(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663467
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】ドリルねじ
(51)【国際特許分類】
F16B 25/10 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
F16B25/10 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-283605(P2011-283605)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133851(P2013-133851A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2013年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】391040962
【氏名又は名称】平田ネジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 政弘
【審査官】
城臺 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−211511(JP,A)
【文献】
特開2001−140831(JP,A)
【文献】
実開平05−012730(JP,U)
【文献】
実開昭56−160307(JP,U)
【文献】
実開昭56−029306(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部のねじ部に続く下端部に切り刃先が形成され、コンクリート系スレート屋根材を貫通して下地材に締結するドリルねじにおいて、前記切り刃先に、軸部の軸心に関して点対称となる位置に切欠部によって一対の切削刃が形成され、各切削刃が下端に向かって下端近傍まで先窄まりに直線状に延びる直線状の切削刃と、該直線状の切削刃に接して円弧状に延びる円弧状の切削刃とからなり、円弧状の切削刃が、下端において他方の円弧状の切削刃と連続することにより、前記切削刃の切削面と向き合う側から見て前記切り刃先の下端が円弧状に形成されていることを特徴とするドリルねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金物等を屋根材を貫通して下地材に締結するドリルねじに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、木造家屋等の屋根材として、コンクリート系スレート屋根材が使用されている。このような屋根材を改修する場合、屋根材を剥ぎ取らずにその上から新しい屋根材を葺設する工法を採用することが多い。この工法を採用する場合は、新しい屋根材を取り付けるためのタイトフレーム等の金物をドリルねじを利用して既設の屋根材を貫通して下地木材に締結する必要がある。
【0003】
このようなドリルねじとしては、ねじ先がとがり先に形成されたドリリングタッピンねじ(JISB1125参照)や、ねじ先が切り刃先に形成されたドリルねじ(JISB1124参照)が知られている。このドリルねじの切り刃先は、下端に一点のポイントを持ち、ポイント位置から左右に100〜110度の角度で拡がる切削刃と、ねじ径よりも若干小さい位置でねじの軸心と平行に形成された左右のサイド刃とを備えており、切削刃とサイド刃とが交差する左右各端に刃面(肩)が形成されている。
【0004】
また、ドリルねじとして、特許文献1に示すように、ねじ先の切り刃先を、母線の傾斜が異なる2つの半円錐を軸と基端の位置とを合わせる一方、先端の位置をずらして貼り合わせた形状に形成し、2つの半円錐の先端をずらして形成された段部の端縁に切り刃を形成したものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3028024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、古いコンクリート系スレート屋根材には、現在の屋根材と比較してセメントや砂が多く含まれている関係で硬い性状を有している。このため、ドリルねじによって金物をコンクリート系スレート屋根材を貫通して下地木材に締結する場合、ドリルねじのとがり先の先端が屋根材を切削する過程で磨耗して丸くなり、屋根材を貫通させることができないという問題があった。また、切り刃先の場合は、屋根材の穴開け作業を行なうと、セメントや砂によって切削刃や左右両側の刃面(肩)が速やかに摩耗して切削できなくなる他、摩擦熱によって刃先が溶けることもあった。
【0007】
また、特許文献1のドリルねじにおいては、切り刃の鋭利な先端が屋根材のセメントや砂によって摩耗し易く、早晩切り刃としての機能を失うものとなる。しかも、切削することのできる切り刃は、回転方向において屋根材と対面する側の片刃のみであり、両刃に比較して切削性能は低いものである。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、硬い素材からなる屋根材であっても、切り刃先としての機能を安定的に維持し、確実に屋根材を貫通して下地木材に締結することのできるドリルねじを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、軸部のねじ部に続く下端部に切り刃先が形成され、
コンクリート系スレート屋根材を貫通して下地材に締結するドリル
ねじにおいて、前記切り刃先に、軸部の軸心に関して点対称
となる位置に切欠部によって一対の切削刃が形成され、各切削刃が下端に向かって下端近傍まで先窄まりに直線状に延びる直線状の切削刃と、該直線状の切削刃に接して円弧状に延びる円弧状の切削刃とからなり、円弧状の切削刃が、下端において他方の円弧状の切削刃と連続すること
により、前記切削刃の切削面と向き合う側から見て前記切り刃先の下端が円弧状に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、ドリルねじにおける軸部の下端部に形成された切り刃先は、軸部の軸心に関して点対称
となる位置に切欠部が下端まで形成されることによって、下端に向かって下端近傍まで先窄まりに直線状に延びる直線状の切削刃と、該直線状の切削刃に接して円弧状に延びるとともに、下端において他方の円弧状の切り刃と連続する円弧状の切削刃とからなる一対の切削刃を有している。これにより、ドリルねじの下端を屋根材に接触させて穴開け作業を開始すると、下端から延びる一対の円弧状の切削刃がその回転形状に沿うように屋根材を切削する。ここで、硬い素材からなる屋根材を切削することにより、円弧状の切削刃の外周縁の一部が摩耗したとしても
、切欠部による円弧状の切削刃が軸心方向に向かって存在する限り、切削能力は喪失せず、屋根材に対する穴開け作業を継続することができる。
【0011】
この結果、硬い素材からなる屋根材であっても、切削刃としての機能を安定的に維持することができ、確実に屋根材を貫通して下地木材に締結することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬い素材からなる屋根材であっても、切り刃先としての機能を安定的に維持し、確実に屋根材を貫通して下地木材に締結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のドリルねじの一実施形態を示す正面図である。
【
図2】
図1のドリルねじの切り刃先の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1乃至
図4には、本発明のドリルねじ1の一実施形態が示されている。
【0016】
このドリルねじ1は、頭部2及び軸部3からなり、頭部2は、略なべ状に形成されるとともに、十字穴が形成されている。そして、ドリルねじ1の軸部3には、頭部2近傍の上部から下端部を残す設定長さにわたってねじ部4が形成され、ねじ部4に続いてその下端部に切り刃先5が形成されている。
【0017】
この切り刃先5は、軸部3の軸心に関して点対称
となる位置に切欠部6をその断面積が下端に向かって徐々に減少するように下端部全体にわたって形成することによる一対の切削刃7を有している。そして、各切削刃7は、下端に向かって下端近傍まで先窄まりに直線状に延びる直線状の切削刃8と、この直線状の切削刃8に接して円弧状に延びる円弧状の切削刃9とからなり、下端において他方の円弧状の切削刃9と連続するように形成されている。すなわち、直線状の切削刃8と円弧状の切削刃9は、接線を共有して連続するように形成され、また、一対の円弧状の切削刃9は、その下端部において交点を有して互いに連続するように形成されている。さらに、各切削刃7の切削面(すくい面)は、
図3及び
図4に示すように、軸心を通過する水平面に対して回転方向に向かって若干傾斜したすくい角を有している。
【0018】
このように構成されたドリルねじ1を用いて屋根材を貫通して下地材に締結する場合について説明する。
【0019】
ドリルねじ1の下端を屋根材に接触させて穴開け作業を行なうと、下端から延びる一対の円弧状の切削刃9がその回転形状に沿うように屋根材を切削する。ここで、屋根材が砂やセメントを多く含む硬い素材から形成されているときには、円弧状の切削刃9の、屋根材と接触して切削する外周縁の一部が摩耗することは避けられない。しかしながら、屋根材を切削することによって円弧状の切削刃9の外周縁の一部が摩耗したとしても
、切欠部6による円弧状の切削刃9が軸心方向に向かって残されている場合には、切削機能が失われることはなく、切削作業を継続することができる。
【0020】
換言すれば、硬い素材からなる屋根材を切削する場合、初期の切削を実行する切削刃が丸く摩耗して小さくなることを避けることができないことを想定して、予め円弧状の切削刃9
を切欠部6によって軸心方向に向かって一定長さ確保するように設計されているものである。
【0021】
これにより、硬い素材からなる屋根材であっても、一対の円弧状の切削刃9は、確実に屋根材を切削して貫通させることができる。しかも、両刃によって効率よく切削することができる。
【0022】
一方、円弧状の切削刃9が屋根材を貫通すると、円弧状の切削刃9に連続する、頭部2に向かって徐々に末広がりに延びる直線状の切削刃8が、円弧状の切削刃9による貫通穴の周縁を切削して拡径し、最終的に切り刃先5の外径に相当する内径の貫通穴を屋根材に形成する。そして、この屋根材の貫通穴を通してねじ部4を下地木材に導くとともに、切削刃7によって下地木材に形成された下穴にねじ部4をねじ込んで締結することができる。この際、切削刃7が硬い素材からなる屋根材を切削することで、その外周縁の一部が摩耗し、径が小さくなったとしても、その分下地木材に対するねじ込み性能を向上させるものとなる。
【0023】
これらのことを具体的に説明すると、従来のドリルねじのとがり先や切り刃先では、硬い素材からなる1枚の屋根材を切削する場合、磨耗によって刃先が変形し、あるいは、摩擦熱によって焼けて溶け、貫通させることができないのに対し、本発明のドリルねじ1においては、硬い素材からなる4〜5枚の屋根材を貫通させる能力を有するものである。
【符号の説明】
【0024】
1 ドリルねじ
2 頭部
3 軸部
4 ねじ部
5 切り刃先
6 切欠部
7 切削刃
8 直線状の切削刃
9 円弧状の切削刃