(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663503
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】水素ガス放散量の測定方法
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20150115BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/02 301Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-7001(P2012-7001)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-148120(P2013-148120A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2013年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 昇
【審査官】
八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−239956(JP,A)
【文献】
特開2008−151808(JP,A)
【文献】
特開2010−209980(JP,A)
【文献】
特開2011−068919(JP,A)
【文献】
特開2011−127204(JP,A)
【文献】
特開2010−266023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の水素ガスを充填先へ供給するための充填ラインと、前記充填ラインから分岐して設けられ、前記水素ガスを放散する放散弁が配置された放散ラインと、前記放散ラインの分岐位置より二次側に位置する前記充填ラインに設けられたコリオリ式流量計と、を有する水素ガス充填装置を用いた水素ガス放散量の測定方法であって、
充填先への水素ガス充填後に遮断弁を閉じ、前記放散弁を開いて前記コリオリ式流量計を逆流した水素ガス流量を測定することを特徴とする水素ガス放散量の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明
は、水素ガス放散量の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の自動車として、水素ガスを燃料として用いる燃料電池搭載車両(「水素自動車」、或いは「水素エンジン自動車」ともいう)の開発が進められている。燃料電池搭載車両は、炭酸ガス、NOx、SOx等の排出がなく、水を排出するだけの環境にやさしい自動車とされている。
【0003】
上記燃料電池搭載車両は、燃料補給時には通常のガソリン自動車と同様に、その燃料である水素ガスを充填する水素ガス充填装置を備えた供給基地である水素ステーション(以下、「水素ガス充填装置」という)まで走行し、該水素ガス充填装置から水素ガスを補給する(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図2は、従来の水素ガス充填装置の概略構成を模式的に示す図である。
図2を参照するに、従来の水素ガス充填装置100は、蓄圧器104と、水素ガス充填ライン105と、プレクーラー106と、流量調節弁107と、流量計109と、遮断弁111と、放散ライン112と、放散弁114と、フレキシブルホース115と、充填ノズル116と、を有する。
【0005】
水素ガス充填ライン105は、一端が蓄圧器104と接続されている。プレクーラー106は、水素ガス充填ライン105の他端側に設けられている。流量調節弁107は、蓄圧器104の出口側に位置する水素ガス充填ライン105に設けられている。
流量計109は、流量調節弁107の下流側に位置する水素ガス充填ライン105に設けられている。遮断弁111は、プレクーラー106と流量計109との間に位置する水素ガス充填ライン105に設けられている。
【0006】
放散ライン112は、遮断弁111とプレクーラー106との間に位置する水素ガス充填ライン105から分岐されている。放散弁114は、放散ライン112に設けられている。
フレキシブルホース115は、一端が水素ガス充填ライン105の他端と接続されている。充填ノズル116は、フレキシブルホース115の他端と接続されると共に、燃料電池搭載車両101の車載タンク102と接続されている。
【0007】
ここで、
図2に示す従来の水素ガス充填装置100から燃料電池搭載車両101への水素ガスの充填方法、及び水素ガス充填装置100から燃料電池搭載車両101の切り離し方法について説明する。
【0008】
まず、始めに、水素ガス充填装置100の充填ノズル116を燃料電池搭載車両101に接続し、次いで、蓄圧器104(或いは、圧縮機)から燃料電池搭載車両101に搭載された車載タンク102へ高圧の水素ガスの充填を開始し、車載タンク102内の圧力が35〜70MPaの間の任意の圧力に昇圧されたら水素ガスの充填を終了する。
【0009】
この際、車載タンク102の上流側に配置された流量調整弁107から車載タンク102までの区間が同一の圧力になる。
そして、車載タンク102の遮断弁(図示せず)を閉じた後、水素ガス充填装置100から燃料電池搭載車両101を切り離すために、燃料電池搭載車両101から充填ノズル116を取り外す。
このとき、充填ノズル116は、安全のため、その一次側の圧力を0.4MPa程度に低下させなければ、燃料電池搭載車両101から取り外すことができない。
【0010】
このため、水素ガス充填装置100側においては、充填タンク102への充填が終了後、開いた状態とされた遮断弁111を閉じ、次いで、閉じた状態とされた放散弁114を開けることで、遮断弁111から充填ノズル116までの間に滞留する水素ガスを大気放出して、遮断弁111から充填ノズル116までの区間の圧力を所定の圧力以下に低下させる放散処理を行う。
【0011】
該放散処理後、開いた状態とされた放散弁114を閉じ、最後に、充填ノズル116を燃料電池搭載車両101から切り離す(取り外す)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−336795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、車載タンク102への充填中に流量計109を通過した水素ガスの流量は、流量計109にて計測可能であるが、充填終了後に放散弁114から放出される水素ガス放散量、つまり遮断弁111から充填ノズル116までの区間に滞留した水素ガスの放出量は計測できない。
このため、実際に車載タンク102に充填された正確な水素ガスの量を把握できないという問題があった。
【0014】
そこで本発明は、水素ガスの放散量を把握することで、充填先への正確な水素ガス充填量を把握することの可能
な水素ガス放散量の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、高圧の水素ガスを充填先へ供給するための充填ラインと、前記充填ラインから分岐して設けられ、前記水素ガスを放散する放散弁が配置された放散ラインと、前記放散ラインの分岐位置より二次側に位置する前記充填ラインに設けられたコリオリ式流量計と、を有する水素ガス充填装置を用いた水素ガス放散量の測定方法であって、充填先への水素ガス充填後に遮断弁を閉じ、前記放散弁を開いて前記コリオリ式流量計を逆流した水素ガス流量を測定することを特徴とする水素ガス放散量の測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発
明によれば、コリオリ式流量計はガスの流れ方向がどちらであっても通過したガス量を計測可能であるため、放散ラインの分岐位置より二次側に位置する充填ラインにコリオリ式流量計を設けることで、遮断弁から充填ノズルまでの間に滞留した水素ガスのうち、コリオリ式流量計を逆流して通過した水素ガスの量を把握することが可能となる。
【0019】
これにより、水素ガス充填装置に設ける流量計の数を増加させることなく、放散弁から放出された水素ガスの量を測定でき、かつ放散弁から放出された水素ガス量に基づいて充填先に実際に充填された水素ガスの量をより正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る
水素ガス放散量の測定方法に使用する水素ガス充填装置の概略構成を示す図である。
【
図2】従来の水素ガス充填装置の概略構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の水素ガス充填装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0022】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る
水素ガス放散量の測定方法に使用する水素ガス充填装置の概略構成を示す図である。
図1を参照する
に、水素ガス充填装置10は、水素ガス供給源11と、充填ライン13と、圧縮機14と、蓄圧器15と、流量調節弁17と、遮断弁18と、放散ライン22と、放散弁23と、コリオリ式流量計19と、水素ガス冷却手段25と、フレキシブルホース26と、充填ノズル28と、を有する。
【0023】
水素ガス供給源11は、充填ライン13の一端と接続されており、充填ライン13を介して、圧縮機14に水素ガスを供給する。
圧縮機14は、水素ガス供給源11の後段(下流側)に位置する充填ライン13に設けられている。圧縮機14は、水素ガス供給源11から供給された水素ガスを圧縮し、圧縮した水素ガスを蓄圧器15に供給する。
【0024】
蓄圧器15は、圧縮機14により圧縮された水素ガスを貯留すると共に、流量調節弁17及び遮断弁18を介して、圧縮された水素ガスを充填ライン13に供給する。
流量調節弁17は、蓄圧器15の二次側(下流側)に位置する充填ライン13に設けられている。流量調節弁17は、その開度を調節することで、流量調節弁17の二次側に流れる水素ガスの流量を調節するための弁である。
【0025】
遮断弁18は、流量調節弁17の下流側に位置する充填ライン13に設けられている。遮断弁18は、放散ライン22を介して、放散弁23から水素ガスを放散する際に閉じられる弁である。
放散ライン22は、遮断弁18の下流側に位置する充填ライン13から分岐している。放散弁23は、放散ライン22に設けられている。放散弁23は、放散ライン22に輸送された水素ガスを放散する際に開かれる弁である。
【0026】
コリオリ式流量計19は、放散ライン22の分岐位置22Aより二次側(下流側)に位置する充填ライン13に設けられている。コリオリ式流量計19は、放散ライン22の分岐位置22Aと水素ガス冷却手段25との間に位置する充填ライン13に配置されている。
コリオリ式流量計19は、ガスの流れ方向がどちらであっても通過したガス量を計測することができる。
【0027】
水素ガス冷却手段25は、コリオリ式流量計19の下流側に位置する充填ライン13に設けられている。水素ガス冷却手段25は、充填ライン13を流れる水素ガスを冷却する冷却機構である。水素ガス冷却手段25としては、例えば、シェル側に金属、ブライン、液化ガス等の冷媒を、チューブ側に水素ガスを通す構造のシェルアンドチューブ型熱交換器、外側管路側にブライン、液化ガス等の冷媒を、内側管路側に水素ガスを通す構造のチューブインチューブ(二重管)型熱交換器等を用いることができる。
【0028】
フレキシブルホース26は、一端が充填ライン13の他端に接続されており、他端が充填ノズル28と接続されている。充填ノズル28は、燃料電池搭載車両31の車載タンク32と接続されている。
【0029】
ここで、
図1に示
す水素ガス充填装置10から燃料電池搭載車両31への水素ガスの充填方法、及び水素ガス充填装置10から燃料電池搭載車両31の切り離し方法について説明す
る中で、本実施の形態の水素ガスの放散方法について説明する。
【0030】
始めに、待機時において、蓄圧器15に高圧の水素ガスを予め充填しておく。
次いで、水素ガス充填装置10の充填ノズル28を燃料電池搭載車両31に接続し、蓄圧器15と車載タンク32との圧力差を利用して車載タンク32へ高圧の水素ガスを充填する。充填中、充填ライン13を通過する水素ガスは、コリオリ式流量計19を正方向に流れ、コリオリ式流量計19により水素ガスの流量が測定される。
その後、予め設定された圧力に車載タンク32が昇圧されたら、開いた状態から遮断弁18を閉じる。
【0031】
次いで、水素ガスの放散処理を行う。具体的には、閉じられた状態の放散弁23を開き、遮断弁18から充填ノズル28までの区間に滞留した水素ガスを、放散ライン22を介して、放散弁23の先に設けられた逆火防止器(図示せず)から大気放出させることで、遮断弁18から充填ノズル28までの区間の圧力を所定の圧力以下(例えば、0.4MPa以下)に低下させる。
【0032】
このとき、コリオリ式流量計19の二次側(下流側)に滞留した水素ガスはコリオリ式流量計24を逆方向に通過するため、コリオリ式流量計19により、逆方向に通過した水素ガスの流量を測定することが可能となる。すなわち、車載タンク32に充填されなかった水素ガスの流量の多くを把握することが可能となる。
【0033】
その後、開いた状態とされた放散弁23を閉じる。最後に、充填ノズル28を燃料電池搭載車両31から切り離す。
【0034】
本実施の形態
の水素ガスの放散方法によれば、放散ライン22の分岐位置22Aと水素ガス冷却手段25との間に位置する充填ライン13にコリオリ式流量計19を設けることにより、コリオリ式流量計19はガスの流れ方向がどちらであっても通過したガス量を計測可能であるため、遮断弁18から充填ノズル28までの区間に滞留した水素ガスのうち、コリオリ式流量計19を逆流して通過した水素ガスの量を把握することが可能となる。
【0035】
これにより、水素ガス充填装置10に設ける流量計の数を増加させることなく、放散弁23から放出された水素ガスの量を測定できるので、放散弁23から放出された水素ガスの量に基づいて車載タンク32(充填先)に、実際に充填された水素ガスの量をより正確に把握することができる。
【0036】
また、コリオリ式流量計19を水素ガス冷却手段25の一次側(上流側)に設置することで、コリオリ式流量計19の使用可能な温度下限を考慮しなくてよくなると共に、水素ガス冷却手段25に滞留し放散された水素ガスの量も測定可能となるため、より正確な水素ガスの充填量を把握でき、かつ水素ガスの放散量の少量化が実現できる。
【0037】
なお、以上の図では蓄圧器15を利用した装置構成を例に挙げたが、圧縮機14で昇圧した水素ガスを直接充填する構成であってもよい。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、燃料電池搭載車両に水素ガスを充填す
る水素ガス放散量の測定方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…水素ガス充填装置、11…水素ガス供給源、13…充填ライン、14…圧縮機、15…蓄圧器、17…流量調節弁、18…遮断弁、19…コリオリ式流量計、22…放散ライン、22A…分岐位置、23…放散弁、25…水素ガス冷却手段、26…フレキシブルホース、28…充填ノズル、31…燃料電池搭載車両、32…車載タンク