(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663516
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】エンジンのギヤ伝動装置
(51)【国際特許分類】
F02B 67/04 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
F02B67/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-62052(P2012-62052)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-194595(P2013-194595A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐次
(72)【発明者】
【氏名】桑山 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 秀行
(72)【発明者】
【氏名】中野 正
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】石垣 豊
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 学
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−52232(JP,U)
【文献】
実開平4−71746(JP,U)
【文献】
実開昭60−112682(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3059729(JP,U)
【文献】
特開平8−200087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック(1)から枢軸(2)を突出させ、枢軸(2)の基端側に受座(3)を設け、枢軸(2)にアイドルギヤ(4)を嵌め、枢軸(2)の突出端面(5)に抜け止め板(6)を取り付け、受座(3)と抜け止め板(6)の外周縁部(7)との間にアイドルギヤ(4)を挟んで、アイドルギヤ(4)を枢軸(2)に取り付けた、エンジンのギヤ伝動装置において、
抜け止め板(6)として、外周縁部(7)の表側面(7a)にダレ(9)が生じる板金の打ち抜き加工品を用いるに当たり、抜け止め板(6)の裏側面(6b)に適正方向照合用突起(11)を設け、枢軸(2)の突出端面(5)に適正方向照合用突起(11)が嵌合する適正方向照合用嵌合穴(12)を設けた、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンのギヤ伝動装置において、
抜け止め板(6)を枢軸(2)の中心軸線(13)に沿う一本のネジ具(14)で枢軸(2)に取り付け、枢軸(2)の中心軸線(13)から抜け止め板(6)の径方向に偏倚した適正方向照合用突起(11)と適正方向照合用嵌合穴(12)との嵌合により、抜け止め板(6)を廻り止めした、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したエンジンのギヤ伝動装置において、
適正方向照合用突起(11)はハーフピアス加工で抜け止め板(6)の裏側面(6b)から突出させた、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンのギヤ伝動装置において、
抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)にオイル保持凹部(15)を設けた、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載したエンジンのギヤ伝動装置において、
抜け止め板(6)の表側面(6a)に誤組み付け防止用突起(16)(16)を設け、抜け止め板(6)の表側面(6a)を枢軸(2)の突出端面(5)に向けた場合には、誤組み付け防止用突起(16)(16)が枢軸(2)の突出端面(5)に当接して、抜け止め板(6)の表側面(6a)が枢軸(2)の突出端面(5)に密着しないようにした、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。
【請求項6】
請求項5に記載したエンジンのギヤ伝動装置において、
抜け止め板(6)の裏側面(6b)にある適正方向照合用突起(11)の数と、抜け止め板(6)の表側面(6a)にある誤組み付け防止用突起(16)(16)の数とを相違させた、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのギヤ伝動装置に関し、詳しくは、抜け止め板の取り付け間違いを防止することができる、エンジンのギヤ伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのギヤ伝動装置として、シリンダブロックから枢軸を突出させ、枢軸の基端側に受座を設け、枢軸にアイドルギヤを嵌め、枢軸の突出端面に抜け止め板を取り付け、受座と抜け止め板の外周縁部との間にアイドルギヤを挟んで、アイドルギヤを枢軸に取り付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
この種のエンジンのギヤ伝動装置によれば、簡単な構造でアイドルギヤを枢軸に強固に取り付けることができる利点がある。
【0003】
しかし、この従来技術では、抜け止め板として、外周縁部の表側面にダレが生じる板金の打ち抜き加工品を用いる場合、ダレがない外周縁部の裏側面がアイドルギヤの受け止め面となるように、抜け止め板を取り付ける必要があるが、抜け止め板の取り付け時に、抜け止め板の裏側面を枢軸の突出端面に向けさせるよう、作業者を誘導する手段がないため、問題がある。
なお、ダレとは、板金の打ち抜き加工時に、ダイ穴の周囲に沿って板金がパンチによって押し込まれたときに、板金の打ち抜き加工品の片面の外周縁部に発生するテーパ状または円弧状の押し込み面である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−74505号公報(
図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《問題》 抜け止め板の取り付け間違いが起こり易い。
抜け止め板の取り付け時に、抜け止め板の裏側面を枢軸の突出端面に向けさせるよう、作業者を誘導する手段がないため、抜け止め板の取り付け間違いが起こり易い。
抜け止め板の取り付け間違いにより、ダレのある外周縁部の表側面がアイドルギヤの受け止め面になると、受け止め面積が小さいため、面圧が異常に大きくなり、抜け止め板が短時間で磨耗する不具合がある。
【0006】
本発明の課題は、抜け止め板の取り付け間違いを防止することができる、エンジンのギヤ伝動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1(B)または
図3(B)に例示するように、シリンダブロック(1)から枢軸(2)を突出させ、枢軸(2)の基端側に受座(3)を設け、枢軸(2)にアイドルギヤ(4)を嵌め、枢軸(2)の突出端面(5)に抜け止め板(6)を取り付け、受座(3)と抜け止め板(6)の外周縁部(7)との間にアイドルギヤ(4)を挟んで、アイドルギヤ(4)を枢軸(2)に取り付けた、エンジンのギヤ伝動装置において、
図1(B)または
図3(B)に例示するように、抜け止め板(6)として、外周縁部(7)の表側面(7a)にダレ(9)が生じる板金の打ち抜き加工品を用いるに当たり、抜け止め板(6)の裏側面(6b)に適正方向照合用突起(11)を設け、枢軸(2)の突出端面(5)に適正方向照合用突起(11)が嵌合する適正方向照合用嵌合穴(12)をあけた、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。
【発明の効果】
【0008】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 抜け止め板の取り付け間違いを防止することができる。
図1(B)または
図3(B)に例示するように、抜け止め板(6)として、外周縁部(7)の表側面(7a)にダレ(9)が生じる板金の打ち抜き加工品を用いるに当たり、抜け止め板(6)の裏側面(6b)に適正方向照合用突起(11)を設け、枢軸(2)の突出端面(5)に適正方向照合用突起(11)が嵌合する適正方向照合用嵌合穴(12)を設けたので、抜け止め板(6)の取り付け時には、適正方向照合用突起(11)を適正方向照合用嵌合穴(12)に嵌入するよう、作業者に指示を与えておけば、抜け止め板(6)の裏側面(6b)を枢軸(2)の突出端面(5)に向けるよう、作業者を誘導することができ、抜け止め板(6)の取り付け間違いを防止することができる。これにより、ダレ(9)のない抜け止め板(8)の外周縁部(7)の裏側面(7b)をアイドルギヤ(4)の受け止め面(8)とすることができる。
【0009】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 抜け止め板の取り付け作業が簡単になる。
図1(B)または
図3(B)に例示するように、抜け止め板(6)を枢軸(2)の中心軸線(13)に沿う一本のネジ具(14)で枢軸(2)に取り付け、枢軸(2)の中心軸線(13)から抜け止め板(6)の径方向に偏倚した適正方向照合用突起(11)と適正方向照合用嵌合穴(12)との嵌合により、抜け止め板(6)を廻り止めしたので、抜け止め板(6)を複数のネジ具で枢軸(2)に取り付ける場合に比べ、抜け止め板(6)の取り付け作業が簡単になる。
【0010】
《効果》ネジ具の緩みを防止することができる。
図1(B)または
図3(B)に例示するように、抜け止め板(6)を枢軸(2)の中心軸線(13)に沿う一本のネジ具(14)で枢軸(2)に取り付け、枢軸(2)の中心軸線(13)から抜け止め板(6)の径方向に偏倚した適正方向照合用突起(11)と適正方向照合用嵌合穴(12)との嵌合により、抜け止め板(6)を廻り止めしたので、アイドルギヤ(4)の回転による抜け止め板(6)の連れ廻りが起こらず、これに起因するネジ具(14)の緩みを防止することができる。
【0011】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 適正方向照合用突起の成型が容易になる。
図1(B)または
図3(B)に例示するように、適正方向照合用突起(11)はハーフピアス加工で抜け止め板(6)の裏側面(6b)から突出させたので、抜け止め板(6)の打ち抜き加工と同時にハーフピアス加工で適正方向照合用突起(11)を成型することができ、適正方向照合用突起(11)の成型が容易になる。
【0012】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》抜け止め板の磨耗を低減することができる。
図2(A)(B)に例示するように、抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)にオイル保持凹部(15)を設けたので、アイドルギヤ(4)の受け止め面(8)となる抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)の潤滑性を高め、抜け止め板(6)の磨耗を低減することができる。
【0013】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 抜け止め板の取り付け間違いを防止することができる。
図3(A)(B)に例示するように、抜け止め板(6)の表側面(6a)に誤組み付け防止用突起(16)(16)を設け、抜け止め板(6)の表側面(6a)を枢軸(2)の突出端面(5)に向けた場合には、誤組み付け防止用突起(16)(16)が枢軸(2)の突出端面(5)に当接して、抜け止め板(6)の表側面(6a)が枢軸(2)の突出端面(5)に密着しないようにしたので、作業者が抜け止め板(6)の表側面(6a)を枢軸(2)の突出端面(5)に向けて間違えて取り付けようとした場合には、抜け止め板(6)の表側面(6a)が枢軸(2)の突出端面(5)に密着しないことで、作業者に抜け止め板(6)の向きが適正でないことを認識させ、抜け止め板(6)の裏側面(6b)を枢軸(2)の突出端面(5)に向けるよう、作業者を誘導することができ、抜け止め板(6)の取り付け間違いを防止することができる。
【0014】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 抜け止め板の取り付け間違いを防止することができる。
図3(A)(B)に例示するように、抜け止め板(6)の裏側面(6b)にある適正方向照合用突起(11)の数と、抜け止め板(6)の表側面(6a)にある誤組み付け防止用突起(16)(16)の数とを相違させたので、抜け止め板(6)の取り付け時には、抜け止め板(6)の表側面(6a)にある誤組み付け防止用突起(16)(16)の数を確認するよう作業者に指示を与えておけば、作業者が抜け止め板(6)の表側面(6a)を枢軸(2)の突出端面(5)に向けて間違えて取り付けようとした場合には、誤組み付け防止用突起(16)(16)とは数が異なる適正方向照合用突起(11)の数の確認によって、作業者に抜け止め板(6)の向きが適正でないことを認識させ、抜け止め板(6)の裏側面(6b)を枢軸(2)の突出端面(5)に向けるよう、作業者を誘導することができ、抜け止め板(6)の取り付け間違いを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンのギヤ伝動装置を説明する図で、
図1(A)は枢軸に取り付けたアイドルギヤの正面図、
図1(B)は
図1(A)のB−B線断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るエンジンのギヤ伝動装置のオイル保持凹部を説明する図で、
図2(A)は
図1(B)のIIA−IIA線断面図、
図2(B)はオイル保持凹部の拡大断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るエンジンのギヤ伝動装置を説明する図で、
図3(A)は枢軸に取り付けたアイドルギヤの正面図、
図3(B)は
図3(A)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図2は本発明の第1実施形態に係るエンジンのギヤ伝動装置を説明する図、
図3は第2実施形態に係るエンジンのギヤ伝動装置を説明する図であり、各実施形態では、ディーゼルエンジンのギヤ伝動装置について説明する。
【0017】
図1(B)に示すように、シリンダブロック(1)から枢軸(2)を突出させ、枢軸(2)の基端側に受座(3)を設け、枢軸(2)にアイドルギヤ(4)を嵌め、枢軸(2)の突出端面(5)に抜け止め板(6)を取り付け、受座(3)と抜け止め板(6)の外周縁部(7)との間にアイドルギヤ(4)を挟んで、アイドルギヤ(4)を枢軸(2)に取り付けている。
このアイドルギヤ(4)は、クランクギヤ(図外)から動弁カムギヤ(図外)や燃焼噴射カムギヤ(図外)を駆動する調時伝動ギヤトレイン(図外)の構成要素として用いるものであり、調時伝動ギヤトレインはシリンダブロック(1)に取り付けた調時伝動ギヤケース(図外)に収容している。
【0018】
図1(B)に示すように、アイドルギヤ(4)はブッシュ(17)を介して枢軸(2)に嵌合させている。ブッシュ(17)の内周面には円環形のオイルリング溝(18)を設けている。枢軸(2)にはオイル供給孔(19)を設け、このオイル供給孔(19)をオイルリング溝(18)に連通させている。オイルパン(20)のエンジンオイル(21)をオイルポンプ(22)からオイルギャラリ(23)を介してクランク軸の軸受等のエンジン摺動部(24)に供給し、オイルギャラリ(23)から分岐したオイル分岐通路(25)を枢軸(2)のオイル供給孔(19)に連通させ、エンジンオイル(21)が枢軸(2)とブッシュ(17)との間に供給されるとともに、抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)に供給されるようになっている。
【0019】
図1(B)に示すように、抜け止め板(6)として、外周縁部(7)の表側面(7a)にダレ(9)が生じる板金の打ち抜き加工品を用いるに当たり、抜け止め板(6)の裏側面(6b)に適正方向照合用突起(11)を設け、枢軸(2)の突出端面(5)に適正方向照合用突起(11)が嵌合する適正方向照合用嵌合穴(12)を設けている。
【0020】
図1(B)に示すように、抜け止め板(6)を枢軸(2)の中心軸線(13)に沿う一本のネジ具(14)で枢軸(2)に取り付け、枢軸(2)の中心軸線(13)から抜け止め板(6)の径方向に偏倚した適正方向照合用突起(11)と適正方向照合用嵌合穴(12)との嵌合により、抜け止め板(6)を廻り止めしている。
【0021】
適正方向照合用突起(11)はハーフピアス加工で抜け止め板(6)の裏側面(6b)から突出させている。
ハーフピアス加工とは、穴があかない程度に板金にパンチを押し込んで、反対側から突起を押し出すプレス加工法である。
【0022】
図2(A)(B)に示すように、抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)にオイル保持凹部(15)を設けている。
オイル保持凹部(15)は、抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)に格子状に設けた断面V字形のオイル保持溝(26)であり、オイル保持溝(26)の最適寸法範囲は、V字の角度θが60°〜120°、深さDが0.05mm〜0.2mm、隣合うオイル保持溝(26)(26)の離間距離Wが0.5mm〜1.5mmである。隣合うオイル保持溝(26)(26)のオイル保持溝の離間距離Wは、隣合うオイル保持溝(26)(26)の最深部(27)(27)間の距離を計測したものである。
【0023】
オイル保持溝(26)のV字の角度θが60°を下回り、深さDが0.05mmを下回ると、オイル保持溝(26)のオイル保持量が不十分になり、アイドルギヤ(4)の受け止め面(8)となる抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)の潤滑性が不十分になる。オイル保持溝(26)のV字の角度θが120°を上回り、深さDが0.2mmを上回ると、オイル保持溝(26)の開口面積が大きくなり過ぎ、アイドルギヤ(4)とその受け止め面(8)となる抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)の接触面積が小さくなり過ぎて、面圧が上がり、抜け止め板(6)の外周縁部(7)が磨耗しやすい。隣合うオイル保持溝(26)(26)の離間距離Wが0.5mmを下回ると、隣合うオイル保持溝(26)(26)が接近し過ぎ、アイドルギヤ(4)とその受け止め面(8)となる抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)の接触面積が小さくなり過ぎて、面圧が上がり、抜け止め板(6)の外周縁部(7)が磨耗しやすい。隣合うオイル保持溝(26)(26)の離間距離Wが1.5mmを上回ると、隣合うオイル保持溝(26)(26)が離れすぎ、オイル保持溝(26)の本数が少なくなり、オイル保持溝(26)のオイル保持量が不十分になり、アイドルギヤ(4)の受け止め面(8)となる抜け止め板(6)の外周縁部(7)の裏側面(7b)の潤滑性が不十分になる。
オイル保持凹部(15)は、オイル保持溝(26)に限らず、ショットピーニング加工によるディンプル状の窪みであってもよい。
【0024】
図3に示す第2実施形態では、抜け止め板(6)の表側面(6a)に誤組み付け防止用突起(16)(16)を設け、抜け止め板(6)の表側面(6a)を枢軸(2)の突出端面(5)に向けた場合には、誤組み付け防止用突起(16)(16)が枢軸(2)の突出端面(5)に当接して、抜け止め板(6)の表側面(6a)が枢軸(2)の突出端面(5)に密着しないようにしている。
【0025】
図3(A)(B)に示すように、抜け止め板(6)の裏側面(6b)にある適正方向照合用突起(11)の数と、抜け止め板(6)の表側面(6a)にある誤組み付け防止用突起(16)(16)の数とを相違させている。
適正方向照合用突起(11)の数は1個、誤組み付け防止用突起(16)(16)の数は2個である。
他の構成は第1実施形態と同一にしており、
図3中、第1実施形態と同一の要素には同一の符合を付しておく。
【符号の説明】
【0026】
(1) シリンダブロック
(2) 枢軸
(3) 受座
(4) アイドルギヤ
(5) 突出端面
(6) 抜け止め板
(6a) 表側面
(6b) 裏側面
(7) 外周縁部
(7a) 表側面
(7b) 裏側面
(9) ダレ
(11) 適正方向照合用突起
(12 適正方向照合用嵌合穴
(13) 中心軸線
(14) ネジ具
(15) オイル保持凹部
(16) 誤組み付け防止用突起