(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663531
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の診断
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
G01N33/68
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-148614(P2012-148614)
(22)【出願日】2012年7月2日
(62)【分割の表示】特願2009-529533(P2009-529533)の分割
【原出願日】2007年10月1日
(65)【公開番号】特開2012-185187(P2012-185187A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2012年7月2日
(31)【優先権主張番号】102006046996.8
(32)【優先日】2006年10月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509091332
【氏名又は名称】ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベルクマン
(72)【発明者】
【氏名】ニールス モルゲンターラー
(72)【発明者】
【氏名】ジャナ パパッソチリオー
(72)【発明者】
【氏名】ジョアシャン ストラック
【審査官】
三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特表平8−501151(JP,A)
【文献】
特表平11−506205(JP,A)
【文献】
SANDEK A,THE LANCET,英国,LANCET LIMITED.,2004年 5月 8日,V363 N9420,P1555-1556
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
G01N 33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全を伴う肺炎のインビトロ診断のためにプロカルシトニンまたはその部分的な配列を測定する方法であって、マーカーであるプロカルシトニンまたはその部分的な配列の決定が、検査される患者由来のサンプルにおいて行われ、そして、該プロカルシトニンの決定が、0.01ng/mLから1ng/mLの間の範囲において、0.03ng/mLと0.25ng/mLの間の閾値で行われ、該肺炎が細菌によって引き起こされるものであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記マーカーであるプロカルシトニンが、アミノ酸1−116および/またはアミノ酸3−116からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、炎症性マーカー、心血管マーカー、神経ホルモンマーカー、または虚血マーカーの群より選択される少なくとも1つの他のマーカーの決定が、検査される患者において行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記他のマーカーは、前記炎症性マーカーを含み、該炎症性マーカーが、C−反応性タンパク質(CRP)、サイトカイン、接着分子、GDF−15およびST2の群の少なくとも1つのマーカーより選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炎症性マーカーが前記サイトカインであり、該サイトカインはTNF−アルファおよびインターロイキンより選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記炎症性マーカーが前記インターロイキンであり、該インターロイキンはIL−6であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記炎症性マーカーが前記接着分子であり、該接着分子はVCAMまたはICAMであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記他のマーカーは、前記心血管マーカーを含み、該心血管マーカーは、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン、ナトリウム利尿タンパク質、心筋トロポニン、CRPおよび/または循環調節(プロ)ホルモンの群の少なくとも1つのマーカーより選択されることを特徴とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記心血管マーカーが前記ナトリウム利尿タンパク質であり、該ナトリウム利尿タンパク質は、ANP、proANP、NT−proANP、BNP、proBNP、NT−proBNPおよびそれらの部分的な配列の群より選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記心血管マーカーが前記循環調節(プロ)ホルモンであり、該循環調節(プロ)ホルモンが、プロ−ガストリン放出ペプチド(proGRP)、プロ−エンドセリン−1、プロ−レプチン、プロ−ニューロペプチド−Y、プロ−ソマトスタチン、プロ−ニューロペプチド−YY、プロ−オピオメラノコルチン、またはプロ−アドレノメデュリン(proADM)およびそれらの部分的な配列の群より選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記他のマーカーは、前記虚血マーカーを含み、該虚血マーカーは、トロポニンIおよびT、CK−MBの群の少なくとも1つのマーカーより選択されることを特徴とする、請求項3〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記他のマーカーは、前記神経ホルモンマーカーを含み、該神経ホルモンマーカーは、ANP、proANP、NT−proANP、BNP、proBNP、NT−proBNPおよびそれらの部分的な配列の群より選択される少なくとも1つのナトリウム利尿タンパク質であることを特徴とする、請求項3〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記マーカーの平行決定または同時決定が行われることを特徴とする、請求項3〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記決定が、少なくとも1つの患者サンプルに対して行われることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記決定が、自動化分析装置を用いて行われることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記自動化分析装置がKryptor(登録商標)であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記決定が、迅速なテストにより行われることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記迅速なテストが単一パラメーターの決定および複数パラメーターの決定の群より選択されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記決定が、リスクに従って患者を分類するために行われることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記診断が、臨床的な決定についてのリスクに従って患者を分類するため、ならびに/または抗生物質処置の治療コントロールのため、ならびに/または集中治療医療もしくは救急医療において行われることを特徴とし、該臨床的な決定は、心不全の処置または治療のため、あるいは肺炎の処置または治療のためのさらなる薬物治療を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記診断が、予防のために、早期の認識および鑑別診断による認識のために、重症度の程度の評価のために、および/または治療の過程を通して、心不全を伴う肺炎の進展の評価のために、行われることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患を診断する方法に関連し、そこでは、そのマーカーであるプロカルシトニンまたはその部分的配列の決定を、特には患者をリスクによって分類する目的のために、検査する患者において行う。さらに、本発明は、その方法を実施するための診断装置およびキットに関連する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパにおいて、1年に約100万人の患者が、急性呼吸困難の症状で診療所の救急入院部門を訪れる。呼吸困難は、多くの疾患の主要な症状であり、そして約35−47%の症例は心不全に(Januzzi JL Jr、Camargo CA、Anwaruddin S、Baggish AL、Chen AA、Krauser DG、Tung R、Cameron R、Nagurney JT、Chae CU、Lloyd−Jones DM、Brown DF、Foran−Melanson S、Sluss PM、Lee−Lewandrowski E、Lewandrowski KB、The N−terminal Pro−BNP investigation of dyspnea in the emergency department(PRIDE)study、Am J Cardiol.95(8)(2005)、948−954頁およびMaisel AS、Krishnaswamy P、Nowak RM、McCord J、Hollander JE、Duc P、Omland T、Storrow AB、Abraham WT、Wu AH、Clopton P、Steg PG、Westheim A、Knudsen CW、Perez A、Kazanegra R、Herrmann HC、McCullough PA;Breathing Not Properly Multinational Study Investigators、Rapid measurement of B−type natriuretic peptide in the emergency diagnosis of heart failure、N Engl J Med.347(3)(2002)、161−167頁)、そして約11%の症例は肺炎に(Januzzi JLら、2005(前出))起因し得る。心不全は肺炎の発生に関する決定的な危険因子であるので(Huntemann I、Lorenz J、Ambulant erworbene Pneumonie {Pneumonia acquired as an out−patient}(AEP)、overview article on the CAPNETZ web site:www.capnetz.de)、その2つの疾患はお互いに関連し得、そして救急治療室に来る患者のいくらかは、肺炎および心不全の両方に罹患している(Christ−Crain M、Stolz D、Bingisser R、Muller C、Miedinger D、Huber PR、Zimmerli W、Harbarth S、Tamm M、Muller B、Procalcitonin Guidance of Antibiotic Therapy in Community−acquired Pneumonia: A Randomized Trial、Am J Respir Crit Care Med 174(1)(2006)、84−93頁)。適切な治療を始めるために、救急治療室において、既に起こっている基の疾患(単数または複数)を早期に診断および区別することが必要である。2つの疾患(心不全および肺炎)の非特異的な症状(呼吸困難、咳)のために、2つの病気の間の区別および識別の両方、およびそれらが同時に起こっていると認識することは、多くの場合困難である(Huntemann Iら(前出)およびMaisel ASら、2002(前出))。診断を促進するために、行われる実験室的研究は、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、すなわちNT−proBNPのようなそのホルモンの断片(Januzzi JLら、2005(前出)およびMaisel ASら、2002(前出))およびC反応性タンパク質の決定である。100pg/ml未満の低いBNP値は、心不全の診断の除外を導き得るし(Maisel ASら、2002(前出)およびRay P、Lefort Y、Usefulness of B−type natriuretic peptide in emergency medicine、Rev Med Interne 27(2006)、印刷前の電子出版);500pg/mlより高い、非常に高い値を示す場合は、心不全が存在する可能性がある(Ray Pら(2006)(前出))。肺炎の確定または除外のためのCRPの評価は、より困難である。一方で、病原体によって引き起こされない多くの疾患(自己免疫疾患、組織壊死、心筋梗塞)において、CRPは非特異的に上昇し得る(Wicher J、C−reaktive Protein(CRP) in Labor und Diagnose、Indikation und Bewertung von Laborbefunden fuer die medizinische Diagnostik{C−reactive protein(CRP) in laboratory work and diagnosis、indication and assessment of laboratory findings for medical diagnosis}、Lothar Thomasによって1998年に出版、第5版、TH−Books Verlagsgesellschaft 1998)。他方、心不全自体がCRPの上昇を引き起こし得る(Kardys I、Knetsch AM、Bleumink GS、Deckers JW、Hofman A、Stricker BH、Witteman JC、C−reactive protein and risk of heart failure.The Rotterdam Study、Am Heart J.152(3)(2006):514−520頁)。これらの理由のために、通常の実験室的研究を用いても、心不全を有する患者において肺炎の同時存在を決定することは困難である。しかし、上記で既に述べたように、心不全の存在は肺炎を促進し、そして早い診断およびその結果としての、抗生物質による肺炎の早い治療は、患者の予後を有意に改善し(Welte T、Community−acquired and nosocomical pneumonia、Internist(Berl)44(2003)、44−58頁)、そして治療コストの抑制を導くので、これは非常に重要である。
【0003】
技術水準において、プロカルシトニン(PCT)の決定は、細菌性敗血症(閾値>0.5ng/mL)を他の疾患原因から区別する研究の目的のために記載されている(EP0656121)。PCTはまた、肺炎と関連して文献において記載され、そこでは、その研究は主に、診断に関して、既に診断された肺炎症例において種々の病原体の型の違いを区別することに関連する(Prat C、Dominguez J、Andreo F、Blanco S、Pallares A、Cuchillo F、Ramil C、Ruiz−Manzano J、Ausina V、Procalcitonin and neopterin correlation with aetiology and severity of pneumonia、J Infect.52(3)(2006):169−177頁およびMasia M、Gutierrez F、Shum C、Padilla S、Navarro JC、Flores E、Hernandez I、Masia M、Gutierrez F、Shum C、Padilla S、Navarro JC、Flores E、Hernandez I、Chest 128(4)(2005):2223−2239頁、Boussekey N、Leroy O、Georges H、Devos P、d’Escrivan T、Guery B、Diagnostic and prognostic values of admission procalcitonin levels in community−acquired pneumonia in an intensive care unit.Infection 33(4)(2005):257−63頁)。Zhouらによる研究において(Zhou CDら Zhonguo Wei Zhong Bing Ji Jiu Yi Xue.2006年6月、18(6)、370−2)、PCTは、集中治療室において、人工呼吸器関連肺炎の初期診断のための診断マーカーとして紹介されている。PCTはまた、肺炎の診断マーカーとしても記載されている(Pratら、2006(前出)およびMasia Mら、2005(前出)、Boussekey Nら、2005(前出)、Christ−Crain M、Morgenthaler NG、Solz D、Muller C、Bingisser R、Harbarth S、Tamm M、Struck J、Bergmann A、Muller B、Pro−adrenomedullin to predict severity and outcome in community−acquired pneumonia、Crit Care 10(3)(2006):R96頁)。さらに、PCTを用いて、それぞれ>0.1ng/mLおよび>0.25ng/mLの閾値濃度において、抗生物質治療を必要とする臨床的に関連する感染(細菌性肺炎を含む)が、気道下部の感染(肺炎を含む)を有することが疑われる患者において検出されることを示した研究が存在する(非特許文献1および非特許文献2、非特許文献3)。
【0004】
しかし、心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の診断のための方法は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Christ−Crain M、Stolz D、Bingisser R、Muller C、Miedinger D、Huber PR、Zimmerli W、Harbarth S、Tamm M、Muller B、Procalcitonin Guidance of Antibiotic Therapy in community−acquired Pneumonia:A Randomized Trial、Am J Respir Crit Care Med 174(1)(2006)、84−93頁
【非特許文献2】Christ−Crain M、Jaccard−Stolz D、Bingisser R、Gencay MM、Huber PR、Tamm M、Muller B、Effect of procalcitonin−guided treatment on antibiotic use and outcome in lower respiratory tract infections: cluster−randomized,single−blinded intervention trial、Lancet 21;363(9409)(2004):600−607頁
【非特許文献3】Stolz D、Christ−Crain M、Gencay MM、Bingisser R、Huber PR、Muller B、Tamm M、Diagnostic value of signs,symptoms and laboratory values in lower respiratory tract infection、Swiss Med Wkly 8;136(27−28)(2006):434−440頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の診断の方法を利用可能にすることが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を、心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の診断の方法によって達成するが、そこでは、そのマーカーであるプロカルシトニン(PCT)またはその部分的な配列の決定を、検査する患者において行う(以下、本発明による方法)。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の診断のための方法であって、マーカーであるプロカルシトニンまたはその部分的な配列の決定が、検査される患者において行われることを特徴とする、方法。
(項目2)
インビトロ診断であることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記プロカルシトニンの上記決定が、0.01ng/mLから1ng/mLの範囲において、0.03ng/mLから0.06ng/mLの閾値を実証する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
上記マーカーであるプロカルシトニンが、アミノ酸1−116および/またはアミノ酸3−116からなる、項目1または2に記載の方法。
(項目5)
上記気道または肺の感染が、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫によって引き起こされ、そして気管支炎、特に腐敗性気管支炎、肺炎、サルコイドーシス、気管支拡張症、非心臓性肺浮腫からなる群より選択される、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
上記気道または肺の炎症性疾患は、間質性肺疾患および肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特にCOPD感染増悪、気管支喘息、特に気管支喘息の場合の感染増悪、気管支癌腫からなる群より選択される、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
さらに、炎症性マーカー、心血管マーカー、神経ホルモンマーカー、または虚血マーカーからなる群より選択される少なくとも1つの他のマーカーの決定が、検査する患者において行われることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
上記炎症性マーカーが、C−反応性タンパク質(CRP)、例えばTNF−アルファのようなサイトカイン、例えばIL−6のようなインターロイキン、およびVCAMまたはICAMのような接着分子、GDF−15またはST2の群の少なくとも1つのマーカーから選択されることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
心血管マーカーが、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン、ナトリウム利尿タンパク質、特にANP(またはANF)、proANP、NT−proANP、BNP、proBNP、NT−proBNP、または各例におけるそれらの部分的配列、心筋トロポニン、CRP、ならびに、特にプロ−ガストリン放出ペプチド(proGRP)、プロ−エンドセリン−1、プロ−レプチン、プロ−ニューロペプチド−Y、プロ−ソマトスタチン、プロ−ニューロペプチド−YY、プロ−オピオメラノコルチン、またはプロ−アドレノメデュリン(proADM)、または各例におけるそれらの部分的配列のような、循環調節(プロ)ホルモンの群の少なくとも1つのマーカーから選択されることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
上記虚血マーカーが、トロポニンIおよびT、CK−MBの群からの少なくとも1つのマーカーから選択されることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
上記神経ホルモンマーカーが、少なくとも1つのナトリウム利尿タンパク質、特にANP(またはANF)、proANP、NT−proANP、BNP、proBNP、NT−proBNP、またはそれらの部分的配列であることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
上記マーカーの平行または同時決定が行われることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
上記決定が、少なくとも1つの患者サンプルに対して行われることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
上記決定が、自動化分析装置を用いて、特にKryptorによって行われることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
上記決定が、迅速なテストにより、特に単一パラメーターまたは複数パラメーターの決定を用いて行われることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
上記決定が、リスクに従って患者を分類するために行われることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
上記診断が、臨床的な決定のため、特に心不全の処置または治療のため、そして気道および肺の感染/炎症性疾患の処置または治療のための薬剤によるさらなる処置のため、ならびに抗生物質の治療コントロールのため、そして/または特に集中治療医療または救急医療において、リスクに従って患者を分類するために行われることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
上記診断が、予防のために、早期の認識および鑑別診断による認識のために、重症度の程度の評価のために、そして治療の過程を通して、心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の進展の評価のために、行われることを特徴とする、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の診断のための、プロカルシトニンまたはその部分的配列、および必要に応じて項目7〜11のいずれか1項に記載の他のマーカーの、使用。
(項目20)
項目1〜18のいずれか1項に記載の方法を行うための、診断装置。
(項目21)
心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の診断またはリスク分類のためのキットであって、そのマーカーであるプロカルシトニンまたはその部分配列および必要に応じて項目7〜11のいずれか1項に記載の他のマーカーと、付属品とを含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】左:救急治療室に入院した時に、呼吸困難を有していた患者におけるPCTによる、肺炎の診断のROC曲線。肺炎ではない患者:n=208;肺炎の診断のみの患者:n=21;肺炎および心不全の診断を有する患者:n=20。曲線下面積は0.792である(95%CI 0.736−0.840;p=0.0001)。右:異なる閾値濃度(カットオフ[ng/mL])におけるPCTによる肺炎の診断の感度および特異性。強調した閾値において診断の正確度が最も高い。
【
図2】心不全(CHF)を有する呼吸困難患者におけるPCT測定値の分布。合併する肺炎ありまたはなしの患者の比較。個々の値を、中央値および四分位範囲と共に示す。マン−ホイットニーのU検定:2つのグループの間に有意差(p<0.0001)。
【
図3】左:救急治療室に入院した時に、心不全を有していた患者におけるPCTによる、肺炎の診断のROC曲線。肺炎を有さない心不全患者:n=117;肺炎および心不全の診断を有する患者:n=20。曲線下面積は0.898である(95%CI 0.835−0.945;p=0.0001)。右:異なる閾値濃度(カットオフ[ng/mL])におけるPCTによる肺炎の診断の感度および特異性。強調した閾値において診断の正確度が最も高い。
【
図4】左:救急治療室に入院した時に、心不全を有していた患者におけるPCTによる、肺炎の診断のROC曲線。
図3との比較において、その研究は合併症なしの心不全患者および肺炎を有する患者にのみ関連する;合併症を有さない心不全患者:n=85;肺炎および心不全の診断を有する患者:n=20。曲線下面積は0.939である(95%CI 0.874−0.976;p=0.0001)。右:異なる閾値濃度(カットオフ[ng/mL])におけるPCTによる肺炎の診断の感度および特異性。強調した閾値において診断の正確度が最も高い。
【
図5】左:救急治療室に入院した時に、心不全を有していた患者におけるPCTによる、腐敗性気管支炎の診断のROC曲線。合併症を有さない心不全患者:n=85;腐敗性気管支炎の診断を有する患者:n=6。曲線下面積は0.853である(95%CI 0.763−0.918;p=0.0004)。右:異なる閾値濃度(カットオフ[ng/mL])におけるPCTによる腐敗性気管支炎の診断の感度および特異性。強調した閾値において診断の正確度が最も高い。
【
図6】左:PCTによる肺炎の診断のROC曲線。ROC分析は、健康なテスト対象者と呼吸困難の症状で救急治療室を訪れ、そして肺炎と診断された患者との比較に関連する。肺炎の診断を有する心不全患者:n=41;健康な対照の個人:n=206。曲線下面積は0.967である(95%CI 0.940−0.984;p=0.0001)。右:異なる閾値濃度(カットオフ[ng/mL])におけるPCTによる肺炎の診断の感度および特異性。強調した閾値において診断の正確度が最も高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による方法の好ましい実施態様において、有意な範囲は0.01ng/mLから1ng/mLの決定されたプロカルシトニン(PCT)であり、閾値は0.03ng/mLから0.06ng/mLのPCTである(ROC曲線、実施例および図を参照のこと)。
【0010】
「心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患」という用語は、特にこれらの徴候の同時罹患率を含む、すなわち、存在する基礎疾患(指標疾患)、すなわち心不全に加えて、存在する、診断的に区別可能な疾患プロファイル、すなわち感染または炎症性疾患を決定する、すなわち、1つの疾患プロファイルは他の疾患プロファイルと重なるので、特に症状の類似性のために(呼吸困難、胸痛)、不正確な診断または不正確な解釈を導き
得る、関連する疾患プロファイルが存在する。
【0011】
本発明による方法によって、特に有利な方式で、そして特に救急および/または集中治療の医療の場合に、信頼できる診断を行い得る。本発明による方法は、迅速な治療の成功に導く臨床的な決定を可能にする。そのような臨床的な決定はまた、心不全の処置または治療のための、および気道および肺の感染/炎症性疾患の処置または治療のための薬剤による治療をさらに含む。
【0012】
別の好ましい実施態様において、本発明による方法は、従って気道および肺の感染/炎症性疾患の抗生物質による処置に関する治療コントロールに関連する。
【0013】
この理由のために、本発明はまた、好ましくは、時間が決定的である集中治療医療または救急医療において、患者のリスクを分類する方法、特に臨床的決定のために患者のリスクを分類する方法に関連する。
【0014】
本発明による方法の別の好ましい実施態様において、予防のために、初期の認識および鑑別診断による認識のために、重症度の程度の評価のために、そして治療の過程を通して、心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の進展の評価のために、その診断を行う。
【0015】
本発明による方法の別の実施態様において、検査する患者から血液を、任意で全血または血清を採取し、そしてインビトロ/エキソビボ、すなわちヒトまたは動物の体の外で診断を行う。少なくとも1つの患者サンプルに存在する、マーカーであるプロカルシトニンおよびその量の決定に基づいて、その診断を行い得る。
【0016】
本発明の範囲内で、「心不全」という用語は、休息時またはストレス下の組織代謝を保証するために、心臓が組織に十分な血液を供給することが急性または慢性的にできないこと、そしてこの結果として十分な酸素を供給できないことである。臨床的には、収縮期または拡張期機能不全の意味で心機能不全によって引き起こされる、典型的な症状(呼吸困難、疲労、体液貯留)が存在するなら、心不全が存在する。本発明によって、慢性心不全(CHF)も含まれる(Kardiologie{Cardiology} compact、Christian Mewis、Reimer Riessen、およびIoakim Spyridopoulosによって出版、変更無しの第2版、Thieme 2006)。
【0017】
本発明の範囲内で、「肺および気道の感染」は、特に、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫によって引き起こされる感染、例えば気管支炎、肺炎、サルコイドーシス、気管支拡張症、非心臓性肺浮腫のような徴候を意味すると理解される。さらに、気管支炎、腐敗性気管支炎、肺炎が、本発明によって好ましい。肺炎が特に非常に好ましい。
【0018】
本発明の範囲内で、肺炎(肺の炎症)は、肺組織の急性または慢性の炎症と理解され、そして感染は、細菌、ウイルス、または真菌によって引き起こされ、まれに毒性物質の吸入のために毒によって、または免疫学的に引き起こされる。臨床医にとって、肺炎は、胸部X線において見られ得る、少なくとも1つの浸潤と組み合わせた、様々な症状(熱または低体温、震え、咳、胸膜炎胸郭痛、痰の産生増加、呼吸数増加、聴診の減衰、気管支呼吸音、耳に近い捻髪音、胸膜の摩擦)の一群である(Harrisons Innere
Medizin{Harrison’s Internal Medicine}、Manfred Dietel、Norbert Suttorp、およびMartin Zeitzによって出版、ABW Wissenschaftsverlag 2005)。
【0019】
本発明の範囲内で、「肺および気道の炎症疾患」または「肺および気道の炎症性疾患」は、間質性肺疾患および肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(特にCOPD感染増悪)、気管支喘息(特に気管支喘息の場合の感染増悪)、気管支癌腫のような徴候であると理解される。
【0020】
述べられた全ての徴候はさらに、例えばPschyrembel、De Gruyter、Berlin 2004において記載される。
【0021】
本発明の範囲内で、「プロカルシトニン」は、EP0656121、申請者のEP1121600、およびDE10027954A1において記載されたような、1−116アミノ酸または2−116アミノ酸(PCT2−116)、または3−116アミノ酸(PCT3−116)のアミノ酸配列を有する、ヒトタンパク質またはポリペプチドであると理解される。さらに、本発明によるプロカルシトニンは、糖鎖付加、脂質化、または誘導体化のような、翻訳後修飾を示し得る。さらに、プロカルシトニンの部分的配列または断片も含まれる。
【0022】
別の実施態様において、プロカルシトニンの決定をさらに、さらなるマーカー、具体的に好ましくは既に心不全または気道および肺の感染/炎症性疾患を示すマーカーと共に行い得る。
【0023】
この理由のために、本発明は、本発明による方法の実施態様に関連し、ここでその決定をさらに、検査する患者において、炎症性マーカー、心血管マーカー、神経ホルモンマーカー、または虚血マーカーのグループから選択される、少なくとも1つのさらなるマーカーと共に行う。
【0024】
本発明によって、その炎症性マーカーを、C−反応性タンパク質(CRP)、例えばTNF−アルファのようなサイトカイン、例えばIL−6のようなインターロイキン、およびVCAMまたはICAMのような接着分子、GDF−15またはST2のグループの少なくとも1つのマーカーから選択し得、そして心血管マーカーを、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン、ナトリウム利尿タンパク質、特にANP(またはANF)、proANP、NT−proANP、BNP、proBNP、NT−proBNP、または各例におけるその部分的配列、心筋トロポニン、CRPのグループの少なくとも1つのマーカーから選択し得る。さらに、この用語はまた、特にプロ−ガストリン放出ペプチド(proGRP)、プロ−エンドセリン−1、プロ−レプチン、プロ−ニューロペプチド−Y、プロ−ソマトスタチン、プロ−ニューロペプチド−YY、プロ−オピオメラノコルチン、またはプロ−アドレノメデュリン(proADM)、または各例におけるその部分的配列のような、循環調節(プロ)ホルモンを意味することが理解される。
【0025】
虚血マーカーを、トロポニンIおよびT、CD−MBのグループの少なくとも1つのマーカーから選択し得る。さらに、神経ホルモンマーカーは、少なくとも1つのナトリウム利尿タンパク質、特にANP(またはANF)、proANP、NT−proANP、BNP、proBNP、NT−proBNP、または各例におけるその部分的配列であり得る。
【0026】
本発明の別の実施態様において、本発明による方法を、複数のマーカーの平行または同時決定によって行い得(例えば96個またはそれ以上の穴を有するマルチタイタープレート)、そこではその決定を、少なくとも1つの患者サンプルに対して行う。
【0027】
さらに、本発明による方法およびその決定を、自動化分析装置を用いて、特にKryptor(http://www.kryptor.net/)を用いて行い得る。
【0028】
別の実施態様において、本発明による方法およびその決定を、単一パラメーターまたは複数パラメーターの決定のいずれかを用いて、迅速なテスト(例えば側方流動試験)によって行い得る。
【0029】
さらに、本発明は、心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の診断のための、プロカルシトニンまたはその部分的配列の使用、および上記で説明したように、必要に応じさらなるマーカーの使用に関連する。
【0030】
別の課題は、本発明による方法を実施するための、対応する診断装置、または本発明による方法を実施するためのその使用を利用可能にすることである。
【0031】
本発明の範囲内で、診断装置は特に、本発明による方法を実施するための装置という最も広い意味で、アレイまたはアッセイ(例えば免疫アッセイ、ELISA等)であると理解される。
【0032】
本発明はさらに、そのマーカーであるプロカルシトニンまたはその部分的配列、および必要に応じ上記で述べたさらなるマーカー、を決定するための検出試薬を含む、心不全を伴う気道および肺の感染または炎症性疾患の診断またはリスク分類のためのキットに関連する。そのような検出試薬は、例えば抗体、免疫蛍光等を含む。
【0033】
以下の実施例および図は、本発明のより詳細な説明に役立つが、本発明をこれらの実施例および図に限定しない。
【実施例】
【0034】
実施例1
最初の検査の間に、呼吸困難の主症状で病院の救急治療室に来院した患者の血液サンプルを採取した。遠心によって得たEDTA血漿を、アリコートに分け、そしてPCTの測定を行うまで−80℃で保存した。PCTをアッセイB・R・A・H・M・S PCT感受性LIA(BRAHMS AG、Hennigsdorf、Germany)を用いて測定した(Morgenthaler NG、Struck J、Fischer−Schulz C、Bergmann A、Sensitive Immunoluminometric Assay for the Detection of Procalcitonin、Clin Chem 48(2002)、788−790頁)。そのアッセイは、0.01ng/mLの分析的アッセイ感度を有する。
【0035】
検査した患者における心不全の診断は、心不全プラス収縮期または拡張期機能不全の超音波検査(echiographic)の証拠に関して、Framingham Scoreに基づいた(McKee PA、Castelli WP、McNamara P、およびKannel WB、The natural history of congestive heart failure: the Framingham study、N Engl J Med 285(1971)、1441−1446頁)。以前には未知の浸潤がX線で観察され、そして少なくとも2つの呼吸器系症状(咳、呼吸困難、または腐敗性の駆出)が起こったなら、肺炎と診断した。
【0036】
さらに、いかなる既知の疾患も有さない健康な個人から血液サンプルを採り、そしてEDTA血漿を遠心によって得た。PCTの測定(B・R・A・H・M・S PCT感受性LIA(BRAHMS AG、Hennigsdorf、Germany))まで、そのサンプルを−20℃で保存した。