特許第5663433号(P5663433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5663433一体化溶接板を有する表面実装型PPTCデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663433
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】一体化溶接板を有する表面実装型PPTCデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/02 20060101AFI20150115BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   H01C7/02
   H01M2/10 M
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-174596(P2011-174596)
(22)【出願日】2011年8月10日
(62)【分割の表示】特願2005-71231(P2005-71231)の分割
【原出願日】2005年3月14日
(65)【公開番号】特開2011-233933(P2011-233933A)
(43)【公開日】2011年11月17日
【審査請求日】2011年8月15日
【審判番号】不服2014-5536(P2014-5536/J1)
【審判請求日】2014年3月25日
(31)【優先権主張番号】10/802127
(32)【優先日】2004年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399132320
【氏名又は名称】タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・エイ・チャンドラー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ピー・ガラ
【合議体】
【審判長】 酒井 朋広
【審判官】 丹治 彰
【審判官】 井上 信一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/60637(WO,A1)
【文献】 特開2003−168407(JP,A)
【文献】 特表2002−527861(JP,A)
【文献】 特開昭63−87702(JP,A)
【文献】 特開平10−289780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H07C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装回路保護デバイスであって:
(a)第1および第2主面ならびにそれらの間に厚さを有する層状PTC抵抗要素;
(b)第1主面に形成され、および第1主面と実質的に同じ広さであり、ならびにデバイスの表面実装を行うためにプリント回路基板にはんだ付けするように適用されるタイプの第1金属材料を含む第1電極層;
(c)第2主面に形成され、および第2主面と実質的に同じ広さである第2電極層;および
(d)第2電極層から延び、およびデバイスに著しい損傷を与えることなく、厚さ0.150mm以下のストラップ相互接続手段の抵抗マイクロスポット溶接に耐え得る熱質量を有する、金属材料で出来た、0.100mmの最小厚さを有する溶接板手段
を含む、表面実装回路保護デバイス。
【請求項2】
第2電極層は箔層として形成され、ならびに溶接板手段は第2電極層と別個に形成され、および電気伝導性材料の取付け層により第2電極層に取り付けられ、好ましくは取付け層がはんだを含む、請求項1に記載の表面実装回路保護デバイス。
【請求項3】
溶接板手段がニッケルまたはニッケルめっきされたステンレススチールを含む、請求項2に記載の表面実装回路保護デバイス。
【請求項4】
溶接板手段は盛り上がった中央メサ領域を含み、ならびにデバイスの外縁部を取り囲みおよび中央メサ領域を露出する開口部を規定する絶縁性の囲いを更に含む、請求項1に記載の表面実装回路保護デバイス。
【請求項5】
溶接板手段が0.100mm〜0.300mmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の表面実装回路保護デバイス。
【請求項6】
デバイスが表面実装されおよび電気的に接続されるプリント回路基板アセンブリを更に含む、請求項1に記載の表面実装回路保護デバイス。
【請求項7】
プリント回路基板アセンブリがバッテリ保護回路モジュールを形成し、およびバッテリストラップ相互接続によりバッテリまたはセルに実装および電気的に接続され、該バッテリストラップ相互接続の1つが溶接板手段にマイクロスポット溶接される、請求項6に記載の表面実装回路保護デバイス。
【請求項8】
表面実装回路保護デバイスであって:
(a)第1および第2主面ならびにそれらの間に厚さを有する層状PTC抵抗要素;
(b)第1主面に形成され、および第1主面と実質的に同じ広さであり、ならびにデバイスをプリント回路にはんだにより表面実装することが可能な第1金属箔層を含む第1電極層;
(c)第2主面に形成され、および第2主面と実質的に同じ広さであり、ならびに第2金属箔層を含む第2電極層;および
(d)第2金属箔層に固定され、およびデバイスに著しい損傷を与えることなく、厚さ0.150mm以下のストラップ相互接続手段のマイクロスポット溶接に耐えるのに十分な体積、厚さおよび熱質量を有する、金属材料で出来た、0.100mmの最小厚さを有する溶接板
を含む、表面実装回路保護デバイス。
【請求項9】
プリント回路基板を含むバッテリ保護回路アセンブリであって:
(a)第1および第2主面ならびにそれらの間に厚さを有する層状PTC抵抗要素;
(b)第1主面に形成され、および第1主面と実質的に同じ広さであり、ならびにデバイスをプリント回路にはんだにより表面実装することが可能な第1金属箔層を含む第1電極層;
(c)第2主面に形成され、および第2主面と実質的に同じ広さであり、ならびに第2金属箔層を含む第2電極層;および
(d)第2金属箔層に固定され、およびデバイスに著しい損傷を与えることなく、厚さ0.150mm以下のストラップ相互接続手段のマイクロスポット溶接に耐えるのに十分な体積、厚さおよび熱質量を有する、金属材料で出来た、0.100mmの最小厚さを有する溶接板
を含む表面実装された回路保護デバイスを含む複数の電気部品がプリント回路基板に取り付けられている、バッテリ保護回路アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は電気回路部品に関する。より詳細には、本発明は導体ストラップ相互接続(例えばバッテリパックに適する相互接続)が例えば抵抗溶接され得る溶接板を含む表面実装型(または表面実装が可能な)ポリマー正温度係数(Polymeric positive temperature coefficient:PPTC)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明へのイントロダクション
プリント回路基板と、プリント回路基板に表面実装されるPPTCデバイスを含む電気セルまたはバッテリ保護回路を提供することが知られている。PPTCデバイスを含むプリント回路基板に形成される電気回路は、電気セルまたはバッテリからおよび/またはこれへの電流を安全範囲内に調節するように機能する。この従来のアレンジメントにおいて、セルまたはバッテリからの相互接続ストラップは典型的には、はんだ付けによりPPTCデバイスの箔電極に接続される。この従来の手法の1つの例は国際公開第99/60637号(株式会社 レイケム)に開示されている。もう1つの例は同一人に譲渡された米国特許出願第09/923,598号であって、米国出願公開第2003/0026053号として2003年2月6日に公開されたものに示されている。これら刊行物の開示内容は参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。
【0003】
参照した刊行物に開示されるような従来の手法の1つの難点は、バッテリからの相互接続ストラップをPPTCデバイスの箔電極にはんだ付けしていたことにある。この相互接続ストラップはプリント回路基板に更にもう一度接続されることがあった。そのようなデバイスでは、PPTCデバイスを例えばリフロー技術により加熱してプリント回路基板にはんだ付けしたときに、それらバッテリ/セル相互接続ストラップは位置がずれたり離れたりし易かった。リフロー操作の間、バッテリ/セル相互接続ストラップを所定位置に維持するため、ストラップを所定位置に固定するように高温接着材料を用いることまたは高温ポリマー・オーバーモールド構造を設けることが必要であると考えられていた。
【0004】
バッテリ/セル相互接続ストラップを、またはバッテリ/セル電極を直接に、PPTCデバイスに溶接することが望ましいが、PPTCデバイスのユーザにより実施される抵抗スポット溶接技術は金属を溶融させて、これによりストラップをその下方にあるデバイスの電極層と融合させるのに十分な局所加熱を生じさせなければならない。従来、効果的な溶接に必要とされる高温は1500〜1600℃のオーダーであり、これはPPTC材料に回復不能な(または不可逆的な)損傷を与え、またはその物理的性質および電気的特性を破壊することとなる。従って、バッテリ/セル電極ストラップを溶接により取り付け得る表面実装型PPTCデバイスに対するこれまで解決されていない要請が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(発明の簡単な要旨)
本発明者らは、関連するPPTCデバイスを保護し、およびその所望の機能をその後にバッテリで使用する間に維持するため、溶接箇所と真反対にあるPPTC材料を損傷することなくスポット溶接に耐えるのに十分な熱質量(thermal mass:または熱容量)を有する溶接板をPPTCデバイスに設けることによって、バッテリ電極ストラップの抵抗スポット溶接を実施し得ることを見出した。
【0006】
従って、本発明の一般的な目的は、従来技術の制約および難点を克服するようにして相互接続ストラップを抵抗溶接し得る、一体的に形成された、または別個に形成されて取り付けられた溶接板を有する表面実装型PPTCデバイスを提供することにある。
【0007】
本発明のもう1つの目的は、PPTCデバイスをプリント回路基板アセンブリにはんだリフロー接合する間にずれることのない高信頼性の電気的および機械的接続を提供するようにしてユーザが後で相互接続ストラップを溶接できる表面実装型PPTCデバイスであって、これにより、プリント回路基板およびセル/バッテリを含む電気回路に組み立てるための別個の部品としてPPTCデバイスを製造および供給することを可能とする表面実装型PPTCデバイスを提供することにある。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、PPTCデバイスを形成するポリマー材料を変化させ、損傷し、または破壊することなく、相互接続ストラップを特に抵抗溶接によって、機械的に取り付け、および電気的に接続し得る表面実装型PPTCデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の原理および要旨に従って、表面実装回路保護デバイスは第1および第2主面ならびにそれらの間に厚さを有する層状(または薄層)PTC抵抗要素(または素子)を含む。第1電極層が第1主面に形成され、および第1主面と実質的に同じ広さを有する。第1電極層は、デバイスの表面実装を実施するためにプリント回路基板にはんだ付けするのに適したタイプの第1金属材料で形成される。またこの保護デバイスは第2主面に形成され、および第2主面と実質的に同じ広さを有する第2電極層も含む。第2電極層は溶接板を形成または規定する構造を含む。溶接板は金属材料、例えば実質的に純粋なニッケルで形成され、およびデバイスに著しい損傷を与えることなく相互接続ストラップをマイクロスポット溶接するのに耐え得る熱質量を有する。好ましい例では、第2電極層は金属箔層として形成され、ならびに溶接板は第2電極層と別個に形成され、および例えばはんだなどの導電性材料の取付け層(または付着層)により第2電極層に取り付けられる。1つの好ましい例では、溶接板は盛り上がった中央メサ領域を含み、ならびにデバイスは外縁部を取り囲みおよび盛り上がった中央メサ領域を露出する開口部を規定する、例えば硬化エポキシなどの絶縁性の囲い(または箱もしくは筐体:box)を有する。更なる例では、溶接板は0.100mmの最小厚さを有し、および0.100mm〜0.300mmの範囲の厚さを有し、最も好ましくは約0.250mmの厚さを有する。
【0010】
本発明の関連する要旨において、回路保護デバイスはプリント回路基板アセンブリの表面実装部品である。この例では、プリント回路基板アセンブリはバッテリ保護回路を形成し、バッテリ相互接続ストラップによりバッテリまたはセルに実装されて電気的に接続され、2つのバッテリ相互接続ストラップのうちの一方は回路保護デバイスの溶接板にマイクロスポット溶接される。
【0011】
本発明のこれらおよびその他の目的、利点、要旨および特徴は、添付の図面と併せて示す好ましい態様の詳細な説明を考慮することにより一層十分な理解および把握がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の回路保護デバイスの拡大した側面図である。
図2図2は本発明の別の実施態様の回路保護デバイスの拡大した長手方向断面における側面図である。
図3図3図1の回路保護デバイスを含むバッテリ保護回路アセンブリの拡大した側面図である。
図4A図4A図1の回路保護デバイスを含む図3のバッテリ保護回路アセンブリの拡大した上面図であって、スポット溶接操作の間におけるバッテリストラップの位置的な許容性を説明する図である。
図4B図4B図4Aと同様の図であって、スロットが切られた相互接続ストラップを溶接板に抵抗マイクロスポット溶接することを説明する図である。
図5図5は、関連するバッテリストラップをバッテリのアノードおよびカソード端子にスポット溶接により接続した後の図4のバッテリ保護回路アセンブリを示す拡大した側面図である。
図6図6はリチウムポリマーセルのセル端子を抵抗マイクロスポット溶接する溶接板を含むバッテリ保護回路の拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明の回路保護デバイスはPTC材料、例えば導電性ポリマー組成物から構成される層状抵抗要素(または素子)を含む。このような導電性ポリマー組成物はポリマー性成分およびその内部で分散した粒状導電性フィラー(例えば金属またはカーボンブラック)を含む。導電性ポリマー組成物は米国特許第4,237,441号(van Konynenburgら)、同第4,304,987号(van Konynenburg)、同第4,514,620号(Chengら)、同第4,534,889号(van Konynenburgら)、同第4,545,926号(Foutsら)、同第4,724,417号(Auら)、同第4,774,024号(Deepら)、同第4,935,156号(van Konynenburgら)、同第5,049,850号(Evansら)、同第5,378,407号(Chandlerら)、同第5,451,919号(Chuら)、同第5,582,770号(Chuら)、同第5,747,147号(Wartenbergら)、同第5,801,612号(Chandlerら)、同第6,130,597号(Tothら)、同第6,358,438号(Isozakiら)および同第6,362,721号(Chenら)に記載されている。これら特許の各開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。導電性ポリマー組成物は、PTC挙動を示すセラミック組成物よりも低抵抗率であり、また製造が容易であるので好ましい。
【0014】
「PTC挙動」との表現により、比較的狭い温度範囲において温度増加に対して急峻な抵抗率増加を示す組成物を意味するものである。用語「PTC」は少なくとも2.5のR14値および/または少なくとも10のR100値を有する組成物またはデバイスを意味するものとして用い、組成物またはデバイスは少なくとも6のR30値を有すべきことが好ましい。ここで、R14とは14℃の範囲の最後と最初における抵抗率の比であり、R100とは100℃の範囲の最後と最初における抵抗率の比であり、R30とは30℃の範囲の最後と最初における抵抗率の比である。
【0015】
PTC抵抗要素は厚さtを有し、これは特定の用途(または適用)および導電性ポリマー組成物の抵抗率に依存して様々である。一般的に、厚さtは0.051〜2.5mm(0.002〜0.100インチ)、好ましくは0.08〜2.0mm(0.003〜0.080インチ)、特に0.13〜0.51mm(0.005〜0.020インチ)、例えば0.13mmまたは0.25mm(0.005インチまたは0.010インチ)である。
【0016】
本発明のデバイスは2つの主面(または主要な表面もしくは面:major surface or face)を有する実質的に平坦で矩形の箱形を有することが最も好ましい。こうしたデバイスは主面に固定または規定される第1および第2層状電極を含む。電極は好ましくは金属箔電極である。第1電極は第1主面に形成または固定され、また、第2電極は第2主面に形成または固定され、これにより、層状構造になっている。特に適当な箔電極は、例えば電着による、好ましくは電着ニッケルまたは銅の、微細な凹凸のある(microrough)少なくとも1つの表面(または少なくとも1つのミクロ粗面)を有する。適当な電極が米国特許第4,689,475号(Matthiesen)、同第4,800,253号(Kleinerら)、同第5,874,885号(Chandlerら)、および同第6,570、483号(Chandlerら)に開示されており、これらの各開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。電極は圧縮成形、ニップ・ラミネーションまたは任意の他の適当な技術によって抵抗要素に取り付けられ得る。電極は抵抗要素に直接に固定されていてよく、または接着剤もしくは結着剤層によって取り付けられていてよい。あるデバイスでは、第1および第2層状電極は、例えばめっき、スパッタリングまたは化学析出によって、PTC抵抗要素上に金属を直接堆積させる(または蒸着する)ことにより形成された金属層を含むことが好ましい。
【0017】
適切に寸法決めされた溶接板(典型的にはニッケルで形成される)が、例えばリフロー技術によって、第1および第2層状電極の一方にはんだ付けされる。溶接板は、常套的な抵抗マイクロ−スポット溶接操作による激しい加熱を吸収して層状PPTCデバイスを回復不能な損傷または破壊から保護するのに十分効果的な厚さtおよび体積を有する。より詳細に後述する現在のところ好ましい1つの例において、溶接板は0.250mmの厚さを有し、また相互接続ストラップは0.125mmの厚さを有し、これにより、溶接板およびストラップの間における約2:1の厚さ比で実効性を発揮する。他方、溶接板はバッテリセルからPPTCデバイスへの熱の速やかな伝達を促進し、これにより、デバイスの過電流保護機能を助長するのに役立つ程度に十分に薄く形成され、また、相互接続ストラップはより厚く、例えば0.250mmのオーダーまたはそれより大きくてよい。後者の場合、相互接続ストラップは長手方向のスリットまたはスロットであって、これを挟んでマイクロスポット溶接電流を流し、これによりその下方の溶接板に溶融電流を集中させるスリットまたはスロットを規定することが好ましい。
【0018】
第1および第2層状電極のもう一方は、プリント回路基板または配線板に直接はんだ付けするために用いられ、これにより、バッテリシステムのユーザ、組立工または完成者(integrator)が常套的な機器および技術を用いてPPTC要素を損傷または破壊することなくバッテリストラップを溶接し得る溶接可能なバッテリ保護表面実装デバイス(surface mount device:SMD)が実現される。本発明のデバイスはバッテリにまたは1つもしくはそれ以上の別個のセルを含むバッテリパックに取り付ける場合に特に有用である。バッテリ相互接続ストラップがバッテリまたはセルの端子から延び、そして保護デバイスの溶接板に溶接により結合させてよい。あるいは、バッテリの端子電極がバッテリから延び、本発明の原理に従って保護回路の溶接板に抵抗溶接することができる相互接続を形成していてよい。ニッケルカドミウムバッテリ、ニッケル金属水素化物バッテリ、リチウムイオンバッテリ、リチウムポリマー(Liポリマー)バッテリおよび一次リチウムバッテリを含むあらゆるタイプの電池化学に基づくバッテリを使用できる。本発明のデバイスを用いるバッテリ保護回路は幅広く様々な形態および配置を取ってよく、例えば米国特許第6,518,731号(Thomasら)に例示されるようなタイプのシャントレギュレータ回路であってよく、この開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0019】
本発明のデバイスは相互接続ストラップの形態の電気リードを受ける(または支える)ことが最も好ましいが、他のタイプのPTC回路保護デバイスもまた本発明の利益を得ることができる。例えばデバイスの熱の放散を制御するために金属端子(例えばスチール、真鍮または銅)が抵抗溶接によりチップに取り付けられているデバイスを使用してよい。このようなデバイスは米国特許第5,089,801号および同第5,436,609号(いずれもChanら)に開示されており、これらの開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。従って、本明細書にて使用する場合、「相互接続ストラップ」または「タブ」は幅広く様々である比較的薄いシート状の金属コネクタを包含するものとして広く解釈されるべきである。
【0020】
図1を参照して、表面実装型電気的保護デバイス10は層状PPTCプラーク(plaque:板またはシート)を含む。このPPTCプラークは、厚さtを有するPPTC材料の層12と、層12の下側主面と実質的に同じ広さでこれに結合した下側箔電極14と、層12の上側主面と実質的に同じ広さでこれに結合した上側箔電極16とを含む。上側箔電極16には溶接板18が好ましくは適当なリフロー炉内ではんだ薄層(図1に示さず)をリフローすることによって接続される。溶接板18は好ましくは、例えば実質的に純粋なニッケル、例えばニッケル200合金またはニッケル201合金(99%のニッケルと、例えば銅、炭素、マンガン、鉄、硫黄およびシリコンならびに場合により他の元素または不純物などの1%以下の部分とを含む合金)などから形成される。あるいは、溶接板はニッケルめっきされたステンレススチール、例えば0.1〜5μmのニッケルめっきが施された合金304または316などから形成されていてよい。例えば厚さ2μmのニッケルめっきを各面に有するステンレススチール合金304が好ましい。はんだ付けおよび抵抗溶接の双方に適し、および適切な厚さtを有する他の鉄合金または銅合金を溶接板18に用いてよい。
【0021】
溶接板18はその外側主面に相互接続ストラップを溶接することに関する熱エネルギーを吸収するために必要であると考えられる十分な熱質量を提供するように選択された所定の最小厚さtを有する。スロット無しの相互接続ストラップであって、典型的にはニッケルから成るものが実質的に約0.125mm〜0.150mm以下の厚さを有する場合、溶接板18の厚さが0.100〜0.300mmの範囲にあるとき、最も好ましくは約0.250mmであるときに満足できる結果が得られている。完成した保護デバイス10は図1に図示するディスクリート電気部品としてユーザに提供されてよく、あるいは図3に示すようなプリント回路基板などの基板上で他の回路要素と組み合わされた上で、保護回路を有するバッテリパックのユーザ、インテグレータ(または統合もしくは完成者)または組立工に提供されてよい。
【0022】
本発明の更なる実施態様において、相互接続ストラップは抵抗溶接電流が溶接板を通って流れ、およびその際に相互接続ストラップと溶接板との間のスポット溶接接触点を通るようにさせる構造的な開口部または特徴を規定する。この構造的な開口部または特徴は通常、相互接続ストラップにおけるスリットまたはスロットの形態を取るが、例えば細長い穴または楕円などの任意の有効な形態を取ることができる。本発明に関しては、この構造的な開口部または特徴により、溶接エネルギーおよび溶接温度を著しく増加させることなく、より厚い相互接続ストラップを溶接板に効率的に抵抗マイクロスポット溶接することが可能となり、よって、好ましい溶接板厚さを、0.125mmより大きい相互接続厚さ、例えば0.250mmの厚さを有するストラップに対して用いることが可能となる。
【0023】
図2は本発明の別の実施態様を図示する。図中、表面実装型回路保護デバイス10Aは図1に示すデバイス10と本質的に同様の構造的な要素および配置を有する。加えて、デバイス10Aは絶縁性材料(例えば成型および硬化したエポキシなど)で出来た周辺の筐体(または囲い)19を有し、これはデバイス10Aの外縁を取り囲み、および溶接飛沫または他の損傷をもたらし得る汚染物質から保護する。溶接板18Aは被覆されておらず、高くなっている、溶接のための中央メサ領域を有し、および任意の適切な金属加工技術、例えばスタンピング、鍛造、スエージング、コイニングなどを用いて形成できる。溶接板18Aの総括熱質量は箔層14Aおよび16ならびにPPTC層12を損傷することなくバッテリストラップ相互接続を溶接し得るのに十分な大きさである。この例では、例えばリフローはんだ付け技術を用いる表面実装を容易にするために、下側箔14Aは周りのエポキシ筐体19の少なくとも縁部に達するようにPPTC層12の縁部を越えて延在することが好ましい。中央のメサ領域を高くなった領域として図2に示すが、ある実施態様では、バッテリストラップ相互接続の形状によって、該領域は盛り上がっている必要はなく単に絶縁性材料で被覆されてないものもある。
【0024】
図3は、プリント回路基板22の適切に寸法決めされた接続パッドに実装された図1の表面実装保護デバイス10を含む回路基板アセンブリ20を示す。また、他の電気部品、例えば電界効果トランジスタ、ダイオード、調整器、抵抗器および集積回路なども回路基板アセンブリ20の一部であってよい。例えば、表面実装部品24および26を図3に示し、また、リード付き部品28および30を図4に輪郭で示す。回路アセンブリ20は第2バッテリ相互接続ストラップを溶接できるように基板22に固定された金属溶接板32も含み、よって、バッテリまたはセルと回路アセンブリ20との間で電気回路を完成することができる。第2溶接板32は溶接板18と同じまたは同様の厚さtおよび性質を有していてよい。
【0025】
図4Aは本発明の実施により実現される1つの特別な利点を図示する。図中、相互接続ストラップ34はデバイス10の溶接板18にスポット溶接点(またはノード)35にて抵抗スポット溶接するものとして示す。ストラップ34はデバイス10または回路アセンブリ20に対して厳密に位置合わせする必要はなく、よって、ストラップ34Aの点線輪郭位置により図示するように小さな角度をなして溶接してよく、またはストラップ34Bの点線輪郭位置により図示するように回路アセンブリ20の長手方向軸に対して直角に溶接してよい。
【0026】
図5はバッテリ相互接続ストラップ34および42によってバッテリ/セル36に接続されている回路アセンブリ20を示す。ストラップ34はバッテリのケースにスポット溶接37にて、また、溶接板18にスポット溶接35によりスポット溶接される。第2ストラップ42は板32にスポット溶接43にて溶接され、また、バッテリ端子40にスポット溶接41にて溶接される。ストラップ34および42は回路アセンブリ20とバッテリ36との間の完成した回路接続を提供するだけでなく、ストラップ34はバッテリ36にて生じた熱を直接にPPTC層12へ伝達するように機能し、これにより保護機能が増強される。
【0027】
図5はバッテリ相互接続ストラップ34および42によってバッテリ/セル36に接続されている回路アセンブリ20を示す。ストラップ34はバッテリのケースにスポット溶接37にて、また、溶接板18にスポット溶接35によりスポット溶接される。第2ストラップ42は板32にスポット溶接43にて溶接され、また、バッテリ端子40にスポット溶接41にて溶接される。ストラップ34および40は回路アセンブリ20とバッテリ36との間の完成した回路接続を提供するだけでなく、ストラップ34はバッテリ36にて生じた熱を直接にPPTC層12へ伝達するように機能し、これにより保護機能が増強される。
【0028】
図6はバッテリパックアセンブリ47を図示し、セル端子またはタブ44Aおよび44Bをそれぞれ板32および溶接板18にスポット溶接43および35により抵抗マイクロスポット溶接することによって、Liポリマーセル45に接続された回路保護モジュール20を示す。セル端子44Aおよび44Bは封止領域46を通ってセル構造45から出ている。
【0029】
溶接は通常の抵抗マイクロスポット溶接機器および技術を用いて実施することが好ましい。マイクロスポット溶接装置の現在のところ好ましい1つの例として、デュアルチップ溶接ヘッド 型式VB−S+ZH−32を備える、型式MSW−412マイクロスポット溶接機電源が挙げられる。溶接ヘッド力は加圧力モニタ 型式HCP−20により観測したところ2kgfであった。電源 型式MSW−412、溶接ヘッド 型式VB−S+ZH−32、および圧力モニタ 型式HCP−20は株式会社セイワ製作所(181−0013 日本国東京都三鷹市下連雀8−7−3 三鷹ハイテクセンタービル)より入手可能である。
【0030】
0.125mmおよび0.250mmの溶接板厚さを有するデバイス10にて、溶接を保護デバイスに対する損傷わずか〜無しとして首尾良く実施できた。相互接続厚さは0.125mmおよび0.100mmとした。上述のマイクロスポット溶接装置を用いて溶接チップとストラップ−溶接板との間の接触によって誘発される溶接プロファイルは、およそ次のような方形波形であった:1msecでは0.0A、1.5msecでは1.5A、9msecでは0.0A、および2.3msecでは2.4A。得られた溶接強度は90°剥離試験により測定した。デバイスの電気特性への影響は溶接の前の抵抗(Rbefore)および後の抵抗(Rafter)を比較することにより測定した。以下の表に結果を示す。
【表1】
【0031】
溶接板厚さtが0.125mm未満の場合、溶接実験は保護デバイスに対する著しい損傷であって、主として溶接板18と上側箔層16との間のはんだ層から噴出されるはんだボールによるものを示した。機械的な溶接強度は90°剥離試験およびフォースゲージを用いて測定した。上記データの右欄に示す物理的な観察から、溶接板厚さtが0.250mmである溶接板の組合せにて優れた結果を示したことが明らかであり、これに対して、溶接板厚さが薄くなるにつれて同一のマイクロスポット溶接条件では満足度が次第に低下する結果となった。本発明を実施するのに0.100mm〜0.300mmの溶接板厚さの範囲が現在のところ好ましい。直流マイクロスポット溶接が現在のところ好ましいが、他の溶接技術、例えばレーザ溶接などを本発明の実施に用いてよい。シングルの2点溶接が好ましいが、複数の2点溶接または他の数の溶接点を用いる溶接を上述の技術に従って適用してよい。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施態様について説明してきたが、これにより本発明の目的が完全に達成されたことが理解されるであろう、また、本発明の概念および意図から逸脱することなく構成上の多くの変更ならびに本発明の幅広く様々である実施態様および適用が当業者に示唆されるであろうことが理解されるであろう。従って、本明細書における開示および説明は単なる例示であって、いかなる意味にも限定されるように意図したものではない。
本発明は、下記の態様を含む。
(態様1)
表面実装回路保護デバイスであって:
(a)第1および第2主面ならびにそれらの間に厚さを有する層状PTC抵抗要素;
(b)第1主面に形成され、および第1主面と実質的に同じ広さであり、ならびにデバイスの表面実装を行うためにプリント回路基板にはんだ付けするように適用されるタイプの第1金属材料を含む第1電極層;
(c)第2主面に形成され、および第2主面と実質的に同じ広さである第2電極層;および
(d)第2電極層から延び、およびデバイスに著しい損傷を与えることなくストラップ相互接続手段の抵抗マイクロスポット溶接に耐え得る熱質量を有する、金属材料で出来た溶接板手段
を含む、表面実装回路保護デバイス。
(態様2)
第2電極層は箔層として形成され、ならびに溶接板手段は第2電極層と別個に形成され、および電気伝導性材料の取付け層により第2電極層に取り付けられ、好ましくは取付け層がはんだを含む、態様1の表面実装回路保護デバイス。
(態様3)
溶接板がニッケルまたはニッケルめっきされたステンレススチールを含む、態様2の表面実装回路保護デバイス。
(態様4)
溶接板手段は盛り上がった中央メサ領域を含み、ならびにデバイスの外縁部を取り囲みおよび中央メサ領域を露出する開口部を規定する絶縁性の囲いを更に含む、態様1の表面実装回路保護デバイス。
(態様5)
溶接板手段が0.100mmの最小厚さを有し、好ましくは溶接板手段が0.100mm〜0.300mmの範囲の厚さを有する、態様1の表面実装回路保護デバイス。
(態様6)
デバイスが表面実装されおよび電気的に接続されるプリント回路基板アセンブリを更に含む、態様1の表面実装回路保護デバイス。
(態様7)
プリント回路基板アセンブリがバッテリ保護回路モジュールを形成し、およびバッテリストラップ相互接続によりバッテリまたはセルに実装および電気的に接続され、該バッテリストラップ相互接続の1つが溶接板手段にマイクロスポット溶接される、態様6の表面実装回路保護デバイス。
(態様8)
表面実装回路保護デバイスであって:
(a)第1および第2主面ならびにそれらの間に厚さを有する層状PTC抵抗要素;
(b)第1主面に形成され、および第1主面と実質的に同じ広さであり、ならびにデバイスをプリント回路にはんだにより表面実装することが可能な第1金属箔層を含む第1電極層;
(c)第2主面に形成され、および第2主面と実質的に同じ広さであり、ならびに第2金属箔層を含む第2電極層;および
(d)第2金属箔層に固定され、およびデバイスに著しい損傷を与えることなくストラップ相互接続手段のマイクロスポット溶接に耐えるのに十分な体積、厚さおよび熱質量を有する、金属材料で出来た溶接板
を含む、表面実装回路保護デバイス。
(態様9)
プリント回路基板を含むバッテリ保護回路アセンブリであって:
(a)第1および第2主面ならびにそれらの間に厚さを有する層状PTC抵抗要素;
(b)第1主面に形成され、および第1主面と実質的に同じ広さであり、ならびにデバイスをプリント回路にはんだにより表面実装することが可能な第1金属箔層を含む第1電極層;
(c)第2主面に形成され、および第2主面と実質的に同じ広さであり、ならびに第2金属箔層を含む第2電極層;および
(d)第2金属箔層に固定され、およびデバイスに著しい損傷を与えることなくストラップ相互接続手段のマイクロスポット溶接に耐えるのに十分な体積、厚さおよび熱質量を有する、金属材料で出来た溶接板
を含む表面実装された回路保護デバイスを含む複数の電気部品がプリント回路基板に取り付けられている、バッテリ保護回路アセンブリ。
(態様10)
少なくとも1つの電気化学リチウムポリマーセルを含み、該セルは第1および第2ターミナルタブを有し、以下の条件:
(a)第1タブは溶接板にマイクロスポット溶接される前記ストラップ相互接続手段を含むこと、および
(b)第2タブはプリント回路基板の回路に接続されること
の少なくとも1つが適用される、態様9のバッテリ保護回路アセンブリ。
(態様11)
溶接板は第2電極層と別個に形成され、および電気伝導性材料の取付け層により第2電極層に取り付けられ、好ましくは取付け層がはんだを含む、態様10のバッテリ保護回路アセンブリ。
(態様12)
溶接板がニッケルまたはニッケルめっきされたステンレススチールを含む、態様11のバッテリ保護回路アセンブリ。
(態様13)
溶接板は盛り上がった中央メサ領域を含み、ならびにデバイスの外縁部を取り囲みおよび中央メサ領域を露出する開口部を規定する絶縁性の囲いを更に含む、態様10のバッテリ保護回路アセンブリ。
(態様14)
溶接板が0.100mmの最小厚さを有し、好ましくは溶接板手段が0.100mm〜0.300mmの範囲の厚さを有する、態様10のバッテリ保護回路アセンブリ。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6