特許第5663485号(P5663485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663485
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】不安障害治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20150115BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   A61K31/4439
   A61P25/22
【請求項の数】8
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2011-529927(P2011-529927)
(86)(22)【出願日】2010年9月2日
(86)【国際出願番号】JP2010064989
(87)【国際公開番号】WO2011027806
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2013年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2009-202894(P2009-202894)
(32)【優先日】2009年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和発酵キリン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 準也
(72)【発明者】
【氏名】神田 知之
【審査官】 田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/063743(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/108137(WO,A1)
【文献】 国際公開第2000/069464(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/022283(WO,A1)
【文献】 Psychopharmacology,1991年,Vol.103, No.4,pp.541-544
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4439
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(IC)
【化1】
で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する不安障害の治療および/または予防剤。
【請求項2】
不安障害がパニック障害である請求項1記載の剤。
【請求項3】
不安障害が広場恐怖症である請求項1記載の剤。
【請求項4】
不安障害が強迫性障害である請求項1記載の剤。
【請求項5】
不安障害が社会恐怖症である請求項1記載の剤。
【請求項6】
不安障害が心的外傷後ストレス障害である請求項1記載の剤。
【請求項7】
不安障害が特定の恐怖症である請求項1記載の剤。
【請求項8】
不安障害が全般性不安障害である請求項1記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症、全般性不安障害などの不安障害の治療および/または予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
不安障害
不安障害は心理学的問題の一群であり、それらの重要な特徴として、過大な不安、恐怖、心配、回避および強制的儀式などがあげられ、これらは過度の罹患率、医療サービスの過剰利用および機能障害を引き起こしたりそのような結果に帰着したりする。それらは、米国および他のほとんどの国において最も流行している精神医学的状態の1つである。疾患の発生率は、文化を越えてかなり一様である。ほとんどの場合、男性よりも女性が不安障害を経験する可能性が高い。慢性不安障害は、心臓血管関連死亡率を増加させることがあり、それゆえ適切な診断および迅速な治療の開始がなされなければならない。
【0003】
「精神疾患の診断・統計マニュアル」(第4版−1994年改訂、米国精神医学学会発行、米国ワシントンD.C., p.393-444)に列挙されている不安障害としては、広場恐怖症を伴うまたは伴わないパニック障害、パニック障害歴を伴わない広場恐怖症、社会恐怖症、強迫性障害(OCD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害、全般性不安障害(GAD)、一般的医学的状態に起因する不安障害、薬物誘発性不安障害、特定の恐怖症、特に明記されない不安障害などがあげられる。
広場恐怖症を伴うまたは伴わないパニック障害
パニック障害は不安障害の一つであり、その本質的な特徴は再発性パニック発作(すなわち、少なくとも4つの特徴的な関連症状を伴う強い恐怖または不快感の離散的期間)である。発作は通常、数分間(または、めったにないが、数時間)持続し、予期せざるものであり、単純な恐怖症の場合のように、ほとんど常に不安を引き起こすような状況に曝される前または曝されたときに、直ちに生じる傾向はない。この発作の「予期せざる」という側面は、この障害の本質的な特徴である。パニック発作は、強度の不安または恐怖が突然襲ってくることで始まり、例えば息切れ、めまい、失神、息詰まり、動悸、震え、発汗、おこり、吐き気、しびれ感、のぼせまたは悪寒、胸痛などの身体的症状を伴うことが典型的である。パニック障害は広場恐怖症と関係していることがあり、重篤な場合、当事者は事実上家に引きこもる。
【0004】
臨床標本においては、より高い割合で広場恐怖症に遭遇するが、地域社会標本においては、パニック障害と診断された人のおよそ3分の1から2分の1が広場恐怖症をも患っている。
パニック障害歴のない広場恐怖症
広場恐怖症は、万一パニック発作またはパニック様症状(例えば、突然のめまいの発作または突然の下痢の発作が起きることの恐れ)が起きた場合に、そこから逃げ出すことが困難である(または困惑する)かもしれない、またはそこでは助けを求めることができない可能性がある場所あるいは状況にいることについての不安を特徴とする状態である。広場恐怖症は、広場恐怖症を伴うパニック障害およびパニック障害歴がないという状況で生じる。無力化させるもしくは極端に困惑させるようなパニック様症状、または完全なパニック発作というよりは限定された症状の発作が起きることに恐怖の対象があることを除けば、パニック障害歴のない広場恐怖症の本質的な特徴は、広場恐怖症を伴うパニック障害の特徴と同様である。
強迫性障害(OCD)
強迫性障害の一次症状は、窮迫を引き起こしたり、時間がかかったり、人の正常な日常業務またはライフスタイルを著しく妨げたりするため、十分に重症であり、再発性の強迫観念(すなわち、顕著な不安を引き起こす再発性で払っても消えない考え、イメージまたは衝動)および/または強迫行為(すなわち、本人の強迫観念により引き起こされた不安を緩和するために実行される反復行動または精神的行為)である。強迫観念は、汚染、疑念(自信喪失を含む)および性的もしくは宗教的考えの冒涜に関することが典型的である。典型的な強迫行為としては、洗浄行為、確認行為、物を整理する行為、物を数える行為などがあげられる。
社会恐怖症
社会恐怖症は、困惑が生じ得るような社会的または人前での執拗な恐怖により特徴付けられる。社会恐怖症である人が恐れたり避けたりする典型的な状況としては、パーティー、会議、他人の前での食事、他人の前での筆記、演説、会話、初めての人との対面、その他関連する状況などがあげられる。社会的または人前での状況に曝されることは、即時の不安反応はもちろんのこと、発汗、震え、ドキドキするもしくは叩くような鼓動、精神的混乱および逃げ出したくなる願望をほとんど常に引き起こす。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
主要な特徴的症状は、心的外傷性(すなわち、心理的な苦悩)の出来事の再体験、その出来事を想起させる刺激からの逃避、一般的な反応性の麻痺、覚醒の増加などがあげられる。関係する「出来事」は、例えば単なる死別、慢性疾患、夫婦間の軋轢などがあげられる。
全般性不安障害(GAD)
GADは、非現実的もしくは過剰な不安、および2つ以上の生活環境についての心配が、6ヶ月以上続くという状態がその本質的な特徴である。この心配をコントロールすることが困難であることを経験し、その間、罹患している人がその懸念により悩まされるときがある日の方が無い日より多い。運動緊張(motor tension)、自律神経性活動過剰(autonomic hyperactivity)、不眠(vigilance)、じろじろ見る(scanning)などの徴候をはっきり示す。
特定の恐怖症
特定の恐怖症は、その本質的な特徴が、制限された刺激(a circumscribed stimulus)への著しい恐怖である不安障害であり、この制限された刺激は社会的状況においてパニック発作が出たり恥辱を味わったり当惑したりするという恐怖(これは社会恐怖症に分類される)以外の対象または状況であるといえる。例えば、飛行機恐怖症、高所恐怖症、動物恐怖症、注射恐怖症、血液恐怖症などがあげられる。
【0005】
不安障害については、多様な原因が疑われており、特に遺伝的気質、幼少期の成長および発達、ならびにこれらとその後の人生経験の組み合わせが疑われている。不安障害は、カウンセリング、精神療法、薬理学的療法(薬物療法)などを単独でまたは組み合わせて用いることにより治療される。不安障害患者を処置するために典型的に使用される薬物は、ベンゾジアゼピン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン取り込み阻害薬(SNRI)、ブスピロンなどである。
【0006】
ベンゾジアゼピンは、迅速で十分な抗不安効果および鎮静催眠効果がある比較的安全で広く処方される薬剤の大きな部類に属する。SSRI・SNRIの部類に属する薬物は、例えばパニック障害、広場恐怖症、OCD、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症、より広範な不安障害などの不安障害の処置に用いられる[Kaplan & Sadock's Comprehensive textbook of psychiatry 7th. edition, 1, p.1441 (1999)]。ブスピロンは、比較的選択性のある5HT1A部分作動薬であり、GADの処置に最も有用な抗不安薬としてFDAにより承認されており、現在SSRIに対する補助剤として頻繁に使用される[Kaplan & Sadock's Comprehensive textbook of psychiatry 7th. edition, 1, p.1441 (1999)]。
【0007】
一方、アデノシンは生体内に広く分布し、その受容体を介して、中枢神経系、心筋、腎臓、平滑筋などに対して様々な生理作用を示すことが知られている(非特許文献1参照)。
例えば、アデノシンA1拮抗剤は排便促進作用を有することが知られている(Jpn. J. Pharmacol., 68, p. 119 (1995))。また、アデノシンA2A受容体は、特に中枢神経系に関与していることが知られており、その拮抗剤は、例えばパーキンソン病の治療薬(非特許文献2参照)、睡眠障害の治療薬(Nature Neuroscience, p.858 (2005);特許文献3参照)、うつ病の治療薬(Neurology, 61(11 Suppl 6), S82-7 (2003))などとして有用であることが知られている。アデノシン受容体とパーキンソン病の関係については多くの報告がある(Nature Reviews Drug Discovery, 5, p.845 (2006); Current Pharmaceutical Design, 14, p.1475 (2008))。
【0008】
また、アデノシンA2A受容体とうつ症状の関連については、アデノシンA2A受容体欠損マウスを用いた検討から、アデノシンA2A受容体拮抗作用が抗うつ薬投与と同様の行動薬理学的な変化を誘発することが報告されている(Br. J. Pharmacol., 134, p.68 (2001))。そして、アデノシンA2A受容体拮抗活性を有するキサンチン化合物は、抗うつ活性を有することが知られており(例えば、WO94/01114)、さらに、抗パーキンソン病活性(例えば、Ann. Neurol., 43, p.507 (1998))、不安障害の治療効果(例えば、WO2004/108137)、神経変性に対する抑制活性(例えば、WO99/12546)などを有することが知られている。また、アデノシンA2A受容体アンタゴニストと抗鬱薬または抗不安薬との組み合わせが報告されている(特許文献1参照)。
【0009】
一方、例えば式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)などで表される化合物がアデノシンA2A受容体に対し親和性を有し、パーキンソン病の治療効果を有することが知られている(特許文献2参照)。また、これらの化合物が睡眠障害の治療および/または予防剤として有用であることも知られている(特許文献3参照)。
【0010】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2003/022283号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/063743号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/015528号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「ネイチァー・レビューズ・ドラッグ・ディスカバリー(Nature Reviews Drug Discovery)」、2006年、第5巻、p. 247
【非特許文献2】「プログレス・イン・ニューロバイオロジー(Progress in Neurobiology)」、2007年、第83巻、p. 332
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、例えばパニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症、全般性不安障害などの不安障害の治療および/または予防剤などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の(1)〜(14)に関する。
(1) 一般式(I)
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R1は、アリール、アラルキル、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル、脂肪族複素環アルキルまたはテトラヒドロピラニルオキシを表すか、またはこれらの基に、ハロゲン;低級アルコキシまたはモルホリノで置換されていてもよい低級アルキル;低級アルコキシ;低級アルカノイル;およびビニルからなる群から選ばれる1〜3個の置換基が置換した基を表し、R2はピリジルまたはテトラヒドロピラニルを表す)
で表されるチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する不安障害の治療および/または予防剤。
(2) R1がフェニル、ピリジル、ピリミジニル、5,6-ジヒドロ-2H-ピリジルメチルまたはテトラヒドロピラニルオキシであるか、またはこれらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換した基であり、R2がピリジルまたはテトラヒドロピラニルである(1)記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する不安障害の治療および/または予防剤。
(3) R1がピリジルまたはピリミジニルであるか、またはこれらの基にハロゲン;低級アルコキシまたはモルホリノで置換されていてもよい低級アルキル;低級アルコキシ;低級アルカノイル;およびビニルからなる群から選ばれる1〜3個の置換基が置換した基である(1)記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する不安障害の治療および/または予防剤。
(4) R2が、ピリジルである(1)〜(3)のいずれかに記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する不安障害の治療および/または予防剤。
(5) R2が、テトラヒドロピラニルである(1)〜(3)のいずれかに記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する不安障害の治療および/または予防剤。
(6) 一般式(I)で表されるチアゾール誘導体が、下記式(IA)〜(IAA)のいずれかで表される化合物である(1)記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する不安障害の治療および/または予防剤。
【0017】
【化3】
【0018】
(7) 一般式(I)で表されるチアゾール誘導体が、下記式(IA)〜(ID)のいずれかで表される化合物である(1)記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する不安障害の治療および/または予防剤。
【0019】
【化4】
【0020】
(8) 不安障害がパニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症または全般性不安障害である(1)〜(7)のいずれかに記載の剤。
(9) 上記(1)〜(7)のいずれかに記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む不安障害の治療および/または予防方法。
(10) 不安障害がパニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症または全般性不安障害である(9)記載の方法。
(11) 不安障害の治療および/または予防に使用するための上記(1)〜(7)のいずれかに記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
(12) 不安障害がパニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症または全般性不安障害である(11)記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
(13) 不安障害の治療および/または予防剤の製造のための上記(1)〜(7)のいずれかに記載のチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩の使用。
(14) 不安障害がパニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症または全般性不安障害である(13)記載の使用。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、チアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する不安障害(例えば、パニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症、全般性不安障害など)の治療および/または予防剤などが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、一般式(I)で表される化合物を化合物(I)ということもある。他の式番号の化合物についても同様である。
一般式(I)の各基の定義において、
低級アルキル、低級アルコキシおよび低級アルカノイルの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキルがあげられ、より具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどがあげられる。
【0023】
アラルキルとしては、例えば炭素数7〜16のアラルキルがあげられ、より具体的にはベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチル、フェニルヘキシル、フェニルヘプチル、フェニルオクチル、フェニルノニル、フェニルデシル、ナフチルメチル、ナフチルエチル、ナフチルプロピル、ナフチルブチル、ナフチルペンチル、ナフチルヘキシル、アントリルメチル、アントリルエチルなどがあげられる。
【0024】
アリールとしては、例えば炭素数6〜14のアリールがあげられ、より具体的にはフェニル、ナフチル、アズレニル、アントリルなどがあげられる。
芳香族複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環基などがあげられ、より具体的にはフリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピロロピリジニル、ピロロピリミジニル、イミダゾピリジニル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、フロ[2,3-b]ピリジル、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジル、7,8-ジヒドロ-5H-ピラノ[4,3-b]ピリジル、7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジルなどがあげられる。
【0025】
芳香族複素環アルキルとしては、例えば芳香族複素環基がアルキレンに結合した基があげられ、該芳香族複素環基としては、上記の芳香族複素環基の例示であげた基があげられ、該アルキレンとしては、例えば炭素数1〜10のアルキレンがあげられ、具体的にはメチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレンなどがあげられる。芳香族複素環アルキルとして、より具体的には、例えばピロリルメチル、ピロリルエチル、チアゾリルメチル、ピリジルメチル、ピリジルエチル、ピリミジニルメチル、ピリミジニルエチル、インドリルメチル、ベンゾイミダゾリルメチルなどがあげられる。
【0026】
脂肪族複素環アルキルとしては、例えば脂肪族複素環基がアルキレンに結合した基があげられ、該脂肪族複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性脂肪族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂肪族複素環基などがあげられ、より具体的にはアジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペリジニル、アゼパニル、1,2,5,6-テトラヒドロピリジル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピラゾリニル、オキシラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、5,6-ジヒドロ-2H-ピラニル、5,6-ジヒドロ-2H-ピリジル、オキサゾリジニル、モルホリノ、モルホリニル、チオキサゾリジニル、チオモルホリニル、2H-オキサゾリル、2H-チオキサゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリジニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾチオキサゾリル、ベンゾジオキソリニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ジヒドロ-2H-クロマニル、ジヒドロ-1H-クロマニル、ジヒドロ-2H-チオクロマニル、ジヒドロ-1H-チオクロマニル、テトラヒドロキノキサリニル、テトラヒドロキナゾリニル、ジヒドロベンゾジオキサニルなどがあげられる。該アルキレンとしては、例えば炭素数1〜10のアルキレンがあげられ、具体的にはメチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレンなどがあげられる。脂肪族複素環アルキルとして、より具体的には、例えば5,6-ジヒドロ-2H-ピリジルメチル、5,6-ジヒドロ-2H-ピリジルエチル、テトラヒドロ-2H-ピラニルメチル、5,6-ジヒドロ-2H-ピラニルメチル、5,6-ジヒドロ-2H-ピラニルエチル、モルホリノメチル、モルホリノエチル、ピペラジニルメチル、オキサゾリジニルメチルなどがあげられる。
【0027】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
本発明に使用される化合物(I)またはその薬学的に許容される塩としては、アデノシン受容体の各種サブタイプ(例えば、アデノシンA1、A2A、A2BおよびA3受容体)のうち、アデノシンA2A受容体に対し強い拮抗作用を有する化合物が好ましい。
従って、本発明の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩としては、アデノシンA2A受容体に対し強い親和性を有する化合物が好ましい。例えば、後記の試験例1で示したアデノシンA2A受容体結合試験において、試験化合物の濃度が3×10-8 mol/Lで50%以上の阻害作用を有する化合物が好ましく、1×10-8 mol/Lで50%以上の阻害作用を有する化合物がより好ましく、3×10-9 mol/Lで50%以上の阻害作用を有する化合物がさらに好ましく、1×10-9 mol/Lで50%以上の阻害作用を有する化合物がさらにより好ましい。また、同試験により得られる阻害定数(Ki値)が30 nmol/L以下の阻害作用を有する化合物が好ましく、10 nmol/L以下の阻害作用を有する化合物がより好ましく、3 nmol/L以下の阻害作用を有する化合物がさらに好ましく、1 nmol/L以下の阻害作用を有する化合物がさらにより好ましい。
【0028】
さらにまた、本発明に使用される化合物(I)またはその薬学的に許容される塩としては、アデノシン受容体の各種サブタイプのうち、アデノシンA2A受容体に対し選択的な親和性を有する化合物が好ましく、例えば、アデノシンA2A受容体に対する親和性が、アデノシンA1受容体に対する親和性より大きい化合物が好ましい。具体的には、例えばアデノシンA1受容体への親和性と比較し(例えば、Ki値で比較)、アデノシンA2A受容体に対する親和性が5倍以上の化合物が好ましく、10倍以上の化合物がより好ましく、50倍以上の化合物がさらに好ましく、100倍以上の化合物がさらにより好ましく、500倍以上の化合物が最も好ましい。
【0029】
これら親和性は、常法により求めることができ、例えば後記の試験例1に準じた方法で、または文献[例えば、Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol., 355(1), p.59(1987年); Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol., 355(2), p.204 (1987); Br. J. Pharmacol., 117(8), p.1645 (1996)など]記載の方法などにより求めることができる。
より具体的には、化合物(I)としては、例えば、R1がハロゲン、C1-6アルコキシ、またはモルホリノが置換していてもよいC1-6アルキル、C1-6アルカノイル、ビニルおよびC1-6アルコキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換していてもよいフェニル;ハロゲン、C1-6アルコキシまたはモルホリノが置換していてもよいC1-6アルキル、C1-6アルカノイル、ビニルおよびC1-6アルコキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換していてもよいピリジル;ハロゲン、C1-6アルコキシまたはモルホリノが置換していてもよいC1-6アルキル、C1-6アルカノイル、ビニルおよびC1-6アルコキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換していてもよいピリミジニル;ハロゲン、C1-6アルキルおよびC1-6アルコキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換していてもよい5,6-ジヒドロ-2H-ピリジルメチル;2,3,4,5-テトラヒドロピラニルオキシ;ピロリル;インドリル;オキサゾロピリジル;キノリル;1H-3,4-ジヒドロピラノピリジニル;1H-3,4-ジヒドロチオピラノピリジニル;シクロペンタピリジル;またはピリジルメチルである化合物が好ましく、R1がフッ素原子、塩素原子、メチルおよびメトキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換していてもよいフェニル;フッ素原子、塩素原子、メチルおよびメトキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換していてもよいピリジル;フッ素原子、塩素原子、メチルおよびメトキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換していてもよいピリミジニル;フッ素原子、塩素原子、メチルおよびメトキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換していてもよい5,6-ジヒドロ-2H-ピリジルメチル;または2,3,4,5-テトラヒドロピラニルオキシである化合物がより好ましく、R1が塩素原子、メチルおよびメトキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換したピリジル;塩素原子、メチルおよびメトキシから選ばれる1〜3個の置換基が置換したピリミジニル;5,6-ジヒドロ-2H-ピリジルメチル;または2,3,4,5-テトラヒドロピラニルオキシである化合物がさらに好ましい。さらにより具体的には、例えば下記式(IA)〜(IAA)の化合物などが好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
化合物(I)の薬学的に許容される塩は、例えば薬学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩などを包含する。化合物(I)の薬学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩などの有機酸塩などがあげられ、薬学的に許容される金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などがあげられ、薬学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩があげられ、薬学的に許容される有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジンなどの付加塩があげられ、薬学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、例えばリジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの付加塩があげられる。
【0032】
化合物(I)は、従来より既知の方法に従って製造することができ、例えばWO2005/063743などに記載の方法により製造することができる。
【0033】
【化6】
【0034】
(式中、R1およびR2はそれぞれ前記と同義であり、Xは塩素原子、臭素原子などを表す)
具体的には、上記式の通り、例えばWO2005/063743に記載の化合物(Ia)を好ましくは0.5〜5当量の化合物(Ib)と、例えばメタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ピリジン、水、またはこれらの混合溶媒などの溶媒中、好ましくは1〜5当量の例えば1,3-ジシクロヘキサンカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)・塩酸塩などの縮合剤の存在下、必要により好ましくは1〜5当量の1-ヒドロキシベンズゾトリアゾール(HOBt)・一水和物、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの存在下、-20℃と用いる溶媒の沸点との間の温度で、5分間〜72時間反応させることによって化合物(I)を製造することができる。
【0035】
また、別法として、化合物(I)は、WO2005/063743に記載の化合物(Ia)を好ましくは1〜10当量の化合物(Ic)と、無溶媒でまたは例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル、THF、DMF、DMA、ピリジンなどの溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の例えば炭酸カリウム、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)など塩基の存在下、-20℃と150℃の間の温度で、5分間〜72時間反応させることにより製造することもできる。
【0036】
化合物(I)には、幾何異性体、光学異性体などの立体異性体、互変異性体などが存在し得るものもあるが、本発明の不安障害の治療および/または予防剤には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を使用することができる。
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(I)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて塩を形成させて単離、精製すればよい。
【0037】
また、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明の不安障害の治療および/または予防剤に使用することができる。
次に、代表的な化合物(I)の薬理作用について試験例により具体的に説明する。
試験例1 アデノシン受容体結合作用
(1)アデノシンA2A受容体結合試験
試験は例えば、Varaniらの方法(British Journal of Pharmacology, 117, p.1693 (1996))に準じて行うことができる。
【0038】
具体的には例えば、HEK-293細胞にヒト組み換えアデノシンA2A受容体を発現させ、当該細胞から該受容体を発現した細胞膜を採取し懸濁液を調製し、該細胞膜懸濁液に、トリチウムで標識した2-[p-(2-カルボキシエチル)フェネチルアミノ]-5’-(N-エチルカルボキサミド)アデノシン(3H-CGS21680:50 mmol/L)および試験化合物溶液(試験化合物のジメチルスルホキシド溶液)をトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン・塩酸塩(Tris HCl)緩衝液で希釈して加え、受容体と結合させる。反応後、その混合液を、ガラス繊維濾紙上で急速吸引ろ過し、ガラス繊維濾紙の放射能量を測定することにより、試験化合物のヒトアデノシンA2A受容体結合(3H-CGS21680結合)に対する阻害率を求めることができる。
【0039】
また、例えばBrunsらの方法(Molecular Pharmacology, 29, p. 331 (1986))に準じて行うこともできる。
具体的には例えば、ラット線条体を、氷冷した50 mLの50 mmol/L Tris HCl緩衝液(pH 7.7)中で、ポリトロンホモジナイザーで懸濁した後、遠心分離し、得られた沈殿物に50 mmol/L Tris HCl緩衝液を加えて再懸濁し、同様に遠心分離を行う。得られる最終沈殿物に、5 mg(湿重量)/mLの組織濃度になるように50 mmol/L Tris HCl緩衝液(10 mmol/L塩化マグネシウム、アデノシンデアミナーゼ0.02ユニット/mg組織を含む)を加えて懸濁し、トリチウムで標識したCGS-21680(最終濃度6.0 mmol/L)および試験化合物溶液(試験化合物のジメチルスルホキシド溶液をTris HCl緩衝液で希釈)を加える。その混合液を25℃で120分間静置した後、ガラス繊維濾紙上で急速吸引ろ過し、直ちに氷令した50 mmol/L Tris HCl緩衝液で洗浄する。ガラス繊維濾紙をバイアルびんに移し、マイクロシンチ(PKI社)を加え、放射能量をトップカウント(パーキンエルマー社製)で測定することにより、試験化合物のラットアデノシンA2A受容体結合(3H-CGS21680結合)に対する阻害率を求めることができる。
【0040】
なお、阻害率は次式により算出できる。
【0041】
【数1】
【0042】
式中、全結合量とは、試験化合物非存在下での3H-CGS21680結合放射能量である。非特異的結合量とは、50μmol/L 5’-エヌエチルカルボキサミドアデノシン(NECA)または100μmol/Lシクロペンチルアデノシン(CPA)存在下での3H-CGS21680結合放射能量である。薬物存在下での結合量とは、試験化合物存在下での3H-CGS21680結合放射能量である。
上記試験において、試験化合物の濃度を適宜調整することにより、各濃度における試験化合物またはその薬学的に許容される塩のアデノシンA2A受容体に対する阻害率、および結合を50%阻害する試験化合物の濃度(IC50)を算出できる。
【0043】
また、試験化合物のアデノシンA2A受容体結合に対する阻害定数(Ki値)は次式により算出できる。
【0044】
【数2】
【0045】
Lは試験に用いた3H-CGS21680の濃度を示す。 Kdは、試験に用いた3H-CGS21680の解離定数である。
また、3H-CGS21680の代わりに3H-5-アミノ-7-(2-フェニルエチル)-2-(2-フリル)ピラゾロ[4,3-e]-1,2,4-トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン(3H-SCH58261)などを用いることもできる。
(2)アデノシンA1受容体結合試験
上記(1)と同様の方法で下記の材料を使用することにより、試験化合物のアデノシンA1受容体に対する阻害定数(Ki値)を算出することができる。
【0046】
すなわち、例えばヒトA1受容体発現CHO細胞膜を用い、標識化合物として、例えばトリチウムで標識した1,3-ジプロピル-8-シクロペンチルキサンチン(3H-DPCPX)を用いる。非特異的結合量は、例えば100μmol/Lの (-)-N6-2-フェニルイソプロピルアデノシン(R(-)-PIA)存在下での3H-DPCPX結合放射能量を測定することにより求めることができ、試験化合物のヒトアデノシンA1受容体への親和性を確認することができる。
【0047】
また、例えばラットA1受容体発現細胞膜(パーキンエルマー社製)を用い、標識化合物として、例えばトリチウムで標識したN6-シクロヘキシルアデノシン(3H-CHA)を用いる。非特異的結合量は、例えば10μmol/LのDPCPX存在下での3H-CHA結合放射能量を測定することにより求めることができ、試験化合物のラットアデノシンA1受容体への親和性を確認することができる。
【0048】
上記試験(1)および(2)により、本発明に使用されるチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩がアデノシンA2A受容体に対し選択的な親和性を有することを確かめることができる。
(3)化合物(I)またはその薬学的に許容される塩のアデノシン受容体に対する親和性
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩のアデノシンA1受容体およびアデノシンA2A受容体への親和性の例を以下に示す。なお、試験結果はMDSファーマサービス社(MDS Pharma Services Inc.)において上記の方法に準じて測定された結果である。
【0049】
【表1】
【0050】
上記の試験により、化合物(I)は、アデノシンA2A受容体に対し、選択的な親和性を有することが確認された。
試験例2 アデノシン受容体結合作用(2)
上記試験例1と同様にして、化合物(IE)〜(IAA)のアデノシン受容体に対する親和性を確認した(試験結果はリセルカ バイオサイエンス社(Ricerca Biosciences, LLC)において上記の方法に準じて測定された結果である)。
【0051】
【表2】
【0052】
上記の試験により、化合物(I)は、アデノシンA2A受容体への選択的な親和性を有することが確認された。
試験例3 マウスビー玉隠し試験における化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の作用
本試験は、抗不安薬評価モデルの一つとして知られている(日本薬理学雑誌, 126, p.94 (2005))。ビー玉隠し行動は、敷き詰めたプレナー上に置いたビー玉をマウスがプレナー内に埋めてしまう行動であり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective serotonin reuptake inhibitor、SSRI)により運動抑制を伴うことなく抑制される。無害なビー玉をプレナーで覆い隠そうとするマウスの行動が、不合理と認識しつつ繰り返される強迫性障害患者の強迫行為と見かけ上類似していることや、SSRIが強迫性障害の治療薬として有効であることなどから、ビー玉隠し行動は強迫性障害の動物モデルとして位置づけられる。
【0053】
試験には雄性ICRマウス(体重27.6〜42.9 g;日本エスエルシー株式会社)を用いた。溶媒[メチルセルロース(MC)を0.5 w/v%の濃度で含有する注射用水(大塚製薬工場);0.5 w/v%MC溶液;対照群]または試験化合物(0.5w/v%MC溶液に懸濁し、マウス体重10 gあたり0.1 mL投与となるように調製したもの;薬剤群)の経口投与1時間後、25個のビー玉(直径18 mm)をプレナー(底面から5 cmの高さまで敷く)表面に等間隔に置いたケージにマウスを1匹ずつ入れた。30分後、プレナー表面に半分以上が埋められたビー玉の数を測定した。計測はブライド下で実施した。
【0054】
薬剤の影響については、隠されたビー玉の実測数、および下記の式で算出される抑制率で表した。
【0055】
【数3】
【0056】
化合物(IC)を3 mg/kgの用量で投与したところ、マウスビー玉隠し行動が有意に抑制された(抑制率:73.7 %)。
化合物(IC)が上記試験で抑制効果を示したことから、アデノシンA2A受容体に対し選択的な親和性を有する化合物(I)は強迫性障害を含む不安障害の治療および/または予防に有用であると考えられた。
試験例4 ラット社会的相互作用(Social interaction)試験における化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の作用
体重がほぼ同程度の個別飼育した2匹のラットを同じ測定ケージ内に入れ、2匹のラットが示す臭い嗅ぎ行動、追尾、毛づくろいなどの社会的相互作用(social interaction)を観察する。既存の抗不安薬を投与することにより、この社会的相互作用が増加することが知られている。本試験は、2匹のラット間に、相対する社会的環境がストレスを生じさせると考えられており、社会恐怖症または全般性不安障害の動物モデルであると考えられている(Eur. J. Pharmacol., 408, p.41 (2000))。
【0057】
試験には雄性SDラット(体重201.8〜285.6 g;日本チャールス・リバー株式会社)を使用した。行動評価当日、ラットを評価開始4時間前より実験室環境に馴化させた。溶媒(0.5 w/v% MC溶液)または試験化合物(0.5w/v%MC溶液に懸濁し、ラット体重100 gあたり0.5 mL投与となるように調製したもの)の経口投与60分後に、2匹のラットをアクリルボックス(50 x 50 x 50 cm)内で遭遇させた。直後10分間に観察される社会的相互作用行動(臭い嗅ぎ行動、追尾、毛づくろいなど)の総出現時間(ラット間interaction時間)をストップウォッチで測定した。
【0058】
化合物(IC)を0.3 mg/kgの用量で投与したところ、ラット間interaction時間が有意に増加した(溶媒処置85.2 ±7.6秒に対し、119.3 ±9.0秒P=0.01545、 Dunnett test)。また、自発運動量についても有意な増加がみられた(溶媒処置8635.3 ±506.4カウントに対し、12922.7 ±646.8カウントP<0.001、Dunnett test)。
化合物(IC)が上記試験で効果を示したことから、アデノシンA2A受容体に対し選択的な親和性を有する化合物(I)は社会恐怖症および/または全般性不安障害を含む不安障害の治療および/または予防に有用であると考えられた。
試験例5 ラットsocial interaction試験における薬物誘発不安様行動に対する化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の作用
試験例4の方法を用いて、不安惹起物質の投与により誘発される不安に対する化合物の影響を検討した。不安惹起物質の一つに、ヨヒンビン(Yohimbine;アドレナリンα2受容体拮抗薬)が知られている。Yohimbineの不安惹起作用には、α2受容体拮抗作用に伴う青斑核活動亢進が寄与すると考えられている。健常人にYohimbineを投与することで現れる不安症状は、青斑核活動異常がその病態生理に大きく寄与すると考えられているパニック障害と類似することが報告されている。このことから、Yohimbine誘発不安は青斑核活動異常に伴う不安症状(例えばパニック障害)をよく反映したモデルであると考えられている。
【0059】
一方、メタクロロフェニルピペラジン塩酸塩(mCPP;m-chlorophenylpiperadine hydrochloride)は、5-HT2受容体刺激作用を有する不安惹起物質である。mCPPは、健常人に不安症状を惹起させる他、ヒト全般性不安障害の症状を悪化させることが報告されている。mCPPで誘発される不安行動は、特に5-HT2受容体を介した情報伝達異常に伴う不安(例えば全般性不安障害)をよく反映したモデルであると考えられている。
【0060】
まず、Yohimbine誘発不安に対する作用を検討した。
溶媒(0.5 w/v% MC溶液)を測定の30分前に投与した群では、ラット間に見られるinteraction時間が平均で90.6 ± 7.1 秒であった。これに対し、Yohimbineを測定の30分前に投与(0.5 w/v% MC溶液に溶解し、ラット体重100 gあたり0.25 mL投与となるように調製したものを5 mg/kgの用量で経口投与)した群では、ラット間のinteraction時間が有意に減少した(57.6 ± 3.4 秒, P=0.0010, Aspin-Welch test)。化合物(IC)(0.5 w/v% MC溶液の懸濁液、ラット体重100gあたり0.25 mL投与となるように調製したもの)をYohimbineの投与30分前に0.03 mg/kgの用量で投与したところ、上記のYohimbine(5 mg/kg)によるinteraction時間減少を有意に改善した(0.03 mg/kg:90.3 ±5.0 秒、P = 0.00019, Steel test)。
【0061】
次に、mCPP誘発不安に対する作用を検討した。
溶媒(0.5 w/v% MCラット体重100 gあたり0.25 mL経口投与)を測定の30分前に投与した群では、ラット間に見られるinteraction時間が平均で83.4 ± 5.1 秒であった。これに対し、mCPPを測定の30分前に投与(0.5 w/v% MC溶液に溶解し、ラット体重100 gあたり0.25 mL投与となるように調製したものを0.5 mg/kgの用量で経口投与)した群では、ラット間のinteraction時間が有意に減少した(32.5 ± 3.6 秒、P<0.001、Student’s t-test)。化合物(IC)(0.5 w/v% MC溶液の懸濁液、ラット体重100gあたり0.25 mL投与となるように調製したもの)をmCPPの投与30分前に0.3 mg/kgの用量で投与したところ、上記のmCPP(0.5 mg/kg)によるinteraction時間減少を有意に改善した(0.3 mg/kg:62.4 ± 6.9 秒、 P<0.001、Dunnett test)。
【0062】
化合物(IC)が上記試験で効果を示したことから、アデノシンA2A受容体に対し選択的な親和性を有する化合物(I)は、薬物により誘発される不安障害の治療および/または予防に有用であると考えられた。また、化合物(I)は、パニック障害、全般性不安障害を含む不安障害の治療および/または予防に有用であると考えられた。
試験例6 ラットのボーゲル型葛藤試験(Vogel conflict test)における化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の作用
本試験は、給水制限をしたラットが、飲水する度に電気ショックを受ける条件下で、飲水回数(飲水時に与えられるショック回数)を測定するものである。この条件下でラットは、水(正の強化因子)は欲しいけれど電撃(負の強化因子、罰刺激)は受けたくないという、相反する刺激の間で葛藤(コンフリクト)状態に置かれていると考えられている。抗不安作用をもつ薬物をラットに投与すると、罰刺激に対する不安が抑えられ正の強化因子を取ろうとする行動がみられる。本試験は、全般性不安障害の動物モデルの一つと考えられている(日本薬理学会雑誌, 115, p.5 (2005)、臨床精神薬理, 9, p.2389 (2006))。
【0063】
試験には雄性Wistarラット(体重148.4〜211.7 g;日本エスエルシー株式会社)、およびオペラント実験装置を用いた。実験装置は防音箱および防音箱内に設置された試験ケージ(25×30×25 cm)、ショックジェネレータ、制御装置、リッキングセンサーおよびPC解析システムより構成される。試験ケージの床には20本のグリッド、内壁面では金属ノズルを介してラットは自由に飲水できる。試験ケージ床グリッド・金属ノズル間に微弱電流を流し、舐め(飲水)接触による通電をリッキングセンサーで検知し、制御装置を介してPC解析システムで計測した。ショックジェネレータにより試験ケージ床グリッドと金属ノズル間に通電し、電気ショックを付与した。ラットを10分間試験ケージ内で馴化させ、その後飼育ケージに移し飲水制限を加えた。24時間が経過した時点で試験ケージ内に入れ、5分間自由飲水(電気ショックなし)させた後に再び飼育ケージ内に移し、飲水制限を加えた。さらに24時間が経過したところで、再び試験ケージ内で5分間自由に飲水させ(pre-drug session、電気ショックなし)、金属ノズル20舐めを1回として飲水回数(drinking counts)を計測した(pre値)。Pre-drug sessionの60分後、溶媒(0.5 w/v% MC溶液)または試験化合物(0.5 w/v% MC溶液の懸濁液、ラット体重100gあたり0.5 mL投与となるように調製したもの)を経口投与し、その60分後に5分間の試験を行った(test-punished session、電気ショックあり)。Test-punished sessionでは、ラットの飲水によるノズル舐め20回毎に、金属ノズルと床グリッドの間から0.16 mA、0.2 sec/shockの電気ショックを与えた(punished drinking)。無飲水ラットはカウントせず、葛藤が生じたもののみの飲水回数の平均値を比較した。
【0064】
Test-punished sessionにおけるラット飲水回数は、電気ショックの付与によりpre-drug sessionと比較して低下した(pre-drug session:26.7±1.2回、 溶媒処置群:6.1±0.8回)。化合物(IC)を0.03 mg/kgの用量で投与したところ、有意に被電気ショック回数が増加した(12.7±1.7回、P=0.003846、Steel-test)。
化合物(IC)が上記試験で効果を示したことから、アデノシンA2A受容体に対し選択的な親和性を有する化合物(I)は全般性不安障害を含む不安障害の治療および/または予防に有用であると考えられた。
試験例7 ラット高架式十字迷路試験における化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の作用
本試験では、げっ歯類の探索行動欲求と、明るく開けた新奇空間(オープンアーム)に対する生得的嫌悪との間に葛藤が生じるため、抗不安作用を有する薬物は、動物がオープンアーム上に滞在する時間および進入する回数を増加させ、反対に不安惹起物質はこれらのパラメータを減少させることが報告されている(臨床精神薬理, 9, p.2389 (2006))。本試験は、全般性不安障害の動物モデルの1つであると考えられている(日本薬理学会雑誌, 115, p.5 (2005)、臨床精神薬理, 9, p.2389 (2006))。
【0065】
試験には雄性SDラット(体重133.8〜260.2 g;日本チャールス・リバー株式会社)を用いた。10 cm四方の中央スペースから同一線上に延びる2本のオープンアーム(50 x 10 cm)と高さ40 cmの壁に囲まれた2本のエンクローズドアーム(50 x 10 cm)が、直角に交差した装置を用いた。溶媒(0.5 w/v% MC溶液)または試験化合物(0.5 w/v% MC溶液の懸濁液、ラット体重100gあたり0.5 mL投与となるように調製したもの)の経口投与60分後、ラットを高架式十字迷路の中央部分に、頭部がエンクローズドアームに向くように置き、直後から5分間行動を観察した。迷路上のラットの行動を実験室天井に設置したデジタルビデオカメラで撮影し、解析ソフトを用いてラットのオープンアーム、エンクローズドアームおよび中央プラットホームでの滞在時間、進入回数および移動距離を測定した。観察時間内におけるオープンアーム滞在時間、オープンアーム進入率(オープンアーム・エンクローズドアーム進入回数総和に対するオープンアーム進入回数の割合)および迷路上総移動距離を求め、試験化合物の影響を評価した。
【0066】
溶媒投与時のラットのオープンアーム滞在時間、進入率および迷路上総移動距離はそれぞれ、21.6 ±7.4秒、15.5 ±3.0%、2521.97±95.34 cmであった。化合物(IC)を0.1 mg/kgの用量で投与したところ、ラットのオープンアーム滞在時間および進入率が有意に増加した(滞在時間:61.6±10.9秒P=0.01687、進入率:33.4±6.3%P=0.04759、Steel test。ラットの迷路上総移動距離は、化合物(IC)の投与によって影響されなかった(2414.83±102.13 cm)。
【0067】
化合物(IC)が上記試験で効果を示したことから、アデノシンA2A受容体に対し選択的な親和性を有する化合物(I)は全般性不安障害を含む不安障害の治療および/または予防に有用であると考えられた。
試験例8 ラット恐怖条件付けストレス反応(CFS)試験における化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の作用
本試験(日本薬理学雑誌, 113, p.113 (1999))では、過去の嫌悪体験に起因する心理的ストレスが生体に与える影響を、行動抑制(フリージング反応)または自律神経系の活動亢進(呼吸数、血圧の上昇)として測定することができる。
【0068】
試験には雄性SDラット(体重140.2〜320.0 g;日本チャールス・リバー株式会社)、およびコンテクシャルラーニング実験装置を用いた。実験装置は防音箱および防音箱内に設置された試験ケージ(20×20×25 cm)、ショックジェネレータ、制御装置、外部モニタおよびPC解析システムより構成される。試験ケージ床には1 cm間隔でステンレス棒が配置されており、ショックジェネレータを介してプログラムのコマンドからスクランブル型の電流を流すことができる。防音箱内部にはスピーカーが設置されており、制御装置を介して専用プログラムのコマンドから65 dBのブザー音を提示することができる。試験ケージ内における動物の行動は、防音箱の天井に設置されたCCDカメラにより記録した。2秒以上連続する不動状態をフリージングと定義し、(フリージング発現時間 / 測定時間)×100をフリージング発現率とした。条件付け試行は以下の条件とした。ラットを5分間試験ケージに入れ、床グリッドから電気刺激(0.3 mA×5 s)を合計6回(60、90、120、150、180、および210秒後)負荷した。また、10秒間のブザー音(10 kHz、65 dB)を各電気刺激の5秒前から提示した。再生試行は以下の条件とした。条件付け試行の翌日、溶媒(0.5 w/v% MC溶液)または試験化合物(0.5 w/v% MC溶液の懸濁液、ラット体重100gあたり0.5 mL投与となるように調製したもの)の経口投与60分後、5分間ラットを試験ケージに入れた。前日と同一のスケジュールでブザー音のみを6回提示し、ラットがフリージング反応を示す時間を測定した。試験の5分間を、環境暴露直後からブザー提示まで(pre-tone period;0-1分)、ブザー提示中(with-tone period;1-4分)およびブザー提示後(post-tone period;4-5分)に分け、それぞれのフリージング発現率を比較した。
【0069】
化合物(IC)を0.3 mg/kgの用量で投与したところ、ブザー提示中のフリージング発現率が有意に低下した(溶媒投与群:90.2±2.6秒、化合物投与群:57.1±9.9秒 P=0.02867 Steel test)。また、ブザー提示終了後のフリージング発現率も有意に低下させた(溶媒投与群:59.8±9.6秒、化合物投与群:23.4±8.1秒 P=0.01559 Dunnett test)。
従って、アデノシンA2A受容体に対し選択的な親和性を有する化合物(I)は心理的ストレス誘発不安障害(心的外傷後ストレス障害)を含む不安障害の治療および/または予防に有用であると考えられた。
【0070】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが望ましい。また、それら医薬製剤は、動物または人に使用されるものである。
本発明に係わる医薬製剤は、活性成分として化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を単独で、または任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬学的に許容される一種またはそれ以上の担体(例えば、希釈剤、溶剤、賦形剤など)と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0071】
投与経路としては、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口または、例えば静脈内、経皮などの非経口をあげることができる。
投与形態としては、例えば錠剤、注射剤、外用剤などがあげられる。
経口投与に適当な、例えば錠剤などは、乳糖などの賦形剤、澱粉などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤などを用いて製造できる。
【0072】
非経口投与に適当な、例えば注射剤などは、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合液などの希釈剤または溶剤などを用いて製造できる。
外用剤に適当な剤型としては、特に限定されるものではなく、例えば軟膏剤、クリーム剤、リニメント剤、ローション剤、パップ剤、プラスター剤、テープ剤などがあげられる。例えば、軟膏剤、クリーム剤などは、例えば白色ワセリンなどの基剤に活性成分を溶解または混合分散して製造できる。
【0073】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度などにより異なるが、通常経口の場合、成人一人あたり、0.01〜1000 mg、好ましくは0.05〜100 mgの範囲で、1日1回ないし数回投与する。静脈内投与などの非経口投与の場合、通常成人一人あたり0.001〜1000 mg、好ましくは0.01〜100 mgを1日1回ないし数回投与する。経皮投与の場合、通常化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を0.001〜10%含有する外用剤を1日1回ないし数回塗布投与する。しかしながら、これら投与量および投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
【0074】
本発明の不安障害の治療および/または予防剤は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩とさらにそれ以外の1種またはそれ以上の他の医薬成分とを組み合わせて用いることもできる。
組み合わせて用いられる他の医薬成分としては、例えば抗不安作用を有する他の薬物などがあげられ、具体的には例えばブスピロン、セルトラリン、パロキセチン、ネファゾドン、フルキセチンなどのトリプタミン再取り込み阻害薬;ベンゾジアゼピンなどのGABA受容体アゴニスト(例えばジアゼパム、トフィソパム、アルプラゾラム、フルトパゼパムなど);ピバガビンなどのコルチコトロピン放出因子アンタゴニスト;アミスルプリドなどのMAO阻害剤などがあげられる。
【0075】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を上記の他の医薬成分と組み合わせて用いる場合、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩および他の医薬成分は、これらの成分が製剤として処方できる限り、ひとつの製剤としてでも複数の製剤の組み合わせてとしてでも、それを必要とする患者に投与することができ、2種類以上の製剤の組み合わせが好ましい。さらに、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩および他の医薬成分を複数の製剤の組み合わせとして使用または投与する場合、これらの製剤は、同時にまたは時間を置いて別々に使用または投与することができる。
【0076】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩および他の医薬成分を複数の製剤の組み合わせとして投与する場合、例えば化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含有する第1成分(a)と、他の医薬成分を含有する第2成分(b)とをそれぞれ別々に製剤化し、キットとして作成しておき、このキットを用いてそれぞれの成分を同時にまたは時間を置いて、同一対象に対して同一経路または異なった経路で投与することもできる。
【0077】
該キットとしては、例えば内容物と、保存する際に外部の温度や光による内容物の成分の変性、容器からの化学成分の溶出などがみられない容器であれば材質、形状などは特に限定されない2つ以上の容器(例えばバイアル、バッグなど)とからなり、内容物である上記第1成分と第2成分が別々の経路(例えばチューブなど)または同一の経路を介して投与可能な形態を有するものが用いられる。具体的には、錠剤、注射剤などのキットがあげられる。
【0078】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されることはない。
【実施例1】
【0079】
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。化合物(IA)40 g、乳糖286.8 gおよび馬鈴薯澱粉60 gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120 gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2 gを加えて混合し、径8 mmの杵をもった打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり有効成分20 mgを含有する)を得る。
【0080】
【表3】
【実施例2】
【0081】
実施例1と同様にして、以下の組成を有する錠剤を調製する。
【0082】
【表4】
【実施例3】
【0083】
実施例1と同様にして、以下の組成を有する錠剤を調製する。
【0084】
【表5】
【実施例4】
【0085】
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。化合物(IA)1 gを注射用蒸留水に添加して混合し、さらに塩酸および水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7に調整した後、注射用蒸留水で全量を1000 mLとする。得られた混合液をガラスバイアルに2 mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分2 mgを含有する)を得る。
【0086】
【表6】
【実施例5】
【0087】
実施例4と同様にして、以下の組成を有する注射剤を調製する。
【0088】
【表7】
【実施例6】
【0089】
実施例4と同様にして、以下の組成を有する注射剤を調製する。
【0090】
【表8】
【0091】
参考例1
化合物(IA)〜(ID)は、WO2005/063743に記載の方法に従って得た。
参考例2
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル)-6-ビニルピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IE))
工程1 6-クロロニコチン酸メチル(1.51 g, 8.79 mmol)をDMF(35 mL)に溶解し、ビニルトリブチルすず(3.32 mL, 11.4 mmol)、ジクロロビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(206 mg, 0.262 mmol)および塩化リチウム(554 mg, 13.1 mmol)を加えて100℃で2時間攪拌した。混合物を室温まで放冷後、フッ化カリウム水溶液を加え、セライトろ過し、残渣を酢酸エチルで洗浄した。得られたろ液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=70:30)で精製することにより、6-ビニルニコチン酸メチル(1.22 g, 85%)を無色透明油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 3.95 (s, 3H), 5.63 (dd, J = 1.1, 10.8 Hz, 1H), 6.35 (dd, J = 1.1, 17.4 Hz, 1H), 6.87 (dd, J = 10.8, 17.4 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.25 (dd, J = 2.1, 8.2 Hz, 1H), 9.15-9.18(m, 1H).
工程2 上記で得られた6-ビニルニコチン酸メチル(491 mg, 2.97 mmol)を50%メタノール水(8 mL)に溶解し、水酸化リチウム一水和物(276 mg, 6.57 mmol)を加えた後、室温で1時間攪拌した。混合物を0℃まで冷却後、3 mol/L塩酸(3 mL)を加えて析出した固体をろ取することにより、6-ビニルニコチン酸(309 mg, 70%)を白色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, δppm): 5.61 (dd, J= 1.5, 10.8 Hz, 1H), 6.37 (dd, J= 1.5, 17.4 Hz, 1H), 6.89 (dd, J= 10.8, 17.4 Hz, 1H), 7.62 (d, J= 8.2 Hz, 1H), 8.22 (dd, J = 2.2, 8.2 Hz, 1H), 9.01 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 13.35 (brs, 1H).
工程3 WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(301 mg, 1.08 mmol)をDMF (1.5 mL)に溶解し、EDC塩酸塩(412 mg, 2.15 mmol)、DMAP (66 mg, 0.54 mmol)および上記で得られた6-ビニルニコチン酸(306 mg, 1.65 mmol)を加え、50℃で5時間攪拌した。混合物を室温まで放冷後、水および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:50)で精製し、エタノール-水から再結晶することにより、化合物(IE) (1.22 g, 85%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 3.11-3.25 (m, 1H), 3.51 (ddd, J= 3.1, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 4.02-4.11 (m, 2H), 5.71 (dd, J = 0.8, 10.7 Hz, 1H), 6.43 (dd, J = 0.8, 17.5 Hz, 1H), 6.57 (dd, J = 1.7, 3.8 Hz, 1H), 6.90 (dd, J = 10.7, 17.5 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.58 (dd, J = 0.5, 1.7 Hz, 1H), 7.84 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 8.21 (dd, J = 2.4, 8.2 Hz, 1H), 9.13 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 9.84 (brs, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 410.
参考例3
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-2-(ピリジン-3-イル)アセトアミド(化合物(IF))
WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(105 mg, 0.377 mmol)をDMF (2.0 mL)に溶解し、EDC塩酸塩(421 mg, 2.20 mmol)、HOBt・一水和物(340 mg, 2.21 mmol)および3-ピリジル酢酸塩酸塩(370 mg, 2.14mmol)を加えて、80℃で終夜攪拌した。混合物を室温まで放冷後、水および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて析出した固体をろ取し、減圧乾燥した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:50)で精製し、エタノール-水から再結晶することにより、化合物(IF) (112 mg, 75%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 3.05-3.16 (m, 1H), 3.45 (ddd, J = 2.8, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 3.81 (s, 2H), 3.97-4.06 (m, 2H), 6.54 (dd, J= 1.8, 3.6 Hz, 1H), 7.32 (dd, J= 7.8, 4.8 Hz, 1H), 7.52-7.54 (m, 1H), 7.62-7.68 (m, 2H), 8.55-8.64 (m, 2H), 9.21 (s, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 398.
参考例4
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-1H-ピロール-2-カルボキサミド(化合物(IG))
参考例3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(100 mg, 0.360 mmol)およびピロール-2-カルボン酸(240 mg, 2.18 mmol)から、化合物(IG) (86.0 mg, 65%)を淡褐色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01(m, 4H), 3.08-3.24 (m, 1H), 3.47 (ddd, J = 2.7, 11.5, 11.5 Hz, 2H), 4.00-4.09 (m, 2H), 6.34-6.36 (m, 1H), 6.56 (dd, J= 1.8, 3.6 Hz, 1H), 6.86-6.88 (m, 1H), 7.06-7.10 (m, 1H), 7.55-7.57 (m, 1H), 7.71 (dd, J = 0.7, 3.7 Hz, 1H), 9.49 (brs, 1H), 9.65 (brs, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 372.
参考例5
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-1H-インドール-4-カルボキサミド(化合物(IH))
参考例3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(102 mg, 0.367 mmol)およびインドール-4-カルボン酸(331 mg, 2.05 mmol)から、化合物(IH) (97.6 mg, 63%)を乳白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 3.17-3.28 (m, 1H), 3.50 (ddd, J = 3.0, 11.2, 11.2 Hz, 2H), 4.02-4.11 (m, 2H), 6.58 (dd, J = 1.7, 3.5 Hz, 1H), 7.23-7.36 (m, 2H), 7.43-7.48 (m, 1H), 7.58-7.60 (m, 1H), 7.67 (dd, J = 4.2, 7.7 Hz, 2H), 7.76 (dd, J = 0.7, 3.5 Hz, 1H), 8.46 (brs, 1H), 9.70 (brs, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 422.
参考例6
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-2-(モルホリン-4-イルメチル)ピリジン-4-カルボキサミド(化合物(II))
工程1 WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(2.00 g, 7.19 mmol)をDMF (35 mL)に溶解し、EDC塩酸塩(5.50 g, 28.6 mmol)、HOBt・一水和物(4.40 g, 28.8 mmol)およびWO03/043636に記載の方法で得られる2-(クロロメチル)イソニコチン酸(4.93 g, 28.7 mmol)を加えて、80℃で終夜攪拌した。混合物を室温まで放冷後、水および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて析出した固体をろ取し、減圧乾燥した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:50)で精製することにより、2-(クロロメチル)-N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]ピリジン-4-カルボキサミド(700 mg, 23%)を淡褐色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.84-1.97 (m, 4H), 3.12-3.23 (m, 1H), 3.46-3.57 (m, 2H), 4.02-4.11 (m, 2H), 4.75 (s, 2H), 6.52 (dd, J = 3.6, 1.7 Hz, 1H), 7.50 (dd, J = 1.7, 0.7 Hz, 1H), 7.70 (dd, J = 5.1, 1.7 Hz, 1H), 7.79 (dd, J = 3.6, 0.7 Hz, 1H), 7.92-7.95 (m, 1H), 8.79 (dd, J = 5.1, 0.7 Hz, 1H).
工程2 工程1で得られた2-(クロロメチル)-N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]ピリジン-4-カルボキサミド(70.0 mg, 0.162 mmol)をアセトニトリル(2.0 mL)に溶解し、モルホリン(70.0μL, 2.15 mmol)を加え、加熱還流下で1時間攪拌した。混合物を室温まで放冷後、水および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=95:5)で精製し、ヘキサン-酢酸エチルでリスラリーすることにより、化合物(II) (54.6 mg, 71%)を淡褐色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 2.51-2.59 (m, 4H), 3.10-3.24 (m, 1H), 3.51 (ddd, J = 3.0, 11.3, 11.3 Hz, 2H), 3.75-3.82 (m, 6H), 4.01-4.13 (m, 2H), 6.59 (dd, J = 1.8, 3.6 Hz, 1H), 7.60 (dd, J = 0.7, 1.8 Hz, 1H), 7.69 (dd, J = 1.8, 5.1 Hz, 1H), 7.84 (dd, J = 0.7, 3.6 Hz, 1H), 7.93-7.95 (m, 1H), 8.82 (dd, J = 0.7, 5.1 Hz, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 483.
参考例7
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-2-メトキシメチルピリジン-4-カルボキサミド(化合物(IJ))
氷冷下、60%水素化ナトリウム(10.0 mg, 0.250 mmol)をDMF (1.0 mL)に溶解し、メタノール(110μL, 2.72 mmol)をゆっくりと滴下した後、0℃で10分間攪拌した。続いて、参考例6の工程1で得られた2-(クロロメチル)-N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]ピリジン-4-カルボキサミド(81.0 mg, 0.189 mmol)をDMF (1.0 mL)に溶解して、混合物にゆっくりと滴下した後、室温で5時間撹拌した。混合物に水および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:50)で精製し、エタノール-水から再結晶することにより、化合物(IJ) (45.0 mg, 56%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 3.14-3.23 (m, 1H), 3.52 (ddd, J = 3.0, 11.2, 11.2 Hz, 2H), 3.53 (s, 3H), 4.02-4.18 (m, 2H), 4.65 (s, 2H), 6.52 (dd, J = 1.8, 3.6 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 1.1 Hz, 1H), 7.71 (dd, J = 1.3, 5.1 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 7.85 (s, 1H), 8.77 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 10.41 (brs, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 428.
参考例8
2-エトキシメチル-N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]ピリジン-4-カルボキサミド(化合物(IK))
参考例7と同様にして、2-(クロロメチル)-N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]ピリジン-4-カルボキサミド(80.0 mg, 0.185 mmol)およびエタノール(200μL, 3.54 mmol)から、化合物(IK) (47.0 mg, 57%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.36 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.80-2.01 (m, 4H), 3.11-3.28 (m, 1H), 3.51 (ddd, J= 3.2, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 3.72 (q, J= 7.1 Hz, 2H), 4.00-4.12 (m, 2H), 4.73 (s, 2H), 6.58 (dd, J = 1.7, 3.6 Hz, 1H), 7.58 (dd, J = 0.7, 1.7 Hz, 1H), 7.72 (dd, J = 1.7, 5.0Hz, 1H), 7.84 (dd, J = 0.7, 3.6 Hz, 1H), 7.92 (dd, J = 0.7, 1.7Hz, 1H), 8.80 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 9.95 (brs, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 442.
参考例9
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-2-イソプロポキシメチルピリジン-4-カルボキサミド(化合物(IL))
参考例7と同様にして、2-(クロロメチル)-N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]ピリジン-4-カルボキサミド(80.1 mg, 0.185 mmol)および2-プロパノール(350μL, 4.60 mmol)から、化合物(IL) (30.2 mg, 36%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.31 (d, J = 6.0 Hz, 6H), 1.80-2.01 (m, 4H), 3.15-3.22 (m, 1H), 3.51 (ddd, J= 2.8, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 3.78-3.86 (qq, J = 6.0, 6.0 Hz, 1H), 4.01-4.11 (m, 2H), 4.73 (s, 2H), 6.58 (dd, J= 1.8, 3.6 Hz, 1H), 7.59 (dd, J= 0.6, 1.8 Hz, 1H), 7.71 (dd, J= 1.5, 5.1 Hz, 1H), 7.85 (dd, J= 0.4, 3.5 Hz, 1H), 7.93 (d, J = 0.6 Hz, 1H), 8.79 (dd, J = 0.4, 5.1 Hz, 1H), 9.91 (brs, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 456.
参考例10
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]フロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキサミド(化合物(IM))
WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(125 mg, 0.450 mmol)をDMF (2.2 mL)に溶解し、EDC塩酸塩(173 mg, 0.900 mmol)、HOBt・一水和物(138 mg, 0.900 mmol)およびテトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)、第35巻、p.9355 (1994年)に記載の方法で得られるフロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸(147 mg, 0.900 mmol)を加えて、50℃で2時間、次いで70℃で1時間攪拌した。さらに混合物に、EDC塩酸塩(173 mg, 0.900 mmol)、HOBt・一水和物(138 mg, 0.900 mmol)およびフロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸(147 mg, 0.900 mmol)を加えて、70℃で1.5時間攪拌した。混合物を水−飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1:1)に加えて析出した固体を濾取し、乾燥した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:50)で精製し、エタノール-水から再結晶することにより、化合物(IM) (81.2 mg, 43%)を得た。
1H NMR (DMSO-d6, δppm): 1.56-1.77 (m, 4H), 3.16-3.26 (m, 1H), 3.37-3.47 (m, 2H), 3.87-3.92 (m, 2H), 6.71 (dd, J = 1.9, 3.5 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.45 (dd, J = 0.9, 3.5 Hz, 1H), 7.91 (dd, J = 0.9, 1.9 Hz, 1H), 8.27 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.86 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 9.04 (d, J = 2.4 Hz, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 424.
参考例11
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-2-(ピリジン-2-イル)アセトアミド(化合物(IN))
参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(154 mg, 0.553 mmol)および2-ピリジル酢酸塩酸塩(196 mg, 1.13 mmol)から、化合物(IN) (125 mg, 58%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.78-1.95 (m, 4H), 3.01-3.21 (m, 1H), 3.47 (ddd, J = 2.6, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 3.98-4.09 (m, 2H), 4.03 (s, 2H), 6.57 (dd, J= 1.8, 3.6 Hz, 1H), 7.25-7.34 (m, 2H), 7.59 (dd, J = 0.7, 1.8 Hz, 1H), 7.70 (dd, J = 0.7, 3.5 Hz, 1H), 7.74 (ddd, J = 1.8, 7.7, 7.7 Hz, 1H), 8.69-8.73 (m, 1H), 12.09 (brs, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 398.
参考例12
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-6-メトキシピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IO))
参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(150 mg, 0.539 mmol)および6-メトキシニコチン酸(101 mg, 0.659 mmol)から、化合物(IO) (121 mg, 54%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 3.10-3.25 (m, 1H), 3.51 (ddd, J = 2.9, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 4.02-4.11 (m, 2H), 4.04 (s, 3H), 6.55 (dd, J= 1.7, 3.5 Hz, 1H), 6.87 (d, J= 8.8 Hz, 1H), 7.53-7.57 (m, 1H), 7.83 (dd, J = 0.6, 3.5 Hz, 1H), 8.10 (dd, J = 2.6, 8.8 Hz, 1H), 8.77 (dd, J = 0.6, 2.6 Hz, 1H), 9.93 (brs, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 414.
参考例13
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]キノリン-3-カルボキサミド(化合物(IP))
参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(151 mg, 0.543 mmol)およびキノリン-3-カルボン酸(142 mg, 0.820 mmol)から、化合物(IP) (178 mg, 76%)を淡黄色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 3.15-3.25 (m, 1H), 3.52 (ddd, J = 2.9, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 4.06-4.10 (m, 2H), 6.47 (dd, J = 1.7, 3.5 Hz, 1H), 7.47 (dd, J = 0.7, 1.6 Hz, 1H), 7.66-7.74 (m, 2H), 7.87-7.95 (m, 2H), 8.20 (dd, J = 0.9, 8.4 Hz, 1H), 8.71 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 9.43 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 10.55 (s, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 434.
参考例14
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-5,6-ジメチルピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IQ))
工程1 ジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(J. Heterocyclic Chem.)、24巻、p. 351 (1987年)に記載の方法で得られる5,6-ジメチルピリジン-3-カルボニトリル(502 mg, 3.79 mmol)を70%エタノール水(4.5 mL)に懸濁し、水酸化ナトリウム(444 mg, 11.1 mmol)を加えて、加熱還流下で3時間攪拌した。混合物を0℃に氷冷し、6 mol/L塩酸(1.9 mL)を加えた。減圧下濃縮して得られる残渣をクロロホルム-メタノールに懸濁した。無機塩をろ過で取り除き、得られたろ液を減圧下濃縮することにより5,6-ジメチルピリジン-3-カルボン酸(569 mg, 99%)を淡桃色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, δppm): 2.23 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 7.83 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 8.64 (d, J = 1.7 Hz, 1H).
工程2 参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(151 mg, 0.550 mmol)および上記で得られた5,6-ジメチルピリジン-3-カルボン酸(166mg, 1.10 mmol)から、化合物(IQ) (112 mg, 49%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 2.34 (s, 3H), 2.59 (s, 3H), 3.12-3.23 (m, 1H), 3.51 (ddd, J= 2.9, 11.3, 11.3 Hz, 2H), 4.04-4.09 (m, 2H), 6.49 (dd, J = 2.0, 3.6 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.79 (dd, J = 0.5, 3.5 Hz, 1H), 7.89 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 8.86 (d, J= 2.0 Hz, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 412.
参考例15
5-エチル-N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]ピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IR))
参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(151 mg, 0.543 mmol)および5-エチルニコチン酸(128 mg, 0.814 mmol)から、化合物(IR) (145 mg, 65%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.32 (t, J= 7.6 Hz, 3H), 1.83-2.01 (m, 4H), 2.77 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 3.11-3.26 (m, 1H), 3.51 (ddd, J = 2.9, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 4.01-4.11 (m, 2H), 6.54 (dd, J = 1.8, 3.6 Hz, 1H), 7.51-7.53 (m, 1H), 7.80 (dd, J= 0.7, 3.6 Hz, 1H), 8.03-8.06 (m, 1H), 8.70 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.99 (d, J= 2.0 Hz, 1H), 10.24 (brs, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 412.
参考例16
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-7,8-ジヒドロ-5H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IS))
工程1 水素化ナトリウム(2.06 g, 51.5 mmol)をジエチルエーテル(40 mL)に懸濁し、-5℃でメタノール(2.1 mL, 51.8 mmol)をゆっくり加えた。続いて混合物にエタノール(6 mL)を加え、室温で5分間攪拌し、0℃に冷却した後、テトラヒドロ-4H-ピラン-4-オン(4.61 mL, 49.9 mmol)およびギ酸エチル(4.11 mL, 51.1 mmol)の混合液をゆっくり加えた。混合物を室温で2時間攪拌した後、生成物を水(30 mL)で抽出した(水溶液A)。
【0092】
続いて、酢酸(1.5 mL)を水(3.5 mL)に溶解し、ピペリジン(2.6 mL)を加えて調製したピペリジン酢酸塩水溶液および2-シアノアセタミド(4.62 g, 54.9 mmol)を上記の水溶液Aに加え、混合物を加熱還流下で4時間攪拌した。混合物に酢酸(3.6 mL)を加え、0℃に冷却後、析出した固体をろ取することにより、2-オキソ-1,5,7,8-テトラヒドロ-2H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(1.72 g, 20%)を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 2.89 (t, J= 5.6 Hz, 2H), 3.99 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 4.54 (s, 2H), 7.59 (s, 1H). APCIMS m/z: [M-H]- 175.
工程2 工程1で得られる2-オキソ-1,5,7,8-テトラヒドロ-2H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(2.50 g, 14.4 mmol)を塩化ホスホリル(20 mL)に溶解し、加熱還流下で4時間攪拌した。混合物を室温まで放冷後、0℃に冷却した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にゆっくり加えてクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:50)で精製することにより、2-クロロ-7,8-ジヒドロ-5H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(1.85 g, 66%)を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 3.07 (t, J= 5.8 Hz, 2H), 4.07 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 4.75-4.76 (m, 2H), 7.63 (s, 1H).
工程3 工程2で得られる2-クロロ-7,8-ジヒドロ-5H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(1.77 g, 9.09 mmol)をエタノール(30 mL)に溶解し、酢酸(9 mL)および亜鉛(2.60 g)を加えて加熱還流下で4時間攪拌した。混合物を室温まで放冷後、セライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮して得られる残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:50)で精製することにより、7,8-ジヒドロ-5H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(1.06 g, 73%)を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 3.10 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 4.10 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 4.79 (s, 2H), 7.59 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 8.71 (d, J = 1.7 Hz, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 161.
工程4 参考例14の工程1と同様の方法にして、上記で得られた7,8-ジヒドロ-5H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(609 mg, 3.80 mmol)から、7,8-ジヒドロ-5H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボン酸(318 mg, 47%)を白色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, δppm): 2.86 (t, J= 5.8 Hz, 2H), 3.95 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 4.70 (s, 2H), 7.80 (d, J= 1.7 Hz, 1H), 8.76(d, J = 1.7 Hz, 1H). ESIMS m/z: [M-H]- 178.
工程5 参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(152 mg, 0.546 mmol)および上記で得られる7,8-ジヒドロ-5H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボン酸(432 mg, 2.00 mmol)から、化合物(IS) (178 mg, 74%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 3.10 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.13-3.24 (m, 1H), 3.51 (ddd, J = 2.8, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 4.03-4.14 (m, 4H), 4.79 (s, 2H), 6.50 (dd, J= 1.7, 3.6 Hz, 1H), 7.46 (dd, J= 0.6, 1.7 Hz, 1H), 7.78 (dd, J= 0.6, 3.6 Hz, 1H), 7.82 (d, J= 2.2 Hz, 1H), 8.94 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 10.58 (s, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 440.
参考例17
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IT))
工程1 ジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(J. Heterocyclic Chem.)、24巻、p. 351 (1987年)に記載の方法で得られる6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン-3-カルボニトリル(901 mg, 6.25 mmol)を6 mol/L塩酸(9 mL)に懸濁し、加熱還流下で5時間攪拌した。混合物を0℃に氷冷し、析出した固体をろ取することにより、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン-3-カルボン酸塩酸塩(543 mg, 44%)を淡褐色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, δppm): 2.16 (tt, J= 7.4, 7.8 Hz, 2H), 3.02 (t, J= 7.4 Hz, 2H), 3.10 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 8.34 (s, 1H), 8.92 (s, 1H).
工程2 参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(152 mg, 0.546 mmol)および上記で得られた6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン-3-カルボン酸塩酸塩(165 mg, 0.827 mmol)から、化合物(IT) (134 mg, 58%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.78-2.01 (m, 4H), 2.16-2.28 (m, 2H), 3.01 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.10 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 3.11-3.25 (m, 1H), 3.51 (ddd, J = 3.0, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 4.00-4.10 (m, 2H), 6.52 (dd, J = 1.8, 3.6 Hz, 1H), 7.51 (dd, J = 0.7, 1.7 Hz, 1H), 7.80 (dd, J = 0.7, 3.6 Hz, 1H), 7.95-8.00 (m, 1H), 8.87-8.91 (m, 1H), 10.20 (brs, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 424.
参考例18
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-1H-インドール-2-カルボキサミド(化合物(IU))
参考例3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(102 mg, 0.366 mmol)およびインドール-2-カルボン酸(350 mg, 2.17 mmol)から、化合物(IU) (97.5 mg, 63%)を淡褐色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 3.10-3.24 (m, 1H), 3.50 (ddd, J = 2.7, 11.5, 11.5 Hz, 2H), 4.01-4.11 (m, 2H), 6.59 (dd, J = 1.7, 3.5 Hz, 1H), 7.14 (dd, J = 0.9, 2.2 Hz, 1H), 7.19-7.25 (m, 1H), 7.36-7.43 (m, 1H), 7.46-7.52 (m, 1H), 7.60 (dd, J = 0.7, 1.7 Hz, 1H), 7.72-7.77 (m, 1H), 7.83 (dd, J = 0.7, 3.5 Hz, 1H), 9.21 (brs, 1H), 9.66 (brs, 1H). APCIMS m/z: [M+H]+ 422.
参考例19
6-エチル-N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]ピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IV))
参考例2で得られる化合物(IE) (90.0 mg, 0.220 mmol)をアルゴン雰囲気下でエタノール(10 mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(10%-Pd/C;含水)(88.9 mg)を加え、次いで水素雰囲気下で、混合物を室温で終夜攪拌した。混合物をセライトろ過した後、ろ液を減圧濃縮して得られる残渣をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:70)で精製し、エタノール-水から再結晶することにより、化合物(IV) (70.0mg, 77%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.36 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 1.80-2.01 (m, 4H), 2.94 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 3.11-3.27 (m, 1H), 3.51 (ddd, J = 3.0, 11.3, 11.3 Hz, 2H), 3.99-4.13 (m, 2H), 6.54 (dd, J = 1.7, 3.5 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.52 (dd, J = 0.7, 1.7 Hz, 1H), 7.81 (dd, J = 0.7, 3.6 Hz, 1H), 8.15 (dd, J = 2.2, 8.2 Hz, 1H), 9.08 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 10.13 (brs, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 412.
参考例20
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-6-プロピルピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IW))
工程1 参考例2の工程1と同様にして、6-クロロニコチン酸メチル(862 mg, 6.48 mmol)およびアリルトリブチルすず(2.20 mL, 7.09 mmol)から、6-(1-プロペニル)ニコチン酸メチル(327 mg, 37%)を無色透明油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.97 (dd, J= 1.7, 6.8 Hz, 3H), 3.95 (s, 3H), 6.55 (dq, J = 1.7, 15.7 Hz, 1H), 6.92 (dq, J = 6.8, 15.7 Hz, 1H), 7.25-7.30 (m, 1H), 8.19 (dd, J = 2.2, 8.2 Hz, 1H), 9.11 (dd, J = 0.5, 2.2 Hz, 1H).
工程2 参考例2の工程2と同様にして、上記で得られる6-(1-プロペニル)ニコチン酸メチル(326 mg, 1.84 mmol)から、6-(1-プロペニル)ニコチン酸(251 mg, 84%)を乳白色結晶として得た。
1H NMR (DMSO-d6, δppm):1.91 (dd, J = 1.8, 6.8 Hz, 3H), 6.58 (dq, J = 1.8, 15.5 Hz, 1H), 6.91 (dq, J = 6.8, 15.5 Hz, 1H), 7.48 (dd, J = 0.5, 8.3 Hz, 1H), 8.15 (dd, J = 2.2, 8.3 Hz, 1H), 8.95 (dd, J = 0.5, 2.2 Hz, 1H), 13.24 (brs, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 164.
工程3 参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(257 mg, 0.908 mmol)および上記で得られる6-(1-プロペニル)ニコチン酸(251 mg, 1.26 mmol)から、N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-6-(1-プロペニル)ピリジン-3-カルボキサミド(125 mg, 33%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.82-1.96 (m, 4H), 2.01 (dd, J = 1.4, 6.8 Hz, 3H), 3.12-3.23 (m, 1H), 3.52 (ddd, J = 3.0, 11.2, 11.2 Hz, 2H), 4.02-4.11 (m, 2H), 6.54-6.62 (m, 2H), 7.00 (dd, J = 6.8, 15.5 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.55 (dd, J = 0.8, 1.6 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 8.15 (dd, J = 2.4, 8.3 Hz, 1H), 9.08 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 10.00 (brs, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 424.
工程4 参考例19と同様にして、上記で得られたN-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-6-(1-プロペニル)ピリジン-3-カルボキサミド(125 mg, 0.296 mmol)から、標記化合物(IW) (96.0 mg, 76%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.00 (t, J= 7.3 Hz, 3H), 1.75-1.97 (m, 6H), 2.88 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.13-3.24 (m, 1H), 3.51 (ddd, J = 3.1, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 4.02-4.11 (m, 2H), 6.55 (dd, J = 1.8, 3.6 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.53-7.55 (m, 1H), 7.81 (d, J= 3.6 Hz, 1H), 8.15 (dd, J = 2.5, 8.2 Hz, 1H), 9.09 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 10.14 (s, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 426.
参考例21
N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IX))
工程1 参考例16の工程1と同様にして、テトラヒドロ-4H-チオピラン-4-オン(5.00 g, 43.0 mmol)から、2-オキソ-1,5,7,8-テトラヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(3.06 g, 37%)を淡黄色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 2.93 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.11 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.58 (s, 2H), 7.67 (s, 1H), 13.4 (brs, 1H).
工程2 参考例16の工程2と同様にして、上記で得られた2-オキソ-1,5,7,8-テトラヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(2.78 g, 14.4 mmol)から、2-クロロ-7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(1.75 g, 58%)を得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 3.01 (t, J= 6.1 Hz, 2H), 3.27 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.78 (s, 2H), 7.71 (s, 1H).
工程3 参考例16の工程3と同様にして、上記で得られた2-クロロ-7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(1.75 g, 8.31 mmol)から、7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(804 mg, 55%)を得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 3.04 (t, J= 6.2 Hz, 2H), 3.30 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.81 (s, 2H), 7.68 (d, J= 2.0 Hz, 1H), 8.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H).
工程4 参考例17の工程1と同様にして、上記で得られる7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボニトリル(874 mg, 4.96 mmol)から、7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボン酸塩酸塩(901 mg, 78%)を得た。
1H NMR (DMSO-d6, δppm): 3.01 (t, J= 6.2 Hz, 2H), 3.24 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.96 (s, 2H), 8.27-8.36(m, 1H), 8.92 (d, J = 1.8 Hz, 1H). ESIMS m/z: [M-H]- 194.
工程5 参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(70.7 mg, 0.254 mmol)および上記で得られた7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-b]ピリジン-3-カルボン酸塩酸塩(90.9 mg, 0.392 mmol)から、化合物(IX) (79.0 mg, 68%)を淡褐色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.81-2.01 (m, 4H), 3.05 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.15-3.22 (m, 1H), 3.33 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.51 (ddd, J = 2.9, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 3.83 (s, 2H), 4.03-4.10 (m, 2H), 6.53 (dd, J= 1.8, 3.5 Hz, 1H), 7.51 (dd, J= 0.7, 1.8 Hz, 1H), 7.81 (dd, J= 0.7, 3.5 Hz, 1H), 7.94-7.96 (m, 1H), 8.95 (d, J = 2.2 Hz, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 456.
参考例22
5-アセチル-N-[4-(2-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-6-メチルピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IY))
工程1 参考例2の工程2と同様にして、シンセシス(Synthesis)、5巻、p.400 (1986年)に記載の方法で得られる5-アセチル-6-メチルピリジン-3-カルボン酸エチル(561 mg, 2.71 mmol)から、5-アセチル-6-メチルピリジン-3-カルボン酸(462mg, 定量的)を黄色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, δppm): 2.63 (s, 3H), 2.66 (s, 3H), 8.54 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 9.01 (d, J = 2.0 Hz, 1H).
工程2 WO2005/063743に記載の2-アミノ-4-(2-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(71.2 mg, 0.256 mmol)をDMF (0.5 mL)に溶解し、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBOP) (262 mg, 0.510 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA) (150μL, 0.860 mmol)および上記で得られた5-アセチル-6-メチルピリジン-3-カルボン酸(93.2 mg, 0.520 mmol)を加えた後、80℃で終夜攪拌した。混合物を室温まで放冷後、水および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:50)で精製し、エタノール-水でリスラリーすることにより、化合物(IY) (87.4 mg, 77%)を淡黄色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.81-2.01 (m, 4H), 2.67 (s, 3H), 2.86 (s, 3H), 3.13-3.23 (m, 1H), 3.51 (ddd, J = 2.9, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 4.03-4.10 (m, 2H), 6.56 (dd, J = 1.7, 3.5 Hz, 1H), 7.55 (dd, J = 0.6, 1.7 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 0.6, 3.5 Hz, 1H), 8.54 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 9.11 (d, J= 2.4 Hz, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 440.
参考例23
5-エチル-N-[4-(3-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]ピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IZ))
参考例2の工程3と同様にして、WO2005/063743に記載の方法で得られる2-アミノ-4-(3-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(151 mg, 0.541 mmol)および5-エチルニコチン酸(249 mg, 1.64 mmol)から、化合物(IZ) (177 mg, 79%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.34 (t, J= 7.6 Hz, 3H), 1.80-2.01 (m, 4H), 2.80 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 3.11-3.18 (m, 1H), 3.51 (ddd, J = 2.8, 11.4, 11.4 Hz, 2H), 4.01-4.10 (m, 2H), 7.01 (dd, J = 0.7, 1.8 Hz, 1H), 7.45-7.48 (m, 1H), 8.10-8.13 (m, 1H), 8.63 (dd, J = 0.7, 1.5 Hz, 1H), 8.71-8.76 (m, 1H), 9.02-9.05 (m, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 412.
参考例24
N-[4-(3-フリル)-5-(テトラヒドロピラン-4-カルボニル)チアゾール-2-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン-3-カルボキサミド(化合物(IAA))
参考例2の工程3と同様にして、2-アミノ-4-(3-フリル)チアゾール-5-イル=テトラヒドロピラン-4-イル=ケトン(120 mg, 0.432 mmol)および6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン-3-カルボン酸塩酸塩(172 mg, 0.870 mmol)から、化合物(IAA) (71.1 mg, 39%)を白色結晶として得た。
1H NMR (CDCl3, δppm): 1.80-2.01 (m, 4H), 2.18-2.30 (m, 2H), 3.03-3.20 (m, 5H), 3.52 (ddd, J = 2.9, 11.3, 11.3 Hz, 2H), 4.01-4.10 (m, 2H), 7.03 (dd, J = 0.6, 2.0 Hz, 1H), 7.48 (dd, J = 1.7, 1.7 Hz, 1H), 8.08-8.10 (m, 1H), 8.68-8.70 (m, 1H), 8.95-8.97 (m, 1H). ESIMS m/z: [M+H]+ 424.
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えばパニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症、全般性不安障害などの不安障害の治療および/または予防に利用することができる。