(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663500
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】無鉛高強度高潤滑性銅合金
(51)【国際特許分類】
C22C 9/00 20060101AFI20150115BHJP
C22C 9/02 20060101ALI20150115BHJP
C22F 1/08 20060101ALI20150115BHJP
B22D 7/00 20060101ALI20150115BHJP
B22D 27/04 20060101ALI20150115BHJP
B22D 11/049 20060101ALI20150115BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20150115BHJP
B22D 21/00 20060101ALI20150115BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20150115BHJP
【FI】
C22C9/00
C22C9/02
C22F1/08 J
C22F1/08 A
B22D7/00 E
B22D27/04 E
B22D11/049
B22D11/00 F
B22D21/00 B
!C22F1/00 602
!C22F1/00 611
!C22F1/00 630A
!C22F1/00 630B
!C22F1/00 692A
!C22F1/00 692B
【請求項の数】20
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-553034(P2011-553034)
(86)(22)【出願日】2010年3月2日
(65)【公表番号】特表2012-519778(P2012-519778A)
(43)【公表日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】US2010025893
(87)【国際公開番号】WO2010101899
(87)【国際公開日】20100910
【審査請求日】2013年2月26日
(31)【優先権主張番号】61/157,023
(32)【優先日】2009年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503287823
【氏名又は名称】ケステック イノベーションズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ミスラ、 アビジート
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン、 ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ライト、 ジェイムズ エイ.
【審査官】
河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/018348(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/016629(WO,A1)
【文献】
特開2005−060808(JP,A)
【文献】
特開昭57−073147(JP,A)
【文献】
特開2000−104132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00 − 49/14
C22F 1/00 − 3/02
B22D 7/00
B22D 11/00
B22D 11/049
B22D 21/00
B22D 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10.0重量%〜20.0重量%のビスマスと、0.05重量%〜0.3重量%のリンと、2.2重量%〜10.0重量%のスズと、最大5.0重量%のアンチモンと、最大0.02重量%のホウ素と、銅及び不純物である残部とからなり、不純物として0.05重量%以下の鉛を含む、合金。
【請求項2】
不純物として0.05重量%未満の鉛を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
12.0重量%のビスマスと、2.4重量%〜3.1重量%のスズと、1.0重量%のアンチモンと、0.1重量%のリンと、0.01重量%のホウ素とを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項4】
12.0重量%のビスマスと、5.5重量%〜6.2重量%のスズと、0.1重量%のリンと、最大0.05重量%の鉛と、最大0.01重量%のホウ素とを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項5】
元素ランタン、元素セリウム、及びミッシュメタル、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される形態の、少なくとも1つの希土類元素を最大0.02重量%で含む、請求項1に記載の合金。
【請求項6】
前記合金が、15体積%未満のCu3Sn、15体積%未満のCuSb、及び1体積%未満のCu3Pを有する、請求項1に記載の合金。
【請求項7】
最大引張強度(UTS)が90〜210MPaの範囲であり、降伏強度が80〜120MPaの範囲であり、伸張率が1〜20%の範囲である、請求項1に記載の合金。
【請求項8】
少なくとも4体積%のビスマスベースの相を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項9】
10.0重量%〜20.0重量%のビスマスと、0.05重量%〜0.3重量%のリンと、2.2重量%〜10.0重量%のスズと、最大5.0重量%のアンチモンと、及び最大0.02重量%のホウ素と、元素ランタン、元素セリウム、及びミッシュメタル、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される形態の、最大0.02重量%の少なくとも1つの希土類元素と、銅及び不純物である残部とからなり、不純物として0.05重量%以下の鉛を含み、
少なくとも4体積%のビスマスベースの相を含む、合金。
【請求項10】
前記合金が、15体積%未満のCu3Sn、15体積%未満のCuSb、及び1体積%未満のCu3Pを含む、請求項9に記載の合金。
【請求項11】
最大引張強度(UTS)が90〜210MPaの範囲であり、降伏強度が80〜120MPaの範囲であり、伸張率が1〜20%の範囲である、請求項9に記載の合金。
【請求項12】
10.0重量%〜20.0重量%のビスマスと、0.05重量%〜0.3重量%のリンと、2.2重量%〜10.0重量%のスズと、最大5.0重量%のアンチモンと、最大0.02重量%のホウ素と、銅及び不純物である残部とからなる合金のビレットを鋳造するステップであって、前記合金は不純物として0.05重量%以下の鉛を含むステップと、
前記ビレットを室温まで冷却するステップ
とを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の合金を製造するための方法。
【請求項13】
前記合金が、不純物として0.05重量%未満の鉛を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記合金が、12.0重量%のビスマスと、2.4重量%〜3.1重量%のスズと、1.0重量%のアンチモンと、0.1重量%のリンと、0.01重量%のホウ素とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記合金が、12.0重量%のビスマスと、5.5重量%〜6.2重量%のスズと、0.1重量%のリンと、最大0.05重量%の鉛と、最大0.01重量%のホウ素とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記合金が、元素ランタン、元素セリウム、及びミッシュメタル、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される形態の、少なくとも1つの希土類元素を最大0.02重量%で含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記合金が、15体積%未満のCu3Sn、15体積%未満のCuSb、及び1体積%未満のCu3Pを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記ビレットがニアネットシェイプに遠心鋳造される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ビレットが100℃/分の速度で室温まで冷却される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記ビレットが直接チル鋳造され、そして水で冷却される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、本明細書中に参照として包含され、かつ本明細書の一部を構成する、2009年3月3日に出願した、米国特許仮出願第61/157,023号に基づく優先権と利益とを主張する。
【0002】
本発明は、一般的に銅合金に関し、及びより具体的には、高い強度、延性、及び潤滑性を有する銅−ビスマス合金に関する。
【背景技術】
【0003】
高鉛青銅としても知られる20〜30重量%の鉛を含有する銅合金は、高強度、高延性、高融点、及び高潤滑性などの利点により、一般的に使用される。高鉛青銅は、十分な量の追加の潤滑液の存在が不確実であるか又は定期的に中断される、平面ジャーナル軸受又はスリーブ軸受などの回転軸受にしばしば使用される。高鉛青銅中の潤滑性は、固化の間に形成される鉛ベースの第2相によって提供される。潤滑性は、この鉛ベースの第2相の体積分率に少なくとも部分的に比例しており、これは合金中の鉛の量に比例する。
【0004】
健康上及び環境上の規制のために(これらのいくつかは留保されているが)、銅合金における鉛の使用を実質的に削減または除去することが望ましいものであり得る。「無鉛」と称するためには、鉛は合金の0.10重量%未満でなければならない。しかしながら、高鉛青銅に対する無鉛置換は利用できていなかった。結果として、製造業者は高鉛青銅の使用に関する規制の適用除外を頻繁に要請している。例えば、空調と加熱ポンプに使用される圧縮器の大手製造業者は、特定有害物質使用制限指令からの、「鉛−青銅軸受シェル及び軸受筒中の鉛」についての適用除外(9b)の継続を、最近要請している。したがって、無鉛、高強度、高潤滑性の銅合金の必要が生じている。
【0005】
本発明の態様は、約10.0重量%〜約20.0重量%のビスマスと、約0.05重量%〜約0.3重量%のリンと、約2.2重量%〜約10.0重量%のスズと、最大約5.0重量%のアンチモンと、最大約0.02重量%のホウ素と、実質的に銅並びに付随的な元素及び不純物である残部とを組み合わせて包含する無鉛銅合金に関する。上記合金は、0.10重量%以下の鉛を包含する。
【0006】
一態様によれば、上記合金は、0.05重量%未満の鉛を包含する。
【0007】
別の態様において、上記合金は、約12.0重量%のビスマスと、約2.4重量%〜約3.1重量%のスズと、約1.0重量%のアンチモンと、約0.1重量%のリンと、約0.01重量%のホウ素とを包含するか、又は、約12.0重量%のビスマスと、約5.5重量%〜約6.2重量%のスズと、約0.1重量%のリンと、最大約0.05重量%の鉛と、最大約0.01重量%のホウ素とを包含する。
【0008】
さらなる態様によれば、上記合金は、約0.15(すなわち15体積%)未満のCu
3Snの相分画(phase fraction)、約0.15(すなわち15体積%)未満のCuSbの相分画、及び約0.01(すなわち1体積%)未満のCu
3Pの相分画を有する。
【0009】
さらに別の態様によれば、上記合金は約90〜210MPa(13〜31ksi)の範囲の最大引張強度(UTS)、約80〜120MPa(12〜17ksi)の範囲の降伏強度、及び約1〜20%の範囲の伸張率を有する。
【0010】
さらに別の態様によれば、上記合金は、元素ランタン、元素セリウム、及びミッシュメタル、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択される形態の、少なくとも一つの希土類元素をさらに包含する。
【0011】
本発明のさらなる態様は、約10.0重量%〜約20.0重量%のビスマスと、約0.05重量%〜約0.3重量%のリンと、約2.2重量%〜約10.0重量%のスズと、最大約5.0重量%のアンチモンと、最大約0.02重量%のホウ素と、元素ランタン、元素セリウム、及びミッシュメタル、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択される形態の少なくとも一つの希土類元素と、実質的に銅並びに付随的な元素及び不純物である残部とを組み合わせて包含する無鉛銅合金に関する。上記合金は、最大約0.10重量%の鉛を包含する。また、上記合金は、少なくとも0.04の体積分率のビスマスベースの相を包含する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、約10.0重量%〜約20.0重量%のビスマスと、約0.05重量%〜約0.3重量%のリンと、約2.2重量%〜約10.0重量%のスズと、最大約5.0重量%のアンチモンと、最大約0.02重量%のホウ素と、実質的に銅並びに付随的な元素及び不純物である残部とを包含し、約0.10%以下の鉛を含む合金で形成されたビレットを鋳造することを包含する方法に関する。上記ビレットはその後室温まで冷却され、そして固化される。
【0013】
一態様によれば、上記ビレットは遠心鋳造によって、ニアネットシェイプに鋳造される。別の態様によれば、上記ビレットは、約100℃/分の速度で、室温まで冷却される。さらなる態様によれば、上記ビレットは直接チル鋳造によって鋳造された後、水で冷却される。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて、以下の発明の詳細な説明によって明らかになるだろう。
【0015】
本発明のより完全な理解を可能にするために、本発明を、添付の図面を参照して、実施例を用いて記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一態様を示す光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般的に、本発明は、10重量%を超えるBiを包含する、延性無鉛Cu−Bi合金に関する。本明細書中に参照として包含され、そして本明細書の一部を構成する、米国特許第5,413,756号において開示された、2〜9重量%のBiを含む銅合金は、軸受材料として使用されているが、これらの合金の潤滑性は、高鉛青銅と比較して一般的に低い。低い潤滑性は、潤滑性ビスマスベースの第2相の、低い体積分率による。銅合金のビスマス含量を10%を超える量に増加させる事前の取り組みは、粒界領域へと偏析されるビスマスベースの第2相をもたらし、これは合金の延性を低減した。いくつかの態様において、本明細書中に開示されるCu−Bi合金は、合金化添加量のスズ、アンチモン、及び/又はリンを採用し、これはこの問題を回避するのに役立つことができる。
【0018】
いくつかの態様において、Cu−Bi合金は、約10.0重量%〜約20.0重量%のビスマスと、約2.2重量%〜約10重量%のスズと、最大約5.0重量%のアンチモンと、約0.05重量%〜約0.3重量%のリンと、最大約0.02重量%のホウ素と、実質的に銅並びに付随的な元素及び不純物である残部とを包含する。一態様において、上記合金は、「無鉛」であり、これは合金が、0.10重量%未満の鉛を包含することを意味し、または別の態様において、0.05重量%未満の鉛を包含すること意味する。上記合金は、いくつかの不純物を除去するのに役立つ、少量だが効果的な量の希土類元素を包含してよい。このような希土類元素は、ミッシュメタル(セリウム、及び/又はランタンの混合物を包含してよく、他の元素もまた包含する可能性がある)、又は元素セリウム若しくは元素ランタン、又はこれらの形態の組み合わせによって添加されてよい。一態様において、上記合金は、このような希土類元素の凝集量(aggregate content)を約0.02重量%の量で包含する。
【0019】
他の態様において、Cu−Bi合金は、約12.0重量%のビスマス、約2.4重量%〜約3.1重量%のスズ、約1.0重量%のアンチモン、約0.1重量%のリン、及び約0.01重量%のホウ素、並びに実質的に銅及び不可避の元素及び不純物である残部を包含する。この態様において、上記合金は「無鉛」であり、これは合金が0.10重量%未満の鉛を包含すること示す。他の態様において、この組成式は、それぞれ示された重量パーセントの5%又は10%の変動を包含してよい。
図1は、この態様を示す光学顕微鏡写真である。
【0020】
さらなる態様において、Cu−Bi合金は、約12.0重量%のビスマスと、約5.5重量%〜約6.2重量%のスズと、約0.1重量%のリンと、最大約0.05重量%の鉛と、最大約0.01重量%のホウ素と、実質的に銅並びに付随的な元素及び不純物である残部とを包含する。他の態様において、この組成式は、それぞれ示された重量パーセントの5%又は10%の変動を包含してよい。
【0021】
様々な態様による合金は、高強度、高延性、高融点、及び高潤滑性などの、有利な物理的特性及び物理的特徴を有してよい。上記合金は、約90〜210MPa(13〜31ksi)の範囲の最大引張強度(UTS)、約80〜120MPa(12〜17ksi)の範囲の降伏強度、及び約1〜20%の範囲の伸張率を有してよい。別の態様において、上記合金は、約140〜210MPa(21〜31ksi)の範囲のUTS、約80〜120MPa(12〜17Ksi)の範囲の降伏強度、及び約7〜20%の範囲の伸張率を有してよい。また、上記合金は、約1000℃の融点を有してよい。さらに、合金の潤滑性は、高鉛青銅などの、鉛含有銅合金と同等であり得る。
【0022】
一態様において、上記合金は、既存のCu−Bi合金と比べて、高い体積分率のビスマスベースの第2相を有する。これは、合金の潤滑性を向上させることができる。なぜなら、ビスマスベースの第2相は高い潤滑性を有するからである。合金中のビスマスベースの第2相の体積分率は、一態様において、少なくとも0.04(すなわち4体積%)である。一態様において、
図1に示すように、ビスマスベースの第2相がCuマトリックス中に分離かつ分散され、そして相粒子の相互連結が制限されることが望ましいものであり得る。合金化添加量のスズ、アンチモン、及び/又はリンは、粒界領域へのビスマスベースの第2相の偏析を回避するのに役立つことができる。上述したように、このような偏析は、合金の延性を低下させ得る。また、本明細書中に開示されるCu−Bi合金は、液体非混和性を促進する。2つの液体が非混和性である場合、低い凝固温度の液体(すなわち、Bi)は、他の液体(すなわち、Cu)から形成された固体の粒界へは一般的に偏析しにくいようである。鋳造に使用されるCu−Bi合金にこの方法を適用すると、粒界偏析を防ぐことができ、かつ高延性を達成することができる。液体非混和性を促進するために、開示される合金のいくつかの態様は、適切な合金化添加量のスズ、アンチモン、及びリンを包含する。
【0023】
適切なレベルの延性を提供するために、本明細書中に開示されるCu−Bi合金は、Cu
3Sn、CuSb、及び/又はCu
3Pなどの好ましくない相の形成も制限することができる。いくつかの態様において、Cu
3Snの相分画を約0.15(すなわち、15体積%)未満に限定し、CuSbの相分画を約0.15(すなわち、15体積%)未満に限定し、そしてCu
3Pの相分画を約0.01(すなわち、1体積%)未満に限定する。これは、スズの添加量を約10.0重量%未満、アンチモンの添加量を約5.0重量%未満、そしてリンの添加量を約0.3重量%未満に限定することによって達成することができる。これらの金属間相のうち少なくともいくつかは、
図1に示すサンプル中に存在するが、これらの相は使用したエッチング技術によっては明らかにされていないことに留意されたい。
【0024】
一態様において、本発明の上記合金は、真空融解することなく、鉄鋼鋳型における鋳造により製造することができる。いくつかの用途において、上記合金は遠心鋳造して、ニアネットシェイプ部品とすることができる。鋳造物は、その後、約100℃/分の速度で、室温まで冷却される。より速い冷却速度が、鋳放し偏析を除去するために望ましい。高い冷却速度は、ビレットが、例えば、固化の間に水で冷却される、直接チル鋳造によって使用することができる。
【0025】
いくつかの態様において、上記合金は、本明細書中に開示される元素組成からなり得、又は本明細書中に開示される元素組成から実質的になり得ることが理解される。本発明の態様が、一つ以上の上述の態様による合金で全体的又は部分的に形成される、鋳型産物などの産物において具体化され得ることも理解される。
【0026】
作成及び試験された特定の態様のいくつかの実施例は、以下に詳細に説明され、これらの態様の工程及び結果として得られる物理的特性及び物理的特徴についての詳細を含む。以下の実施例で評価されるプロトタイプは、それぞれの合金の残部を銅として、以下の表にまとめられる。
【表1】
【0027】
実施例1
重量%で、組成式がBi:12.0、Sn:2.5、Sb:1.0、P:0.1、B:0.01、及び残部Cuである合金を、真空融解することなく鋳造した。上記合金は、不純物を除去するのに役立つ、約0.02重量%のミッシュメタルも含んでいた。鋳造物は、重さが約36kgであり、かつ高さが42cmであった。25〜150℃の間の温度でのピンオンディスク摩擦磨耗試験において、合金は、〜30重量%のPbを含む銅合金と同等の潤滑性を示した。この態様の降伏強度は約80〜100MPa(12〜14ksi)であり、そして最高引張強度(UTS)は約90〜190MPa(13〜28ksi)であった。さらに、合金は約4〜12%の伸張率を示した。
図1は、この態様を示す光学顕微鏡写真であり、Cuマトリックス、並びにBiベースの第2相を示す。
【0028】
実施例2
重量%で、組成式がBi:12.0、Sn:3.0、Sb:1.0、P:0.1、B:0.01、及び残部Cuである合金を、真空融解することなく鋳造した。上記合金は、不純物を除去するのに役立つ、約0.02重量%のミッシュメタルも含んでいた。鋳造物は、重さが約36kgであり、かつ高さが42cmであった。25〜150℃の間の温度でのピンオンディスク摩擦磨耗試験において、合金は、〜30重量%のPbを含む銅合金と同等の潤滑性を示した。この態様の降伏強度は約100MPa(14〜15ksi)であり、そしてUTSは約110〜180MPa(16〜26ksi)であった。さらに、合金は約3〜13%の伸張率を示した。
【0029】
実施例3
重量%で、組成式がBi:12.0、Sn:2.5、Sb:1.0、P:0.1、B:0.005、及び残部Cuである合金を、真空融解することなく鋳造した。上記合金は、ミッシュメタルを含んでいなかった。鋳造物は、重さが約36kgであり、かつ高さが42cmであった。この態様の降伏強度は約100〜110MPa(14〜16ksi)であり、そしてUTSは約110〜210MPa(16〜31ksi)であった。さらに、合金は約5〜20%の伸張率を示した。
【0030】
実施例4
重量%で、組成式がBi:12.0、Sn:2.5、Sb:1.0、P:0.1、B:0.005、及び残部Cuである合金を、真空融解することなく鋳造した。上記合金は、不純物を除去するのに役立つ、ミッシュメタルも含んでいた。鋳造物は、重さが約36kg、かつ高さが42cmであった。この態様の降伏強度は約100〜110MPa(14〜15ksi)であり、そしてUTSは約150〜180MPa(22〜27ksi)であった。さらに、合金は約7〜10%の伸張率を示した。
【0031】
実施例5
重量%で、組成式がBi:14.1、Sn:5.5、P:0.1、Pb:0.01、及び残部Cuである合金を、真空融解することなく鋳造した。上記合金は、ミッシュメタルを含んでいなかった。鋳造物は、重さが約36kgであり、かつ高さが42cmであった。25〜150℃の間の温度でのピンオンディスク摩擦磨耗試験において、合金は、〜30重量%のPbを含む銅合金と同等の潤滑性を示した。この態様の降伏強度は約120MPa(17ksi)であり、そしてUTSは約120〜130MPa(18ksi)であった。さらに、合金は約1〜3%の伸張率を示した。
【0032】
いくつかの別の態様及び実施例が、本明細書中に開示及び例示されている。当業者は、個々の態様の特徴、及び成分の可能な組み合わせ及び変更を理解するであろう。当業者は、任意の態様が、本明細書中に開示される他の態様との任意の組み合わせで提供され得ることも理解するであろう。本発明は、本発明の精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得ることが理解される。本明細書中の実施例及び態様は、したがって、あらゆる観点から見て例示的及び非限定的と考えられるものであり、そして本発明は、本明細書中の所定の詳細に限定されない。したがって、特定の態様が例示及び記載されている一方で、多くの変更が、本発明の精神から顕著に逸脱することなく想起され、そして保護の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。