(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、主に右ハンドル車(進行方向の右側が運転席の車両)の態様を例に挙げているが、左ハンドル車(進行方向の左側が運転席の車両)にも本発明を適用可能である。
【0030】
図1は、一実施形態の車輪識別情報判定システムの概略的な構成例を示す図である。本実施形態において車輪識別情報判定システムは、例えば一般的なタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Management System)が装備された車両10を好適な対象として実施することができる。タイヤ空気圧監視システムは、各車輪に装着されたタイヤの空気圧を監視し、規定値より低下した場合に警報を発するものである。
【0031】
タイヤ空気圧監視システムを構築するため、車両10には4つの車輪TY1,TY2,TY3,TY4にそれぞれ車輪側通信ユニット40が設置されている。各車輪TY1,TY2,TY3,TY4には図示しない空気入りタイヤが装着されており、各車輪側通信ユニット40は、例えば図示しないタイヤホイールの空気バルブと一体に取り付けられている。また、車輪側通信ユニット40は個々に無線通信(LF通信及びRF通信)機能を有する他、タイヤ内の空気圧を検知する機能を有している。各車輪側通信ユニット40には、予め個体別に固有の識別情報(IDコード)が割り当てられており、各車輪側通信ユニット40は空気圧の検知情報とともに固有の識別情報を無線で送信する。
【0032】
また車輪識別情報判定システムは、例えば一般的なパッシブ式のキーレスエントリシステム(PKE:Passive Keyless Entry system)が装備された車両10を好適な対象として組み込まれている。パッシブ式のキーレスエントリシステム(PKE)は、例えばユーザが携帯機(図示されていない)を所持した状態で車両10に近づくと、携帯機と車載制御モジュール20との間で相互にID認証を行い、この認証に成功した場合はユーザが簡易な操作(例えばタッチ操作)を行うだけでドアロックを自動で解除することができる。またキーレスエントリシステムは、正規の携帯機を所持したユーザ(運転者)が車室内に入ると、キーシリンダにキーを差し込むことなくメインスイッチの操作を許可することもできる。さらにキーレスエントリシステムは、ユーザが降車して例えばドア10bを閉め、そのまま携帯機とともに車両10から離れていくと、自動的にドアロックを作動させることができる。
【0033】
このようなキーレスエントリシステムを構築するため、車両10には受信アンテナ12(RF受信アンテナ)をはじめ、複数の送信アンテナ14(LF送信アンテナ)がそれぞれの取付位置に設けられている。この例では、車両10のインストルメントパネル(参照符号なし)内に1本の受信アンテナ12が設置されている他、送信アンテナ14がルーフパネル10a内の運転席側(DR)と助手席側(AS)にそれぞれ1本ずつ、またルーフパネル10a内の後部(BK)に1本、合計3本が設置されている。ただし、ここで挙げた各種アンテナ12,14の配置は一例であり、その他の配置であってもよい。例えば、左右のフロントドア10b,10cやバックドア10f(テールゲート)に送信アンテナ14が内蔵されていてもよい。あるいは、左右のリアドア10d,10eに別の送信アンテナ14が追加で内蔵されていてもよい。
【0034】
また車両10の室内には車載制御モジュール20が設置されており、上記の受信アンテナ12や送信アンテナ14は、図示しない配線を通じて車載制御モジュール20に接続されている。車載制御モジュール20には図示しない車両側の通信回路(LF送信回路及びRF受信回路)が組み込まれており、通信回路はユーザの所持する携帯機(図示しない)との間で無線通信(LF通信及びRF通信)を行う機能を有している。
【0035】
本実施形態の車輪識別情報判定システムは、上記のキーレスエントリシステムの装備を一部利用して実現されている。また車輪識別情報判定システムは、上記のタイヤ空気圧監視システムに付加された状態で好適に実施することができる。具体的には、各車輪側通信ユニット40との無線通信(LF通信及びRF通信)において、キーレスエントリシステムの受信アンテナ12及び送信アンテナ14を兼用することができる。また車載制御モジュール20は、そのリソースを本実施形態の車輪識別情報判定システム及びタイヤ空気圧監視システムにも提供することができる。以下、より具体的に説明する。
【0036】
〔回路構成〕
図2は、車輪識別情報判定システムの制御に関する構成例を概略的に示したブロック図である。また同ブロック図に示される構成は、キーレスエントリシステム及びタイヤ空気圧監視システムの制御にも利用される。以下、各構成要素について説明する。
【0037】
〔車載制御モジュール〕
上記の車載制御モジュール20は、例えば中央処理装置であるCPU22をはじめ、EEPROM24やRAM26等のメモリデバイス、入出力ドライバ(I/O)28等の周辺ICを備えたコンピュータとして構成されている。このうちCPU22は、例えばCPU22内蔵のROM(図示していない)に記憶された制御プログラムを読み出し、その命令にしたがった処理を実行する。
【0038】
CPU22に内蔵されたROMには、各種システムの動作に必要な制御プログラムが書き込まれている。またEEPROM24には、例えば車両10に予め割り当てられた固有のIDコード(ユニークコード)等の固有情報が書き込まれている。RAM26は、例えばCPU22のメインメモリとして利用可能な揮発性メモリであり、また入出力ドライバ28は、車載制御モジュール20と他の電子機器との間で各種信号を入出力するためのものである。
【0039】
また車載制御モジュール20は、車両側受信機としてのRF受信回路30及び車両側送信機としてのLF送信回路32を備えている。このうちRF受信回路30には受信アンテナ12が接続されており、RF受信回路30は受信アンテナ12を用いて車輪側通信ユニット40から送信されるRF信号(アンサ信号)を受信する。RF受信回路30は、例えば受信したRF信号に含まれるIDコードや空気圧の検知データを復号し、それらの値をCPU22に提供する。
【0040】
LF送信回路32には、上述した合計3本の送信アンテナ14が接続されている。LF送信回路32はCPU22からの指示に基づいて動作し、3本の送信アンテナ14を用いて車輪側通信ユニット40にLF信号(リクエスト信号)を送信する。本実施形態において、RF信号にはRF帯域(例えば300〜500MHz)を使用し、LF信号にはLF帯域(例えば100〜130kHz)を使用するものとする。
【0041】
また本実施形態では、車載制御モジュール20が別の車両ECU60に接続されている。車両ECU60もまた、例えば図示しないCPUやEEPROM、RAM、I/O等を有したマイクロコンピュータであり、この車両ECU60は、車載制御モジュール20と協働してキーレスエントリシステムの動作を制御する。このため車両ECU60には、例えばドアのロックアクチュエータ62やエンジンスタータ64等が接続されている。
【0042】
上記のロックアクチュエータ62は、例えば各ドア10b〜10fのロック又はアンロック機構を作動させるモータ又はソレノイドである。車両ECU60は図示しない車内ドアハンドルやロックピンが操作された場合にロックアクチュエータ62を作動させるほか、キーレスエントリシステムで兼用される車載制御モジュール20からキーレス動作許可信号を受信した場合にもロックアクチュエータ62を作動させる制御を行う。
【0043】
例えば、アンロック(解錠)動作時のキーレス動作許可信号は、上記のように車輪側通信ユニット40(車載機)と携帯機との間でIDコードを用いた認証が成立し、かつ、使用者(運転者)によってタッチ操作等がされた場合に車載制御モジュール20から車両ECU60に出力される。またオートロック(施錠)動作時のキーレス動作許可信号は、例えば車輪側通信ユニット40(車載機)と携帯機との間でIDコードを用いた認証が成立し、かつ、図示しないドア開閉センサによってドア10b〜10fが開いた状態から閉じた状態に変化したことが検出されるとともに、携帯機がLF信号の到達範囲外に出たと判断された場合に車載制御モジュール20から車両ECU60に出力されるものとする。
【0044】
またエンジンスタータ64は、例えば図示しないエンジンのクランキングを行うモータである。車両ECU60は図示しないキースイッチが操作された場合にエンジンスタータ64を作動させるほか、車載制御モジュール20からキーレス始動許可信号を受信した場合にもエンジンスタータ64を作動させる制御を行う。なおキーレス始動許可信号は、図示しない携帯機と車載制御モジュール20(車載機)との間でIDコードを用いた認証が成立し、かつ、使用者(運転者)によって図示しないエンジンスタートボタン等が押下された場合に車載制御モジュール20から車両ECU60に出力される。
【0045】
〔車輪側通信ユニット〕
車輪側通信ユニット40は、上記のように各車輪TY1〜TY4にそれぞれ設置されている。
図2には車輪側通信ユニット40が1つだけ示されているが、システムには4つの車輪TY1〜TY4に対応して4個の車輪側通信ユニット40が含まれる。
【0046】
各車輪側通信ユニット40は、制御IC42やEEPROM44を内蔵する他、駆動用のバッテリ46やRF送信回路48、LF受信回路50をも内蔵している。また車輪側通信ユニット40には、上記のようにセンサ部52が付属している。センサ部52は、各車輪TY1〜TY4のタイヤ空気圧に応じた検知情報(空気圧データ)を生成し、その検知情報を制御IC42に提供する。また、制御IC42の記憶領域には制御プログラムが組み込まれており、制御IC42はその命令にしたがって車輪側通信ユニット40の動作(主にRF送信回路48によるRF送信、LF受信回路50によるLF受信)を制御する。
【0047】
また車輪側通信ユニット40には、RF信号の送信アンテナ48a及びLF信号の受信アンテナ50aが内蔵されている。このうち送信アンテナ48aはRF送信回路48に接続されており、受信アンテナ50aはLF受信回路50に接続されている。LF受信回路50は、送信アンテナ14から送信されるリクエスト信号(LF信号)の受信に必要な構成(特に図示しない)を有している。またRF送信回路48は、リクエスト信号の受信に対するアンサ信号(RF信号)の送信に必要な構成を有している。
【0048】
車両10の送信アンテナ14から送信されたリクエスト信号は、受信アンテナ50aを用いてLF受信回路50で受信される。LF受信回路50は、リクエスト信号に含まれるコマンドコードを復号して制御IC42に提供する。このとき制御IC42は、受け取ったコマンドコードに基づいてアンサ信号の送信処理を行う。
【0049】
上記のように各車輪TY1〜TY4別の車輪側通信ユニット40には、それぞれ固有のIDコード(識別情報)が割り当てられている。固有のIDコードは予めEEPROM44に書き込まれている。アンサ信号の送信処理に際して、制御IC42はEEPROM44から読み出したIDコード(識別情報)とセンサ部52から収集した空気圧データ(検知情報)を含めた送信フレームを生成する。送信フレームは、例えばRF送信回路48の図示しない変調部で変調される。
【0050】
変調された送信フレームは、送信アンテナ48aからアンサ信号として送信される。これにより、車載制御モジュール20(CPU22)は車輪側通信ユニット40のIDコードと空気圧データとを対応付けて認識することができる。ただしアンサ信号には、各車輪側通信ユニット40のIDコード及び空気圧データがいずれの車輪TY1〜TY4の設置位置に対応するものであるかを示す情報は含まれておらず、そのままでは各車輪TY1〜TY4の設置位置別にタイヤ空気圧を監視することができない。
【0051】
本実施形態の車輪識別情報判定システムは、以下の手法を用いて各車輪TY1〜TY4の設置位置とIDコード、さらに空気圧データを対応付けて判別することができる。以下、車輪識別情報判定システムによる判定手法について説明する。
【0052】
図3は、車輪識別情報判定システムによる車輪TY1〜TY4の配置の判定原理を示す概念図である。すなわち
図3には、各取付位置(DR,AS,BK)にある送信アンテナ14からリクエスト信号の送信強度を段階的(例えば高低の2段階)に変化させた場合、その送信強度の段階に応じてリクエスト信号の到達範囲が変化する態様が示されている。
【0053】
〔配置例1〕
先ず
図3に示される車輪TY1〜TY4の配置例1では、例えば右前輪に車輪TY1が対応し、右後輪に車輪TY2が対応し、左前輪に車輪TY3が対応し、左後輪に車輪TY4が対応している。
【0054】
〔取付位置〕
3つの送信アンテナ14は、例えば右側取付位置DR、左側取付位置AS、及び後側取付位置BKにそれぞれ設置されているものとする。このうち右側取付位置DRは、上述したルーフパネル10a内の運転席側に相当する。また左側取付位置ASは、同じく助手席側に相当する。そして後側取付位置BKは後部に相当する。
図3に示される配置例1の場合、車両10における各取付位置の詳細は、例えば以下の通りである。
【0055】
(1)右側取付位置DRは、車両10の運転席側であって、前後方向でみて右前輪及び右後輪にそれぞれ相当する車輪TY1,TY2の間に位置する。したがって右側取付位置DRは、左前輪及び左後輪に比較して右前輪及び右後輪との距離が相対的に近い。
【0056】
(2)次に左側取付位置ASは、車両10の助手席側であって、前後方向でみて左前輪及び左後輪にそれぞれ相当する車輪TY3,TY4の間に位置する。したがって左側取付位置ASは、右前輪及び右後輪に比較して左前輪及び左後輪との距離が相対的に近い。
【0057】
(3)そして後側取付位置BKは、車両10の後部寄りであって、左右の後輪にそれぞれ相当する車輪TY2,TY4の間に位置する。したがって後側取付位置BKは、左右の前輪に比較して左右の後輪との距離が相対的に近い。
【0058】
〔送信強度別の到達範囲〕
右側取付位置DR及び左側取付位置ASについては、送信アンテナ14から高低2段階に送信強度を変化させてリクエスト信号を送信した場合、各送信強度別にリクエスト信号の到達範囲が異なり、それに伴って到達範囲内に位置する車輪側通信ユニット40の設置数も異なってくる。以下、個別に説明する。
【0059】
〔DR−Lo〕
右側取付位置DRにある送信アンテナ14から送信強度を低段階(DR−Lo)に調整してリクエスト信号を送信すると、
図3中に破線で示される到達範囲I1内には、右後輪に対応する車輪TY2に設置された車輪側通信ユニット40(1個)が位置している。したがって、低段階(Lo)の送信強度は、車体の形状や大きさ、右側取付位置DRと各車輪TY1〜TY4との位置関係等を考慮した上で、最終的に右後輪に対応する車輪TY2の車輪側通信ユニット40に対してリクエスト信号が到達し、その他の3輪に対応する3個の車輪側通信ユニット40にはリクエスト信号が到達しない送信強度である。具体的な送信強度は車両10によって異なってくるため、適用する車種に応じて予め送信強度の具体的な設定値を決定しておき、送信制御用のパラメータとしてEEPROM24に記憶しておけばよい。なおリクエスト信号の到達範囲は、送信強度が大きくなるほど基本的には広がるが、車両10の構造上の制約(例えばシャーシ構造等)によりLF電波が遮蔽されることにより、到達範囲が狭まったり、変形したりすることがある(これ以降も同様。)。
【0060】
〔DR−Hi〕
右側取付位置DRにある送信アンテナ14から送信強度を高段階(DR−Hi)に調整してリクエスト信号を送信すると、
図3中に一点鎖線で示されるように到達範囲I2が拡張される。このとき到達範囲I2内には、例えば右側取付位置DRから最も遠い左前輪を除いた3輪、つまり、右前輪、右後輪及び左後輪にそれぞれ対応する車輪TY1,TY2,TY4の車輪側通信ユニット40(3個)が位置することになる。したがって、高段階(Hi)の送信強度は、車体の形状や大きさ、右側取付位置DRと各車輪TY1〜TY4との位置関係等を考慮した上で、最終的に右前輪、右後輪及び左後輪に対応する車輪TY1,TY2,TY4の車輪側通信ユニット40に対してリクエスト信号が到達し、その他の左前輪に対応する車輪側通信ユニット40にはリクエスト信号が到達しない送信強度である。ここでも同様に、具体的な送信強度は車両10によって異なってくるため、適用する車種に応じて予め送信強度の具体的な設定値を決定しておき、送信制御用のパラメータとしてEEPROM24に記憶しておけばよい。
【0061】
〔AS−Lo〕
左側取付位置ASにある送信アンテナ14から送信強度を低段階(AS−Lo)に調整してリクエスト信号を送信すると、
図3中に破線で示される到達範囲J1内には、左後輪に対応する車輪TY4に設置された車輪側通信ユニット40(1個)が位置している。したがって、低段階(Lo)の送信強度は、車体の形状や大きさ、左側取付位置ASと各車輪TY1〜TY4との位置関係等を考慮した上で、最終的に左後輪に対応する車輪TY4の車輪側通信ユニット40に対してリクエスト信号が到達し、その他の3輪に対応する3個の車輪側通信ユニット40にはリクエスト信号が到達しない送信強度である。ここでも同様に、具体的な送信強度は車両10によって異なってくるため、適用する車種に応じて予め送信強度の具体的な設定値を決定しておき、送信制御用のパラメータとしてEEPROM24に記憶しておけばよい。
【0062】
〔AS−Hi〕
左側取付位置ASにある送信アンテナ14から送信強度を高段階(AS−Hi)に調整してリクエスト信号を送信すると、
図3中に一点鎖線で示されるように到達範囲J2が拡張される。このとき到達範囲J2内には、例えば左側取付位置ASから最も遠い右前輪を除いた3輪、つまり、左前輪、左後輪及び右後輪にそれぞれ対応する車輪TY3,TY4,TY2の車輪側通信ユニット40(3個)が位置することになる。したがって、高段階(Hi)の送信強度は、車体の形状や大きさ、右側取付位置DRと各車輪TY1〜TY4との位置関係等を考慮した上で、最終的に左前輪、左後輪及び右後輪に対応する車輪TY3,TY4,TY2の車輪側通信ユニット40に対してリクエスト信号が到達し、その他の右前輪に対応する車輪側通信ユニット40にはリクエスト信号が到達しない送信強度である。ここでも同様に、具体的な送信強度は車両10によって異なってくるため、適用する車種に応じて予め送信強度の具体的な設定値を決定しておき、送信制御用のパラメータとしてEEPROM24に記憶しておけばよい。
【0063】
〔BK〕
後側取付位置BKにある送信アンテナ14については、送信強度を単一の段階でリクエスト信号を送信するものとする。この場合、
図3中に二点鎖線で示されるリクエスト信号の到達範囲K内には、左右の後輪にそれぞれ対応する車輪TY2,TY4の車輪側通信ユニット40(2個)が位置している。
【0064】
本発明の発明者等は、上記のように各取付位置DR,ASでそれぞれリクエスト信号の送信強度を段階的に変化させたとき、その段階別(Lo,Hi)にリクエスト信号の到達範囲I1,I2,J1,J2内に位置する車輪側通信ユニット40の設置数が異なる点に着目した。また、リクエスト信号を受信した車輪側通信ユニット40から送信されるアンサ信号に含まれるIDコードの組み合わせは、そのときの取付位置DR,ASと送信強度の段階(Lo,Hi)に応じて異なる点にも合わせて着目した。そして、IDコードの組み合わせは各到達範囲I1,I2,J1,J2内に位置する車輪側通信ユニット40の配置(車輪TY1〜TY4がどこに配置されているか)に依存する。
【0065】
以上の知見から、リクエスト信号を送信する際に送信アンテナ14の取付位置DR,ASを順番に指定し、各順番で指定した取付位置DR,ASについて、送信強度を段階的に変化させてリクエスト信号を送信させる制御を行えば、その段階別(Lo,Hi)に形成されるリクエスト信号の到達範囲I1,I2,J1,J2と車輪TY1〜TY4の配置との幾何学的な(構造上の)相対関係から車輪TY1〜TY4がどの位置に対応しているかを一意に判定することができる。
【0066】
〔判定手法〕
図4は、車輪識別情報判定システムによる車輪位置判定処理の手順例を示す制御フローチャートである。車載制御モジュール20のCPU22は、内蔵ROMに格納された制御フローチャートに基づき、車輪位置判定処理を実行する。以下、手順例に沿って判定処理の流れを説明する。
【0067】
ステップS100:先ずCPU22は、送信アンテナ14の駆動順序を設定する。ここでは便宜上、例えば以下の駆動順序を設定するものとする。
(1)右側取付位置DRで送信強度が低段階(DR−Lo)
(2)右側取付位置DRで送信強度が高段階(DR−Hi)
(3)左側取付位置ASで送信強度が低段階(AS−Lo)
(4)左側取付位置ASで送信強度が高段階(AS−Hi)
(5)後側取付位置BKで送信強度が標準(BK)
【0068】
ステップS102:次にCPU22は、LF送信/RF受信処理を実行する。この処理では、CPU22は先のステップS100で指定した駆動順序(1)〜(5)にしたがって送信アンテナ14の取付位置を指定し、各駆動順序で指定した取付位置の送信アンテナ14から指定の送信強度でリクエスト信号を送信させる。またCPU22は、RF受信回路30を起動し、車輪側通信ユニット40から送信されるアンサ信号を受信すると、そこに含まれるIDコード及び空気圧データを解析する。解析したIDコード及び空気圧データは、例えばRAM26の一時記憶領域に書き込まれる。なおステップS102の処理は、設定した駆動順序(1)〜(5)での送信制御を1回実行し、アンサ信号の受信及び解析を終えると復帰(リターン)する。
【0069】
〔
図3:駆動順序別の到達範囲〕
ここで
図3を参照し、駆動順序(1)〜(5)別の到達範囲を確認する。
(1)「DR−Lo」
右側取付位置DRにある送信アンテナ14から低段階の送信強度でリクエスト信号を送信した場合、そのリクエスト信号は比較的小さい方の到達範囲I1に及ぶ。そしてこの到達範囲I1内に含まれる車輪側通信ユニット40は、右後輪に対応する車輪TY2の1個だけである。
(2)「DR−Hi」
右側取付位置DRにある送信アンテナ14から高段階の送信強度でリクエスト信号を送信した場合、そのリクエスト信号は比較的大きい方の到達範囲I2に及ぶ。そしてこの到達範囲I2内に含まれる車輪側通信ユニット40は、右前輪、右後輪及び左後輪に対応する車輪TY1,TY2,TY4の3個となる。
(3)「AS−Lo」
左側取付位置ASにある送信アンテナ14から低段階の送信強度でリクエスト信号を送信した場合、そのリクエスト信号は比較的小さい方の到達範囲J1に及ぶ。そしてこの到達範囲J1内に含まれる車輪側通信ユニット40は、左後輪に対応する車輪TY4の1個だけである。
(4)「AS−Hi」
左側取付位置ASにある送信アンテナ14から高段階の送信強度でリクエスト信号を送信した場合、そのリクエスト信号は比較的大きい方の到達範囲J2に及ぶ。そしてこの到達範囲J2内に含まれる車輪側通信ユニット40は、左前輪、左後輪及び右後輪に対応する車輪TY3,TY4,TY2の3個となる。
(5)「BK」
後側取付位置BKにある送信アンテナ14から標準的な送信強度でリクエスト信号を送信した場合、そのリクエスト信号は車両10の後方に位置する到達範囲Kに及ぶ。そしてこの到達範囲K内に含まれる車輪側通信ユニット40は、左右の後輪に対応する車輪TY2,TY4の2個である。
【0070】
ステップS104:1回の駆動順序でリクエスト信号の送信とアンサ信号の受信及び解析を終えると、CPU22はリクエスト信号に対する応答のあった車輪側通信ユニット40の個数が指定個数と等しいか否かを確認する。具体的には、各駆動順序で以下の指定個数に等しいか否かを確認する。
(1)右側取付位置DRで送信強度が低段階(DR−Lo)のとき1個
(2)右側取付位置DRで送信強度が高段階(DR−Hi)のとき3個
(3)左側取付位置ASで送信強度が低段階(AS−Lo)のとき1個
(4)左側取付位置ASで送信強度が高段階(AS−Hi)のとき3個
(5)後側取付位置BKで送信強度が標準(BK)のとき2個
【0071】
また、応答のあった車輪側通信ユニット40の個数は、アンサ信号に含まれるIDコードの個数(何個のユニークIDが含まれるか)から認識することができる。その結果、IDコードの個数が指定個数と一致していなければ(ステップS104:No)、CPU22はステップS106に進む。
【0072】
ステップS106→S108:IDコードの個数が指定個数より大きければ(Yes)、CPU22はLF送信レベルを減少させた上でステップS102以降を再度実行する。
ステップS106→S110:一方、IDコードの個数が指定個数より小さければ(No)、CPU22はLF送信レベルを増加させた上でステップS102以降を再度実行する。
【0073】
以上のようにLF送信レベルの調整(ステップS108,S110)を行うことでリクエスト信号の到達範囲が縮小、又は拡大して補正される。レベル調整は、IDコードの個数が指定個数と一致するまで行われる。
【0074】
いずれにしても、IDコードの個数が指定個数と一致する場合(ステップS104:Yes)、CPU22はステップS112に進む。
ステップS112:ここでCPU22は、RAM26の一時記憶領域に書き込んだ応答結果を別のデータ領域に転送し、駆動順序(1)〜(5)別にテーブルデータ化して保存する。テーブルデータの構成例については後述する。
【0075】
ステップS114:CPU22は、全ての駆動順序で送信アンテナ14を駆動済みか否か確認する。すなわち、最初のステップS100で設定したアンテナ駆動順序(1)〜(5)での送信制御を全て完了していない場合(No)、CPU22はステップS102以降を再度実行する。全ての駆動順序(1)〜(5)での送信制御を完了した場合(Yes)、CPU22はステップS116を実行する。
【0076】
ステップS116:最後にCPU22は、配置判定処理を実行する。この処理では、保存したテーブルデータに基づいて、各車輪別のIDコードがどの配置に対応しているかを判定する。
【0077】
〔テーブルデータ構成例〕
図5は、保存されたテーブルデータの構成例を示す図である。
図5に示されるテーブルデータは、例えば左端カラムに駆動順序(1)〜(5)のラベルを配置し、各ラベルに対応する段(行)に応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせを配列したデータ構造を有している。なお、以下では便宜上、各車輪TY1〜TY4の車輪側通信ユニット40のIDコードをそれぞれ「TY1」,「TY2」,「TY3」,「TY4」と表記している。
【0078】
(1)「DR−Lo」
テーブルデータの第1行(見出し行を除く。以下同じ。)に示されているように、駆動順序(1)のラベルを「DR−Lo」と表記すると、この駆動順序(1)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY2」の1個(単独)となる。
(2)「DR−Hi」
次にテーブルデータの第2行に示されているように、駆動順序(2)のラベルを「DR−Hi」と表記すると、この駆動順序(2)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY1」,「TY2」,「TY4」の3個となっている。
(3)「AS−Lo」
またテーブルデータの第3行に示されているように、駆動順序(3)のラベルを「AS−Lo」と表記すると、この駆動順序(3)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY4」の1個(単独)となる。
(4)「AS−Hi」
次にテーブルデータの第4行に示されているように、駆動順序(4)のラベルを「AS−Hi」と表記すると、この駆動順序(4)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY2」,「TY3」,「TY4」の3個となっている。
(5)「BK」
そしてテーブルデータの最下行に示されているように、駆動順序(5)のラベルを「BK」と表記すると、この駆動順序(5)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY2」,「TY4」の2個となる。
【0079】
車載制御モジュール20のEEPROM24には、
図5に示されるテーブルデータと同じデータ構造を有する参照値が予め記憶されている。この場合の参照値は、車輪TY1〜TY4が
図3に示される配置例1で車両10に設置されていると判定するための根拠とすることができる。
【0080】
したがって、先の配置判定処理(
図4中のステップS116)において、CPU22は保存したテーブルデータが
図5に示されるテーブルデータの参照値と一致する場合、車輪TY1〜TY4に対応するIDコードの配置が
図3に示される配置例1に対応していると判定することができる。この場合:判定結果は以下となる。
右前輪:IDコード「TY1」
右後輪:IDコード「TY2」
左前輪:IDコード「TY3」
左後輪:IDコード「TY4」
【0081】
そして以上の判定結果から、CPU22は各車輪TY1〜TY4の配置と検知された空気圧データとを対応づけて認識することができる。これにより、例えば空気圧データが規定値を下回る値を示すものがある場合、CPU22は当該空気圧データを送信してきた車輪側通信ユニット40のIDコードから車輪TY1〜TY4の配置を特定し、「どの車輪の空気圧が低下しているか」を警告灯の点灯等によってユーザに報知することができる。
【0082】
以上は車輪TY1〜TY4の配置が
図3に示される配置例1に対応している場合に適用される判定手法であるが、例えばタイヤローテーション(配置入れ替え)等によって配置に変化が生じた場合、以下のように変化後の配置を判定することができる。
【0083】
〔配置例2〕
図6は、車輪TY1〜TY4の配置例2で適用される判定原理を示す概念図である。すなわち
図6に示される配置例2では、例えば右前輪に車輪TY2が対応し、右後輪に車輪TY1が対応し、左前輪に車輪TY4が対応し、左後輪に車輪TY3が対応している。
【0084】
〔DR−Lo〕
配置例2において、右側取付位置DRにある送信アンテナ14から送信強度を低段階(DR−Lo)に調整してリクエスト信号を送信すると、
図6中に破線で示される到達範囲I1内には、右後輪に対応する車輪TY1に設置された車輪側通信ユニット40(1個)が位置している。
【0085】
〔DR−Hi〕
また配置例2においては、右側取付位置DRにある送信アンテナ14から送信強度を高段階(DR−Hi)に調整してリクエスト信号を送信すると、
図6中に一点鎖線で示されるように到達範囲I2が拡張される。このとき到達範囲I2内には、例えば右側取付位置DRから最も遠い左前輪を除いた3輪、つまり、右前輪、右後輪及び左後輪にそれぞれ対応する車輪TY2,TY1,TY3の車輪側通信ユニット40(3個)が位置することになる。
【0086】
〔AS−Lo〕
次に配置例2において、左側取付位置ASにある送信アンテナ14から送信強度を低段階(AS−Lo)に調整してリクエスト信号を送信すると、
図6中に破線で示される到達範囲J1内には、左後輪に対応する車輪TY3に設置された車輪側通信ユニット40(1個)が位置している。
【0087】
〔AS−Hi〕
また配置例2において、左側取付位置ASにある送信アンテナ14から送信強度を高段階(AS−Hi)に調整してリクエスト信号を送信すると、
図6中に一点鎖線で示されるように到達範囲J2が拡張される。このとき到達範囲J2内には、例えば左側取付位置ASから最も遠い右前輪を除いた3輪、つまり、左前輪、左後輪及び右後輪にそれぞれ対応する車輪TY4,TY3,TY1の車輪側通信ユニット40(3個)が位置することになる。
【0088】
〔BK〕
そして配置例2において、後側取付位置BKにある送信アンテナ14から標準的な送信強度でリクエスト信号を送信すると、
図6中に二点鎖線で示されるリクエスト信号の到達範囲K内には、左右の後輪にそれぞれ対応する車輪TY1,TY3の車輪側通信ユニット40(2個)が位置している。
【0089】
このように、車両10の車軸に対して車輪TY1〜TY4の配置を変更した場合、送信強度の段階別に形成される到達範囲I1,I2,J1,J2と車輪TY1〜TY4の配置との幾何学的な相対関係が変化する。この場合であっても、上述した判定原理を用いて車輪TY1〜TY4の配置を正確に判定することができる。
【0090】
図7は、配置例2において保存されたテーブルデータの構成例を示す図である。
すなわち、配置例2において
図4に示される車輪位置判定処理の制御フローチャートを実行すると、
図7に示されるテーブルデータが保存される。この場合のテーブル構造は以下となる。
【0091】
(1)「DR−Lo」
テーブルデータの第1行に示されているように、駆動順序(1)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY1」の1個(単独)となる。
(2)「DR−Hi」
次にテーブルデータの第2行に示されているように、駆動順序(2)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY1」,「TY2」,「TY3」の3個となる。
(3)「AS−Lo」
またテーブルデータの第3行に示されているように、駆動順序(3)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY3」の1個(単独)となる。
(4)「AS−Hi」
次にテーブルデータの第4行に示されているように、駆動順序(4)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY1」,「TY3」,「TY4」の3個となっている。
(5)「BK」
そしてテーブルデータの最下行に示されているように、駆動順序(5)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY1」,「TY3」の2個となる。
【0092】
そして車載制御モジュール20のEEPROM24には、
図7に示されるテーブルデータと同じデータ構造を有する参照値もまた予め記憶されている。この場合の参照値は、車輪TY1〜TY4が
図6に示される配置例2で車両10に設置されていると判定するための根拠とすることができる。
【0093】
したがって、先の配置判定処理(
図4中のステップS116)において、CPU22は保存したテーブルデータが
図7に示されるテーブルデータの参照値と一致する場合、車輪TY1〜TY4に対応するIDコードの配置が
図6に示される配置例2に対応していると判定することができる。この場合:判定結果は以下となる。
右前輪:IDコード「TY2」
右後輪:IDコード「TY1」
左前輪:IDコード「TY4」
左後輪:IDコード「TY3」
【0094】
〔補足〕
本実施形態で挙げたように、4輪独立タイプの車両10においては、タイヤローテーション等に伴う車輪TY1〜TY4の配置パターンは、右前輪、右後輪、左前輪、左後輪の順にIDコードを並べると、例えば〔TY1、TY2、TY3、TY4〕・〔TY2、TY1、TY4、TY3〕・〔TY3、TY4、TY1、TY2〕・〔TY4、TY3、TY2、TY1〕・〔TY3、TY1、TY4、TY2〕・〔TY3、TY4、TY2、TY1〕・〔TY2、TY4、TY1、TY3〕・〔TY4、TY3、TY1、TY2〕・〔TY4、TY1、TY2、TY3〕・〔TY2、TY3、TY4、TY1〕の10パターンがある。
【0095】
これら配置パターンのうち、上記の配置例1は〔TY1、TY2、TY3、TY4〕の事例について説明したものであり、また配置例2は、〔TY2、TY1、TY4、TY3〕の事例について説明したものである。もちろん、これ以外の残り8つのタイヤ配置パターンに入れ替えられた場合であっても、各車輪TY1〜TY4の配置をIDコードで特定することが可能である。
【0096】
このように、タイヤローテーション等に伴う車輪TY1〜TY4の配置パターンが10通りあることから、本実施形態では予め10パターン分のテーブルデータ参照値がEEPROM24に記憶されている。そして、
図4の車輪位置判定処理において、得られたテーブルデータがどの配置パターンの参照値に一致するかを検索することで、現状の車輪TY1〜TY4の配置パターンを容易に判定することができる。
【0097】
〔到達範囲の変更例1〕
また本実施形態では、送信強度の段階別に形成される到達範囲の設定を変更することができる。ここまでの設定では、送信強度を高段階に調整した場合、リクエスト信号の到達範囲内に3つの車輪が存在していたが、例えば高段階の送信強度において、リクエスト信号の到達範囲内に2つの車輪が存在する設定を採用することができる。以下、このような設定を到達範囲の変更例1として説明する。
【0098】
図8は、到達範囲の変更例1を採用した場合の判定原理を示す概念図である。なお、ここでは理解を容易にするため、車輪TY1〜TY4の配置パターンについては配置例1(
図3)と同じものを用いている。
【0099】
〔DR−Hi〕
到達範囲の変更例1において、右側取付位置DRにある送信アンテナ14から送信強度を高段階(DR−Hi)に調整してリクエスト信号を送信した場合、到達範囲I2内には、例えば右側取付位置DRに比較的近い2輪、つまり、右前輪及び右後輪にそれぞれ対応する車輪TY1,TY2の車輪側通信ユニット40(2個)が位置している。したがって、この場合の高段階(Hi)の送信強度は、右前輪及び右後輪に対応する車輪TY1,TY2の車輪側通信ユニット40に対してリクエスト信号が到達し、その他の左前輪及び左後輪に対応する車輪側通信ユニット40にはリクエスト信号が到達しない送信強度に調整されている。変更例1でも同様に、具体的な送信強度は車両10によって異なってくるため、適用する車種に応じて予め送信強度の具体的な設定値を決定しておき、送信制御用のパラメータとしてEEPROM24に記憶しておけばよい(これ以降も同様とする。)。
【0100】
なお、送信強度を低段階(DR−Lo)に調整した場合の到達範囲I1はこれまでと同様である。
【0101】
〔AS−Hi〕
また到達範囲の変更例1において、左側取付位置ASにある送信アンテナ14から送信強度を高段階(AS−Hi)に調整してリクエスト信号を送信した場合、到達範囲J2内には、例えば左側取付位置ASに比較的近い2輪、つまり、左前輪及び左後輪にそれぞれ対応する車輪TY3,TY4の車輪側通信ユニット40(2個)が位置する。したがって、この場合の高段階(Hi)の送信強度は、左前輪及び左後輪に対応する車輪TY3,TY4の車輪側通信ユニット40に対してリクエスト信号が到達し、その他の右前輪及び右後輪に対応する車輪側通信ユニット40にはリクエスト信号が到達しない送信強度に調整されている。
【0102】
なお、送信強度を低段階(AS−Lo)に調整した場合の到達範囲J1はこれまでと同様である。また、後側取付位置BKにある送信アンテナ14からリクエスト信号を送信した場合の到達範囲Kもこれまでと同様である。
【0103】
図9は、到達範囲の変更例1において保存されたテーブルデータの構成例を示す図である。すなわち、変更例1において
図4に示される車輪位置判定処理の制御フローチャートを実行すると、
図9に示されるテーブルデータが保存される。この場合のテーブル構造は以下となる。
【0104】
(1)「DR−Lo」
テーブルデータの第1行に示されているように、駆動順序(1)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY2」の1個(単独)となり、これは変更前と同じ結果である。
(2)「DR−Hi」
次にテーブルデータの第2行に示されているように、駆動順序(2)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY1」,「TY2」の2個となっており、これが変更前と異なる結果となっている。
(3)「AS−Lo」
またテーブルデータの第3行に示されているように、駆動順序(3)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY4」の1個(単独)となり、これは変更前と同じ結果である。
(4)「AS−Hi」
次にテーブルデータの第4行に示されているように、駆動順序(4)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY3」,「TY4」の2個であり、これも変更前と異なる結果となっている。
(5)「BK」
そしてテーブルデータの最下行に示されているように、駆動順序(5)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY2」,「TY4」の2個であり、これは変更前と同じである。
【0105】
到達範囲の変更例1を採用する場合、車載制御モジュール20のEEPROM24には、
図9に示されるテーブルデータと同じデータ構造を有する参照値を予め記憶しておくこととする。この場合の参照値は、車輪TY1〜TY4が
図3に示される配置例1で車両10に設置されていると判定するための根拠となる。
【0106】
このため変更例1では、先の配置判定処理(
図4中のステップS116)において、CPU22は保存したテーブルデータが
図9に示されるテーブルデータの参照値と一致する場合、車輪TY1〜TY4に対応するIDコードの配置が
図3に示される配置例1に対応していると判定することができる。
【0107】
〔到達範囲の変更例2〕
次に、到達範囲の設定を変更した場合の第2例(変更例2)について説明する。到達範囲の変更例2では、送信強度を低段階(Lo)に調整した際の到達範囲の設定を変更している。
【0108】
図10は、到達範囲の変更例2を採用した場合の判定原理を示す概念図である。ここでも理解を容易にするため、車輪TY1〜TY4の配置パターンについては配置例1(
図3)と同じものを用いている。
【0109】
〔DR−Lo〕
到達範囲の変更例2において、右側取付位置DRにある送信アンテナ14から送信強度を低段階(DR−Lo)に調整してリクエスト信号を送信した場合、到達範囲I1内には、右後輪ではなく右前輪に対応する車輪TY1に設置された車輪側通信ユニット40(1個)が位置する設定である。したがって、低段階(Lo)の送信強度は、車体の形状や大きさ、右側取付位置DRと各車輪TY1〜TY4との位置関係等を考慮した上で、最終的に右前輪に対応する車輪TY1の車輪側通信ユニット40に対してリクエスト信号が到達し、その他の3輪に対応する3個の車輪側通信ユニット40にはリクエスト信号が到達しない送信強度に調整されている。
【0110】
また変更例2では、送信強度を高段階(DR−Hi)に調整した場合の到達範囲I2はこれまで(変更例1を除く)の設定と同様である。
【0111】
〔AS−Lo〕
次に到達範囲の変更例2において、左側取付位置ASにある送信アンテナ14から送信強度を低段階(AS−Lo)に調整してリクエスト信号を送信した場合、到達範囲J1内には、左後輪ではなく左前輪に対応する車輪TY3に設置された車輪側通信ユニット40(1個)が位置する設定となる。すなわち低段階(Lo)の送信強度は、車体の形状や大きさ、左側取付位置ASと各車輪TY1〜TY4との位置関係等を考慮した上で、最終的に左前輪に対応する車輪TY3の車輪側通信ユニット40に対してリクエスト信号が到達し、その他の3輪に対応する3個の車輪側通信ユニット40にはリクエスト信号が到達しない送信強度に調整されている。
【0112】
このように到達範囲の変更例2では、低段階(Lo)の送信強度でリクエスト信号の到達範囲I1,J1が車両10の前方寄りに設定されている。車両10の構造上、例えばエンジンをミッドシップレイアウトとしている場合、低段階(Lo)の送信強度では後輪にリクエスト信号が到達しにくいことがあるため、変更例2のような設定を用いることが好ましい。
【0113】
なお、送信強度を高段階(AS−Hi)に調整した場合の到達範囲J2はこれまで(変更例1を除く)と同様である。また、後側取付位置BKにある送信アンテナ14からリクエスト信号を送信した場合の到達範囲Kもこれまでと同様である。
【0114】
図11は、到達範囲の変更例2において保存されたテーブルデータの構成例を示す図である。すなわち、変更例2において
図4に示される車輪位置判定処理の制御フローチャートを実行すると、
図11に示されるテーブルデータが保存される。この場合のテーブル構造は以下となる。
【0115】
(1)「DR−Lo」
テーブルデータの第1行に示されているように、駆動順序(1)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY1」の1個(単独)となっており、これが変更前と異なる結果となっている。
(2)「DR−Hi」
次にテーブルデータの第2行に示されているように、駆動順序(2)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY1」,「TY2」,「TY4」の3個となっており、これは変更前と同じ結果である。
(3)「AS−Lo」
またテーブルデータの第3行に示されているように、駆動順序(3)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY3」の1個(単独)となり、これが変更前と異なる結果となっている。
(4)「AS−Hi」
次にテーブルデータの第4行に示されているように、駆動順序(4)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY2」,「TY3」,「TY4」の3個であり、これは変更前と同じ結果である。
(5)「BK」
そしてテーブルデータの最下行に示されているように、駆動順序(5)の送信制御で応答のあった車輪側通信ユニット40のIDコードの組み合わせは「TY2」,「TY4」の2個であり、これも変更前と同じである。
【0116】
このように、到達範囲の変更例2を採用する場合、車載制御モジュール20のEEPROM24には、
図11に示されるテーブルデータと同じデータ構造を有する参照値を予め記憶しておくこととする。そして、この場合の参照値は、車輪TY1〜TY4が
図3に示される配置例1で車両10に設置されていると判定するための根拠となる。
【0117】
したがって、到達範囲の変更例2を適用した場合、先の配置判定処理(
図4中のステップS116)でCPU22は、保存したテーブルデータが
図11に示されるテーブルデータの参照値と一致する場合、車輪TY1〜TY4に対応するIDコードの配置が
図3に示される配置例1に対応していると判定することができる。
【0118】
また、車両10の構造がミッドシップレイアウトである場合、送信強度の高段階(DR−Hi,AS−Hi)で形成されるリクエスト信号の到達範囲I2,J2内の設定を合わせて変更してもよい。
【0119】
例えば、右側取付位置DRにある送信アンテナ14から送信強度を高段階(DR−Hi)に調整してリクエスト信号を送信すると、このとき到達範囲I2内には、右側取付位置DRから比較的遠い左後輪を除いた3輪、つまり、右前輪、左前輪及び右後輪にそれぞれ対応する車輪TY1,TY2,TY3の車輪側通信ユニット40(3個)が位置する設定としてもよい。また、左側取付位置ASにある送信アンテナ14から送信強度を高段階(AS−Hi)に調整してリクエスト信号を送信すると、このとき到達範囲J2内には、左側取付位置ASから比較的遠い右後輪を除いた3輪、つまり、左前輪、右前輪及び左後輪にそれぞれ対応する車輪TY1,TY3,TY4の車輪側通信ユニット40(3個)が位置する設定としてもよい。
【0120】
上記の変更例1,2では、いずれも車輪TY1〜TY4の配置例1(
図3)を前提として説明したが、その他の配置(例えば
図6の配置例2)であってもよい。車輪TY1〜TY4の配置が異なる場合、それぞれに適応した参照値をEEPROM24に記憶させておけばよい。
【0121】
また変更例2のように、送信強度の低段階(Lo)で形成される到達範囲I1,J1を車両10の前方寄りに設定する手法は、これまでに挙げた配置例1,2及び変更例1に対しても適用することができる。
【0122】
〔判定契機〕
なお、
図4に示される車輪位置判定処理は、例えば車両10のエンジン始動を契機(トリガ)として実行することができる。その他にも、例えば車両10の走行中に一定のタイミング(例えば数時間周期)で実行してもよいし、車両10のエンジン停止時に一定のタイミング(数時間周期、数日周期)で実行してもよい。いずれにしても、何らかの契機でシステムが車輪位置判定処理を実行することにより、タイヤ空気圧監視システムの信頼性を向上することができる。
【0123】
上述した一実施形態の車輪識別情報判定システムによれば、車輪TY1〜TY4の配置が任意に変更された場合であっても、システムが車輪位置判定処理を実行することで、正確に車輪TY1〜TY4の配置に対応した車輪側通信ユニット40のIDコードを判定することができる。これにより、タイヤ空気圧監視システムの利便性や信頼性を向上し、車両10のユーザビリティを高めることができる。
【0124】
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
【0125】
一実施形態では、送信アンテナ14の取付位置として右側取付位置DR、左側取付位置AS及び後側取付位置BKを挙げているが、これ以外の取付位置に送信アンテナ14を設置してもよい。
【0126】
また一実施形態では、後側取付位置BKの送信アンテナ14を用いてリクエスト信号を送信しているが、駆動順序を(1)〜(4)までとして、後側取付位置BKの送信アンテナ14からの送信を省略してもよい。
【0127】
一実施形態で挙げた車両10の形態は一例であり、その他の形態の車両(セダン型、ワンボックス型、ツーボックス型、SUV型、クーペ型等)にも本発明を適用することができる。