(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
本発明は、被験体に有効量のβ−ターンペプチド模倣環状化合物を投与することを含む、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置する方法を提供する。1つの実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物は、13〜17個の炭素原子の大環状環を含む。より特定的な実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物は、構造式(I)により表され:
【化1】
式中、R
1およびR
3は、水素、C
1〜C
6アルキル、アリール、またはいずれかの鏡像異性配置における、20のタンパク質−アミノ酸において見られるアミノ酸側鎖置換基から独立して選択され;R
2およびR
4は独立して水素またはC
1〜C
6アルキルであり;あるいはR
1およびR
2はそれらに結合している炭素原子と共に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基を形成し;またはR
3およびR
4はそれらに結合している炭素原子と共にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基を形成し;R
5およびR
6は水素またはC
1〜C
6アルキルであり;Yは水素または1つもしくは2つの芳香族置換基であり;XはO、N、S、P、Se、C、1〜6個の炭素原子のアルキレン、SO、SO
2またはNHから選択され;nは0、1、2、3、4または5であり;リンカーはホモ二官能性化合物との反応により式(I)の化合物の二量体を形成するのに効果的な結合基である。好適なリンカー基としては、NH
2、OH、SH、COOH、CH
3CO、CHO、およびNH−CH
2−COOHが挙げられるが、それらに限定されない。
【0006】
本発明の別の実施形態では、XはO、SまたはNHであり、R
1、R
3、R
5およびR
6はそれぞれ水素原子であり、大環状環は14、15または16の環原子を有する。
【0007】
別の実施形態では、R
1およびR
3は一連の異なるタンパク新生アミノ酸側鎖から誘導される。
【0008】
本発明の別の実施形態では、XはO、SまたはNHである。
【0009】
特定の実施形態では、式Iのβ−ターンペプチド模倣環状化合物は下記式またはその薬学的に許容される塩より表される。
【化2】
上記化合物は、本明細書ではD3と称する。D3はTrkモジュレータ活性を有することが証明されている。
【0010】
別の実施形態では、β−ターン環状化合物は下記式で表される化合物、またはそれらのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
および
【化16】
これらの化合物はTrkモジュレータ活性を有することができる。
【0011】
1つの実施形態では、本発明は被験体に有効量の、下記構造式(D3):
【化17】
により表されるβ−ターンペプチド模倣環状化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置する方法に関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は被験体に有効量の、式3Aa:
【化18】
により表されるβ−ターンペプチド模倣環状化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置する方法に関する。
【0013】
さらに別の実施形態では、本発明は被験体に有効量の、式3Ak:
【化19】
により表されるβ−ターンペプチド模倣環状化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置する方法に関する。
【0014】
本発明はさらに、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置するための薬剤の製造のための本明細書で記載した化合物(例えば、β−ターンペプチド模倣環状化合物)の使用に関する。
【0015】
本発明はさらに、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置するために有用な医薬組成物に関する。医薬組成物は本明細書で記載される化合物(例えば、β−ターンペプチド模倣環状化合物)および薬学的に許容される担体を含む。
【0016】
前記は、添付の図面において説明されるように本発明の例示的な実施形態の下記のより特定的な記載から明らかになるであろう。図面では、同様の参照文字は異なる図面を通して同じ部品を示す。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに、本発明の実施形態を説明することに重点が置かれている。
【0017】
図面およびサポート実験の説明において、化合物IDは接頭語MIMを含む。接頭語を有する化合物IDは接頭語を有さない化合物IDと同じである。例えば、MIM−D3およびD3は同じ化合物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、被験体にβ−ターンペプチド模倣環状化合物を投与することを含む、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置する方法に関する。本明細書では、「β−ターンペプチド模倣環状化合物」は、ニューロトロフィン受容体リガンド(例えば、NGF、NT−3、NT−4およびBDNF)のβ−ターン領域を模倣する環状化合物を示す。特定の実施形態では、本発明のβ−ターンペプチド模倣環状化合物は、ニューロトロフィンチロシンキナーゼ(Trk)受容体モジュレータとすることができる。別の特定の実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物はp75受容体モジュレータとすることができる。さらに別の実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物はp75受容体モジュレータおよびTrk受容体モジュレータの両方とすることができる。
【0020】
1つの実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物は構造式Iにより表される。特定の実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物は、化合物D3または化合物D3の誘導体である。
【0021】
別の実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物は、1Ad、3Aa、3Ak、3Ba、3Bg、3Bi、3Ca、3Ce、3Cg、3Ck、1Aa、1Ba、3Acおよび3Aeからなる群より選択される化合物とすることができる。
【0022】
本発明のβ−ターンペプチド模倣環状化合物はTrk受容体モジュレータ化合物またはp75受容体モジュレータとすることができるが、網膜色素変性症の処置におけるβ−ターンペプチド模倣環状化合物の有用性は、TrkB受容体またはその調節が網膜色素変性症の処置において有用である任意の他の受容体の調節などの他の活性に依存することがある。
【0023】
本明細書では、「Trk受容体モジュレータ化合物」は、TrkA受容体作動薬、TrkC受容体作動薬、またはTrkA受容体作動薬およびTrkC受容体作動薬の両方である化合物である。
【0024】
本明細書では、「調節する」または「モジュレータ」は、受容体を刺激する、またはそれに拮抗することを示す。
【0025】
本明細書では「p75受容体モジュレータ」はp75受容体作動薬または拮抗薬である。
【0026】
<ニューロトロフィンおよびニューロトロフィン受容体>
ニューロトロフィン(NTF)は、全ての脊椎動物種においてニューロンの増殖、生存および分化を制御する二量体タンパク質ファミリーである。NTFは、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)およびニューロトロフィン−4(NT−4)を含む。これらのNTFは2つの膜貫通受容体、高親和性受容体ファミリーチロシンキナーゼ(Trk)(TrkA、TrkBおよびTrkC)(K
d=10〜100pM)およびp75受容体(K
d=1nM)に結合する。Trkファミリー受容体リガンドはかなり選択的である(例えば、NGFはTrkAに結合し、BDNFはTrkBに結合し、NT−3は主にTrkCに結合する)。
【0027】
ニューロトロフィンおよびそれらの受容体は、結膜杯細胞(CGC)において同定された(Rios, J. D., et al., “Role of Neurotrophins and Neurotrophin Receptors in Rat Conjunctival Goblet Cell Secretion and Proliferation, Ophthalmology & Visual Science, 48: 1543−1551 (2007))。CGCは涙膜中の大量の可溶性ムチンの主供給源である。これらのムチンは、外因性作用物質(細菌性または化学性)から角膜および結膜を保護する物理的かつ化学的なバリアを提供し、明瞭な視覚のために必要な滑らかな屈折面の生成を促す。
【0028】
<β−ターンペプチド模倣環状化合物>
1つの実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物は13〜17個の炭素原子の大環状環を含む。より特徴的な実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物は構造式(I)により表され:
【化20】
式中、R
1およびR
3は、水素、C
1〜C
6アルキル、アリールまたはいずれかの鏡像異性配置における20のタンパク質−アミノ酸において見られるアミノ酸側鎖置換基から独立して選択され;R
2およびR
4は独立して水素またはC
1〜C
6アルキルであり;あるいはR
1およびR
2はそれらに結合している炭素原子と共に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基を形成し;またはR
3およびR
4はそれらに結合している炭素原子と共にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基を形成し;R
5およびR
6は水素またはC
1〜C
6アルキルであり;Yは水素または1つもしくは2つの芳香族置換基であり;XはO、N、S、P、Se、C、1〜6個の炭素原子のアルキレン、SO、SO
2またはNHから選択され;nは0、1、2、3、4または5であり;LINKERはホモ二官能性化合物との反応により式(I)の化合物の二量体を形成するのに効果的な結合基である。好適なLINKER基としては、NH
2、OH、SH、COOH、CH
3CO、CHO、およびNH−CH
2−COOHが挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
20のアミノ酸側鎖置換基としては、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、およびチロシンの側鎖が挙げられる。例えば、グルタミン酸の側鎖は、
【化21】
である。
【0030】
本発明の別の実施形態では、XはO、SまたはNHであり、R
1、R
3、R
5およびR
6はそれぞれ水素原子であり、大環状環は14、15または16個の環原子を有する。
【0031】
別の実施形態では、R
1およびR
3は一連の異なるタンパク質アミノ酸側鎖から誘導される。
【0032】
本発明の別の実施形態では、XはO、SまたはNHである。
【0033】
特定の実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物はD3(Maliartchouk et al, Mol Pharmcol 57(2):385−391, 2000(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)およびUS 6,881,719号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、またはD3の誘導体である。多くのD3の誘導体および式Iの他の化合物が、本発明の方法において使用するために想定され、ビオチン化形態のような単純な修飾体、および2つの単位が二量体により結合された分子を含む。他のD3誘導体および式Iの他の化合物は、20のタンパク質−アミノ酸において見られるアミノ酸側鎖置換基を有する側鎖R
1〜R
6を含む。
【0034】
タンパク質アミノ酸(例えば、Arg、Trp、His)に典型的な側鎖は、容易に生成されるD3誘導体および式Iの他の化合物である様々な構造の形成/設計を可能にし、多くの型の官能基を含むことができる。
【0035】
1または2以上の置換基Yは、水素または1つもしくは2つの芳香族置換基、例えば、ニトロ、アミノ、ハロ、アルキル、例えば1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子のアルキル、アリール、例えばフェニルまたはナフチルであってもよい。アルキルおよびアリール置換基Yは、非置換、または置換されてもよく、好適な置換基はニトロおよび1〜6個の炭素原子のアルキルである。Yはまた、官能基、例えばビオチンで誘導体化させてもよい。X基は、O、N、S、P、Seのような任意の求核原子であってもよいが、Cなどの他のものでもよく、あるいは、典型的には1〜6個の炭素原子のアルキレンラジカル、例えばメチレン;SO、SO
2またはNHであってもよい。結合点はベンゾイルカルボニルに対しオルト−またはメタ−とすることができる。「n」の許容される値は、0、1、2、3、4、および5である。Xを組み込む結合側鎖は構造(I)で示される脂肪族である。
【0036】
側鎖アルキル基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は多くの様式で変化し、これらの化合物の生物活性を増強することができる。典型的には、R
1、R
2、R
3、およびR
4は20のタンパク質−アミノ酸で見られるアミノ酸側鎖置換基、例えば、いずれかの鏡像異性配置における、グルタミン酸、リシン、オルニチンおよびトレオニンの側鎖である。R
1置換基がアミノ酸側鎖である場合、その炭素上の他の置換基、R
2は典型的には水素であるが、メチル、エチルまたはベンジルとしてもよい。また、R
1およびR
2はそれらの介在原子と一緒になり、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、およびシクロヘキサン残基を提供することができる。R
3およびR
4は、上記のようにR
1およびR
2と同様に関連づけられる。すなわち、それらの1つはアミノ酸側鎖であり、これらの2つの基のもう1つはほとんどの場合水素であるが、メチル、エチル、プロピルまたはベンジルも可能であろう。さらに、R
3およびR
4は介在原子と一緒になり、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、およびシクロヘキサン残基を提供することができる。
【0037】
R
5およびR
6のバリエーションの範囲はずっと広汎であり、これらの位置での最も一般的な置換基は水素またはメチルである。それらの置換基はまた、20のタンパク質−アミノ酸の側鎖の1つ、特にメチルに対応するように設計することができる。
【0038】
生物活性に特に貢献することが見出されている側鎖はリシン、グルタミン酸、チロシン、イソロイシン、アスパラギン、およびトレオニンの側鎖としてのR
1およびR
3、水素としてのR
2、R
4、R
5、およびR
6である。1つ以上の側鎖は、とりわけ、NGFのターン領域内の側鎖に対応するように選択される。
【0039】
一般に大環状化合物は13〜16員環を有し、ここで、X置換基はO、N、S、SO、またはSO
2である。
【0040】
別の実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物は1Ad、3Aa、3Ak、3Ba、3Bg、3Bi、3Ca、3Ce
、3Cg、3Ck、1Aa、1Ba、3Acおよび3Aeからなる群より選択される。
【0041】
さらに別の実施形態では、β−ターンペプチド模倣環状化合物は、様々な置換基(例えば、アミン、グアニジンまたはメチルスルホンアミド)(
図IBを参照されたい)ならびにジペプチドアミノ酸断片(
図1Cを参照されたい)を構成するR
1およびR
2基を有する、環状アミノ、エーテルまたはスルフィド骨格(
図1Aを参照されたい)を含む化合物である(
図1Dも参照されたい)。
【0042】
本発明の化合物は有効量で存在する。本明細書では、用語「有効量」は、適正な投与計画で投与された場合、標的障害を処置する(治療的または予防的)のに十分な量を示す。例えば、有効量は、処置される障害の重篤度、期間または進行を軽減または寛解させ、処置される障害の進展を防止する、される障害の退行を引き起こす、または別の療法の予防もしくは治療効果を増強もしくは改善するのに十分である。
【0043】
本明細書では、「網膜色素変性症」は広い概念であり、アッシャー症候群、レーバー先天性黒内障、桿体錐体病、バルデ・ビードル症候群、レフサム病、シュタルガルド病、全脈絡膜萎縮、脳回転状萎縮症、ローレンス・ムーン症候群、ワールデンブルグ症候群、アルポート症候群、カーンズ・セイヤー症候群、無βリポ蛋白血症、ハーラー症候群、シャイエ症候群、サンフィリポ症候群、神経セロイドリポフスチン症、クーフス症候群、ヤンスキー・ビールショースキー病、フォークト・シュピールマイアー・バッテン病、および筋ジストロフィー含むが、それらに限定されないことが意図される。
【0044】
本明細書では、被験体は、動物、例えば哺乳類を示し、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のウシ種、ヒツジ種、ウマ種、イヌ種、ネコ種、齧歯類種またはマウス種が挙げられるが、それらに限定されない。1つの実施形態では、被験体はヒトである。
【0045】
「処置する」という用語は、治療的処置及び予防的処置(発症の可能性を軽減する)の両方を含む。この用語は疾患(例えば、本明細書で記述される疾患または障害)の発症または進行を減少させ、抑制し、軽減し、低下させ、阻止し、または安定化させ、疾患の重篤度を軽減し、または疾患に関連する症状を改善することを意味する。
【0046】
本明細書では、薬学的に許容される塩という用語は、その無機酸および有機酸を含む薬学的に許容される非毒性酸から調製された投与される化合物の塩を示す。そのような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸およびリン酸である。適当な有機酸は、例えば、脂肪族、芳香族、カルボン酸およびスルホン酸クラスの有機酸から選択され得、それらの例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、ムチン酸、酒石酸、パラトルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エムボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などである。
【0047】
本発明はさらに、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置するのに使用するための医薬組成物に関する。医薬組成物は1つ以上の本発明のβ−ターンペプチド模倣環状化合物および薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体はまた、組成物中の制御/活性物質と相互作用しない不活性成分を含むことができる。標準医薬製剤技術、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAにおいて記載されているものを使用することができる。非経口投与のための好適な医薬担体としては、滅菌水、生理食塩水、静菌食塩水(約0.9%mg/mlベンジルアルコールを含む食塩水)、リン酸緩衝食塩水、ハンクス液、リンガーラクテート、デキストロース、エタノール、界面活性剤、例えばグリセロール、または賦形剤が挙げられる。
【0048】
さらなる実施形態では、医薬組成物はさらに、ある(すなわち1つ以上の)追加の治療薬を含む。本明細書で記載される方法および医薬組成物において使用するのに好適な追加の治療薬は、例えば、ビタミンA(例えば、ビタミンAパルミチン酸塩)、ベンダザック、NT−501(Neurotech)およびヒト分娩後臍帯細胞とすることができるが、それらに限定されない。
【0049】
<投与形態>
組成物は、眼部局所用途のために、例えば、溶液、軟膏、クリーム、ローション、眼用軟膏、最も好ましくは点眼薬または眼用ジェルの形態で製剤化することができ、適当な従来の添加物、例えば、保存剤、薬物浸透を補助する溶媒、ならびに軟膏およびクリーム中の軟化薬を含むことができる。そのような局所製剤は、適合可能な従来の担体、例えば、クリームまたは軟膏基剤、およびローション用のエタノールまたはオレイルアルコールを含むことができる。
【0050】
また、活性化合物は、目にリポソームを介して適用してもよい。さらに、活性化合物はポンプ−カテーテルシステムを介して涙膜中に注入してもよい。本発明の別の実施形態は、連続または選択的放出装置、例えば膜(限定はされないが、ピロカルピン(Ocusert(商標))システム(Alza Corp.,カリフォルニア州パロアルト)において使用されるものなど)内に含有される活性化合物を含む。追加の実施形態として、活性化合物は、目の中に入れられるコンタクトレンズに含まれ、コンタクトレンズにより運搬され、またはコンタクトレンズに付着され得る。本発明の別の実施形態は、眼表面に適用することができるスワブまたはスポンジ内に含まれる活性化合物を含む。本発明の別の実施形態は、眼表面に投与される液体噴霧内に含まれる活性化合物を含む。本発明の別の実施形態は、活性化合物の眼内への直接注射を含む。
【0051】
網膜色素変性症を処置するための本発明の医薬組成物が点眼液として使用される場合、点眼液のために使用される任意の剤形、例えば、水性点眼薬、例えば水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液および可溶化点眼液、または非水性点眼液、例えば非水性点眼液および非水性懸濁点眼液で提供される。これらの中で、水性点眼液が好ましい。
【0052】
網膜色素変性症を処置するための本発明の医薬組成物が、水性点眼液として調製される場合、水性点眼液で通常使用される様々な添加物は、本発明の目的に悪影響を与えない限り、適宜配合することができる。そのような添加物の例としては、緩衝液、等張剤、保存剤、可溶化剤(安定化剤)、pH調節剤、増粘剤およびキレート剤が挙げられる。
【0053】
緩衝液は、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、酢酸緩衝液(例えば、酢酸ナトリウム)およびアミノ酸を含む群から選択され得るが、それらに限定されない。
【0054】
等張剤は、糖、例えばソルビトール、グルコースおよびマンニトール、多価アルコール、例えばグリセリン、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、ならびに塩、例えば塩化ナトリウムを含む群から選択され得るが、それらに限定されない。
【0055】
保存剤は、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸アルキル、例えばパラオキシ安息香酸メチルおよびパラオキシ安息香酸エチル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸およびその塩、チメロサールおよびクロロブタノールを含む群から選択され得るが、それらに限定されない。
【0056】
可溶化剤(安定化剤)は、シクロデキストリンおよびその誘導体、水溶性ポリマ、例えばポリ(ビニルピロリドン)、および界面活性剤、例えばポリソルベート80(商標名:Tween 80)を含む群から選択され得るが、それらに限定されない。
【0057】
pH調節剤は、塩酸、酢酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウムを含む群から選択され得るが、それらに限定されない。
【0058】
増粘剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロールならびにそれらの塩を含む群から選択され得るが、それらに限定されない。
【0059】
キレート剤は、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムおよび縮合リン酸ナトリウムを含む群から選択され得るが、それらに限定されない。
【0060】
網膜色素変性症を処置するための本発明の医薬組成物を眼用軟膏として調製する場合、基剤化合物が存在しなければならない。眼用軟膏の基剤は、精製ラノリン、VASELINE(登録商標)、プラスチベース、流動パラフィン及びポリエチレングリコールを含む群から選択され得るが、それらに限定されない。
【0061】
また、本発明の組成物は、ラクトース、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、ステアリン酸などを含む薬学的に許容される錠剤化賦形剤を使用して、経口投与のために製剤化することができる。経口投与はまた、水、グリコール、油、アルコールなどの中で製剤化された液体組成物を含むことができる。
【0062】
<共投与>
本発明の方法が共投与を含む場合、共投与は、第1の量のβ−ターンペプチド模倣環状化合物またはその薬学的に許容される塩、および、第2の量のビタミンA(例えば、ビタミンAパルミチン酸塩)、ベンダザック、NT−501(Neurotech)およびヒト分娩後臍帯細胞からなる群より選択される少なくとも1つの作用物質の投与を示し、ここで、第1および第2の量を合わせると、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置するのに有効な量を構成する。共投与は、本質的に同時に、例えば単一医薬組成物中または複数の医薬組成物中での共投与の第1及び第2の量の投与を含む。さらに、共投与はまた、いずれかの順での逐次投与における化合物の使用を含む。共投与が、第1の量のβ−ターンペプチド模倣環状化合物またはその薬学的に許容される塩、および、第2の量のビタミンA(例えば、ビタミンAパルミチン酸塩)、ベンダザック、NT−501(Neurotech)およびヒト分娩後臍帯細胞からなる群より選択される少なくとも1つの作用物質の別々の投与を含む場合、作用物質は、所望の治療効果が得られるように十分に短い間隔で投与する。例えば、所望の治療効果が得られる各投与間隔は、数分から数時間の範囲とすることができ、共投与の各成分の性質、例えば、効力、溶解度、バイオアベイラビリティ、血漿半減期および動態プロファイルを考慮して決定することができる。
【0063】
<用量>
β−ターンペプチド模倣環状化合物の有効量は、患者の年齢、性別および体重、患者の現在の医学的状態および処置される網膜色素変性症の性質に依存する。当業者であれば、これらのおよび他の因子に拠って、適当な用量を決定することができるであろう。例えば、本発明の医薬組成物が、処置の必要な被験体において網膜色素変性症を処置するための点眼液として使用される場合、水性点眼薬溶液は、本発明の化合物の活性成分を、約0.001〜2.5(w/v)%、例えば0.02〜2.0(w/v)、例えば約0.03〜1.5(w/v)%、例えば約0.05〜1.0(w/v)%の量で含むことが望ましい。本明細書では、重量/容積(w/v)は、特定の最終容積中の溶質の特定の質量(例えば、g/ml)を意味する。投与される場合、本発明の化合物および組成物は1日1回、または1日複数回、例えば1日2回、1日3回および1日4回投与することができる。特に好ましい実施形態では、本発明の化合物および組成物は1〜5滴の、例えば、1滴、2滴、3滴、4滴または5滴の用量で投与することができる。
【0064】
本発明の医薬組成物が眼用軟膏として使用される場合、眼用軟膏は本発明の化合物の活性成分を、約0.001〜2.5(w/w)%、例えば0.02〜2.0(w/v)、例えば約0.03〜1.5(w/v)%、例えば約0.05〜1.0(w/v)%の量で含むことが望ましい。本明細書では、重量/重量(w/w)は、溶液の最終重量中の溶質の重量、例えば、g/gを意味する。投与される場合、本発明の化合物および組成物は1日1回、または1日複数回、例えば1日2回、1日3回および1日4回投与することができる。
【0065】
本発明の例示的な実施形態の説明は下記の通りである。
【0066】
本明細書で引用される全ての特許、公開出願および参考文献の教示は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0067】
本発明を特に、その例示的な実施形態を参照して図示し、記載してきたが、当業者であれば、形態および詳細における様々な変更が、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱せずに可能であることが理解されるであろう。
【実施例】
【0068】
<酸化ストレスによる変性からの網膜色素上皮細胞の神経栄養保護>
本試験の目的は、酸化ストレス−誘発性の網膜色素上皮(RPE)細胞の変性の神経栄養防止の薬理学的概念を調べることであった。この試験の目的は、網膜色素変性症のための療法として特定の化合物を検証することであった。
【0069】
<方法>
APRE19細胞を完全培地で培養し、続いて8時間血清飢餓とした。その後、試験化合物または対照の存在下もしくは不存在下で、16時間、酸化ストレス(TNFαおよびH
2O
2)へ曝露することによりアポトーシスを誘発した。Hoechst試薬で染色した核を計数することにより、総生存細胞+死細胞に対する死細胞の割合としてアポトーシスを定量化した。
【0070】
試験作用物質は、神経成長因子(TrkAおよびp75受容体のアゴニスト)、ニューロトロフィン−3(TrkCおよびp75受容体の作動薬)、ならびに化合物D3、3Ak、3Aeおよび3Aaを含むものとした。
【0071】
<結果>
非ストレス細胞は完全に生存可能であるが、酸化ストレスにより、APRE19細胞の94%のアポトーシス死が引き起こされた。ニューロトロフィンNGFまたはNT−3によるストレスAPRE19細胞の保護は公表されている。
【0072】
化合物D3、3Akおよび3Aeは、用量に依存して、アポトーシスからの定量的に明確な保護を可能にする。化合物D3、3Akおよび3Aeを用いた処置により、APRE19細胞死が低下する(25μM用量でそれぞれ、29%、24%、および16%)。
【0073】
化合物3Aaはアポトーシスからの定量的に明確な保護を可能にする。しかしながら、その保護は、用量には依存せず、化合物D3、3Akおよび3Aeを用いて見られたものよりも低い。25μM用量での化合物3Aaによる処置は部分的な保護であり、50%のAPRE19細胞死が得られる。
【0074】
化合物D3、3Ak、3Aeおよび3Aaは、RPE細胞を死から保護することができる。化合物D3、3Akおよび3Aeによる処置では、30%未満の細胞死がみられたが、3Aaでは約50%の細胞死となった。これらの化合物は網膜色素変性症のための可能な処置となる。
【0075】
網膜変性症のマウスモデルにおける追加の実験を実施した。化合物3Aaを投与し、対照処置および薬物処置動物の両方に対し、ERG(暗順応および明順応)ならびに外顆粒層列の数を観察した。結果は、対照に比べ統計学的に有意である薬物効果を示さなかったが、データにおいて肯定的な動向が観察された。
【0076】
本発明を、特にその例示的な実施形態を参照して図示し、記載してきたが、当業者であれば、形態および詳細における様々な変更が、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱せずに可能であることが理解されるであろう。