重法が特に有用である。多重化に有用なプラットフォームの一例が、FDA認可されたフローベースのLuminexアッセイシステム(xMAP、オンラインではluminexcorp.com)である。この多重技術は、フローサイトメトリーを使用して、抗体/ペプチド/オリゴヌクレオチドまたは受容体でタグ付けされ、標識された微小球を検出する。システムはアーキテクチャがオープンであるため、Luminexは、特定の疾病パネルを受け入れるように容易に適合させることができる。
【0085】
分析対象物定量に有用なもう一つの技術は、抗体の、その抗原への特異的結合に基づいて物質の濃度(たとえば生物学的組織または流体、たとえば血清、血漿、脳脊髄液または尿中の)を計測する生化学的試験法であるイムノアッセイ法である。バイオマーカー定量のために選択される抗体は、その抗原に対して高い親和性を有しなければならない。血漿タンパク質を高感度、高精度、高信頼性で好都合に定量する要求を満たすために膨大な種類の様々な標識およびアッセイ戦略が開発されている。たとえば、生物学的試料中のバイオマーカーを定量するためには酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)を使用することができる。「固相サンドイッチELISA」においては、未知の量の特定の「捕獲」抗体をマルチウェルプレートの表面に固定し、試料がその捕獲抗体を吸収することを許すことができる。次に、第二の特異的な標識された抗体を、抗原に結合することができるよう、表面に流すことができる。第二の抗体は酵素に結合しており、最終工程で、酵素によって転換されて検出可能なシグナル(たとえば蛍光シグナル)を生成する物質が加えられる。蛍光ELISAの場合、プレートリーダを使用して、適切な波長の光が試料に照射されたときに生成されるシグナルを計測することができる。アッセイ終点の定量は、マルチウェルプレート上の異なるウェル中の色付き溶液の吸光度を読むことを含む。色付き溶液の正確な計測を可能にするために分光光度計を組み込む一定の範囲のプレートリーダが利用可能である。一部の自動化システム、たとえばBIOMEK(登録商標)1000(Beckman Instruments, Inc.; Fullterton, CA)もまた、内蔵検出システムを有している。一般に、未知のデータ点を実験的に導出された濃度曲線に当てはめるためにはコンピュータを使用することができる。
【0086】
バイオマーカーを定量するために使用することができる他の技術は、BIACORE(商標)表面プラスモン共鳴(GE Healthcare, Chalfont St. Giles, United Kingdom)およびタンパク質アレイを含む。抗原または抗体の標識なしでバイオマーカー定量に使用することができるもう一つの計器が分子相互作用計測システム(MIMS; Ridge Diagnostics, Inc.)である。MIMSは、ほぼ無試薬であり、高速であり、非技術者の個人が容易に使用することができる。
【0087】
また、数多くの他のよりハイスループットの多重化技術を使用して、疾病特異的および化合物特異的バイオマーカーを速やかに計測し、妥当化することができる。それらは、免疫ビーズベースのアッセイ、化学発光多重アッセイならびにチップおよびタンパク質アレイを含む。ナイロン膜、プラスチックマイクロウェル、平面ガラススライド、ゲルベースのアレイおよび懸濁アレイ中のビーズを含む様々なタンパク質アレイ基質を使用することができる。イムノアッセイベースの方法に加えて、ハイスループット質量分析法ベースの技術を使用して、アイデンティティを確立し、ペプチドおよびタンパク質を定量することもできる。複雑なバックグラウンド内で特定の生物学的状態に関連する特定のタンパク質パターンを絶対定量的方法で定量するための質量分析法の能力はデータ標準化を容易にすることができ、それが、バイオマーカー発現を比較するために、また、計算生物学およびバイオシミュレーションにとって不可欠であることができる。
【0088】
図4は、診断開発および適用のためのスコアのセットを確立する際に含めることができる工程を示す流れ図である。プロセスは、被験対象から生物学的試料(たとえば血液試料)を取得する工程を含むことができる。実施される分析のタイプに依存して、血清、血漿または血液細胞を標準的技術によって単離することができる。生物学的試料がすぐに試験されるならば、試料は室温で維持することができる。そうでなければ、試料は、アッセイまで冷蔵または冷凍(たとえば−80℃で)することができる。バイオマーカー発現レベルは、MIMS計器または単一アッセイ、たとえばELISAもしくはPCRを含む任意の他の適当な技術を使用して計測することができる。各マーカーのデータを収集し、アルゴリズムを適用して、診断スコアのセットを生成する。診断スコアおよび個々の分析対象物レベルは、対象のための診断および/または治療行為を確立する際の使用のために臨床従事者に提供されることができる。
【0089】
診断スコアを使用する方法
図5は、診断スコアを使用して診断を決定し、治療を選択し、治療の進行をモニタリングする例示的方法を示す流れ図である。
図5に示すように、バイオマーカーのセットの発現レベルを使用して、一つまたは複数の診断スコアを生成することができる。この例においては、対象の血液試料中の多数のバイオマーカーを計測し、アルゴリズムによって三つの診断スコアを生成している。場合によっては、一つの診断スコアが、診断、治療選択および治療のモニタリングを支援するのに十分であるかもしれない。治療が選択され、治療が開始されても、診断スコアを生成し、比較するためにバイオマーカーレベル(たとえば、後で得られる血液試料中の)を計測することによって患者を定期的にモニタリングする必要があるかもしれない。
【0090】
MDDスコアを使用して、たとえば、治療中の患者状態をモニタリングし、治療を調節することができる。抗うつ剤処方を受ける外来患者のほぼ半数が最初の1ヶ月間に治療を止めてしまう。したがって、最初1ヶ月の治療期間中の患者経過観察およびモニタリングはきわめて重要である。最初3ヶ月以内の中止率は、研究した集団および使用した薬剤に依存して、ほぼ70%に達することもある(Keller et al. Tnt. Clin. Psychopharmacol. (2002) 17:265-271)。効能の欠如の認知とともに、抗うつ剤の副作用が治療失敗の主要な誘因である。
【0091】
診断スコアおよび/または個々の分析対象物レベルもしくはバイオマーカー値は、対象の治療の過程を確立または変更する際の使用のために臨床従事者に提供することができる。治療が選択され、治療が開始されると、二つまたはそれ以上の間隔で生物学的試料を収集し、バイオマーカーレベルを計測して、所与の時間間隔に対応する診断スコアを生成し、診断スコアを時間的に比較することにより、患者を定期的にモニタリングすることができる。これらのスコアおよび診断スコアを増減または安定化させることに関して観察される任意の傾向に基づいて、臨床従事者、セラピストまたは他の医療従事者が、治療をそのまま続けるのか、治療を打ち切るのか、時間とともに改善を見る目標をもって治療計画を調節するのかを選択することができる。たとえば、診断スコアの変更(たとえば、MDDを有しない正常な個人の対照スコアの方向への)は、治療に対する正の応答に対応することができる。診断スコアの変更(たとえば、MDDを有しない正常な個人の対照スコアから離れる方向への)またはベースラインレベルからの診断スコアの変更なしは、治療に対して正の応答ができていないこと、および/または現在の治療計画を見直さなければならないことを示すことができる。
【0092】
患者の診断スコアが報告されたのち、医療従事者は、患者のケアに影響することができる一つまたは複数の措置を講じることができる。たとえば、医療従事者は、診断スコアを患者の診療記録に記録することができる。場合によっては、医療従事者は、MDDの診断を記録して、または他のやり方で患者の診療記録を変換して、患者の医療状態を反映させることができる。場合によっては、医療従事者は、患者の診療記録を再考し、評価し、患者の状態の臨床介入のために多数の治療戦略を評価することができる。
【0093】
医療従事者は、患者の診断スコアに関する情報を受けたのち、MDD症候の治療を開始または変更することができる。場合によっては、診断スコアおよび/または個々の分析対象物レベルの以前のレポートを、最近情報交換された診断スコアおよび/または疾病状態と比較することができる。そのような比較に基づいて、医療従事者は治療法の変更を推奨することができる。場合によっては、医療従事者は、MDD徴候の新規な治療的介入のための治験に患者を登録することもできる。場合によっては、医療従事者は、患者の症候が臨床介入を要するようになるまで、治療法開始を延期することを選択することもできる。
【0094】
医療従事者は、診断スコアおよび/または個々の分析対象物レベルを患者または患者の家族に伝達することができる。場合によっては、医療従事者は、治療オプション、予後および専門家、たとえば神経科医および/またはカウンセラーへの照会を含む、MDDに関する情報を患者および/または患者の家族に提供することもできる。場合によっては、医療従事者は、患者の診療記録のコピーを用意して、診断スコアおよび/または疾病状態を専門家に伝達することもできる。
【0095】
研究専門家は、対象の診断スコアおよび/または疾病状態に関する情報を適用して、MDD研究を進歩させることができる。たとえば、研究者は、MDD診断スコアに関するデータを、MDD症候の治療のための薬物の効能に関する情報とともに編集して、有効な治療を識別することができる。場合によっては、研究専門家は、対象の診断スコアおよび/または個々の分析対象物レベルを取得して、研究実験または治験における対象の登録または参与の継続を評価することもできる。研究専門家は、対象の現在または以前の診断スコアに基づいて対象の状態の重篤度を分類することができる。場合によっては、研究専門家は、対象の診断スコアおよび/または個々の分析対象物レベルを医療従事者に伝達することもできるし、MDDの臨床評価およびMDD症候の治療のために対象を医療従事者に照会することもできる。
【0096】
任意の適切な方法を使用して情報を別の人物(たとえば専門家)に伝達することができ、情報は、直接的または間接的に伝達することができる。たとえば、研究室技術者が診断スコアおよび/または個々の分析対象物レベルをコンピュータベースの記録に入力することができる。場合によっては、情報は、診療または研究記録に対して物理的変更を加えることによって伝達することもできる。たとえば、医療従事者は、記録を再考する他の医療従事者に診断を伝達するために、永久的な記号を加える、または診療記録をフラグで標識することができる。任意のタイプの通信(たとえば郵便、Eメール、電話および対話)を使用することができる。また、情報は、その情報を医療従事者が電子的に利用することができるようにすることによって医療従事者に伝達することもできる。たとえば、情報は、医療従事者がその情報にアクセスすることができるよう、コンピュータデータベースに配置することができる。加えて、情報は、医療従事者の代理として働く病院、医院または研究施設に伝達することもできる。
【0097】
以下の実施例が、上記様々な特徴に関するさらなる情報を提供する。
【実施例】
【0098】
実施例1―うつ病の診断マーカー
本明細書に提供される方法を使用して、MDDの素因を診断または決定し、抗うつ病治療学に対する対象の応答を評価するのに有用であるうつ病スコアを決定するためのアルゴリズムを開発した。多重化検出システムを使用して、うつ病の分子相関を表現型分類した。三つの統計学的手法、すなわち(1)MDDとの関連に関してバイオマーカーの分布を試験するための単変量分析、(2)線形判別分析(LDA)および(3)アルゴリズム構築のためのバイナリロジスティック回帰を、バイオマーカー評価およびアルゴリズム開発に使用した。
【0099】
個々の分析対象物レベルの単変量分析:
スチューデントt検定を使用して、各分析対象物の血清レベルをLuminex多重技術によって試験し、うつ病対象と正常対象とで比較した。有意のレベルをα≦0.05に設定した。単変量分析は、データセット中の各変量を別々に診査する。この方法は、数値の範囲および数値の中心的傾向を見て、変数に対する応答のパターンを記述し、各変数を自ら記述する。例として、
図6は、6名の仮説的MDD患者における治療の前後のマーカーXの血中レベルの分布を示す。このグラフから得られる最初の指摘は、マーカーXの濃度が、正常な対象に対し、非治療MDD患者においてより高いということである。第二に、治療後のMDD患者のマーカーXのレベルは対照のレベルに近いものであった。
【0100】
次に、スチューデントt検定を使用して、二つのセットのデータを比較し、それらの平均の差が有意であるという仮説を試験した。平均の差は、いくつの標準偏差が平均を分けるのかに基づいて、統計学的に有意である。平均間の距離は、スチューデントt統計およびt統計の絶対値が偶然この大きさである、またはより大きいその対応する確率または有意を使用して、有意と判断される。加えて、t検定は、集団が独立しているか、ペアであるのかを考慮する。二つの群が同じ全体的分散かつ異なる平均を有すると考えられるとき、独立t検定を使用することができる。この検定は、所与の集団が理想的な基準からどのように異なるか、たとえば治療群が独立対照群とどのように対比するかに関するステートメントのための支持を提供することができる。独立t検定は、不等数の点を有するデータセットに対して実施することができる。対照的に、ペア検定は、二つの試料が等しいサイズである(すなわち、同じ数の点を含む)場合のみ、使用される。この試験は、一つの集団中の任意の点の分散が第二の集団中の等価点の分散と同じであると仮定する。この検定を使用して、実験結果を試料ごとに比較することにより、治療に関する結論を支持することができる。たとえば、ペアt検定を使用して、単一群の結果を治療の前後で比較することができる。この手法は、独立t検定を使用した場合に平均が有意に異なるとは思われない二つのデータセットを評価するのに役立つことができる。検定中、平均間の差の有意を計測するためのスチューデントt統計を算出し、t統計がその値を偶然にとる確率(p値)。p値が小さいほど、平均における差はより有意である。多くの生物学的系の場合、p>0.05のαレベル(または有意レベル)は、t統計が偶然によって達成可能である確率を表す。
【0101】
たとえば、
図6のデータ(各群に等しい数の点がある)へのスチューデントt検定の適用は、対照対象とMDD患者との間のマーカーX発現における差がp>0.02で統計学的に有意であり、MDD患者の治療前と治療後との差がp>0.013で有意であることを示した。対照的に、治療後、対照群とMDD患者との間で統計学的に有意な差はなかった(p>0.35)。
【0102】
そのようなデータは、変数の頻度分布を取得するために使用される。これは、最低から最高までの順序の変数のすべての値によって達成される。変数の各値の出現回数が、データセット中に各値が生じる頻度のカウントである。例として、本明細書に記載されるアルゴリズムを使用してMDDスコアが算出されるならば、患者集団を、同じMDDスコアを有するものどうしの群に分けることができる。治療の前後で患者がモニタリングされるならば、各MDDスコアの頻度を確立し、治療の有効性を確証することができる。
【0103】
PCAおよびPLS-DA:
PCAは、数学的には、データを新たな座標系に変換して、データの任意の投射による最大分散が第一の座標(第一主成分と呼ばれる)上に位置し、二番目に大きな分散が第二の座標上に位置する等々のようにする直交線形変換と定義される。PCAは、データの、その分散にもっとも寄与する特性を保持し、低位主成分を維持し、高位主成分を無視することにより、データセット中の次元数削減のために使用される。このような低位成分は、多くの場合、データの「最重要」局面を含有する。
【0104】
観察群間の分離をシャープにするために、クラス間の最大分離が得られるようにPCA成分を回転させて、どの変数がクラス分離情報を有するかに関する情報を提供することにより、PLS-DAを実施した。MDDパネルを使用して、16の分析対象物、すべて18の分析対象物または4〜9の分析対象物のサブセットの血清レベルを例として計測することにより、PLS-DAおよび他の技術を使用して正常対照とうつ病患者との分離を実証した。
【0105】
線形判別分析(LDA)に基づくアルゴリズム:
クラス間(たとえばうつ病vs正常)の差別にもっとも寄与する分析対象物を識別するために、SPSS 11.0 for WindowsからのLDAの段階的方法を以下の設定で使用した:Wilksのラムダ(Λ)法を使用して、クラスタ分離を最大化する分析対象物を選択し、モデルへの分析対象物参入をそのF値によって制御した。大きなF値は、特定の分析対象物のレベルが二つの群の間で異なることを示し、小さなF値(F<1)は差がないことを示す。この方法で、Λの小さな値に関して帰無仮説は拒絶される。したがって、ねらいはΛを最小化することであった。
【0106】
分析対象物予測子のリストを構築するために、各分析対象物のF値を算出した。最大のF値を有する分析対象物(二つの群の間で最大に異なる分析対象物)から出発して、Λの値を決定した。次いで、次に大きなF値を有する分析対象物をリストに追加し、Λを再計算した。第二の分析対象物の追加がΛの値を下げたならば、それを分析対象物予測子のリスト中に維持した。Λの低下がもはや起こらなくなるまで、一度に一つずつ分析対象物を加えるプロセスを繰り返した。
【0107】
次いで、予測モデルのロバストさを試験する方法である交差検定を実施した。予測モデルを交差検定するために、一つの試料を取り出し、とっておき、残りの試料を使用して、予備選択された分析対象物予測子に基づいて予測モデルを構築し、その新たなモデルが、新たなモデルを構築する際に使用されなかった一つの試料を正しく予測することができるかどうかの判定を実施した。このプロセスを、すべての試料に関して一度に一つずつ繰り返し、累積交差検定率を算出した。単変量分析および交差検定から得られた情報を使用しながら分析対象物を手作業で出し入れして交差検定率を最大化することにより、分析対象物予測子の最終リストを決定した。次いで、最高の交差検定率を与える分析対象物予測子のセットを最終的な分析対象物分類子と定義した。
【0108】
実施例2―MDDのための多数のバイオマーカーの選択
スチューデントt検定を使用して、約100の分析対象物の血清レベルをLuminex多重技術によって試験した。その後、データを、うつ病対象と正常対象との比較に関して分析した。有意のレベルをα≦0.05に設定した。初期研究ののち、統計学的有意に基づいて、表1にリストした分析対象物を選択した。続いて、多変量分析(PCA、PLS-DA、LDA)を実施して、MDD患者を正常な集団から区別するのに有用であるマーカーを識別した。
【0109】
表1は、18のバイオマーカーを示し、各分析対象物と単極性うつ病の病態生理学とのそれらの潜在的関係の性質を示す。
【0110】
(表1)
【0111】
MDDへの各マーカーの潜在的な関連は本明細書でさらに詳細に論じられている。
【0112】
実施例3―MDDスコアを算出し、治療を評価するためのアルゴリズムの使用
表1にリストしたマーカーの16およびACTHを使用して、以下のアルゴリズムに基づいて診断スコアを確立した:
うつ病診断スコア=f(a1
*分析対象物1+a2
*分析対象物2+a3
*分析対象物3+a4
*分析対象物4+a5
*分析対象物5+a6
*分析対象物6+a7
*分析対象物7+a8
*分析対象物8+a9
*分析対象物9+a10
*分析対象物10+a11
*分析対象物11+a12
*分析対象物12+a13
*分析対象物13+a14
*分析対象物14+a15
*分析対象物15+a16
*分析対象物16+a17
*ACTH)。
【0113】
このアルゴリズムを使用して、各対象にうつ病スコアを割り当てた。
【0114】
表1にリストしたマーカーの五つ(A2M、BDNF、IL-10、IL-13およびIL-18)を使用して、以下のアルゴリズムに基づいて統計学的に妥当な診断スコアを確立した:
うつ病診断スコア=f(a1
*A2M+a2
*BDNF+a3
*IL-10+a4
*IL-13+a5
*IL-18)。
【0115】
実用においては、より小さな群のバイオマーカーが、臨床評価から誘導されたさらなる情報の有無を問わず、MDDの診断および治療モニタリングを支援するのに十分であることができる。異なるマーカーセットを使用するいくつかの他の例が確立され、表2〜7に示されている。4〜9の分析対象物のサブセットを用いるMDDアルゴリズムは70%〜90%の範囲の診断感度を示した。また、これらの群またはこれらの群と他の情報との組み合わせは、単極性うつ病の様々なサブタイプを区別する、患者を層別化する、および/または治療を選択し、モニタリングするためにも使用される。
【0116】
(表2)18メンバーパネルから導出されたバイオマーカーの7メンバーサブセット
【0117】
(表3)18メンバーパネルから導出されたバイオマーカーの5メンバーサブセット
【0118】
(表4)18メンバーパネルから導出されたバイオマーカーの9メンバーサブセット
【0119】
(表5)18メンバーパネルから導出されたバイオマーカーの6メンバーサブセット
【0120】
(表6)18メンバーパネルから導出されたバイオマーカーの8メンバーサブセット
【0121】
(表7)18メンバーパネルから導出されたバイオマーカーの4メンバーサブセット
【0122】
表8は、仮説的MDDスコアがベースライン(治療前)および治療後に確立された対象のデータの例を提示する。治療の前後に収集されたデータを使用して、各MDDスコアの頻度を決定し、特定の治療計画が有効であるかどうかを確証する。図示するように、治療後、低MDDスコア(1および2)の患者の数が6から11に増し、同時に、より高い範囲のMDDスコア(4および5)の患者数が13から7に減少した。これらのデータは、治療の効能を示し、患者層別化および治療モニタリングのためのMDD診断スコアの有用性を実証する。
【0123】
(表8)
【0124】
実施例4―MDDスコアを算出するためのHPA軸アルゴリズムの使用
表9は、HPA軸バイオマーカーを含むバイオマーカーの群および各分析対象物とMDDの病因との潜在的な関係をリストする。表10〜17は、診断スコアを生成するために同じく使用することができるバイオマーカー組み合わせのより小さな群をリストする。これらの群またはこれらの群の組み合わせを使用して、うつ障害の様々なサブタイプを診断する、または治療を選択し、モニタリングすることができる。加えて、IL-1αもまた、うつ病を診断し、評価するのに有用なバイオマーカーであることができる。
【0125】
表9にリストした13のマーカーおよびNPYを使用して、以下のアルゴリズムに基づいて診断スコアを確立した:
うつ病診断スコア=f(a1
*分析対象物1+a2
*分析対象物2+a3
*分析対象物3+a4
*分析対象物4+a5
*分析対象物5+a6
*分析対象物6+a7
*分析対象物7+a8
*分析対象物8+a9
*分析対象物9+a10
*分析対象物10+a11
*分析対象物11+a12
*分析対象物12+a13
*分析対象物13+a14
*NPY)。
【0126】
表9にリストしたマーカーの五つ(ACTH、BDNF、IL-10、IL-13およびIL-18)を使用して、以下のアルゴリズムに基づいて診断スコアを確立した:
うつ病診断スコア=f(a1
*ACTH+a2
*BDNF+a3
*IL-10+a4
*IL-13+a5
*IL-18)。
【0127】
異なるマーカーセットを使用するうつ病アルゴリズムのいくつかの他の例が確立され、表10〜16に示されている。特に、4〜6の分析対象物のサブセットを用いるMDDアルゴリズムが70%〜90%の範囲の診断感度を示した。
【0128】
(表9)
【0129】
(表10)完全な12メンバーHPA中心うつ病パネル
【0130】
(表11)代表的な10メンバーHPA中心うつ病パネル
【0131】
(表12)代表的な9メンバーHPA中心うつ病パネル
【0132】
(表13)代表的な8メンバーHPA中心うつ病パネル
【0133】
(表14)代表的な7メンバーHPA中心うつ病パネル
【0134】
(表15)代表的な6メンバーHPA中心うつ病パネル
【0135】
(表16)代表的な5メンバーHPA中心うつ病パネル
【0136】
表10〜16に示す分析対象物リストは、うつ病のHPA関連バイオマーカーのサブセットを表す。これらのパネルは、有用であろうマーカーの唯一の可能な組み合わせであることを意味するものではないが、うつ病患者の診断およびモニタリングに統計学的に妥当な補助を提供するはずであるパネルを表す。これらのタンパク質の多くは日周性の変動を有することが知られているため(たとえばコルチゾル、ACTH、レプチンおよびTSH)、規定期間中(たとえば2:00〜6:00PM)に採取された試料を試験することが有用であることが記される。
【0137】
図7は、上記バイオマーカー分析を使用するコンピュータベースの診断システムの例を示す。このシステムは、バイオマーカーの組み合わせの様々なセットおよびたとえば
図2または3に示す方法に基づいて生成されるバイオマーカーアルゴリズムに基づく各組み合わせのための関連する係数を記憶するバイオマーカーライブラリデータベース710を含む。データベース710はシステム中のデジタル記憶装置に記憶されている。分析される一人または複数の患者の個人のバイオマーカーの計測値を記憶するために、患者データベース720がこのシステム中に提供されている。バイオマーカーライブラリデータベース710中のバイオマーカーの組み合わせの一つまたは複数のセットを、データベース720中に記憶された特定の患者の患者データに適用して、その患者を診断するために選択されるバイオマーカーの組み合わせのセットのための診断出力を生成するために、一つまたは複数のコンピュータプロセッサによって実現されることができる診断処理エンジン730が提供されている。二つまたはそれ以上のそのようなセットを患者データに適用して、二つまたはそれ以上の異なる診断出力結果を提供することもできる。処理エンジン730の出力は、たとえば表示装置、プリンタまたはデータベースであることができる出力装置740中に記憶することができる。
【0138】
図7のシステムを実現するために、また、本書類に記載されたコンピュータ実現方法のいずれかに関連して記載される処理のために、一つまたは複数のコンピュータシステムを使用することができる。
図8は、そのようなコンピュータシステム800の例を示す。システム800は、様々な形態のデジタルコンピュータ、たとえばラップトップ、デスクトップ、ワークステーション、パーソナルデジタルアシスタント、サーバ、ブレードサーバ、メインフレームおよび他の適切なコンピュータを含むことができる。システム800はまた、モバイル装置、たとえばパーソナルデジタルアシスタント、携帯電話、スマートフォンおよび他の類似したコンピューティング装置を含むことができる。さらには、システムは、USB(Universal Serial Bus)フラッシュドライブのようなポータブル記憶媒体を含むことができる。たとえば、USBフラッシュドライブは、オペレーティングシステムおよび他のアプリケーションを記憶することができる。USBフラッシュドライブは、別のコンピューティング装置のUSBポートに挿入することができる、ワイヤレストランスミッタまたはUSBコネクタのような入出力コンポーネントを含むことができる。
【0139】
図8の具体例において、システム800は、プロセッサ810、メモリ820、記憶装置830および入出力装置840を含む。各コンポーネント810、820、830および840は、システムバス850を使用して相互接続されている。プロセッサ810は、システム800内で実行するための命令を処理することができる。プロセッサは、多数のアーキテクチャのいずれかを使用して設計することができる。たとえば、プロセッサ810は、CISC(複雑命令セットコンピュータ)プロセッサ、RISC(縮小命令セットコンピュータ)プロセッサまたはMISC(最小命令セットコンピュータ)プロセッサであることができる。
【0140】
一つの実施態様において、プロセッサ810は単一スレッドプロセッサである。もう一つの実施態様において、プロセッサ810はマルチスレッドプロセッサである。プロセッサ810は、メモリ820内または記憶装置830上に記憶された命令を処理して、ユーザインタフェースのためのグラフィカル情報を入出力装置840上に表示することができる。
【0141】
メモリ820は情報をシステム800内に記憶する。一つの実施態様において、メモリ820はコンピュータ読み取り可能媒体である。一つの実施態様において、メモリ820は揮発性記憶ユニットである。もう一つの実施態様において、メモリ820は不揮発性記憶ユニットである。
【0142】
記憶装置830はシステム800のための大容量記憶装置を提供することができる。一つの実施態様において、記憶装置830はコンピュータ読み取り可能媒体である。様々な異なる実施態様において、記憶装置830は、フロッピーディスク、ハードディスク装置、光学ディスク装置またはテープ装置であることができる。
【0143】
入出力装置840はシステム800のための入出力操作を提供する。一つの実施態様において、入出力装置840はキーボードおよび/またはポインティング装置を含む。もう一つの実施態様において、入出力装置840は、グラフィカルユーザインタフェースを提供するための表示ユニットを含む。
【0144】
記載される特徴は、デジタル電子回路またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアもしくはそれらの組み合わせで実現することができる。装置は、プログラム可能プロセッサによる実行のために情報担体、たとえば機械読み取り可能記憶装置中に有形的に具現化されたコンピュータプログラム製品として実現されることができ、方法工程は、命令のプログラムを実行して、入力データに処理を加え、出力を生成することによって前記実施態様の機能を実行するプログラム可能プロセッサによって実施されることができる。前記特徴は、有利には、データ記憶システム、少なくとも一つの入力装置および少なくとも一つの出力装置からデータおよび命令を受け、データ記憶システム、少なくとも一つの入力装置および少なくとも一つの出力装置にデータおよび命令を送るように結合された少なくとも一つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能システム上で実行可能である一つまたは複数のコンピュータプログラムとして実現されることができる。コンピュータプログラムとは、コンピュータ中で直接的または間接的に使用されて、一定の活動を実行する、または一定の結果をもたらすことができる命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイルまたは解釈される言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書かれることができ、独立型プログラムを含む任意の形態で、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチンもしくはコンピューティング環境で使用するのに適した他のユニットとして展開されることができる。
【0145】
命令のプログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用および専用のマイクロプロセッサならびに任意の種類のコンピュータの唯一のプロセッサまたは多数のプロセッサの一つを含む。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリまたはランダムアクセスメモリまたは両方から命令およびデータを受ける。コンピュータの不可欠な要素は、命令を実行するためのプロセッサならびに命令およびデータを記憶するための一つまたは複数のメモリである。一般に、コンピュータはまた、データファイルを記憶するための一つまたは複数の大容量記憶装置を含む、またはそれと通信するように動作的に結合され、そのような装置は、磁気ディスク、たとえば内部ハードディスクおよびリムーバブルディスク、磁気光学ディスクならびに光学ディスクを含む。コンピュータプログラム命令およびデータを有形的に具現化するのに適した記憶装置は、すべての形態の不揮発性メモリ、たとえば半導体メモリ装置、たとえばEPROM、EEPROMおよびフラッシュメモリ装置、磁気ディスク、たとえば内部ハードディスクおよびリムーバブルディスク、磁気光学ディスクならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む。プロセッサおよびメモリは、ASIC(特定用途向けIC)によって補足されることもできるし、ASICに組み込まれることもできる。
【0146】
ユーザとの対話を提供するために、特徴は、情報をユーザに表示するための表示装置、たとえばCRT(陰極線管)またはLCD(液晶表示装置)モニタならびにユーザが入力をコンピュータに提供することができるキーボードおよびポインティング装置、たとえばマウスまたはトラックボールを有するコンピュータ上で実現されることができる。
【0147】
特徴は、バックエンドコンポーネント、たとえばデータサーバを含む、またはミドルウェアコンポーネント、たとえばアプリケーションサーバもしくはインターネットサーバを含む、またはフロントエンドコンポーネント、たとえばグラフィカルユーザインタフェースもしくはインターネットブラウザを有するクライアントコンピュータを含む、またはそれらの組み合わせを含むコンピュータシステム中で実現されることができる。任意のシステムのコンポーネントは、任意の形態または媒体のデジタルデータ通信、たとえば通信ネットワークによって接続されることができる。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ピア・トゥ・ピアネットワーク(非定型または静的メンバーを有する)、グリッドコンピューティングインフラストラクチャおよびインターネットを含む。
【0148】
コンピュータシステムはクライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは一般に互いに離れており、通常、前記のようなネットワークを介して対話する。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で稼働し、互いにクライアント・サーバ関係を有するコンピュータプログラムのおかげで成り立つ。
【0149】
本書類は多くの詳細を含むが、それらの詳細が、発明または特許請求されるものの範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、本発明の特定の態様に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。また、別々の態様に関連して本明細書に記載される特定の特徴が組み合わされて単一の態様として実現されることもできる。逆に、単一の態様に関連して記載される様々な特徴が多数の態様で別々に、または任意の適当な副次的組み合わせとして実現されることもできる。そのうえ、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして先に記載され、そのようなものとしてはじめに特許請求されるかもしれないが、特許請求される組み合わせからの一つまたは複数の特徴が、場合によっては、その組み合わせから削除されることができ、特許請求される組み合わせが副次的組み合わせまたは副次的組み合わせの変形に関することもできる。
【0150】
いくつかの態様だけが開示されている。本書類に記載され、説明されるものに基づき、記載された態様および他の態様の変更および改良を加えることができる。